2014年度秋学期 応用数学(解析) 第5部・測度論ダイジェスト / 第15回 ルベーグ積分...

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A. Asano, Kansai Univ. 2014年度秋学期 応用数学(解析) 浅野 晃 関西大学総合情報学部 第5部・測度論ダイジェスト ルベーグ積分 第15回

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

2014年度秋学期 応用数学(解析)

浅野 晃 関西大学総合情報学部

第5部・測度論ダイジェスト ルベーグ積分

第15回

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

依然, 積分に対する疑問

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

積分に対する疑問

積分f(x)

xp q

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第14回第5部・測度論ダイジェスト/ ルベーグ測度と完全加法性

測度論とは,「ものを測る」ことの本質を考える数学の分野です。長さ,面積,体積,質量など,ものを測るにはいろいろな測り方がありますが,これらをあわせて,何かを測った結果を測度 (measure)といいます。測度論では,測るとは何か、測ることのできる集合とは何か,といったことを学びます。この「測度論ダイジェスト」第1回では,測度論誕生のきっかけになった「疑問」を説明し,集合の基本的な測り方であるルベーグ測度,測度の持つべき基本的な性質である完全加法性,そしてその帰結として現れてきた零集合について説明します。

積分に対する疑問

定積分を習った時に,「任意のaについて,関数 f(x)のaからaまでの積分は0,すなわち! a

af(x)dx = 0

である」すなわち「幅が 0の積分は 0」ということを習ったと思います。

ということは,図 1(a)のように,積分! q

pf(x)dxから,pと qの間にある aのところだけ幅 0の線を

抜き取っても,積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないということになります。

幅 0の積分は 0なのだから,aの1カ所だけでなく,図 1(b)のように幅 0の線を何本抜き取っても,やはり積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないはずです。ならば,pと qの間にあるすべての有理数の位置にある幅 0の線を抜き取っても,すなわち可算無限個の線を抜き取っても,やはり面積は減らないのでしょうか?

どうも納得いかない気がします。この疑問は,今までなんとなく考えてきた「幅」という概念を,より精密にとらえる必要があることを示しています。

ジョルダン測度

これまで,定積分は「区分求積法」として習ったと思います。これは,ある関数の積分区間を「重なりのない,有限個の」区間に分けて,その上に,その関数のグラフの下の部分におさまるように配置した長方形(図

p q

f(x)

a p q

f(x)

(a) (b)

図 1: 積分に対する疑問.

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

積分に対する疑問

積分f(x)

xp q

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第14回第5部・測度論ダイジェスト/ ルベーグ測度と完全加法性

測度論とは,「ものを測る」ことの本質を考える数学の分野です。長さ,面積,体積,質量など,ものを測るにはいろいろな測り方がありますが,これらをあわせて,何かを測った結果を測度 (measure)といいます。測度論では,測るとは何か、測ることのできる集合とは何か,といったことを学びます。この「測度論ダイジェスト」第1回では,測度論誕生のきっかけになった「疑問」を説明し,集合の基本的な測り方であるルベーグ測度,測度の持つべき基本的な性質である完全加法性,そしてその帰結として現れてきた零集合について説明します。

積分に対する疑問

定積分を習った時に,「任意のaについて,関数 f(x)のaからaまでの積分は0,すなわち! a

af(x)dx = 0

である」すなわち「幅が 0の積分は 0」ということを習ったと思います。

ということは,図 1(a)のように,積分! q

pf(x)dxから,pと qの間にある aのところだけ幅 0の線を

抜き取っても,積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないということになります。

幅 0の積分は 0なのだから,aの1カ所だけでなく,図 1(b)のように幅 0の線を何本抜き取っても,やはり積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないはずです。ならば,pと qの間にあるすべての有理数の位置にある幅 0の線を抜き取っても,すなわち可算無限個の線を抜き取っても,やはり面積は減らないのでしょうか?

どうも納得いかない気がします。この疑問は,今までなんとなく考えてきた「幅」という概念を,より精密にとらえる必要があることを示しています。

ジョルダン測度

これまで,定積分は「区分求積法」として習ったと思います。これは,ある関数の積分区間を「重なりのない,有限個の」区間に分けて,その上に,その関数のグラフの下の部分におさまるように配置した長方形(図

p q

f(x)

a p q

f(x)

(a) (b)

図 1: 積分に対する疑問.

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p q

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

積分に対する疑問

積分f(x)

xp q

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第14回第5部・測度論ダイジェスト/ ルベーグ測度と完全加法性

測度論とは,「ものを測る」ことの本質を考える数学の分野です。長さ,面積,体積,質量など,ものを測るにはいろいろな測り方がありますが,これらをあわせて,何かを測った結果を測度 (measure)といいます。測度論では,測るとは何か、測ることのできる集合とは何か,といったことを学びます。この「測度論ダイジェスト」第1回では,測度論誕生のきっかけになった「疑問」を説明し,集合の基本的な測り方であるルベーグ測度,測度の持つべき基本的な性質である完全加法性,そしてその帰結として現れてきた零集合について説明します。

積分に対する疑問

定積分を習った時に,「任意のaについて,関数 f(x)のaからaまでの積分は0,すなわち! a

af(x)dx = 0

である」すなわち「幅が 0の積分は 0」ということを習ったと思います。

ということは,図 1(a)のように,積分! q

pf(x)dxから,pと qの間にある aのところだけ幅 0の線を

抜き取っても,積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないということになります。

幅 0の積分は 0なのだから,aの1カ所だけでなく,図 1(b)のように幅 0の線を何本抜き取っても,やはり積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないはずです。ならば,pと qの間にあるすべての有理数の位置にある幅 0の線を抜き取っても,すなわち可算無限個の線を抜き取っても,やはり面積は減らないのでしょうか?

どうも納得いかない気がします。この疑問は,今までなんとなく考えてきた「幅」という概念を,より精密にとらえる必要があることを示しています。

ジョルダン測度

これまで,定積分は「区分求積法」として習ったと思います。これは,ある関数の積分区間を「重なりのない,有限個の」区間に分けて,その上に,その関数のグラフの下の部分におさまるように配置した長方形(図

p q

f(x)

a p q

f(x)

(a) (b)

図 1: 積分に対する疑問.

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p qa

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

積分に対する疑問

積分f(x)

xp q

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第14回第5部・測度論ダイジェスト/ ルベーグ測度と完全加法性

測度論とは,「ものを測る」ことの本質を考える数学の分野です。長さ,面積,体積,質量など,ものを測るにはいろいろな測り方がありますが,これらをあわせて,何かを測った結果を測度 (measure)といいます。測度論では,測るとは何か、測ることのできる集合とは何か,といったことを学びます。この「測度論ダイジェスト」第1回では,測度論誕生のきっかけになった「疑問」を説明し,集合の基本的な測り方であるルベーグ測度,測度の持つべき基本的な性質である完全加法性,そしてその帰結として現れてきた零集合について説明します。

積分に対する疑問

定積分を習った時に,「任意のaについて,関数 f(x)のaからaまでの積分は0,すなわち! a

af(x)dx = 0

である」すなわち「幅が 0の積分は 0」ということを習ったと思います。

ということは,図 1(a)のように,積分! q

pf(x)dxから,pと qの間にある aのところだけ幅 0の線を

抜き取っても,積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないということになります。

幅 0の積分は 0なのだから,aの1カ所だけでなく,図 1(b)のように幅 0の線を何本抜き取っても,やはり積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないはずです。ならば,pと qの間にあるすべての有理数の位置にある幅 0の線を抜き取っても,すなわち可算無限個の線を抜き取っても,やはり面積は減らないのでしょうか?

どうも納得いかない気がします。この疑問は,今までなんとなく考えてきた「幅」という概念を,より精密にとらえる必要があることを示しています。

ジョルダン測度

これまで,定積分は「区分求積法」として習ったと思います。これは,ある関数の積分区間を「重なりのない,有限個の」区間に分けて,その上に,その関数のグラフの下の部分におさまるように配置した長方形(図

p q

f(x)

a p q

f(x)

(a) (b)

図 1: 積分に対する疑問.

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p q

だから,

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第14回第5部・測度論ダイジェスト/ ルベーグ測度と完全加法性

測度論とは,「ものを測る」ことの本質を考える数学の分野です。長さ,面積,体積,質量など,ものを測るにはいろいろな測り方がありますが,これらをあわせて,何かを測った結果を測度 (measure)といいます。測度論では,測るとは何か、測ることのできる集合とは何か,といったことを学びます。この「測度論ダイジェスト」第1回では,測度論誕生のきっかけになった「疑問」を説明し,集合の基本的な測り方であるルベーグ測度,測度の持つべき基本的な性質である完全加法性,そしてその帰結として現れてきた零集合について説明します。

積分に対する疑問

定積分を習った時に,「任意のaについて,関数 f(x)のaからaまでの積分は0,すなわち! a

af(x)dx = 0

である」すなわち「幅が 0の積分は 0」ということを習ったと思います。

ということは,図 1(a)のように,積分! q

pf(x)dxから,pと qの間にある aのところだけ幅 0の線を

抜き取っても,積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないということになります。

幅 0の積分は 0なのだから,aの1カ所だけでなく,図 1(b)のように幅 0の線を何本抜き取っても,やはり積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないはずです。ならば,pと qの間にあるすべての有理数の位置にある幅 0の線を抜き取っても,すなわち可算無限個の線を抜き取っても,やはり面積は減らないのでしょうか?

どうも納得いかない気がします。この疑問は,今までなんとなく考えてきた「幅」という概念を,より精密にとらえる必要があることを示しています。

ジョルダン測度

これまで,定積分は「区分求積法」として習ったと思います。これは,ある関数の積分区間を「重なりのない,有限個の」区間に分けて,その上に,その関数のグラフの下の部分におさまるように配置した長方形(図

p q

f(x)

a p q

f(x)

(a) (b)

図 1: 積分に対する疑問.

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a

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A. A

sano

, Kan

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niv.

積分に対する疑問

aのところで幅0の 直線を抜いても 積分の値は変わらない

積分f(x)

xp q

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第14回第5部・測度論ダイジェスト/ ルベーグ測度と完全加法性

測度論とは,「ものを測る」ことの本質を考える数学の分野です。長さ,面積,体積,質量など,ものを測るにはいろいろな測り方がありますが,これらをあわせて,何かを測った結果を測度 (measure)といいます。測度論では,測るとは何か、測ることのできる集合とは何か,といったことを学びます。この「測度論ダイジェスト」第1回では,測度論誕生のきっかけになった「疑問」を説明し,集合の基本的な測り方であるルベーグ測度,測度の持つべき基本的な性質である完全加法性,そしてその帰結として現れてきた零集合について説明します。

積分に対する疑問

定積分を習った時に,「任意のaについて,関数 f(x)のaからaまでの積分は0,すなわち! a

af(x)dx = 0

である」すなわち「幅が 0の積分は 0」ということを習ったと思います。

ということは,図 1(a)のように,積分! q

pf(x)dxから,pと qの間にある aのところだけ幅 0の線を

抜き取っても,積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないということになります。

幅 0の積分は 0なのだから,aの1カ所だけでなく,図 1(b)のように幅 0の線を何本抜き取っても,やはり積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないはずです。ならば,pと qの間にあるすべての有理数の位置にある幅 0の線を抜き取っても,すなわち可算無限個の線を抜き取っても,やはり面積は減らないのでしょうか?

どうも納得いかない気がします。この疑問は,今までなんとなく考えてきた「幅」という概念を,より精密にとらえる必要があることを示しています。

ジョルダン測度

これまで,定積分は「区分求積法」として習ったと思います。これは,ある関数の積分区間を「重なりのない,有限個の」区間に分けて,その上に,その関数のグラフの下の部分におさまるように配置した長方形(図

p q

f(x)

a p q

f(x)

(a) (b)

図 1: 積分に対する疑問.

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p q

だから,

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測度論とは,「ものを測る」ことの本質を考える数学の分野です。長さ,面積,体積,質量など,ものを測るにはいろいろな測り方がありますが,これらをあわせて,何かを測った結果を測度 (measure)といいます。測度論では,測るとは何か、測ることのできる集合とは何か,といったことを学びます。この「測度論ダイジェスト」第1回では,測度論誕生のきっかけになった「疑問」を説明し,集合の基本的な測り方であるルベーグ測度,測度の持つべき基本的な性質である完全加法性,そしてその帰結として現れてきた零集合について説明します。

積分に対する疑問

定積分を習った時に,「任意のaについて,関数 f(x)のaからaまでの積分は0,すなわち! a

af(x)dx = 0

である」すなわち「幅が 0の積分は 0」ということを習ったと思います。

ということは,図 1(a)のように,積分! q

pf(x)dxから,pと qの間にある aのところだけ幅 0の線を

抜き取っても,積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないということになります。

幅 0の積分は 0なのだから,aの1カ所だけでなく,図 1(b)のように幅 0の線を何本抜き取っても,やはり積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないはずです。ならば,pと qの間にあるすべての有理数の位置にある幅 0の線を抜き取っても,すなわち可算無限個の線を抜き取っても,やはり面積は減らないのでしょうか?

どうも納得いかない気がします。この疑問は,今までなんとなく考えてきた「幅」という概念を,より精密にとらえる必要があることを示しています。

ジョルダン測度

これまで,定積分は「区分求積法」として習ったと思います。これは,ある関数の積分区間を「重なりのない,有限個の」区間に分けて,その上に,その関数のグラフの下の部分におさまるように配置した長方形(図

p q

f(x)

a p q

f(x)

(a) (b)

図 1: 積分に対する疑問.

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a

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

積分に対する疑問

幅0の直線を何本抜いても 積分の値は変わらないp q

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第14回第5部・測度論ダイジェスト/ ルベーグ測度と完全加法性

測度論とは,「ものを測る」ことの本質を考える数学の分野です。長さ,面積,体積,質量など,ものを測るにはいろいろな測り方がありますが,これらをあわせて,何かを測った結果を測度 (measure)といいます。測度論では,測るとは何か、測ることのできる集合とは何か,といったことを学びます。この「測度論ダイジェスト」第1回では,測度論誕生のきっかけになった「疑問」を説明し,集合の基本的な測り方であるルベーグ測度,測度の持つべき基本的な性質である完全加法性,そしてその帰結として現れてきた零集合について説明します。

積分に対する疑問

定積分を習った時に,「任意のaについて,関数 f(x)のaからaまでの積分は0,すなわち! a

af(x)dx = 0

である」すなわち「幅が 0の積分は 0」ということを習ったと思います。

ということは,図 1(a)のように,積分! q

pf(x)dxから,pと qの間にある aのところだけ幅 0の線を

抜き取っても,積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないということになります。

幅 0の積分は 0なのだから,aの1カ所だけでなく,図 1(b)のように幅 0の線を何本抜き取っても,やはり積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないはずです。ならば,pと qの間にあるすべての有理数の位置にある幅 0の線を抜き取っても,すなわち可算無限個の線を抜き取っても,やはり面積は減らないのでしょうか?

