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花の縁 010223 1 1 23)ミズバショウとザゼンソウ=水芭蕉と座禅草 ミズバショウもザゼンソウもサトイモ科の多年草である。春先、ともに『仏炎苞』 (ブツエンホウ)に包まれた花をつけ、肉厚の大きな葉を持ち、特に湿地帯を好み、 よく似た植物といえる。ここではこの両種をまとめて見て行くことにしよう。 ミズバショウは寒地の湿原に群生することが多く本州、北海道、千島、サハリン、 ウスリーなどに分布する。地下の根茎は太く、根生葉は楕円形で大きく、成熟すると 3040cm、長さが 1m を超えることもある。花は前述のごとく白い仏炎状の苞に包 まれ、葉の萌芽と相前後して 10 20cm の花柄の先に、円柱状の 『肉穂花序』 を出して、 黄色の両性花を密に着ける。和名の由来は水辺に生え、葉の形がバショウに似て いることによる。このため別称としても葉の大きいことから発生したものが多く、 オオバとかヤマタバコ、ウシノベラなどとも呼ばれ、アイヌ人は幅の広い草という 意味で、パラキナと呼んでいた。学名は『Lysichitun camtschatcense』で、属名は 「分離した」という形容詞と「花被」との合成語で、種小辞はカムチャツカのという意味 である。イギリスでの呼称は『skunk cabbage 』、つまりスカンクのキャベツで、この 植物には悪臭があるためである。また中国では『観音蓮』である。 ミズバショウは特に尾瀬ガ原の群落が有名であるために、とかく高山植物と思われ がちだが、東北地方や北海道では平地の湿原にごく普通に生えていることが多い。 また花期も尾瀬ケ原や日光の戦場ヶ原などでは 5 月下旬から 6 月にかけてであるが、 東北地方や北海道などではソメイヨシノの満開の季節と一致している。 一方ザゼンソウは本州、中部より北の山地や湿地に生え、朝鮮半島やサハリン、 ウスリー、アムールなどにも分布し、そのエリアはミズバショウとオーバーラップ している。ザゼンソウの根茎も太く、長い柄を持った葉は根生し、葉身は円みのある 心臓形で大きく、径 40cm に達する。楕円形の 肉穂花序 は長さが 2cm ぐらいで、両性花 が密集し、船形の厚い仏炎苞に包まれている。仏炎苞の直径は 13cm ほど、長さは 20cm ほどである。また仏炎苞の内部は呼吸熱によって、常に外部よりも高温になる 仕組みになっており、おそらく種子を育てるのに都合よくなっているのだろう。和名 の由来は花の形を達磨が座禅を組んでいる姿に見立てたものである。別称として ダルマソウ、ウシノミミ、ベコノシタ、イヌノシタなどで、動物の舌や耳にたとえて いるものが多い。またアイヌ人はシケルビキナとかカムイキナと呼んでおり、それ ぞれキハダ草、熊の草と言う意味である。学名は『Symplocarpus foetidus 』で、属名 は果実が結合したという意味で、種小辞は肝臓形の葉という意味である。イギリス での呼称はミズバショウと同様『skunk cabbage』だが、この植物は全草に悪臭が あるためで、中国では『地湧金蓮』と呼ばれている。 ザゼンソウは根茎や若芽を豚の飼料として用いるが、その他にはあまり役には 立たず、むしろ北国に春の訪れを告げる自然の恵みとして親しまれている。

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花の縁 01-02-23

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23)ミズバショウとザゼンソウ=水芭蕉と座禅草 ミズバショウもザゼンソウもサトイモ科の多年草である。春先、ともに『仏炎苞』

(ブツエンホウ)に包まれた花をつけ、肉厚の大きな葉を持ち、特に湿地帯を好み、

よく似た植物といえる。ここではこの両種をまとめて見て行くことにしよう。

ミズバショウは寒地の湿原に群生することが多く本州、北海道、千島、サハリン、

ウスリーなどに分布する。地下の根茎は太く、根生葉は楕円形で大きく、成熟すると

幅30~40cm、長さが1mを超えることもある。花は前述のごとく白い仏炎状の苞に包

まれ、葉の萌芽と相前後して10~20cmの花柄の先に、円柱状の『肉穂花序』を出して、

黄色の両性花を密に着ける。和名の由来は水辺に生え、葉の形がバショウに似て

いることによる。このため別称としても葉の大きいことから発生したものが多く、

オオバとかヤマタバコ、ウシノベラなどとも呼ばれ、アイヌ人は幅の広い草という

意味で、パラキナと呼んでいた。学名は『Lysichitun camtschatcense』で、属名は

「分離した」という形容詞と「花被」との合成語で、種小辞はカムチャツカのという意味

である。イギリスでの呼称は『skunk cabbage』、つまりスカンクのキャベツで、この

植物には悪臭があるためである。また中国では『観音蓮』である。

ミズバショウは特に尾瀬ガ原の群落が有名であるために、とかく高山植物と思われ

がちだが、東北地方や北海道では平地の湿原にごく普通に生えていることが多い。

また花期も尾瀬ケ原や日光の戦場ヶ原などでは 5月下旬から 6月にかけてであるが、

東北地方や北海道などではソメイヨシノの満開の季節と一致している。

一方ザゼンソウは本州、中部より北の山地や湿地に生え、朝鮮半島やサハリン、

ウスリー、アムールなどにも分布し、そのエリアはミズバショウとオーバーラップ

している。ザゼンソウの根茎も太く、長い柄を持った葉は根生し、葉身は円みのある

心臓形で大きく、径 40cm に達する。楕円形の肉穂花序は長さが 2cm ぐらいで、両性花

が密集し、船形の厚い仏炎苞に包まれている。仏炎苞の直径は 13cm ほど、長さは

20cm ほどである。また仏炎苞の内部は呼吸熱によって、常に外部よりも高温になる

仕組みになっており、おそらく種子を育てるのに都合よくなっているのだろう。和名

の由来は花の形を達磨が座禅を組んでいる姿に見立てたものである。別称として

ダルマソウ、ウシノミミ、ベコノシタ、イヌノシタなどで、動物の舌や耳にたとえて

いるものが多い。またアイヌ人はシケルビキナとかカムイキナと呼んでおり、それ

ぞれキハダ草、熊の草と言う意味である。学名は『Symplocarpus foetidus』で、属名

は果実が結合したという意味で、種小辞は肝臓形の葉という意味である。イギリス

での呼称はミズバショウと同様『skunk cabbage』だが、この植物は全草に悪臭が

あるためで、中国では『地湧金蓮』と呼ばれている。

ザゼンソウは根茎や若芽を豚の飼料として用いるが、その他にはあまり役には

立たず、むしろ北国に春の訪れを告げる自然の恵みとして親しまれている。

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ミズバショウの花は『肉穂花序』の代表例(長野市戸隠高原)。

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ミズバショウといえば尾瀬が定番だが、東北地方では平地の湿地にも生える(長野市戸隠高原)。

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ザゼンソウの花と、花を取り囲む仏炎苞(栽培品)。

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近縁種の海芋(カイウ)、学名は『Zantedeschia aethiopica』である。

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白のカイウは結婚式で花嫁が手に持つ花の一つであったが、最近では他の花に変ってきている

ようだ。結婚式も多様化の時代で、花嫁の個性に合った花が選ばれているのだろう。

カイウはカラーと呼ばれることが多い。 目次に戻る