1)シソ=紫蘇 -...
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花の縁 05-02-01
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1)シソ=紫蘇 シソはシソ科の一年草である。原産地は中国南部からビルマ、ヒマラヤで、日本
でも古くから栽培されている。茎は四角形となって高さは 80cm~1m に達し、よく枝
を出す。葉は対生し先の尖った卵形で縁には鋸歯がある。秋には枝先に花穂を出して
総状の花序をつける。花をよく見ると唇形をしており果実は萼に包まれている。
葉が暗紫色のアカジソ、緑色のアオジソ、葉の表面が緑紫色で裏面が赤紫色をした
カタメンジソ、葉が縮緬状に縮れているチリメンジソ、緑色で葉の縮れたアオチリメン
ジソなどの種類がある。 花の色はアカジソは淡紫色で、アオジソは白色である。和
名は漢名の『紫蘇』に由来するもので、別称としては、ノラエ、イヌエ、ヌカエな
どがある。紫蘇はエゴマによく似ており、こうした別称はエゴマに似て非なるものと
いう意味である。学名は『Perilla frutescens』で、属名は東部インドの地名を、種
小辞は低木状のということを表わしている。
漢方では葉を『紫蘇葉』(シソヨウ)とか単に『蘇葉』と呼び、種子を『紫蘇子』
(シソシ)または『蘇子』という。茎は『蘇梗』(ソコウ)といい、いずれも発汗、去痰、
解熱、健胃、鎮痛などの作用があり、感冒、胸痛、腹痛、嘔吐、消化不良、食欲
不振などの治療薬として用いられた。また魚、蟹などの食中毒に対して解毒効果が
あるとされている。よく刺身の付け合わせにされるのもこのためである。
紫蘇は極めて古い時代から食料として利用されてきた。今から 5,000 年前の縄文式
遺跡の一つである福井県の鳥浜貝塚から、牛蒡(ゴボウ)の種子とともに出土し、岩手県
和賀郡江釣子(エヅリコ)村の鳩岡崎(ハトオカザキ)遺跡からも、縄文中期のものと
思われる種子が発見されている。雑草と同じように、何もしなくとも自然に生えて
くる野菜として、縄文人も重宝していたのだろう。中国でも古くから栽培されていた
と思われ、6世紀の『斉民要術』(セイミンヨウジュツ)には、紫蘇の葉を羊肉と豚肉の
醤油漬けに用いたことが、その栽培法とともに記されている。
紫蘇葉の香気の主成分は、全草の0.5%を占める『シソ油』で、そのうちのほとんど
が『シソアルデヒド』と『リモネン』で、紫紅色の色素は『シアニン』とその化合物で
ある。前述のように、紫蘇の成分は食欲を増進させるばかりか殺菌力があり、種々
の食品とあわせて紫蘇巻などとして用いられている。ことに梅干しの中に入れて赤み
のある色合いを出したり、ショウガの酢漬けや柴漬けなどには欠かすことができない。
紫蘇の花の咲ききった穂は「穂紫蘇」として、穂の半分ほど開化したものは「花穂」として
料理の薬味やツマとして用いられ、未熟な果実は塩漬けにして香の物としても利用
される。 また赤紫蘇の芽は「赤芽」と呼ばれ、白身魚の刺身のツマに、青紫蘇の芽は
「青芽」と呼ばれ、赤身魚に用いられる。これは紫蘇の香りと味わいが、日本人の嗜好
によく馴染んでいたからであろう。というよりもこのような植物に囲まれながら、
日本人の嗜好が作り上げられたと言ったほうが、適切なのかも知れない。
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夕日に映えるアオジソの花穂。近くで見るとなかなか可愛らしい花である(埼玉県日高市)。
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シソの花。ハーブと呼ばれているものには、シソ科の植物が多い(埼玉県日高市)。
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紫のシソの葉にはシソニンが多く含まれ、細胞の老化を防止する効果があるという(埼玉県深谷市)。
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アオジソの葉、シソは漢字では「紫蘇」と記す。「蘇」一字でもシソを意味し、蘇はよみがえると
いう意味である。シソには細胞を蘇らせる効果があるための名であろう(埼玉県深谷市農林公園)。
観賞用のシソの葉(埼玉県深谷市農林公園)。
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観賞用のシソの花穂(埼玉県深谷市農林公園)。
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シソの仲間は多いが、これもその一つでレモンエゴマ『Perilla frutesceus』。アオジソに似ているがシソ
の匂いはなく、むしろレモンに近い香りのために この呼称となった(さいたま市緑区)。 目次に戻る