どうも納得いかない気がします。この疑問は,今までなんとなく考えてきた「幅」という概念を,より精密にとらえる必要があることを示しています。

ジョルダン測度

これまで,定積分は「区分求積法」として習ったと思います。これは,ある関数の積分区間を「重なりのない,有限個の」区間に分けて,その上に,その関数のグラフの下の部分におさまるように配置した長方形(図

p q

f(x)

a p q

f(x)

(a) (b)

図 1: 積分に対する疑問.

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A. A

sano

, Kan

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niv.

積分に対する疑問

幅0の直線を何本抜いても 積分の値は変わらないp q

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第14回第5部・測度論ダイジェスト/ ルベーグ測度と完全加法性

測度論とは,「ものを測る」ことの本質を考える数学の分野です。長さ,面積,体積,質量など,ものを測るにはいろいろな測り方がありますが,これらをあわせて,何かを測った結果を測度 (measure)といいます。測度論では,測るとは何か、測ることのできる集合とは何か,といったことを学びます。この「測度論ダイジェスト」第1回では,測度論誕生のきっかけになった「疑問」を説明し,集合の基本的な測り方であるルベーグ測度,測度の持つべき基本的な性質である完全加法性,そしてその帰結として現れてきた零集合について説明します。

積分に対する疑問

定積分を習った時に,「任意のaについて,関数 f(x)のaからaまでの積分は0,すなわち! a

af(x)dx = 0

である」すなわち「幅が 0の積分は 0」ということを習ったと思います。

ということは,図 1(a)のように,積分! q

pf(x)dxから,pと qの間にある aのところだけ幅 0の線を

抜き取っても,積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないということになります。

幅 0の積分は 0なのだから,aの1カ所だけでなく,図 1(b)のように幅 0の線を何本抜き取っても,やはり積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないはずです。ならば,pと qの間にあるすべての有理数の位置にある幅 0の線を抜き取っても,すなわち可算無限個の線を抜き取っても,やはり面積は減らないのでしょうか?

どうも納得いかない気がします。この疑問は,今までなんとなく考えてきた「幅」という概念を,より精密にとらえる必要があることを示しています。

ジョルダン測度

これまで,定積分は「区分求積法」として習ったと思います。これは,ある関数の積分区間を「重なりのない,有限個の」区間に分けて,その上に,その関数のグラフの下の部分におさまるように配置した長方形(図

p q

f(x)

a p q

f(x)

(a) (b)

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p q

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

積分に対する疑問

幅0の直線を何本抜いても 積分の値は変わらないp q

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第14回第5部・測度論ダイジェスト/ ルベーグ測度と完全加法性

測度論とは,「ものを測る」ことの本質を考える数学の分野です。長さ,面積,体積,質量など,ものを測るにはいろいろな測り方がありますが,これらをあわせて,何かを測った結果を測度 (measure)といいます。測度論では,測るとは何か、測ることのできる集合とは何か,といったことを学びます。この「測度論ダイジェスト」第1回では,測度論誕生のきっかけになった「疑問」を説明し,集合の基本的な測り方であるルベーグ測度,測度の持つべき基本的な性質である完全加法性,そしてその帰結として現れてきた零集合について説明します。

積分に対する疑問

定積分を習った時に,「任意のaについて,関数 f(x)のaからaまでの積分は0,すなわち! a

af(x)dx = 0

である」すなわち「幅が 0の積分は 0」ということを習ったと思います。

ということは,図 1(a)のように,積分! q

pf(x)dxから,pと qの間にある aのところだけ幅 0の線を

抜き取っても,積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないということになります。

幅 0の積分は 0なのだから,aの1カ所だけでなく,図 1(b)のように幅 0の線を何本抜き取っても,やはり積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないはずです。ならば,pと qの間にあるすべての有理数の位置にある幅 0の線を抜き取っても,すなわち可算無限個の線を抜き取っても,やはり面積は減らないのでしょうか?

どうも納得いかない気がします。この疑問は,今までなんとなく考えてきた「幅」という概念を,より精密にとらえる必要があることを示しています。

ジョルダン測度

これまで,定積分は「区分求積法」として習ったと思います。これは,ある関数の積分区間を「重なりのない,有限個の」区間に分けて,その上に,その関数のグラフの下の部分におさまるように配置した長方形(図

p q

f(x)

a p q

f(x)

(a) (b)

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可算無限個の直線を 抜いても

p q

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積分に対する疑問

幅0の直線を何本抜いても 積分の値は変わらないp q

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測度論とは,「ものを測る」ことの本質を考える数学の分野です。長さ,面積,体積,質量など,ものを測るにはいろいろな測り方がありますが,これらをあわせて,何かを測った結果を測度 (measure)といいます。測度論では,測るとは何か、測ることのできる集合とは何か,といったことを学びます。この「測度論ダイジェスト」第1回では,測度論誕生のきっかけになった「疑問」を説明し,集合の基本的な測り方であるルベーグ測度,測度の持つべき基本的な性質である完全加法性,そしてその帰結として現れてきた零集合について説明します。

積分に対する疑問

定積分を習った時に,「任意のaについて,関数 f(x)のaからaまでの積分は0,すなわち! a

af(x)dx = 0

である」すなわち「幅が 0の積分は 0」ということを習ったと思います。

ということは,図 1(a)のように,積分! q

pf(x)dxから,pと qの間にある aのところだけ幅 0の線を

抜き取っても,積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないということになります。

幅 0の積分は 0なのだから,aの1カ所だけでなく,図 1(b)のように幅 0の線を何本抜き取っても,やはり積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないはずです。ならば,pと qの間にあるすべての有理数の位置にある幅 0の線を抜き取っても,すなわち可算無限個の線を抜き取っても,やはり面積は減らないのでしょうか?

どうも納得いかない気がします。この疑問は,今までなんとなく考えてきた「幅」という概念を,より精密にとらえる必要があることを示しています。

ジョルダン測度

これまで,定積分は「区分求積法」として習ったと思います。これは,ある関数の積分区間を「重なりのない,有限個の」区間に分けて,その上に,その関数のグラフの下の部分におさまるように配置した長方形(図

p q

f(x)

a p q

f(x)

(a) (b)

図 1: 積分に対する疑問.

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第14回 (2015. 1. 15) http://racco.mikeneko.jp/  1/6 ページ

可算無限個の直線を 抜いても

p q

どれだけ拡大してみても, びっしりと直線がならんでいる

Page 13: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第5部・測度論ダイジェスト / 第15回 ルベーグ積分 (2015. 1. 22)

2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

積分に対する疑問

幅0の直線を何本抜いても 積分の値は変わらないp q

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第14回第5部・測度論ダイジェスト/ ルベーグ測度と完全加法性

測度論とは,「ものを測る」ことの本質を考える数学の分野です。長さ,面積,体積,質量など,ものを測るにはいろいろな測り方がありますが,これらをあわせて,何かを測った結果を測度 (measure)といいます。測度論では,測るとは何か、測ることのできる集合とは何か,といったことを学びます。この「測度論ダイジェスト」第1回では,測度論誕生のきっかけになった「疑問」を説明し,集合の基本的な測り方であるルベーグ測度,測度の持つべき基本的な性質である完全加法性,そしてその帰結として現れてきた零集合について説明します。

積分に対する疑問

定積分を習った時に,「任意のaについて,関数 f(x)のaからaまでの積分は0,すなわち! a

af(x)dx = 0

である」すなわち「幅が 0の積分は 0」ということを習ったと思います。

ということは,図 1(a)のように,積分! q

pf(x)dxから,pと qの間にある aのところだけ幅 0の線を

抜き取っても,積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないということになります。

幅 0の積分は 0なのだから,aの1カ所だけでなく,図 1(b)のように幅 0の線を何本抜き取っても,やはり積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないはずです。ならば,pと qの間にあるすべての有理数の位置にある幅 0の線を抜き取っても,すなわち可算無限個の線を抜き取っても,やはり面積は減らないのでしょうか?

どうも納得いかない気がします。この疑問は,今までなんとなく考えてきた「幅」という概念を,より精密にとらえる必要があることを示しています。

ジョルダン測度

これまで,定積分は「区分求積法」として習ったと思います。これは,ある関数の積分区間を「重なりのない,有限個の」区間に分けて,その上に,その関数のグラフの下の部分におさまるように配置した長方形(図

p q

f(x)

a p q

f(x)

(a) (b)

図 1: 積分に対する疑問.

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第14回 (2015. 1. 15) http://racco.mikeneko.jp/  1/6 ページ

可算無限個の直線を 抜いても

p q

どれだけ拡大してみても, びっしりと直線がならんでいる

積分の値は変わらない のか?

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

積分に対する疑問

幅0の直線を可算無限個 抜いても

p q

どれだけ拡大してみても, びっしりと直線がならんでいる

積分の値は変わらない のか?

Page 15: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第5部・測度論ダイジェスト / 第15回 ルベーグ積分 (2015. 1. 22)

2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

積分に対する疑問

幅0の直線を可算無限個 抜いても

p q

どれだけ拡大してみても, びっしりと直線がならんでいる

積分の値は変わらない のか?

この疑問に答えるために, pとqの間にある有理数全体が占める幅を考える

Page 16: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第5部・測度論ダイジェスト / 第15回 ルベーグ積分 (2015. 1. 22)

2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

積分に対する疑問

幅0の直線を可算無限個 抜いても

p q

どれだけ拡大してみても, びっしりと直線がならんでいる

積分の値は変わらない のか?

この疑問に答えるために, pとqの間にある有理数全体が占める幅を考える 可算無限個ある

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

有理数全体が占める幅可算無限個ある有理数の幅を考えるには ルベーグ測度の考え方が必要

Page 18: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第5部・測度論ダイジェスト / 第15回 ルベーグ積分 (2015. 1. 22)

2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

有理数全体が占める幅可算無限個ある有理数の幅を考えるには ルベーグ測度の考え方が必要

有理数の集合が数直線上で持つ幅(測度)

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

有理数全体が占める幅可算無限個ある有理数の幅を考えるには ルベーグ測度の考え方が必要

有理数の集合が数直線上で持つ幅(測度)

有理数全体を,区間の組み合わせで覆ったときの

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

有理数全体が占める幅可算無限個ある有理数の幅を考えるには ルベーグ測度の考え方が必要

有理数の集合が数直線上で持つ幅(測度)

有理数全体を,区間の組み合わせで覆ったときの「区間の長さの合計」の下限

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

有理数全体が占める幅

こういうふうに覆うことができる有理数a1, a2, … をεを任意の正の数とすると

Page 22: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第5部・測度論ダイジェスト / 第15回 ルベーグ積分 (2015. 1. 22)

2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

有理数全体が占める幅

こういうふうに覆うことができる有理数a1, a2, … をεを任意の正の数とすると

Page 23: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第5部・測度論ダイジェスト / 第15回 ルベーグ積分 (2015. 1. 22)

2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

有理数全体が占める幅

こういうふうに覆うことができる有理数a1, a2, … を

a1

εを任意の正の数とすると

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

有理数全体が占める幅

こういうふうに覆うことができる有理数a1, a2, … を

a1 a2

εを任意の正の数とすると

Page 25: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第5部・測度論ダイジェスト / 第15回 ルベーグ積分 (2015. 1. 22)

2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

有理数全体が占める幅

こういうふうに覆うことができる有理数a1, a2, … を

a1 a2 a3

εを任意の正の数とすると

Page 26: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第5部・測度論ダイジェスト / 第15回 ルベーグ積分 (2015. 1. 22)

2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

有理数全体が占める幅

こういうふうに覆うことができる有理数a1, a2, … を

a1 a2 a3

εを任意の正の数とすると

Page 27: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第5部・測度論ダイジェスト / 第15回 ルベーグ積分 (2015. 1. 22)

2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

有理数全体が占める幅

こういうふうに覆うことができる有理数a1, a2, … を

a1 a2 a3

ε/ 2

εを任意の正の数とすると

Page 28: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第5部・測度論ダイジェスト / 第15回 ルベーグ積分 (2015. 1. 22)

2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

有理数全体が占める幅

こういうふうに覆うことができる有理数a1, a2, … を

a1 a2 a3

ε/ 2 ε/ 22

εを任意の正の数とすると

Page 29: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第5部・測度論ダイジェスト / 第15回 ルベーグ積分 (2015. 1. 22)

2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

有理数全体が占める幅

こういうふうに覆うことができる有理数a1, a2, … を

a1 a2 a3

ε/ 2 ε/ 22 ε/ 23

εを任意の正の数とすると

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

有理数全体が占める幅

こういうふうに覆うことができる

覆った区間の長さの合計

有理数a1, a2, … を

a1 a2 a3

ε/ 2 ε/ 22 ε/ 23

εを任意の正の数とすると

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

有理数全体が占める幅

こういうふうに覆うことができる

覆った区間の長さの合計

有理数a1, a2, … を

a1 a2 a3

ε/ 2 ε/ 22 ε/ 23

となり,完全加法性((6)式)が成り立つことが示されます。

さて,(7)式がなりたつことは数学的帰納法によって示します。n = 1のとき,E1 ⊂ Sより Ec1 ⊃ Sc

なので

m∗(A) = m∗(A ∩ E1) +m∗(A ∩ Ec1)

! m∗(A ∩ E1) +m∗(A ∩ Sc)(12)

で,たしかに (7)式がなりたっています。n = kのとき (7)式がなりたっているとします。ここで Aは任意なので,これをA ∩ Ec

k+1で置き換えると

m∗(A ∩ Eck+1) !

k!

i=1

m∗(A ∩ Eck+1 ∩ Ei) +m∗(A ∩ Ec

k+1 ∩ Sc) (13)

で,Eck+1 ∩ Ei = Ei,Ec

k+1 ∩ Sc = Scより

m∗(A ∩ Eck+1) !

k!

i=1

m∗(A ∩ Ei) +m∗(A ∩ Sc) (14)

がなりたちます。一方,Ek+1は可測なので

m∗(A) = m∗(A ∩ Ek+1) +m∗(A ∩ Eck+1) (15)

で,(14)式を (15)式の右辺の第2項に用いると

m∗(A) ! m∗(A ∩ Ek+1) +k!

i=1

m∗(A ∩ Ei) +m∗(A ∩ Sc)

=k+1!

i=1

m∗(A ∩ Ei) +m∗(A ∩ Sc)

(16)

となり,やはり (7)式がなりたっています。よって証明されました。■

零集合と「ほとんどいたるところ」

ここまでの議論をふまえて,最初の「有理数全体の幅」の問題を考えます。ここまでは平面上の図形を長方形で覆うイメージを思い浮かべてきましたが,ここでは,数直線上のある集合を「区間」を組み合わせて覆うことを考えます。有理数は可算無限個あるので,ジョルダン測度の考え方で「幅」を考えることはできません。そこで,ルベーグ測度で考えます。

有理数は可算ですから,通し番号をつけて a1, a2, . . . an . . . と表すことができます。ルベーグ測度の考えでは,有理数の集合が数直線上でもつ幅は,有理数全体を区間の組み合わせ(重なってもよいことに注意)で覆ったときの,区間の長さの合計の下限です。そこで,εを任意の正の数とし,a1を幅 ε/2の区間で,a2を幅 ε/22の区間で,・・・,anを幅 ε/2nの区間で覆うとします。

