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2007.8.2 物質移動論 最終試験 試験時間 8:45~10:30 【1】水酸化カルシウム(Ca(OH) 2 )の飽和濃度(溶解度)はモル濃度 C s =25 mol m -3 ,モル分率 x s =4.5x10 -4 である。球状の水酸化カルシウムの純水中での 溶解速度 M A [mol s -1 ]を求めたい。ただし,水中における水酸化カルシウ ムの拡散係数を D [m 2 s -1 ]とする。 (1) Ca(OH) 2 )は球表面から水中を拡散する。球中心からの距離 r 1 , r 2 での濃 度を c 1 (あるいは x 1 ) , c 2 (あるいは x 2 )と表す。Ca(OH) 2 の溶解速度 M A [mol s -1 ]を Shell-balance 法で導出しなさい。 (2) 静止流体中における球体表面からの拡散では,境膜厚みδ(=r 2 -r 1 )は球の半径 r 1 と同一となる。この場 合の溶解速度 M A [mol s -1 ]を求めなさい。ここでは,D = 1x10 -9 m 2 s -1 ,半径 r 1 = 1 mm とする。 (3) 水酸化カルシウムが溶解する時間を求めたい。どのようにすれば求めることができるか?その概略を説 明しなさい。 (** これはおまけの問題。時間的な余裕があれば解きなさい。加点します。) 【2】以下は,吸収塔の高さを求める手順(希薄系ガス系とする)を記述したもの である。右図を参照して,問に答えなさい。 (1) 吸収塔の任意の位置における気相および液相組成を yx とする。また,液 相との平衡濃度を y * および気相における気液界面濃度を y i とする。2 重境膜 における濃度分布の概念図を記し,x, y, y * , y i を書き込みなさい。 (2)( ① )~( ⑤ )に適切な式,語句を解答用紙に書きなさい。 吸収塔の微小高さ z~z+dz でのガス吸収速度を考える。単位気液界面積あ たりのガス吸収速度 N A [mol (m 2 -気液界面積) -1 s -1 ]は物質移動係数と濃度 の定義によって種々の形式で表すことが可能であるが,ここでは気相基準 の総括物質移動係数 K y を用いて,( ① )と表されるとする。塔断面積 S [m 2 ],( ② )を用いて,微小塔高さ dz での吸収流量 [mol s -1 ]は( ③ )と 表される。一方,気相での塔単位断面積あたりの原料ガスモル流量[mol s -1 ] M G とすると,z~z+dz での気相濃度変化は y~y+dy なので,吸収流量は ( ④ )と表される。 以上をまとめると,物質収支式を表す微分方程式( ⑤ )が得られる。塔高さ 0~Z において,気相およ び液相濃度が y 2 ~y 1 x 2 ~x 1 と変化することから,⑤式を積分し,塔高さ Z = ( ⑥ )を得る。 (3) (2)の⑥から NTU およびの HTU を導き,それぞれの物理的意味について説明しなさい。 【3】配布グラフ1はメタノール-水の気液平衡の関係(1 atm)を示す。メタノール 30mol%,水 70mol%の混合溶 液(温度:沸点)を連続蒸留塔によって,塔頂より 90mol%のメタノールを,塔底より 95mol%の水を得たい。 (2-1) 最小還流比を求めよ。実際の蒸留塔の設計では,還流比はどのように決定されるか? (2-2) 還流比が蒸留塔設計(塔高,塔径)および分離エネルギーに与える及ぼす影響を書きなさい。 (1-1) 還流比を 3 とする。濃縮部の操作線を表す式を書きなさい。 (1-2) 所要理論段数,および原料供給段の位置を求めなさい。(作図を配布グラフ1中に記すこと) (1-3) 塔頂,供給段,塔底の温度を求めなさい。 【4】30wt%酢酸水溶液 40kg から酢酸をイソプロピルエーテル(IPE)を用いて抽出する。抽出平衡曲線は配布 グラフ2のように与えられているとする。 (1) 図中の破線は何と呼ばれるか?また,その意味するところを書きなさい。 (2) 下図に原料を F 点,および抽出剤を S 点としてプロットしなさい。 (3) 1回抽出で酢酸濃度を 10%にしたい。 (3-1) 抽出相,および抽残相の組成を求めなさい。 (3-2) 必要な抽出剤量を求めなさい。 (4) 酢酸/水の分離システムは,次図のように与えられている。 (4-1) 装置A,Bの名称,およびそれらの目的を書きなさい。 r r 1 r 2 G M2 y 2 L M2 , x 2 G M1 y 1 LM1, x1 y x y+dy x+dx dz z Z

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2007.8.2

物質移動論 最終試験 試験時間 8:45~10:30

【1】水酸化カルシウム(Ca(OH)2)の飽和濃度(溶解度)はモル濃度 Cs=25 mol

m-3,モル分率 xs=4.5x10-4 である。球状の水酸化カルシウムの純水中での

溶解速度 MA [mol s-1]を求めたい。ただし,水中における水酸化カルシウ

ムの拡散係数を D [m2s-1]とする。

(1) Ca(OH)2)は球表面から水中を拡散する。球中心からの距離 r1, r2 での濃

度を c1 (あるいは x1) , c2 (あるいは x2)と表す。Ca(OH)2 の溶解速度 MA

[mol s-1]を Shell-balance 法で導出しなさい。

(2) 静止流体中における球体表面からの拡散では,境膜厚みδ(=r2-r1)は球の半径 r1 と同一となる。この場

合の溶解速度 MA [mol s-1]を求めなさい。ここでは,D = 1x10-9m2s-1,半径 r1 = 1 mm とする。

(3) 水酸化カルシウムが溶解する時間を求めたい。どのようにすれば求めることができるか?その概略を説

明しなさい。 (** これはおまけの問題。時間的な余裕があれば解きなさい。加点します。)

