1.海外の食品リサイクル制度の現状及び食品リサイクル等の ......ON FOOD...

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1.海外の食品リサイクル制度の現状及び食品リサイクル等の実施状況調査 海外の食品リサイクルの取組が進んでいる国について網羅的に把握し、食品リサイクルの実施 状況(発生量、再生利用等の実施量、処分量等)を整理するとともに、特に取組の進んでいる国 について、食品リサイクル制度の仕組みや、取組が進んでいる理由などを把握し、今後の課題や 制度改正の方向性等の整理を行った。 1.1 諸外国における食品リサイクルの概要整理 海外の食品リサイクルの取組みが進んでいる国を対象に、各国環境省のWEBサイト、文献・ 報告書などを元に、食品リサイクルの実施状況(発生量、再生利用等の実施量、処分量等)につ いて情報収集を行った。 調査対象としたのは、米国、EU、英国、ドイツ、デンマーク、スウェーデン、韓国、中国、オ ーストラリアの8カ国1地域である。各国の概要を以下に示す。 表1.1-1 調査対象国の概要 国名 国の概要 食品リサイクルに関する概要 米国 人口:30,905 万人 面積:9,629,091km2 農務省発表の統計を基にまとめた推計では、発生量(2009 年) 5,540 万t。 食品廃棄物を含む非有害廃棄物に関する法制度は各州ごとに 定められている。 EU 人口:49,400 万人 面積:399 km2 加盟国は 27 カ国。加盟国全体の食品廃棄物量は約 8,900 万ト ン(『PREPARATORY STUDY ON FOOD WASTE ACROSS EU 27』(2010 年))。 廃棄物埋立指令により、生分解可能な廃棄物の埋立処分量 を、1995 年比、2010 年までに 75%、2013 年までに 50%、2020 年までに 35%まで削減する目標値を設定。 英国 人口:6,222 万人 面積:242,900km2 英国の食品廃棄物発生量(2006 年および 2008 年のデータ)は 1,400 万トン。 家庭廃棄物については、2005 年までに 25%2015 年までに 33% リサイクルまたはコンポスト化に組み込む目標を設定。 ドイツ 人口:8,178 万人 面積:357,114km2 食品廃棄物の発生総量は年間約 1,100 万トン。 循環経済法第 11 条に、有機性廃棄物を 2015 年までに分別し なければならないことが規定されている。 デンマーク 人口:554 万人 面積:43,094km2 食品廃棄物の発生量は約 79 万トン(『PREPARATORY STUDY ON FOOD WASTE ACROSS EU 27』(2010 年))。 排出された動植物性残さのうち、99%は飼料等およびバイオガ スプラント等で利用(海外の食品産業_JETRO_2002 10 25 日発行(No227 号))。 1.1

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1.海外の食品リサイクル制度の現状及び食品リサイクル等の実施状況調査

海外の食品リサイクルの取組が進んでいる国について網羅的に把握し、食品リサイクルの実施

状況(発生量、再生利用等の実施量、処分量等)を整理するとともに、特に取組の進んでいる国

について、食品リサイクル制度の仕組みや、取組が進んでいる理由などを把握し、今後の課題や

制度改正の方向性等の整理を行った。

1.1 諸外国における食品リサイクルの概要整理

海外の食品リサイクルの取組みが進んでいる国を対象に、各国環境省のWEBサイト、文献・

報告書などを元に、食品リサイクルの実施状況(発生量、再生利用等の実施量、処分量等)につ

いて情報収集を行った。 調査対象としたのは、米国、EU、英国、ドイツ、デンマーク、スウェーデン、韓国、中国、オ

ーストラリアの8カ国1地域である。各国の概要を以下に示す。

表1.1-1 調査対象国の概要 国名 国の概要 食品リサイクルに関する概要

米国 人口:30,905 万人

面積:9,629,091km2

■ 農務省発表の統計を基にまとめた推計では、発生量(2009 年)

は 5,540 万t。

■ 食品廃棄物を含む非有害廃棄物に関する法制度は各州ごとに

定められている。

EU 人口:49,400 万人

面積:399 万 km2

■ 加盟国は 27 カ国。加盟国全体の食品廃棄物量は約 8,900 万ト

ン(『PREPARATORY STUDY ON FOOD WASTE ACROSS EU

27』(2010 年))。

■ 廃棄物埋立指令により、生分解可能な廃棄物の埋立処分量

を、1995 年比、2010 年までに 75%、2013 年までに 50%、2020

年までに 35%まで削減する目標値を設定。

英国 人口:6,222 万人

面積:242,900km2

■ 英国の食品廃棄物発生量(2006 年および 2008 年のデータ)は

約 1,400 万トン。

■ 家庭廃棄物については、2005 年までに 25%、2015 年までに 33%

リサイクルまたはコンポスト化に組み込む目標を設定。

ドイツ 人口:8,178 万人

面積:357,114km2

■ 食品廃棄物の発生総量は年間約 1,100 万トン。

■ 循環経済法第 11 条に、有機性廃棄物を 2015 年までに分別し

なければならないことが規定されている。

デンマーク 人口:554 万人

面積:43,094km2

■ 食品廃棄物の発生量は約 79 万トン(『PREPARATORY STUDY

ON FOOD WASTE ACROSS EU 27』(2010 年))。

■ 排出された動植物性残さのうち、99%は飼料等およびバイオガ

スプラント等で利用(海外の食品産業_JETRO_2002 年 10 月 25

日発行(No227 号))。

1.1

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国名 国の概要 食品リサイクルに関する概要

スウェーデ

人口:938 万人

面積:450,295km2

■ 食品廃棄物発生量(2010 年)は、合計 101 万トン。

■ 2005 年に特定の例外を除く全ての有機性資源の埋立を禁止。

韓国 人口:4,888 万人

面積:99,897km2

■ 食品廃棄物(製造業由来は含まず)の 2010 年の1日当たり発

生量は 13,429t/日である。これは年間にすると約 490 万トン。

■ 家庭系や事業系の食品廃棄物排出量への従量課金制度を、

2012 年末までに全自治体に導入が義務付けれられている。

中国 人口:130,756 万人

面積:9,596,961km2

■ 生活ごみ発生量は 1 億 5,437 万トン(2008 年)、生活ごみの4

~6割程度が生ごみ(1995~2000)(中国統計年鑑 2009 年版)

■ 第十二次五ヵ年計画(2011 年~2015 年)において、厨房廃棄

物に関しては 100 都市(区)において資源化利用施設を建設

することが示されている。

オ ー ス ト ラ

リア

人口:2,234 万人

面積:7,692,024km2

■ 国全体の食品廃棄物量は不明。一部の州でのみ把握されてい

る(ビクトリア州約 94 万トン、南オーストラリア州約 22 万トン)

(『Waste and Recycling in Australia Amended report』2009 年)

■ 南オーストラリア州では、2015 年までに都市ごみの 70%、商

業・産業廃棄物の 75%を埋立から有効利用等に転換する目標

が廃棄物戦略で定められている。

(出所)国連統計(2010 年、中国人口のみ 2005 年) 1.2の詳細調査では、これら8カ国1地域のうち、米国、英国、ドイツ、スウェーデン、韓

国の5カ国を抽出し、より詳細な情報収集・整理を行っている。ここでは、文献等を元に収集し

た詳細調査の対象外とした EU、デンマーク、中国、オーストラリアの1地域3カ国について、

収集・整理した情報を以下に示す。

1.2

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(1)EU

1)廃棄物の区分

EU では、廃棄物は以下のように区分している。

図1.1-1 EU における廃棄物区分 (注)廃棄物統計に関する欧州理事会及び欧州議会規則((EC)No.2150/2002 2002 年 11 月 25 日)

