2.1.4「ピンポイント短期漁場探索のための HSI モデ...

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1 2.1.4「ピンポイント短期漁場探索のための HSI モデルの開発②」 担当者:齊藤誠一 1 、桜井泰憲 1 John Bower 1 Robinson Mugo 2 、佐々木裕子 2 実施機関 : 1 北海道大学大学院水産科学研究院 2 北海道大学大学院水産科学院 a.要約 アカイカの HSI(好適生息域)モデルを開発するために統計モデルの一般化加法モデル Generalized additive model (GAM)と機械学習モデルの生態的地位因子分析モデル Ecological NicheFactor Analysis (ENFA) model を検討した。海洋環境データとしての衛星データとアカイカ漁獲データを用い て、どのように海洋環境がアカイカ漁場形成に影響を与えているか 1999 年から 2006 年まで 8 年間について解析した。その結果、漁場形成の季節による異なる3つの GAM モデルが 提案でき、GAM モデルと比較して ENFA モデルは渦の存在の影響をより表現できる可能性 が示唆された。 b.研究目的 衛星データと統計モデルを応用した最近のいくつかの研究はアカイカの生息域環境の特徴を解析で きることを示している (Cao et al. 2009; Fan et al. 2009; Tian et al. 2009; Chen et al. 2010; Chen et al. 2011)しかし、統計モデルの精度を比較した研究はまだ少ない。 そこで、本研究ではアカイカの HSI モデルを開発するために統計モデルの一般化加法モデル Generalized additive model (GAM)と機械学習モデルの生態的地位因子分析モデル Ecological NicheFactor Analysis (ENFA) model を検討する。 c.研究計画・方法・スケジュール 地球温暖化等の気候変動下での漁場探索技術の確立に向けて開発予定の、漁場探索・分布の推定に 必要とされる主要な渦を解像し、かつ数日程度の予報時間スケールを持つ超高分解能多重海洋ダウン スケーリングシミュレーションにより推定された海洋環境場において、各格子点での対象魚種の環境 への適性を判断することによってその資源分布を推定する HSI(好適生息域)モデルを開発する。こ れらの技術開発の成果を組み合わせ、「21 世紀気候変動予測革新プログラム」(以下、革新プログラム) 等の温暖化予測結果をもとにして、気候変動影響下での対象魚種の漁場を探索し、その分布変化を推 定する。本課題では、アカイカの HSI モデルを開発するための統計モデルとして、一般化加法モデル (GAM)および機械学習モデルの生態的地位因子分析モデル Ecological NicheFactor Analysis (ENFA) ついての比較検討を行い、アカイカ漁場の高分解能・高精度の診断・予測への適用について検討する。 アカイカ (Ommastrephes bartramii) は亜熱帯から温帯海域に広く分布する外洋性イカ類である (Bower and Ichii, 2005)。西部北太平洋では、重要な国際的な漁業がおこなわれている (Chen et al. 2007)アカイカは冬春生まれ群と秋生まれ群があり、亜熱帯海域の産卵場からクロロフィル移行域 Transition Zone Chlorophyll Front (TZCF) (Polovina et al. 2001)を横断して索餌場へと北上する。

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2.1.4「ピンポイント短期漁場探索のための HSIモデルの開発②」

担当者:齊藤誠一 1、桜井泰憲 1、John Bower1、Robinson Mugo2、佐々木裕子 2

実施機関 :1北海道大学大学院水産科学研究院 、 2 北海道大学大学院水産科学院

a.要約

アカイカの HSI(好適生息域)モデルを開発するために統計モデルの一般化加法モデル Generalized

additive model (GAM)と機械学習モデルの生態的地位因子分析モデル Ecological NicheFactor Analysis

(ENFA) model を検討した。海洋環境データとしての衛星データとアカイカ漁獲データを用い

て、どのように海洋環境がアカイカ漁場形成に影響を与えているか 1999 年から 2006 年まで

の 8 年間について解析した。その結果、漁場形成の季節による異なる3つの GAM モデルが

提案でき、GAM モデルと比較して ENFA モデルは渦の存在の影響をより表現できる可能性

が示唆された。

b.研究目的

衛星データと統計モデルを応用した最近のいくつかの研究はアカイカの生息域環境の特徴を解析で

きることを示している (Cao et al. 2009; Fan et al. 2009; Tian et al. 2009; Chen et al. 2010; Chen et al. 2011)。

