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- 1 - 平成25年分の農業所得計算上の留意事項 平成26年1月 JA新 潟 中 央 会 この資料の仕訳例の科目のあとの( )は、消費税の取扱いを示す。 課:課税 不:不課税 非:非課税 ?:個別内容により判断 1.米の仮渡金の入金、共計における精算払いの処理 (1) 米の仮渡金の入金 <仕訳例①> 仮渡金の入金【9~10月頃入金】 仮渡金が口座に入金された。 () 預金 ××× () 売上高() ××× (2) 共計における精算払い 共計システムの精算書様式では控除明細も記載されているので、収入金額、必要経 費両建て(総額主義の原則)で計上する。 <仕訳例②> 精算払いの入金 精算払い金が口座に入金された。 () 預金 荷造運賃手数料() 利子割引料() 雑費() ××× ××× ××× ××× () 雑収入() 雑収入() ××× △××× 計算方法 過年産本精算額(精算書で確認) ×××円 仮渡金償還額(精算書で確認) △×××円 荷造運賃手数料(精算書で確認) ×××円 利子割引料(精算書で確認) ×××円 費(精算書で確認) ×××円 口座への入金額(通帳で確認) ×××円 雑収入に計上 () 必要経費に計上 () ()()

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平成25年分の農業所得計算上の留意事項

平 成 2 6 年 1月

JA新 潟 中 央 会

この資料の仕訳例の科目のあとの( )は、消費税の取扱いを示す。

課:課税 不:不課税 非:非課税 ?:個別内容により判断

1.米の仮渡金の入金、共計における精算払いの処理

(1) 米の仮渡金の入金

<仕訳例①> 仮渡金の入金【9~10月頃入金】

仮渡金が口座に入金された。

(借) 預金 ××× / (貸) 売上高(課) ×××

(2) 共計における精算払い

共計システムの精算書様式では控除明細も記載されているので、収入金額、必要経

費両建て(総額主義の原則)で計上する。

<仕訳例②> 精算払いの入金

精算払い金が口座に入金された。

(借) 預金

荷造運賃手数料(?)

利子割引料(非)

雑費(?)

×××

×××

×××

×××

/ (貸) 雑収入(課)

雑収入(課)

×××

△×××

《 計算方法 》

過年産本精算額(精算書で確認) ×××円

仮渡金償還額(精算書で確認) △×××円

荷造運賃手数料(精算書で確認) ×××円

利子割引料(精算書で確認) ×××円

雑 費(精算書で確認) ×××円

口座への入金額(通帳で確認) ×××円

⇒ 雑収入に計上 (A)

⇒ 必要経費に計上 (B)

⇒ (A)-(B)

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2.生産調整に係る交付金の取扱い

(1) 生産調整に係る交付金の入金

農業者が国から受け取る米の生産調整の交付金は、平成18年分まで税制上の特例

措置により「一時所得」として収入金額とされてきたが、平成19年分より、原則ど

おり農業所得の収入金額に算入することとなった。

<仕訳例③> 生産調整に係る交付金の交付

生産調整に係る交付金が口座に入金された。

(借) 預金 ××× / (貸) 雑収入(不) ×××

【25年中に交付された(又は交付予定の)生産調整等に係る一般的な交付金】

交付金の種類等 平成25年(月) 備

考 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

農業者戸別所得補償制度

畑作物の所得補償交付金(営農継続支払)

畑作物の所得補償交付金(数量払) ○ ○ ○

水田活用の所得補償交付金(戦略作物助成) ○ ○ ○

水田活用の所得補償交付金(二毛作助成) ○ ○ ○

水田活用の所得補償交付金(耕畜連携助成) ○

水田活用の所得補償交付金(産地資金) ○

米の所得補償交付金 ○

米価変動補填交付金 (24年産は交付なし) ※3

規模拡大加算 ○ ○

再生利用加算 ○

経営所得安定対策

畑作物の直接支払交付金(営農継続支払) ● ●

畑作物の直接支払交付金(数量払) ● ※1

水田活用の直接支払交付金(戦略作物助成) ●

水田活用の直接支払交付金(二毛作助成) ●

水田活用の直接支払交付金(耕畜連携助成) ※2

水田活用の直接支払交付金(産地資金) ※2

米の直接支払交付金 ●

米価変動補填交付金 ※3

再生利用交付金 ※2

水田・畑作経営所得安定対策 (収入減少影響緩和交付金)