により、ヨーロッパ廃棄物カタログ(The European waste catalogu:EWC)、有害廃棄物リスト

(The hazardous waste list:HML)は、それぞれ 849 種類、404 種類へ改定された 1。 2)食品廃棄物の定義等

EU の『PREPARATORY STUDY ON FOOD WASTE ACROSS EU 27』(2010 年)によると、

「食品廃棄物とは、生または調理済みの食材で、食品製造、流通、小売り、外食産業におけるサ

ービス活動の過程で生じた、生ごみや食べ残し等の廃棄物のことである。これらは食用、非食用

のいずれも含む」と定義されている。 3)食品廃棄物の発生量

EU の『PREPARATORY STUDY ON FOOD WASTE ACROSS EU 27』(2010 年)によると、

EU 加盟国の食品廃棄物量は、卸売・小売で 4,433,331 トン、家庭系が 37,701 ,761 トン

(EUROSTAT,2006 年)、外食産業が 12,263,210 トンである。また、食品製造業からの食品廃棄

物の推計量は 34,755,711 トンである。

1環境省『海外の廃棄物処理情報』http://www.env.go.jp/recycle/waste_tech/kaigai/02.html

(生産または消費の残余物。リサイクル可能な残余物も含む。「廃棄物カタログ」で 849 種類に分類されている。)

(有害廃棄物のカテゴリーにあるもの、有害廃棄物の成分を有するもの、有害廃棄物の特性を有するもの。「有害廃棄物リスト」で 404 種類に分類されている)

廃棄物

一般廃棄物

有害廃棄物

1.3

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表1.1-2 食品製造業、家庭系、卸売・小売、外食産業からの食品廃棄物の発生量(t/年) (出所)EU『PREPARATORY STUDY ON FOOD WASTE ACROSS EU 27』(2010 年)

国名 製造業 出典 家庭 出典 小売/卸売 出典外食産業/

ケータリング出典 合計

EU27カ国 34,755,711 Sum of MS data 37,701,761 Sum of MS data 4,433,331 Sum of MS data 12,263,210 Sum of MS data 89,154,013

オーストリア 570,544

EUROSTAT09_NOT_093 'DA'

Sector1 784,570

Schneider (2006),Ademilua (2009)

267,000BMLFUW (2009)オーストリア連邦農林環境水管理省

103,500BMLFUW (2009)オーストリア連邦農林環境水管理省

1,725,614

ベルギー 2,311,847EUROSTAT09_NOT_093 'DA'Sector

934,760EUROSTAT09_NOT_093 'HH'Sector

93,417

Assumption :

8,89kg/c2

287,147 Assumption : 27,32kg/c 3,627,171

ブルガリア 358,687EUROSTAT09_NOT_093 'DA'Sector

288,315Minimumscenario:

8.375%3

68,598 Assumption : 8,89kg/c 92,472 Assumption : 11,98kg/c 808,072

キプロス 186,917EUROSTAT09_NOT_093 'DA'Sector

47,819Minimumscenario:8.375%

6,811 Assumption : 8,89kg/c 9,182 Assumption : 11,98kg/c 250,730

チェコ共和国 361,813EUROSTAT09_NOT_093 'DA'Sector

254,124Minimumscenario:8.375%

91,104 Assumption : 8,89kg/c 122,810 Assumption : 11,98kg/c 829,851

デンマーク 101,646EUROSTAT09_NOT_093 'DA'Sector

494,914デンマーク環境省食品廃棄物報告(2010年)

45,676デンマーク環境省食品廃棄物報告(2010年)

148,266 Assumption : 27,32kg/c 790,502

エストニア 237,257EUROSTAT09_NOT_093 'DA'Sector

82,236

Calc. from (SEI2008, EEIC 2008)SEI;エストニアの環境コンサルタント機関、EEIC:エストニア環境情報センター

11,951 Assumption : 8,89kg/c 24,564

Calc. from (SEI 2008,EEIC 2008)SEI;エストニアの環境コンサルタント機関EEIC:エストニア環境情報センター

356,008

フィンランド 590,442EUROSTAT09_NOT_093 'DA'Sector

214,796Minimumscenario:8.375%

46,708 Assumption : 8,89kg/c 143,570 Assumption : 27,32kg/c 995,515

フランス 626,000EUROSTAT09_NOT_093 'DA'Sector

6,322,944

デンマーク環境省食品廃棄物報告(2010年)

561,935 Assumption : 8,89kg/c 1,080,000ADEME (2004)環境エネルギー節約庁(フランス)

8,590,879

ドイツ 1,848,881EUROSTAT09_NOT_093 'DA'Sector

7,676,471EUROSTAT09_NOT_093 'HH'

Sector4

732,646 Assumption : 8,89kg/c 2,000,000 Kohl (2009) 12,257,998

ギリシャ 73,081EUROSTAT09_NOT_093 'DA'Sector

412,758Minimumscenario:8.375%

98,872 Assumption : 8,89kg/c 303,914 Assumption : 27,32kg/c5 888,625

ハンガリー 1,157,419EUROSTAT09_NOT_093 'DA'Sector

394,952Minimumscenario:8.375%

89,553 Assumption : 8,89kg/c 120,720 Assumption : 11,98kg/c6 1,762,643

アイルランド 465,945EUROSTAT09_NOT_093 'DA'Sector

292,326

CompostingReport'(2009)堆肥化報告

37,407 Assumption : 8,89kg/c 114,981 Assumption : 27,32kg/c 910,658

イタリア 5,662,838EUROSTAT09_NOT_093 'DA'Sector

2,706,793EUROSTAT09_NOT_093 'HH'Sector

522,140 Assumption : 8,89kg/c 1,604,960 Assumption : 27,32kg/c 10,496,732

ラトビア 125,635EUROSTAT09_NOT_093 'DA'Sector

78,983Minimumscenario:8.375%

20,393 Assumption : 8,89kg/c 27,490 Assumption : 11,98kg/c 252,500

リトアニア 222,205EUROSTAT09_NOT_093 'DA'Sector

111,160Minimumscenario:8.375%

30,246 Assumption : 8,89kg/c 40,772 Assumption : 11,98kg/c 404,383

ルクセンブルク 2,665EUROSTAT09_NOT_093 'DA'Sector

62,538EUROSTAT09_NOT_093 'HH'Sector

4,169 Assumption : 8,89kg/c 12,814 Assumption : 27,32kg/c 82,186

マルタ 271EUROSTAT09_NOT_093 'DA'Sector

22,115Minimumscenario:8.375%

3,599 Assumption : 8,89kg/c 4,852 Assumption : 11,98kg/c 30,838

オランダ 6,412,330EUROSTAT09_NOT_093 'DA'Sector

1,837,599デンマーク環境省食品廃棄物報告(2010年)

