2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2...

35
ロラタジン Section 2.7 Clinical Summary 19 2.7.2 臨床薬理の概要 2.7.2.1 背景及び概観 本邦において,ロラタジンは,成人についてのみ,アレルギー性鼻炎,蕁麻疹,皮膚疾患に伴う そう痒の治療薬として錠剤(商品名:クラリチン錠 10 mg)及び口腔内速溶錠(商品名:クラリチ ンレディタブ錠 10 mg)が承認されている.今回の本邦におけるロラタジンの小児への適応拡大に 際して,本薬の薬物動態(PK)に対する内因性要因として年齢による影響を考慮し,3 15 歳の 日本人小児を対象とした薬物動態試験(報告書番号 JPC- -370-PK1)を実施した.この薬物動態試 験では,小児の通年性アレルギー性鼻炎患者及びアトピー性皮膚炎患者を対象として,それぞれロ ラタジンのシロップ剤及びドライシロップを用いて実施された 2 つの第 III 相試験(JPC- -370-31 及び JPC- -371-32/ 06DA231)において,最終投与後に 1 被験者について 1 時点の血漿中薬物濃 度の測定を行い,日本人の小児集団における薬物動態について検討した. また,この試験で得られ た日本人小児の血漿中薬物濃度(全身曝露)について,既に有効性及び安全性が評価されている日 本人の成人における薬物動態試験成績(集積データ)との類似性について検討し,日本人小児にお ける用量設定の妥当性について薬物の全身曝露の観点から評価した.さらに,高年齢層及び低年齢 層の日本人小児と外国人小児(C -187-01 及び C -033-01)の薬物動態の類似性,外国人小児と外 国人成人の薬物動態の類似性についても検討した.なお,海外では生後 6ヵ月~ 2 歳の乳幼児 P 241)を対象とした薬物動態試験が実施されているため,参考データとして提出した.また, 薬力学(PD)試験として,小児患者(外国人)におけるヒスタミン誘発の膨疹及び紅斑抑制効果 を検討した臨床薬理試験(I -013-50)を実施した. ロラタジンは,ヒトに経口投与した場合,消化管吸収された後,初回通過効果により速やかに活 性代謝物 SCH 34117 へと代謝され,引き続き,主として 3 位水酸化体 SCH 45581 へと変換され,さ らにそのグルクロン酸抱合体へと代謝される(2.7.1.12.7.1-1 参照). SCH 34117 から SCH 45581 への代謝過程には slow metabolizer の存在が確認されており,欧米人(成人)における slow metabolizer の発現頻度は約 6% であり,黒人で約 20% と高く明らかな人種差が認められている(2.7.2.3.7 照).日本人については,ロラタジンの口腔内速溶錠の申請(2003 4 月)において,その時点ま でに集積された健康成人男性 124 名のデータでは, slow metabolizer に該当する症例は1名も認めら れていないことを報告した.今回の申請においては,その後に得られた日本人成人でのデータ 13DA214 及び JPC- -371-02)も合わせて集積した結果(164 名)を報告し,さらに,上記の日 本人小児における薬物動態試験(JPC- -370-PK1)における slow metabolizer の存在の可能性につ いても検討した. 血漿中薬物濃度は, 19 年以前に実施された薬物動態試験では,ロラタジン及び SCH 34117 分析対象として,ガス液体クロマトグラフィ(GLC)(錠剤申請時の提出資料)で測定した.また, 19 年以降に実施された薬物動態試験では,原則的にロラタジン, SCH 34117 及び SCH 45581

Transcript of 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2...

Page 1: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

19

2.7.2 臨床薬理の概要

2.7.2.1 背景及び概観

本邦において,ロラタジンは,成人についてのみ,アレルギー性鼻炎,蕁麻疹,皮膚疾患に伴う

そう痒の治療薬として錠剤(商品名:クラリチン錠 10 mg)及び口腔内速溶錠(商品名:クラリチ

ンレディタブ錠 10 mg)が承認されている.今回の本邦におけるロラタジンの小児への適応拡大に

際して,本薬の薬物動態(PK)に対する内因性要因として年齢による影響を考慮し,3 ~ 15 歳の

日本人小児を対象とした薬物動態試験(報告書番号 JPC- -370-PK1)を実施した.この薬物動態試

験では,小児の通年性アレルギー性鼻炎患者及びアトピー性皮膚炎患者を対象として,それぞれロ

ラタジンのシロップ剤及びドライシロップを用いて実施された 2 つの第 III 相試験(JPC- -370-31

及び JPC- -371-32/ 06DA231)において,最終投与後に 1 被験者について 1 時点の血漿中薬物濃

度の測定を行い,日本人の小児集団における薬物動態について検討した. また,この試験で得られ

た日本人小児の血漿中薬物濃度(全身曝露)について,既に有効性及び安全性が評価されている日

本人の成人における薬物動態試験成績(集積データ)との類似性について検討し,日本人小児にお

ける用量設定の妥当性について薬物の全身曝露の観点から評価した.さらに,高年齢層及び低年齢

層の日本人小児と外国人小児(C -187-01 及び C -033-01)の薬物動態の類似性,外国人小児と外

国人成人の薬物動態の類似性についても検討した.なお,海外では生後 6ヵ月~ 2 歳の乳幼児

(P 241)を対象とした薬物動態試験が実施されているため,参考データとして提出した.また,

薬力学(PD)試験として,小児患者(外国人)におけるヒスタミン誘発の膨疹及び紅斑抑制効果

を検討した臨床薬理試験(I -013-50)を実施した.

ロラタジンは,ヒトに経口投与した場合,消化管吸収された後,初回通過効果により速やかに活

性代謝物 SCH 34117 へと代謝され,引き続き,主として 3 位水酸化体 SCH 45581 へと変換され,さ

らにそのグルクロン酸抱合体へと代謝される(2.7.1.1,図 2.7.1-1 参照).SCH 34117 から SCH 45581

への代謝過程には slow metabolizer の存在が確認されており,欧米人(成人)における slow metabolizer

の発現頻度は約 6% であり,黒人で約 20% と高く明らかな人種差が認められている(2.7.2.3.7 参

照).日本人については,ロラタジンの口腔内速溶錠の申請(2003 年 4 月)において,その時点ま

でに集積された健康成人男性 124 名のデータでは,slow metabolizer に該当する症例は1名も認めら

れていないことを報告した.今回の申請においては,その後に得られた日本人成人でのデータ

( 13DA214 及び JPC- -371-02)も合わせて集積した結果(164 名)を報告し,さらに,上記の日

本人小児における薬物動態試験(JPC- -370-PK1)における slow metabolizer の存在の可能性につ

いても検討した.

血漿中薬物濃度は,19  年以前に実施された薬物動態試験では,ロラタジン及び SCH 34117 を

分析対象として,ガス液体クロマトグラフィ(GLC)(錠剤申請時の提出資料)で測定した.また,

19  年以降に実施された薬物動態試験では,原則的にロラタジン,SCH 34117 及び SCH 45581 を

Page 2: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

20

分析対象として,新たにバリデートされた高速液体クロマトグラフィ・タンデム質量分析法(LC-

MS/MS)(口腔内速溶錠申請時の提出資料)で測定した.GLC での定量下限はロラタジン及び SCH

34117 のいずれについても  ng/mL であった.また,LC-MS/MS での定量下限はすべての分析対

象について   ng/mL であった.

2.7.2.2 個々の試験結果の要約

小児を対象としたロラタジンのシロップ剤又はドライシロップの臨床薬物動態試験及び薬力学

試験の一覧を付録 2.7.2.5.1 に示し,血漿中ロラタジン,SCH 34117 及び SCH 45581 濃度の薬物動

態パラメータ一覧を付録 2.7.2.5.2 に示した.

2.7.2.2.1 高年齢層の小児被験者における単回投与時の薬物動態(C -187-01)〔CTD における記

載箇所:5.3.3.1.1〕

本試験(C -187-01)は,海外におけるシロップ剤の開発過程において,最初に外国人の小児被

験者を対象として単回経口投与により実施された臨床薬物動態試験である.

年齢が 8 ~ 12 歳の健康な小児被験者 13 名(男児 7 名/女児 6 名;体重 47.1 ± 9.13 kg)にロラ

タジンの 10 mg をシロップ 剤として単回経口投与した際の血漿中ロラタジン及び SCH 34117 濃度

推移(GLC により測定)を図 2.7.2-1 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-1 に示した.

血漿中ロラタジン濃度は,投与後約 1 時間に最高値を示したのち,速やかに低下し,24 時間後

にはほとんどの例で定量下限(  ng/mL)未満となった.血漿中ロラタジン濃度の tmax は 1.00 時

間,Cmax は 4.38 ng/mL,AUC 0-t は 8.98 ng•hr/mL であった.

血漿中 SCH 34117 濃度は,投与後 1 ~ 3 時間に最高値を示したのち,二相性の減衰を示し,48

~ 72 時間後まで定量可能な濃度(定量下限:  ng/mL)を示した.血漿中 SCH 34117 濃度の tmax

は 1.69 時間,Cmax は 3.79 ng/mL,t1/2λz は 13.8 時間,AUC 0-t 及び AUC 0- ∞はそれぞれ 51.7 及び

55.6 ng•hr/mL であった.

Cmax はロラタジンと SCH 34117 でほぼ同程度であったが,AUC 0-t(全身曝露の程度)は SCH

34117 でロラタジンの約 6 倍の値を示した.

Page 3: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

21

図 2.7.2-1 高年齢層(8 ~ 12 歳)の健康な小児被験者(外国人)にロラタジンの 10mgをシロップ 剤として単回経口投与した際の血漿中ロラタジン及びSCH34117 濃度推移

表 2.7.2-1 高年齢層(8 ~ 12 歳)の健康な小児被験者(外国人)にロラタジンの 10mg をシロップ 剤として単回経口投与した際の薬物動態パラメータ

測定対象tmax(hr)

Cmax(ng/mL)

t1/2λz(hr)

AUC 0-t(ng•hr/mL)

AUC 0- ∞(ng•hr/mL)

ロラタジン 1.00 ( 0) 4.38 (72) --a 8.98 (69) --

SCH 34117 1.69 (56) 3.79 (26) 13.8 (22) 51.7 (49) 55.6 (48)

Non-Compartment Model 解析                       13 名の平均値(%CV)

a : 血漿中ロラタジン濃度の t1/2λz は消失相が不明瞭であり算出不能.

本試験における用量は体重が 30 kg 以上の小児では 10 mg,体重が 30 kg 未満の小児では 5 mg と設定され,結果

として 1 名の小児で 5 mg が投与された.この1名の薬物動態パラメータを以下に示した.