しかし、統計モデルの精度を比較した研究はまだ少ない。

そこで、本研究ではアカイカの HSI モデルを開発するために統計モデルの一般化加法モデル

Generalized additive model (GAM)と機械学習モデルの生態的地位因子分析モデル Ecological NicheFactor

Analysis (ENFA) modelを検討する。

c.研究計画・方法・スケジュール

地球温暖化等の気候変動下での漁場探索技術の確立に向けて開発予定の、漁場探索・分布の推定に

必要とされる主要な渦を解像し、かつ数日程度の予報時間スケールを持つ超高分解能多重海洋ダウン

スケーリングシミュレーションにより推定された海洋環境場において、各格子点での対象魚種の環境

への適性を判断することによってその資源分布を推定する HSI(好適生息域)モデルを開発する。こ

れらの技術開発の成果を組み合わせ、「21世紀気候変動予測革新プログラム」(以下、革新プログラム)

等の温暖化予測結果をもとにして、気候変動影響下での対象魚種の漁場を探索し、その分布変化を推

定する。本課題では、アカイカの HSIモデルを開発するための統計モデルとして、一般化加法モデル

(GAM)および機械学習モデルの生態的地位因子分析モデル Ecological NicheFactor Analysis (ENFA) に

ついての比較検討を行い、アカイカ漁場の高分解能・高精度の診断・予測への適用について検討する。

アカイカ (Ommastrephes bartramii) は亜熱帯から温帯海域に広く分布する外洋性イカ類である

(Bower and Ichii, 2005)。西部北太平洋では、重要な国際的な漁業がおこなわれている (Chen et al. 2007)。

アカイカは冬春生まれ群と秋生まれ群があり、亜熱帯海域の産卵場からクロロフィル移行域 Transition

Zone Chlorophyll Front (TZCF) (Polovina et al. 2001)を横断して索餌場へと北上する。

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d.平成 23年度研究計画

海面高度、海面水温等の衛星データとアカイカの漁獲データを実際に使用して HSIモデルを開発す

る。特に、統計モデルのうち一般化加法モデル(GAM)と機械学習モデルの生態的地位因子分析

モデル(ENFA)について、その手法のアカイカ HSIモデル開発への応用可能性について比較検討する。

(1)研究対象海域

北太平洋に生息するアカイカは主に北緯 20◦ から北緯 50◦N に出現し、秋生まれ群は 9 月から翌年

2 月までに産卵し、冬春生まれ群は 1月から 5月、遅いと 8月までの期間に産卵する(Bower and Ichii,

2005)。本課題では研究対象海域を 30-50oN、 140E-170

oWの範囲 (図 1)、沿岸から日付変更線を越え

て 10度東までを含む。

図 1 研究対象海域(夏季のアカイカ漁場をプロットしている)

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,(2)アカイカ漁獲データ

30-50oN、 140E-170

oWの範囲で、 1996年から 2006年までのアカイカ漁獲データ(位置およびCPUE)

を月単位で海洋環境データへオーバーレイした。

(3)海洋環境データ

海洋環境データとして 6種類の衛星データ(海面温度 SST、クロロフィル a濃度Chla、 海面高度 SSH、

渦運動エネルギーEKE、地衡流の東西・南北成分 U,V)を 25km、月単位で準備した。

海 面 温 度 は 2002 年 か ら 2008 年 ま で の 日 単 位 の 海 面 温 度 を

ftp://eclipse.ncdc.noaa.gov/pub/OI-daily-v2/IEEE(NCDC/NOAA)のサイトより入手した。その中の

Advanced Very High Resolution Radiometer (AVHRR) と Advanced Microwave Scanning Radiometer-EOS