(24年産は交付なし) ※4

(注1) 表中の「○」は24年度対策、「●」は25年度対策による交付金。

(注2) なお、25年度対策については、次のような交付予定とされている。ただし、25年度対策では、

販売の確認がとれない限り交付されないため、交付時期が遅れる可能性がある。

※1 …… 麦、なたねが11月交付予定。大豆、そば、てん菜、でん粉原料用ばれいしょ1~3

月交付予定。

※2 …… 翌年3月に交付予定。

※3 …… 翌年5~6月に交付予定。

※4 …… 翌年6月頃交付予定。

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0<交付金にかかる一般的な注意点>

a.交付決定通知を受けた時期で収入の計上を行う。

b.法人等で「雑収入」以外の勘定科目を使用する場合は、原則、次による。

● 対象作物の販売数量・品質に応じて交付 → 「価格補填収入(営業収益)」

例:畑作物の所得補償交付金(数量払)

● 作付面積当たりで交付される → 「作付助成収入(営業外収益)」

例:米の所得補償交付金、水田活用の所得補償交付金(戦略作物助成)

● 価格下落分の補填として交付 → 「経営安定補填収入(特別利益)」

例:米価変動補填交付金

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(2) とも補償(地域独自制度)

平成15年度をもって全国とも補償はなくなったが、地域独自でとも補償を実施し

た場合は次による。

① 資金の拠出(水稲作付面積割×××円/10a など)

生産者からの資金の拠出金の支払いは、必要経費(雑費)に算入する。

<仕訳例④> 資金の拠出

地域とも補償資金を拠出した(口座振替)。

(借) 雑費(不) ××× / (貸) 預金 ×××

② とも補償金の入金

とも補償基金から生産者への補償金の支払いは、収入金額(雑収入)に算入する。

年内に実際の支払がなくても、発生主義の原則から通知を受けた場合や補償金が計

算できる場合は未収金計上する。

<仕訳例⑤> とも補償金の受取り

とも補償金×××円の支払通知を受けた。なお、支払いは翌年となる。

(借) 未収金 ××× / (貸) 雑収入(不) ×××

(翌年)上記通知のとも補償金が口座に入金された。

(借) 預金 ××× / (貸) 未収金 ×××

3.水田・畑作経営所得安定対策の取扱い

水田・畑作経営安定対策は、従前の生産条件不利補正対策(旧ゲタ対策)が「畑作物

の所得補償交付金→畑作物の直接支払交付金」に移行したが、収入減少影響緩和対策(ナ

ラシ対策)は、制度の基本的な枠組みを維持しつつ存続している。

(1) 収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)

① 積立金の納付

ナラシ対策の生産者積立金は、拠出した時点では必要経費とならないため、「預

け金」等の資産科目で処理する。

<仕訳例⑥> 積立金の納付【7月末までに納付】

ナラシ対策の積立金が口座から引き落とされた。

(借) 預け金 等 ××× / (貸) 預金 ×××

② 交付金の交付

交付金は、支払われた年(交付決定通知がなされた年)の雑収入に算入する。

<仕訳例⑦> 交付金の入金【6月下旬に入金】

ナラシ対策の交付金が口座に入金された。

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(借) 預金 ××× / (貸) 雑収入(不) ×××

※ 通帳には、摘要として「歳出金」、通帳備考として「ホクリクノウセイキョク」と印字される。

③ 積立金の返納(積立金の額の確定に伴う返納・交付金の交付に伴う返納)