〔血漿中ロラタジン濃度〕tmax : 1 時間,Cmax : 2.17 ng/mL,AUC 0-t : 6.88 ng•hr/mL〔血漿中 SCH 34117 濃度〕tmax : 6 時間,Cmax : 2.35 ng/mL,AUC 0-t : 39.6 ng•hr/mL,AUC 0- ∞ : 41.9 ng•hr/mL

Mean±SD (n=13)

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 12 24 36 48 60 72

Time (hr)

Plas

ma

conc

entra

tions

(ng/

mL)

LoratadineSCH 34117

Linear-Linear Plot

Mean±SD (n=13)

0.01

0.1

1

10

0 12 24 36 48 60 72

Time (hr)

Plas

ma

conc

entra

tions

(ng/

mL)

LoratadineSCH 34117

Log-Linear Plot

Page 4: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

22

2.7.2.2.2 低年齢層の小児被験者における単回投与時の薬物動態(C -033-01)〔CTD における記

載箇所:5.3.3.1.2〕

本試験(C -033-01)は,海外におけるシロップ剤の開発過程において,外国人の低年齢層の小

児被験者を対象として単回経口投与により実施された臨床薬物動態試験である.

年齢が 2 ~ 5 歳の健康な小児被験者 18 名(男児 11 名/女児 7 名;体重 17.3 ± 3.99 kg)にロラ

タジンの 5 mg をシロップ 剤として単回経口投与した際の血漿中ロラタジン及び SCH 34117 濃度推

移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した.

血漿中ロラタジン濃度は,投与後 1 ~ 2 時間後に最高値を示したのち,速やかに低下し,24 時

間後にはほとんどの例で定量下限(  ng/mL)未満となった.血漿中ロラタジン濃度の tmax は 1.17

時間,Cmax は 7.78 ng/mL,AUC 0-t は 16.7 ng•hr/mL であった.

血漿中 SCH 34117 濃度は,投与後 1 ~ 4 時間に最高値を示したのち,二相性の減衰を示し,48

~ 72 時間後まで定量可能な濃度(定量下限:  ng/mL)を示した.血漿中 SCH 34117 濃度の tmax

は 2.33 時間,Cmax は 5.09 ng/mL,AUC 0-t は 87.2 ng•hr/mL であった.t1/2λz は 3 名の被験者で 50

時間以上の値を示し,SCH 34117 より下位の代謝過程における slow metabolizer(詳細は後述の

2.7.2.3.7 項参照)である可能性が示唆された.これら 3 名を除いた場合の t1/2λz は 14.4 時間であ

り,AUC 0- ∞は 61.4 ng•hr/mL であった.

Cmax はロラタジンと SCH 34117 でほぼ同程度であったが,AUC 0-t(全身曝露の程度)は SCH

34117 でロラタジンの約 5 倍の値を示した.

また,2 ~ 5 歳の小児に 5 mg を投与した際の血漿中ロラタジン及び SCH 34117 濃度の Cmax 及

び AUC 0-t(C -033-01)は,8 ~ 12 歳の小児に 10 mg を投与した場合(C -187-01)及び既に有

効性及び安全性が確認されている成人(外国人)に 10 mg を投与した場合の Cmax 及び AUC 0-t と,

ほぼ近似した範囲を示した(詳細は後述の 2.7.2.3.4 参照).

Page 5: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

23

図 2.7.2-2 低年齢層(2 ~ 5 歳)の健康な小児被験者(外国人)にロラタジンの 5 mgをシロップ 剤として単回経口投与した際の血漿中ロラタジン及び SCH34117 濃度推移

表 2.7.2-2 低年齢層(2 ~ 5 歳)の健康な小児被験者(外国人)にロラタジンの 5 mgをシロップ 剤として単回経口投与した際の薬物動態パラメータ

測定対象tmax(hr)

Cmax(ng/mL)

t1/2λz(hr)

AUC 0-t(ng•hr/mL)

AUC 0- ∞(ng•hr/mL)

ロラタジン 1.17 (33) 7.78 (90) --a 16.7 (80) --

SCH 34117 2.33 (75) 5.09 (36) 14.4 (20)b 87.2 (88) 61.4 (41)b

Non-Compartment Model 解析                        18 名の平均値(%CV)

a : 血漿中ロラタジン濃度の t1/2λz は消失相が不明瞭であり算出不能.

b : n=12.残りの 6 名のうち 3 名は消失相が不明瞭であり算出不能.他の 3 名は t1/2λz が 50 時間以上(それぞれ

54.0, 57.5 及び 91.8 時間)と特異的に長かったため平均値の算出から除いた.この 3 名を含めた 15 名での t1/2λz

の平均値は 25.1 時間であった.

Mean±SD (n=18)

0

2

4

6

8

10

12

14

16

0 12 24 36 48 60 72

Time (hr)

Pla

sma

conc

entra

tions

(ng/

mL)

LoratadineSCH 34117

Linear-Linear Plot

Mean±SD (n=18)

0.01

0.1

1

10

100

0 12 24 36 48 60 72

Time (hr)

Pla

sma

conc

entra

tions

(ng/

mL) Loratadine

SCH 34117

Log-Linear Plot

Page 6: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

24

2.7.2.2.3 乳幼児における単回投与時の薬物動態(P 241)〔CTD における記載箇所:5.3.3.1.3〕

本試験(P 241)は,海外におけるシロップ剤の開発過程において,外国人の乳幼児(生後 6ヵ

月~ 2 歳)の被験者を対象として単回経口投与により実施された臨床薬物動態試験である.

生後 6ヵ月~ 2 歳の乳幼児 50 名(男児 26 名/女児 24 名)にロラタジンの 2.5 又は 5 mg をシロッ

プ 剤として,以下に示す①~④のいずれかの投与条件でそれぞれ単回経口投与した.

① 生後 6ヵ月以上 1 歳(24ヵ月)未満の乳幼児 10 名に 2.5 mg を投与

② 生後 6ヵ月以上 1 歳(24ヵ月)未満の乳幼児 10 名に 5 mg を投与

③ 1 歳(24ヵ月)以上 2 歳(48ヵ月)未満の乳幼児 15 名に 2.5 mg を投与

④ 1 歳(24ヵ月)以上 2 歳(48ヵ月)未満の乳幼児 15 名に 5 mg を投与

血漿中ロラタジン及び SCH 34117 濃度推移(LC-MS/MS により測定)を図 2.7.2-3 及び図 2.7.2-

4 に示し,AUC 0-t を表 2.7.2-3 に示した.

血漿中ロラタジン濃度は,投与後 1 時間に最高値を示したのち,速やかに低下した.AUC 0-t は

上記①~④の投与条件においてそれぞれ 22.3, 52.2, 11.9 及び 35.4 ng•hr/mL(それぞれ中央値 16.9,

44.9, 7.79 及び 25.0 ng•hr/mL)であった.

血漿中 SCH 34117 濃度は,同様に投与後 1 時間に最高値を示したが,その後の低下はロラタジン

と比較して緩やかであった.AUC 0-t は上記①~④の投与条件においてそれぞれ 65.3, 132, 40.0 及び

103 ng•hr/mL(それぞれ中央値 57.2, 110, 35.4 及び 80.2 ng•hr/mL)であった.

生後 6ヵ月以上 1 歳未満の乳幼児にロラタジンの 5 mg を投与した場合,血漿中ロラタジン及び

SCH 34117 濃度の AUC 0-t(全身曝露の程度)は,それぞれ成人(外国人)に 10 mg を投与した際

の AUC 0-t(血漿中ロラタジン及び SCH 34117 濃度でそれぞれ中央値 10.8 及び 31.2 ng•hr/mL)の 4

及び 3.5 倍の値となった.また,同様に,生後 6ヵ月以上 1 歳未満の乳幼児にロラタジンの 2.5 mg

を投与した場合,血漿中ロラタジン及び SCH 34117 濃度の AUC 0-t は,それぞれ成人に 10 mg を投

与した際の AUC 0-t の 1.6 及び 1.8 倍の値となった.

1 歳以上 2 歳未満の乳幼児にロラタジンの 5 mg を投与した場合,血漿中ロラタジン及び SCH

34117 濃度の AUC 0-t は,それぞれ成人に 10 mg を投与した際の AUC 0-t の 2.3 及び 2.6 倍の値と

なった.また,同様に,1 歳以上 2 歳未満の乳幼児にロラタジンの 2.5 mg を投与した場合,血漿中

ロラタジン及び SCH 34117 濃度の AUC 0-t は,いずれも成人に 10 mg を投与した際の AUC 0-t とほ

ぼ同程度であった.

以上より,乳幼児におけるシロップ剤の用量としては,生後 6ヵ月以上 1 歳未満の乳幼児では

1.25 mg,1 歳以上 2 歳未満の乳幼児では 2.5 mg が推奨された.

Page 7: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

25

図 2.7.2-3 乳幼児(生後 6ヵ月~ 2 歳;外国人)にロラタジンの 2.5 又は 5 mg をシ

ロップ 剤として単回経口投与した際の血漿中ロラタジン濃度推移

図 2.7.2-4 乳幼児(生後 6ヵ月~ 2 歳;外国人)にロラタジンの 2.5 又は 5 mg をシ

ロップ 剤として単回経口投与した際の血漿中 SCH 34117 濃度推移

Mean±SD

0

5

10

15

20

25

0 6 12 18 24

Time (hr)

Pla

sma

Con

c. o

f Lor

atad

ine

(ng/

mL) 6mos-1yr, 2.5 mg (n=10)

6mos-1yr, 5 mg (n=10)1yr-2yr, 2.5 mg (n=15)1yr-2yr, 5 mg (n=15)

Linear-Linear Plot

Mean±SD

0.01

0.1

1

10

100

0 6 12 18 24

Time (hr)

Plas

ma

Con

c. o

f Lor

atad

ine

(ng/

mL)

6mos-1yr, 2.5 mg (n=10)6mos-1yr, 5 mg (n=10)1yr-2yr, 2.5 mg (n=15)1yr-2yr, 5 mg (n=15)

Log-Linear Plot

Mean±SD

0

2

4

6

8

10

12

14

0 6 12 18 24

Time (hr)

Pla

sma

Con

c. o

f SC

H 3

4117

(ng/

mL)

6mos-1yr, 2.5 mg (n=10)6mos-1yr, 5 mg (n=10)1yr-2yr, 2.5 mg (n=15)1yr-2yr, 5 mg (n=15)

Linear-Linear Plot

Mean±SD

0.01

0.1

1

10

100

0 6 12 18 24

Time (hr)

Pla

sma

Con

c. o

f SC

H 3

4117

(ng/

mL)

6mos-1yr, 2.5 mg (n=10)6mos-1yr, 5 mg (n=10)1yr-2yr, 2.5 mg (n=15)1yr-2yr, 5 mg (n=15)

Log-Linear Plot

Page 8: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

26

表 2.7.2-3 乳幼児(生後 6ヵ月~ 2 歳;外国人)にロラタジンの 2.5 又は 5 mg をシロッ

プ 剤として単回経口投与した際の AUC 0-t

2.7.2.2.4 小児患者における反復投与時の薬物動態(JPC- -370-PK1)〔CTD における記載箇所:

5.3.3.2.1〕

本邦におけるロラタジンの小児への適応拡大の一環として,小児の通年性アレルギー性鼻炎患者

及びアトピー性皮膚炎患者を対象とした下記の 2 つの第 III 相試験(それぞれ JPC- -370-31 及び

JPC- -371-32/ 06DA231)を実施した.本薬物動態試験(報告書番号 JPC- -370-PK1)は,これ

らの第 III 相試験において,最終投与後に各被験者から 1 時点の血漿中薬物濃度の測定を行い,日

本人の小児集団における薬物動態について検討した試験である.

