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2018年12月25日 福井県立大学客員教授 丹羽連絡事務所チーフエコノミスト 中 島 精 也

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2018年12月25日

福井県立大学客員教授

丹羽連絡事務所チーフエコノミスト

中 島 精 也

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目次

Ⅰ 米国経済

Ⅱ 欧州経済

Ⅲ 中国経済

Ⅳ 日本経済

Ⅴ マーケット動向

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Ⅰ 米国経済

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①12月1日のアルゼンチンのブエノスアイレスで開催されたG20で米中首脳会談(右上写真)が行われ、中国が米国農産物、エネルギー、工業製品の輸入増、及び中国の制度変更について議論に応じる見返りとして、米国は1月に予定していた中国輸入2,000億ドル分の追加関税25%への引き上げを90日間(2月末まで)延期するとした。 ②米中貿易交渉の米側代表は対中強硬派ライトハイザー米国通商代表が務めることになったので、休戦の後に貿易戦争終結に向かうのは厳しいとの見方が多い。 ③米中首脳会談が開催されていたのと同じタイミングで華為技術(ファーウェイ)の創業者の任正非CEOの長女で後継者と見られている孟晩秋副会長CFO(右下写真)が米国の要請により対イラン制裁回避の金融取引に関与した容疑でカナダで逮捕された。 ④なお、米国は今年4月にイラン制裁に違反した通信機器大手「中興通訊(ZTE)」に米企業との取引を禁じたが、今回、新たに国防授権法に基づき、全米政府機関での華為技術と中興通訊製造の通信機器の使用を禁じると共に、日独など同盟国にも同調するよう要請した。

1.米中貿易戦争は休戦だが解決の見込みなし

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①12月20日マティス国防長官(右上)が辞表を提出した。19日にトランプ大統領がISに勝利したので米軍をシリアから撤退させるとした決定に対する抗議の辞任である。トランプはアフガニスタン駐留米軍も半分撤退させる意向。ISの脅威はまだ完全に消えておらず、トランプは選挙公約の実現を優先させた形だ。 ②マティスのトランプに宛てた辞表が公表され、内容は愛国心に満ちた愚直な軍人の心情吐露となっている。また、同盟国との連携がないと米国の利益を守れないと強調、大統領は自分の意見に同調する国防長官を選ぶ権利があり、私は身を引く時だ、と書いている。 http://prod-upp-image-read.ft.com/769c7332-04b2-11e9-9d01-cd4d49afbbe3 ③議会はメキシコ国境の壁建設を盛り込んだ予算を下院は通過させたが、上院(100議席)では60票の賛成が必要なため、民主党の反対で成立せず。トランプはメキシコ国境に壁を作る選挙公約を降ろさず、政府機関の閉鎖を選択して、混乱に一層拍車を掛けた。

2.トランプ政権はカオスの状態が続く

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①12月18日〜19日の米連邦公開市場委員会(FOMC、右上)はFF金利(下図)を0.25%引き上げて2.25%〜2.5%とした。 ②今回の声明文の内容は前回とほぼ変わらず。失業率については前回のhas declined → has remained lowに変更。但し、リスクは概ねバランスの後に、but will continue to monitor global economic and financial developments and assess their implications for the economic outlook.を書き加えている。最近の株価の急落を意識しているものと見られる。 ③トランプのFed批判に屈せず、今回は利上げしたが、今後の利上げは前回見通しより来年を1回減らして2回、20年が1回でピークは3.0〜3.25%としている。 ④今後の利上げ回数は減らす見通しだが、B/Sの縮小プランに変更無いとのパウエル議長の発言が株価の下落を誘発した可能性。 ⑤怒ったトランプがパウエル解任を模索との報道で株価下落に拍車が掛かる。

3.FOMCが利上げ決定、今後の利上げペースは減速

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4. 7〜9月期の米GDP(三次推計)は年率3.4%とほぼ変わらず

①7〜9月期のGDPの伸び(三次推計、前期比年率)は二次推計の3.5%から3.4%に修正されたが、潜在成長率の2%を上回る高い伸びを維持している。(右図)

②最大の貢献は個人消費で3.5%の伸び(GDP寄与度は2.37%)、次に政府支出の伸びは2.6%(寄与度0.44%)。一方、これまで好調だった設備投資は2.5%に減速、住宅投資は▲3.6%と3期連続の減少と不振。輸出は▲4.9%の減少。

③また、追加関税発動前の駆け込み需要のせいで輸入は9.3%(寄与度▲1.37%)の急増となったが、その多くは在庫積み増しに回り、在庫投資の寄与度は2.33%(4〜6月期は▲1.17%)に上昇したので、ほぼ相殺されている。

