2009年度数学IA演習第2 - lecture.ecc.u-tokyo.ac.jpnkiyono/2009/haya09...問題6....
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2009年度数学 IA演習第 2回理 I 22, 23, 24, 25, 26, 27組
5月 12日 清野和彦
問題 1.
(1) 非負実数全体 [0,∞) を定義域とする関数 f(x) =√
x は連続関数であることを証明せよ。(2) n を 3以上の整数とする。n が奇数のときは実数全体、n が偶数のときは非負実数全体 [0,∞) を定義域とする関数 f(x) = n
√x は連続関数であることを証明
せよ。
問題 2. 同じ定義域を持つ二つの関数 f(x) と g(x) から、同じ定義域を持つ関数h(x) を
h(x) = max{f(x), g(x)}
によって定義する。f(x) と g(x) が連続関数ならば h(x) も連続関数であることを証明せよ。
問題 3. 実数全体を定義域とする関数
f(x) =
{1 x ∈ Q0 x ∈ Q
は任意の x で不連続であることを証明せよ。
問題 4. 正実数全体を定義域とする関数
f(x) =
1
qx =
p
q∈ Q(既約分数表示で q > 0)
0 x ∈ Q
は無理数では連続だが有理数では不連続であることを証明せよ。
問題 5. x > 0 で定義された連続関数
f(x) = sin1
x
について次を示せ。(1) f(0) の値をどう選んでも f(x) を x = 0 まで連続に拡張することはできない。(2) f(x) は一様連続ではない。
裏に続きます。
問題 6. 有界閉区間 [a, b] を定義域とする連続関数 f で、
「値域に属する任意の y に対し f(x) = y を満たす x がちょうど 2個ある」
という性質を持つものは存在しないことを示せ。
• 関数 g が関数 f の逆関数であるとは、g の定義域および値域はそれぞれ f の値域および定義域と一致し、f の定義域内の任意の実数 x に対し g(f(x)) = x が成り立ち、また、g の定義域内の任意の実数 y に対し f(g(y)) = y が成り立つことです。
• f の定義域内の任意の二つの実数 x1 と x2 に対し、x1 < x2 ⇒ f(x1) < f(x2) が成り立つとき単調増加であると言い、x1 < x2 =⇒ f(x1) > f(x2) が成り立つとき単調減少であると言います。
問題 7. 区間を定義域とする連続関数 f について次を示せ。(1) f が逆関数を持つことと、f が単調増加または単調減少であることは同値である。(2) f が逆関数を持つとき、逆関数も区間を定義域とする連続関数である。
問題 8. 次の関数の逆関数を計算せよ。また、それぞれの定義域と値域を求めよ。
(1) log(x +
√x2 + 1
)定義域は実数全体
(2) log(x +
√x2 − 1
)定義域は 1以上の実数
(3) log(x −
√x2 − 1
)定義域は 1以上の実数
問題 9. R2 の任意の二つの元 p1 = (x1, y1) と p2 = (x2, y2) に対し、
d1(p1, p2) = |x1 − x2| + |y1 − y2|d2(p1, p2) =
√(x1 − x2)2 + (y1 − y2)2
d∞(p1, p2) = max {|x1 − x2|, |y1 − y2|}
と定義する。(1) d1, d∞ はどちらも R2 の距離であることを示せ。(d2 が距離であることはよくご存知でしょうから省略します。)(2) R2 の元の列 {pn}∞n=1 とある元 p0 = (x0, y0) に対し、次の四つは同値であることを示せ。
(i) 距離 d1 を使った収束の定義で {pn}∞n=1 は p0 に収束する。(ii) 距離 d2 を使った収束の定義で {pn}∞n=1 は p0 に収束する。(iii) 距離 d∞ を使った収束の定義で {pn}∞n=1 は p0 に収束する。(iv) {xn}∞n=1 は x0 に収束し、かつ {yn}∞n=1 は y0 に収束する。
2009年度数学 IA演習第 2回解答理 I 22, 23, 24, 25, 26, 27組
5月 12日 清野和彦
第1回への補足
第 1回問題 1(アルキメデスの原理)について
皆さんの答案に、
任意の実数 a に付いて a < N を満たす自然数 N が存在する。
とか、更に細かく、
任意の実数 a に付いて、a 以下の最大の整数を [a] とすると a < [a] + 1 である。
ということを使ってしまっているものが沢山ありました。
limn→∞ n = ∞ だが実数は有限だから
というような「根拠」を書いてくれているものもありました。
しかし、これらのことはアルキメデスの原理を使って証明されるのです。そもそも、デデキント
切断というものとして実数を定義し直してしまった以上、皆さんが今まで信じてきた実数の性質は
すべて証明しなければならないことになってしまうのです。上のこともそうですし、任意の実数が
小数で表せることもそうです。そして、これらのことを証明するのにアルキメデスの原理を使いま
す。だから、アルキメデスの原理を上のようなことを使って証明することはできません。循環論法
になってしまいます。
なお、第 1回解答プリントの証明は、実数がデデキント切断であることを直接には使わず、それから導かれる実数の連続性を使っていますが、アルキメデスの原理の N を切断として表すという
証明方法も可能だと思います。二つの実数 a, b も切断なので、それらの中身を使って N を切断と
して表そうという考え方です。しかし、今は考えてみる時間がありません。申し訳ありませんがご
了承下さい。興味のある方は自分で考えてみてください。
第 1回問題 9(数列の積と商の極限)の解答
まず、数列 {an}∞n=1 が a に {bn}∞n=1 が b に収束しているとき、cn = anbn によって定義され