〔試験 1〕シロップ剤の小児における通年性アレルギー性鼻炎に対する二重盲検比較試験(フマル

酸ケトチフェンドライシロップに対する非劣性の検討)(JPC- -370-31)〔CTD におけ

る記載箇所:5.3.5.1.1〕

〔試験 2〕ドライシロップの小児におけるアトピー性皮膚炎に対する二重盲検比較試験(フマル酸

ケトチフェンドライシロップに対する非劣性の検討)(JPC- -371-32/ 06DA231)〔CTD

における記載箇所:5.3.5.1.2〕

上記の通年性アレルギー性鼻炎に対する試験(JPC- -370-31;以下,試験 1 と略す)及びアト

ピー性皮膚炎に対する試験(JPC- -371-32/ 06DA231;以下,試験 2 と略す)は,いずれも 3 ~

15 歳の小児患者を対象として,それぞれシロップ剤及びドライシロップを反復投与した試験であ

り,フマル酸ケトチフェン(ドライシロップ)を対照薬として,多施設,ランダム化,二重盲検,

並行群間比較により実施された.

測定対象

生後 6ヵ月以上 1 歳未満

の乳幼児

1 歳以上 2 歳未満

の乳幼児

投与量 2.5 mg(n=10)

投与量 5 mg(n=10)

投与量 2.5 mg(n=15)

投与量 5 mg(n=15)

AUC0-t(ng•hr/mL)

ロラタジン22.3(74)[16.9]

52.2(67)[44.9]

11.9(92)[7.79]

35.4(128)[25.0]

SCH 34117 65.3(55)[57.2]

132(49)[110]

40.0(45)[35.4]

103(63)[80.2]

Non-Compartment Model 解析 平均値(%CV)

[中央値]

Page 9: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

27

被験者背景及び試験条件を,薬物動態試験としての観点から抜粋し,表 2.7.2-4 に示した.

被験者は,7 ~ 15 歳の高年齢層群と 3 ~ 6 歳の低年齢層群に層別割付され,ロラタジンは 1 日 1

回 2 週間,原則として食後に反復経口投与された.ロラタジンの用量は,海外で既に承認されてい

るシロップ剤の小児用量を参考として,7 ~ 15 歳の小児(高年齢層)では成人と同様に 1 回 10 mg,

3 ~ 6 歳の小児(低年齢層)ではその半分量の 1 回 5 mg とした.血漿中薬物濃度測定用の採血は,

①小児患者では,特に低年齢層の患者からの頻回採血が人道的見地から困難であると判断されたこ

と,②当該臨床試験は第 III 相二重盲検比較試験であり,その主目的である有効性及び安全性の評

価に影響を与える要因を出来るだけ排除するため,血漿中薬物濃度測定用の採血は最低限に留める

必要があると判断されたことから,最終服薬後の 1 時点のみとし,原則として服薬後 0 ~ 24 時間

の範囲で採血した.血漿中濃度の測定対象はロラタジン,SCH 34117 及び SCH 45581 とし,LC-MS/

MS により測定した.

今回の日本人小児における薬物動態の評価においては,①試験 1(JPC- -370-31)と試験 2(JPC-

 -371-32/ 06DA231)の被験者背景はほぼ同様であったこと(表 2.7.2-4 参照),②それぞれの試

験で用いたロラタジンのシロップ剤(試験 1:JPC- -370-31)とドライシロップ(試験 2:JPC- -

371-32/ 06DA231)の両製剤は生物学的に同等であることが証明されていること( 13DA214,

2.7.1.2.2 参照),また,③上記 2 試験の血漿中薬物濃度‐時間分布の視察的評価において,いずれ

の分析対象(ロラタジン,SCH 34117 及び SCH 45581)についても両試験(各対象疾患)データの

分布に明確な相違が認められなかったことから,これら 2 試験を併合したデータを主要評価データ

とした(試験 1 + 試験 2).

日本人小児における血漿中薬物濃度は 190 名のデータが得られ,そのうち高年齢層(7 ~ 15 歳)

は 139 名,低年齢層(3 ~ 6 歳)は 51 名であり,また,男児及び女児はそれぞれ 107 名及び 83 名

であった(表 2.7.2-4 参照).採血時点は 190 例中 187 例(98%)で最終投与後 0 ~ 36 時間であっ

た.投与期間は 190 例中 188 例(99%)で 6 ~ 16 日間であり,採血前の連日反復投与の状況も考

慮して,血漿中薬物濃度は定常状態として評価し得ると判断された.最終服薬と食事のタイミング

については 190 例中 174 例(92%)で食後 2 時間以内に服薬しており,ほぼ食後投与として評価し

得ると判断された.また,血漿中薬物濃度測定のための採血前の服薬で用いた補助飲料水に関して

も調査対象としたが,消化管粘膜における CYP3A4 代謝活性への影響及び薬物吸収に関与する P-

糖タンパク質(P-gp)への影響などの観点から,ロラタジンの薬物動態に明らかに影響を与えると

考えられるものは飲用されていなかった.

Page 10: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

28

表 2.7.2-4 小児患者(日本人)を対象とした第 III 相試験における薬物動態の検討:

被験者背景(薬物動態解析における採用例)及び試験条件

試験 1(JPC- -370-31)

試験 2(JPC- -371-32/

 06DA231)

試験 1 + 試験 2(報告書番号:

JPC- -370-PK1)被験者 小児患者 小児患者  -

 疾 患 通年性

アレルギー性鼻炎

アトピー性皮膚炎

 被験者数(合計)

  高年齢層:7 ~ 15 歳

  低年齢層:3 ~ 6 歳

93 名

70 名

23 名

97 名

69 名

28 名

190 名

139 名

51 名

 性 別

 

男児 61 名

女児 32 名

男児 46 名

女児 51 名

男児 107 名

女児 83 名

 年 齢(歳)a

  高年齢層:7 ~ 15 歳

  低年齢層:3 ~ 6 歳

10.1 (7 ~ 15) 4.87 (3 ~ 6)

10.9 (7 ~ 15) 4.96 (3 ~ 6)

10.5 (7 ~ 15) 4.92 (3 ~ 6)

 体 重(kg)a

  高年齢層:7 ~ 15 歳

  低年齢層:3 ~ 6 歳

34.7 (18.5 ~ 60) 19.0 (14 ~ 30)

39.4 (17 ~ 71) 18.0 (12 ~ 24)

37.0 (17 ~ 71) 18.4 (12 ~ 30)

 体表面積(m2)a, b

  高年齢層:7 ~ 15 歳

  低年齢層:3 ~ 6 歳

1.15 (0.774 ~ 1.69) 0.754 (0.590 ~ 1.01)

1.25 (0.719 ~ 1.84) 0.729 (0.552 ~ 0.903)

1.20 (0.719 ~ 1.84) 0.740 (0.552 ~ 1.01)

投与薬物 ロラタジン ロラタジン -

 製 剤 シロップ剤 ドライシロップ -

 用 量(mg/day)  高年齢層:7 ~ 15 歳

  低年齢層:3 ~ 6 歳

105

105

105

 体重当たりの投与量(mg/kg)a

  高年齢層:7 ~ 15 歳

  低年齢層:3 ~ 6 歳

0.315 (0.167 ~ 0.514)0.274 (0.167 ~ 0.357)

0.278 (0.141 ~ 0.588)0.284 (0.208 ~ 0.417)

0.297 (0.141 ~ 0.588)0.280 (0.167 ~ 0.417)

 体表面積当たりの投与量(mg/m2)a, b

  高年齢層:7 ~ 15 歳

  低年齢層:3 ~ 6 歳

9.00 (5.93 ~ 12.9)6.76 (4.95 ~ 8.48)

8.34 (5.45 ~ 13.9)6.94 (5.54 ~ 9.05)

8.67 (5.45 ~ 13.9)6.86 (4.95 ~ 9.05)

 投与方法 1 日 1 回反復経口投与 -

 投与期間 2 週間 c -

 食事と投与のタイミング 原則として朝食後投与 -

 補助飲料水 水,お茶,ジュース類,他 d -

薬物濃度測定

 測定時点

 

最終投与後の 1 時点

(原則として 0 ~ 24 時間の範囲)

 マトリックス 血 漿 -

 測定対象

 

 

ロラタジン

SCH 34117(活性代謝物)

SCH 45581(SCH 34117 の 3 位水酸化体)

 測定方法(定量下限) LC-MS/MS(   ng/mL) -

a : 平均値(最低値~最高値)

b : 体表面積は DuBois の式により算出 体表面積(m2)=[体重(kg)]0.425 ×[身長(cm)]0.725 × 0.007184c : 実績:16 日間(9 例 4.7%),15 日間(82 例 43%),14 日間(74 例 39%),13 日間(15 例 7.9%),12 日間(6 例 3.2%),10

日間(1 例 0.5%),6 日間(1 例 0.5%),2 日間(1 例 0.5%),1 日間(1 例 0.5%)

d : 実績:水(136 例 72%),お茶の類(麦茶,お茶,そば茶,紅茶,ウーロン茶/ 24 例 13%),ジュース類(オレンジジュー

ス,りんごジュース,アロエジュース,ピーチネクター,ポカリスエット,梅クエン酸/ 13 例 6.8%),炭酸飲料(コー

ラ,サイダー,メロンソーダ,ジンジャーエール/ 7 例 3.6%),乳飲料(牛乳,コーヒー牛乳,カルピス/ 4 例 2.1%),

なし(6 例 3.2%)

Page 11: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

29

日本人小児における血漿中ロラタジン,SCH 34117 及び SCH 45581 濃度データは,それぞれ 188,

190 及び 190 例において得られた.それぞれの測定対象についての血漿中濃度-時間分布を,高年

齢層(10 mg 投与)及び低年齢層(5 mg 投与)で層別し,それぞれ図 2.7.2-5,図 2.7.2-6 及び図

2.7.2-7 に示した.