④名目GDPは4.9%、GDP物価指数は1.8%

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5.米賃金の伸びは3%超えが続く

①11月の雇用者数の伸び(右上図)は前月比15.5万人増と市場予想の19.8万人を下回った。

②業種別ではヘルスケア3.2万人増、製造業2.7万人増、運輸・倉庫1.6万人増、専門職・ビジネスサービス3.2万人増。

③失業率は3.7%と前月と変わらず。労働参加率は62.9%と前月と変わらず。

④時間当たり賃金は前月比6セント上昇して27.35ドルに、前年比(右下図)は 3.1%と前月と変わらず。

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6.米小売売上高はやや減速の兆し

①11月の小売売上高は前月比が0.2%と2ヶ月連続のプラス。前年比(右下図)は4.2%。

②業種別の前月比、前年比は

自動車 0.2%、1.4%、

家具 1.2%、1.7%、

電気製品 1.4%、4.0%、

建設資材園芸用品▲0.3%、3.5%、

食料品店 0.4%、3.0%、

健康ケア 0.9%、3.1%、

ガソリンスタンド▲2.3%、8.2%

衣服アクセサリー ▲0.2%、4.1%、

スポーツ用品・趣味・書籍・音楽

0.4%、▲8.8%、

大規模商業施設0.4%、3.6%、

無店舗販売 2.3%、10.8%、

飲食業 ▲0.5%、5.6%。

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7.米消費者は先行きの雇用情勢と金利上昇に警戒感

①12月のミシガン大学消費者信頼感指数(確報、右図)は98.3と前月より0.8ポイント上昇。現状指数は112.3から116.1に大きく上昇したが、期待指数は逆に88.1から87.0に低下。消費者は将来の雇用情勢に悲観的、かつ金利上昇が成長減速をもたらすと見ている。

②コンファレンスボード消費者信頼感指数は10月137.9→11月135.7に低下。現状指数は10月171.9→11月172.7に上昇、期待指数10月115.1 →11月111.0に低下。

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8.米耐久財受注は前月比3ヶ月ぶりにプラス

①11月の耐久財新規受注(速報)は前月比(右図)0.8%と3ヶ月ぶりにプラス。前年比4.9%。輸送機器を除く耐久財新規受注は前月比▲0.3%、国防除く耐久財新規受注は前月比▲0.1%。

②民間設備投資の先行指標となる非国防資本財から航空機を除いたコア資本財受注は前月比▲0.6%。

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9.米住宅指標に頭打ちの兆候

①11月の米住宅着工戸数は年率125.6万戸(右上図)、前月比は3.2%、前年比は▲3.6%と減少。一戸建は前月比▲4.6%、前年比は▲13.1%、集合住宅(5件以上)は前月比24.9%、前年比は20.2%。地域別では前月比、前年比で北東部37.8%、33.3%、中西部▲19.2%、▲12.4%、南部が15.1%、1.3%、西部▲14.2%、▲18.4%。

②9月のケースシラー住宅価格指数は前年比5.5%。前月比(季調済)は0.1%。20都市平均は前年比5.1%、前月比(季調済)0%。前年比で特に高い伸びを記録したのはラスベガス13.5%、サンフランシスコ9.9%。

③10月の新設住宅販売戸数(右下図)は前月比▲8.9%の54.4万戸、前年比は▲12.0%。うち地域別の前月比、前年比は北東部▲18.5%、▲46.3%、中西部▲22.1%、▲16.7%、南部▲7.7%、▲11.6%、西部▲3.2%、▲1.3%。販売在庫比率は7.4ヶ月と前月比0.9ヶ月の上昇。

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10.米鉱工業生産は底堅い伸び ①11月の鉱工業生産指数は前月比が0.6%(右上図)、前年比は3.9%(右下図)

②鉱業の前月比は1.7%、前年比は13.2%、電力・ガス前月比3.3%、前年比4.3%。製造業前月比0.0%、前年比2.0%。うち、自動車及び部品は前月比0.3%、前年比3.4%、コンピュータ・電子機器前月比0.2%、前年比5.1%、航空機は前月比▲0.1%、前年比2.8%、金属製品前月比▲0.1%、前年比4.5%、食料・飲料・タバコは前月比▲0.5%、前年比1.1%、化学は前月比0.6%、前年比2.1%。

③設備稼働率指数(製造業)は75.7と前月比0.1ポイント低下。長期平均78.3を2.6ポイント下回る。

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11.米貿易赤字の拡大傾向続く ①10月の貿易・サービス収支(左下図)は▲555億ドルと前月比9億ドル赤字拡大。対中輸出の前年比▲29.6%、対中輸入8.4%。