る数列 {cn}∞n=1 が ab に収束していることを示しましょう。
|cn − ab| = |anbn − ab| = |anbn − anb + anb − ab| ≤ |anbn − anb| + |anb − ab| = |an||bn − b| + |an − a||b|
という不等式が成り立ちます。さて、収束する数列は有界ですので、すべての nに対して |an| < M
の成り立つ定数 M が存在します。そこで、任意の正実数 ε が与えられたとして、自然数 N を
n > N =⇒ |an − a| <ε
2(|b| + 1)and |bn − b| <
ε
2M
第 2 回解答 2
が成り立つように選びます。(そのような N が選べることは第 1回問題 5の解答を参照してください。)すると、
n > N =⇒ |cn − ab| < Mε
2M+
ε
2(|b| + 1)|b| <
ε
2+
ε
2= ε
が成り立ちます。これで示せました。
次に、すべての bn と極限値 b が 0でないとして、dn = an/bn が a/b に収束することを示しま
すが、積の極限が極限の積であることを上で示したので、dn = 1/bn が 1/b に収束することを示
せば十分です。 ∣∣∣∣dn − 1b
∣∣∣∣ =∣∣∣∣b − bn
bnb
∣∣∣∣ =|b − bn||bn||b|
と変形できます。bn は b に収束しているので、
n > N1 =⇒ |b − bn| <|b|2
の成り立つ N1 が存在します。特に、このとき |bn| > |b|/2 となっています。次に、与えられた正実数 ε に対して
n > N2 =⇒ |b − bn| <|b|2
2ε
の成り立つ N2 が存在します。そこで、N = max{N1, N2} とすれば
n > N =⇒ |b − bn||bn||b|
<|b|22 ε
|b|2 |b|
= ε
が成り立ちます。これで示せました。 □
第 1回問題 12(上に有界な単調増加数列は収束する)の解答
数列 {an}∞n=1 が上に有界ということは、集合
A := {a1, a2, a3, . . . , an, . . . }
が上に有界ということです。よって、supA が(+∞ でなく実数として)存在します。以下、数列{an}∞n=1 が supA に収束することを証明します。
正実数 ε を任意に取ります。supA は A の上限なのですから
∀n [an ≤ supA] and ∃n0 [supA − ε < an0 ]
が成り立ちます。数列 {an}∞n=1 は単調増加なのですから、この n0 に付いて
n ≥ n0 =⇒ supA − ε < an
が成り立ちます。よって、
n ≥ n0 =⇒ supA − ε < an ≤ supA
が得られます。supA < supA + ε なので、
n ≥ n0 =⇒ supA − ε < an < supA + ε
すなわち
n ≥ n0 =⇒ |an − supA| < ε
が成り立ちます。これは {an}∞n=1 の極限が supA であることの定義です。これで示せました。□
第 2 回解答 3
問題1の解答
(1)
関数 f(x) が連続関数であるということは、定義域内の任意の a において連続であるというこ
と、つまり、
limx→a
f(x) = f(a)
が任意の a について成り立つこと、すなわち、任意の正実数 ε に対して
|x − a| < δ =⇒ |f(x) − f(a)| < ε
が成り立つ正実数 δ が存在するということです。だから、しなければならないことは、任意の非負
実数 a と任意の正実数 ε を一組選んで固定したとき、この a と ε と「f(x) がどういう関数であるか」ということを使って上の式が成り立つような δ を作り出す(存在することを示す)ことです。
そこで、まず f(x) が√
x であることを使って |f(x)− f(a)| を具体的に書き表してみましょう。このとき、目指していることが
|x − a| が小さければ |f(x) − f(a)| も小さい
ということであることを意識して、|f(x)− f(a)| が例えば |x− a| の定数倍より小さいといった形になりやすい式変形を目指します。すると、
|f(x) − f(a)| =∣∣√x −
√a∣∣ =
|√
x −√
a| (√
x +√
a)√x +
√a
=|x − a|√x +
√a
という式変形がよさそうに思えるでしょう。なぜなら、a > 0 なら
|f(x) − f(a)| =|x − a|√x +
√a≤ |x − a|√
a
となるからです。(a = 0 のときは別に考えることにします。)今、a は固定した実数ですので、与
えられた ε に対して |f(x) − f(a)| < ε が |x − a| < δ を満たす任意の x について成り立つため
には、
δ√a
< ε
が成り立つほど δ を小さく取れば十分です。
以上より、
任意の正実数 a と任意の正実数 ε に対し、正実数 δ を
δ =√
aε
とすれば、0 < |x − a| < δ を満たす任意の x について
|f(x) − f(a)| =∣∣√x −
√a∣∣ =
|x − a|√x +
√a
|x − a|√a
<δ√a
= ε
となる
第 2 回解答 4
という、目標の命題が示せました。
また、a = 0 のときは、
|f(x) − f(0)| = |f(x)| =√
x
ですので、δ = ε2 と取れば、0 < x < δ を満たす任意の x に対し
|f(x) − f(0)| =√
x <√
d = ε
が成り立ちます。よって、やはり連続です。 □
(2)
n が奇数のとき f(x) は奇関数、すなわち f(−x) = f(x) が成り立つので、a で連続なら −a で
も連続です。よって、n が奇数のときも [0,∞) で連続であることを示せば十分です。つまり、 n
の偶奇に係わらず、a ≥ 0 を満たす任意の a について f(x) が a で連続であることを示せばよい
ことになります。