このとき区間の長さの合計はε

2+

ε

22+ · · ·+ ε

2n+ · · · = ε (17)

となります。εは任意の正の数ですからいくらでも小さくすることができるので,区間の長さの合計の下限は 0となります。すなわち,有理数全体のルベーグ測度は 0となります。したがって,最初の問題

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第14回 (2015. 1. 15) http://racco.mikeneko.jp/  5/6 ページ

εを任意の正の数とすると

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

有理数全体が占める幅

こういうふうに覆うことができる

覆った区間の長さの合計

有理数a1, a2, … を

a1 a2 a3

ε/ 2 ε/ 22 ε/ 23

となり,完全加法性((6)式)が成り立つことが示されます。

さて,(7)式がなりたつことは数学的帰納法によって示します。n = 1のとき,E1 ⊂ Sより Ec1 ⊃ Sc

なので

m∗(A) = m∗(A ∩ E1) +m∗(A ∩ Ec1)

! m∗(A ∩ E1) +m∗(A ∩ Sc)(12)

で,たしかに (7)式がなりたっています。n = kのとき (7)式がなりたっているとします。ここで Aは任意なので,これをA ∩ Ec

k+1で置き換えると

m∗(A ∩ Eck+1) !

k!

i=1

m∗(A ∩ Eck+1 ∩ Ei) +m∗(A ∩ Ec

k+1 ∩ Sc) (13)

で,Eck+1 ∩ Ei = Ei,Ec

k+1 ∩ Sc = Scより

m∗(A ∩ Eck+1) !

k!

i=1

m∗(A ∩ Ei) +m∗(A ∩ Sc) (14)

がなりたちます。一方,Ek+1は可測なので

m∗(A) = m∗(A ∩ Ek+1) +m∗(A ∩ Eck+1) (15)

で,(14)式を (15)式の右辺の第2項に用いると

m∗(A) ! m∗(A ∩ Ek+1) +k!

i=1

m∗(A ∩ Ei) +m∗(A ∩ Sc)

=k+1!

i=1

m∗(A ∩ Ei) +m∗(A ∩ Sc)

(16)

となり,やはり (7)式がなりたっています。よって証明されました。■

零集合と「ほとんどいたるところ」

ここまでの議論をふまえて,最初の「有理数全体の幅」の問題を考えます。ここまでは平面上の図形を長方形で覆うイメージを思い浮かべてきましたが,ここでは,数直線上のある集合を「区間」を組み合わせて覆うことを考えます。有理数は可算無限個あるので,ジョルダン測度の考え方で「幅」を考えることはできません。そこで,ルベーグ測度で考えます。

有理数は可算ですから,通し番号をつけて a1, a2, . . . an . . . と表すことができます。ルベーグ測度の考えでは,有理数の集合が数直線上でもつ幅は,有理数全体を区間の組み合わせ(重なってもよいことに注意)で覆ったときの,区間の長さの合計の下限です。そこで,εを任意の正の数とし,a1を幅 ε/2の区間で,a2を幅 ε/22の区間で,・・・,anを幅 ε/2nの区間で覆うとします。

このとき区間の長さの合計はε

2+

ε

22+ · · ·+ ε

2n+ · · · = ε (17)

となります。εは任意の正の数ですからいくらでも小さくすることができるので,区間の長さの合計の下限は 0となります。すなわち,有理数全体のルベーグ測度は 0となります。したがって,最初の問題

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εを任意の正の数とすると

その下限がルベーグ(外)測度で,すなわち0

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

有理数全体が占める幅

こういうふうに覆うことができる

覆った区間の長さの合計

有理数a1, a2, … を

a1 a2 a3

ε/ 2 ε/ 22 ε/ 23

となり,完全加法性((6)式)が成り立つことが示されます。

さて,(7)式がなりたつことは数学的帰納法によって示します。n = 1のとき,E1 ⊂ Sより Ec1 ⊃ Sc

なので

m∗(A) = m∗(A ∩ E1) +m∗(A ∩ Ec1)

! m∗(A ∩ E1) +m∗(A ∩ Sc)(12)

で,たしかに (7)式がなりたっています。n = kのとき (7)式がなりたっているとします。ここで Aは任意なので,これをA ∩ Ec

k+1で置き換えると

m∗(A ∩ Eck+1) !

k!

i=1

m∗(A ∩ Eck+1 ∩ Ei) +m∗(A ∩ Ec

k+1 ∩ Sc) (13)

で,Eck+1 ∩ Ei = Ei,Ec

k+1 ∩ Sc = Scより

m∗(A ∩ Eck+1) !

k!

i=1

m∗(A ∩ Ei) +m∗(A ∩ Sc) (14)

がなりたちます。一方,Ek+1は可測なので

m∗(A) = m∗(A ∩ Ek+1) +m∗(A ∩ Eck+1) (15)

で,(14)式を (15)式の右辺の第2項に用いると

m∗(A) ! m∗(A ∩ Ek+1) +k!

i=1

m∗(A ∩ Ei) +m∗(A ∩ Sc)

=k+1!

i=1

m∗(A ∩ Ei) +m∗(A ∩ Sc)

(16)

となり,やはり (7)式がなりたっています。よって証明されました。■

零集合と「ほとんどいたるところ」

ここまでの議論をふまえて,最初の「有理数全体の幅」の問題を考えます。ここまでは平面上の図形を長方形で覆うイメージを思い浮かべてきましたが,ここでは,数直線上のある集合を「区間」を組み合わせて覆うことを考えます。有理数は可算無限個あるので,ジョルダン測度の考え方で「幅」を考えることはできません。そこで,ルベーグ測度で考えます。

有理数は可算ですから,通し番号をつけて a1, a2, . . . an . . . と表すことができます。ルベーグ測度の考えでは,有理数の集合が数直線上でもつ幅は,有理数全体を区間の組み合わせ(重なってもよいことに注意)で覆ったときの,区間の長さの合計の下限です。そこで,εを任意の正の数とし,a1を幅 ε/2の区間で,a2を幅 ε/22の区間で,・・・,anを幅 ε/2nの区間で覆うとします。

このとき区間の長さの合計はε

2+

ε

22+ · · ·+ ε

2n+ · · · = ε (17)

となります。εは任意の正の数ですからいくらでも小さくすることができるので,区間の長さの合計の下限は 0となります。すなわち,有理数全体のルベーグ測度は 0となります。したがって,最初の問題

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第14回 (2015. 1. 15) http://racco.mikeneko.jp/  5/6 ページ

εを任意の正の数とすると

その下限がルベーグ(外)測度で,すなわち0有理数全体のルベーグ測度は0

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

積分に対する疑問この疑問はまだ解決していない。そもそも,

有理数の位置にある可算無限個の直線を抜いた積分

p q

ジョルダン測度にもとづく積分(リーマン積分)では, 可算無限個の分割はできない

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

区分求積法で積分を求める

積分 は,

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第14回第5部・測度論ダイジェスト/ ルベーグ測度と完全加法性

測度論とは,「ものを測る」ことの本質を考える数学の分野です。長さ,面積,体積,質量など,ものを測るにはいろいろな測り方がありますが,これらをあわせて,何かを測った結果を測度 (measure)といいます。測度論では,測るとは何か、測ることのできる集合とは何か,といったことを学びます。この「測度論ダイジェスト」第1回では,測度論誕生のきっかけになった「疑問」を説明し,集合の基本的な測り方であるルベーグ測度,測度の持つべき基本的な性質である完全加法性,そしてその帰結として現れてきた零集合について説明します。

積分に対する疑問

定積分を習った時に,「任意のaについて,関数 f(x)のaからaまでの積分は0,すなわち! a

af(x)dx = 0

である」すなわち「幅が 0の積分は 0」ということを習ったと思います。

ということは,図 1(a)のように,積分! q

pf(x)dxから,pと qの間にある aのところだけ幅 0の線を

抜き取っても,積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないということになります。

幅 0の積分は 0なのだから,aの1カ所だけでなく,図 1(b)のように幅 0の線を何本抜き取っても,やはり積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないはずです。ならば,pと qの間にあるすべての有理数の位置にある幅 0の線を抜き取っても,すなわち可算無限個の線を抜き取っても,やはり面積は減らないのでしょうか?

どうも納得いかない気がします。この疑問は,今までなんとなく考えてきた「幅」という概念を,より精密にとらえる必要があることを示しています。

ジョルダン測度

これまで,定積分は「区分求積法」として習ったと思います。これは,ある関数の積分区間を「重なりのない,有限個の」区間に分けて,その上に,その関数のグラフの下の部分におさまるように配置した長方形(図

p q

f(x)

a p q

f(x)

(a) (b)

図 1: 積分に対する疑問.

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第14回 (2015. 1. 15) http://racco.mikeneko.jp/  1/6 ページ

f(x)

xp

長方形で近似

q

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

区分求積法で積分を求める

積分 は,

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第14回第5部・測度論ダイジェスト/ ルベーグ測度と完全加法性

測度論とは,「ものを測る」ことの本質を考える数学の分野です。長さ,面積,体積,質量など,ものを測るにはいろいろな測り方がありますが,これらをあわせて,何かを測った結果を測度 (measure)といいます。測度論では,測るとは何か、測ることのできる集合とは何か,といったことを学びます。この「測度論ダイジェスト」第1回では,測度論誕生のきっかけになった「疑問」を説明し,集合の基本的な測り方であるルベーグ測度,測度の持つべき基本的な性質である完全加法性,そしてその帰結として現れてきた零集合について説明します。

積分に対する疑問

定積分を習った時に,「任意のaについて,関数 f(x)のaからaまでの積分は0,すなわち! a

af(x)dx = 0

である」すなわち「幅が 0の積分は 0」ということを習ったと思います。

ということは,図 1(a)のように,積分! q

pf(x)dxから,pと qの間にある aのところだけ幅 0の線を

抜き取っても,積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないということになります。

幅 0の積分は 0なのだから,aの1カ所だけでなく,図 1(b)のように幅 0の線を何本抜き取っても,やはり積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないはずです。ならば,pと qの間にあるすべての有理数の位置にある幅 0の線を抜き取っても,すなわち可算無限個の線を抜き取っても,やはり面積は減らないのでしょうか?

どうも納得いかない気がします。この疑問は,今までなんとなく考えてきた「幅」という概念を,より精密にとらえる必要があることを示しています。

ジョルダン測度

これまで,定積分は「区分求積法」として習ったと思います。これは,ある関数の積分区間を「重なりのない,有限個の」区間に分けて,その上に,その関数のグラフの下の部分におさまるように配置した長方形(図

p q

f(x)

a p q

f(x)

(a) (b)

図 1: 積分に対する疑問.

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第14回 (2015. 1. 15) http://racco.mikeneko.jp/  1/6 ページ

f(x)

xp

長方形で近似

q

積分区間を

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

区分求積法で積分を求める

積分 は,

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第14回第5部・測度論ダイジェスト/ ルベーグ測度と完全加法性

測度論とは,「ものを測る」ことの本質を考える数学の分野です。長さ,面積,体積,質量など,ものを測るにはいろいろな測り方がありますが,これらをあわせて,何かを測った結果を測度 (measure)といいます。測度論では,測るとは何か、測ることのできる集合とは何か,といったことを学びます。この「測度論ダイジェスト」第1回では,測度論誕生のきっかけになった「疑問」を説明し,集合の基本的な測り方であるルベーグ測度,測度の持つべき基本的な性質である完全加法性,そしてその帰結として現れてきた零集合について説明します。

積分に対する疑問

定積分を習った時に,「任意のaについて,関数 f(x)のaからaまでの積分は0,すなわち! a

af(x)dx = 0

である」すなわち「幅が 0の積分は 0」ということを習ったと思います。

ということは,図 1(a)のように,積分! q

pf(x)dxから,pと qの間にある aのところだけ幅 0の線を

抜き取っても,積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないということになります。

幅 0の積分は 0なのだから,aの1カ所だけでなく,図 1(b)のように幅 0の線を何本抜き取っても,やはり積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないはずです。ならば,pと qの間にあるすべての有理数の位置にある幅 0の線を抜き取っても,すなわち可算無限個の線を抜き取っても,やはり面積は減らないのでしょうか?

どうも納得いかない気がします。この疑問は,今までなんとなく考えてきた「幅」という概念を,より精密にとらえる必要があることを示しています。

ジョルダン測度

これまで,定積分は「区分求積法」として習ったと思います。これは,ある関数の積分区間を「重なりのない,有限個の」区間に分けて,その上に,その関数のグラフの下の部分におさまるように配置した長方形(図

p q

f(x)

a p q

f(x)

(a) (b)

図 1: 積分に対する疑問.

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f(x)

xp

長方形で近似

q

積分区間を 重なりのない,有限個の

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

区分求積法で積分を求める

積分 は,

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第14回第5部・測度論ダイジェスト/ ルベーグ測度と完全加法性

測度論とは,「ものを測る」ことの本質を考える数学の分野です。長さ,面積,体積,質量など,ものを測るにはいろいろな測り方がありますが,これらをあわせて,何かを測った結果を測度 (measure)といいます。測度論では,測るとは何か、測ることのできる集合とは何か,といったことを学びます。この「測度論ダイジェスト」第1回では,測度論誕生のきっかけになった「疑問」を説明し,集合の基本的な測り方であるルベーグ測度,測度の持つべき基本的な性質である完全加法性,そしてその帰結として現れてきた零集合について説明します。

積分に対する疑問

定積分を習った時に,「任意のaについて,関数 f(x)のaからaまでの積分は0,すなわち! a

af(x)dx = 0

である」すなわち「幅が 0の積分は 0」ということを習ったと思います。

ということは,図 1(a)のように,積分! q

pf(x)dxから,pと qの間にある aのところだけ幅 0の線を

抜き取っても,積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないということになります。

幅 0の積分は 0なのだから,aの1カ所だけでなく,図 1(b)のように幅 0の線を何本抜き取っても,やはり積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないはずです。ならば,pと qの間にあるすべての有理数の位置にある幅 0の線を抜き取っても,すなわち可算無限個の線を抜き取っても,やはり面積は減らないのでしょうか?

どうも納得いかない気がします。この疑問は,今までなんとなく考えてきた「幅」という概念を,より精密にとらえる必要があることを示しています。

ジョルダン測度

これまで,定積分は「区分求積法」として習ったと思います。これは,ある関数の積分区間を「重なりのない,有限個の」区間に分けて,その上に,その関数のグラフの下の部分におさまるように配置した長方形(図

p q

f(x)

a p q

f(x)

(a) (b)

図 1: 積分に対する疑問.