②財・サービス輸出(右上図)は前月比3億ドル減の2,110億ドル。前年比6.3%。工業用原材料は3億ドル増加したが、資本財は5億ドル減少、大豆は8億ドル減少。

③財・サービス輸入(右下図)は前月比6億ドル増の2,665億ドル。前年比8.5%。資本財は32億ドル減少、消費財は20億ドル増加

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12.米PCE伸び率は2%前後の動き

①11月のPCE(個人消費支出)総合物価指数の前年比(右図赤線)は1.8%と前月より0.2ポイント低下。前月比は0.1%と前月より0.1ポイント低下。

②エネルギーと食料を除くコアPCE物価指数の前年比(右図青線)は1.9%と前月より0.1ポイント高まる。

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13.米コア消費者物価は2%台で推移

①11月のCPI(消費者物価指数)総合の前年比(右図赤線)は2.2%と前月の伸びより0.3ポイント低下。前月比は0.0%と前月より0.3ポイント低下。

②エネルギーの前年比は3.1%の上昇(うちガソリン価格は5.0%、燃料油は16.1%の上昇)。エネルギーの前月比は▲2.2%(ガソリン▲4.2%、燃料油▲2.9%)

③エネルギーと食料を除くコアCPIの前年比(右図青線)は2.2%と前月より0.1ポイント伸びが高まる。前月比は0.2%と前月と変わらず。

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Ⅱ 欧州経済

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1.Brexit協定採決延期で迷(メイ)走

①メイ首相は12月11日に予定していた離脱協定の議会採決を延期、Brexitの先行きが再び不透明となった。

②英EUで合意した離脱協定は英国が2019年3月29日にEUを正式に離脱し、それ以降はEUの意思決定には加わらない。新貿易協定の策定を行う2020年末までは移行期間として、単一市場に留まり、EU法、規制に従う。

③2020年末までに新貿易協定が合意に至らず、移行期間が仮に延長された場合でも、backstop (防衛策)として英国はEUとの間で単一関税地域を設ける。そこでは水産物を除き無関税、数量規制もない。英国は一方的に第三国向け関税引き下げを行わず、EU貿易ルールに調和した政策を実行し、環境、衛生基準等を勝手に変更しない。backstopが適用されたらEUの了解なしに単一関税地域から離脱できない。

④アイルランド国境は引き続きno hard border とし北アイルランドは引き続きEUルールに従う。しかし、これではブリテン島と北アイルランドで制度が異なり、一国二制度となるため、閣外協力している北アイルランドの民主統一党(DUP)が反発している。

④英国の金融機関が引き続きEUパスポートを保持するのかどうか明らかでない。離脱協定文の“entities established in the United Kingdom shall be treated as entities located outside the Union.”

を拠り所にEUパスポートを喪失するという見方があるが、知人の英金融関係者によれば、英金融規制をEU規制に調和させることで、今まで通りのEUビジネスができるという。 ⑤英政府の試算によれば、今回のメイ首相のBrexitプランはEU残留に比べ15年間で3.9%GDPを減少させるが、no deal Brexit だと9.3%の減少。 ⑥しかし、そもそもBrexitとアイルランド国境のno hard border は両立しない。メイ首相の再交渉要求はEUから拒否された。再度、国民投票やってEU残留がベストな解決策。国民投票の実施を求める声が徐々に高まっている。

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2.メルケル後継のCDU党首は移民政策の変更に動く

①12月7日、メルケル独首相のCDU(キリスト教民主同盟)党首辞任に伴う選挙が行われ、メルケル氏と同じリベラル派で党幹事長のアンネグレート・クランプカレンバウアー(Annegret Kramp-Karrenbauer)氏が選出された。

②決戦投票に持ち込まれた結果はリベラルのクランプカレンバウアー氏が517票、保守派のメルツ氏が482票と僅差の勝利だった。

③党が二分された選挙結果を受けて、クランプカレンバウアー党首は来年5月の欧州議会選挙を念頭に、リベラルのメルケル首相の移民政策を見直す方針を固めた。

④そのため「移民・安全保障の専門家、移民・難民政策を批判する人々と『ワークショップ型のディスカッション』を行い、具体的な改善に向けた作業を進めたい」と述べた。

メルケルの後継者としてCDU(キリスト教民主同盟)党首に選出されたクランプカレンバウアー党幹事長(左)とメルケル首相(右)

