2007.8.5 4...2007 年8 月5 日(日)...

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新潟県中越沖地震視察記録 -学校施設を主として- 2007.8.54 広岡建築事務所 廣岡 利貞、松下 淳一

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  • 新潟県中越沖地震視察記録

    -学校施設を主として-

    2007.8.5~4

    広岡建築事務所

    廣岡 利貞、松下 淳一

  • 新潟中越沖地震視察記録(8/4・5)広岡建築事務所 廣岡利貞、松下淳一

    [調査の概要]

    2007年 8月 4日(土)空路 福岡発(07:40)→新潟空港(09:20)レンタカーにて→新潟空港→高速新潟空港 IC→小千谷 IC→下小国小学校→第五中学校→(柏崎中心部)第二中学校→柏崎常盤高校→柏崎工業高校→柏崎高校→ソフィアセンター→東本町→高円寺?→商店

    街→閻魔堂→柏崎市役所→柏崎郵便局→柏崎駅前→柏崎アクアパーク→柏崎保育園→高速柏崎 IC→長岡 IC→長岡駅前宿泊ホテル

    2007年 8月 5日(日)ホテル発→高速長岡 IC→西山 IC→西山中学校→高浜小学校→高浜海水浴周辺→刈羽村→クリーンセンター付近(橋場)→(柏崎中心部)駅前→聞光寺→福泉寺?→明蔵寺?→新潟産業大学シーサイドハウ

    ス→高速柏崎 IC→新潟空港 IC→レンタカー返却空路 新潟空港(19:00)→福岡着(21:00)

    [個別被害の概要]

    下小国小学校(長岡市)

    RC造3階建て校舎

    1階有開口壁に斜めひび割れが認められる。1・2階の柱に斜めひび割れが認められる。一部縦方向の

    ひび割れも有る。

    全景写真 1(玄関側) 全景写真 2(体育館側)

  • 1階有開口壁に斜めひび割れ(体育館側) 左図拡大

    2階柱の脚部に斜めひび割れ(玄関側) 左図拡大(体育館側)

    1階柱に斜めひび割れ(体育館側)

    柱 D=550程度、ho=2000程度

    1階柱に斜めひび割れ(体育館側)

  • 1階柱に斜めひび割れ(体育館側) 1階柱に斜めひび割れ(体育館側) 1階柱に縦斜めひび割れ(玄関側)

    体育館

    外観上被害無し。

    全景写真 1 全景写真 2

  • 第五中小学校(柏崎市)

    RC造3階建て校舎

    外部階段と校舎の間に隙間を生じている。

    全景写真 1 全景写真 2

    階段室との隙間を生じている

    階段壁厚=700mm程度

    左図拡大

    体育館

    桁行方向外部ブレースに全体的な座屈が見られる。

    全景写真 1 ブレースに座屈が見られる

  • 第二中小学校(柏崎市)

    RC造3階建て校舎(2棟が平行に並びその間を渡り廊下棟が結ぶ)

    渡り廊下つなぎ目、体育館つなぎ目に損傷

    全景写真 1 全景写真 2

    渡り廊下つなぎ目(サポートによる応急補強、建具の変形) 全景写真 2

    1階柱に斜めひび割れ(体育館側) 1階柱に斜めひび割れ(体育館側) 1階柱に縦斜めひび割れ(玄関側)

    渡り廊下

  • 体育館1、2体育館 1:照明器具が傾斜、体育館 2:外観上無被害

    全景写真 1 全景写真 2

    内観写真 照明器具の傾斜

    体育館 1体育館 2

  • 柏崎常盤高校

    RC造3階建て校舎

    校舎は補強済みであり、外観上被害無し。EXP.J部分にずれ

    全景写真 1 全景写真 2

    EXP.J部分カバーのずれ EXP.J部分床のずれ(ダンボール紙を敷いている)

