2016.9.23 集中治療室における腎代替療法導入の比較

20
集集集集集集集集集集集集集集集集集集集 NEJM July 14, 2016

Transcript of 2016.9.23 集中治療室における腎代替療法導入の比較

Page 1: 2016.9.23 集中治療室における腎代替療法導入の比較

集中治療室における腎代替療法導入の比較               NEJM July 14, 2016

Page 2: 2016.9.23 集中治療室における腎代替療法導入の比較

BACKGROUND

• AKI は ICU ではよくみられ、高い死亡率とも関連し、腎代替療法( RRT )は治療戦略として重要である。• AKI を呈する急性重症患者で腎不全に直接関連する、生命を脅かす可能性のある合併症がない例での

RRT 導入時期は議論中である。• 過去の文献からは、早期の RRT が生存率を改善するという証拠があるが、別の 2 つの観察研究は RRTを受けていない患者は高い生存率であったと述べており、また、別の研究では早期の RRT は敗血症の危険があると述べている。

Page 3: 2016.9.23 集中治療室における腎代替療法導入の比較

• 早期の血液透析は炎症性メディエーターを減少させ、酸塩基平衡を維持し、容量過負荷の回避に役立つ。• しかし、透析があまりに早期に開始されると、透析が全く必要ないであろう一部の患者が透析合併症の危険にさらされる可能性がある。• ICU に入室している、 KDIGO 分類 Stage3 の

AKI 患者に対して、早期あるいは待機的なRRT 導入戦略を比較した。

Page 4: 2016.9.23 集中治療室における腎代替療法導入の比較

KDIGO 分類ステージ 血清 Cr 尿量1 基礎値の 1.5-1.9 倍

or≧0.3mg/dl の増加

<0.5ml/kg/h(6-12 時間持続 )

2 基礎値の 2.0-2.9 倍 <0.5ml/kg/h(12 時間以上持続 )

3 基礎値の 3 倍or≧4.0mg/dl の増加or腎代替療法開始or18 歳未満の患者ではeGFR<35ml/min/1.73m2の低下

<0.3ml/kg/h(24 時間以上持続 )or無尿 (12 時間以上持続 )

Page 5: 2016.9.23 集中治療室における腎代替療法導入の比較

RRT の適応 -renal indication• 尿毒症・高窒素血症脳症、心外膜炎、心タンポナーデ、出血傾向の合併がある場合• 体液過剰敗血症性ショックなどで蘇生期の輸液負荷後の利尿期にoutput が追いつかない、フロセミド使用しても利尿がつかないなど• 電解質異常CRF での高 K 血症• 酸塩基平衡異常重度の代謝性アシドーシス

Page 6: 2016.9.23 集中治療室における腎代替療法導入の比較

RRT の絶対適応適応項目 特徴代謝性 高窒素血症 尿毒症の合併 高カリウム血症 高マグネシウム血症

BUN 100mg/dl≧脳症、心外膜炎、出血傾向K 6mmol/L±≧ 心電図変化≧4mmol/L± 無尿・深部腱反射低下

アシドーシス 血清 pH < 7.15

乏尿、無尿 尿量< 200ml/12h ないし無尿体液過剰 AKI 合併し利尿薬不応性肺水腫

Page 7: 2016.9.23 集中治療室における腎代替療法導入の比較

METHOD• 多施設共同無作為化試験において、重症 AKI ( KDIGO分類 stage3 )の患者で、人工換気、カテコラミン、またはその両方を必要とし、腎不全に直接関連する、生命を脅かす可能性のある合併症がない例を、 RRT を早期に導入する群と、待機的に導入する群に割り付けた。• 早期導入群では、無作為化後ただちに RRT を導入した。• 待機群では、重度の高 K 血症、代謝性アシドーシス、肺水腫、血中 BUN112mg/dl 以上、無作為化後 72 時間以上持続する乏尿のうち、 1 つ以上が認められた場合に

RRT を導入した。• 主要評価項目は 60日以内の全生存とした。

Page 8: 2016.9.23 集中治療室における腎代替療法導入の比較

遅延群の RRT 導入基準• 72 時間以上の乏尿 or 無尿• BUN>112• K>6• Bicarbonate and/or GI 療法行っても、 K>5.5• pH<7.15(PaCO2<35) or 肺胞換気量増加しても改善しない混合性アシドーシス( PaCO2>50 )• 酸素化の保てない利尿薬不能性の肺水腫

Page 9: 2016.9.23 集中治療室における腎代替療法導入の比較

RESULTS• 620 例を無作為化。早期群 312 例、待機群 308 例。プロトロンビン時間以外は両群間で差がなかった。• 60日の時点での Kaplan-Meier 法による死亡率に、早期群と待機群の間で死亡率に有意差は認められず、死亡は、早期群では 311 例中 150 例( 48.5% 、 95%CI42.6-53.8 )、待機群では 308 例中 153 例( 49,7% 、 95%CI43.8-55.0 )に発生した( P=0.79 )( Figure1A )。• 早期群は平均 2 時間で、待機群は平均 57 時間で RRT 施行している。• 待機群の 151 例( 49% )は RRT を受けなかった( Figure1B )。

Page 10: 2016.9.23 集中治療室における腎代替療法導入の比較

• 72 時間以上持続する乏尿 or 無尿、 BUN112mg/dl 以上が RRT導入の理由として多く、待機群は代謝異常が顕著であった。• RRT を回避した患者の 60日死亡率は低かった( 37.1% )が、