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3.ECBはQE終了するがB/Sは現状水準を維持

①12月13日のECB理事会は現行の政策金利(預金▲0.4%、主要レポ0%、限界貸出0.25%)を据え置き、少なくとも2019年夏まで利上げしないという「フォワード・ガイダンス」も変わらず。

②また、量的緩和(QE)は予定通り、本年12月で終了する。量的緩和が終了しても、満期の来た債券(元本)を再投資することでバランスシートを維持する。この再投資は利上げが始まった後も長期間(

extended period)続けるという「フォワード・ガイダンス」も採用。

③ドラギ総裁(右写真)は地政学要因、保護主義の脅威、新興国市場の脆弱性、金融市場の不安定性から不確実性が持続してダウンサイドリスクの確率が高まりつつあると言及。

④ECBスタッフ経済見通しはGDP成長率が18年1.9%→19年1.7%→20年1.7%→21年1.5%。インフレ率は18年1.8%→19年1.6%→20年1.7%→21年1.8%。9月時点の見通しと余り変わっていない。

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4.ユーロ圏のGDP成長率は減速続く

①7〜9月期のユーロ圏GDP(確報値)は前期比(右上図)0.2%、前年比(右下図) は1.6%に減速。

②前期比、前年比で独▲0.2%、1.2%、伊▲0.1%、1.2%が不振。仏0.4%、1.6%、スペイン0.6%、2.5%、ポルトガル0.3%、2.4%はそこそこの伸び。

③東欧は前期比、前年比でハンガリー1.3%、4.8%、ポーランド1.7%、5.2%、ルーマニア1.9%、4.3%など高い伸びを示している。

④BREXITで揺れる英国は前期比0.6%、前年比1.5%と底堅い。

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5.ユーロ圏の実質消費は一進一退

①10月のユーロ圏小売売上高(数量ベース、季調済)は前月比0.3%(右上図)。前年比(右下図)は前月の0.3%から1.7%の伸びに回復。

②商品別前月比で食料・飲料・タバコ0.6%、非食料製品▲0.1%(内、衣類0.8%、電気製品・家具▲1.1%、コンピュータ・書籍1.0%、医薬品▲1.0%、インターネット0.9%)、自動車燃料1.0%。

③商品別前年比では食料・飲料・タバコ2.3%、非食料製品1.7%(内、衣類1.1%、電気製品・家具0.6%、コンピュータ・書籍3.2%、医薬品1.1%、インターネット9.9%)、自動車燃料1.5%。

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6.ユーロ圏の鉱工業生産は弱含み推移

①10月のユーロ圏鉱工業生産は前月比(右上図)0.2%と2ヶ月ぶりの上昇、前年比(右下図)は1.2%と前月より0.4ポイント上昇。

②項目別の前月比では中間財0.2%、エネルギー▲1.7%、資本財1.0%、耐久消費財0.4%、非耐久消費財は0.0%。

③前年比では中間財▲0.4%、エネルギー▲3.1%、資本財3.7%、耐久消費財0.0%、非耐久消費財1.2%。

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7.ユーロ圏失業率は下げ止まり感 ①10月のユーロ圏失業率(右図)は8.1%と4ヶ月連続して変わらず。下げ止まりか。但し、前年同月より0.7ポイント改善。

②最低はチェコの2.2%、最高はギリシャの18.9%(但し、8月)、スペインは14.8%。

③前年10月との比較で独3.6%→ 3.3%、 仏9.2%→8.9%、伊11.0%→ 10.6%、オランダ4.5%→3.7%、スペイン16.6%→ 14.8%、ポルトガル8.4% →6.7%、ギリシャ(17年8月) 20.8% → 18.9%(18年8月)と改善。

④前月9月との比較でイタリアは10.3%から10.6%へ上昇している。イタリアのポピュリスト政権が2019年予算で前政権の0.8%財政赤字を当初2.4%まで拡大する(後に2.04%に修正)としたため、長期金利が急上昇したことが影響している可能性がある。

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8.ユーロ圏のインフレ率は1.9%に鈍化

①11月のユーロ圏消費者物価の前年比(右図)は1.9%と前月より0.3ポイント伸びが低下。ECBのインフレ目標は below, but close to 2% 。前月比は▲0.2%。

②コアCPI(エネルギー・食料・アルコール・タバコを除く)の前年比は1.0%と前月より0.1ポイント低下。

③項目別の前年比で食料・アルコール・タバコは10月2.2%→11月1.9%に鈍化、エネルギーは10.7%→9.1%に低下。非エネルギー工業品は0.4%→ 0.4%と変わらず、サービスは1.5%→1.3%に低下。