f(x) = n√
x ですから、
|f(x) − f(a)| =∣∣ n√
x − n√
a∣∣
=| n√
x − n√
a|(
n√
xn−1 + n
√x
n−2 n√
a + · · · + n√
an−1
)n√
xn−1 + n
√x
n−2 n√
a + · · · + n√
an−1
=|x − a|
n√
xn−1 + n
√x
n−2 n√
a + · · · + n√
an−1
となります。よって、a > 0 なら、x ≥ 0 とすると
|f(x) − f(a)| =|x − a|
n√
xn−1 + n
√x
n−2 n√
a + · · · + n√
an−1 ≤ |x − a|
n√
an−1
となります。(a = 0 のときは別に考えることにします。)このことから、与えられた ε に対して
|f(x) − f(a)| < ε が |x − a| < δ を満たす任意の x について成り立つためには
δn√
an−1 < ε かつ δ ≤ a
が成り立つほど δ を小さく取れば十分です。(後者の条件は x ≥ 0 となるようにするために付け加えただけなので、なしでも構いません。)
以上より、
任意の正実数 a と任意の正実数 ε に対し、正実数 δ を
δ = min{ n√
an−1
ε, a}
とすれば、|x − a| < δ を満たす任意の x について
|f(x) − f(a)| < ε
となる
第 2 回解答 5
という、目標の命題が示せました。
また、a = 0 のときは
|f(x) − f(0)| = |f(x)| = n√
x
ですので、δ = εn と取れば |x| < δ を満たす任意の x に対し、
|f(x) − f(0)| =∣∣ n√
x∣∣ <
n√
d = ε
が成り立ちますから、やはり連続です。 □
コメント
「関数が連続」と一口に言ってしまいますが、例えば「x < 0 では 0で x ≥ 0 では 1」というような関数は、「x = 0 では連続で x = 0 では不連続」と言いたくなります。というか、「連続」という言葉をそのように使えなければイヤでしょう。一方、この例の逆の極端として、
f(x) =
{x (x ∈ Q)
−x (x ∈ Q)
という関数 f(x) を考えてみます。ご存じのように、どの無理数のどんなに近くにも有理数があり、またどの有理数のどんなに近くにも無理数がありますので、この関数のグラフを無理矢理書こうと
思ったら y = x と y = −x の二本の直線を書くしかないでしょう(図 1)。もちろん x が有理数
のところでは y = x の側、x が無理数のところでは y = −x の側です。この f(x) の場合、例えば x = 1 では f(1) = 1 ですが、1のどんなに近くにも無理数があるので x = 1 のどんなに近くでも f(x) が負になる x があります。1以外の x についてもこのような状況なので、f(x) はどこでも不連続だと思えるでしょう。ところが、x = 0 のところではどうでしょうか。y = x のグラフと
y = −x のグラフがくっついているので、x = 0 だけは他とは違うと感じられるのではないでしょうか。� �
y
x
x が有理数のときはこっち
x が無理数のときはこっち
図 1: x = 0 のところだけグラフが「つながっている」ように見える。� �上の二つの例から考えても、「関数が連続」ということを一足飛びに定義するのではなく、「関数
が x = a で連続」というように、定義域内の実数ごとに連続か不連続かを定義し、定義域全体で
連続なときに「関数は連続である」と省略して言うことにするのがよさそうだと思えるでしょう。
第 2 回解答 6
それでは、「関数が x = a で連続」ということはどのように定義すべきでしょうか。上の例の
f(x) でもわかるように、「その点でグラフがつながっていること」という文ではちょっとまずそうです。なぜなら、上の f(x) の場合 x = 0 ではグラフは切れに切れているので、x = 0 でグラフがつながっているのか切れているのか全くわからないからです。そこで、「つながっている」という
言葉の代わりに
x が a に近づくと f(x) も f(a) に近づく
という言い方を採用してみることにしましょう。この言い方の場合、上の例の f(x) においてはx = 0 では連続だということになります。なぜなら x が有理数だろうと無理数だろうと x が 0に近づけば f(x) は f(0) = 0 に近づくからです。「つながっている」の代わりに「近づく」を持ち出してきた背景にあるのは、お気づきのように
もちろん「数列の収束との関連があるに決まっている」という気持ちです。実際、関数 f(x)(上の例の関数のことではなく一般の関数です)が x = a で連続なら、a に収束する任意の数列 {an}∞n=1
について数列 {f(an)}∞n=1 は f(a) に収束していなければイヤですよね。(そして、この二つのことが本当に同じことであるということを、距離空間の間の連続写像というもっと一般的な設定で前
回の講義(4月 30日)の最後に学びました。)第 1回のプリントで数列の収束のイメージを説明したとき、xy 平面に点 (−1/n, an) をプロットした「数列のグラフ」を考えました。このグラフでとなり合う二つの点をすべて線分で結んでしま
うと、[−1, 0) を定義域とする関数のグラフが出来上がります(図 2)。この関数を f(x) としたとき、数列 {an}∞n=1 の極限値が a であるとは、
f(0) = aとすることによって f(x)の定義域を [1, 0]に拡張すると、この f(x)は x = 0で連続である
と言い換えられることがわかります。なぜなら、
任意の正実数 ε に対して n > N ⇒ |an − a| < ε の成り立つ正整数 N が存在する。
という limn→∞
an = a の定義を、f(x) の作り方を考えて f(x) の言葉に言い直すと
任意の正実数 ε に対して 0 < |x − 0| <1N