(AMSR-E)から作成している amsr-avhrr version 2プロダクトを用いた。空間解像度は 0.25度で、AMSR-E

が入手可能になった 2002年(Reynolds et al., 2007)からこのプロダクト、1999年から 2002年は avhrr-only

プロダクトを用いた。

MODIS およびSeaWiFSの 空間解像度 9kmのクロロフィル a濃度と波長 490nmでの消散係数 K490

を 1999年から 2008年までの期間で入手した。1999年から 2002年までは SeaWiFS、それ以降はMODIS

を用いた。データ入手先は海色ウェブサイトの http://oceancolor.gsfc.nasa.gov/である。海面高度、地衡

流は AVISO ウェブサイト (http://www.aviso.oceanobs.com/)から週単位、0.25 度のものを入手した。そ

の他に海上風データを Remote Sensing Systems (http://www.ssmi.com/)のウェブサイトより入手した。

e.平成 23年度研究成果

(1)予備解析(クラスター解析とヒストグラム解析)

ソフトウェアは汎用統計パッケージ R (version 2.13.1) (http://www.r-project.org/)を用い、その中のクラ

スター解析ファンクションの“mclust”を用いて CPUE データとすべての海洋環境データを変数として

クラスター分析した。

(2)GAMモデルの概要

ソフトウェアは汎用統計パッケージ R (version 2.13.1)を用い、その中の一般化加法モデル

GAM(Wood, 2006)関連ファンクションの "mgcv"の中の"gam"を用いた。CPUE の変動に影響を及ぼ

す海洋環境要因を明らかにし、CPUE 予測モデル(HSI モデル)を作成するために、一般化

加法モデルの一般式は(1)式のように表す。

g(ui) = 0 + s1(x1i) + s2(x2i) + s3(x3i) +... sn(xni), (1)

ここで、gはリンク関数、ui は目的変数、xniは説明変数、Si は各予測変量の変換を行う関数

である。0は定数項である (Wood, 2006)。

予備解析で分類された3つの Model I、Model II、Model IIIを基本に GAMモデルを作成した。

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(3)ENFAモデルの概要

対象種をアカイカとして生態的地位因子分析モデル(ENFA) を応用した。これまでの研究では、

ENFAは主に陸域の生態学で応用されてきた (e.g. Hirzel et al., 2002; Pettorelli et al., 2008)。しかし、リ

モートセンシングデータを利用した海洋研究も増加し、興味深い結果が得られるようになってきた

(Valavanis et al., 2008; Skov et al., 2008; Monk et al., 2010)。ENFA における二つのファクターはニッチの

偏り Marginalityとニッチの限定度 Specializationで、次の(2a)および(2b)式で表わされる。

Marginality = (mG-mS)/1.96G (2a)

Specialization = G/S (2b)

ここで、mは平均値、σは標準偏差、添え字の Gと Sは環境と生物種をそれぞれ意味する。計算処

理としては、まずニッチ空間を記述する生態ニッチ第 1要素として偏りを主とする固有ベクトルが求

められる。次に、第 1要素と相関がない独立な生態ニッチ第 2要素として限定度にもとづく固有ベク

トルが求められる。この手順は一定の情報説明量が獲得されるまで繰り返される(高村、2007)。

アカイカ漁獲データ(1999 年~2006 年)は月単位の存在 presence-onlyデータとして変換した。月単

位の海洋環境データ (SST, SSH, and EKE) は Biomapperソフトウェアを用いてアカイカ漁獲データの

グリッドにあわせて取り込んだ。マップはグリッドフォーマットの一致を確認して作成した。一定の

情報説明量が獲得されるまで繰り返し計算する回数は MacArthur’s broken-stick rule を用いた。繰り返

し計算の回数は好適生息域の計算のための環境変数の量にも関係している (Monk et al., 2010)。地理的

に平均するアルゴリズムを HSI分布図作成に適用した。HSIの数値は 0から 100 までの間の数値を取

るように設定した。従って 0 が最も不適な生息域、100 が最も好適な生息域を表わす。年によってあ

る月のデータに欠測がある時は、ENFA モデルは作成しなかった。1999 年から 2006 年のデータセッ

トで作成したモデルで、漁獲データが入手できる 2007年-2008年の推定・検証を行った。推定したグ

リッドデータは実際の漁獲位置をオーバーレイして比較した。図 2にこの一連の解析の概念図を示し、

図 3にその比較解析の流れを示した。

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図 2 モデル精度への影響ファクター(概念図)