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9.ユーロ圏のPMIは下向き傾向

①製造業PMIは11月51.8→12月51.4 ②サービス業PMIは11月53.4→12月51.4

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10.ユーロ圏の景況感指数は弱含み

①11月のユーロ圏業況指数(EU委員会)は前月より0.08上昇して1.09。

②12月のユーロ圏ZEW景況感指数は前月比1.0ポイント改善して▲21.0。

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11.消費者信頼感指数はマイナス幅拡大

欧州委員会が発表した12月のユーロ圏消費者信頼感指数(右図)は前月より2.3ポイント低下して▲6.2で7ヶ月連続の低下。

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Ⅲ 中国経済

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1. 7~9月期GDPは前年比6.5%に減速

①前年比は6.5%に低下 ②前期比は1.6%にやや減速

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2.中国の消費の伸びは低下傾向

①11月の小売売上高(右図)は前年比8.1%と前月の伸び率より0.5ポイント低下。

②商品別の前年比は以下の通り

9月 10月 11月

通信機材 16.9% → 7.1% → ▲5.9%

自動車 ▲7.1% →▲6.4% →▲10.0%

建設資材 8.4% → 8.5% → 9.8%

家具 9.9% → 9.5% → 8.0%

家庭用品 5.7% → 4.8% → 12.5%

宝飾品 11.6% → 4.7% → 5.6%

化粧品 7.7% → 6.4% → 4.4%

石油製品 19.2% → 17.1% → 8.5%

衣類 9.0% → 4.7% → 5.5%

事務用品 4.9% →▲3.3% → ▲0.4%

健康ケア 17.4%. → 10.2% → 16.0%

合計 9.2%. → 8.6% → 8.1%

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3.固定資産投資の伸びは低位安定

①1~11月累計の固定資産投資は前年比5.9%(右図)と1〜10月累計の伸びより0.2ポイント上昇。

②民間投資は8.7%の伸びと堅調、公共投資の伸びは2.3%。

③鉱業は8.6%。製造業は9.5%、うち食品製造4.4%、紡績業4.9%、医薬1.8%、非鉄金属2.0%、金属製品15.4%、自動車工業3.3%、鉄道・船舶・航空▲5.2%、電気機械13.1%、コンピュータ・通信19.1%。電力・ガス・水道は▲8.8%、鉄道運輸は▲4.5%、道路運輸は8.5%、水利環境公共施設は2.4%。

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2014年

1〜5月

1〜7月

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1〜11月

2015年

1〜2月

1〜4月

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1〜8月

1〜10月

1〜12月

1~3月

1〜5月

1〜7月

1〜9月

1〜11月

2017年

1〜2月

1〜4月

1〜6月

1〜8月

1~10月

1~12月

1〜3月

1〜5月

1〜7月

1〜9月

1〜11月

中国の固定資産投資(前年比、%)

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4.規制強化でも住宅価格の伸びは底堅い

①11月の70都市新築住宅価格は前月比0.9%、前年比9.3%の上昇と好調。前月比で上昇した都市が63都市と前月より2都市減少、下落したのは5都市、横ばい2都市だった。 ②都市別の前年比では北京が1.4%、上海は0.1%、広州4.9%、大連14.3%、深圳▲0.4%、南京0.8%、西安21.8%。 ③当局は昨年3月より24の都市で不動産規制強化を実施中。更に本年6月に不動産不正取引の取り締まり強化、企業の住宅用不動産購入を防止する新ルールを発表している。今年に入って260の規制を導入、昨年同期の80に比べ3倍近く増えている。

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5.米中貿易戦争の影響が輸出入に出始める ②11月の輸入の伸びは3.0%に大きく減速。対米輸入は▲25%と大幅減少。原油17.7%、天然ガス39.8%は高い伸びだが、銅地金▲3.0%、銅精鋼▲4.6%、鉄鉱石▲8.8%、大豆▲38.0%

①11月の輸出の伸びは前年比5.4%に減速、対米輸出も9.8%に減速。駆け込み需要が一巡したとみられる。

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2014年

6月

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6月

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12月

3月

6月

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3月

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9月

12月

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9月

中国のドル建て輸出(前年比、%)

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9月

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6月

9月

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12月

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9月

中国のドル建て輸入(前年比、%)

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6.鉱工業生産の伸びは再び下降トレンド

①11月の鉱工業生産は前年比(右図)は5.4%と前月より0.5ポイント伸びが低下。

②製造業の前年比は5.6%と前月より0.5ポイント低下、うち食品製造8.6%、繊維1.5%、化学1.9%、コンピュータ・通信12.3%、電気機械9.0%、自動車▲3.2%、鉄鋼10.4%、非鉄金属12.8%。電気・ガス・水道は9.8%、鉱業は2.3%。