145,166 Assumption : 8,89kg/c 446,213 Assumption : 27,32kg/c 8,841,307

ポーランド 6,566,060EUROSTAT09_NOT_093 'DA'Sector

2,049,844EUROSTAT09_NOT_093 'HH'Sector

339,111 Assumption : 8,89kg/c 457,130 Assumption : 11,98kg/c 941,214

ポルトガル 632,395EUROSTAT09_NOT_093 'DA'Sector

385,063Minimumscenario:8.375%

93,934 Assumption : 8,89kg/c 288,737 Assumption : 27,32kg/c 1,400,130

ルーマニア 487,751EUROSTAT09_NOT_093 'DA'Sector

696,794Minimumscenario:8.375%

192,055 Assumption : 8,89kg/c 258,895 Assumption : 11,98kg/c 1,635,496

スロバキア 347,773EUROSTAT09_NOT_093 'DA'Sector

135,854Minimumscenario:8.375%

47,895 Assumption : 8,89kg/c 64,564 Assumption : 11,98kg/c 596,086

スロベニア 42,072EUROSTAT09_NOT_093 'DA'Sector

72,481Minimumscenario:8.375%

17,804 Assumption : 8,89kg/c 11,405ARSO (2010)スロベニア環境局 143,763

スペイン 2,170,910EUROSTAT09_NOT_093 'DA'Sector

2,136,551Minimumscenario:8.375%

388,890 Assumption : 8,89kg/c 1,195,374 Assumption : 27,32kg/c 5,891,725

スウェーデン 601,327EUROSTAT09_NOT_093 'DA'Sector

905,000

calc. from Naturvårdsverket(2010)スウェーデン環境保護庁

110,253Naturvårdsverket(2010)スウェーデン環境保護庁

298,880Naturvårdsverket(2010)スウェーデン環境保護庁

1,915,460

イギリス 2,591,000WRAP(2010)廃棄物・資源行動計画

8,300,000WRAP(2010)廃棄物・資源行動計画

366,000WRAP(2010)廃棄物・資源行動計画

3,000,000WRAP(2008)廃棄物・資源行動計画

14,257,000

1.4

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4)主な法規制

1999 年に策定された廃棄物埋立て指令により、食品、剪定ごみ、紙及び段ボールなどの好気性

及び嫌気性作用による生分解が可能な廃棄物を対象に、埋立処分量を削減することが規定されて

いる 2。 また、廃棄物枠組み指令では、廃棄物の発生抑制と廃棄物処理に関して① 発生抑制―廃棄物の

発生を可能な限り最少にする、② 製造者責任と汚染者負担の原則―廃棄物の排出者あるいは環境

の汚染者が十分な費用を負担する、③ 予防原則―潜在的問題を予測しなければならない、④ 近接

主義―可能な限り発生場所に近接して処理しなければならない、との4項目が基本原則として規

定されている 3。

5)食品廃棄物の手法別処理量

EU全体の食品廃棄物の手法別処理量は、不明である。

6)特徴(食品リサイクルに関する目標、施策、国民運動等)

廃棄物埋立て指令において、1995 年を基準年として、生分解可能な食品、剪定ごみ、紙及び段

ボールなどの好気性及び嫌気性作用による分解が可能な廃棄物の埋立処分量を、2010 年までに

75%、2013 年までに 50%、2020 年までに 35%まで削減するという具体的な削減目標値が設定さ

れている。 また、2008 年には廃棄物枠組み指令の改正が行われ、EU加盟国に 2020 年までに家庭ごみ等

の 50%を再生利用または再利用するという新たなリサイクル目標値を設定すること等が盛り込ま

れた 4。 (2)デンマーク

1)廃棄物の区分

環境保護法 1991 年に基づく廃棄物令において、「廃棄物(waste)」とは、所持者が、廃棄(discard)するか廃棄しようとする、又は廃棄する義務のある附属書1さらに附属書 2 の範疇にある物質

(substance)又は物体(object)をいう」と定義されている。 2)食品廃棄物の定義等

デンマークの食品廃棄物は、①製造過程で生じる動植物性残さと、②流通・消費過程で生じる

売れ残りや食べ残しなど、大規模調理場及び小売・その他産業からの食品ごみに大別される。す

べての食品廃棄物は、一般的にごみと定義されるものの、以下の条件を満たす廃棄物に関しては、

「成分均質派生物(homogenebiprodukter)として認定され、ごみ収集システムを全く通らず、

2(財)地球環境戦略研究所_平成 23年度マレーシア国有機廃棄物管理プロジェクト支援業務 報告書

3佐々木良「EUの廃棄物法制加盟国実施状況と今後の動向」『レファレンス』平成 16年 2月号

4(財)地球環境戦略研究所_平成 23年度マレーシア国有機廃棄物管理プロジェクト支援業務 報告書

1.5

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販売・再利用される。 ① 成分が均質であること ② 量が非常に多いこと ③ 加工・選別を行わずに、販売先で通常の生産工程に使用できること(焼却からくるエ

ネルギー利用は含まない) ④ その廃棄物が、生産工程のミスで発生したものでなく、通常の工程で発生したもので

あること ⑤ その廃棄物を使用することにより、製造工程からの廃棄物の量が極端に増加しないこ

と ⑥ 危険物質が含まれていないこと

「成分均質派生物」として認定を受けるには、上記の条件を満たすことを証明する書類・その

派生物の購入先等の情報とともに、地方自治体に申請を行う。申請を必要としない例外としては、

ビールの生産工程で生じる麦芽の芽汁等があげられる。この「成分均質派生物」は、認定された

企業において生産工程に発生する食品廃棄物の新しい利用方法の開発を促進するために導入され

ている。これ以外の食品廃棄物は、ごみと種別され、ごみの収集システムの一環として処理され

る 5。 3)食品廃棄物の発生量

EU の『PREPARATORY STUDY ON FOOD WASTE ACROSS EU 27』(2010 年)によると、

デンマークの統計データによる食品廃棄物量は、卸売・小売業で 45,676 トン(2010 年)、家庭系

が 494,914 トン(2010 年)、外食産業が 148,266 トン(27,32kg/c と仮定)である。また、同報

告書で引用されている EUROSTAT によると食品製造業からの食品廃棄物の推計量は 101,646 ト

ンである(2006 年)。 4)主な法規制

1998 年から 2004 年までの期間については、廃棄物 21(Affald 21)という政策に基づき廃棄

物管理政策が提示されており、、埋め立ては大気や土壌地下水の汚染を引き起こす可能性があるこ

とから、1997 年に、焼却に適する廃棄物の埋め立てが禁止された。廃棄物処理制度の中では、最

も好ましいとされている廃棄物処理の方法はリサイクル(再生・再利用)であり、次に焼却、そ

して、最後に埋め立ての順に考えることが基本になっている。デンマークでは焼却はリサイクル

の範疇に入ると考えられておらず、リサイクルに適さない廃棄物で、また、焼却後に残る灰や燃

えかすが環境問題を引き起こさないものだけが焼却の対象になっている 6。

5)食品廃棄物の手法別処理量

動植物性残さの多くは、成分均質派生物である。98 年に環境管理庁が行った分析によれば、成

5海外の食品産業_JETRO_2002年 10月 25日発行(No227号)

6JETRO ユーロトレンド 2001.2 リサイクル重視の政策と環境技術(デンマーク)

1.6

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分均質派生物とごみとを合わせて、940 万トンの動植物性残さが排出されている。このうちの 99%は飼料等他の製品の代替品として使用、バイオガスプラント等で利用、また残さをそのまま肥料

として利用している。残りの 1%は、廃棄または焼却されている。 大規模調理場及び小売業者からの食品廃棄物は、主に他の製品の代替品として再利用されてい

る。

表1.1-3 デンマークにおける動植物性残渣の処理方法別内訳

年当たりの残さ量 (トン) 総残さ量に占める割合 (%)

湿重量 乾重量 湿重量 乾重量

他の製品の代替品 3,938,000 863,000 47 75

バイオガスプラントで利用 652,000 73,000 8 6

肥料 3,717,000 183,000 44 16

廃棄・焼却 52,000 35,000 1 3

合 計 8,359,000 1,154,000 100 100

出所)海外の食品産業_JETRO_2002 年 10 月 25 日発行(No227 号) 6)特徴(食品リサイクルに関する目標、施策、国民運動等)

①目標

現在、デンマークでは、廃棄物戦略(2009 年-2012 年)に基づいて、2012 年時点での廃棄物

全体のリサイクル目標として、埋立処分比率 6%以下、リサイクル率を 65%以上と設定している。 過去の目標設定例としては、産業から排出される食品廃棄物について最低 95%を再利用するこ

とや、小売業からの食品廃棄物(サービス業からの廃棄物に分類)について、50%再利用、45%焼却、5%埋立をめざすことが掲げられていたる 7。 ②施策

デンマークでは地方自治体が主体となり、政府の指針に従ったごみ処理政策を地元の事情に沿

って実行することとなっている。それに加え、地方自治体は、民間企業のごみの再利用を促進す

るサービスを行っている。「ごみに関する省令」に基づき、地方自治体は、企業に対してごみの廃

棄方法について、区分や処理方法を示すことを義務付けている。最近、地方自治体が、民間企業

の廃棄物再利用を促すため、地方自治体または廃棄物コンサルタントが企業を訪問し、廃棄物全

般の処理について相談を受ける「廃棄物コンサルタント制度」も導入されている。 大規模調理場からの食品廃棄物に関しては、1986 年の省令により、各地方自治体に1週間に