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図 3 存在-不在モデルと存在のみモデルとの精度比較手順の流れ

(4)海面水温フロントの抽出

MGET tool (Roberts et al. 2010)を用いて、ArcGIS 9.3に組み込まれている Cayula-Cornillon フロント抽

出アルゴリズム (Cayula and Cornillon, 1992)により漁場位置付近の海面温度フロントを抽出した。時間

スケールとしては必ずしも最適とはいえないがここでは月単位の海面温度画像へ適用した。

(5)クラスター分析結果

クラスター分析の結果、西部北太平洋では6つのクラスターに分類できた(図4)。これらのクラス

ターは緯度的な変動と対応しており、経度方向で見れば異なる季節での異なる漁獲位置を示している。

図 5は西部北太平洋におけるアカイカの生息域モデルの CPUEと海洋環境変数のヒストグラムである。

図内のピークはそれぞれの変数の最適値を示しており、たとえば海面水温であれば広範囲で 10-15℃

の範囲で、ピーク値は 12℃である。

PPeerrffoorrmmaannccee ooff NNeeoonn FFllyyiinngg SSqquuiidd HHaabbiittaatt SSuuiittaabbiilliittyy MMooddeellss

RReeggrreessssiioonn MMooddeellss

PPrreesseennccee//AAbbsseennccee ddaattaa

MMaacchhiinnee LLeeaarrnniinngg MMooddeellss

PPrreesseennccee--oonnllyy ddaattaa

PPeerrffoorrmmaannccee iinnddiiccaattoorrss:: ((ii)) AAIICC ((iiii)) AAUUCC//RROOCC ((iiiiii)) CCrroossss--vvaalliiddaattiioonn

GAM ENFA

SQUID DATA ENV. DATA

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図 4 漁獲位置データ(1999年~2006年)から分類された空間クラスター分布。

西から東へ向けて Model Ⅰ、Model Ⅱ、Model Ⅲとする。

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図 5 漁場位置における CPUE と海洋環境変数の分布