⇒ |f(x) − f(0)| < ε の成り立つ正整数 N
が存在する
となるので、数列の収束の定義に出てくる N の逆数 1/N が、関数の連続性の定義に出てくる δ
の役割を果たすことになるからです。関数の極限の定義と数列の極限の定義は全く同じであると
言ってよいわけです。
視覚的なイメージも数列のときと全く同様です。関数 f(x)が x = aで連続であるとは、y = f(x)のグラフにおいて、y = f(a)を中心としたどんなに小さな幅の帯を x軸に平行に横たえても、x = a
を中心とした十分小さな幅の部分に限ればグラフはスッポリその帯の下に隠れてしまう、というこ
とです(図 3)。なお、問題 1は事実上第 1回の問題 4
limn→∞
an = a =⇒ limn→∞
√an =
√a
と同じです。そして、その問題のコメントに「平方根でなく n 乗根でも同様」とだけ書いておい
て証明を書かなかったので、連続関数の問題として出題してみたのがこの問題の (2)です。本当に(2)は (1)と同様ですよね。
第 2 回解答 7
� �
a1
a2
a3
a4a
図 2: 数列の極限は関数の極限と全く同じ。� �� �
O
y
x O
y
x
εε
δ δ
連続不連続
フが帯からはみ出すδ をどうとってもグラ
図 3: x = a で関数が連続であるということ。� �問題2の解答
定義域内の a を任意に取ります。h(x) が a で連続であることを、3つの場合に分けて証明しましょう。
(1) f(a) > g(a) の場合α = f(a) − g(a)とおくと α > 0 となります。一方 f(x) − g(x) は x = a で連続なので、
|x − a| < δ1 =⇒ |f(x) − g(x) − α| <α
2すなわち
|x − a| < δ1 =⇒ α
2< f(x) − g(x) < 3
α
2が成り立つ正実数 δ1 が存在します。よって、|x − a| < δ1 の範囲では f(x) > g(x) であり、h(x) = f(x) となっています。さて、任意の正実数 ε に対して、f(x) が x = a で連続であることより、
|x − a| < δ2 =⇒ |f(x) − f(a)| < ε
となる正実数 δ2 が存在します。よって、δ = min{δ1, δ2} と置けば、
|x − a| < δ =⇒ |h(x) − h(a)| < ε
第 2 回解答 8
が成り立ちます。すなわち h(x) は x = a で連続です。
(2) f(a) < g(a) の場合(1)で f(x) と g(x) の役割を入れ替えるだけで、後は全く同じです。
(3) f(a) = g(a) の場合任意の正実数 ε が与えられたとします。f(x) も g(x) も x = a で連続なのですから、
|x − a| < δ1 =⇒ |f(x) − f(a)| < ε
を満たす正実数 δ1 と、
|x − a| < δ2 =⇒ |g(x) − g(a)| < ε
を満たす正実数 δ2 が存在します。そこで、δ = min{δ1, δ2} とすれば、
|x − a| < δ =⇒ |h(x) − h(a)| < ε
となり、h(x) は x = a で連続です。 □
コメント
この問題は「f(x) ≥ g(x) を満たす x の範囲においては…」とやりたくなりがちですが、f(x) ≥g(x) を満たす x の範囲は想像以上にグチャグチャになりうるのでうまく行きません。やはり、定
義に従って各点で連続であることを地道に示すのがよいですよ、という例として出題しました。
問題3の解答
有理数 a を任意に選び、f(x) が a で不連続なことを示しましょう。正実数 δ を任意に取りま
す。すると、a < α < a + δ を満たす無理数 α が取れます。(「無理数の稠密性」というやつです。
具体的には、例えば a +√
2/n で n を十分大きく取りましょう。)よって、
|α − a| < δ なのに |f(α) − f(a)| = |0 − 1| = 1 ≥ 1
となります。これは、f(x) が x = a で連続であることの定義
任意の正実数 ε に対し、
|x − a| < δ =⇒ |f(x) − f(a)| < ε
を満たす正実数 δ が存在する。
が(ε = 1 で)成り立たないことを意味します。よって f(x) は x = a で不連続です。
無理数のところで不連続なことも、上の議論で無理数と有理数の役割を入れ替えることで全く同
様に示せます。 □
第 2 回解答 9
問題4の解答
まず、有理数 a = p/q(既約分数)で不連続であることを示しましょう。正実数 δ を任意に取り
ます。すると、a < α < a + δ を満たす無理数 α が取れます。(問題 3でも使った「無理数の稠密性」です。)よって、
|α − a| < δ なのに |f(α) − f(a)| =∣∣∣∣0 − 1
q
∣∣∣∣ =1q≥ 1
q
となります。これは、f(x) が a で連続であることの定義
任意の正実数 ε に対し、
|x − a| < δ =⇒ |f(x) − f(a)| < ε
を満たす正実数 δ が存在する。
が(ε = 1/q で)成り立たないことを意味します。よって f(x) は a で不連続です。
次に無理数 α では連続であることを示しましょう。任意の正実数 ε が与えられたとします。そ
れに対し、1/q0 < ε を満たす q0 を一つ選びます。f(a) > 1/q0 となる a は有限個しかありませ
ん。なぜなら、この条件を満たす a は既約分数表示したときに分母が q0 より小さい有理数だけだ
からです。(今、定義域は実数全体ではなく (0, 1) にしてあることに注意してください。)そこで、正実数 δ を、(α− δ, α + δ) の中に f(a) > 1/q0 となる a が一つも入らないように選べます。とい
うことは、
|x − α| < δ =⇒ |f(x) − f(α)| <1q0
< ε
が成り立ちます。これは f(x) が α で連続であることの定義です。これで示せました。 □