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f(x)

xp

長方形で近似

q

積分区間を 重なりのない,有限個の区間に分けて,

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

区分求積法で積分を求める

積分 は,

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第14回第5部・測度論ダイジェスト/ ルベーグ測度と完全加法性

測度論とは,「ものを測る」ことの本質を考える数学の分野です。長さ,面積,体積,質量など,ものを測るにはいろいろな測り方がありますが,これらをあわせて,何かを測った結果を測度 (measure)といいます。測度論では,測るとは何か、測ることのできる集合とは何か,といったことを学びます。この「測度論ダイジェスト」第1回では,測度論誕生のきっかけになった「疑問」を説明し,集合の基本的な測り方であるルベーグ測度,測度の持つべき基本的な性質である完全加法性,そしてその帰結として現れてきた零集合について説明します。

積分に対する疑問

定積分を習った時に,「任意のaについて,関数 f(x)のaからaまでの積分は0,すなわち! a

af(x)dx = 0

である」すなわち「幅が 0の積分は 0」ということを習ったと思います。

ということは,図 1(a)のように,積分! q

pf(x)dxから,pと qの間にある aのところだけ幅 0の線を

抜き取っても,積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないということになります。

幅 0の積分は 0なのだから,aの1カ所だけでなく,図 1(b)のように幅 0の線を何本抜き取っても,やはり積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないはずです。ならば,pと qの間にあるすべての有理数の位置にある幅 0の線を抜き取っても,すなわち可算無限個の線を抜き取っても,やはり面積は減らないのでしょうか?

どうも納得いかない気がします。この疑問は,今までなんとなく考えてきた「幅」という概念を,より精密にとらえる必要があることを示しています。

ジョルダン測度

これまで,定積分は「区分求積法」として習ったと思います。これは,ある関数の積分区間を「重なりのない,有限個の」区間に分けて,その上に,その関数のグラフの下の部分におさまるように配置した長方形(図

p q

f(x)

a p q

f(x)

(a) (b)

図 1: 積分に対する疑問.

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f(x)

xp

長方形で近似

q

積分区間を 重なりのない,有限個の区間に分けて,その上の長方形の面積の極限

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

区分求積法で積分を求める

積分 は,

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第14回第5部・測度論ダイジェスト/ ルベーグ測度と完全加法性

測度論とは,「ものを測る」ことの本質を考える数学の分野です。長さ,面積,体積,質量など,ものを測るにはいろいろな測り方がありますが,これらをあわせて,何かを測った結果を測度 (measure)といいます。測度論では,測るとは何か、測ることのできる集合とは何か,といったことを学びます。この「測度論ダイジェスト」第1回では,測度論誕生のきっかけになった「疑問」を説明し,集合の基本的な測り方であるルベーグ測度,測度の持つべき基本的な性質である完全加法性,そしてその帰結として現れてきた零集合について説明します。

積分に対する疑問

定積分を習った時に,「任意のaについて,関数 f(x)のaからaまでの積分は0,すなわち! a

af(x)dx = 0

である」すなわち「幅が 0の積分は 0」ということを習ったと思います。

ということは,図 1(a)のように,積分! q

pf(x)dxから,pと qの間にある aのところだけ幅 0の線を

抜き取っても,積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないということになります。

幅 0の積分は 0なのだから,aの1カ所だけでなく,図 1(b)のように幅 0の線を何本抜き取っても,やはり積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないはずです。ならば,pと qの間にあるすべての有理数の位置にある幅 0の線を抜き取っても,すなわち可算無限個の線を抜き取っても,やはり面積は減らないのでしょうか?

どうも納得いかない気がします。この疑問は,今までなんとなく考えてきた「幅」という概念を,より精密にとらえる必要があることを示しています。

ジョルダン測度

これまで,定積分は「区分求積法」として習ったと思います。これは,ある関数の積分区間を「重なりのない,有限個の」区間に分けて,その上に,その関数のグラフの下の部分におさまるように配置した長方形(図

p q

f(x)

a p q

f(x)

(a) (b)

図 1: 積分に対する疑問.

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第14回 (2015. 1. 15) http://racco.mikeneko.jp/  1/6 ページ

f(x)

xp

長方形で近似

q

積分区間を 重なりのない,有限個の区間に分けて,その上の長方形の面積の極限

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

区分求積法で積分を求める

積分 は,

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第14回第5部・測度論ダイジェスト/ ルベーグ測度と完全加法性

測度論とは,「ものを測る」ことの本質を考える数学の分野です。長さ,面積,体積,質量など,ものを測るにはいろいろな測り方がありますが,これらをあわせて,何かを測った結果を測度 (measure)といいます。測度論では,測るとは何か、測ることのできる集合とは何か,といったことを学びます。この「測度論ダイジェスト」第1回では,測度論誕生のきっかけになった「疑問」を説明し,集合の基本的な測り方であるルベーグ測度,測度の持つべき基本的な性質である完全加法性,そしてその帰結として現れてきた零集合について説明します。

積分に対する疑問

定積分を習った時に,「任意のaについて,関数 f(x)のaからaまでの積分は0,すなわち! a

af(x)dx = 0

である」すなわち「幅が 0の積分は 0」ということを習ったと思います。

ということは,図 1(a)のように,積分! q

pf(x)dxから,pと qの間にある aのところだけ幅 0の線を

抜き取っても,積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないということになります。

幅 0の積分は 0なのだから,aの1カ所だけでなく,図 1(b)のように幅 0の線を何本抜き取っても,やはり積分の値,すなわち図のグレーの部分の面積は減らないはずです。ならば,pと qの間にあるすべての有理数の位置にある幅 0の線を抜き取っても,すなわち可算無限個の線を抜き取っても,やはり面積は減らないのでしょうか?

どうも納得いかない気がします。この疑問は,今までなんとなく考えてきた「幅」という概念を,より精密にとらえる必要があることを示しています。

ジョルダン測度

これまで,定積分は「区分求積法」として習ったと思います。これは,ある関数の積分区間を「重なりのない,有限個の」区間に分けて,その上に,その関数のグラフの下の部分におさまるように配置した長方形(図

p q

f(x)

a p q

f(x)

(a) (b)

図 1: 積分に対する疑問.

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第14回 (2015. 1. 15) http://racco.mikeneko.jp/  1/6 ページ

f(x)

xp

長方形で近似

q

積分区間を 重なりのない,有限個の区間に分けて,その上の長方形の面積の極限「極限」とは,無限ではなく有限

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ジョルダン測度

f(x)

xp qこちらの上限

f(x)

xp q

ジョルダン内測度こちらの下限ジョルダン外測度

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ジョルダン測度

f(x)

xp qこちらの上限

f(x)

xp q

ジョルダン内測度こちらの下限ジョルダン外測度

両者が一致するときジョルダン測度という

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ジョルダン測度

f(x)

xp qこちらの上限

f(x)

xp q

ジョルダン内測度こちらの下限ジョルダン外測度

両者が一致するときジョルダン測度という2次元の場合これを面積という

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ジョルダン測度

f(x)

xp qこちらの上限

f(x)

xp q

ジョルダン内測度こちらの下限ジョルダン外測度

両者が一致するときジョルダン測度という2次元の場合これを面積という

ジョルダン測度が定まる図形(集合)を ジョルダン可測という

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

こんな関数の積分は

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第15回第5部・測度論ダイジェスト/ ルベーグ積分

積分に対する疑問̶解決したのか?

前回の講義で,定積分! q

pf(x)dxから,pと qの間にあるすべての(可算無限個の)有理数に対応す

る幅 0の線を抜き取っても,定積分の値(グラフの下の面積)は変わらない,ということをお話ししました。その説明では,可算無限個の有理数の集合はルベーグ測度が 0,すなわち零集合だから,というものでした。

一方,高校以来学んできた積分(リーマン積分)は「積分区間を有限個の区間に分ける」という操作にもとづいています。そこで,上で抜き取った可算無限個の有理数に対応して

h(x) =

"1 xは有理数0 xは無理数  (1)

という関数(ディリクレ関数)1を考えると,積分区間をいくら細かく分割しても,各分割には有理数も無理数も必ず含まれますから,前回説明したジョルダン外測度は 1,ジョルダン内測度は 0となります。つまりこの関数の積分はジョルダン可測ではなく,区分求積法では積分の値が確定しません。すなわち,リーマン積分は不可能です。

このことは,上記の「幅 0の線を可算無限個抜き取っても,定積分の値は変わらない」という説明は正確ではなく,ルベーグ測度にもとづいた新しい積分の定義が必要であることを示唆しています。これがルベーグ積分です。

ルベーグ積分の考え方

リーマン積分では,関数 y = f(x)の xのほう(定義域)を分割していました。これに対してルベーグ積分では,yのほう(値域)を分割します。

p q

f(x)

外側の下限(外測度)

内側の上限(内測度)

図 1: リーマン積分とジョルダン外測度・内測度

有理数のとき 1

無理数のとき 0

どんなに細かい区間に区切っても,その中には有理数も無理数も入っている

図 2: ディリクレ関数の積分

1h(x) = limn→∞

( limk→∞

(cosn!πx)2k)で表されます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第15回 (2015. 1. 22) http://racco.mikeneko.jp/  1/4 ページ

ディリクレ関数

x0

1

……

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

こんな関数の積分は

x軸上をどんなに細かく区切っても, 区切りの中に有理数も無理数も必ず存在する

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第15回第5部・測度論ダイジェスト/ ルベーグ積分

積分に対する疑問̶解決したのか?

前回の講義で,定積分! q

pf(x)dxから,pと qの間にあるすべての(可算無限個の)有理数に対応す

る幅 0の線を抜き取っても,定積分の値(グラフの下の面積)は変わらない,ということをお話ししました。その説明では,可算無限個の有理数の集合はルベーグ測度が 0,すなわち零集合だから,というものでした。

一方,高校以来学んできた積分(リーマン積分)は「積分区間を有限個の区間に分ける」という操作にもとづいています。そこで,上で抜き取った可算無限個の有理数に対応して

h(x) =

"1 xは有理数0 xは無理数  (1)

という関数(ディリクレ関数)1を考えると,積分区間をいくら細かく分割しても,各分割には有理数も無理数も必ず含まれますから,前回説明したジョルダン外測度は 1,ジョルダン内測度は 0となります。つまりこの関数の積分はジョルダン可測ではなく,区分求積法では積分の値が確定しません。すなわち,リーマン積分は不可能です。

このことは,上記の「幅 0の線を可算無限個抜き取っても,定積分の値は変わらない」という説明は正確ではなく,ルベーグ測度にもとづいた新しい積分の定義が必要であることを示唆しています。これがルベーグ積分です。

ルベーグ積分の考え方

リーマン積分では,関数 y = f(x)の xのほう(定義域)を分割していました。これに対してルベーグ積分では,yのほう(値域)を分割します。

p q

f(x)

外側の下限(外測度)

内側の上限(内測度)

図 1: リーマン積分とジョルダン外測度・内測度

有理数のとき 1

無理数のとき 0

どんなに細かい区間に区切っても,その中には有理数も無理数も入っている

図 2: ディリクレ関数の積分

1h(x) = limn→∞

( limk→∞

(cosn!πx)2k)で表されます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第15回 (2015. 1. 22) http://racco.mikeneko.jp/  1/4 ページ

ディリクレ関数

x0

1

……

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ディリクレ関数の積分x軸上をどんなに細かく区切っても, 区切りの中に有理数も無理数も 必ず存在する

x0

1

Page 49: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第5部・測度論ダイジェスト / 第15回 ルベーグ積分 (2015. 1. 22)

2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ディリクレ関数の積分x軸上をどんなに細かく区切っても, 区切りの中に有理数も無理数も 必ず存在する

x0

1

Page 50: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第5部・測度論ダイジェスト / 第15回 ルベーグ積分 (2015. 1. 22)

2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ディリクレ関数の積分x軸上をどんなに細かく区切っても, 区切りの中に有理数も無理数も 必ず存在する

x0

1

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ディリクレ関数の積分x軸上をどんなに細かく区切っても, 区切りの中に有理数も無理数も 必ず存在する

x0

1

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ディリクレ関数の積分x軸上をどんなに細かく区切っても, 区切りの中に有理数も無理数も 必ず存在する

x0

1

Page 53: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第5部・測度論ダイジェスト / 第15回 ルベーグ積分 (2015. 1. 22)

2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ディリクレ関数の積分x軸上をどんなに細かく区切っても, 区切りの中に有理数も無理数も 必ず存在する

x0

1

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ディリクレ関数の積分x軸上をどんなに細かく区切っても, 区切りの中に有理数も無理数も 必ず存在する

x0

1

どんな区切りでも,

Page 55: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第5部・測度論ダイジェスト / 第15回 ルベーグ積分 (2015. 1. 22)

2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ディリクレ関数の積分x軸上をどんなに細かく区切っても, 区切りの中に有理数も無理数も 必ず存在する

x0

1

どんな区切りでも,

x0

1

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ディリクレ関数の積分x軸上をどんなに細かく区切っても, 区切りの中に有理数も無理数も 必ず存在する

x0

1

どんな区切りでも,

ジョルダン外測度 (外部の下限)

x0

1

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ディリクレ関数の積分x軸上をどんなに細かく区切っても, 区切りの中に有理数も無理数も 必ず存在する

x0

1

どんな区切りでも,

ジョルダン外測度 (外部の下限)

x0

1

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ディリクレ関数の積分x軸上をどんなに細かく区切っても, 区切りの中に有理数も無理数も 必ず存在する

x0

1

どんな区切りでも,

ジョルダン外測度 (外部の下限)

x0

1

x0

1

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ディリクレ関数の積分x軸上をどんなに細かく区切っても, 区切りの中に有理数も無理数も 必ず存在する

x0

1

どんな区切りでも,

ジョルダン外測度 (外部の下限)

ジョルダン内測度 (内部の上限)

x0

1

x0

1

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ディリクレ関数の積分x軸上をどんなに細かく区切っても, 区切りの中に有理数も無理数も 必ず存在する

x0

1

どんな区切りでも,

ジョルダン外測度 (外部の下限)

ジョルダン内測度 (内部の上限)

x0

1

x0

1

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ディリクレ関数の積分x軸上をどんなに細かく区切っても, 区切りの中に有理数も無理数も 必ず存在する

一致しないので ジョルダン可測でなく,リーマン積分はできない

x0

1

どんな区切りでも,

ジョルダン外測度 (外部の下限)

ジョルダン内測度 (内部の上限)

x0

1

x0

1

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ディリクレ関数の積分x軸上をどんなに細かく区切っても, 区切りの中に有理数も無理数も 必ず存在する

一致しないので ジョルダン可測でなく,リーマン積分はできない

x0

1

どんな区切りでも,

ジョルダン外測度 (外部の下限)

ジョルダン内測度 (内部の上限)

ルベーグ測度にもとづくルベーグ積分を考える

x0

1

x0

1

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ルベーグ積分

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

何がいけなかったのかf(x)

xp q

f(x)

xp q

区分求積をするときに,

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

何がいけなかったのか

x軸上を無理に分割しようとするから, 有限個に分割できないとき困る

f(x)

xp q

f(x)

xp q

区分求積をするときに,

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

何がいけなかったのか

x軸上を無理に分割しようとするから, 有限個に分割できないとき困る

f(x)

xp q

f(x)

xp q

区分求積をするときに,

y軸上のほうを分割し,

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

何がいけなかったのか

x軸上を無理に分割しようとするから, 有限個に分割できないとき困る

f(x)

xp q

f(x)

xp q

区分求積をするときに,

x軸のほうは それに対応して分割されるようにすればいい

y軸上のほうを分割し,

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ルベーグ積分の考え方y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ルベーグ積分の考え方y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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y軸を分割

