2009.9.24 EarthCARE シンポジウム 地球温暖化研究の最前線 ー Earth CARE...
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ミッションの背景と意義(1)背景:気候変動の予測精度の現状
現在世界各国の数値気候モデルによる 100 年後の全球平均気温予測のモデル毎の差は最大 4 度程度 (IPCC 4次報告書)。 ( 約 4±2 度 : 精度50% 程度)
→ 人為起源による気候変動の影響を評価するには数値モデルの予測精度が不十分注:過去 100 年の全球平均気温上昇は 0.6 度程度
実線は、各社会発展 シナリオ及び 20 世紀の状態を継続した場合における複数の数値モデルによる( 1980 ~ 1999 年と比較した)地球平均地上気温の昇温を示す。陰影部は、個々の数値モデルの年平均値の標準偏差の範囲。橙色の線は、 2000 年の濃度を一定に保った実験のもの。右側の灰色の帯は、 6 つの各社会発展 シナリオにおける最良の見積り(各帯の横線)および可能性が高い予測幅。(出典:IPCC -AR4/WG1, 図 SPM-5)
IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change
約 4 度差
本評価に関し、日本から気象研モデルおよび地球環境フロンティア (FRCGC)/ 環境研 / 東大気候センター( CCSR) モデルの2モデルが参加
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ミッションの背景と意義(2)背景:気候変動予測の人間活動に関わる主要誤差要因
人為起源の二酸化炭素( CO2 )、メタン( CH4 )、一酸化二窒素( N2O )並びにその他の重要な要素及びメカニズムの、 2005 年時点で世界平均した放射強制力の推定値と推定幅 ( 出典: IPCC-AR4/WG1, 図 SPM-2)
気候変動への力は十分大きく、科学的によくわかっていない(推定誤差が大)
放射強制力:温暖化要因の影響力を定量化した値エアロゾル:大気中に存在する微粒子(塵埃)LOSU :Level of Scientific Understanding: 科学的理解度GOSAT; Greenhouse gases Observation SATelliteGCOM; Global Change Observation Mission
気候変動への影響力は最大だが、科学的によくわかっている(推定誤差が小)
雲・エアロゾル
二酸化炭素温暖化冷却化
各要因の影響力の大きさ
全球の存在量を把握
二酸化炭素
比較的よくわかっている
GOSAT で観測評価
雲・エアロゾル
顕著な不確実EarthCAREで観測評価し、解明
GCOM-Cで観測評価
「エーロゾルと間接的な雲のアルベドは依然として放射強制力における顕著な不確実性」「雲のフィードバックは依然として最大の不確実要因のまま」 (IPCC第4次報告書より抜粋)
これらの要因に対するJAXAの計画案
この部分は、 1-2度分の寄与がある*
*補足資料参照
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ミッションの背景と意義(3)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10- 3
- 2
-1
0
1
2
3
SWLWNET
Models
雲の鉛直分布の違いで発生する誤差
二酸化炭素倍増実験における各国の数値気候モデル別の大気上端における雲の放射強制力の違い(上段は赤色の部分)(上段 IPCC第3次報告書、下段第4次報告書 )
短波長入射(加熱) 長波長輻射(冷却)
地表面
高い雲は地球を加熱し、低い雲は冷却する。→ 雲の鉛直構造を理解しなければ、その放射強制力を正確に評価することが原理的にできない右図で示されるモデル間の雲の放射強制力差は雲の鉛直分布仮定の差によって生ずるため、衛星からの雲の鉛直分布測定により、これらを低減できる。
現時点では、雲が地球温暖化を抑制するように働くか、増幅するよう に働くかについて結論がでていない
CPR
ATLID
MSI
BBR
ESA-JAXA-NICT/EarthCARE (ESA EO 6th Earth Explorer Mission (3rd Core Mission))Earth Clouds, Aerosols and Radiation Explorer
多波長イメジャー( MSI )
放射収支計高波長分解能ライダー (ATLID)
MSI0.659μm0.865μm1.61μm2.2 μm8.9 μm10.9 μm11.9 μmSwath: 150kmIFOV: 500m
Convection: 1 m/sIce falling: 0.2 m/sDrizzling: 0.2 m/s
ドップラー計測
軌道 :地方時 : 13:45高度 : 400kmランチャー:ソユーズ /ゼニット
95GHz ドップラー雲レーダー (CPR)
CPR 観測概要
6
6
観測高度20 km (低緯度 )16 km 12 km ( 高緯度)
CPR の観測
水平分解能 500m ( 積分 )
Footprint: 800mReceived power, and Doppler velocity and spectrum width are measured at each height.