血漿中ロラタジン,SCH 34117 及び SCH 45581 濃度は,いずれも高年齢層と低年齢層でほぼ同じ

範囲内に分布し,年齢層の違いによる相異は認められなかった.血漿中ロラタジン濃度は,投与後

1 ~ 3 時間において比較的高い濃度域に分布し,その後の時間帯における濃度の低下は速やかで

あった.血漿中 SCH 34117 濃度は,投与後 1 ~ 12 時間において比較的高い濃度域に分布し,24 時

間以降においてもその 1/2 ~ 1/4 程度の濃度を示し,また,概ね投与後 4 時間以降においてロラタ

ジン濃度よりも高濃度であった.血漿中 SCH 45581 濃度は,総じて SCH 34117 濃度の 1/2 程度の値

を示し,投与後 1 ~ 12 時間において比較的高い濃度域に分布し,24 時間以降においてもその 1/2

程度の濃度を示した.

男児と女児で層別した場合においても,図 2.7.2-8,図 2.7.2-9 及び図 2.7.2-10 に示したとおり,

血漿中ロラタジン,SCH 34117 及び SCH 45581 濃度-時間分布に性別による相異は認められなかっ

た.

小児患者(3 ~ 15 歳)では,各年齢層での体重の変動幅は大きいものの,図 2.7.2-11 に示した

とおり,年齢と体重との間には明瞭な正の相関関係が認められた.したがって,必然的にロラタジ

ンの 10 mg 又は 5 mg の同一用量における体重当たりの投与量(mg/kg)と年齢の間には負の相関関

係が認められている.そこで,体重当たりの投与量(mg/kg)に基づいて,低用量群(0.14 ~ 0.30

mg/kg:113 例)と高用量群(0.30 ~ 0.60 mg/kg;77 例)に層別した場合の血漿中薬物濃度の相異

について検討を試みた.その結果,血漿中ロラタジン濃度(図 2.7.2-12 参照)については,ばらつ

きが大きく,高用量群と低用量群で明らかな相異が認められなかった.一方,血漿中 SCH 34117 濃

度(図 2.7.2-13 参照)及び血漿中 SCH 45581 濃度(図 2.7.2-14 参照)については,体重当たりの

投与量が高用量であった例が高濃度域に比較的多く散見され,逆に,体重当たりの投与量が低用量

であった例が低濃度域に比較的多く散見された.しかしながら,この高用量群(0.30 ~ 0.60 mg/kg)

と低用量群(0.14 ~ 0.30 mg/kg)における血漿中薬物濃度の分布の差については,小児における大

きな体重差あるいは体重当たりの投与量差(図 2.7.2-11 参照)をそのまま反映する程の顕著なもの

ではなく,臨床的な影響は少ないと考えられた.

また,今回得られた血漿中ロラタジン,SCH 34117 及び SCH 45581 濃度のいずれについても,投

与期間に依存した明確な変動(上昇)傾向は認められず,本薬を小児患者に反復投与した際の蓄積

性はないものと考えられた.

なお,一部の小児患者において,血漿中ロラタジン濃度(被験者番号 H2205, L2601;図 2.7.2-5

参照),SCH 34117 濃度(被験者番号 H1904;図 2.7.2-6 参照)又は SCH 45581 濃度(被験者番号

H0704, 1517;図 2.7.2-7 参照)が他の被験者と比較して高い値を示していたため,以下にこれら各

症例の背景と試験データについて説明し,有効性及び安全性について考察した.

Page 12: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

30

【症例番号 H2205】(血漿中ロラタジン濃度が高い症例)

通年性アレルギー性鼻炎の患者で,年齢 9 歳,体重 31 kg の女児である.本薬の 10 mg/ 日を 14

日間投与され,体重当りの投与量は 0.323 mg/kg であった.最終投与後 1.67 時間の血漿中ロラタジ

ン濃度が 25.8 ng/mL と高値を示し,同時に測定した SCH 34117 及び SCH 45581 濃度が相対的に低

い値(それぞれ 1.26 及び 1.68 ng/mL)を示しており,ロラタジンから SCH 34117 への代謝酵素活

性が比較的低い被験者であった可能性が考えられる.本症例における投与前から投与後(約 2 週

後)の 4 鼻症状(くしゃみ発作・鼻汁・鼻閉・鼻内そう痒感)スコアの変化量は 6 → 2 と -4 の改

善が認められている.また,本剤の投与期間を通じて有害事象は認められなかった.

【症例番号 L2601】(血漿中ロラタジン濃度が高い症例)

通年性アレルギー性鼻炎の患者で,年齢 3 歳,体重 16 kg の男児である.本薬 5 mg/ 日を 14 日間

投与され,体重当りの投与量は 0.313 mg/kg であった.最終投与後 2.33 時間の血漿中ロラタジン濃

度が 23.5 ng/mL と高値を示し,同時に測定した SCH 34117 及び SCH 45581 濃度が相対的に低い値

(それぞれ 4.59 及び 0.878 ng/mL)を示しており,ロラタジンから SCH 34117 への代謝酵素活性が

比較的低い被験者であった可能性が考えられる.本症例における投与前から投与後(約 2 週後)の

4 鼻症状スコアの変化量は 6 → 2 と -4 の改善が認められている.また,本剤の投与期間中の有害事

象として,咳(軽度)が投与 2 日後から 4 日後に,急性鼻咽頭炎(中等度),好中球増加(軽度)

及びリンパ球減少(軽度)が投与 14 日後から投与終了後 7 日目まで認められた.しかしながら,

咳については治験薬投与期間中に無処置で消失したため,また,急性鼻咽頭炎については被験者が

発現前日に寒い中,長時間に大勢の人と過ごしたことにより偶発的に合併したものと考えられるた

め,好中球増加及びリンパ球減少については急性鼻咽頭炎に伴うものと考えられるため,いずれも

治験薬との因果関係なしと判断された.

【症例番号 H1904】(血漿中 SCH 34117 濃度が高い症例)

通年性アレルギー性鼻炎の患者で,年齢 13 歳,体重 38 kg の男児である.本薬 10 mg/ 日を 13 日

間投与され,体重当りの投与量は 0.263 mg/kg であった.最終投与後 11 時間の血漿中 SCH 34117 濃

度が 11.7 ng/mL と高値を示した.この例では,同時に測定したロラタジン濃度(1.49 ng/mL)は他

の被験者とほぼ同程度であったが,SCH 45581 濃度は明らかに低く(0.113 ng/mL),SCH 34117 よ

り下位の代謝過程における slow metabolizer(詳細は後述の 2.7.2.3.7 参照)である可能性が示唆さ

れた.本症例における投与前から投与後(約 2 週後)の 4 鼻症状スコアの変化量は 5 → 3 と -2 の

改善が認められている.また,臨床検査値異常として,投与 13 日後より軽度の尿素窒素の上昇が

みられ,治験薬との因果関係として「関連あるかもしれない」と判断されたが,1 回目の追跡調査

(投与終了後 11 日目)では正常に復しており,その他には異常所見を認めなかった.

【症例番号 H0704】(血漿中 SCH 45581 濃度が高い症例)

通年性アレルギー性鼻炎の患者で,年齢 7 歳,体重 21 kg の男児である.本薬の 10 mg/ 日を 15

日間投与され,体重当りの投与量は 0.476 mg/kg であった.最終投与後 2.92 時間の血漿中 SCH 45581

濃度が 6.16 ng/mL と高値を示し,同時に測定したロラタジン及び SCH 34117 濃度(それぞれ 3.72

Page 13: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

31

及び 7.77 ng/mL)は他の被験者とほぼ同程度であった.この症例では SCH 45581(SCH 34117 の水

酸化体)から下位の代謝反応(グルクロン酸抱合反応)が若干遅い可能性も推定されるが,血漿中

SCH 45581 濃度が他の例と比べて極端に異なるものではないため,この代謝酵素の発現が質的に異

なる可能性(slow metabolizer)は低いと考えられる.本症例における投与前から投与後(約 2 週後)

の 4 鼻症状スコアの変化量は 8 → 6 と -2 の改善が認められている.また,本剤の投与期間を通じ

て有害事象は認められなかった.

【症例番号 1517】(血漿中 SCH 45581 濃度が高い症例)

アトピー性皮膚炎の患者で,年齢 10 歳,体重 28 kg の男児である.本薬の 10 mg/ 日を 12 日間投

与され,体重当りの投与量は 0.355 mg/kg であった.最終投与後 1.83 時間の採血により得られた血

漿中 SCH 45581 濃度が 5.08 ng/mL と高値を示し,同時に測定したロラタジン及び SCH 34117 濃度

(それぞれ 9.97 及び 4.51 ng/mL)は他の被験者とほぼ同程度であった.上記と同様に,この症例で

は SCH 45581 から下位の代謝反応(グルクロン酸抱合反応)が若干遅い可能性も推定されるが,血

漿中 SCH 45581 濃度が他の例と比べて極端に異なるものではないため,この代謝酵素の発現が質的

に異なる可能性(slow metabolizer)は低いと考えられる.本症例における投与前から投与後(約 2

週後)のそう痒スコアの変化は 2 → 2 と改善が認められていない.また,本剤の投与期間中の有害

事象として,発熱(軽度)が投与 4 日後から 5 日後に認められたが,治験継続中に消失し再発もな

いことから,治験薬との因果関係なしと判断された.

以上の所見から,これら 5 例における血漿中薬物濃度が高値を示したことについては,有効性に

関して他の症例と大きく異なる所見は認められず,また,安全性の観点で特に問題となるものはな

いと判断された.

Page 14: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

32

図 2.7.2-5 日本人の小児患者にロラタジンの 5 mg 又は 10 mg を 1 日 1 回 2 週間反復

経口投与した際の最終投与後における血漿中ロラタジン濃度-時間分布:高年齢層(7 ~ 15 歳:10 mg 投与)と低年齢層(3 ~ 6 歳:5 mg 投与)

Loratadine(Linear-Linear Plot)

0

3

6

9

12

15

18

21

24

27

30

0 6 12 18 24 30 36

Time after Administration (hr)

Lora

tadi

ne P

lasm

a C

onc.

