20110122 sigfin06 so
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1
売買コストを考慮した市場急変に対応する日本株式運用モデル
SIG-FIN第6回研究会
2011年1月22日
曹 治平(スパークス・アセット・マネジメント株式会社)古幡 征史(南カリフォルニア大学コンピューターサイエンス学部)水田 孝信(スパークス・アセット・マネジメント株式会社)
2
目次
• はじめに• 提案手法
– Sorensenの手法の説明– 古幡の手法の説明– 回転率の説明
• 結果– 通期の比較– 特定時期における比較
• まとめ• 今後の展望
3
はじめに①
• サブプライム問題、リーマンショック等の市場環境急変時において、今まで長期的に有効性を示してきた分析手法が急に効かなくなる事態が発生
• 機関投資家は大きな金額を運用するため、売買回転率が高い運用は、市場に大きなマーケットインパクトを与え、売買コストが急増するだけでなく、銘柄によっては実質的に投資不可能
回転率の高い運用一貫した運用
市場環境急変時の対応売買コスト、回転率を抑えた現実的な運用
対応
対応
対応できない 対応できない
4
はじめに②
• 一貫した投資手法を維持しつつ、市場環境が急変するときのみ回転率を高めて、損失を限定する手法が必要とされる
• 本研究では、複数のファクターを組み合わせ、回転率が限定されるSorensen et al.の手法(合成IC最大化法)および、市場急変時にファクター間の切り替えが機械的に行われる古幡らの手法(PEM)を用いて、さらに実務上不可欠な回転率の概念を導入し、以下の目的を満たす手法を提案– 基本的には回転率の低い長期学習手法を利用
– 市場環境が急変するときには市場感応度の高い短期学習手法に切り替える
– 回転率を抑えつつ、急変時の損失を限定し、効率のよい(シャープレシオが高い)運用手法を提案
5
提案手法ー枠組み
• 以下の手順で本研究の提案手法を構築– Sorensen et al.の方法(合成IC最大化法)で長期学習、短期学習の二つの合成ポートフォリオを構築
– 古幡らの方法(Paired Evaluators Method ー PEM)で長期学習を基本とし、市場急変時のみ短期学習に切り替えるモデルを構築
– 上記の過程において、回転率等実務上考慮すべき概念を導入
• 分析対象は東京証券取引所一部上場銘柄
合成IC最大化法(Sorensen et al.)合成IC最大化法(Sorensen et al.)
回転率を考慮した長期学習ポートフォリオ
PEMで切り替え(古幡ら)
PEMで切り替え(古幡ら)
回転率を考慮した短期学習ポートフォリオ
切り替え時は
回転率を考慮
6
提案手法ーSorensenの手法①
• 複数のファクターによって合成された合成ファクターのInformation Coefficient (IC)が最大となるように、ファクターの合成ウェイトを決める手法
• ICとは情報係数のことで、ここでは銘柄のファクター値とリターンの相関係数を指す
相関係数行列ρ
) :ウェイト(ベクトル
(ベクトル)予想 合成ファクター
ρ
:
IC:IC:
)( 21
w
UU
ww
UwU
t
t
)
)
=
7
提案手法ーSorensenの手法②
• 本研究で合成に用いるファクターは以下の4つ
• 合成IC最大化法を用いて、以下の二つのポートフォリオを作成– 長期学習ポートフォリオ:過去6ヶ月のICの平均を予想IC
– 短期学習ポートフォリオ:前月のICを予想IC
今期予想純資産
今期予想純利益今期予想
時価総額
今期予想配当総額今期予想配当利回り
今期予想純利益
時価総額今期予想
前期純資産
時価総額前期実績
=
=
=
=
ROE
PER
PBR
8
提案手法ーSorensenの手法③
• ポートフォリオの作成方法は、合成IC最大化法で求められたウェイトwに各ファクターのリターンを掛け合せて求める
のリターンファクター
のウェイトファクター
ーンポートフォリオのリタ
iR
iw
R
RwR
if
i
p
i
ifip
:
:
:
∑=
9
提案手法ーSorensenの手法④
• ファクターのリターンは本研究では五分位スプレッドリターンを採用– 銘柄のファクター値をその銘柄の持つ投資魅力と考え、ファクター値の高い銘柄群をロングし、ファクター値の低い銘柄群をショートする
– ロング、ショートする銘柄は全ユニバースの銘柄のそれぞれ1/5
第五分位第五分位第五分位第五分位
第一分位第一分位第一分位第一分位
第二分位第二分位第二分位第二分位
第三分位第三分位第三分位第三分位
第四分位第四分位第四分位第四分位
第五分位第五分位第五分位第五分位
第一分位第一分位第一分位第一分位
第二分位第二分位第二分位第二分位