コメント
不連続な関数というと、グラフが何カ所かで切れているようなものしかなかなか思い浮かばない
ものですが、実際には「とんでもなく不連続」なものもあるという例として問題 3と問題 4を出題しました。
問題5の解答
(1)
背理法で示しましょう。
f(x) が x = 0 で連続になるような f(0) の値があったとします。すると、0に収束する任意の数列 {xn}∞n=1 について
limn→∞
f(xn) = f(0)
が成り立つことになります。特に、数列 {f(xn)}∞n=1 は収束することになります。ところが、
xn =2
(2n + 1)π
第 2 回解答 10
とすると、
limn→∞
xn = limn→∞
2(2n + 1)π
= 0
なのに
f(xn) = sin1xn
= sin2n + 1
2π = (−1)n
となって収束しません。これは矛盾ですので、f(0) の値をどう決めても f(x) は 0で連続になりません。 □
(2)
関数 f(x) が一様連続でないということは、
∀ε > 0 ∃δ > 0 ∀x ∀y [|x − y| < δ =⇒ |f(x) − f(y)| < ε]
が成り立たないこと、つまり、これの否定である
∃ε > 0 ∀δ > 0 ∃x ∃y [|x − y| < δ and |f(x) − f(y)| ≥ ε]
が成り立つことです。日本語でいえば、
正実数 ε をうまく選ぶと、どんなに小さい正実数 δ を持ってきても、|x− y| < δ を満
たす x と y で |f(x) − f(y)| ≥ ε となってしまうものが存在する
ということです。
さて、問題の関数 f(x)は振幅 1で振動していることを考えると、例えば ε = 1で |f(x)−f(y)| ≥ 1を満たす互いに近い x と y を選べそうです。実際、
x =2
(4n + 1)π, y =
2(4n + 3)π
とすると、
|f(x) − f(y)| =∣∣∣∣sin 4n + 1
2π − sin
4n + 32
π
∣∣∣∣ = |1 − (−1)| = 2 > 1
となっています。一方、
limn→∞
2(4n + 1)π
= limn→∞
2(4n + 3)π
= 0
ですので、どんなに小さな正実数 δ に対しても上の x と y が |x − y| < δ を満たすほど大きく n
を選ぶことができます。これで一様連続でないことが示せました。 □
コメント
f(x) を f(0) = 0 と f(−x) = f(x) によって実数全体を定義域とする関数に拡張してみます。そのグラフを思い浮かべてみてください。(すみません、図を書く時間がありませんでした。)このグ
ラフは x = 0 のところでつながっているでしょうか、切れているでしょうか。例えば、二点 (−2, 0)
第 2 回解答 11
と (2, 0) をこのグラフに触れない曲線で結ぶことはできませんので、そういう意味では「つながっている」と言わざるを得ないでしょう。なのに関数としては不連続なのです。このように、「関数
が連続であることはグラフがつながっていること」という素朴なイメージは、(大切ではあるけれども、)不十分なのです。だから、中間値の定理とか最大値の原理のように高校では「当たり前」ですましてきたことも証明せずに認めるわけにはいかないのです。
なお、この問題は (2)から (1)を導くことができます。なぜなら、もし f(x) を x = 0 まで連続に拡張できたとすると、定義域を、例えば [0, 1] に狭めることで、この関数は一様連続になります。(有界閉区間を定義域とする連続関数は一様連続でもあるのでした。)一様連続な関数は定義域を
狭めても一様連続なままですので、この関数は (0, 1] でも一様連続になります。しかし、(2)の証明を見ればわかるように、この関数は (0, 1] で一様連続ではありません。というわけで、f(x) をx = 0 まで連続に拡張することはできないことが導けました。ちなみに、連続という概念は「一点で連続」ということが考えられますが、一様連続という概念
は点ごとには意味を持ちません。「各点での連続の具合が似た感じ(すなわち一様)」であることが
一様連続の意味だからです。
問題6の解答
背理法で示しましょう。
定義域が有界閉区間の連続関数なので、最大値 M と最小値 m があり、値域は [m,M ] という有界閉区間になります。
[m,M ] に属する任意の y に対して f(x) = y となる x がちょうど 2個あると仮定しているので、f(x) = m となる x も f(x) = M となる x もちょうど 2個ずつあります。そこで、
f(a1) = f(a2) = m, (a1 < a2) f(b1) = f(b2) = M, (b1 < b2)
としましょう。
CASE 1 : a1 < a2 < b1 < b2 の場合
f(a2) = m, f(b1) = M ですので、中間値の定理により、[m, M ] に属する任意の y に対して
f(x) = y となる x が [a2, b1] に少なくとも一つ存在します。a1 < c < a2 を満たす c を任意に取っ
たとき、もし f(c) = m なら f(x) = m となる x が三つ以上存在することになり仮定に反するの
で、f(c) > m です。よって、m < y0 < f(c) を満たす y0 が取れます。この y0 に対し、中間値の
定理により、a1 < c1 < c で f(c1) = y0 となる c1 と c < c2 < a2 で f(c2) = y0 となる c2 が存在
します。ということは、[a2, b1] 内に存在するものと合わせて f(x) = y0 となる x が三つ以上存在
することになってしまい、結局矛盾です(図 4)。
CASE 2 : a1 < b1 < a2 < b2 の場合
中間値の定理により、m < y0 < M を満たす任意の y0 に対し、f(x) = y0 となる x が (a1, b1)、(b1, a2)、(a2, b2) にそれぞれ少なくとも一つ存在するので、全体で少なくとも三つ存在することになり矛盾です。