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7.中国PMI指数は50超で推移 ①11月製造業PMIは50.2と前月より0.1ポイント上昇

②11月サービス業PMIは53.8と前月より3.0ポイント上昇

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8.中国のインフレは落ち着き ①11月の消費者物価は前月比▲0.3%。前年比(左下図)は2.2%と前月より0.3ポイント伸びが低下。

②11月の生産者物価は前月比▲0.2%。前年比(右下図)は2.7%と前月の伸びを0.6ポイント下回る。

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Ⅳ 日本経済

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1.来年度予算案は初の100兆円突破

①12月21日、政府は2019年度予算案を決定した。予算規模は101兆4564億円と今年度の97兆7128億円を4兆円近く上回り、初めて100兆円を突破した。但し、消費税引き上げに伴う「臨時・特別の措置」として2兆280億円を計上しており、それを除けば予算規模は99兆4285億円と100兆円以下に収まるとしている。

②来年度予算は消費税引き上げの影響を「臨時・特別の措置」で完全に相殺することを狙っている。消費税2%引き上げで5.7兆円(平年度ベース)の増収があるが、軽減税率導入とタバコ税引き上げを加味すると、5.2兆円の増税となる。

③一方、幼児教育の無償化、社会保障の充実で国民は3.2兆円の受益がある。差し引き2兆円のネットの国民負担を「臨時・特別の措置」など2.3兆円でカバーするとしている。

④「臨時・特別の措置」には国土強靭化など安易な公共事業拡大につながりかねないバラマキ項目も含まれているのが懸念される。

⑤また、歳入面では公債発行を1兆324億円減額しているが、建設公債は8580億円も増加しており、全体の辻褄合わせのため預金保険機構の資金繰り入れなどで税外収入を1兆3601億円増やしている

⑥恒常所得仮説を想定すれば、「臨時・特別の措置」がどこまで効果的か不確実な面が多い。

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2.黒田総裁が下振れリスクが大きいと述べた

①日銀は12月18〜19日の政策決定会合で現状維持を決めた。

②声明文の内容も前回と変わらず、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について、長期金利は「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買い入れを行う。その際、金利は経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし、買入れ額については、保有残高の増加額年間約 80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する」とした。

③長期国債以外の資産買い入れについては「ETFおよびJ-REITについて、保有残高がそれそれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。その際、資産価格のプレミアムへの

働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする」、「CP等、社債等について、

それそれ約 2.2 兆円、約 3.2 兆円の残高を維持する」とした。

⑤黒田総裁は記者会見で「米中貿易摩擦を始めとする保護主義の動きの帰趨には注意」、「海外経済の動向を中心に下振れリスクの方が大きいと判断している」、そして世界経済が悪化した時には「追加緩和を検討していく」と述べた。

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3. 7〜9月期のGDP(二次速報)はマイナス幅拡大

①7〜9月期の実質経済成長率(二次速報)は前期比▲0.6%、年率▲2.5%(右上図)と一次速報(前期比▲0.3%、年率▲1.2%)よりマイナス幅が拡大した。民間設備投資の大幅下方修正(前期比▲0.2%→▲2.8%、年率▲0.9%→ ▲10.6%)が主たる要因。なお、マイナス成長の要因は台風、地震など自然災害の発生。成長寄与度は内需が▲0.5%、外需が▲0.1%と共に不振。前年比も0.0%と伸びがゼロに低下した(右下図)。名目GDPの伸びは前期比▲0.7% (年率▲2.7%)、前年比▲0.3%。

②設備投資以外の需要項目別の前期比年率は最終消費支出▲0.7%、輸出▲6.9%、輸入▲5.5%、公的固定資本形成▲7.7%と軒並みマイナス。在庫投資のGDP寄与度は0.0%であった。

③一方、住宅投資は2.7%と5四半期ぶりにプラス転換。政府最終消費は0.9%。

④GDPデフレータは前期比▲0.1%、前年比は▲0.3%とデフレに逆戻り。

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4.日銀短観業況判断DIの先行き見通しは下降へ

①日銀短観(12月調査)によれば大企業製造業の業況判断DI(「良い」-「悪い」、%ポイント)は19と前回9月調査と変わらず。先行き12月予測は15と4ポイント低下見通し。大企業非製造業は24で前回より2ポイント上昇、先行きは20と4ポイント低下見通し。