RRT が遅れた患者の死亡率( 61.8% )は早期に開始した場合( 48.5% )と比べて高い死亡率であった( P<0.001 )。• 待機群では 60日生存していた 155 人のうち 95 人( 61% )の患者が RRT をうけなかったが、全治療期間に差はみられなかった( Table S5 )。• 28日死亡率、人工換気回避期間、昇圧剤回避期間、 ICU滞在日数、 28日 60日での RRT 治療期間に両群間で明らかな差はみられなかった( Table2 )。

Page 11: 2016.9.23 集中治療室における腎代替療法導入の比較

• カテーテル関連血流感染の発生率は、早期群のほうが待機群よりも高かった( 10% 対 5% 、 P=0.03 )( Table2 )。• 低リン血症は早期群で有意に高かったが、その他の

AKI 、 RRT に関連する合併症に両群間に差はみられなかった( Table2 )。• 出血量に両群間で差はみられなかった( Table2 )。このことは、透析のカテーテルに関連する出血や消化管出血に両群間で差がなかったことより、遅延群では別の原因による出血が多かったことを意味する( Table S8 )。• 腎機能改善の指標である利尿は、待機群でより早期に認められた( P<0.001 )( Figure2 )。

Page 12: 2016.9.23 集中治療室における腎代替療法導入の比較

DISCUSSION• 重症 AKI 患者を対象とした試験において、 RRT 早期群と待機群の間で死亡率に有意差は認められなかった。• 待機群では相当数の患者で RRT の必要性が回避された。• AKI 患者の RRT 導入に関しては大部分が観察研究によりもたらされており、メタ分析では、早期 RRT 導入により死亡率が低下すると述べている。この観察研究の欠点はすべての患者が RRT を受けていて、遅延群の腎機能が自然に改善する可能性について考慮されていない点である。• 50% の死亡率、 RRT 導入までの期間は仮説通りであったが、想定に反して待機群での RRT 導入による生存率改善がみられなかった。• 待機群の半数近くが血液透析を全く必要としなかったが、血液透析が実際に必要であった患者はすべての患者のサブセットのなかで、死亡する割合がもっとも高い集団であった。

Page 13: 2016.9.23 集中治療室における腎代替療法導入の比較

• 大部分の患者( 55% )は間欠的な透析療法を受けていて、 30% の患者のみが持続的腎代替療法だけを施行されているため、この結果を一般化することはできない。• 生存曲線は両群間で同様であったが、待機群での利尿までの期間は短く、カテ感染も低かった。

Page 14: 2016.9.23 集中治療室における腎代替療法導入の比較

IRRT か CRRT• 一般的には IRRT でも CRRT でも予後は変わらない。a. 血行動態は安定かb.頭蓋内圧亢進があるかIRRT では溶質除去が血管内から急激に起こるため、脳細胞内へ移行し頭蓋内圧亢進を悪化させる。c. 体液過剰があるかCRRT を選択d. 代謝亢進があるかBUN 高値では CRRT を選択e. 電解質異常があるか高 K では IRRT

Page 15: 2016.9.23 集中治療室における腎代替療法導入の比較

limitation

①サンプルサイズが小さい②Kt/V を用いていない③KDIGO   Stage3 のみ④RRT が遅れた患者の死亡率が高い( 61.8% )

Page 16: 2016.9.23 集中治療室における腎代替療法導入の比較

• 透析量の指標として、①Kt/V urea 、②尿素除去率など• Kt/V は一回の血液透析で総体液量の何倍を完全に浄化したかを表している。K: クリアランス透析効率( ml/ 分)t : 透析時間V:尿素の分布スペース(通常体重の 60% )• 透析量を尿素窒素でみる理由①血液透析で除去される小分子量物質、②細胞膜を自由に透過し、細胞内、間質、血管内で均一に分布する、③血液検査でデータを測定できる。

Page 17: 2016.9.23 集中治療室における腎代替療法導入の比較

Effect of early vs delayd initiation of renal replacement therapy on mortality in critically ill patients with acute kidney injuly:

The ELAIN Randamaized Clinical Trial JAMA 2016

Page 18: 2016.9.23 集中治療室における腎代替療法導入の比較

• ドイツ 単施設研究• KDIGO stage2 以上でかつ血漿 neutrophil

relatinase-associated lipocalin(NGAL) ( AKI 早期マーカー)値が 150ng/ml より高い AKI を有する患者 231 人を、早期( stage2 に達してから 6 時間以内)または遅延した持続的腎代替療法にランダムに割り付けた。• 特定の基準(進行性の乏尿・無尿、重度高 K 血症、尿毒症)が遅延群の透析開始に用いられた。

Page 19: 2016.9.23 集中治療室における腎代替療法導入の比較

• 早期血液透析の患者は、 90日死亡率( 39%対 55%)が有意に低く、機械換気の期間の中央値( 51日対 82日)も顕著に短かった。• 遅延群( 10%)の 11 人は血液透析を一度も受けなかった。

Page 20: 2016.9.23 集中治療室における腎代替療法導入の比較

まとめ• 溢水、電解質異常、アシドーシスなどの明らかな尿毒症症状は RRT 開始の基準になるが、一定の基準は定まっていない。• RRT の方法、透析量の基準も定まっていない。• 敗血症や臓器合併症を有する AKI では、より早期に RRT が開始される傾向にある。• KDIGO   Stage3 の AKI 患者(人工換気 orノルアド使ってる患者)で血液透析が回避できそうな場合はこの結果は参考になる。