積立金の返納であり、「預け金」等の資産科目の振替となり、課税は生じない。

<仕訳例⑧> 積立金の返納【6月下旬に入金】

ナラシ対策の積立金が返納(口座に入金)された。

(借) 預金 ××× / (貸) 預け金 等 ×××

※ 通帳には、摘要として「振込」、通帳備考として「コウフヘンノウキン」と印字される。

※ なお、「積立金の額の確定に伴う返納」と「交付金の交付に伴う返納」は、合算さ

れて入金されている。

(2) 事務委託費の出金

対策加入申請等の事務をJAに委託したことに伴い、事務委託費を支払ったときは、

雑費として必要経費に算入する。

<仕訳例⑨> 事務委託費の出金

(事務をJAに委託したため)事務委託費が口座から引き落とされた。

(借) 雑費(課) ××× / (貸) 預金 ×××

4.営農資金に係る利子助成

営農資金に係る利子助成事業の補給金は、受領した年の収入金額に算入する。

<仕訳例⑩> 利子助成の入金

補給金が口座に入金された。

(借) 預金 ××× / (貸) 雑収入(不) ×××

5.JAによる供給割戻処理の取扱い

担い手農家等に対して実施される奨励金等の支払い(明確な基準に基づく供給割戻と

しての処理)は、農家にとって「仕入割戻」に該当するので、割戻金は雑収入ではなく、

必要経費の減額処理とする。なお、その割戻金が実際の供給に係る期間とズレが生じた

場合であっても、事業を継続していることを前提に、割戻金の入金日に処理しても差し

支えない。

<仕訳例⑪ JA独自支援策による資材価格等支援金の入金

支援金(奨励金)が口座に入金された。

(借) 預金 ××× / (貸) 肥料費(課) 等 ×××

※ 消費税の取扱いは、「仕入に係る対価の返還」。

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【参考】仕入控除の節税効果

① その事業年度の仕入総額が減少するとともに、仕入単価も減少して期末棚卸

高が減少し、その分課税対象になる利益が減少する。

② 仕入割戻を仕入控除ではなく「雑収入」処理すると、計上時に課税される。

③ 消費税の簡易課税方式を選択した場合、納付する消費税額は課税売上高で決

まることから、雑収入処理すると、この雑収入も課税売上高となり、納付する

消費税額も増加する。

6.養豚経営安定対策事業における生産者負担金

生産者負担金については、平成21年度までは国税庁長官の指定を受けることにより、

その支払時に必要経費の額に計上することができた。しかし、22年度は様々な理由に

より、生産者負担金はその支払時ではなく、補てん金の原資となった時において必要経

費の額に計上することとされた。

23年度、24年度の扱いについては、損金算入の特例を受けるための手続きが継続

中であり、その結論が出ていないことから、とりあえず「仮払金」として処理しておく

こととし、1月以降に結論が出た。

25年度についても23年度、24年度と同様に現段階で結論が出ていないことから、

とりあえず「仮払金」として処理しておくこととする。

なお、同事業に参加している農家等に対して、独立行政法人農畜産業振興機構から連

絡がいく予定である。

7.その他留意事項

(1) ここ数年の資料に記載されていた対策等で既に終了しているもの

① 米需給調整・需要拡大基金の拠出金

② 集荷円滑化対策の拠出金等

③ 生産調整に係る一般的な交付金

○ 水田フル活用推進交付金 ○ 産地確立交付金

○ 産地づくり交付金 ○ 需要即応型交付金

○ 水田等有効活用交付金

○ 自給力向上戦略的作物等緊急需要拡大事業補助金(23年3月交付で終了)

④ 水田経営所得安定対策(生産条件不利補正対策<ゲタ対策>)