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ルベーグ積分の考え方y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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y軸を分割

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ルベーグ積分の考え方y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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y軸を分割

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ルベーグ積分の考え方y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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y軸を分割

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ルベーグ積分の考え方y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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y軸を分割

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ルベーグ積分の考え方y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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y軸を分割

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ルベーグ積分の考え方y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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y軸を分割

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ルベーグ積分の考え方y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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y軸を分割

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ルベーグ積分の考え方y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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y軸を分割

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ルベーグ積分の考え方y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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y軸を分割

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A. A

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, Kan

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ルベーグ積分の考え方y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ルベーグ積分の考え方y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ルベーグ積分の考え方y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ルベーグ積分の考え方y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ルベーグ積分の考え方y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ルベーグ積分の考え方y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ルベーグ積分の考え方

yi ×(Aiのルベーグ測度)を求める

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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y軸を分割

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ルベーグ積分の考え方

yi ×(Aiのルベーグ測度)を求める

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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y軸を分割

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ルベーグ積分の考え方

yi ×(Aiのルベーグ測度)を求める

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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y軸を分割

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ルベーグ積分の考え方

yi ×(Aiのルベーグ測度)を求める

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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y軸を分割

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ルベーグ積分の考え方

yi ×(Aiのルベーグ測度)を求める

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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y軸を分割

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ルベーグ積分の考え方

yi ×(Aiのルベーグ測度)を求める

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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y軸を分割

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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これを各yiについて合計したものの, 分割を細かくしたときの極限

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ルベーグ積分の考え方

yi ×(Aiのルベーグ測度)を求める

Aiがたとえ可算無限個に分れていても, ルベーグ可測なら完全加法性があるから合計できる

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第15回 (2015. 1. 22) http://racco.mikeneko.jp/  2/4 ページ

y軸を分割

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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これを各yiについて合計したものの, 分割を細かくしたときの極限

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

単関数とルベーグ積分単関数… こういう 階段状の 関数

α1α2α3

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

単関数とルベーグ積分単関数… こういう 階段状の 関数

α1α2α3

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

単関数とルベーグ積分単関数… こういう 階段状の 関数

A1

α1α2α3

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

単関数とルベーグ積分単関数… こういう 階段状の 関数

A1

α1α2α3

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

単関数とルベーグ積分単関数… こういう 階段状の 関数

A1

α1α2α3

A2

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

単関数とルベーグ積分単関数… こういう 階段状の 関数

A1

α1α2α3

A2

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

単関数とルベーグ積分単関数… こういう 階段状の 関数

A1

α1α2α3

A2 A3

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

単関数とルベーグ積分単関数… こういう 階段状の 関数

A1

α1α2α3

A2 A3

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

単関数とルベーグ積分単関数… こういう 階段状の 関数

A1

α1α2α3

A2 A3

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

単関数とルベーグ積分単関数… こういう 階段状の 関数

A1

α1α2α3

A2 A3

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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xがAiにあるとき 値が1,他は0 [特性関数]

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

単関数とルベーグ積分

単関数のルベーグ積分

単関数… こういう 階段状の 関数

A1

α1α2α3

A2 A3

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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xがAiにあるとき 値が1,他は0 [特性関数]

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

単関数とルベーグ積分

単関数のルベーグ積分

単関数… こういう 階段状の 関数

A1

α1α2α3

A2 A3

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第15回 (2015. 1. 22) http://racco.mikeneko.jp/  2/4 ページ

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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xがAiにあるとき 値が1,他は0 [特性関数]

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

単関数とルベーグ積分

単関数のルベーグ積分

単関数… こういう 階段状の 関数

A1

α1α2α3

A2 A3

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

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xがAiにあるとき 値が1,他は0 [特性関数]

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

単関数とルベーグ積分

単関数のルベーグ積分

単関数… こういう 階段状の 関数

A1

α1α2α3

A2 A3

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第15回 (2015. 1. 22) http://racco.mikeneko.jp/  2/4 ページ

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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xがAiにあるとき 値が1,他は0 [特性関数]

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

単関数とルベーグ積分

単関数のルベーグ積分

単関数… こういう 階段状の 関数

A1

α1α2α3

A2 A3

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第15回 (2015. 1. 22) http://racco.mikeneko.jp/  2/4 ページ

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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xがAiにあるとき 値が1,他は0 [特性関数]

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

単関数とルベーグ積分

単関数のルベーグ積分

単関数… こういう 階段状の 関数

A1

α1α2α3

A2 A3

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第15回 (2015. 1. 22) http://racco.mikeneko.jp/  2/4 ページ

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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xがAiにあるとき 値が1,他は0 [特性関数]

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A. A

sano

, Kan

sai U

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単関数とルベーグ積分

単関数のルベーグ積分

単関数… こういう 階段状の 関数

A1

α1α2α3

A2 A3

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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A. A

sano

, Kan

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可測関数関数を単関数で近似する

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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A. A

sano

, Kan

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可測関数関数を単関数で近似する

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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yi

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

可測関数関数を単関数で近似する

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

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yi

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

可測関数関数を単関数で近似する

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

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yi

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

可測関数関数を単関数で近似する

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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yi

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

可測関数関数を単関数で近似する

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

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yi

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

可測関数関数を単関数で近似する

単関数で近似できるためには,どのようにy軸を分割しても 図のAiが可測でなければならない

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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yi

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

可測関数関数を単関数で近似する

単関数で近似できるためには,どのようにy軸を分割しても 図のAiが可測でなければならない

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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yi

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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任意のa, bについて

で定義します。m(Ai)はAiのルベーグ測度です。

一般の関数 f(x)についても,それが単関数の極限で表されるのなら,同様にルベーグ積分が定義できるはずです。それができるためには,単関数を階段状の関数として関数 f(x)の形に合わせて近似するとき,そこに現れる集合Aiがつねに可測集合である必要があります。

すなわち,任意の実数 a, bについて,集合 {x|a ! f(x) < b}が可測集合でなければなりません。このような関数を可測関数といいます。

可測関数のルベーグ積分

可測関数 f(x) " 0について,可測集合A上の f(x)のルベーグ積分を!

Af(x)m(dx) = sup

!

Aϕ(x)m(dx) (5)

と定義します。ここでいう上限 (sup)は,「0 ! ϕ(x) ! f(x)をみたすすべての単関数」にわたっての上限をさします。つまり,f(x)を単関数で下から(内側から)近似したときの,もっともよい近似によって,積分が得られる,としています。

f(x)が負の値もとるときは,正の値をとるときと負の値をとるときに分けて,負の値をとる部分を正負反転して考えます。f+(x) = max(f(x), 0), f−(x) = max(−f(x), 0)とすると,f(x) = f+(x)−f−(x)

となります。そこで,!

Af(x)m(dx) =

!

Af+(x)m(dx)−

!

Af−(x)m(dx) (6)

と定義します。

このような単関数による近似で積分が定義できるのは,次の定理があるからです。

f(x)を可測関数とし,f(x) " 0とする。このとき,単関数の増加列

0 ! ϕ1(x) ! ϕ2(x) ! · · · (7)

が存在して

limn→∞

ϕn(x) = f(x) (8)

がなりたつ。

これを証明するために,nを自然数として

A(n)k =

"x| k2n

! f(x) <k + 1

2n

#(k = 0, 1, 2, . . . , n2n − 1)

A(n) = {x|f(x) " n}(9)

とおきます。これは,前々節で述べた「値域のほうを分割する」ことに相当します。

f(x)は可測関数なので,A(n)k , A(n)は可測集合です。これらの集合は,互いに共通部分がなく,かつ

それらの結びが f(x)の定義域全体に対応しています。そこで,単関数 ϕn(x)を

ϕn(x) =n2n−1$

k=0

k

2nϕ(x;A(n)

k ) + nϕ(x;A(n)) (10)

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が可測

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

可測関数関数を単関数で近似する

単関数で近似できるためには,どのようにy軸を分割しても 図のAiが可測でなければならない

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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yi

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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任意のa, bについて

で定義します。m(Ai)はAiのルベーグ測度です。

一般の関数 f(x)についても,それが単関数の極限で表されるのなら,同様にルベーグ積分が定義できるはずです。それができるためには,単関数を階段状の関数として関数 f(x)の形に合わせて近似するとき,そこに現れる集合Aiがつねに可測集合である必要があります。

すなわち,任意の実数 a, bについて,集合 {x|a ! f(x) < b}が可測集合でなければなりません。このような関数を可測関数といいます。

可測関数のルベーグ積分

可測関数 f(x) " 0について,可測集合A上の f(x)のルベーグ積分を!

Af(x)m(dx) = sup

!

Aϕ(x)m(dx) (5)

と定義します。ここでいう上限 (sup)は,「0 ! ϕ(x) ! f(x)をみたすすべての単関数」にわたっての上限をさします。つまり,f(x)を単関数で下から(内側から)近似したときの,もっともよい近似によって,積分が得られる,としています。

f(x)が負の値もとるときは,正の値をとるときと負の値をとるときに分けて,負の値をとる部分を正負反転して考えます。f+(x) = max(f(x), 0), f−(x) = max(−f(x), 0)とすると,f(x) = f+(x)−f−(x)

となります。そこで,!

Af(x)m(dx) =

!

Af+(x)m(dx)−

!

Af−(x)m(dx) (6)

と定義します。

このような単関数による近似で積分が定義できるのは,次の定理があるからです。

f(x)を可測関数とし,f(x) " 0とする。このとき,単関数の増加列

0 ! ϕ1(x) ! ϕ2(x) ! · · · (7)

が存在して

limn→∞

ϕn(x) = f(x) (8)

がなりたつ。

これを証明するために,nを自然数として

A(n)k =

"x| k2n

! f(x) <k + 1

2n

#(k = 0, 1, 2, . . . , n2n − 1)

A(n) = {x|f(x) " n}(9)

とおきます。これは,前々節で述べた「値域のほうを分割する」ことに相当します。

f(x)は可測関数なので,A(n)k , A(n)は可測集合です。これらの集合は,互いに共通部分がなく,かつ

それらの結びが f(x)の定義域全体に対応しています。そこで,単関数 ϕn(x)を

ϕn(x) =n2n−1$

k=0

k

2nϕ(x;A(n)

k ) + nϕ(x;A(n)) (10)

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が可測[可測関数]

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

可測関数のルベーグ積分関数を単関数で近似する

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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yi

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

可測関数のルベーグ積分関数を単関数で近似する

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第15回 (2015. 1. 22) http://racco.mikeneko.jp/  2/4 ページ

yi

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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で定義します。m(Ai)はAiのルベーグ測度です。

一般の関数 f(x)についても,それが単関数の極限で表されるのなら,同様にルベーグ積分が定義できるはずです。それができるためには,単関数を階段状の関数として関数 f(x)の形に合わせて近似するとき,そこに現れる集合Aiがつねに可測集合である必要があります。

すなわち,任意の実数 a, bについて,集合 {x|a ! f(x) < b}が可測集合でなければなりません。このような関数を可測関数といいます。

可測関数のルベーグ積分

可測関数 f(x) " 0について,可測集合A上の f(x)のルベーグ積分を!

Af(x)m(dx) = sup

!

Aϕ(x)m(dx) (5)

と定義します。ここでいう上限 (sup)は,「0 ! ϕ(x) ! f(x)をみたすすべての単関数」にわたっての上限をさします。つまり,f(x)を単関数で下から(内側から)近似したときの,もっともよい近似によって,積分が得られる,としています。

f(x)が負の値もとるときは,正の値をとるときと負の値をとるときに分けて,負の値をとる部分を正負反転して考えます。f+(x) = max(f(x), 0), f−(x) = max(−f(x), 0)とすると,f(x) = f+(x)−f−(x)

となります。そこで,!

Af(x)m(dx) =

!

Af+(x)m(dx)−

!

Af−(x)m(dx) (6)

と定義します。

このような単関数による近似で積分が定義できるのは,次の定理があるからです。

f(x)を可測関数とし,f(x) " 0とする。このとき,単関数の増加列

0 ! ϕ1(x) ! ϕ2(x) ! · · · (7)

が存在して

limn→∞

ϕn(x) = f(x) (8)

がなりたつ。

これを証明するために,nを自然数として

A(n)k =

"x| k2n

! f(x) <k + 1

2n

#(k = 0, 1, 2, . . . , n2n − 1)

A(n) = {x|f(x) " n}(9)

とおきます。これは,前々節で述べた「値域のほうを分割する」ことに相当します。

f(x)は可測関数なので,A(n)k , A(n)は可測集合です。これらの集合は,互いに共通部分がなく,かつ

それらの結びが f(x)の定義域全体に対応しています。そこで,単関数 ϕn(x)を

ϕn(x) =n2n−1$

k=0

k

2nϕ(x;A(n)

k ) + nϕ(x;A(n)) (10)

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可測関数の ルベーグ積分

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

可測関数のルベーグ積分

単関数で近似

関数を単関数で近似するy

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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yi

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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で定義します。m(Ai)はAiのルベーグ測度です。

一般の関数 f(x)についても,それが単関数の極限で表されるのなら,同様にルベーグ積分が定義できるはずです。それができるためには,単関数を階段状の関数として関数 f(x)の形に合わせて近似するとき,そこに現れる集合Aiがつねに可測集合である必要があります。

すなわち,任意の実数 a, bについて,集合 {x|a ! f(x) < b}が可測集合でなければなりません。このような関数を可測関数といいます。

可測関数のルベーグ積分

可測関数 f(x) " 0について,可測集合A上の f(x)のルベーグ積分を!

Af(x)m(dx) = sup

!

Aϕ(x)m(dx) (5)

と定義します。ここでいう上限 (sup)は,「0 ! ϕ(x) ! f(x)をみたすすべての単関数」にわたっての上限をさします。つまり,f(x)を単関数で下から(内側から)近似したときの,もっともよい近似によって,積分が得られる,としています。

f(x)が負の値もとるときは,正の値をとるときと負の値をとるときに分けて,負の値をとる部分を正負反転して考えます。f+(x) = max(f(x), 0), f−(x) = max(−f(x), 0)とすると,f(x) = f+(x)−f−(x)

となります。そこで,!

Af(x)m(dx) =

!

Af+(x)m(dx)−

!