地表面
衛星進行方向
鉛直分解能 : 500m サンプリング : 100m
Variable Pulse Repetition Function (VPRF 6100~7500Hz) for getting highest PRF with altitude for Doppler measurement
Tx Power >1.5kW@EIK
NASA/LARC
観測要求Requirement: to measure the vertical profiles with an accuracy such that
the instantaneous TOA flux is derived within 10 W m-2 Detectability
Threshold Accuracy
Vertically Resolved
Cloud top/base Ice Liquid
n/a n/a
500 m 300 m
Ice water content (IWC) 0.001 g m-3 +40 / -30 % Ice effective radius n/a +40 / -30 % LWC & effective radius (no clouds above) Optical depth 0.1 20% Fractional cloud cover 5% 5%
Aerosol optical depth (for 10 km horizontal integration)
0.05 10%
Relative humidity n/a < 30% Temperature n/a < 1.5K
Integrated Variables SW/LW TOA radiances n/a 3 W m-2 sr-1 Water Vapour < 10 %
GOSAT
Atmosphere
Land Ocean
Green house gases
Vegetation production
Cloud
discharge
Snow Ice
Precipitation
Soil moisture
Aerosol
sink-source
Carbon cycle and land
cover
Spatial distribution of cloud and
aerosols
Ocean primary
production
Water vapor
Green house gases
Sea-surface temperature
Water cycle
sink-source
Water cycle
GCOM-W
Land cover
Sea-surface wind
Water cycle
Carbon
cycle
Coastal environment
Deep ocean circulationPH, nutrients, dissolved
CO2
Carbon cycle
GCOM-C
EOSDecadal survey missions
NPOESSMETOP
SentinelEarth Explorer
GPM/DPR
EarthCARE/CPR
3D structure of precipitation
and global rain map
3D structure of cloud and aerosols
我が国の地球観測システム
2013~26(TBD)
2011~24
2009~2014
2013~16
2013~18
With ESA
With NASA
HIMAWARI
EarthCARE, GPM, GCOM-C/-W のエアロゾル / 雲 /降水 / 放射収支観測における役割
GCOM-C/-W (受動センサ)全球水平分布をモニタリングし、全球水平分布量変動を監視する(鉛直方向の情報は直接観測出来ない)
EarthCARE(95GHz 能動レーダ ,355nm 能動ライダー)エアロゾル ~ 雲の鉛直分布を全球各地で観測しプロセス解明を行う
GPMコア衛星(13/35GHz 能動レーダ)降水の3次元分布を全球の大部分で観測し副衛星( GCOM-W等)の観測を高精度化する
雲の生成消滅の順序
エアロゾル水蒸気量
雲生成
雲消滅
地表面
エアロゾル
は受動観測センサ (GCOM-C/SGLI,NPOESS/VIIRS等)で観測した場合の観測範囲 (下部構造が見通せない)
厚い雲 /構造とドップラー速度を
観測する雲レーダ (JAXA/
NICT)
薄い雲とエアロゾルを
観測するライダー (ESA)
EarthCARE衛星による観測
放射収支
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ミッションの背景と意義(4)IPCC と日本の数値モデル計画 /衛星観測計画の関連
1990 1995 2000 2005 2010 2015
IPCC 報告 第1次(1990)
第2次(1995)
第3次(2001)
第4次(2007)
(第5次 )(2013)
(第6次 )(2018?)
数値気候モデル
大気・海洋大循環結合モデル
地球環境モデル(大気・海洋・陸域)モデル水平分解能 (km) 500 250 100
雲解像可能な高水平分解能への移行
改良版炭素循環プロセスの組込
気候変化と環境変化の相互作用を取り入れた(炭素循環 も予測できる)モデル
雲エアロゾルに関連する衛星データ
CLOUDSAT/CALIPSO (NASA)
雲 3次元評価エアロゾル
雲 鉛直分布エアロゾル ( 高感度、寿命延長、ドップラー計測)
雲 全球水平分布エアロゾル植生情報全球水平分布
注 1: 発展イメージについてはモデル「気候変動と衛星観測の未来」シンポジウム (H19.4.26 ) におけるJAMSTEC/FRCGC による発表資料を基に作成
雲 の効果はエアロゾル第6次報告への反映を目指す
(大気海洋 , 地球環境モデル)改良版炭素循環の組込は
第6〜7次報告への反映を目指す(地球環境モデル)
注 2 : JAMSTEC/FRCGC は IPCC-WG1日本事務局が置かれ、地球シミュレータによる気候変動予測モデル(東大、環境研との協力によるモデル)結果を IPCC への日本からの入力の1つとして提出している ( その他気象研モデルが参加)
雲 鉛直分布(低感度、短寿命、ドップラ観測なし)エアロゾル
雲データ組込研究
植生データ組込研究 炭素循環プロセス評価同時期観測による評価
EarthCARE ( ESA/JAXA)
GCOM-W(JAXA)
Chapfer et al. (GRL, 2008)
雲量の再現性
• Results on LMDZ4 GCM (France)
• Performance is no better than MIROC4.5.