第 2 回解答 12
� �
a1 a2 b1 b2
y0
m
M
図 4: CASE 1の場合の y = f(x) のグラフの例。� �CASE 3 : b1 < a1 < a2 < b2 の場合
a1 < c < a2 を満たす c を一つ取ります。すると、中間値の定理により、f(x) = f(c) を満たすx が [b1, a1] と [a2, b2] にそれぞれ少なくとも一つずつ存在します。よって、f(x) = f(c) を満たすx が少なくとも三つ存在することになり矛盾です。
CASE 4 : a1 < b1 < b2 < a2 の場合
CASE 3で m と M の役割が入れ替わった場合ですので、やはり矛盾です。
CASE 5 : b1 < a1 < b2 < a2 の場合
CASE 2で m と M の役割が入れ替わった場合ですので、やはり矛盾です。
CASE 6 : b1 < b2 < a1 < a2 の場合
CASE 1で m と M の役割が入れ替わった場合ですので、やはり矛盾です。
以上で、あり得るすべての場合で矛盾が導けたので、元々の仮定が間違っていることが導けま
した。 □
コメント
時間がなくて CASE 1以外のグラフの例を描くことができませんでした。是非自分で書きながら読んでください。また、図で明らかだからといって上のような証明をしなくてよいというわけ
ではありません。図は一例に過ぎず、実際の連続関数は思いも寄らないほど複雑なものがあり得ま
す。だから、図を参考に証明を作るのはよいですが、その証明があらゆる場合に適用できること、
つまり、問題の仮定以外何も使っていないことを確認する必要があります。そのために、このよう
な明らかっぽい命題でも上のような面倒な証明の手続きは欠かせません。
第 2 回解答 13
なお、場合分けをせずにもっと簡単に(かっこよく?)証明する方法があるような気がするので
すが、思いつきませんでした。興味のある方は考えてみてください。
問題7の解答
(1)
まず「f が単調増加または単調減少なら逆関数を持つ」ということを示しましょう。
f が単調増加でも単調減少でも、定義域内の任意の二つの異なる実数 x1 と x2 に対し f(x1) =f(x2) となっています。ということは、f の値域に含まれる任意の実数 y に対し、f(x) = y とな
る x はただ一つしかありません。(つまり、f は「一対一」です。)よって、その y にその x を対
応させることで f の値域から f の定義域への関数 g ができます。この g が f の逆関数です。な
ぜなら、f で f(x0) に写る実数は x0 ですので g(f(x0)) = x0 ですし、g(y0) は f で y0 に写る実
数なのですから f(g(y0)) = y0 となっているからです。
次に、「f が逆関数を持つなら f は単調増加または単調減少である」を示しましょう。
前段落の議論からわかるように、f が逆関数を持つことは、一対一であること、つまり、x1 =x2 ⇒ f(x1) = f(x2) が成り立つことと同値です。だから、これが成り立つと仮定すると f は単調
増加か単調減少でなければならないということを示すことになります。
定義域から任意に x1 と x2 を選びます。x1, x2 および f(x1), f(x2)は実数なのですから、それぞれの間に大小関係があります。そこでとりあえず x1 < x2 かつ f(x1) < f(x2) としてみましょう。ここで、定義域からもう一つ x0 を取ります。まず x0 < x1 < x2 としましょう。一対一なのです
から f(x0) = f(x1) かつ f(x0) = f(x2) です。もしも f(x1) < f(x2) < f(x0) だったとすると、中間値の定理から f(x2) = f(x) となる x が (x0, x1) にあることになり f が一対一であることに反し
ます(図 5左側)。同様に f(x1) < f(x0) < f(x2) だったとしても中間値の定理から f(x0) = f(x)となる x が (x1, x2) にあることになって f が一対一であることに反します(図 5右側)。よって、f(x0) < f(x1) < f(x2) でなければならない、すなわち単調増加でなければならないことがわかりました。� �
O
y
xx0 x x1 x2 O
y
xx0 xx1 x2
図 5: 中間値の定理より、一対一になっていないことが分かる。� �同じ議論で x1 < x0 < x2 ⇒ f(x1) < f(x0) < f(x2) と x1 < x2 < x0 ⇒ f(x1) < f(x2) < f(x0)
第 2 回解答 14
も示せます。
また、x1 < x2 かつ f(x1) > f(x2) という仮定から話を始めれば、結論の方だけ不等号の向きを逆にした結論、すなわち f は単調減少であるという結論が得られます。
以上により、
区間を定義域とする連続関数 f が逆関数を持つならば単調増加または単調増加である
が示せました。 □
(2)
f の逆関数を g と書くことにします。
g の定義域、つまり f の値域の二つの元 y1, y2(y1 < y2) に対し、中間値の定理から [y1, y2] はf の値域の部分集合となるので、f の値域は区間です。つまり、g の定義域は区間です。
また、f が単調増加なら g も単調増加、f が単調減少なら g も単調減少になります。例えば、f
が単調増加であるとすると、定義域内の二つの異なる実数 x1 と x2 に対して、
x1 < x2 =⇒ f(x1) < f(x2)
が成り立ちます。これの対偶をとると、
f(x1) > f(x2) =⇒ x1 > x2
が得られます。(x1 = x2 と仮定しているので不等号に等号は入りません。)f(x1) = y1, f(x2) = y2
と置いて g を使って書きなおすと、
y1 > y2 =⇒ g(y1) > g(y2)