(ng/

mL)

High-Age (7-15 yrs) : 10mg/day (n=138)Low-Age (3-6 yrs) : 5mg/day (n=50)

(H2205)

(L2601)

Loratadine(Log-Linear Plot)

0.01

0.1

1

10

100

0 6 12 18 24 30 36

Time after Administration (hr)

Lora

tadi

ne P

lasm

a C

onc.

(ng/

mL)

High-Age (7~15 yrs) : 10mg/day (n=138)Low-Age (3~6 yrs) : 5mg/day (n=50)

(H2205)(L2601)

Page 15: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

33

図 2.7.2-6 日本人の小児患者にロラタジンの 5 mg 又は 10 mg を 1 日 1 回 2 週間反復

経口投与した際の最終投与後における血漿中SCH 34117濃度-時間分布:

高年齢層(7 ~ 15 歳:10 mg 投与)と低年齢層(3 ~ 6 歳:5 mg 投与)

SCH 34117(Linear-Linear Plot)

0

2

4

6

8

10

12

14

16

0 6 12 18 24 30 36

Time after Administration (hr)

SC

H 3

4117

Pla

sma

Con

c.(n

g/m

L)

High-Age (7-15 yrs) : 10mg/day (n=139)Low-Age (3-6 yrs) : 5mg/day (n=51)

(H1904)

SCH 34117(Log-Linear Plot)

0.01

0.1

1

10

100

0 6 12 18 24 30 36

Time after Administration (hr)

SC

H 3

4117

Pla

sma

Con

c.(n

g/m

L)

High-Age (7-15 yrs) : 10mg/day (n=139)Low-Age (3-6 yrs) : 5mg/day (n=51)

(H1904)

Page 16: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

34

図 2.7.2-7 日本人の小児患者にロラタジンの 5 mg 又は 10 mg を 1 日 1 回 2 週間反復

経口投与した際の最終投与後における血漿中SCH 45581濃度-時間分布:

高年齢層(7 ~ 15 歳:10 mg 投与)と低年齢層(3 ~ 6 歳:5 mg 投与)

SCH 45581(Linear-Linear Plot)

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 6 12 18 24 30 36

Time after Administration (hr)

SC

H 4

5581

Pla

sma

Con

c.(n

g/m

L)

High-Age (7-15 yrs) : 10mg/day (n=139)

Low-Age (3-6 yrs) : 5mg/day (n=51)(H0704)

(1517)

SCH 45581(Log-Linear Plot)

0.01

0.1

1

10

100

0 6 12 18 24 30 36

Time after Administration (hr)

SC

H 4

5581

Pla

sma

Con

c.(n

g/m

L)

High-Age (7-15 yrs) : 10mg/day (n=139)Low-Age (3-6 yrs) : 5mg/day (n=51)

(H0704)

(1517)

Page 17: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

35

図 2.7.2-8 日本人の小児患者にロラタジンの 5 mg 又は 10 mg を 1 日 1 回 2 週間反復

経口投与した際の最終投与後における血漿中ロラタジン濃度-時間分布:男児と女児

Loratadine(Linear-Linear Plot)

0

3

6

9

12

15

18

21

24

27

30

0 6 12 18 24 30 36

Time after Administration (hr)

Lora

tadi

ne P

lasm

a C

onc.

(ng/

mL) Male (n=105)

Female (n=83)

Loratadine(Log-Linear Plot)

0.01

0.1

1

10

100

0 6 12 18 24 30 36

Time after Administration (hr)

Lora

tadi

ne P

lasm

a C

onc.

(ng/

mL)

Male (n=105)Female (n=83)

Page 18: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

36

図 2.7.2-9 日本人の小児患者にロラタジンの 5 mg 又は 10 mg を 1 日 1 回 2 週間反復

経口投与した際の最終投与後における血漿中SCH 34117濃度-時間分布:

男児と女児

SCH 34117(Linear-Linear Plot)

0

2

4

6

8

10

12

14

16

0 6 12 18 24 30 36

Time after Administration (hr)

SC

H 3

4117

Pla

sma

Con

c.(n

g/m

L)Male (n=107)Female (n=83)

SCH 34117(Log-Linear Plot)

0.01

0.1

1

10

100

0 6 12 18 24 30 36

Time after Administration (hr)

SC

H 3

4117

Pla

sma

Con

c.(n

g/m

L)

Male (n=107)Female (n=83)

Page 19: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

37

図 2.7.2-10 日本人の小児患者にロラタジンの 5 mg 又は 10 mg を 1 日 1 回 2 週間反復

経口投与した際の最終投与後における血漿中SCH 45581濃度-時間分布:

男児と女児

SCH 45581(Linear-Linear Plot)

0

1

2

3

4

5

6

7

0 6 12 18 24 30 36

Time after Administration (hr)

SC

H 4

5581

Pla

sma

Con

c.(n

g/m

L)Male (n=107)

Femal (n=83)

SCH 45581(Log-Linear Plot)

0.01

0.1

1

10

100

0 6 12 18 24 30 36

Time after Administration (hr)

SC

H 4

5581

Pla

sma

Con

c.(n

g/m

L)

Male (n=107)

Femal (n=83)

Page 20: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

38

図 2.7.2-11 小児被験者の年齢及び体重分布ならびに体重当たりの投与量分布

Dose/Body Weight vs Age

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0 5 10 15Age (years)

Dos

e/B

ody

wei

ght (

mg/

kg)

High-Age (7-15 yrs) : 10mg/day (n=139)

Low-Age (3-6 yrs) : 5mg/day (n=51)

Body Weight vs Age

0

20

40

60

80

100

0 5 10 15

Age (years)

Bod

y W

eigh

t (kg

)

High-Age (7-15 yrs) : 10mg/day (n=139)

Low-Age (3-6 yrs) : 5mg/day (n=51)

Page 21: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

39

図 2.7.2-12 日本人の小児患者にロラタジンの 5 mg 又は 10 mg を 1 日 1 回 2 週間反復

経口投与した際の最終投与後における血漿中ロラタジン濃度-時間分布:体重当たりの投与量に基づく低用量群(0.14 ~ 0.30 mg/kg)と高用量群

(0.30 ~ 0.60 mg/kg)

Loratadine(Linear-Linear Plot)

0

3

6

9

12

15

18

21

24

27

30

0 6 12 18 24 30 36

Time after Administration (hr)

Lora

tadi

ne P

lasm

a C

onc.

(ng/

mL) Low-Dose/BW (0.14~0.30mg/kg)

High-Dose/BW (0.30~0.60mg/kg)

Loratadine(Log-Linear Plot)

0.01

0.1

1

10

100

0 6 12 18 24 30 36

Time after Administration (hr)

Lora

tadi

ne P

lasm

a C

onc.

(ng/

mL)

Low-Dose/BW (0.14~0.30mg/kg)

High-Dose/BW (0.30~0.60mg/kg)

Page 22: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

40

図 2.7.2-13 日本人の小児患者にロラタジンの 5 mg 又は 10 mg を 1 日 1 回 2 週間反復

経口投与した際の最終投与後における血漿中SCH 34117濃度-時間分布:

体重当たりの投与量に基づく低用量群(0.14 ~ 0.30 mg/kg)と高用量群

(0.30 ~ 0.60 mg/kg)

SCH 34117(Linear-Linear Plot)

0

3

6

9

12

15

0 6 12 18 24 30 36

Time after Administration (hr)

SC

H 3

4117

Pla

sma

Con

c.(n

g/m

L)Low-Dose/BW (0.14~0.30mg/kg)

High-Dose/BW (0.30~0.60mg/kg)

SCH 34117(Log-Linear Plot)

0.01

0.1

1

10

100

0 6 12 18 24 30 36

Time after Administration (hr)

SC

H 3

4117

Pla

sma

Con

c.(n

g/m

L)

Low-Dose/BW (0.14~0.30mg/kg)

High-Dose/BW (0.30~0.60mg/kg)

Page 23: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

41

図 2.7.2-14 日本人の小児患者にロラタジンの 5 mg 又は 10 mg を 1 日 1 回 2 週間反復

経口投与した際の最終投与後における血漿中SCH 45581濃度-時間分布:

体重当たりの投与量に基づく低用量群(0.14 ~ 0.30 mg/kg)と高用量群

(0.30 ~ 0.60 mg/kg)

SCH 45581(Linear-Linear Plot)

0

1

2

3

4

5

6

7

0 6 12 18 24 30 36

Time after Administration (hr)

SC

H 4

5581

Pla

sma

Con

c.(n

g/m

L)

Low-Dose/BW (0.14~0.30mg/kg)

High-Dose/BW (0.30~0.60mg/kg)

SCH 45581(Log-Linear Plot)

0.01

0.1

1

10

100

0 6 12 18 24 30 36

Time after Administration (hr)

SC

H 4

5581

Pla

sma

Con

c.(n

g/m

L)

Low-Dose/BW (0.14~0.30mg/kg)

High-Dose/BW (0.30~0.60mg/kg)

Page 24: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

42

2.7.2.2.5 小児患者におけるヒスタミン誘発皮内試験(I -013-50)           

〔CTD おける記載箇所:5.3.4.2.1〕

本試験(I -013-50)は,海外におけるシロップ剤の開発過程において,外国人のアレルギー性

鼻炎患者を対象として単回経口投与により実施された臨床薬理試験である.

年齢が 6 ~ 12 歳のアレルギー性鼻炎患者 10 名(男児 5 名/女児 5 名;体重 38.5kg)を対象とし

て,ロラタジン,テルフェナジン及びプラセボをそれぞれクロスオーバー法(wash-out 期間:1 週

間)により単回経口投与し,投与 1 時間後から投与 12 時間後におけるヒスタミン誘発による膨疹

及び紅斑に対する抑制効果を検討した.なお,ロラタジンはシロップ剤として 10mg を,テルフェ

ナジンは懸濁液剤として 60mg を,プラセボはシロップ剤をそれぞれ評価者盲検下にて投与した.

ヒスタミン誘発の膨疹及び紅斑に対する抑制効果の推移をそれぞれ図 2.7.2-15 及び図 2.7.2-16

に示した.

投与前との比較では,ロラタジン投与時には,膨疹に対して投与 1 時間後から 12 時間後のすべ

ての時点で,紅斑に対しては投与 2 時間後から 12 時間後の全ての時点で,それぞれ有意な抑制が

みられた.テルフェナジン投与時には,膨疹及び紅斑のいずれに対しても投与 1 時間後から 12 時

間後の全ての時点で有意な抑制が見られた.プラセボ投与時との比較では,ロラタジン投与時には

投与 2 時間後から 10 時間後及び 12 時間後の各時点で,テルフェナジン投与時には投与 2 時間後か

ら 12 時間後の全ての時点で,それぞれ膨疹及び紅斑の有意な抑制がみられた.