• Middle and high level cloud fraction are not enough.
• Also difference between GCM+simulator and GCM.
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エアロゾルの気候影響研究への応用
雲なし、エアロゾルあり – 0.70 W m-
2
雲あり、エアロゾルあり – 0.04 W m-
2
Tekemura et al. (JGR2005)
日本の最新研究例では直接効果の算定は -0.04 Wm-2 程度(右図)、他国のモデルでは最大約 -1 Wm-2 程度
→この影響で 0.5Wm-2 強の差が見込まれるので(右図)、 EarthCARE による鉛直分布観測により、誤差半減が期待される。
大気上端でのエアロゾルの放射強制力(数値モデル計算結果)
エアロゾルの直接効果 * について→ 影響量 ; -0.5±0.5 Wm-2(IPCC第4次報告)
モデル間誤差「 ±0.5Wm-2」の要因は「鉛直分布」仮定
* :エアロゾルの直接効果とは、エアロゾルによって、直接太陽光が反射、散乱されたり、吸収される効果
モデル A が想定する鉛直分布 モデル B が想定する鉛直分布エアロゾルが雲の下にあり、上空から見た反射率が高い→冷却化
エアロゾルが雲の上にあり、上空から見た反射率が低い→ 温暖化
CCSR/NIES/FRCGC AGCM+ SPRINTERS モデル
雲エアロゾル鉛直分布の違いが誤差を産んでいる
雲の
上に
エア
ロゾ
ルが
分布
し、
温暖
化方向
に変
化し
てい
る
0.66 W m-2 の差
April 2003 MIROC+SPRINTARS
AOT CDER (low cloud)
ADEOS-II/GLI
TERRA/MODIS
大気汚染・雲相互作用
re
h3.7mm
2.1mm2.1mm
3.7mm
T.Y. Nakajima
cf. F.-L. Chang and Z. Li (JGR'02)
Particle growth pattern delineated by CFODD
Atten
uatio
n an
d/or
eva
pora
tion
Ze
COT
14µm
~100µm ~1mm
-10dBz 0dBz-20dBz
20
40
ōō
ōō
10dBz
LAND transition (Strong Upward Air Flow)
OCEAN transition (Weak Upward Air Flow)
Apparent effective radius(R21) 20µm
~10µm
Low Tropospheric Static Stability (LTSS)
Stableover ocean
UnstableOver land
25µm
TY. Nakajima, Suzuki, Stephens (2009)
Actual particle radius
T14 increase with aerosol for cumulus: reflecting slow down mechanism of updraft?
Nonhydrostatic icosahedral Atmospheric Model (NICAM)+SPRINTARS
Fully compressible non-hydrostatic system (with acoustic waves) Turbulence: Mellor & Yamada 2,2.5,3(plan)/Louis(1979) Cloud: Kessler; Grabowsky(1998,1999); Lin et al.(1983) Aerosol-CCN: Abdul-Razzak et al. (2000) Autoconversion: Berry (1967) Cumulus param: Relaxed/prognostic AS Land: MATSIRO Radiation: MSTRNX (Sekiguchi and Nakajima, 2005) Earth simulator (40TF, 2002; 130TF, 2008); Peta-flops (10PF, 2013)
MTSAT-1R, IR NICAM 3.5km, OLR
Miura et a.(Science'07), Nasuno et al.(JMSJ'09)
まとめ 現在の気候モデル(格子サイズ ~100km )による研究では、雲が
温暖化を加速するか、減速するかの結論が出ていない。 エアロゾルの直接効果と間接効果の影響評価には大きな不確実性
があるし、つじつまも合っていない。 受動型衛星センサーと能動型衛星センサーの組み合わせは、雲層
の消長、エアロゾルの成層状態、放射強制評価についての良い指標・情報を提供する。 高度(光学的厚さ)ー 雲パラメター頻度分布 (CFAD, CFOD ダイアグラム )
全球超高分解能(格子サイズ ~km )モデルの確立が重要である。 雲構造の海陸コントラストが表現できていない。 対流(上昇速度)をできるだけ陽に表現する必要がある。 雲力学/微物理モデルの改良が必要である。
EarthCARE ミッションの貢献が重要である。