Af−(x)m(dx) (6)

と定義します。

このような単関数による近似で積分が定義できるのは,次の定理があるからです。

f(x)を可測関数とし,f(x) " 0とする。このとき,単関数の増加列

0 ! ϕ1(x) ! ϕ2(x) ! · · · (7)

が存在して

limn→∞

ϕn(x) = f(x) (8)

がなりたつ。

これを証明するために,nを自然数として

A(n)k =

"x| k2n

! f(x) <k + 1

2n

#(k = 0, 1, 2, . . . , n2n − 1)

A(n) = {x|f(x) " n}(9)

とおきます。これは,前々節で述べた「値域のほうを分割する」ことに相当します。

f(x)は可測関数なので,A(n)k , A(n)は可測集合です。これらの集合は,互いに共通部分がなく,かつ

それらの結びが f(x)の定義域全体に対応しています。そこで,単関数 ϕn(x)を

ϕn(x) =n2n−1$

k=0

k

2nϕ(x;A(n)

k ) + nϕ(x;A(n)) (10)

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可測関数の ルベーグ積分

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

可測関数のルベーグ積分

単関数で近似一番よい近似のとき

関数を単関数で近似するy

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第15回 (2015. 1. 22) http://racco.mikeneko.jp/  2/4 ページ

yi

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第15回 (2015. 1. 22) http://racco.mikeneko.jp/  2/4 ページ

で定義します。m(Ai)はAiのルベーグ測度です。

一般の関数 f(x)についても,それが単関数の極限で表されるのなら,同様にルベーグ積分が定義できるはずです。それができるためには,単関数を階段状の関数として関数 f(x)の形に合わせて近似するとき,そこに現れる集合Aiがつねに可測集合である必要があります。

すなわち,任意の実数 a, bについて,集合 {x|a ! f(x) < b}が可測集合でなければなりません。このような関数を可測関数といいます。

可測関数のルベーグ積分

可測関数 f(x) " 0について,可測集合A上の f(x)のルベーグ積分を!

Af(x)m(dx) = sup

!

Aϕ(x)m(dx) (5)

と定義します。ここでいう上限 (sup)は,「0 ! ϕ(x) ! f(x)をみたすすべての単関数」にわたっての上限をさします。つまり,f(x)を単関数で下から(内側から)近似したときの,もっともよい近似によって,積分が得られる,としています。

f(x)が負の値もとるときは,正の値をとるときと負の値をとるときに分けて,負の値をとる部分を正負反転して考えます。f+(x) = max(f(x), 0), f−(x) = max(−f(x), 0)とすると,f(x) = f+(x)−f−(x)

となります。そこで,!

Af(x)m(dx) =

!

Af+(x)m(dx)−

!

Af−(x)m(dx) (6)

と定義します。

このような単関数による近似で積分が定義できるのは,次の定理があるからです。

f(x)を可測関数とし,f(x) " 0とする。このとき,単関数の増加列

0 ! ϕ1(x) ! ϕ2(x) ! · · · (7)

が存在して

limn→∞

ϕn(x) = f(x) (8)

がなりたつ。

これを証明するために,nを自然数として

A(n)k =

"x| k2n

! f(x) <k + 1

2n

#(k = 0, 1, 2, . . . , n2n − 1)

A(n) = {x|f(x) " n}(9)

とおきます。これは,前々節で述べた「値域のほうを分割する」ことに相当します。

f(x)は可測関数なので,A(n)k , A(n)は可測集合です。これらの集合は,互いに共通部分がなく,かつ

それらの結びが f(x)の定義域全体に対応しています。そこで,単関数 ϕn(x)を

ϕn(x) =n2n−1$

k=0

k

2nϕ(x;A(n)

k ) + nϕ(x;A(n)) (10)

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可測関数の ルベーグ積分

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

可測関数のルベーグ積分本当にsupで 近似できるか?

で定義します。m(Ai)はAiのルベーグ測度です。

一般の関数 f(x)についても,それが単関数の極限で表されるのなら,同様にルベーグ積分が定義できるはずです。それができるためには,単関数を階段状の関数として関数 f(x)の形に合わせて近似するとき,そこに現れる集合Aiがつねに可測集合である必要があります。

すなわち,任意の実数 a, bについて,集合 {x|a ! f(x) < b}が可測集合でなければなりません。このような関数を可測関数といいます。

可測関数のルベーグ積分

可測関数 f(x) " 0について,可測集合A上の f(x)のルベーグ積分を!

Af(x)m(dx) = sup

!

Aϕ(x)m(dx) (5)

と定義します。ここでいう上限 (sup)は,「0 ! ϕ(x) ! f(x)をみたすすべての単関数」にわたっての上限をさします。つまり,f(x)を単関数で下から(内側から)近似したときの,もっともよい近似によって,積分が得られる,としています。

f(x)が負の値もとるときは,正の値をとるときと負の値をとるときに分けて,負の値をとる部分を正負反転して考えます。f+(x) = max(f(x), 0), f−(x) = max(−f(x), 0)とすると,f(x) = f+(x)−f−(x)

となります。そこで,!

Af(x)m(dx) =

!

Af+(x)m(dx)−

!

Af−(x)m(dx) (6)

と定義します。

このような単関数による近似で積分が定義できるのは,次の定理があるからです。

f(x)を可測関数とし,f(x) " 0とする。このとき,単関数の増加列

0 ! ϕ1(x) ! ϕ2(x) ! · · · (7)

が存在して

limn→∞

ϕn(x) = f(x) (8)

がなりたつ。

これを証明するために,nを自然数として

A(n)k =

"x| k2n

! f(x) <k + 1

2n

#(k = 0, 1, 2, . . . , n2n − 1)

A(n) = {x|f(x) " n}(9)

とおきます。これは,前々節で述べた「値域のほうを分割する」ことに相当します。

f(x)は可測関数なので,A(n)k , A(n)は可測集合です。これらの集合は,互いに共通部分がなく,かつ

それらの結びが f(x)の定義域全体に対応しています。そこで,単関数 ϕn(x)を

ϕn(x) =n2n−1$

k=0

k

2nϕ(x;A(n)

k ) + nϕ(x;A(n)) (10)

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

可測関数のルベーグ積分本当にsupで 近似できるか?

で定義します。m(Ai)はAiのルベーグ測度です。

一般の関数 f(x)についても,それが単関数の極限で表されるのなら,同様にルベーグ積分が定義できるはずです。それができるためには,単関数を階段状の関数として関数 f(x)の形に合わせて近似するとき,そこに現れる集合Aiがつねに可測集合である必要があります。

すなわち,任意の実数 a, bについて,集合 {x|a ! f(x) < b}が可測集合でなければなりません。このような関数を可測関数といいます。

可測関数のルベーグ積分

可測関数 f(x) " 0について,可測集合A上の f(x)のルベーグ積分を!

Af(x)m(dx) = sup

!

Aϕ(x)m(dx) (5)

と定義します。ここでいう上限 (sup)は,「0 ! ϕ(x) ! f(x)をみたすすべての単関数」にわたっての上限をさします。つまり,f(x)を単関数で下から(内側から)近似したときの,もっともよい近似によって,積分が得られる,としています。

f(x)が負の値もとるときは,正の値をとるときと負の値をとるときに分けて,負の値をとる部分を正負反転して考えます。f+(x) = max(f(x), 0), f−(x) = max(−f(x), 0)とすると,f(x) = f+(x)−f−(x)

となります。そこで,!

Af(x)m(dx) =

!

Af+(x)m(dx)−

!

Af−(x)m(dx) (6)

と定義します。

このような単関数による近似で積分が定義できるのは,次の定理があるからです。

f(x)を可測関数とし,f(x) " 0とする。このとき,単関数の増加列

0 ! ϕ1(x) ! ϕ2(x) ! · · · (7)

が存在して

limn→∞

ϕn(x) = f(x) (8)

がなりたつ。

これを証明するために,nを自然数として

A(n)k =

"x| k2n

! f(x) <k + 1

2n

#(k = 0, 1, 2, . . . , n2n − 1)

A(n) = {x|f(x) " n}(9)

とおきます。これは,前々節で述べた「値域のほうを分割する」ことに相当します。

f(x)は可測関数なので,A(n)k , A(n)は可測集合です。これらの集合は,互いに共通部分がなく,かつ

それらの結びが f(x)の定義域全体に対応しています。そこで,単関数 ϕn(x)を

ϕn(x) =n2n−1$

k=0

k

2nϕ(x;A(n)

k ) + nϕ(x;A(n)) (10)

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第15回 (2015. 1. 22) http://racco.mikeneko.jp/  3/4 ページ

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第15回 (2015. 1. 22) http://racco.mikeneko.jp/  2/4 ページ

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

可測関数のルベーグ積分本当にsupで 近似できるか?

k/2n

で定義します。m(Ai)はAiのルベーグ測度です。

一般の関数 f(x)についても,それが単関数の極限で表されるのなら,同様にルベーグ積分が定義できるはずです。それができるためには,単関数を階段状の関数として関数 f(x)の形に合わせて近似するとき,そこに現れる集合Aiがつねに可測集合である必要があります。

すなわち,任意の実数 a, bについて,集合 {x|a ! f(x) < b}が可測集合でなければなりません。このような関数を可測関数といいます。

可測関数のルベーグ積分

可測関数 f(x) " 0について,可測集合A上の f(x)のルベーグ積分を!

Af(x)m(dx) = sup

!

Aϕ(x)m(dx) (5)

と定義します。ここでいう上限 (sup)は,「0 ! ϕ(x) ! f(x)をみたすすべての単関数」にわたっての上限をさします。つまり,f(x)を単関数で下から(内側から)近似したときの,もっともよい近似によって,積分が得られる,としています。

f(x)が負の値もとるときは,正の値をとるときと負の値をとるときに分けて,負の値をとる部分を正負反転して考えます。f+(x) = max(f(x), 0), f−(x) = max(−f(x), 0)とすると,f(x) = f+(x)−f−(x)

となります。そこで,!

Af(x)m(dx) =

!

Af+(x)m(dx)−

!

Af−(x)m(dx) (6)

と定義します。

このような単関数による近似で積分が定義できるのは,次の定理があるからです。

f(x)を可測関数とし,f(x) " 0とする。このとき,単関数の増加列

0 ! ϕ1(x) ! ϕ2(x) ! · · · (7)

が存在して

limn→∞

ϕn(x) = f(x) (8)

がなりたつ。

これを証明するために,nを自然数として

A(n)k =

"x| k2n

! f(x) <k + 1

2n

#(k = 0, 1, 2, . . . , n2n − 1)

A(n) = {x|f(x) " n}(9)

とおきます。これは,前々節で述べた「値域のほうを分割する」ことに相当します。

f(x)は可測関数なので,A(n)k , A(n)は可測集合です。これらの集合は,互いに共通部分がなく,かつ

それらの結びが f(x)の定義域全体に対応しています。そこで,単関数 ϕn(x)を

ϕn(x) =n2n−1$

k=0

k

2nϕ(x;A(n)

k ) + nϕ(x;A(n)) (10)

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y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

可測関数のルベーグ積分本当にsupで 近似できるか?

k/2n

で定義します。m(Ai)はAiのルベーグ測度です。

一般の関数 f(x)についても,それが単関数の極限で表されるのなら,同様にルベーグ積分が定義できるはずです。それができるためには,単関数を階段状の関数として関数 f(x)の形に合わせて近似するとき,そこに現れる集合Aiがつねに可測集合である必要があります。

すなわち,任意の実数 a, bについて,集合 {x|a ! f(x) < b}が可測集合でなければなりません。このような関数を可測関数といいます。

可測関数のルベーグ積分

可測関数 f(x) " 0について,可測集合A上の f(x)のルベーグ積分を!

Af(x)m(dx) = sup

!

Aϕ(x)m(dx) (5)

と定義します。ここでいう上限 (sup)は,「0 ! ϕ(x) ! f(x)をみたすすべての単関数」にわたっての上限をさします。つまり,f(x)を単関数で下から(内側から)近似したときの,もっともよい近似によって,積分が得られる,としています。

f(x)が負の値もとるときは,正の値をとるときと負の値をとるときに分けて,負の値をとる部分を正負反転して考えます。f+(x) = max(f(x), 0), f−(x) = max(−f(x), 0)とすると,f(x) = f+(x)−f−(x)

となります。そこで,!

Af(x)m(dx) =

!

Af+(x)m(dx)−

!

Af−(x)m(dx) (6)

と定義します。

このような単関数による近似で積分が定義できるのは,次の定理があるからです。

f(x)を可測関数とし,f(x) " 0とする。このとき,単関数の増加列

0 ! ϕ1(x) ! ϕ2(x) ! · · · (7)

が存在して

limn→∞

ϕn(x) = f(x) (8)

がなりたつ。

これを証明するために,nを自然数として

A(n)k =

"x| k2n

! f(x) <k + 1

2n

#(k = 0, 1, 2, . . . , n2n − 1)

A(n) = {x|f(x) " n}(9)

とおきます。これは,前々節で述べた「値域のほうを分割する」ことに相当します。

f(x)は可測関数なので,A(n)k , A(n)は可測集合です。これらの集合は,互いに共通部分がなく,かつ

それらの結びが f(x)の定義域全体に対応しています。そこで,単関数 ϕn(x)を

ϕn(x) =n2n−1$

k=0

k

2nϕ(x;A(n)

k ) + nϕ(x;A(n)) (10)

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(k+1)/2n

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第15回 (2015. 1. 22) http://racco.mikeneko.jp/  2/4 ページ

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第15回 (2015. 1. 22) http://racco.mikeneko.jp/  2/4 ページ

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

可測関数のルベーグ積分本当にsupで 近似できるか?

k/2n

y軸をこのように分割し 単関数で近似

で定義します。m(Ai)はAiのルベーグ測度です。

一般の関数 f(x)についても,それが単関数の極限で表されるのなら,同様にルベーグ積分が定義できるはずです。それができるためには,単関数を階段状の関数として関数 f(x)の形に合わせて近似するとき,そこに現れる集合Aiがつねに可測集合である必要があります。

すなわち,任意の実数 a, bについて,集合 {x|a ! f(x) < b}が可測集合でなければなりません。このような関数を可測関数といいます。

可測関数のルベーグ積分

可測関数 f(x) " 0について,可測集合A上の f(x)のルベーグ積分を!

Af(x)m(dx) = sup

!

Aϕ(x)m(dx) (5)

と定義します。ここでいう上限 (sup)は,「0 ! ϕ(x) ! f(x)をみたすすべての単関数」にわたっての上限をさします。つまり,f(x)を単関数で下から(内側から)近似したときの,もっともよい近似によって,積分が得られる,としています。

f(x)が負の値もとるときは,正の値をとるときと負の値をとるときに分けて,負の値をとる部分を正負反転して考えます。f+(x) = max(f(x), 0), f−(x) = max(−f(x), 0)とすると,f(x) = f+(x)−f−(x)

となります。そこで,!

Af(x)m(dx) =

!

Af+(x)m(dx)−

!

Af−(x)m(dx) (6)

と定義します。

このような単関数による近似で積分が定義できるのは,次の定理があるからです。

f(x)を可測関数とし,f(x) " 0とする。このとき,単関数の増加列

0 ! ϕ1(x) ! ϕ2(x) ! · · · (7)

が存在して

limn→∞

ϕn(x) = f(x) (8)

がなりたつ。

これを証明するために,nを自然数として

A(n)k =

"x| k2n

! f(x) <k + 1

2n

#(k = 0, 1, 2, . . . , n2n − 1)

A(n) = {x|f(x) " n}(9)

とおきます。これは,前々節で述べた「値域のほうを分割する」ことに相当します。

f(x)は可測関数なので,A(n)k , A(n)は可測集合です。これらの集合は,互いに共通部分がなく,かつ

それらの結びが f(x)の定義域全体に対応しています。そこで,単関数 ϕn(x)を

ϕn(x) =n2n−1$

k=0

k

2nϕ(x;A(n)

k ) + nϕ(x;A(n)) (10)

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第15回 (2015. 1. 22) http://racco.mikeneko.jp/  3/4 ページ

(k+1)/2n

y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

可測関数のルベーグ積分本当にsupで 近似できるか?

k/2n

y軸をこのように分割し 単関数で近似

で定義します。m(Ai)はAiのルベーグ測度です。

一般の関数 f(x)についても,それが単関数の極限で表されるのなら,同様にルベーグ積分が定義できるはずです。それができるためには,単関数を階段状の関数として関数 f(x)の形に合わせて近似するとき,そこに現れる集合Aiがつねに可測集合である必要があります。

すなわち,任意の実数 a, bについて,集合 {x|a ! f(x) < b}が可測集合でなければなりません。このような関数を可測関数といいます。

可測関数のルベーグ積分

可測関数 f(x) " 0について,可測集合A上の f(x)のルベーグ積分を!