100kg 以上の食品廃棄物を排出する大規模調理場からの食品廃棄物の収集が義務付けられた。大

規模調理場からの食品廃棄物の再利用処理を行う施設によれば、2000 年に大規模調理場から収集

された食品廃棄物は 2 万 825 トンであり、これは施設が見込んだ収集可能容量(推定量)の 80~100%である。現在大規模調理場からの食品廃棄物の収集について改善を行うべく、省令の改正

7海外の食品産業_JETRO_2002年 10月 25日発行(No227号)

1.7

Page 8: 1.海外の食品リサイクル制度の現状及び食品リサイクル等の ......ON FOOD WASTE ACROSS EU 27』(2010 年))。 排出された動植物性残さのうち、99%は飼料等およびバイオガ

が予定されている。 一方、小売業からの食品廃棄物の収集は現在までのところ制度化されておらず、自主的な再利

用処理施設への搬入分のみが集計されている。再利用施設に搬入された廃棄物の量は 3,484 トン

であり、施設が見込んだ収集可能容量の 17~70%である。小売業を対象に行った環境管理局の調

査によれば、多くの小売業者では食品廃棄物を分別せず、燃えるごみとして分別している場合が

多く、現在燃えるごみとして分別されているごみのうち 30~50%が食品廃棄物として分別できる

ものと見込んでいる。

(3)中国

1)廃棄物の区分

中国では生産、生活およびその他の活動中で発生する元の利用価値を失ったもの、または完全

には失ってはいないが廃棄・排出される固形、半固形および容器中の気体の物質を「固体廃棄物」

と定義している。固体廃棄物は「産業固体廃棄物」「生活ごみ」「その他業種固体廃棄物」に分け

られている。

図1.1-2 中国固体廃棄物の分類

(出所)李文忠ら 中国における食品廃棄物及び都市生活ゴミの現状と課題(2010)

「固体廃棄物識別ガイドライン」(国家環境保護総局公告 2006 年第 11 号)によると、(一)に

含まれる物質・物品で、かつ(二)に含まれないものを固体廃棄物と定義し、(二)に含まれるも

のは固形廃棄物ではないものと定義されている。

表1.1-4 固体廃棄物識別ガイドライン (一) 固体廃棄物に含まれる物質等

(1) 家庭から収集されたごみ

(2) 生産過程で発生した廃棄物質、廃棄製品

(3) 実験室で発生した廃棄物質

(二)固体廃棄物に含まれない物質ま

たは物品

(1) 放射性廃棄物

(2) 貯蔵されず、現場で直接生産ライ

産業固体廃棄物

固体廃棄物 生活ゴミ

一般産業固体廃棄物

生活ゴミ(一般ゴミ)

生活ゴミ(危険物)

その他業種一般固体廃棄物

工業危険廃棄物

その他業種固体廃棄物

その他業種一般固体廃棄物

1.8

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(4) オフィスで発生した廃棄物質

(5) 都市汚水処理場で発生した汚泥、生活ごみ

処理場で発生した残渣

(6) その他汚染抑制施設で発生するごみ、残

渣、汚泥

(7) 都市河川の浚渫汚泥

(8) 標準・規格の不合格製品(本来の用途で使

用されるものを除く)

(9) 偽物・模倣製品

(10) 所有者またはその代表者が廃棄物と宣言したもの

(11) 汚染された原料(例えばPCBに汚染された油)

(12) 使用が禁止された材料・物質または物品

(13) 国家環境保護総局が固形廃棄物と宣言した物質ま

たは物品

ンに再送・

再投入される物質または物品

(3) 本来の用途で使用される物質ま

たは物品

(4) 実験室用のサンプル

(5) 国家環境保護総局が認可したそ

の他の固形

廃棄物に含まれない物質または物品

2)食品廃棄物の定義等

中国において食品廃棄物とは、広義には飲食業から発生するごみを含めて、家庭での食べ残し

と賞味期限が切れて変質し、廃棄する食品のことを指すが、狭義には特に飲食産業から発生する

ごみを指す 8。

3)食品廃棄物の発生量

中国統計年鑑によると、中国では、2008年において生活ごみは 1億 5,437万トン発生している。

また、安恩科らによると、1990 後半から 2000 年の時点で生活ごみの4~6割程度が生ごみであ

る 9。

表1.1-5 中国部分都市生活ごみ成分構成(%)

都市 生ゴミ 紙 プラスチック 竹・木 繊維 金属 硝子 その他 年度

上海 67.50 8.02 13.93 1.43 2.87 0.85 4.14 1.36 2000

北京 44.15 14.28 13.61 7.47 2.02 1.17 6.34 10.46 2000

広州 60.97 6.39 17.54 2.43 4.31 0.79 3.01 3.86 1997

貴陽 41.97 7.96 7.46 0.45 1.21 0.52 2.47 37.92 1995

(出所)李文忠ら 中国における食品廃棄物及び都市生活ゴミの現状と課題(2010)

8JICA都市廃棄物循環利用推進プロジェクト食品廃棄物とは?

(http://www.jica.go.jp/project/china/007/news/general/20120427_03.html)

9李文忠ら 中国における食品廃棄物及び都市生活ゴミの現状と課題(2010)

1.9

Page 10: 1.海外の食品リサイクル制度の現状及び食品リサイクル等の ......ON FOOD WASTE ACROSS EU 27』(2010 年))。 排出された動植物性残さのうち、99%は飼料等およびバイオガ

食品関連産業より排出される廃棄物は、農業副食品加工業が 2005 万トン、食品製造業が 533万トン、食品製造業が 881 万トンである。これらの廃棄物については、統計上はほとんどが総合

利用されていることになっているが、その内訳、範囲は不明である。

表1.1-6 業界別の工業の固体排出物の生成及び処理、利用の状況(2008 年) 工業固体廃棄

物 の 生 成 量

(万トン)

工業固体廃棄

物の総合利用

量(万トン)

工業固体廃棄物

の貯蔵量(万ト

ン)

工業固体廃

棄物の処理

量(万トン

工業固体廃

棄物の排出

量(万トン)

農業副食品加

工業

2005 1959 14 32 3

食品製造業 533 508 17 7 1

飲料製造業 881 862 4 10 5

(出所)中国統計年鑑 2009 年版 http://www.spc.jst.go.jp/statistics/yb09/yb09_11/list29.html 4)主な法規制

外食産業から排出された廃棄物処理については各都市が外食産業に関連条例を公表しており、

外食産業食品廃棄物の収集、運搬、管理に関する条例を定めている。ただし、中国 661 都市のう

ち、外食産業食品廃棄物に対する条例がある都市は 3%未満である。

表1.1-7 中国外食産業廃棄物に関する条例

中国都市条例 制定年度

<北京市飲食厨房廃棄物収集、運搬、処理の管理方法> 2006 年

<上海市飲食厨房廃棄物処理の管理方法> 2005 年 1 月 13 日

<蘇州市飲食厨房サービス業環境汚染予防対策の管理方法> 2007 年 1 月 1 日

<済南市飲食厨房廃棄物の管理規定> 2006 年 7 月 1 日

<鞍山市飲食厨房廃棄物管理方法(草案)> 2006 年 9 月

<大連市飲食厨房廃棄物処理と管理方法(試行)> 起草中

<ウルムチ市飲食厨房廃棄物処理と管理の暫定方法> 2003 年 9 月 17 日

<杭州市飲食厨房廃棄物処理と管理の暫定方法> 2003 年 4 月 21 日

<景徳鎮飲食厨房廃棄物管理方法> 2005 年 11 月 7 日

<石家庄市飲食厨房廃棄物処理と管理方法> 2007 年 9 月 1 日

<寧波市飲食厨房廃棄物管理方法> 2006 年 12 月 1 日

<長沙市都市飲食厨房廃棄物収集、処理の管理方法> 2007 年公布

<ハルビン市飲食厨房と食品加工業廃棄物汚染予防・対策の監督管理規定> 2004 年 3 月 2 日

(出所)李文忠ら 中国における食品廃棄物及び都市生活ゴミの現状と課題(2010)