    3階建て体育館

    被害は無い様に見えるが、ブレースの化粧板がはずされていた。

    内観写真 1 ブレース写真

  • 柏崎工業高校

    RC造校舎、体育館(渡り廊下) 渡り廊下等のEXP.Jに損傷、その他の被害は不明

    全景写真 1 全景写真 2

    1階柱に斜めひび割れ(体育館側) 1階柱に斜めひび割れ(体育館側) 1階柱に縦斜めひび割れ(玄関側)

    EXP.Jカバーの脱落 同左落下片

  • ブロック塀の傾斜(手前控え壁有り、奥控え壁無し)

    ソフィアセンター

    外部において地盤の変状が見られる。沈下とインターロッキングのずれ

    地盤の変状 同左拡大

    地盤の沈下(地中梁以外が沈下) 同左拡大

  • 東本町

    歩道等の縁石のずれが見られる。商業ビル空中渡り廊下のつなぎ目の損傷

    歩道の縁石のずれ 復旧工事中の商店街

    空中渡り廊下のつなぎ目の損傷 同左拡大

    東本町のRC造寺院(光円寺?)

    外観上無被害

    外観上無被害

  • 閻魔堂

    損傷を受けている

    柏崎市役所

    RC造5階建て

    外観上被害は無い コンクリートブロック塀の損傷

    柏崎駅前の商業建物

    S造3階建て

    外部鉄骨ブレースの破断と座屈

    全景写真 ブレース写真(仕上げの脱落)

  • ブレース端部破断(腐食によると推測される) ブレース座屈

    柏崎アクアパーク

    地盤の変状

    地盤沈下 地盤沈下

    柏崎保育園

    外部階段のずれ

    全景写真 外部階段のずれ

  • 西山中学校(柏崎市)

    RC造3階建て校舎

    補強済み建物、体育館とのつなぎ目の損傷、周辺地盤の変状

    全景写真 1 全景写真 2

    周辺地盤の変状 内部壁のひび割れ

    体育館

    補強済み建物、周辺地盤の変状

    全景写真 1 全景写真 2

  • 周辺部分 500mm程度の沈下と側方移動が認められる

    脚場を設置し工事中の模様(調査日は稼動していない)

    にしやま保育園

    園庭にブルーシートが設置されている

    全景写真 1 フェンスの傾斜、移動

  • 高浜小学校(柏崎市)

    RC造2階建て校舎

    外観上被害無し、体育館とのEXP.J付近にずれ(体育館参照)

    全景写真 1 がけ側

    S造体育館

    がけ側の地盤の沈下と側方流動あり。EXP.Jつなぎ目付近も相対的に移動している。軸組ブレース

    が座屈し仕上げを突き破っている。

    全景写真 1 全景写真 2

    内観写真 中間フレーム部分ががけ側に 100mm 程度はらみだしてい

    る。全体的にがけ側床が沈下している。

  • 桁行ブレース(L-65×65)が座屈 ランチルーム側EXP.J周辺の損傷 校舎側EXP.Jのずれ

    校舎側EXP.Jのずれ(水平 100mm、鉛直 150mm程度) 同左

    体育館隅のモルタル割れ(がけ側) 運動場側基礎立ち上がりの割れ

  • S造(ランチルーム)

    外部においてがけ側の地盤の沈下があり、設備配管も損傷している。

    全景写真 天井と壁に隙間を生じる

    350mm程度の沈下を生じ、配管が破損している

    高浜海水浴場周辺

    道路の損傷など

    道路の損傷 補強コンクリートブロック造バス停の傾斜

  • 日吉小学校(柏崎市)

    体育館

    鉄骨ブレースの座屈、周辺地盤の沈下

    全景写真 1 全景写真 2

    ブレースの座屈 周辺部の沈下と移動

    RC造3階建て校舎

    EXP.J部分の損傷

    全景写真 EXP.J部分の損傷、ずれ

  • クリーンセンター付近

    クリーンセンター煙突の損傷、周辺地盤の状況

    全景写真 1 道路状況(最大 2mくらいの高低差を生じている)

    近隣の砂山

    聞光寺

    倒壊

    全景写真 1 全景写真 2

  • 前面の庇はRC造 鐘楼の倒壊

    福泉寺?