②中堅企業DIは前期比で製造業+2、非製造業▲1、中小企業は前期比で製造業は横ばい、非製造業+1。先行きは総じて▲4〜6の低下。

③経常利益の18年度は前年度比で大企業製造業0.1%、大企業非製造業▲1.7%、全規模全産業で▲0.8%の計画。

④生産・営業用設備判断(「過剰」-「不足」・%ポイント)は大企業製造業▲5と前回と変わらず、大企業非製造業▲3と不足が拡大。設備投資計画は18年度大企業製造業15.6%、大企業非製造業13.5%と好調な伸び。

⑤雇用人員判断(「過剰」-「不足」・%ポイント)は大企業製造業▲19、大企業非製造業▲29と人手不足が続く。先行きもそれそれ▲19、▲31と状況は変わらず。

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5.景気動向指数は一進一退を繰り返す

①10月の先行指数は前月比0.9ポイント上昇し100.5と2カ月ぶりの上昇となった。

②一致指数は前月より2.9ポイント上昇して104.5と2ヶ月ぶりの上昇となった。自然災害の影響が一巡したため。

③遅行指数は前月比0.5ポイント低下して103.2と2カ月連続の下降。

④基調判断(一致指数)は9月に下方修正した「足踏みを示している」に据え置き。

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6.機械受注は足踏みがみられる

①民間設備投資の先行指標である10月の機械受注「船舶・電力を除く民需」(右下図)は前月比7.6%、前年比は4.5%の増加。

②製造業受注は前月比12.3%、前年比は3.9%。17業種中、石油製品・石炭製品、非鉄金属など12業種が増加。鉄鋼業、パルプ・紙・紙加工品など5業種が減少。

③非製造業(船舶・電力を除く)からの受注は前月比4.5%、前年比は5.1%の増加。12業種中、電力業、卸売業・小売業など6業種が増加。リース業、鉱業・採石業・砂利採取業など6業種が減少。

④内閣府の基調判断は前月の「持ち直しの動きがみられるものの、9月の実績は大きく減少した」から「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に変更。

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(1)10月の現金給与総額の前年比は1.5%。所定内給与は1.3%。所定外給与1.9%、特別給与は6.8%。実質賃金の伸び(下図)は▲0.1%と3ヶ月連続減少

7.実質賃金、実質消費は前年比マイナス (2)10月の家計消費(変動調整値)は前年比で名目1.4%、実質は▲0.3%(下図)と2ヶ月連続の減少。食料、被服、住居設備修繕、光熱が減少。一方、授業料、交通、通信は増加。勤労者世帯の実収入は名目▲1.3%、実質▲2.9%と不振。

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2015年

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2016年

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2017年

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2018年

1月

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実質賃金の推移(前年比、%)

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8.住宅着工戸数は一進一退の動き

①9月の住宅着工戸数は季調済年率で94.3万戸(右図)、前月比は▲1.6%、前年比は▲1.5%。

②季調済で持家は28.0万戸、前月比1.6%。前年比は▲0.0%と3ヶ月ぶりの減少。貸家は39.9万戸、前月比▲4.6%。前年比は▲5.8%と2ヶ月ぶりの減少。分譲住宅は25.9万戸、前月比0.8%。前年比は4.3%と2ヶ月連続の増加。分譲マンションの前年比は3.5%と2ヶ月連続の増加。分譲一戸建て住宅の前年比は4.7%で6ヶ月連続の増加

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2013年

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2014年

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2015年

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2016年

1月

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2017年

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2018年

1月

4月

7月

日本の住宅着工戸数(季調済年率、万戸)

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9.公共工事受注は前年比マイナスが続く

①10月の公共工事受注は前年比▲6.0%と6ヶ月連続のマイナス。

②工事分類別では土木工事▲9.3%、建築工事・建築設備工事2.5%、機械装置等工事▲5.5%。

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2013年

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2014年

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2016年

1月

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9月

2017年

1月

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2018年

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9月

公共機関からの受注工事(前年比、%)

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10.貿易収支の悪化が緩やかに進む

①11月の貿易収支(右上図)は▲7,373億円と前年比8,425億円悪化して赤字転落。

②輸出は前年比0.1%、金額は6兆9,276億円。数量は前年比▲1.9%(右下図)、価格の前年比は2.1%。

③輸入は前年比12.5%の7兆6,649億円。数量前年比は4.2%、価格前年比7.9%。

④地域別輸出では対アジア▲1.9%(中国0.4%、韓国▲9.3%、香港▲8.9%、台湾▲2.1%)、米国1.6%、西欧2.4%、中東は▲3.0%。

⑤商品別輸出は通信機▲45.2%、半導体等製造装置▲18.9%、自動車▲0.5%、半導体等電子部品▲0.1%など不振。

⑥商品別輸入は鉱物性燃料38.9%(うち原粗油44.0%、石油製品50.7%、LNG37.6%、石炭27.4%)、自動車15.6%、電算機類18.3%、原動機21.3%、非鉄金属鉱21.1%。