Af(x)m(dx) = sup

!

Aϕ(x)m(dx) (5)

と定義します。ここでいう上限 (sup)は,「0 ! ϕ(x) ! f(x)をみたすすべての単関数」にわたっての上限をさします。つまり,f(x)を単関数で下から(内側から)近似したときの,もっともよい近似によって,積分が得られる,としています。

f(x)が負の値もとるときは,正の値をとるときと負の値をとるときに分けて,負の値をとる部分を正負反転して考えます。f+(x) = max(f(x), 0), f−(x) = max(−f(x), 0)とすると,f(x) = f+(x)−f−(x)

となります。そこで,!

Af(x)m(dx) =

!

Af+(x)m(dx)−

!

Af−(x)m(dx) (6)

と定義します。

このような単関数による近似で積分が定義できるのは,次の定理があるからです。

f(x)を可測関数とし,f(x) " 0とする。このとき,単関数の増加列

0 ! ϕ1(x) ! ϕ2(x) ! · · · (7)

が存在して

limn→∞

ϕn(x) = f(x) (8)

がなりたつ。

これを証明するために,nを自然数として

A(n)k =

"x| k2n

! f(x) <k + 1

2n

#(k = 0, 1, 2, . . . , n2n − 1)

A(n) = {x|f(x) " n}(9)

とおきます。これは,前々節で述べた「値域のほうを分割する」ことに相当します。

f(x)は可測関数なので,A(n)k , A(n)は可測集合です。これらの集合は,互いに共通部分がなく,かつ

それらの結びが f(x)の定義域全体に対応しています。そこで,単関数 ϕn(x)を

ϕn(x) =n2n−1$

k=0

k

2nϕ(x;A(n)

k ) + nϕ(x;A(n)) (10)

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(k+1)/2n

とおくと,関数列 {ϕ1(x),ϕ2(x), . . . }は (7)式の単調増加性を満たしています。

一方,ある自然数N について,f(x)の f(x) < N となる部分については,n ! N のとき (9)式の上の式から

|f(x)− ϕn(x)| ≤1

2n(11)

となります。また,f(x) = +∞ 2のところでは limn→∞

ϕn(x) = +∞となります。このことは,各点 xでϕn(x)が f(x)に収束(各点収束)することを意味しています。■

再び最初の問題へ,そして発展

以上の議論をふまえて,最初の「ディリクレ関数 h(x)の積分」の問題を考えてみます。この関数は,有理数全体をQ,実数全体をRであらわすと,

h(x) = 1× ϕ(x;Q) + 0× ϕ(x;R\Q) (12)

という単関数になり 3,Qのルベーグ測度m(Q)は 0ですから,任意の積分区間で h(x)の積分は 0となります。

今回の説明では,最初の問題との関連から,1次元関数を想定していました。しかし,今回説明したルベーグ積分の定義では,定義域が1次元の実数値である必要はないことがわかると思います。実際,ルベーグ積分は「ルベーグ可測な集合に対して定義された可測関数」について組み立てられています。可測集合とは数の集まりだけではなく,例えば,「事象の集合」とそれに対応する確率という測度で定義することもできます。これについては,私の講義「解析応用」4で説明しています。

2ルベーグ積分論では,このように無限大を数として扱う記述が便利なのでよく用いられます。3R\Qは,実数全体Rから有理数全体Qを除いたもの,すなわち「無理数全体」です。42013年度まで開講していましたが,現在は開講していません。

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y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

可測関数のルベーグ積分本当にsupで 近似できるか?

k/2n

y軸をこのように分割し 単関数で近似

で定義します。m(Ai)はAiのルベーグ測度です。

一般の関数 f(x)についても,それが単関数の極限で表されるのなら,同様にルベーグ積分が定義できるはずです。それができるためには,単関数を階段状の関数として関数 f(x)の形に合わせて近似するとき,そこに現れる集合Aiがつねに可測集合である必要があります。

すなわち,任意の実数 a, bについて,集合 {x|a ! f(x) < b}が可測集合でなければなりません。このような関数を可測関数といいます。

可測関数のルベーグ積分

可測関数 f(x) " 0について,可測集合A上の f(x)のルベーグ積分を!

Af(x)m(dx) = sup

!

Aϕ(x)m(dx) (5)

と定義します。ここでいう上限 (sup)は,「0 ! ϕ(x) ! f(x)をみたすすべての単関数」にわたっての上限をさします。つまり,f(x)を単関数で下から(内側から)近似したときの,もっともよい近似によって,積分が得られる,としています。

f(x)が負の値もとるときは,正の値をとるときと負の値をとるときに分けて,負の値をとる部分を正負反転して考えます。f+(x) = max(f(x), 0), f−(x) = max(−f(x), 0)とすると,f(x) = f+(x)−f−(x)

となります。そこで,!

Af(x)m(dx) =

!

Af+(x)m(dx)−

!

Af−(x)m(dx) (6)

と定義します。

このような単関数による近似で積分が定義できるのは,次の定理があるからです。

f(x)を可測関数とし,f(x) " 0とする。このとき,単関数の増加列

0 ! ϕ1(x) ! ϕ2(x) ! · · · (7)

が存在して

limn→∞

ϕn(x) = f(x) (8)

がなりたつ。

これを証明するために,nを自然数として

A(n)k =

"x| k2n

! f(x) <k + 1

2n

#(k = 0, 1, 2, . . . , n2n − 1)

A(n) = {x|f(x) " n}(9)

とおきます。これは,前々節で述べた「値域のほうを分割する」ことに相当します。

f(x)は可測関数なので,A(n)k , A(n)は可測集合です。これらの集合は,互いに共通部分がなく,かつ

それらの結びが f(x)の定義域全体に対応しています。そこで,単関数 ϕn(x)を

ϕn(x) =n2n−1$

k=0

k

2nϕ(x;A(n)

k ) + nϕ(x;A(n)) (10)

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(k+1)/2n

とおくと,関数列 {ϕ1(x),ϕ2(x), . . . }は (7)式の単調増加性を満たしています。

一方,ある自然数N について,f(x)の f(x) < N となる部分については,n ! N のとき (9)式の上の式から

|f(x)− ϕn(x)| ≤1

2n(11)

となります。また,f(x) = +∞ 2のところでは limn→∞

ϕn(x) = +∞となります。このことは,各点 xでϕn(x)が f(x)に収束(各点収束)することを意味しています。■

再び最初の問題へ,そして発展

以上の議論をふまえて,最初の「ディリクレ関数 h(x)の積分」の問題を考えてみます。この関数は,有理数全体をQ,実数全体をRであらわすと,

h(x) = 1× ϕ(x;Q) + 0× ϕ(x;R\Q) (12)

という単関数になり 3,Qのルベーグ測度m(Q)は 0ですから,任意の積分区間で h(x)の積分は 0となります。

今回の説明では,最初の問題との関連から,1次元関数を想定していました。しかし,今回説明したルベーグ積分の定義では,定義域が1次元の実数値である必要はないことがわかると思います。実際,ルベーグ積分は「ルベーグ可測な集合に対して定義された可測関数」について組み立てられています。可測集合とは数の集まりだけではなく,例えば,「事象の集合」とそれに対応する確率という測度で定義することもできます。これについては,私の講義「解析応用」4で説明しています。

2ルベーグ積分論では,このように無限大を数として扱う記述が便利なのでよく用いられます。3R\Qは,実数全体Rから有理数全体Qを除いたもの,すなわち「無理数全体」です。42013年度まで開講していましたが,現在は開講していません。

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y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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y

yi

x

yi+1

Ai

図 3: ルベーグ積分の考え方

分割点を y1 < y2 < · · · < ynとするとき,ある yiに対して定義域に集合 Ai = {a|yi ! f(a) < yi+1}を考えて,「yi×Aiの測度」を求めます。これを各 yiについて求めて合計したものの,分割を細かくしたものの極限を,f(x)のルベーグ積分と考えます。

この方法では,集合Aiがルベーグ可測であれば,積分を求めることができます。集合Aiがたとえ可算無限個の部分に分かれていたとしても,ルベーグ可測であれば測度に完全加法性がありますから,大丈夫です。

リーマン積分では,関数の性質に関係なく,定義域を有限個に分けていました。そのため,ディリクレ関数のような特別な関数には対応できなくなってしまいました。ルベーグ積分は,yの分割に対して,関数の形に応じて集合Aiが対応するので,より広い範囲の関数に対応することができます。

単関数と可測関数

ルベーグ積分を考えるため,もとの関数を階段状の関数で近似することを考えます。集合Aに対して,Aの特性関数 ϕ(x;A)を

ϕ(x;A) =

!1 x ∈ A

0 x ̸∈ A  (2)

と定義します。

A1, A2, . . . , Anを互いに共通部分をもたない可測集合列とし,A = A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ Anとします。このとき,

ϕ(x) =n"

i=1

αiϕ(x;Ai) (3)

で表される関数を単関数といいます。単関数については,そのルベーグ積分を

#

Aϕ(x)m(dx) =

n"

i=1

αim(Ai) (4)

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n→∞ で0

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

積分に対する疑問の答

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ディリクレ関数の積分

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第15回第5部・測度論ダイジェスト/ ルベーグ積分

積分に対する疑問̶解決したのか?

前回の講義で,定積分! q

pf(x)dxから,pと qの間にあるすべての(可算無限個の)有理数に対応す

る幅 0の線を抜き取っても,定積分の値(グラフの下の面積)は変わらない,ということをお話ししました。その説明では,可算無限個の有理数の集合はルベーグ測度が 0,すなわち零集合だから,というものでした。

一方,高校以来学んできた積分(リーマン積分)は「積分区間を有限個の区間に分ける」という操作にもとづいています。そこで,上で抜き取った可算無限個の有理数に対応して

h(x) =

"1 xは有理数0 xは無理数  (1)

という関数(ディリクレ関数)1を考えると,積分区間をいくら細かく分割しても,各分割には有理数も無理数も必ず含まれますから,前回説明したジョルダン外測度は 1,ジョルダン内測度は 0となります。つまりこの関数の積分はジョルダン可測ではなく,区分求積法では積分の値が確定しません。すなわち,リーマン積分は不可能です。

このことは,上記の「幅 0の線を可算無限個抜き取っても,定積分の値は変わらない」という説明は正確ではなく,ルベーグ測度にもとづいた新しい積分の定義が必要であることを示唆しています。これがルベーグ積分です。

ルベーグ積分の考え方

リーマン積分では,関数 y = f(x)の xのほう(定義域)を分割していました。これに対してルベーグ積分では,yのほう(値域)を分割します。

p q

f(x)

外側の下限(外測度)

内側の上限(内測度)

図 1: リーマン積分とジョルダン外測度・内測度

有理数のとき 1

無理数のとき 0

どんなに細かい区間に区切っても,その中には有理数も無理数も入っている

図 2: ディリクレ関数の積分

1h(x) = limn→∞

( limk→∞

(cosn!πx)2k)で表されます。

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ディリクレ関数

x0

1

……

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ディリクレ関数の積分

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第15回第5部・測度論ダイジェスト/ ルベーグ積分

積分に対する疑問̶解決したのか?

前回の講義で,定積分! q

pf(x)dxから,pと qの間にあるすべての(可算無限個の)有理数に対応す

る幅 0の線を抜き取っても,定積分の値(グラフの下の面積)は変わらない,ということをお話ししました。その説明では,可算無限個の有理数の集合はルベーグ測度が 0,すなわち零集合だから,というものでした。

一方,高校以来学んできた積分(リーマン積分)は「積分区間を有限個の区間に分ける」という操作にもとづいています。そこで,上で抜き取った可算無限個の有理数に対応して

h(x) =

"1 xは有理数0 xは無理数  (1)

という関数(ディリクレ関数)1を考えると,積分区間をいくら細かく分割しても,各分割には有理数も無理数も必ず含まれますから,前回説明したジョルダン外測度は 1,ジョルダン内測度は 0となります。つまりこの関数の積分はジョルダン可測ではなく,区分求積法では積分の値が確定しません。すなわち,リーマン積分は不可能です。

このことは,上記の「幅 0の線を可算無限個抜き取っても,定積分の値は変わらない」という説明は正確ではなく,ルベーグ測度にもとづいた新しい積分の定義が必要であることを示唆しています。これがルベーグ積分です。

ルベーグ積分の考え方

リーマン積分では,関数 y = f(x)の xのほう(定義域)を分割していました。これに対してルベーグ積分では,yのほう(値域)を分割します。

p q

f(x)

外側の下限(外測度)

内側の上限(内測度)

図 1: リーマン積分とジョルダン外測度・内測度

有理数のとき 1

無理数のとき 0

どんなに細かい区間に区切っても,その中には有理数も無理数も入っている

図 2: ディリクレ関数の積分

1h(x) = limn→∞

( limk→∞

(cosn!πx)2k)で表されます。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第15回 (2015. 1. 22) http://racco.mikeneko.jp/  1/4 ページ

ディリクレ関数

x0

1

……

とおくと,関数列 {ϕ1(x),ϕ2(x), . . . }は (7)式の単調増加性を満たしています。

一方,ある自然数N について,f(x)の f(x) < N となる部分については,n ! N のとき (9)式の上の式から

|f(x)− ϕn(x)| ≤1

2n(11)

となります。また,f(x) = +∞ 2のところでは limn→∞

ϕn(x) = +∞となります。このことは,各点 xでϕn(x)が f(x)に収束(各点収束)することを意味しています。■

再び最初の問題へ,そして発展

以上の議論をふまえて,最初の「ディリクレ関数 h(x)の積分」の問題を考えてみます。この関数は,有理数全体をQ,実数全体をRであらわすと,

h(x) = 1× ϕ(x;Q) + 0× ϕ(x;R\Q) (12)

という単関数になり 3,Qのルベーグ測度m(Q)は 0ですから,任意の積分区間で h(x)の積分は 0となります。

今回の説明では,最初の問題との関連から,1次元関数を想定していました。しかし,今回説明したルベーグ積分の定義では,定義域が1次元の実数値である必要はないことがわかると思います。実際,ルベーグ積分は「ルベーグ可測な集合に対して定義された可測関数」について組み立てられています。可測集合とは数の集まりだけではなく,例えば,「事象の集合」とそれに対応する確率という測度で定義することもできます。これについては,私の講義「解析応用」4で説明しています。

2ルベーグ積分論では,このように無限大を数として扱う記述が便利なのでよく用いられます。3R\Qは,実数全体Rから有理数全体Qを除いたもの,すなわち「無理数全体」です。42013年度まで開講していましたが,現在は開講していません。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第15回 (2015. 1. 22) http://racco.mikeneko.jp/  4/4 ページ

という単関数

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ディリクレ関数の積分

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第15回第5部・測度論ダイジェスト/ ルベーグ積分

積分に対する疑問̶解決したのか?