図 2.7.2-15 小児患者にロラタジンの 10 mg,テルフェナジンの 60 mg 又はプラセボを

クロスオーバー法により単回経口投与した際のヒスタミン誘発膨疹に対する抑制効果の推移

Wheal Area

0

0.02

0.04

0.06

0.08

0.1

0.12

0.14

0.16

0.18

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

Time after Administration (hrs)

Mea

n W

heal

Are

a (c

m2 )

LoratadineTerfenadinePlacebo

*#

*#

*#*#*#

*#*#

*#*#*#*#

*#*#*#*#*#*#*#

*#*#*#

#

#

Mean ± SE (n=10)* : p<0.01 from Placebo# : p<0.01 from BaselineTukey and Bonferroni multiple-range tests

#

Page 25: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

43

図 2.7.2-16 小児患者にロラタジンの 10 mg,テルフェナジンの 60 mg 又はプラセボを

クロスオーバー法により単回経口投与した際のヒスタミン誘発紅斑に対する抑制効果の推移

Flare Area

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

Time after Administration (hrs)

Mea

n Fl

are

Are

a (c

m2 )

LoratadineTerfenadinePlacebo

*#

*#

*#*#*#

*#*#*#*#*#

*#

*#*#*#*#*#*#*#*#

*#*#

#

Mean ± SE (n=10)* : p<0.01 from Placebo# : p<0.01 from BaselineTukey and Bonferroni multiple-range tests

#

Page 26: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

44

2.7.2.3 全試験を通しての結果の比較と解析

ロラタジンの主要な作用機序はヒスタミン H1 受容体拮抗作用であり,in vivo(経口投与)にお

ける抗ヒスタミン作用は持続的である.また,本薬は脳内への移行性が低いため,古典的な抗ヒス

タミン薬で問題となる鎮静作用が極めて少ない.なお,本薬の脳内移行性が低いことの機序として

は,ロラタジン及びその活性代謝物 SCH 34117 が,いずれも P- 糖蛋白質(P-gp;脳毛細血管内皮

細胞の血液膜側に発現するトランスポーター)の基質 1, 2) であることから,血液脳関門において脳

から血液側に薬物が排出される機構が働いているものと考えられている.

ロラタジンは,経口投与後,初回通過効果により速やかに活性代謝物 SCH 34117 へと代謝され

る.SCH 34117 の in vitro での抗ヒスタミン活性に基づく効力比は,ロラタジン(未変化体)の 7.9

倍と強く,両薬物の血漿中濃度との関係から,ヒトに経口投与したときの主たる薬効に寄与してい

る作用本体は SCH 34117 である(詳細は後述).また,SCH 34117 のヒトにおける主要な代謝経路

は,3 位水酸化体である SCH 45581 への変換であり,SCH 45581 はさらにそのグルクロン酸抱合体

へと代謝される(図 2.7.2-17 参照).

図 2.7.2-17 ロラタジンの主代謝経路

ロラタジンの日本人の成人における薬物動態試験は,血漿中薬物濃度測定法として機器分析

(GLC 及び LC-MS/MS)に限定した場合,19 年から現在までに健康成人男性を対象とした 9 試験

(錠剤及び口腔内速溶錠の申請時に提出した 5 試験と今回のドライシロップの申請で提出した JPC-

 -370-01, JPC- -370-02,  13DA214 及び JPC- -371-02 の 4 試験)(付録 2.7.2.5.3 参照)が実施さ

N

N

H

Cl

N

N

C

O

OC2H5

Cl

N

N

H

ClHO

Loratadine(Unchanged Drug)

SCH 34117(Active Metabolite)

SCH 45581(3-OH-SCH 34117)

SCH 45581 Glucuronide

Page 27: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

45

れている.これら日本人の健康成人男性における薬物動態試験で血漿中ロラタジン, SCH 34117 及

び SCH 45581 濃度が得られた被験者数の合計は,それぞれ 164, 164 及び 100 例であった.

全被験者のデータを集積した血漿中ロラタジン,SCH 34117 及び SCH 45581 濃度-時間推移につ

いて,用量を 10 mg として統合(20 及び 40 mg 投与では 10 mg に補正)し、同一の血漿中濃度ス

ケールで表したグラフを図 2.7.2-18 に示した.

未変化体であるロラタジンの血漿中濃度は,個体間のばらつきが大きく,投与後 2 ~ 3 時間まで

比較的高い値を示したのち,速やかに低下した.主要活性代謝物である SCH 34117 の血漿中濃度

は,投与後 2 ~ 3 時間以降において未変化体濃度よりも高い値で推移し,また,SCH 34117 の 3 位

水酸化体である SCH 45581 の血漿中濃度は,概ね SCH 34117 濃度の約 1/3 ~ 1/2 の濃度で推移した.

また,各薬物濃度に抗ヒスタミン活性の比(ロラタジン:SCH 34117:SCH 45581 = 1:7.9:2.5)

(錠剤申請時の提出資料)を乗じた相対比較グラフを図 2.7.2-19 に示した.

ロラタジン,SCH 34117 及び SCH 45581 の血漿中濃度に対応する抗ヒスタミン活性の相対的な関

係において,SCH 34117 が圧倒的に高い値で推移しており,薬効への寄与が最も大きい作用本体は

代謝物の SCH 34117 であることが示唆された.

図 2.7.2-18 日本人の健康成人男性における血漿中ロラタジン,SCH 34117 及び SCH45581 濃度-時間推移:個体別データの集積

Loratadine

Plasma Concentration - Time Profiles in Japanese

Male Volunnteers(n=164)

0

5

10

15

20

25

30

0 3 6 9 12 15 18 21 24

Time after Administration (hr)

Lora

tadi

ne P

lasm

a C

onc.

(ng/

mL)

Loratadine 10 mgSingle dose

SCH 34117

Plasma Concentration - Time Profiles in Japanese

Male Volunnteers(n=164)

0

5

10

15

20

25

30

0 3 6 9 12 15 18 21 24

Time after Administration (hr)

SC

H 3

4117

Pla

sma

Con

c. (n

g/m

L)

Loratadine 10 mgSingle dose

SCH 45581

Plasma Concentration - Time Profiles in Japanese

Male Volunnteers(n=100)

0

5

10

15

20

25

30

0 3 6 9 12 15 18 21 24

Time after Administration (hr)

SC

H 4

5581

Pla

sma

Con

c. (n

g/m

L)

Loratadine 10 mgSingle dose

Page 28: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

46

図 2.7.2-19 日本人の健康成人男性における血漿中ロラタジン,SCH 34117 及び SCH 45581 濃度に対応する抗ヒスタミン活性の相対比較         

〔抗ヒスタミン活性比〕                      ロラタジン:SCH 34117:SCH 45581 = 1:7.9:2.5

2.7.2.3.1 日本人小児における血漿中薬物濃度

ロラタジンの日本人の小児集団における薬物動態については,通年性アレルギー性鼻炎及びアト

ピー性皮膚炎の小児患者を対象として実施された 2 つの第 III 相試験(JPC- -370-31 及び JPC- -

371-32/ 06DA231)において,同時に,血漿中薬物濃度を測定し検討した.薬剤は,1 日 1 回 2 週

間,食後に経口投与し,最終投与後に 1 被験者から 1 時点の採血を行い,血漿中ロラタジン,SCH

34117 及び SCH 45581 濃度を測定した.これらの小児を対象とした臨床試験におけるロラタジンの

用量は,日本人と外国人の成人における薬物動態が類似していること,外国人における小児と成人

の薬物動態が類似していることから,日本人においても小児と成人の薬物動態に類似性があるとの

想定に基づき,海外で既に承認されているロラタジンのシロップ剤での小児用量を参考として,7

~ 15 歳の小児(高年齢層)では 1 回 10 mg,3 ~ 6 歳の小児(低年齢層)では 1 回 5 mg と設定し

た(2.7.3.1.1.1.1 参照).

日本人小児の血漿中薬物濃度は 190 例のデータが得られ,そのうち高年齢層は 139 例,低年齢層

は 51 例であった.小児の血漿中ロラタジン , SCH 34117 及び SCH 45581 濃度は,濃度-時間分布

図において,いずれも高年齢層と低年齢層でほぼ同じ範囲内に分布し,年齢層の違いによる相異は

認められなかった.また,性差も認められなかった(2.7.2.2.4 参照).

SCH 34117

Activity - Time Profiles in Japanese Male Volunnteers

(n=164)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

0 3 6 9 12 15 18 21 24

Time after Administration (hr)

SCH

341

17 P

lasm

a C

onc.

(ng/

mL)

x 7.9

Anti-histaminic activitySCH 34117 / Loratadine

7.9

SCH 45581

Activity - Time Profiles in Japanese Male Volunnteers

(n=100)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

0 3 6 9 12 15 18 21 24

Time after Administration (hr)

SCH

455

81 P

lasm

a C

onc.

(ng/

mL)

x 2.5

Anti-histaminic activitySCH 45581 / Loratadine

2.5

Loratadine

Activity - Time Profiles in Japanese Male Volunnteers

(n=164)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

0 3 6 9 12 15 18 21 24

Time after Administration (hr)

Lora

tadi

ne P

lasm

a C

onc.

(ng/

mL)

x 1.0

Page 29: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

47

さらに,小児患者(3 ~ 15 歳)では年齢により体重の変動幅が大きく,必然的に体重当たりの

投与量(mg/kg)の変動幅も大きい.このため,血漿中薬物濃度を高用量群(0.30 ~ 0.60 mg/kg)と

低用量群(0.14 ~ 0.30 mg/kg)で大別したところ,高用量群の血漿中薬物濃度がより高濃度域に分

布する傾向が認められた(2.7.2.2.4 参照).

2.7.2.3.2 日本人小児における血漿中薬物濃度と日本人成人における薬物動態データとの比較

本邦で有効性及び安全性が確認され,承認されている成人でのロラタジンの用法・用量は 1 回 10

mg の 1 日 1 回食後投与である.一方,日本人小児(3 ~ 15 歳)を対象として実施した第 III 相試

験における用法用量は,前述のとおり,7 歳以上の小児には 1 回 10 mg,3 歳以上7歳未満の小児

には 1 回 5 mg のそれぞれ 1 日 1 回投与である.この既に承認されている日本人成人での血漿中薬

物濃度データと今回得られた小児患者における血漿中薬物濃度を比較することにより,両投与条件

における薬物動態の類似性について検討し,小児における用法用量の妥当性を薬物の全身曝露の観

点から評価した.なお,血漿中濃度の比較における評価対象としては,未変化体であるロラタジン

と主要活性代謝物(作用本体)である SCH 34117 とした.