【2】以下は,吸収塔の高さを求める手順(希薄系ガス系とする)を記述したもの

である。右図を参照して,問に答えなさい。

(1) 吸収塔の任意の位置における気相および液相組成を y,x とする。また,液

相との平衡濃度を y*および気相における気液界面濃度を yi とする。2 重境膜

における濃度分布の概念図を記し,x, y, y*, y i を書き込みなさい。

(2)( ① )~( ⑤ )に適切な式,語句を解答用紙に書きなさい。

吸収塔の微小高さ z~z+dz でのガス吸収速度を考える。単位気液界面積あ

たりのガス吸収速度 NA [mol (m2-気液界面積)-1 s-1]は物質移動係数と濃度

の定義によって種々の形式で表すことが可能であるが,ここでは気相基準

の総括物質移動係数 Ky を用いて,( ① )と表されるとする。塔断面積 S

[m2],( ② )aを用いて,微小塔高さ dz での吸収流量 [mol s-1]は( ③ )と

表される。一方,気相での塔単位断面積あたりの原料ガスモル流量[mol s-1]

を MG とすると,z~z+dz での気相濃度変化は y~y+dy なので,吸収流量は

( ④ )と表される。

以上をまとめると,物質収支式を表す微分方程式( ⑤ )が得られる。塔高さ 0~Z において,気相およ

び液相濃度が y2~y1 ,x2~x1 と変化することから,⑤式を積分し,塔高さ Z = ( ⑥ )を得る。

(3) (2)の⑥から NTU およびの HTU を導き,それぞれの物理的意味について説明しなさい。

【3】配布グラフ1はメタノール-水の気液平衡の関係(1 atm)を示す。メタノール 30mol%,水 70mol%の混合溶

液(温度:沸点)を連続蒸留塔によって,塔頂より 90mol%のメタノールを,塔底より 95mol%の水を得たい。

(2-1) 最小還流比を求めよ。実際の蒸留塔の設計では,還流比はどのように決定されるか?

(2-2) 還流比が蒸留塔設計(塔高,塔径)および分離エネルギーに与える及ぼす影響を書きなさい。

(1-1) 還流比を 3 とする。濃縮部の操作線を表す式を書きなさい。

(1-2) 所要理論段数,および原料供給段の位置を求めなさい。(作図を配布グラフ1中に記すこと)

(1-3) 塔頂,供給段,塔底の温度を求めなさい。

【4】30wt%酢酸水溶液 40kg から酢酸をイソプロピルエーテル(IPE)を用いて抽出する。抽出平衡曲線は配布

グラフ2のように与えられているとする。

(1) 図中の破線は何と呼ばれるか?また,その意味するところを書きなさい。

(2) 下図に原料を F 点,および抽出剤を S 点としてプロットしなさい。

(3) 1回抽出で酢酸濃度を 10%にしたい。

(3-1) 抽出相,および抽残相の組成を求めなさい。

(3-2) 必要な抽出剤量を求めなさい。

(4) 酢酸/水の分離システムは,次図のように与えられている。

(4-1) 装置A,Bの名称,およびそれらの目的を書きなさい。

r

r1 r2

GM2 y2

LM2,x2

GM1 y1

LM1,x1

y x

y+dy x+dx

dz

z

Z

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(4-2) この酢酸/水の分離システムの概要を書きなさい。また,このシステムに用いられる抽出剤はどの

ような性質を有するべきか?

(4-3) 酢酸/水にこの分離システムが用いられた理由を述べなさい。

【5】調湿および乾燥に関する以下の問いに答えなさい。

(1) 湿度図表をもとに,温度 60℃,関係湿度 15%の空気の湿度 H,露点 td,湿球温度 tw を求めなさい。

(2) 純水で湿潤した球(多孔質)が,温度 t=30℃,湿度 H の空気(露点:21℃)流の中におかれている。多孔

質球は冷水につけていたので,初期温度は 10℃であったが,時間と共に温度および含水率が変化した。

(2-1) 温度と含水率の経時変化の概略図を描き,それぞれの温度変化過程における現象を述べなさい。

(2-2) 湿潤した多孔質球は,乾燥過程で一定温度を示した。この温度は何℃か?

(2-3) 温度が一定となった場合における,球表面で温度分布および湿度分布の概略を書きなさい。

(2-4) 境膜での伝熱係数をh,物質移動係数を kH(湿度差⊿H を基準とする)と表す。熱および物質移動速度

の関係式を導き,空気流の湿度を求める方法を述べなさい。使用した記号およびそれらの単位を明記す

ること。

【6】以下の語句を説明しなさい。

(1) Sh 数, (2)最小液ガス比, (3) 断熱飽和温度

抽残液(水)

装置A 装置B

抽出液

酢酸(抽質)b.p. 118˚C

イソプロピルエーテル(抽出剤,抽剤:b.p.101℃)

酢酸水溶液 (原料;抽料)

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