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(6)一般化加法モデルの結果

3つのModel I、Model II、Model IIIにおいて、Model IIの EKE を除けばすべての海洋環境変数は統

計的に有意であった(表1)。Model I は 29.1%、 Models II は 22.7%、Model III は 30.1% が海洋環境

変数で説明できる(表1)。 図 6に示したヒストグラムで、Model IIは海面水温で 12-18℃、クロロフ

ィル a濃度で 0.1-0.5mg/L、海面高度で 40-80cm、渦運動エネルギーで 50cm2s

-2以下であった。 3つの

Model における環境変数のレンジは異なり、アカイカが出現した季節の違いを表わしている。この違

いは HSI推定モデルの精度とも関連しているので、その検証も必要である。表 1に示している 3つの

Modelの統計値の一覧より 6 つの環境レイヤーの詳細がわかる。Model Iにおけるクロロフィル a濃度

が統計的に有意でなく(表 2)、次のモデルではこの変数を取り除いた。全体の Model IV は他の 3つ

のモデルより低い値を取った(表 1、表 2)。GAMモデルと ENFAモデルを比較するのに、ENFA では

SST、SSH、EKE の 3つの変数を用いた。

表1 各モデルにおける SST, CHLa, SSH, EKE, U and V の変数の統計値

AREA Model Variable EDF AIC P-VALUE CDE% N

I I SST 8.30 3273.25 0.000000 29.1% 1551

CHLa 5.43 0.001410

SSH 8.49 0.000000

EKE 8.00 0.000009

U 5.62 0.014120

V 8.08 0.000000

II II SST 7.72 1878.59 0.000000 22.7% 1031

CHLa 4.58 0.000000

SSH 5.45 0.000001

EKE 1.00 0.391345

U 1.00 0.036462

V 2.78 0.000635

III III SST 8.2 2893 8.25E-14 30% 1357

CHLa 8.7 1.40E-13

SSH 8.7 2.00E-16

EKE 7.8 0.00913

U 6.6 0.00248

V 7.8 3.63E-14

IV IV SST 8.7 8545 2.00E-16 17.40% 3942

CHLa 8.3 2.00E-16

SSH 7.6 2.00E-16

EKE 8.3 3.57E-06

U 6.8 1.63E-11

V 8.1 2.00E-16

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表2 各モデルにおける SST, CHLa, SSH, EKE の変数の統計値

AREA Model Variable EDF AIC P-VALUE CDE% n

I I SST 8.04 713.47 0.000317 53.3% 372

CHLa 3.61 0.114413

SSH 8.51 0.000000

EKE 7.19 0.000190

II II SST 7.70 1899.12 0.000000 20.6% 1031

CHLa 4.64 0.000000

SSH 5.58 0.000003

EKE 1.00 0.001000

III III SST 8.33 2999.08 0.000000 22.9% 1357

CHLa 8.66 0.000000

SSH 8.35 0.000000

EKE 8.32 0.012800

IV IV SST 8.81 8718.871 2.00E-16 13% 3942

CHLa 8.28 2.00E-16

SSH 7.95 2.00E-16

EKE 8.48 2.40E-05

図 6 GAM モデルにおける 6 変数の CPUE説明度数

(7)生態系地位因子分析モデルの結果

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図 7は ENFA モデルから推定した HSI分布を示した。1999年~2006年のモデルから作成した推定モデ

ルを図 8(左)に示した。HSI 分布図と実際の漁獲位置と Cayula-cornillon アルゴリズムで抽出した海

洋前線フロント分布図を図 8(右)に示した。図 9 に GAM モデルと ENFA モデルによる HSI 分布図

を比較した。

図 7 1999 年~2006 年の ENFA モデルから推定した HSI(好適生息域)分布。漁獲位置(緑色)をオ

ーバーレイしている。

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図 8 作成したモデルから推定した HSI分布図。実際の漁獲位置と Cayula-cornillon アルゴリズムで抽

出した海洋前線フロントをオーバーレイしている。

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図 9 GAMモデル(左)と ENFA モデル(右)による HSI分布図の比較。実際の漁獲位置をオーバ

ーレイしている。

f.考察

8 年間のデータセットを用いてアカイカの好む海洋環境の存在から推定された漁場クラスターは各

年の異なる時期の漁業者の活動域を示している。これらのクラスター分析や空間モデリングの結果は

アカイカの生息状態を示している。3 つの GAM モデルにより得られた環境変数のレンジ変化はこの

水域におけるアカイカ漁業の季節的な違いも示している。同一海域内での HSI推定モデルの精度も検

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証する必要がある。3 つのクラスター海域の GAM モデルを用いてこの HSI モデルの確からしさを予

測したり検証することは重要である。

GAM モデルと比較して ENFA モデルは渦の存在の影響をより表現できる可能性が示唆さ

れた。されに、時空間解像度をあげて 2 つの空間モデルを比較することによりさらに精度

のよい漁場予測が可能になると思われるが、それぞれのアルゴリズムの違いも認識してお

く必要がある。

g.引用文献

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h.成果の発表

h.1印刷物

なし

h.2口頭・ポスター発表

Robinson MUGO; Sei-Ichi Saitoh; Toshyuki Awaji; Yoichi Ishikawa; Hiromichi Igarashi. 2011. Comparative

Modeling of Neon Flying Squid Habitats in the w. North Pacific. 水産海洋学会、2011年 11月 12日、

函館。