日本人の成人における薬物動態試験は,前述のとおり,19 年から現在までに健康成人男性(以

下,成人)を対象とした 9 試験(付録 2.7.2.5.3 参照)が実施されており,血漿中ロラタジン及び

SCH 34117 濃度が得られた被験者数の合計は 164 例であった.今回の日本人小児を対象として実施

された臨床試験(JPC- -370-31 及び JPC- -371-32/  06DA231)と上述の日本人成人における薬物

動態試験の投与条件には,投与期間(小児:2 週間の反復投与試験,成人:主に単回投与試験)と

食事条件(小児:原則として食後投与,成人:ほとんどが空腹時投与)に相異があり,また,成人

における一部の試験は高用量(20 又は 40 mg)投与の試験であった.したがって,両者の血漿中ロ

ラタジン及び SCH 34117 濃度データの比較に際して,健康成人の血漿中濃度データについては,便

宜的に,①投与量を 10 mg として補正(同一被験者での薬物動態に線形性あり)(錠剤申請時の提

出資料),②反復投与時の累積係数(R=1.32 ~ 1.33)(錠剤申請時の提出資料)による補正,③食事

の影響によるバイオアベイラビリティの上昇(ロラタジン濃度のみ補正:AUC 変化量の 1.5 倍を指

標とした)(JPC- -370-02)による補正を行った.

小児における血漿中薬物濃度分布と日本人成人における薬物動態データ(補正後)との比較プ

ロットを,血漿中ロラタジン及び SCH 34117 濃度についてそれぞれ図 2.7.2-20 及び図 2.7.2-21 に

示した.

小児における血漿中ロラタジン濃度(188 例)は,個体間のばらつきが大きかったものの,成人

における血漿中濃度-時間推移の範囲(164 例)とほぼ同じ範囲に分布した(図 2.7.2-20 参照).

小児における血漿中 SCH 34117 濃度(190 例)は,その約 85% が成人における血漿中濃度-時

間推移の範囲(164 例)とほぼ同じ範囲に分布した.残りの 15% のうち約 8% の小児では成人より

も高濃度域に分布したが,その時点における濃度は成人における濃度の約 2 倍以内の値(SCH 34117

の slow metabolizer の可能性がある 1 例(H1904)を除く)であり,成人に 20 mg を投与した際の血

Page 30: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

48

漿中薬物濃度を超えるものではないと考えられた.また,それ以外の約 7% の小児では成人よりも

低濃度域に分布した(図 2.7.2-21 参照).

図 2.7.2-20 日本人の小児患者にロラタジンの 5 mg 又は 10 mg を投与した場合と健康

成人男性に10 mgを投与した場合との血漿中ロラタジン濃度の比較プロッ

ト図

0.01

0.1

1

10

100

0 6 12 18 24 30 36Time after Administration (hr)

Lora

tadi

ne P

lasm

a C

onc.

(ng/

mL)

High-age Pediatrics (7-15 yrs) : Loratadine 10 mg/day (n=138)Low-age Pediatrics (3-6 yrs) : Loratadine 5 mg/day (n=50)

(Max) Adult Male Volunteers (n=164)(+SD) Adult Male Volunteers (n=164)(Mean) Adult Male Volunteers (n=164)(-SD) Adult Male Volunteers (n=164)(Min) Adult Male Volunteers (n=164)

Loratadine(Log-Linear Plot)

0

10

20

30

40

50

60

0 6 12 18 24 30 36

Time after Administration (hr)

Lora

tadi

ne P

lasm

a C

onc.

(ng/

mL)

Loratadine(Linear-Linear Plot)

Page 31: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

49

図 2.7.2-21 日本人の小児患者にロラタジンの 5 mg 又は 10 mg を投与した場合と健康

成人男性に10 mgを投与した場合との血漿中SCH 34117濃度の比較プロッ

ト図

0.01

0.1

1

10

100

0 6 12 18 24 30 36

Time after Administration (hr)

SC

H 3

4117

Pla

sma

Con

c. (n

g/m

L)

High-age Pediatrics (7-15 yrs) : Loratadine 10 mg/day (n=139)Low-age Pediatrics (3-6 yrs) : Loratadine 5 mg/day (n=51)

(Max) Adult Male Volunteers (n=164)(+SD) Adult Male Volunteers (n=164)(Mean) Adult Male Volunteers (n=164)(-SD) Adult Male Volunteers (n=164)(Min) Adult Male Volunteers (n=164)

SCH 34117(Log-Linear Plot)

0

2

4

6

8

10

12

14

0 6 12 18 24 30 36

Time after Administration (hr)

SC

H 3

4117

Pla

sma

Con

c. (n

g/m

L)

SCH 34117(Linear-Linear Plot)

Page 32: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

50

以上の比較成績から,日本人の小児患者にロラタジンをシロップ剤又はドライシロップとして,

7 ~ 15 歳の小児には 1 回 10mg,3 ~ 6 歳の小児には 1 回 5mg の用量で食後に 1 日 1 回反復経口投

与した場合,血漿中薬物濃度(薬物の全身曝露)は日本人の成人に 1 回 10 mg の用量で投与した際

の血漿中薬物濃度とほぼ近似した範囲の値を示すことが確認された.このことから,上記の小児に

おける用法用量で,ほぼ成人と類似した薬物の全身曝露が得られることが示唆された.

さらに,日本人小児と外国人小児の血漿中薬物濃度の比較成績から同一の用法用量における両者

の薬物動態は類似していること(後述の 2.7.2.3.3 参照),また,外国人小児と外国人成人の薬物動

態についても同様に類似していること(後述の 2.7.2.3.4 参照)が確認されている.

したがって,これらの成績は,本邦で申請するロラタジンの小児における用法・用量を「通常,

3 歳以上7歳未満の小児には 1 回 5 mg,7 歳以上の小児には 1 回 10 mg を 1 日 1 回,食後に経口投

与する.」と設定したことの妥当性を薬物動態(全身曝露)の観点から支持するものと考えられた.

小児の血漿中ロラタジン及び SCH 34117 濃度の一部において成人での濃度範囲よりも高濃度域あ

るいは低濃度域に分布した要因についての考察:

今回の小児における血漿中ロラタジン及び SCH34117 濃度について,一部の小児被験者で成人の

血漿中濃度範囲よりも高濃度域あるいは低濃度域の値を示す症例が散見された.すなわち,血漿中

ロラタジン濃度では,188 例中 9 例(約 5%)で成人の血漿中濃度範囲よりも低濃度域に分布し,血

漿中 SCH 34117 濃度では,前述のとおり,190 例中 15 例(約 8%)で成人の血漿中濃度範囲よりも

高濃度域に,190 例中 14 例(約 7%)で低濃度域に分布した.

小児でこのような幅広い濃度分布が認められる現象の要因としては,被験者の背景や投与条件が

良く管理された健康成人での薬物動態試験(成人)と,比較的広範な条件で実施された小児患者で

の第 III 相試験(小児)との違いに由来する可能性が考えられる.また,その他の要因の可能性つ

いて検索するために,これら各症例の背景因子,投与状況あるいは有効性及び安全性などにおける

特異的あるいは系統的な違いの有無について調査を試みた.各症例における投与量,投与期間,採

血時間,各分析対象の血漿中濃度を付録 2.7.2.5.4 に,背景因子(性別,年齢,体重,BMI,体表

面積),体重当たりの投与量,体表面積当たりの投与量を付録 2.7.2.5.5 に,合併症,症状スコアの

改善の程度及び有害事象の有無,内容,治験薬との因果関係を付録 2.7.2.5.6 に示した.

まず,血漿中 SCH 34117 濃度が高濃度域及び低濃度域に分布した症例については,その大部分

(それぞれ 15 例中 14 例及び 14 例中 11 例)が 10 mg 投与(高年齢層)群であり,いずれも性別,

年齢,投与期間,疾患,合併症などにおける系統的な違いは認められなかった(付録 2.7.2.5.4, 付

録 2.7.2.5.5 及び付録 2.7.2.5.6 参照).しかしながら,体重及び体表面積の平均値は,成人での濃

度範囲内に分布した症例に比べて,高濃度域に分布した症例でわずかに低値を示し,逆に低濃度域

に分布した症例でわずかに高値を示していた.それに伴い,体重当たりの投与量(mg/kg)及び体

表面積当たりの投与量(mg/m2)の平均値は,相対的にみると高濃度域及び低濃度域に分布した症

例でそれぞれわずかに高値及び低値を示していた(付録 2.7.2.5.5 参照).また,血漿中ロラタジン

Page 33: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

51

濃度が低濃度域に分布した症例については,血漿中 SCH 34117 濃度が低濃度域に分布した症例と重

複しており,上記と同様であった.

以上のことから,一部の小児において血漿中ロラタジン及び SCH 34117 濃度が成人での濃度範囲

よりも高濃度域及び低濃度域に分布した現象については,小児における体重(あるいは体表面積)

当たりの投与量の変動幅が比較的広いことが一つの要因となっているものと推察される.このこと

は,全症例を体重当たりの投与量(mg/kg)に基づいて低用量群(0.14 ~ 0.30 mg/kg)と高用量群

(0.30 ~ 0.60 mg/kg)に大別した場合,血漿中 SCH 34117 濃度において,高用量群では高濃度域に

多く分布し,逆に低用量群では低濃度域に多く分布した前述の知見(2.7.2.2.4, 図 2.7.2-13 参照)

と一致している.なお,小児における血漿中薬物濃度と年齢,体重及び体重当たりの投与量との関

係については,別途,2.7.2.3.6 に詳述した.

しかしながら,これらの高濃度域又は低濃度域に分布した症例における通年性アレルギー性鼻炎

(JPC- -370-31)の鼻症状スコアの改善の程度,アトピー性皮膚炎(JPC- -371-32/ 06DA231)の

そう痒スコアの改善の程度,有害事象の発現の有無と種類及び治験薬との因果関係について,これ

らの症例に特異的又は系統的な違いは認められなかった(付録 2.7.2.5.6 参照).この現象は,全症

例を対象として血漿中薬物濃度分布と有効性及び安全性との関連性を検討した成績においても同

様であった(後述の 2.7.2.3.5 参照).今回の血漿中濃度データは 1 被験者 1 時点採血により得られ

たものであるため,本剤の有効性及び安全性と血漿中濃度の関係について検討することには限界が

あり,明確な結論を得るためには更なる検討が必要と判断された.