1.10

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5)食品廃棄物の手法別処理量

中国統計年鑑によると、2008 年時点で、都市生活ごみのうち堆肥化されている量は約 1%であ

る。

表1.1-8 生活ごみの回収と処理の状況(2008 年) 生活ごみ排出

量(万トン)

無害化処理量(万トン)

全体 埋立 堆肥 焼却

15437.7 10306.6 8424.0 174.0 1569.7

(出所)中国統計年鑑 2009 年版 http://www.spc.jst.go.jp/statistics/yb09/yb09_11/list31.html 6)特徴(食品リサイクルに関する目標、施策、国民運動等)

①目標

第十二次五ヵ年計画(2011 年~2015 年)において、厨房廃棄物に関しては 100 都市(区)

において資源化利用施設を建設することで、厨房廃棄物の資源化利用と無害化処理を実現するこ

とが示されている 10。 エネルギー政策としては、2020 年の目標として、バイオマスを用いた発電設備容量 3,000 万

kW、バイオマス固体成型燃料の年間使用量 5,000 万トン、メタンの年間使用量 440 億 m3、燃

料アルコールの使用量 1,000 万トン、バイオディーゼルの年間使用量 200 万トンなどとされてい

る 11。 ②施策

中国においては、JICA や経済産業省による技術協力により、食品廃棄物のリサイクルの取り組

みが進められている。

表1.1-9 日本からの技術協力による食品廃棄物リサイクルに関するプロジェクト

事業名 事業概要 対象地域 事業実

施期間 備考 出所

都 市 廃 棄

物 循 環 利

用 推 進 プ

ロ ジ ェ ク

国家レベルでの政

策研究(提言)。対

象廃棄物は、都市

廃棄物、レストラ

ンなどからの食品

廃棄物、ペットボ

トルなどの包装廃

棄物、廃タイヤ。

北京市、浙

江 省 嘉 興

市、山東省

青島市、貴

州 省 貴 陽

市、青海省

西寧市

2010 年

10 月~

2015年1

JICA 技 術

協力プロジ

ェクト

JICA 都市廃棄物循環

利用推進プロジェクト

http://www.jica.go.jp

/china/activities/pro

ject/30.html

下 水 汚 泥

等 の 混 合

消 化 の 事

下水汚泥と混合廃

棄物の混合処理の

事業化検討。発生

武漢市、宜

昌市

2011 年

11 月に

案 件 に

日中省エネ

ルギー・環

境総合フォ

経済産業省 第6回日

中省エネルギー・環境総

合フォーラムにおける

10経済産業省 平成23年度 中小企業支援調査(アジア諸国の古紙リサイクル実態調査)平成 24年 2月

11独立行政法人科学技術振興機構中国総合研究センター『22年版中国の環境エネルギー分野の現状と動向』

1.11

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業化検討 したバイオガスは

ガスエンジンに供

給して発電及び熱

回収を行う。発電

した電力は売電

し、回収した熱

は有効利用する。

つ い て

合意

ーラムでの

協力案件、

JFE エンジ

ニアリング

の技術を活

省エネルギー・環境分野

における日中間の協力

案件について

http://www.meti.go.jp

/press/2011/11/201111

26001/20111126001.pdf

(4)オーストラリア

1)廃棄物の区分

豪州における環境保全対策の役割分担としては、連邦政府は、世界遺産として登録された自然・

文化遺産の保護など国家的重要性を有する環境に重大な影響を及ぼす恐れのある環境問題に対応

し、それ以外の場合は州政府がそれぞれの環境法令に基づき対処することとなっている。したが

って、廃棄物の区分についても、州政府がそれぞれの環境法令に基づいて設定している。以下に、

各州の廃棄物区分を示す。

表1.1-10 オーストラリア各州における廃棄物区分(2010 年時点) 州政府名 廃棄物区分

首都特別地域 液体廃棄物、非液体廃棄物(不活性廃棄物、固形廃棄物、産業廃棄物、

危険物)

ニューサウスウェ

ールズ

特定廃棄物(医療廃棄物、アスベスト、廃タイヤ、その他)、液体廃棄物、

危険物、限定固形廃棄物、一般固形廃棄物(非腐敗)、一般固形廃棄物(腐

敗)

ノーザンテリトリ

腐敗廃棄物、不活性廃棄物、リスト化された廃棄物

クイーンズランド 一般廃棄物、限定的な規制廃棄物、規制廃棄物

南オーストラリア 都市固形廃棄物、商業・産業廃棄物、建設・解体廃棄物、危険物、その

他重要廃棄物(医療、アスベスト、放射性、汚染土壌、電気電子機器等)

タスマニア 都市ごみ、不活性廃棄物、建設・解体廃棄物、商業・産業廃棄物、管理

廃棄物

ビクトリア 一般廃棄物、限定的な規制廃棄物、規制廃棄物

西オーストラリア 不活性埋立物、腐敗埋立物、管理廃棄物(放射性物質等)、処理困難物

(出所)オーストラリア環境省『AUSTRALIAN WASTE CLASSIFICATIONS』

2)食品廃棄物の定義等

オーストラリア環境省では、2011 年に食品廃棄物のデータの有無や所在等をとりまとめた報告

書(オーストラリア環境省『National Food Waste Assessment FINAL REPORT』2011、以下、

食品廃棄物評価書)を作成しており、その中で食品廃棄物の定義を、「収穫後の食品の生産および

消費過程で発生する有機性廃棄物」としている。

1.12

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3)食品廃棄物の発生量

食品廃棄物について国全体としての発生量を示すデータはなく、各州ごとに整理されている廃

棄物の統計の中で食品廃棄物として把握されているのは、ビクトリア州と南オーストラリア州の

みである。 以下に州別の廃棄物および食品廃棄物の発生量データを示す。

表1.1-11 廃棄物および食品廃棄物の発生量 (千トン:2006/07 年度:2006 年 7 月~2007 年 6 月)

地域 都市ごみ 商業・産

業廃棄物

建設・解

体廃棄物 合計

うち食品

廃棄物

ニューサウスウェールズ 3,891 5,218 6,251 15,360 -

ビクトリア 2,783 3,417 4,084 10,284 943

クイーンズランド 3,100 2,898 2,083 8,081 -

西オーストラリア 1,424 1,476 2,348 5,248 -

南オーストラリア 753 1,106 1,460 3,319 218

首都特別地域 363 194 227 784 -

タスマニア 340 167 14 521 -

ノーザンテリトリー 74 57 51 182 -

合計 12,728 14,533 16,518 43,779 1,161

(出所)オーストラリア環境省『Waste and Recycling in Australia Amended report』2009 年 4)主な法規制

廃棄物の処理・リサイクルに関する法制度は、各州ごとに定められているが、現時点では、食

品廃棄物の処理処分・リサイクルに関する法規制は策定されていない。 5)食品廃棄物の手法別処理量

オーストラリア環境省『Waste and Recycling in Australia Amended report』2009 年によると、

ビクトリア州および南オーストラリア州では、食品廃棄物の発生量の他、埋立処分量とリサイク

ル量が把握されている。 両州ともに、食品廃棄物はほとんどリサイクルされておらず、ビクトリア州では 96%が、南オ

ーストラリア州では 98%が埋立処分されている(2006/07 年度)。 6)特徴(食品リサイクルに関する目標、施策、国民運動等)

南オーストラリア州では、五ヵ年の廃棄物戦略を策定し、それに基づいた廃棄物政策を展開し

ている。前期の戦略(2005~2010)期間には、家庭系の食品廃棄物のリサイクルモデル事業とし

て、10 協議会、17,000 世帯による食品リサイクル事業が行われた。 今期戦略(2011~2015)において、食品廃棄物に限定した目標設定は行われていないが、同戦

1.13

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略では、2015 年までに、都市ごみの 70%、商業・産業廃棄物の 75%、建設・解体廃棄物の 90%を埋立から有効利用等に転換することを目標としており、今後さらに、食品リサイクル等の取組