となります。これは g が単調増加であることを意味しています。
さて、g が連続でない点 y0 があったとします。g の単調性と実数の連続性から
limh→−0
g(y0 + h) = a と limh→+0
f−1(x0 + h) = b
が存在するので、g が y0 で不連続であることは a = b を意味することになります。ところが、g
が単調増加なら a < b、g が単調減少なら a > b で、どちらにせよ a と b の間の数は g の値域に
入らないことになります。しかし、これは g の値域、すなわち f の定義域が区間であることに反
します。これで示せました。 □
コメント
(1)では、本当は問題 6の解答のように、各場合をすべて書くべきですが、サボりました。興味のある人は x1 < x0 < x2 や x1 < x2 < x0 の場合の証明を自分で完成させてみてください。
問題8の解答
(1)
y = log(x +
√x2 + 1
)
第 2 回解答 15
を x について解けばよいわけです。
両辺を e の肩に乗せて、
ey = x +√
x2 + 1
となります。両辺から x を引いて両辺を二乗すると、
e2y − 2xey + x2 = x2 + 1
となります。これを x について解くと
x =e2y − 1
2ey=
ey − e−y
2となります。log
(x +
√x2 + 1
)の定義域も値域も R 全体ですので、その逆関数の定義域と値域も
R 全体です。 □
(2)
y = log(x +
√x2 − 1
)を x について解けばよいわけです。
両辺を e の肩に乗せて、
ey = x +√
x2 − 1
となります。両辺から x を引いて二乗すると、
e2y − 2xey + x2 = x2 − 1
となります。これを x について解くと
x =e2y + 1
2ey=
ey + e−y
2となります。log
(x +
√x2 − 1
)の定義域は 1以上の実数で、値域は 0以上の実数です。(x+
√x2 − 1
が 1以上の実数全体だからです。)よって、逆関数の定義域は 0以上の実数、値域は 1以上の実数です。 □
(3)
y = log(x −
√x2 − 1
)を x について解けばよいわけです。
両辺を e の肩に乗せて、
ey = x −√
x2 − 1
となります。両辺から x を引いて二乗すると、
e2y − 2xey + x2 = x2 − 1
となります。これを x について解くと
x =e2y + 1
2ey=
ey + e−y
2となります。log
(x −
√x2 − 1
)の定義域は 1以上の実数で、値域は 0以下の実数です。(x−
√x2 − 1
が 0より大きく 1以下の実数全体だからです。)よって、逆関数の定義域は 0以下の実数、値域は1以上の実数です。 □
第 2 回解答 16
コメント
まず問題の関数たちが単調増加や単調減少であることを証明しなければならないような気がする
かも知れません(し、実際そのことを証明するのは簡単です)。しかし、逆関数が存在することは
逆関数を具体的に作れてしまえば同時に示せてしまえているわけですから、単調性については気に
せずどんどん逆関数を計算してしまってかまわないのです。
問題の関数たちについても少しコメントしておきましょう。
実数全体を定義域とする二つの関数 cosh x, sinhx を
cosh x =ex + e−x
2, sinhx =
ex − e−x
2
と定義し、それぞれ双曲余弦関数(ハイパボリック・コサイン)および双曲正弦関数(ハイパボ
リック・サイン)と言います。この問題は、
• cosh xは x ≤ 0では単調減少で値域は1以上の実数全体であり、その逆関数は log(x −
√x2 − 1
)である。
• cosh xは x ≥ 0では単調増加で値域は1以上の実数全体であり、その逆関数は log(x +
√x2 − 1
)である。
• sinhx は実数全体で単調増加で値域も実数全体であり、その逆関数は log(x +
√x2 + 1
)で
ある。
ということを示す問題だったとも言えます。なお、単調増加性や単調減少性については、
• log は単調増加。
• x +√
x2 + 1 と x +√
x2 − 1 は単調増加で x −√
x2 − 1 は単調減少。
• 単調増加関数同士の合成は単調増加で、単調増加関数と単調減少関数の合成は単調減少。
• 元の関数と逆関数の単調増加・減少は一致する。
ということから分かります。
この関数になぜ三角関数のような名前が付いているかというと、これらは「双曲幾何」というも
のにおける三角関数の役目を果たす関数だからです。「双曲幾何」がなんであるかをここで説明す
ることはできませんが、例えば、特殊相対性理論における速度の合成則は双曲正接関数
tanhx =sinhx
cosh x
の加法定理そのものになっている、というところにその片鱗が現れています。
ここで双曲線関数(cosh x, sinhx, tanhx をまとめてこう呼びます)について詳しく論じること
はできませんが、最も重要な性質だけ書いておきます。それは cosh x と sinhx の組が双曲線をパ
ラメタ付けているということ、つまり、
cosh2 x − sinh2 x = 1
という恒等式が成り立っていることです。三角関数が
cos2 x + sin2 x = 1
第 2 回解答 17
というように円をパラメタ付けていることを思い出してください。ちょっと強引かも知れませんが、
これだけでも cosh x と sinhx が「双曲線の三角関数」と呼ばれるに値する気がしませんか?双曲線関数は不定積分の計算で活躍します。この演習でも、不定積分の計算法を学ぶときにもう
一度双曲線関数に付いて説明することになると思います。また、テイラー展開を学ぶときにもでて
くるかも知れませ。いずれにせよ、ここではこれ以上深入りしないでおきます。
問題9の解答
(1)
距離であるための三つの条件が成り立つことをチェックするだけです。
d(p1, p2) ≥ 0 であること
さすがにこれは省略でいいですよね?