⑤ 燃油・肥料価格高騰緊急対策(国補)の交付金

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(2) 農業経営基盤強化準備金の活用

① 農業経営基盤強化準備金制度の概要

a.青色申告を行っている認定農業者(個人・農業生産法人)等が、後掲する②の

交付金等を農業経営改善計画などに従い、農業経営基盤強化準備金として積み立

てた場合、この積立額を個人は必要経費に法人は損金に算入できる。

b.さらに、農業経営改善計画などに従い、5年以内に積み立てた準備金を取り崩

したり、受領した交付金などをそのまま用いて、農用地、新品の農業用の構築物

と農業用設備(機械・装置)等の固定資産を取得した場合、圧縮記帳できる。

② 対象となる交付金(平成 25年度の対象となる交付金)

○経営所得安定対策の交付金

・畑作物の直接支払交付金

・水田活用の直接支払交付金

・米の直接支払交付金

・米価変動補填交付金

・水田・畑作経営所得安定対策(収入減少影響緩和対策交付金)

・再生利用交付金

○環境保全型農業直接支援対策の交付金

・環境保全型農業直接支援対策交付金

(地方公共団体がこれと一体的に交付するものを含む。)

○担い手への農地集積推進事業の交付金

・規模拡大交付金

③ 対象となる法人から特定農業団体およびこれに準ずる組織を除外しており、集落

営農など地域で受領した場合は対象となっていないことに留意が必要。

④ この準備金は、積み立てた翌年度から5年を経過した場合は、順次、収入金額(益

金)に算入され、課税対象となる。つまり、平成19年に積み立てた準備金で平成

25年度までに使用されなかった金額は収入金額(益金)に算入され、課税対象と

なるので留意が必要。

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(3) 農業所得の計算上間違いやすい項目(個人の場合)

<収入に関すること>

① 金銭以外による支払を受けた場合 …… その物の時価により計上。

② 家事消費した場合の価額 …… 通常他に販売する価額により計上。なお、年末

一括して記帳することでも可能。

③ 他人に贈与した場合の価額 …… その物の時価により計上。著しく低い価額(7

割相当未満)の場合、その差額も計上する必要あり。

④ 農業用少額減価償却資産(取得価額10万円未満)の譲渡収入 …… 原則、農

業所得とする。なお、農業の用に供する土地、建物、器具備品、果樹等の減価償却

資産の譲渡については、譲渡所得となる。

⑤ 農作業の報酬 …… 原則、農業所得とする(農業経営の一環であれば)。

⑥ 農事組合法人から支払いを受ける従事分量配当 …… 次の取り扱いとなる。

給与と従事分量配当を支給 配当所得として取り扱われる。

従事分量配当のみ支給 農業所得として取り扱われる。

【参考】農事組合法人における剰余金の配当

⑦ 加害者からの賠償金(農産物出荷中の交通事故) …… 次の取り扱いとなる。

傷の治療費 非課税(医療費控除を受ける場合、医療費から控除)

入院中・加療中の所得補償 非課税

負傷に対する慰謝料 非課税

トラックの修理代 農業所得の収入金額に計上(修理代の必要経費算入

の見合い)

積み荷の損害賠償相当額 農業所得の収入金額に計上

(注) 親戚・知人からの見舞金は、非課税となる。

⑧ 農機具の貸付による謝礼 …… 農業所得の収入金額に計上(事業として行われ

ていない場合は、原則、雑所得だが、事業<農業経営>の遂行に付随して貸し付け

られているため)。

<必要経費に関すること>

① 債務の確定していない費用 …… 原則、必要経費に算入できない。

② 自家労賃(自己の労力に対する対価) …… 必要経費に算入できない(収入・

必要経費が同一人のため、プラス・マイナス0となり無意味)。

a.事業の利用分量に応じた支払い

b.事業に従事した程度に応じた支払い(従事分量配当)

c.出資に応じた支払い

剰余金の配当

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③ 必要経費とならない税金 …… 所得税、所得税にかかる延滞税・利子税(農業