みを進めて行くと考えられる。

1.14

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1.2 食品リサイクル状況の詳細調査

ここでは、食品リサイクル等の取組が進んでいる米国、英国、ドイツ、スウェーデン、韓国に

ついて、その詳細情報を収集し、整理した結果を示す。 (1)米国

1)廃棄物の区分

米国では、廃棄物は有害廃棄物と非有害廃棄物に区分される。非有害廃棄物には都市廃棄物と

産業廃棄物が含まれ、前者は一般家庭や公共施設、事業所から排出される製品の包装材、庭から

出る草木、家具、衣類、ペットボトル、生ごみ等が含まれ、後者には食品製造業を含む各種製造

業からの廃棄物が含まれる。

図1.2-1 米国における廃棄物の区分 (出所)米国環境省HP(http://www.epa.gov/waste/)より作成 2)食品廃棄物の定義等

食品廃棄物とは全ての食品から排出される有機資材のことを指し、生もの、調理されたもの、

もしくは消費、賞味期限など消費者の安全面を理由とした保存理由から廃棄を要するものである。

食品廃棄物には、事業者や消費者に販売するための加工、調理の際に排出された残留物、消費

者が食品を購入した後に家庭で調理する際に排出される残片、食べ残しによる残飯の廃棄物があ

る 12。産業廃棄物に含まれる食品廃棄物としては、農園、食品工場や加工工場など食品事業者が

排出する廃棄物、汚泥、廃油、廃酸などが挙げられる。

3)食品廃棄物の発生量 国の統計として食品廃棄物全体の発生量データはないが、2011 年にクリーン・マトリックス社

が農務省発表の統計データを基にまとめた報告書「米国で食品廃棄物が気候、経済へ与える影響」

によると、2009 年の年間の米国の食品生産量は 1 億 9, 310 万トンで、消費量は 1 億 2, 613 万ト

ンであり、各工程で排出される食品廃棄物量は製造工程で 292 万トン、小売工程(卸売、飲食店

12 米国環境庁:「食品廃棄物の定義」,August 2012,

http://www.epa.gov/osw/conserve/materials/organics/food/index.htm

廃棄物

非有害廃棄物

有害廃棄物

都市廃棄物

産業廃棄物

一般家庭等か

らの排出ごみ

製造業等からの

廃棄物

溶剤、放射性汚染

物質、化学品等の

危険物

1.15

Page 16: 1.海外の食品リサイクル制度の現状及び食品リサイクル等の ......ON FOOD WASTE ACROSS EU 27』(2010 年))。 排出された動植物性残さのうち、99%は飼料等およびバイオガ

を含む)で 1,878 万トン、消費者の家庭で 3,370 万トンと推計されている 13。なお、製造工程で

排出する廃棄物の数値には貝類の殻、肉や魚の皮部分は含まれていない 14。

表1.2-1 米国における食品廃棄物発生量(2009 年) 発生元 発生量

製造工程 292万t

小売工程(卸売、飲食店を含む) 1,878万t

家庭 3,370万t

合計 5,540万t

(注)数値は、米国農務省の食品生産及び消費に関する統計と、米国農務省が作成した Loss-Adjusted Food Availability Documentation を用いて推計した結果である。

(出所)Kumar Venkat Clean Metrics Corp, “The Climate Change and Economic Impacts of Food Waste in

the United States”, Portland, Oregon, USA” April 2012 米国環境局では、都市廃棄物については経年でデータを把握しており、2010 年における都市廃

棄物の排出量は 2.5 億トンであり、うち 13.9%が食品廃棄物である。過去 10年間でみると、排出

量は、年々増加している。リサイクル量も増加しているが、リサイクル率は3%弱とごくわずか

である。

68 69 81 80 85 97

2,9133,130 3,180 3,254 3,344 3,379

2,981

3,4763,4293,3343,2613,199

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

2000 2005 2007 2008 2009 2010

発生量 リサイクル量 最終処分量

図1.2-2 都市廃棄物における食品廃棄物の発生量、リサイクル量の推移(万トン)

(注)2001-2004、2006 年の公表データーなし

(出所)米国環境保護庁統計(Municipal Solid Waste (MSW) in the United States: Facts and Figures:http://www.epa.gov/osw/nonhaz/municipal/msw99.htm)

米国では、各州が独自の制度によって廃棄物の収集、処理についての責任を負っている。米国

13 Kumar Venkat Clean Metrics Corp, “The Climate Change and Economic Impacts of Food Waste in the United

States”, Portland, Oregon, USA” April 2012 14 米国では肉や魚の皮部分を可食する習慣が少なく、多くの食品事業者は既に取り除いている場合が多い。

1.16

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において先進的な廃棄物の3R政策を展開しているカリフォルニア州の調査によると、カリフォ

ルニア州の都市廃棄物の発生量は米国の廃棄物の 12%にあたり、都市廃棄物の資材別データの内

訳をみると、食品廃棄物の占める割合は全体の 15.5%、約 616万トンであった。

表1.2-2 カリフォルニア州における都市廃棄物の組成 2008 年(上位 10)

資材 % 万トン

食品 15.5% 616

木材 14.5% 577

残片/不活性化類とその他 5.5% 218

残片/紙類 5.2% 206

ダンボール 4.8% 191

残片/有機系 4.3% 172

枯葉、草 3.8% 151

粗大ごみ 3.5% 139

絨毯 3.2% 129

岩、土、微粉 3.2% 126

合計 2,523

(出所)カリフォルニア資源リサイクル・再生局 15

4)食品廃棄物の手法別処理量

上述したように、米国では、2010 年において都市廃棄物に含まれる食品廃棄物のうちリサイク

ルされる割合は 3%以下である 16。 5)主な法規制

米国の廃棄物に関する基本法は、資源再生保全法(The Resource Conservation and Recovery Act :RCRA)である。同法は 1976 年に制定され、主に、有害廃棄物の定義、有害廃棄物に関す

る各主体の義務が定められている。非有害廃棄物については、州や地方自治体が具体的な規制を

行うことが定められている 17。 例えばカリフォルニア州では、カリフォルニア統合廃棄物管理法(The California Integrated Waste Management Act )において、廃棄物の処理・リサイクルに関する法規制が定められている。

また、カリフォルニア州サンフランシスコ市では、2010 年に、米国では初となる食品廃棄物の分

別回収を義務化する条例として、「リサイクル及び堆肥化の義務化に関する条例(Mandatory Recycling and Composting Ordinance」が発効され、市民に対しリサイクル可能物(資源ごみ)、

15 “California 2008 Statewide Waste Characterization Study”カリフォルニア資源リサイクル・再生局,

http://www.calrecycle.ca.gov/Publications/Detail.aspx?PublicationID=1346 16 米国環境保護庁 食品廃棄物の基礎情報

http://www.epa.gov/osw/conserve/materials/organics/food/fd-basic.htm 17 RCRAオリエンテーションマニュアル 2011

http://www.epa.gov/epawaste/inforesources/pubs/orientat/rom2.pdf

1.17

Page 18: 1.海外の食品リサイクル制度の現状及び食品リサイクル等の ......ON FOOD WASTE ACROSS EU 27』(2010 年))。 排出された動植物性残さのうち、99%は飼料等およびバイオガ

堆肥化可能な有機ごみ、埋立処分される一般ごみの3つに分別することが規定された。これに従

わない場合は 100US ドルの罰金が科せられ、廃棄物の収集拒否の対象となっている 18。 また、食品廃棄物抑制として 1996 年に食品事業者が残った食品を非営利団体に寄付するため

のエマーソン・グッド・サマリタン食品寄付法(The Emerson Good Samaritan Food Donation Act)が定められ、事業者が安全に食品の寄付が行なえるようガイドラインが作られた。農務省も

これを機に同様のプログラムを支援しはじめ、 食品ロスを削減させるための 20 ものプログラム

が 20 州にわたって開始されている。

上記の法律・施策などもあり、米国ではフード・バンク活動がさかんである。202 のフードバン

ク団体が参画し、全米最大ネットワークを有するフィーディング・アメリカの食品取扱量は、2011年の年次報告書によると年間約 150 万トンである。 6)役割分担、罰則等