第三分位第三分位第三分位第三分位
第四分位第四分位第四分位第四分位
投資魅力投資魅力投資魅力投資魅力
大大大大
小小小小
第一分位第一分位第一分位第一分位ををををLONG、、、、第五分位第五分位第五分位第五分位ををををSHORT
五分位五分位五分位五分位スプレッドスプレッドスプレッドスプレッドリターンリターンリターンリターン
LONG(買持ち)
SHORT(空売り)
10
提案手法ー古幡の手法①
• 合成IC最大化法で作られた長期学習ポートフォリオ、短期学習ポートフォリオの2ポートフォリオを利用し、市場環境のタイミングを見計って切り替えを行う
• 基本的には長期学習ポートフォリオを採用し、市場環境急変時のみ短期学習ポートフォリオに切り替える手法
通常時
長期 短期
採用手法
長期手法を採用
長期 短期
採用手法
短期手法に切り替え
市場環境急変時
11
提案手法ー古幡の手法②
• 市場環境急変時は、前月の長期学習ポートフォリオのリターンが閾値を下回るときと定義
• 閾値は以下のように時系列データを利用して機械的に決定
時点の閾値θ
%以下のダミー変数以上時点における
θ
t
RtQ
Qthen
QandQif
QQthen
RRelseif
QQthen
RRelseif
QQthen
RRif
t
tLp
tR
tdt
td
td
tR
tR
tSp
tLp
tR
tR
tSp
tLp
tR
tR
tSp
tLp
tLp
tLp
tLp
tLp
tLp
tLp
tLp
:
10:
00
995.0*
1995.0*
1995.0*
1,10~
11
110~10~
1,1,
110~10~
1,1,
110~10~
1,1,
1,
2,2,
2,2,
2,2,
−
+−
−
−−
−
−−
−
−−
−
−−
−−
−−
=
><
=
=
+=
>
−=
<
12
提案手法ー古幡の手法③
• 回転率の概念をここで導入する。– 閾値の決定、および閾値の決定後のリターン比較に当たって、予想回転率から求めた予想売買手数料を差し引く
売買手数料:
)2.7(
)1.7(
1,,,
1,,,
Turn
TurnRR
TurnRR
tStSp
tSp
tLtLp
tLp
LLL
LLL
+
+
−=
−=
t時点
t+1時点 長期 短期
予想長期回転率 予想短期回転率
予想短期売買手数料予想長期売買手数料
13
提案手法ー回転率の導入①
• 本研究における回転率の計算は以下に基づいて行う– 回転率は各ファクター間のウェイトの変化と定義– リバランスはファクター間の相関が高いファクター同士から行う
– ファクター間の相関が高いファクター同士における回転率は低くなるように計算
間の相関ファクターρ
間の回転率ファクター
⊿⊿
ρ
ρ⊿⊿
ρ
ji
jiP
wwPthen
elseif
wwPthen
if
ji
ji
jiji
ji
jijiji
ji
,:
,:
1*),min(
0
)1(*),min(
0
,
,
,
,
,,
,
=
≤
−=
>
ファクター1 ファクター2
ファクター3 ファクター4
ウェイト減少
ウェイト増加
相関の高い順に
ファクター1,3>ファクター1,4>ファクター2,3>ファクター2,4
-30% -20%
+20% +30%
①20%*(1-ρ1,3) ②10%*(1-ρ1,4) ③20%*(1-ρ2,4)
14
• 本研究はロングショートファンド、つまり買う銘柄と空売り銘柄両方あるため、ウェイト10%の変化は、実質的に40%の回転となる(つまり、ウェイトの変化を4倍する)
• 売買手数料Turnは実質回転率(4倍後の回転率)に売買手数料率を掛けたものとなる
全部で40%の回転
提案手法ー回転率の導入②
)では売買手数料率(本研究 %3.0:
*4*
,
,
c
cPTurn
ji
jit ∑=
ファクター1
ファクター2
-10%
+10%
ウェイトは10%変化
Short銘柄10%買戻し
Long銘柄10%売り
Short銘柄10%空売り
Long銘柄10%買い増し
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結果①ー通期の分析
• 長期、短期、提案手法の3ポートフォリオの累和リターンを比較すると、提案手法は負けている時期が少なく、リターンも長期学習ポートフォリオより高いリターンとなっている
-20%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
120%
2001年1月
2002年1月
2003年1月
2004年1月
2005年1月
2006年1月
2007年1月
2008年1月
2009年1月
2010年1月
日付
累和リターン
長期
提案手法
短期
16
結果①ー通期の分析