体重当たりの投与量は小児と成人で相異するにもかかわらず血漿中ロラタジン及び SCH 34117 濃

度に類似性が認められることの要因についての考察:

今回の日本人の小児患者(年齢 3 ~ 15 歳)を対象とした臨床試験における高年齢層及び低年齢

層の小児の体重はそれぞれ平均 37.0 及び 18.4 kg であり,投与量がそれぞれ 10 及び 5 mg であるた

め,体重当たりの投与量はそれぞれ平均 0.297 及び 0.280 mg/kg となった.この値は,体重が 50 ~

70 kg の成人に 10 mg を投与した場合(0.143 ~ 0.200 mg/kg)の 1.4 ~ 2.1 倍に相当する.しかしな

がら,上述の小児と成人の血漿中薬物濃度データの比較から,薬物の全身曝露には両者間で大差が

ないことが確認された.このことは,一方で,小児におけるロラタジンの薬物動態プロフィールは

成人とは異なり,体重当たりの投与量(mg/kg)が等しい場合には小児における血漿中薬物濃度が

成人より低値となることを示唆している.

一般に,小児では成長,体の発育に伴って種々の生体機能が発達途上過程にあり,成人とは明ら

かに異なる生理的状態にあるため,薬物動態学的な特徴なども成長とともに変化することが考えら

れる.小児と成人の吸収,分布,代謝及び排泄の各薬物動態の過程が異なることに関しては,表

2.7.2-5 に示したとおり,発達薬理学的な観点から種々の影響因子が考えられている 3 ~ 22).例え

ば,薬物の吸収は,胃内酸度,胃内容排出時間,消化管内滞留時間,胆汁排泄量などによって影響

を受けるが,これらの因子は年齢によって変化する.薬物の分布に影響する生体因子として,脂肪

量,水分量,血清蛋白質量などがあり,新生児や小児と成人とでは異なることが知られている.代

Page 34: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

52

謝に関しては,第 I 相の酸化的薬物代謝反応及び第 II 相の抱合反応,体重当たりの肝重量など,ま

た,排泄についても糸球体や尿細管などの機能発達,体重当たりの腎重量などによる腎排泄への影

響が示唆されている.

ロラタジンの小児患者における薬物動態の検討において,単位体重当たりの投与量が成人の 1.4

~ 2.1 倍も高かったにもかかわらず,血漿中薬物濃度は小児と成人でほぼ同じ範囲の値を示したこ

とは,上記のような多種多様な生体の発達薬理学的な因子のうち,主として小児では体重あたりの

肝重量が大きいことが主要な原因であると考えられた(表 2.7.2-5 参照).すなわち,代謝の主要な

臓器である肝臓の体重当たりの割合は出生後 4 歳頃まで高く,成長に伴い徐々に低下するが,成人

とほぼ同じ割合になるのは 15 歳頃であることが知られている 7, 8).したがって,単位体重当たりの

肝薬物代謝能は,3 ~ 15 歳の小児では成人よりも高いと考えられ,単位体重当たりの投与量が小

児と成人で同じ場合には,小児における代謝が成人よりも亢進しているため,結果として血漿中薬

物濃度が低くなると考えられる.一例として,小児におけるテオフィリンの全身クリアランスは成

人の約 2 倍であることが報告されている 7, 9).

なお,薬物の小児用量を決めるに際して最も薬物動態学的に近似するのは,体表面積からの算出

方法と言われている 12).その理由は,①熱量喪失が体重に関係なく体表面積に比例すること,②心

拍出量,腎糸球体濾過量,循環血液量などの生体機能は体表面積と平衡関係にあること,③成長と

ともに大きく変化する水分分画である細胞外液量の変化が体表面積に比例すること,④薬物の主要

な代謝組織である肝臓の重量変化が体表面積に比例すること,などである.今回の日本人の小児患

者を対象とした試験の高年齢層及び低年齢層の小児の体表面積はそれぞれ平均 1.20 及び 0.740 m2

(投与量はそれぞれ 10 及び 5 mg)であり,体表面積当たりの投与量はそれぞれ平均 8.67 及び 6.86

mg/m2 であった.この値は,体重が 60 kg で身長が 170 cm の成人に 10 mg を投与した場合(5.90

mg/m2 )の 1.1 ~ 1.5 倍に相当し,体重当たりの投与量(mg/kg)での比較(1.4 ~ 2.1 倍)よりも

小児と成人との用量差が小さくなった.このことは,体表面積が肝臓の重量変化に比例する因子で

あることに起因するものと考えられた.

Page 35: 2.7.2 臨床薬理の概要...移(GLC により測定)を図 2.7.2-2 に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2-2 に示した. 血漿中ロラタジン濃度は,投与後1

ロラタジンSection 2.7 Clinical Summary

53

表 2.7.2-5 小児における薬物動態への影響因子とロラタジンの薬物動態への影響の

可能性

過程 影響因子 影響の理由 ロラタジンの薬物動態への影響の可能性

吸収

胃内酸度 新生児では胃内 pH は高く,胃酸の分泌が成人レベ

ルに達するのは 5 ~ 12 歳といわれている.

水に難溶性で弱塩基性薬物であるロラタジンは

酸性条件下で溶解し易いため,胃酸分泌の低い小

児では吸収性が低下する可能性が考えられる.

胃内容

排出時間

新生児では胃内容排出時間が長く不安定であるが,

6 ~ 8ヵ月で成人なみになる.3 ~ 15 歳の小児において,胃内容排出時間が,吸

収に影響する因子になるとは考えられない.

消化管内

滞留時間

小児の消化管での滞留時間は成人に比較して不安

定であり,その時間が短いと吸収性が低下する.

小児で吸収の変動が大きくなる可能性があるが,

成人との差を生じる決定的な因子とは考えられ

ない.

胆汁排泄量 新生児では腸管内への胆汁の排泄が少なく,脂溶性

の薬物では吸収性が低下する.

脂溶性のロラタジンは,新生児では吸収が低下す

る可能性があるが,3 ~ 15 歳の小児における影響

はほとんどないと考えられる.

分布

脂肪組成 体脂肪量は脂溶性薬物の分布容積に影響する.体脂

肪率は,新生児では体重の 15% を占め,年齢(加

齢)とともに増加し,成人では 15%(25 歳)~ 30%(75 歳)といわれている.

ロラタジン及び SCH 34117 は脂溶性薬物であり,

分布容積は体脂肪率の影響を受ける可能性があ

る.すなわち,体脂肪の少ない小児において分布

容積が小さくなり,血漿中薬物濃度が上昇する可

能性がある.しかし,3 ~ 15 歳の小児と成人の体

脂肪率の差は決して大きくなく,また,実際には,

本薬の血漿中薬物濃度は成人に比べて低下する

方向にある.

水分組成

細胞外液

体水分量は水溶性薬物の分布容積に影響する.体水

分率は,新生児では体重の 75% に相当するが,年齢

とともに低下し,成人では 50% ~ 60% といわれて

いる.また,細胞外液は,新生児の 44% より 1 歳で

は 26% と減少し,それ以後ほぼ一定の値となる.

ロラタジン及びSCH 34117は水溶性薬物ではない

ため,体水分量及び細胞外液量が薬物の分布容積

に与える影響は少ないと考えられる.

血漿蛋白量

蛋白結合率血漿総蛋白,血漿アルブミン及びα1 酸性糖蛋白は,

成人と比較して,新生児では減少しており,幼児で

は減少あるいは等しく,小児では成人と等しい.

3 ~ 15 歳の小児における血漿蛋白結合率は,成人

と同様であると推定され,本薬の小児の分布容積

に大きく影響する因子とは考えられない.

代謝

第 I 相薬物代謝

酵素活性

酸化的薬物代謝酵素であるチトクロム P450(CYP)の発現の出生後の変化については,未だ不明瞭な部

分は多いが,概して,新生児期の酵素活性は低く,

明らかに成人と異なる.その後,成長とともに酵素

活性が上昇し,発達の程度は分子種によって異なる

が,CYP3A4 については乳幼児期にほぼ成人と同様

の活性となる.

ロラタジンからSCH 34117への代謝には主として

CYP3A4 が介在しているが,この酵素活性が 3 ~

15 歳の小児において成人と大きく異なる可能性

は低いと考えられる.なお,SCH 34117 から SCH45581 への酸化的代謝に関与している酵素は明ら

かとなっていない.

第 II 相薬物代謝

酵素活性

新生児期ではグルクロン酸抱合よりも硫酸抱合活

性が優位にあるが,成長とともにグルクロン酸抱合

能が上昇し,ほぼ 3ヵ月で成人なみになる.

3~15歳の小児におけるグルクロン酸抱合能は成

人なみであると推定され,小児の SCH 45581 の抱

合化に大きく影響する因子とは考えられない.

体重当たり

の肝重量

代謝の主要な臓器である肝臓の体重に占める割合

は出生後 4 歳頃まで高く,成長に伴い徐々に低下す

るが,成人とほぼ同じ割合になるのは 15 歳頃であ

る.

単位体重当たりの肝薬物代謝能は,3 ~ 15 歳の小

児では成人よりも高いと推定される.すなわち,

単位体重当たりの投与量が同じ場合,小児におけ

る代謝は成人よりも亢進しているため,血漿中薬物濃度は低下する.一例として,小児のテオフィ

リンの全身クリアランスは成人の約 2 倍である.

排泄

腎排泄機能 糸球体や尿細管の形態的,機能的発達は腎臓を主排

泄経路とする薬物の体内動態に影響する,糸球体濾

過は,新生児では成人の 1/3 と低く,5ヵ月~ 2 歳で

ほぼ成人のレベルに達する.尿細管分泌は,7ヵ月

頃に成人に近づくといわれている.また,新生児で

は代謝が未熟なため腎排泄が主としてクリアラン

スに寄与している.

3 ~ 15 歳の小児における腎排泄機能は,成人と同

様であると推定され,小児における薬物動態の違

いとして大きく影響する因子とは考えられない.

また,ロラタジン及び SCH 34117 は腎排泄型薬物

ではない.

体重当たり

の腎重量

排泄の主要な臓器である腎臓の体重に占める割合

は出生後 4 歳頃まで高く,成長に伴い徐々に低下し,

7 ~ 8 歳頃より成人に近くなる.

腎排泄機能に違いがないと仮定した場合,低年齢

層の小児における単位体重当たりの腎臓の総排

泄能は成人よりも高いと推定され,単位体重当た

りの投与量が同じ場合,小児の血漿中薬物濃度が

低くなる可能性がある.しかしながら,ロラタジ

ン及び SCH 34117 は腎排泄型薬物ではないので,

明らかな影響因子とは考えられない.