固形廃棄物については、都市廃棄物についても産業廃棄物についても、州や地方自治体ごとに

規制が定められているため、その役割分担も様々である。 都市廃棄物の収集・処理は、一般的には排出者がプラスチックの収集容器に廃棄物を入れ、カ

ーブサイド(路肩)に出したものを自治体が収集し、処理している。しかし、自治体の収集サー

ビスが無い地域は場合は民間収集・処理業者がこれらを行っている。 一方、産業廃棄物の収集・処理についても、民間事業者、自治体の業者が収集をおこない、廃

棄物の量や種類によって収集が可能な場合と、事業者が独自で処理場へと運び込む場合もある。 カリフォルニア州では、カリフォルニア統合廃棄物管理法(The California Integrated Waste Management Act )において、都市廃棄物については、州がその収集・処理の責任を負っており、

産業廃棄物については、排出事業者が責任を負っている。 7)特徴(食品リサイクルに関する目標、施策、国民運動等)

①目標

食品廃棄物の管理は州政府に委ねられているため、全米単位での3R等に関する目標はない。 カリフォルニア州では、カリフォルニア統合廃棄物管理法に基づき、1995 年までに一般固形廃

棄物の 25%、2000 年までに 50%のリサイクルを行うことを各市、郡、地域ごとに計画し、実施

することが義務づけられた。また、2020 年までにリサイクル率を 75%とすることが目標とされて

いる 19。これはあくまで全ての廃棄物に対する目標値であり、食品廃棄物に特化したものではな

い。

また、同州はリサイクルの目標率達成を行うためにも、市、郡、自治体などにリサイクル達成

への具体的なリサイクル案の提出や実施を求めている。これらの義務付けが遂行されない場合、

上記廃棄物管理法に基づき各地域への罰金を課しており、その金額は 1 日につき 10,000 ドルとい

う高額なものである 20。

18財団法人地球環境戦略研究所 平成 23年度マレーシア国有機廃棄物管理プロジェクト支援業務 報告書 19カル・リサイクル「リサイクルの目標値」,August22,2012 http://www.calrecycle.ca.gov/75Percent/ 20カル・リサイクル「廃棄物管理計画の施行」,August 22,2012

1.18

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サンノゼ市では将来的に一般廃棄物の 100%リサイクルをめざしており、廃棄物ゼロに向けて

進んでいる 21。

②施策

米国環境保護局(EPA)では「持続可能な資源管理プログラム」において食品廃棄物の有効利

用を目指している。プログラムの参加者は「Waste Wise データ管理システム」を利用することで

食品廃棄物の購入、廃棄、寄付、堆肥化した量などを管理することができる。2012 年現在、この

プログラムには、103 の教育機関、企業等が参加している。 また、EPA は「食品廃棄物再生化ピラミッド組織」(下図)を用い、分別・余剰廃棄物の管理が

結果として経済と環境に対する良い影響を与えるものであるということと共に、排出者に余剰廃

棄物の有効的使用、例えば飢えに苦しむ人に余剰食品を与えたり、家畜の餌にするなどの意識を

多くの人々に広めるている 22。

図1.2-3 食品廃棄物再生化ピラミッド組織

(出所)米国環境保護庁「持続可能な資源管理 食品廃棄物回収」 http://www.epa.gov/epawaste/conserve/smm/foodrecovery/index.htm カリフォルニア州では、2011 年 10 月に生鮮食品を生産する農家が余剰食品を州の提携してい

るフードバンクに寄付すると、その食品の卸売価格の 10%分について所得税の控除が得られる

(AB152)。また、カリフォルニア州では廃棄量、分類、素材、物質、施設での処理能力のデータ

を収集し、把握することで廃棄物処理の戦略や開発、リサイクルの実施や廃棄物管理を行ってい

る。その他、カリフォルニア州では、食品廃棄物の推肥に関する調査、資金調達、教育、基準の

http://www.calrecycle.ca.gov/LGCentral/Enforcement/

21 サンノゼ市 tp://www.sjrecycles.org/zerowaste-stratplan.asp

22 米国環境保護庁「食品ガイド」,August19,2012

http://www.epa.gov/osw/conserve/materials/organics/pubs/food-guide.pdf

1.19

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設定等を行っている。 (2)英国

1)廃棄物の区分

英国では、英国・廃棄物管理に関する許認可法(第 1 条第 3 項)において、「廃棄物とは、生

産者または占有者が廃棄したか廃棄する意志がある、または廃棄の必要がある廃棄物管理許認可

法の第 2 部第 4 表(Schedule 4)に示されるすべての物質または物体である。但し、EU の廃棄物

枠組み指令(75/442/EEC…)に含まれない物質は除く。」と定義されている 23。 英国では、廃棄物の区分を以下のように「管理廃棄物」と「非管理廃棄物」に区分している。

図1.2-4 英国の廃棄物分類 (出所)海外の食品産業_JETRO_2002 年 10 月 25 日発行(No227 号) 2)食品廃棄物の定義等

2005 年の国会で討議された環境・食料・農村地域省(defra)第4次報告書において、食品廃

棄物は園芸廃棄物・紙類と共に「生物分解可能な都市廃棄物」(Biodegradable Municipal Waste:以下、BMW)に分類されており、製造業、流通、外食産業から排出される食品廃棄物や、家庭由

来の有機性廃棄物もこれに含まれている。 3)食品廃棄物の発生量

英国では、食品廃棄物の総量が把握できる統計は整備されていない。英国の NPO「廃棄物・資

源アクションプログラム」(WRAP(Waste & Resources Action Programme)24によると、英国

の食品廃棄物発生量は約 1,400 万トン(外食産業由来を除く)であり、食品製造業由来が約 260万トン、流通由来が約 35 万トン、家庭系(下水処理含む)が約 830 万トン、病院・学校等が約

260 万トンである。

23 経済産業省「循環経済に係る内外制度及び経済への影響に関する調査」(2000.3) 24 2000年に設立された行政と連携する NPO事業 http://www.wrap.org.uk

不活性

廃 棄 物

管理廃棄物

家庭ごみ 商業廃棄物 産業廃棄物

非管理廃棄物

農業廃棄物

非危険(非特殊) 危険(特殊)

鉱山・採石場

1.20

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表1.2-3 英国全体の食品廃棄物量(万t/年)

食料品製造 卸・小売 家庭(下水処

理含む) 病院・学校等 合計

リサイクル 113 0 69 0 182

熱回収 135 13 0 0 148

埋立・処理 11 23 760 260 1,054

合計 259 37 829 260 1,385

(注)製造業は2006年、その他は2008年のデータである。

(出所)WRAP『Waste arisings in the supply of food and drink to households in the UK』2010年

また、WRAP では 2010 年に家庭系食品廃棄物について新たな推計をしており、これによると

以前の推計値 830 万トンから 720 万トンに減少したと報告しており、その要因としては、食品物

価の上昇と可処分所得の減少による消費者の節約、食品廃棄物の排出抑制キャンペーンの効果、

メーカー等による包装材の最適化や貯蔵寿命最大化、保管方法の案内などに関する自主協定

(Courtauld Commitment)の効果を挙げている。

表1.2-4 英国全体における家庭系食品廃棄物の発生量(万t/年)

自治体収集

ごみ 下水処理

自家利用

(コンポスト+動

物のえさ)

合計

2006-7 年度の推計値 580 180 69 830

2009-10 年度の推計値 460 190 70 720

(出所)WRAP『New estimates for household food and drink waste in the UK』2011 年 4)食品廃棄物の手法別処理量