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2014年

1月

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2015年

1月

4月

7月

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2016年

1月

4月

7月

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2017年

1月

4月

7月

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2018年

1月

4月

7月

10月

輸出数量の推移(前年比、%)

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11. 10月の経常収支は前年比4割黒字幅が縮小

①10月の経常収支(右図)は貿易収支赤字転落のため、前年比8,786億円、40.1%黒字幅が縮小して、1兆3,099億円の黒字となった。

②10月の貿易収支は前年比7,503億円悪化して▲3,217億円と前年10月の黒字から赤字に転落した。③輸出は前年比7.7%の7兆786億円、輸入は20.5%の7兆4,104億円。

③第一次所得収支は直接投資収益が黒字幅を拡大したことから、前年比1,046億円黒字幅が拡大して2兆472億円の黒字。

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12.人手不足で雇用の好調は続く ①10月の就業者数は原系列で6,725万人、前年比144万人増と70ヶ月連続の増加。季調済(右上図)では6,688万人で前月比23万人増。原系列で雇用者数は5,996万人、前年比119万人増で70ヶ月連続の増加。正規は3,522万人、前年比37万人増と47ヶ月連続の増加、非正規は2,156万人、前年比115万人増と13ヶ月連続の増加。

②産業別就業者の前年比では宿泊業・飲食サービス業52万人増、学術研究・専門技術サービス業16万人増、医療・福祉15万人増、建設業▲8万人、製造業▲8万人。

③完全失業者数は163万人で前年比▲18万人。101ヶ月連続の減少。

④完全失業率(右下図)は2.4%と前月より0.1ポイント上昇。

⑤有効求人倍率は1.62倍で前月より0.02ポイント低下。8ヶ月ぶりの低下となった。

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①10月の鉱工業生産(確報)の前月比(右上図)は 2.9%、前年比は(右下図)4.2%の増加に転じる。

②業種別前月比で汎用・業務用機械工業7.1%、電子部品・デバイス工業8.7%、自動車工業3.1%などが上昇。生産用機械工業▲3.1%、化学工業▲1.2%、石油・石炭製品工業▲5.3%が低下。

③前年比では汎用・業務用機械工業17.0%、電子部品・デバイス工業10.9%、化学工業10.0%などが上昇。石油・石炭製品工業▲5.4%、無機・有機化学工業▲2.5%が減少。

④11月の製造工業生産予測指数は前月比0.6%、11月は2.2%の上昇を見ている。

⑤設備投資の先行指標である資本財(輸送機械を除く)出荷は前月比5.4%、前年比7.2%。

⑥経産省は前月の「生産は緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」から「生産は緩やかに持ち直している」に戻した。

13.鉱工業生産は再び持ち直し

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14.食料・エネルギー除くとCPIの伸びは0.1%

①11月のコア消費者物価(生鮮食品を除く総合)の前年比(右図)は0.9%と前月と変わらず。前月比(季調済)は0.0%。

②総合消費者物価の前年比は0.8%と前月より0.6ポイント低下。前月比(季調済)は▲0.2%。エネルギーの寄与度は0.61%、食料の寄与度は0.13%(前月は0.65%)

③コアコア消費者物価(食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く)の前年比は0.1%と0.1ポイント低下。前月比(原数値)は▲0.1%。

④項目別前年比で上昇率が高いのは灯油21.9%、ガソリン12.8%、外国パック旅行費11.4%、たばこ8.8%、電気代5.6%、都市ガス代5.1%。下落品目は生鮮野菜▲4.5%、通信料(携帯) ▲4.2%。

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Ⅴ マーケット動向

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1.NYダウ下落、米政府閉鎖で円高に動く

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2.ユーロは対ドルで横ばいの推移

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3.ポンドはBREXITを巡る不透明感で下落

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4.人民元は対ドル安値圏で推移

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5.米株下落で米長期金利は低下

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6.日本の長期金利は再びゼロ近傍に低下

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7.NYダウはFed利上げと政府閉鎖ほかで急落

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8.日経平均はNY株価に連動して2万円割れ

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9.中国株価は景気減速と米中貿易戦争で弱含み

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10.原油価格は供給過多と世界景気の減速懸念で暴落

Page 64: 2018年12月25日 福井県立大学客員教授 丹羽連絡事 …2018年12月25日 福井県立大学客員教授 丹羽連絡事務所チーフエコノミスト 中 島 精 也

11.金価格はリスクの高まりで反転上昇