    外観上無被害

    全景写真 1 全景写真 2

    明蔵寺?

    筋違の破損、石柱等の転倒

    全景写真 1 全景写真 2

  • 正面状況 応急危険度判定

    筋違の折損 筋違の折損

    新潟産業大学シーサイドハウス

    周辺地盤の沈下等

    全景写真 1 道路側周辺地盤の沈下(200mm程度)

  • 裏側は建物側が沈下している 鉛直材が沈下により座屈している

  • おわりに

    本地震の被害状況については、直後から新潟大学の加藤研究室が行なった度々の調査を始め幾つかの

    調査班による速報が Web 上に刻々と掲載され、それらを拝見し、また3年前のこの地方の地震被害を振り返り、あるいは広域の地質分布と沿海部に連なる砂丘に関するデータや地盤沈下について、同じく

    Web上で検索し、被害の様相を理解する一助とした。7月16日の地震発生後3週間を経過する8月4日から5日までの2日間、被害状況を実際に見るた

    め現地に赴いた。この5日には行政が被害家屋の解体撤去の方針を決め、翌日から地元業者を主体とし

    た作業が開始された。新潟日報社が「特別報道写真集」を8月1日に緊急出版した。

    1.地震被害の特徴

    各地にはそれぞれ固有の事情があり、それらが地震被害の特徴と深く結びついている。即ち、被害を

    見るときにはそうした背景を理解することが必要となる。その幾つかについて次に述べておこう。

    今回の地震では地震規模と個々の被害の間に直接結びつき難い事例が多い。1964年の新潟地震、2004年の新潟県中越地震に続く今回の地震とその被害には、いずれも当地方の地形や地盤の影響が大きく、

    あるいは気象面からの特異性があり、再びそうした観点に立つ観察をするように心掛けた。

    以下にも若干述べているが、当該地方の丘陵地の地滑りと、平野の市街地に分布する地盤沈下により、

    今までも様々な構造物が被害を蒙っている。そこに今回の地震による被害が加わったので、個々の被害

    を見る際にはそうした面を配慮しなければならないと思う。

    ①地形と土質

    広大な柏崎平野を囲む周辺の丘陵地は新第三紀から第四紀の地層からなり、露頭は風化している。周

    知の地滑り地帯であり、地震で地滑りが生じやすく、緑の山間地に赤茶けた地滑り面を多く見掛けた。

    市街地に近い造成地で、崖地状となったところは埋め土と共に斜面が崩落し、肩部は陥没している。幾

    つかの学校用地にこうした被害が見られ、建物の基礎部が崖に接近していると、そのまま建物の被害に

    なる。斜面の崩落が原因の道路被害は多数箇所に及び、懸命な復旧作業と応急修理が行なわれていたが、

    それでも数度通行止めの箇所に行き当った。

    ②新旧の砂丘

    沿海部の市街地の発祥は、海面から離れ砂丘の頂部を走る線に沿って村落が連なり広がったものであ

    る。刈羽村の刈羽地区は 352号線沿いにあり、砂丘頂部砂層の挙動と村落の被害の関連を見る典型的な箇所である。クリーンセンターのある橋場地区は砂丘の標高が 60m 以上と高く、円弧滑りで流れた砂塊が交差した道路で約 6Mの落差を生じた場所があった。砂丘裾の鯖石川沿いに村落があり、滑った砂丘が家屋に被害を与えた。

  • 刈羽村(352号線) 右手が海岸 橋場地区 裏山の砂丘が迫っている。

    柏崎市の市街地は、砂丘の頂部に当る東西本町付近から広がったものである。その砂丘頂部の砂層が

    移動して背割れが生じているのが、閻魔堂通りの路面に見る亀裂で示されていた。

    地震により砂丘が円弧滑りを起こせば建物の地盤が変形する。砂丘の形状の違いや年代の新旧があり、

    影響下の各所で被害の様相が異なる。砂丘の移動や変形(割れと隆起、ズレ)で道路が様々に被害を受

    けている。

    サンドパイルを使用していると聞いた柏原郵便局は駅に近い砂丘高台に位置し、RC 造2階建て(地下車庫)の建物外部は被害なく、建物周囲の地盤に数センチ程度の沈下や空隙を生じていた。地下車庫