前回の講義で,定積分! q

pf(x)dxから,pと qの間にあるすべての(可算無限個の)有理数に対応す

る幅 0の線を抜き取っても,定積分の値(グラフの下の面積)は変わらない,ということをお話ししました。その説明では,可算無限個の有理数の集合はルベーグ測度が 0,すなわち零集合だから,というものでした。

一方,高校以来学んできた積分(リーマン積分)は「積分区間を有限個の区間に分ける」という操作にもとづいています。そこで,上で抜き取った可算無限個の有理数に対応して

h(x) =

"1 xは有理数0 xは無理数  (1)

という関数(ディリクレ関数)1を考えると,積分区間をいくら細かく分割しても,各分割には有理数も無理数も必ず含まれますから,前回説明したジョルダン外測度は 1,ジョルダン内測度は 0となります。つまりこの関数の積分はジョルダン可測ではなく,区分求積法では積分の値が確定しません。すなわち,リーマン積分は不可能です。

このことは,上記の「幅 0の線を可算無限個抜き取っても,定積分の値は変わらない」という説明は正確ではなく,ルベーグ測度にもとづいた新しい積分の定義が必要であることを示唆しています。これがルベーグ積分です。

ルベーグ積分の考え方

リーマン積分では,関数 y = f(x)の xのほう(定義域)を分割していました。これに対してルベーグ積分では,yのほう(値域)を分割します。

p q

f(x)

外側の下限(外測度)

内側の上限(内測度)

図 1: リーマン積分とジョルダン外測度・内測度

有理数のとき 1

無理数のとき 0

どんなに細かい区間に区切っても,その中には有理数も無理数も入っている

図 2: ディリクレ関数の積分

1h(x) = limn→∞

( limk→∞

(cosn!πx)2k)で表されます。

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ディリクレ関数

x0

1

……

とおくと,関数列 {ϕ1(x),ϕ2(x), . . . }は (7)式の単調増加性を満たしています。

一方,ある自然数N について,f(x)の f(x) < N となる部分については,n ! N のとき (9)式の上の式から

|f(x)− ϕn(x)| ≤1

2n(11)

となります。また,f(x) = +∞ 2のところでは limn→∞

ϕn(x) = +∞となります。このことは,各点 xでϕn(x)が f(x)に収束(各点収束)することを意味しています。■

再び最初の問題へ,そして発展

以上の議論をふまえて,最初の「ディリクレ関数 h(x)の積分」の問題を考えてみます。この関数は,有理数全体をQ,実数全体をRであらわすと,

h(x) = 1× ϕ(x;Q) + 0× ϕ(x;R\Q) (12)

という単関数になり 3,Qのルベーグ測度m(Q)は 0ですから,任意の積分区間で h(x)の積分は 0となります。

今回の説明では,最初の問題との関連から,1次元関数を想定していました。しかし,今回説明したルベーグ積分の定義では,定義域が1次元の実数値である必要はないことがわかると思います。実際,ルベーグ積分は「ルベーグ可測な集合に対して定義された可測関数」について組み立てられています。可測集合とは数の集まりだけではなく,例えば,「事象の集合」とそれに対応する確率という測度で定義することもできます。これについては,私の講義「解析応用」4で説明しています。

2ルベーグ積分論では,このように無限大を数として扱う記述が便利なのでよく用いられます。3R\Qは,実数全体Rから有理数全体Qを除いたもの,すなわち「無理数全体」です。42013年度まで開講していましたが,現在は開講していません。

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という単関数

xが有理数のとき1

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ディリクレ関数の積分

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第15回第5部・測度論ダイジェスト/ ルベーグ積分

積分に対する疑問̶解決したのか?

前回の講義で,定積分! q

pf(x)dxから,pと qの間にあるすべての(可算無限個の)有理数に対応す

る幅 0の線を抜き取っても,定積分の値(グラフの下の面積)は変わらない,ということをお話ししました。その説明では,可算無限個の有理数の集合はルベーグ測度が 0,すなわち零集合だから,というものでした。

一方,高校以来学んできた積分(リーマン積分)は「積分区間を有限個の区間に分ける」という操作にもとづいています。そこで,上で抜き取った可算無限個の有理数に対応して

h(x) =

"1 xは有理数0 xは無理数  (1)

という関数(ディリクレ関数)1を考えると,積分区間をいくら細かく分割しても,各分割には有理数も無理数も必ず含まれますから,前回説明したジョルダン外測度は 1,ジョルダン内測度は 0となります。つまりこの関数の積分はジョルダン可測ではなく,区分求積法では積分の値が確定しません。すなわち,リーマン積分は不可能です。

このことは,上記の「幅 0の線を可算無限個抜き取っても,定積分の値は変わらない」という説明は正確ではなく,ルベーグ測度にもとづいた新しい積分の定義が必要であることを示唆しています。これがルベーグ積分です。

ルベーグ積分の考え方

リーマン積分では,関数 y = f(x)の xのほう(定義域)を分割していました。これに対してルベーグ積分では,yのほう(値域)を分割します。

p q

f(x)

外側の下限(外測度)

内側の上限(内測度)

図 1: リーマン積分とジョルダン外測度・内測度

有理数のとき 1

無理数のとき 0

どんなに細かい区間に区切っても,その中には有理数も無理数も入っている

図 2: ディリクレ関数の積分

1h(x) = limn→∞

( limk→∞

(cosn!πx)2k)で表されます。

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ディリクレ関数

x0

1

……

とおくと,関数列 {ϕ1(x),ϕ2(x), . . . }は (7)式の単調増加性を満たしています。

一方,ある自然数N について,f(x)の f(x) < N となる部分については,n ! N のとき (9)式の上の式から

|f(x)− ϕn(x)| ≤1

2n(11)

となります。また,f(x) = +∞ 2のところでは limn→∞

ϕn(x) = +∞となります。このことは,各点 xでϕn(x)が f(x)に収束(各点収束)することを意味しています。■

再び最初の問題へ,そして発展

以上の議論をふまえて,最初の「ディリクレ関数 h(x)の積分」の問題を考えてみます。この関数は,有理数全体をQ,実数全体をRであらわすと,

h(x) = 1× ϕ(x;Q) + 0× ϕ(x;R\Q) (12)

という単関数になり 3,Qのルベーグ測度m(Q)は 0ですから,任意の積分区間で h(x)の積分は 0となります。

今回の説明では,最初の問題との関連から,1次元関数を想定していました。しかし,今回説明したルベーグ積分の定義では,定義域が1次元の実数値である必要はないことがわかると思います。実際,ルベーグ積分は「ルベーグ可測な集合に対して定義された可測関数」について組み立てられています。可測集合とは数の集まりだけではなく,例えば,「事象の集合」とそれに対応する確率という測度で定義することもできます。これについては,私の講義「解析応用」4で説明しています。

2ルベーグ積分論では,このように無限大を数として扱う記述が便利なのでよく用いられます。3R\Qは,実数全体Rから有理数全体Qを除いたもの,すなわち「無理数全体」です。42013年度まで開講していましたが,現在は開講していません。

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という単関数

xが有理数のとき1 xが無理数のとき1

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ディリクレ関数の積分

有理数のルベーグ測度は0

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第15回第5部・測度論ダイジェスト/ ルベーグ積分

積分に対する疑問̶解決したのか?

前回の講義で,定積分! q

pf(x)dxから,pと qの間にあるすべての(可算無限個の)有理数に対応す

る幅 0の線を抜き取っても,定積分の値(グラフの下の面積)は変わらない,ということをお話ししました。その説明では,可算無限個の有理数の集合はルベーグ測度が 0,すなわち零集合だから,というものでした。

一方,高校以来学んできた積分(リーマン積分)は「積分区間を有限個の区間に分ける」という操作にもとづいています。そこで,上で抜き取った可算無限個の有理数に対応して

h(x) =

"1 xは有理数0 xは無理数  (1)

という関数(ディリクレ関数)1を考えると,積分区間をいくら細かく分割しても,各分割には有理数も無理数も必ず含まれますから,前回説明したジョルダン外測度は 1,ジョルダン内測度は 0となります。つまりこの関数の積分はジョルダン可測ではなく,区分求積法では積分の値が確定しません。すなわち,リーマン積分は不可能です。

このことは,上記の「幅 0の線を可算無限個抜き取っても,定積分の値は変わらない」という説明は正確ではなく,ルベーグ測度にもとづいた新しい積分の定義が必要であることを示唆しています。これがルベーグ積分です。

ルベーグ積分の考え方

リーマン積分では,関数 y = f(x)の xのほう(定義域)を分割していました。これに対してルベーグ積分では,yのほう(値域)を分割します。

p q

f(x)

外側の下限(外測度)

内側の上限(内測度)

図 1: リーマン積分とジョルダン外測度・内測度

有理数のとき 1

無理数のとき 0

どんなに細かい区間に区切っても,その中には有理数も無理数も入っている

図 2: ディリクレ関数の積分

1h(x) = limn→∞

( limk→∞

(cosn!πx)2k)で表されます。

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ディリクレ関数

x0

1

……

とおくと,関数列 {ϕ1(x),ϕ2(x), . . . }は (7)式の単調増加性を満たしています。

一方,ある自然数N について,f(x)の f(x) < N となる部分については,n ! N のとき (9)式の上の式から

|f(x)− ϕn(x)| ≤1

2n(11)

となります。また,f(x) = +∞ 2のところでは limn→∞

ϕn(x) = +∞となります。このことは,各点 xでϕn(x)が f(x)に収束(各点収束)することを意味しています。■

再び最初の問題へ,そして発展

以上の議論をふまえて,最初の「ディリクレ関数 h(x)の積分」の問題を考えてみます。この関数は,有理数全体をQ,実数全体をRであらわすと,

h(x) = 1× ϕ(x;Q) + 0× ϕ(x;R\Q) (12)

という単関数になり 3,Qのルベーグ測度m(Q)は 0ですから,任意の積分区間で h(x)の積分は 0となります。

今回の説明では,最初の問題との関連から,1次元関数を想定していました。しかし,今回説明したルベーグ積分の定義では,定義域が1次元の実数値である必要はないことがわかると思います。実際,ルベーグ積分は「ルベーグ可測な集合に対して定義された可測関数」について組み立てられています。可測集合とは数の集まりだけではなく,例えば,「事象の集合」とそれに対応する確率という測度で定義することもできます。これについては,私の講義「解析応用」4で説明しています。

2ルベーグ積分論では,このように無限大を数として扱う記述が便利なのでよく用いられます。3R\Qは,実数全体Rから有理数全体Qを除いたもの,すなわち「無理数全体」です。42013年度まで開講していましたが,現在は開講していません。

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という単関数

xが有理数のとき1 xが無理数のとき1

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2014年度秋学期 

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ディリクレ関数の積分

有理数のルベーグ測度は0

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第15回第5部・測度論ダイジェスト/ ルベーグ積分

積分に対する疑問̶解決したのか?

前回の講義で,定積分! q

pf(x)dxから,pと qの間にあるすべての(可算無限個の)有理数に対応す

る幅 0の線を抜き取っても,定積分の値(グラフの下の面積)は変わらない,ということをお話ししました。その説明では,可算無限個の有理数の集合はルベーグ測度が 0,すなわち零集合だから,というものでした。

一方,高校以来学んできた積分(リーマン積分)は「積分区間を有限個の区間に分ける」という操作にもとづいています。そこで,上で抜き取った可算無限個の有理数に対応して

h(x) =

"1 xは有理数0 xは無理数  (1)

という関数(ディリクレ関数)1を考えると,積分区間をいくら細かく分割しても,各分割には有理数も無理数も必ず含まれますから,前回説明したジョルダン外測度は 1,ジョルダン内測度は 0となります。つまりこの関数の積分はジョルダン可測ではなく,区分求積法では積分の値が確定しません。すなわち,リーマン積分は不可能です。

このことは,上記の「幅 0の線を可算無限個抜き取っても,定積分の値は変わらない」という説明は正確ではなく,ルベーグ測度にもとづいた新しい積分の定義が必要であることを示唆しています。これがルベーグ積分です。

ルベーグ積分の考え方

リーマン積分では,関数 y = f(x)の xのほう(定義域)を分割していました。これに対してルベーグ積分では,yのほう(値域)を分割します。

p q

f(x)

外側の下限(外測度)

内側の上限(内測度)

図 1: リーマン積分とジョルダン外測度・内測度

有理数のとき 1

無理数のとき 0

どんなに細かい区間に区切っても,その中には有理数も無理数も入っている

図 2: ディリクレ関数の積分

1h(x) = limn→∞

( limk→∞

(cosn!πx)2k)で表されます。

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ディリクレ関数

x0

1

……

とおくと,関数列 {ϕ1(x),ϕ2(x), . . . }は (7)式の単調増加性を満たしています。

一方,ある自然数N について,f(x)の f(x) < N となる部分については,n ! N のとき (9)式の上の式から

|f(x)− ϕn(x)| ≤1

2n(11)

となります。また,f(x) = +∞ 2のところでは limn→∞

ϕn(x) = +∞となります。このことは,各点 xでϕn(x)が f(x)に収束(各点収束)することを意味しています。■

再び最初の問題へ,そして発展

以上の議論をふまえて,最初の「ディリクレ関数 h(x)の積分」の問題を考えてみます。この関数は,有理数全体をQ,実数全体をRであらわすと,

h(x) = 1× ϕ(x;Q) + 0× ϕ(x;R\Q) (12)

という単関数になり 3,Qのルベーグ測度m(Q)は 0ですから,任意の積分区間で h(x)の積分は 0となります。

今回の説明では,最初の問題との関連から,1次元関数を想定していました。しかし,今回説明したルベーグ積分の定義では,定義域が1次元の実数値である必要はないことがわかると思います。実際,ルベーグ積分は「ルベーグ可測な集合に対して定義された可測関数」について組み立てられています。可測集合とは数の集まりだけではなく,例えば,「事象の集合」とそれに対応する確率という測度で定義することもできます。これについては,私の講義「解析応用」4で説明しています。

2ルベーグ積分論では,このように無限大を数として扱う記述が便利なのでよく用いられます。3R\Qは,実数全体Rから有理数全体Qを除いたもの,すなわち「無理数全体」です。42013年度まで開講していましたが,現在は開講していません。

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という単関数

xが有理数のとき1 xが無理数のとき1

つまり,h(x)をどんな積分区間で積分しても0

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niv.

今日のまとめルベーグ積分  x軸を細かく分割するのではなく,  y軸を分割して,それにしたがってx軸が  分割される

x軸でなくても  ルベーグ可測な集合に対する可測関数ならOK  例:事象の集合と確率

 分割されたx軸の区間の長さはルベーグ測度  で測るから,区間が可算無限個あってもよい