所得の確定申告の延納にかかる部分は除く)、道府県民税・市町村民税、道府県民

税・市町村民税の延滞金、国税の過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税・

重加算税、地方税の過少申告加算金・無申告加算金・重加算金

④ JAの賦課金 …… 必要経費となる。農業を営む人が加入している各種団体に

対して支払う会費は、その団体の活動が農業と相当程度の関係があると認められる

場合、必要経費に算入できる。

⑤ 旅費・宿泊費、交際費、接待費 …… 農業の遂行上必要な支出であれば、必要

経費。

⑥ 冠婚葬祭費用 …… 支出の相手方、目的等からみて、農業遂行上もっぱら必要

なのかどうかで判断。例えば、雇人、得意先従業員等への冠婚葬祭費用は必要経費

となるが、隣近所・友人等へのものは家事費として支出すべきもの。

⑦ 建物(住まい・農業兼用)の火災共済掛金 …… 農業の用に供されている部分

の保険料が必要経費となる。

⑧ 農業倉庫に対する10年満期の火災保険掛金(満期返戻金付き) …… 払込保

険料のうち、満期返戻金の支払いに充てられる積立保険料の部分(資産計上)を除

いたものが必要経費。

⑨ 少額な改造費用 …… 20万円未満の改造費用は必要経費とすることができる

(修理・改良等が概ね3年以内の周期の場合も同様)。

⑩ 資本的支出か修繕費か区分が困難な場合 …… 支出した費用が60万円に満た

ない場合、当該資産の前年12月31日における取得価額の概ね 10%相当額以下で

ある場合、全額を修繕費とすることが可能。

【参考】資本的支出とは

有形固定資産に対する支出のうち、その資産の使用可能期間を延長させたり、ま

たはその資産の価値を増加させたりするために支出した金額のこと。

⑪ 減価償却の認められない資産 …… 価値の減少しない資産(土地、土地の上に

損する権利、電話加入権、書画・骨董等)、現に業務の用に供されていない資産(建

設中の固定資産、育成中の牛馬・果樹、工具、機具、備品等)、棚卸資産(販売目

的で保有・飼育する牛馬・果樹)。

なお、少額な減価償却資産(10万円未満)は、取得した年の必要経費となる。

⑫ 事業用固定資産の盗難 …… 盗難にあった年の必要経費となる。必要経費の額

は、盗難時の未償却残高(盗難月までの償却費を控除)となる。

⑬ 農産物等の代金が回収不能となった場合 …… 貸倒損失として必要経費となる。

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⑭ 親族に支払った地代・家賃 …… 生計を一にする親族に支払う対価は、必要経