    入り口の埋設部や地中埋設物周囲の接地部には異常なく、浮き上がりは認められない。

    柏崎郵便局 歩道の舗装ブロックが乱れていた。 同 地下への入り口。

    ③寒冷地と積雪対策

    当地方は深い積雪地代であり、交通を確保するために汲み上げた地下水を利用した除雪作業が40年

    余も続き、このため柏崎駅近くの東本町では 53cmの地盤沈下が計測されている。この地盤沈下と今回の地震による地盤被害の相関については不明である。被災した旧い家屋の瓦屋根や土壁は当地方では生

    活上必須であったため、年代の旧い建物は比較的に重量の大きな木造となっている。

  • ④沿海部の砂質地盤 比較的新しい砂質地盤が地震で揺れ、地割れや隆起をしている。埋立地では沈下や陥没が見られる。

    建物周囲で地盤沈下や空隙の発生があり、配管の破損を伴っていた。支持力を失って基礎が沈む被害も

    見られた。護岸の被害も発生した。 ⑤インフラ設備の被害 砂丘の滑りや砂質地盤の変形により、電柱の傾斜が多く生じ、地中埋設管の殆どは細切れに破断した。

    調査した日には電気と上水道がほぼ復旧していたが、下水管やガス管は手付かずの状態であった。この

    日は販売業が開店したばかりであり、熱源の必要な飲食店やホテルは今後の見通しが立たないと聞いた。

    特に当地方ではガス配管が郊外まで広域に行なわれているが、こうした近代化は災害時に弱点となって

    いる。 ⑥社寺の被害

    大型木造建物である社寺が中心市街地に15箇所前後と多数あり、その多くが被災している。本堂の

    他、崩壊した山門や鐘楼があった。墓石の転倒も見られた。

    ⑦石造

    宅地周りの石材を横積みした囲障が壊れているのが市内で散見され、あるいは鳥居、門柱、灯ろう、

    碑石等が多数転倒していた。いずれも古いものが多い。

    2.その他

    多くの学校の校庭が自衛隊の駐屯地となり、数多く駐車した車両が見られ、給食と風呂のサービスを

    行なっているところがあった。校舎の一部は援護所となり、また体育館がボランティアの宿泊に供され

    ていたところも複数校訪れた。仮設トイレが学校や公営各施設、公園や医院の前庭等に並列して設けら

    れ、バキューム車が市内を走っていた。

    休日の地震であり、学校はそのまま休校し、夏休みに入った。休んだ分は2学期を前後に伸ばすとの

    こと。夏休み中に修理の可能な学校が多かったが、体育館の基礎が沈下し床の傾いた高浜小学校の教頭

    は、今後の見通しが立たないと困惑していた。

    ゴミの回収、電気やガスの修理と、応援に参加した外部の自治体や企業の車両を数多く見た。対岸の

    佐渡島から来た女性ボランティアは、「今日で終わりです」と話していた。

    台風の通り過ぎた後の土、日曜日の調査であったが、福岡地震直後のような多数の見物人は、当地で

    は見受けなかった。自動車道路の柏崎 ICが一般車に閉鎖されていたのが影響したかもしれない。

    調査は松下淳一に同行したが、彼は学校施設の建物間にあるエキスパンションジョイントの挙動とそ

    の被害、それに鋼製ブレースの挙動に強い関心があり、その事例を見て何らかの知見を得られることを

    期待していた。それと日頃気になる事項に、建物の構造上の安全と使用者が蒙る不安、不便の乖離問題

    があり、建物から離れてしまった自立型の屋外階段の2例や建物周辺の足許が散乱し配管類が破断した

    多くの事例に注目していた。

    (廣岡 利貞 2007.8.8)

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