• 標準偏差、シャープレシオ、MaxDrawDownなどのリスクでも、提案手法は改善されている
短期 長期 提案手法累積リターン(年率化) 9.25% 8.67% 10.16%標準偏差(年率化) 9.49% 8.73% 8.89%シャープレシオ 0.97 0.99 1.14MaxDrawDown -7.71% -14.18% -11.74%
17
結果②ー回転率
• 回転率は提案手法は長期よりも高いものの、短期よりはかなり低い数値となる
長期 短期 提案手法平均 67.48% 176.65% 82.51%
0%
50%
100%
150%
200%
250%
300%
350%
400%
450%
2001年1月
2002年1月
2003年1月
2004年1月
2005年1月
2006年1月
2007年1月
2008年1月
2009年1月
2010年1月
日付
月次回転率
短期
提案手法
長期
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結果③ー特徴的な期間の分析
• 長期が短期に大きく負けている期間をピックアップ
– 時期No1.4.5.7では、長期が大きく負けてしまったが、翌月から短期に切り替えを行い、大きな損失を避けた例
– 時期No2.3では、長期と短期に大きな差があったが、長期が負けたよりも短期が大きなリターンを出したため、切り替えはおこなわれない
– 時期No6は、ある月では短期は長期に勝ったが、持続性がない例。本研究では長期を維持し、リターンを安定させた
時期No 月No 日付 長期 短期 差 提案手法
1 2001/11/30 1.74% 2.30% -0.56% 1.74%2 2001/12/28 -5.05% -3.89% -1.15% -5.05%3 2002/1/31 0.73% 6.47% -5.75% 6.47%
4 2002/12/30 -1.54% 1.17% -2.70% -1.54%5 2003/1/31 1.78% 6.17% -4.39% 1.78%6 2003/2/28 0.02% 1.58% -1.56% 0.02%7 2003/5/30 2.63% 8.87% -6.24% 2.63%8 2003/6/30 -1.14% -0.76% -0.37% -1.14%
9 2003/8/29 0.40% 2.57% -2.18% 0.40%10 2003/9/30 -4.49% -0.52% -3.98% -0.52%
11 2007/8/31 -2.98% -2.54% -0.44% -2.98%12 2007/9/28 0.97% 0.97% 0.00% 0.97%13 2007/10/31 -2.66% -2.66% 0.00% -2.66%14 2007/11/30 -2.20% 0.77% -2.97% 0.77%15 2007/12/28 -0.30% 1.23% -1.53% 1.23%16 2009/4/30 4.85% 5.10% -0.25% 4.85%17 2009/5/29 7.37% 3.53% 3.84% 7.37%
18 2009/11/30 -6.17% -6.21% 0.04% -6.17%19 2009/12/30 -0.71% 2.12% -2.83% 2.12%
7
5
6
1
2
3
4
19
まとめ
• 本研究は、Sorensen et alの方法と古幡らの方法を組み合わせ、売買回転率を抑えつつ、市場環境急変時に対応する手法を提案し、日本株で得られる成果を検証
• 本研究の提案手法は、通期的に見れば、長期学習ポートフォリオ、短期学習ポートフォリオのどちらよりも、高いリターン、低いリスク、かつMaxDrawDownが改善するという結果となった
• 長期が短期に負けている時期にフォーカスすると、– 長期が大きな損失を出している時期は短期に切り替え
– 短期が優れたリターンを出しているときは長期のままという結果が得られた
• 提案手法は長期ポートフォリオを維持し、市場環境急変時のみ短期ポートフォリオに切り替え、損失を限定する
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今後の展望
• 本研究は以下の今後の課題として、以下の二つが挙げられる
1. 長期ポートフォリオが損しておらず、短期ポートフォリオが著しくリターンを出してしまう時期に関して、切り替えが行われない
2. リターン計測は5分位スプレッドリターンを使用しており、リターンを実現するには該当分位のすべての銘柄を取引しなければならない、したがってさらに実務的な考慮が必要
• 上記課題の現時点で考えられる解決方法は、以下の通りである
1. 閾値の計算において、長期と短期の差の概念を導入
2. 日経ポートフォリオマスター(NPM)等のポートフォリオマネージングツールを利用