費に算入できない。

(注) 「生計を一にする」とは、必ずしも同一の家屋に起居していることを必要と

はしないが、明らかに互いが独立した生活を営んでいると認められる場合を除

いて、「生計を一にする」ものとして取り扱われる。

<農業に関連する所得で農業所得にならない所得>

① 台風被害を被った農業用建物の建物共済の共済金 …… 資産の損害に基因した

支払を受けるものについては、原則、所得税を課さない。なお、資産の損害につい

て農業所得の必要経費または雑損控除の対象としようとするときは、その損害額か

ら共済金を差し引いた金額によって必要経費や雑損控除の金額を計算する。

② 生命共済契約に基づく一時金 …… 掛金を誰が負担したかによって課税対象が

異なる。

【参考】生命保険契約等に基づく一時金の課税関係

契 約 者

(掛金支払者) 被保険者 受取人 原 因 課税関係

A B A 満 期 一時所得

A B A以外 満 期 贈 与 税

A B A 死 亡 一時所得

A B A以外 死 亡 贈 与 税

A A B 死 亡 相 続 税

③ 農機具更新共済から受ける共済金 …… 満期共済金は一時所得、事故共済金は

その帳簿価額を超える金額は非課税(先ずは資産損失額を補てんする金額に充当。

残額があればその部分が非課税)となる。

④ 大農具の譲渡による所得 …… 原則、譲渡所得になる。

⑤ 所有農地の小作料収入 …… 農地等不動産の貸付による所得は、不動産所得に

なる。

⑥ 小作地の返還に伴う地主から支払われる離作料 …… 譲渡所得になる。

⑦ 国・県・市町村の委員報酬 …… 原則、給与所得となる。ただし、次の場合は

課税しなくともよいとされている。

a.その委員会を設置している国等から、委員報酬以外の給与等の支給がないこと。

b.委員として、旅費・その他費用弁償を受けていないこと。

c.年間の報酬額が1万円以下であること(委員会毎に判定)。

⑧ 農業者老齢年金 …… 雑所得となる(国民年金等の他の公的年金と同様)。

⑨ 裏山に自生するきのこの販売代金 …… 原則、雑所得になる。裏山に自生する

きのこを販売することは事業には該当しないが、きのこを採取して販売することが、

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その規模、収益の状況、その他の事情から総合的にみて「事業」に該当すると認め

られる場合は事業所得になる。なお、継続性や対価性からみて一時所得に該当する

可能性もある。10万円程度であれば雑所得にするのが妥当。

⑩ 市町村の土地収用にかかる交付金 …… 原則、収入に計上しない。交付目的に

従って資産等を移転した場合、その費用に充てた金額は収入に計上しない。なお、

交付金に残額がある場合、一時所得の収入金額となる。

⑪ 自宅庭にある檜の売却代金 …… 庭園用立木の譲渡は、譲渡所得になる。なお、

一般的に立木の譲渡は山林所得となるが、庭園用立木のような観賞用のものは「山

林」に該当しない。

(4) 集落営農組織の税務上の取り扱い(法人化していない場合)

<概要>

集落営農組織は、税制面から見ると「任意組合」と「人格なき社団」に区分され、税

制面の取り扱いも異なる。なお、任意組合として認められるためには、次のことに留意

する必要がある。

① 利益を構成員(組合員)に全て配分し、構成員による適正な税務申告。

② 構成員による共同事業性を確保した規約・運営ルールの整備・明確化。

<任意組合に対する税務の概要>

① 所得税

a.生産組織の損益は、その持分割合に応じた額が構成員の損益となる。

b.構成員の所得について、この損益の分配のほか、組合事業に従事したことによ

る日当・給料は生計を一にする家族分を含めすべて農業所得となる(各構成員は、

これらの額を加えて農業所得を計算し申告しなければならない。給与の源泉徴収

事務は不要)。

c.任意組合は原則として暦年で決算し、構成員に対し損益の分配をしなければな

らない(暦年でない会計期間を定めているときはそれによる)。

d.固定資産取得のための補助金は課税されず、その金額だけ固定資産を減額する。

② 消費税

a.任意組合の課税売上高、課税仕入高は、持分割合に応じた計算で構成員個人に

帰属する。

b.基準期間(前々年)における構成員の課税売上(任意組合分を含めた合算額)

が 1,000 万円超となれば課税事業者となる。

c.この場合、簡易課税制度選択者は課税売上金額(事業区分別)の分配計算のみ

でよいが、原則課税業者は課税売上と課税仕入全てについての分配計算をしなけ

ればならない。

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<任意組合の構成員への損益等の配分>

① 損益計算の全体的な流れ

<複式簿記>

※ PC会計など

<単式簿記>

※ 現金・預金・出納帳中心

↓ ↓

0貸借対照表、損益計算書 0 0修正収支計算書 0

↓ ↓

損益等の構成員への配分

構成員個人の申告

② 構成員の所得

【組織から得るもの】 【組織と無関係のもの】

労賃等

(賃金手当・出役労賃、役員報酬、

作業委託料、地代賃借料)

無関係な所得

(集落組織と関係ない農業所得等)

配分利益

※ 出役労賃には家族分を含む

③ 消費税の申告(イメージ)

組織から配分された

課 税 売 上 高

≦ 1,000 万円

免税事業者

> 1,000 万円

課税事業者

組織と無関係 な

課 税 売 上 高

※ 課税事業者の場合、個人と組織から配分された課税売上・課税仕入の合計によ

り申告する。

以 上

全ての取引 現金・預金の取引