d(p1, p2) = 0 ⇔ p1 = p2 であること
これも省略でいいような気もしますが、一応雑にでも書いておきましょうか…
d1(p1, p2) = 0 ⇐⇒ |x1 − x2| + |y1 − y2| = 0
⇐⇒ |x1 − x2| = |y1 − y2| = 0
⇐⇒ x1 = x2 and y1 = y2
⇐⇒ p1 = p2
および
d∞(p1, p2) = 0 ⇐⇒ max{|x1 − x2|, |y1 − y2|} = 0
⇐⇒ x1 − x2 = y1 − y2 = 0
⇐⇒ x1 = x2 and y1 = y2
⇐⇒ p1 = p2
です。
三角不等式が成り立つこと
d1 に付いては簡単です。
d1(p1, p3) = |x1 − x3| + |y1 − y3|
= |x1 − x2 + x2 − x3| + |y1 − y2 + y2 − y3|
≤ |x1 − x2| + |x2 − x3| + |y1 − y2| + |y2 − y3|
= d1(p1, p2) + d1(p2, p3)
第 2 回解答 18
で終わりです。
d∞ に付いては d1 よりはちょっとだけ考えなければなりません。とはいっても、
d∞(p1, p3) = max{|x1 − x3|, |y1 − y3|}
= max{|x1 − x2 + x2 − x3|, |y1 − y2 + y2 − y3|}
≤ max{|x1 − x2| + |x2 − x3|, |y1 − y2| + |y2 − y3|}
≤ max{|x1 − x2| + |x2 − x3|, |x1 − x2| + |y2 − y3|,
|y1 − y2| + |x2 − x3|, |y1 − y2| + |y2 − y3|}
= max{|x1 − x2|, |y1 − y2|} + max{|x2 − x3|, |y2 − y3|}
= d∞(p1, p2) + d∞(p2, p3)
という程度です。
どちらも d2 の三角不等式を示すのに比べればずっと簡単ですね。 □
(2)
(i)⇒(ii), (ii)⇒(iii), (iii)⇒(iv), (iv)⇒(i)の順に示しましょう。(もちろん、これ以外の順番で示しても全く構いません。)なお、四つともとてもよく似た議論なので、(i)⇒(ii)の証明だけ詳しく書いて、あとは雑に書きます。あしからずご了承下さい。
(i)⇒(ii)の証明
(i)を仮定するということは、
∀ε ∃N ∀n [n > N =⇒ |xn − x0| + |yn − y0| < ε] (1)
が成り立つことを仮定するということです。また、(ii)を示すということは、
∀ε ∃N ∀n [n > N =⇒√
(xn − x0)2 + (yn − y0)2 < ε] (2)
が成り立つことを示すということです。
まず、正実数 ε を一つ固定します。この ε に対する条件 1の N を N1 と書くことにします。
(xn − x0)2 + (yn − y0)2 ≤ (xn − x0)2 + 2|xn − x0||yn − y0| + (yn − y0)2
= (|xn − x0| + |yn − y0|)2
ですので、 √(xn − x0)2 + (yn − y0)2 ≤ |xn − x0| + |yn − y0| (3)
(すなわち d2(pn, p0) ≤ d(pn, p0))が成り立っています。よって、n > N1 を満たす任意の n に対
して、 √(xn − x0)2 + (yn − y0)2 < ε
が成り立ちます。つまり、この N1 を条件(2)の N に取れるということです。これで (i) が成り立てば (ii) も成り立つことが示せました。
第 2 回解答 19
(ii)⇒(iii)の証明
上の議論からわかるように、例えば d∞(pn, p0) < d2(pn, p0) が成り立てば証明完了です。そして、これは実際に成り立っています。√
(xn − x0)2 + (yn − y0)2 ≥√
(xn − x0)2 = |xn − x0|
及び、 √(xn − x0)2 + (yn − y0)2 ≥
√(yn − y0)2 = |yn − y0|
なので、
max{|xn − x0|, |yn − y0|} ≤√
(xn − x0)2 + (yn − y0)2
となるからです。
(iii)⇒(iv)の証明
どちらでも同じなので、xn → x0 を示しましょう。とはいっても、
|xn − x0| ≤ max{|xn − x0|, |yn − y0|}
なので、上の二つと同様に示せました、で終わりです。
(iv)⇒(i)の証明
正実数 ε を一つ固定します。xn → x0 が成り立っているので、この ε に対し、
n > Nx =⇒ |xn − x0| <ε
2
の成り立つ自然数 Nx があります。同様に、yn → y0 が成り立っていることから、
n > Ny =⇒ |yn − y0| <ε
2
の成り立つ自然数 Ny があります。そこで、N = max{Nx, Ny} と置くと、
n > N =⇒ |xn − x0| + |yn − y0| <ε
2+
ε
2= ε
が得られます。これは (i)が成り立つことを意味しています。 □
コメント
この問題のいっていることは次です。
R2 には d1, d2, d∞ という三つの違う距離を定義できるが、どの距離を使っても点列
の極限や写像の連続性は同じである。
第 2 回解答 20
ということです。だから、R2 の点列や R2 の部分集合を定義域や値域とする写像を扱うときは、
どの距離を使っても収束や連続性の結論は同じになるので、都合のよい距離を使ってよい、という
ことです。お察しの通り、d1, d2, d∞ とも一般の Rn の距離の定義に拡張できます。そして、上の
性質がやはり成り立ちます。実は、Rn の距離のうち、任意の実数 a に対して
p1p2 = a p3p4 =⇒ d(p1, p2) = |a|d(p3, p4)
を満たすものならどんな距離を使っても、点列の収束や写像の連続性の議論は同じになることが証
明できます。
しかし、この追加された条件を満たさない距離なら、いくらでも「ヘンな」距離を考えることが
できます。その中でもまともなものの代表は、離散距離と言われる次の距離です。
d(p1, p2) =
{0 p1 = p2
1 p1 = p2
これが距離の三条件を満たしていること、および、この距離で {pn}∞n=1 が p0 に収束するために
は点列 {pn}∞n=1 はどのような点列でなければならないか、興味のある人は考えてみてください。