食品廃棄物全体について、その処理・リサイクル量を把握した統計情報はない。各機関で調査

公表されている結果を列挙すると、ホッグら(2007 年)による調査によると、英国の家庭系食品

廃棄物のうち、堆肥化量は 2004 年度で 11 万トンと推計されている。

表1.2-5 英国家庭系食品廃棄量の地域別内訳(2004-2005)(万トン) 地域 イングランド ウエールズ スコットランド 北アイルランド 英国全体

家庭廃棄物 2,569 159 228 92 3,047

うち食品

(1世帯あたり) 17.5% 18.0% 18.0% 19.0% 17.6%

食品廃棄物の重量 450 29 41 18 538

推定堆肥化量 9 0.8 0.8 0.4 11

(出所)Hogg, Dominic; Josef Barth, Konrad Schleiss, Enzo Favoino (March 2007) (PDF). Dealing with Food Waste in the UK、P.12

1.21

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WRAP の 2011 年の調査によると、英国で分別回収されている有機廃棄物の大部分は剪定ごみ

単独(68.8%)もしくは剪定ごみと食品廃棄物を混合して回収(12.8%)している自治体が多く、

食品廃棄物単独で回収している自治体は少ない。

図1.2-5 英国の有機廃棄物分別回収方法(2009 年)(単位:kt)

(出所)WRAP(2011). A study of the UK organics recycling industry in 2009 p.38

2005 年に環境・食料・農村地域省第4次報告書が国会で討議された際には、地方自治体と堆肥

協会など事業協力団体の廃棄物処理能力が現状の廃棄物発生量と削減目標数値に追いつかないこ

と、生物分解可能廃棄物には堆肥化リサイクル方式だけでは対応できないことが指摘されてい

る 25。また堆肥を製造してもコストの関係から市場への供給に適さず、需要が見出せない地域が

あるという問題も指摘されている 26。特に食品廃棄物については、地域によってリサイクルサー

ビスが存在しないこと、事業由来の場合サービスの費用と利便性の不足が負担になることもあげ

られる 27。

環境・食料・農村地域省『Government Review of Waste Policy in England 2011』によると、

2009 年度に自治体に収集された廃棄物のうち、13.6%が再生エネルギーに使用され、46.9%が埋

め立てられている。

5)主な法規制

EU の廃棄物埋立指令の制定を受け、2003 年に廃棄物及び排出権取引法(Waste and Emissions Trading Act 2003)が成立し、2005 年 4 月より施行されている。同法では、埋立処分される廃棄

物の総量を抑制するため、市町村などの廃棄物処理当局に埋立処分できる廃棄物の「排出枠」を

割り当てて排出枠の全体量を規制する一方で、当局間での排出枠の取引を認め、効率的な埋立処

分量の削減を目指している。対象となる廃棄物は BMW(生物分解可能な都市廃棄物)で、各廃

Key Note Business Report Database, Non-Metal RecyclingMarket Report 2010 Chapter 6 Buying Behavior 25Key

Note Business Report Database, Non-Metal RecyclingMarket Report 2010 Chapter 6 Buying Behavior 25

http://www.publications.parliament.uk/pa/cm200405/cmselect/cmenvfru/102/10207.htm 26 Harvey, Fiona., Demand drop threatens UK recycling policies, FT,com, Dec 6 2008 27 DEFRA (2011) Government Waste Review P.50

剪定ごみのみ,3164

その他のコンポスト化可能なご

み, 675剪定ごみと生活ごみの混合物,

587

その他, 176生ごみ

のみ,

110

木質資

源, 66

1.22

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棄物処理当局は、リサイクルやコンポスト化を進め、生分解生廃棄物の量を削減できた場合には

余った排出枠を売ることができ、一方で、排出枠を超過してしまった場合は、他の当局から排出

枠を購入しなければならない。 6)役割分担、罰則等

2005年の環境・食料・農村地域省第4次報告書において、地方自治体が主体となって廃棄物の

収集・処理を行うこと、及び、食品廃棄物を含む都市廃棄物は地方自治体がその処理の全責任を負

うことが再確認された28。

都市廃棄物の収集と処理の管轄は、自治体が前提であり、直接収集する場合でも業者に委託す

る場合でも、個別・集合住宅別の回収・収集容器をはじめとする施設・設備の設置や分別の設定、処

理場の申請許可までの広範な過程に、自治体が権限と責任を持っている。

7)特徴(食品リサイクルに関する目標、施策、国民運動等)

①目標

2005年の環境・食料・農村地域省第4次報告書によると、食品を含む生分解性廃棄物の埋立処

分量を、1995年(3,569万トン)と比較し2010年に75%(2,677万トン)、2013年に50%(1,784万トン)、2020年には35%(1,249万トン)に削減することが政府のLandfil Directive(埋立綱領)

によって設定されている。また、家庭廃棄物のリサイクルまたは堆肥化を、2005年までに25%、

2015年までに33%達成する目標を設定している。 また、環境・食料・農村地域省『Anaerobic Digestion Strategy and Action Plan』(2011年)

によると、2020年までに約500万トンの食品廃棄物と2000万-6000万トンの家畜排泄物を嫌気性

処理(メタン発酵)を行うことが目標に掲げられている。この約500万トンの食品廃棄物を嫌気性

処理すると、環境に放出される窒素4,7500トン、酸化カリウム (PO2O5) 2,0400トン、温室ガス

と同等の二酸化炭素(CO2)38,6000トンが削減される。

②施策

再生可能エネルギー使用証明書(ROCs)、再生可能電源を対象とした固定価格買取制度(FIT)、再生可能熱利用インセンティブ(RHI)の適用により、バイオガス化、堆肥化を推進している 29。F

ITは 2010 年 4 月に導入されており、バイオガス化については、9.0p/kWh[約 11.35 円(1 ポン

ドの為替レートを 126.128 円とした場合)]と設定されており、500kW 以下の農場規模のプラン

トには追加の買取が適用され、11.5p/kWh(11.5 ペンス=約 14.5 円)が設定されている。 また、埋立を抑止するため埋立税が導入され、埋立税の標準税率を 2011 年から 1 トン当たり 8

ポンドに引き上げ、少なくとも 2014 年まで継続することになっている(エネルギー・気候変動

省 HP)。 廃棄物の発生抑制策・排出削減策として、2012 年より、WRAP が外食由来の食品廃棄物回収

28 http://www.publications.parliament.uk/pa/cm200405/cmselect/cmenvfru/102/10207.htm 29 (Waste Management World HP:

http://www.waste-management-world.com/index/display/article-display/8976747110/articles/waste-manage

ment-world/volume-12/issue-4/features/supersized-biowaste-treatment-to-admire.html?cmpid=EnlWMWAugus

t182011)

1.23

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助成金 30、生産・流通過程での廃棄物減少対策貸付資金(10 万~100 万ポンド 31)、食品廃棄物の

嫌気性分解(AD: anaerobic digestion)施設援助貸付資金(5 万~100 万ポンド 32)等の設置、

運営を開始している。

表1.2-6 廃棄物の発生抑制策・排出削減策としての助成金・ファンド制度

事業名 事業の概要

外食由来の食品廃棄物回収

助成金

食品廃棄物回収事業を行う民間企業、公共団体、社会事業を対象

に3年間の間に総額 50万ポンドを助成する事業。収集車両や収集

容器の整備費、労務費などに活用可能。

生産・流通過程での廃棄物減

少対策貸付資金

リデュースやリユースに繋がるビジネスモデルに対して、民間よ

りも低利の融資や、限度額の大きい融資を行う事業。

食品廃棄物の嫌気性分解施

設援助貸付資金

食品廃棄物の嫌気性分解施設に対する貸付資金で、民間貸付資金

の活用(担保ローンの提供)や、追加的な資金調達、プロジェク

トの加速化を目的としており、最大融資枠は 100万ポンドである。

③国民運動等

WRAP は 2007 年からイングランド・スコットランド・ウェールズ・北アイルランドで展開する

「Love Food Hate Waste (LFHW)」キャンペーンを行い、テレビを含む広告やウェブサイトのほ

か自治体を通じた消費者・小売業者への働きかけを強化し、家庭からの食品廃棄物を削減するた

めのパートナーシップを地域レベルで設立する運動を行っている 33。 また、WRAP は 2011 年にパイロット事業としてイングランド・ウェールズの都市部 13 自治体

を対象に回収容器を配布して家庭・外食事業所の食品廃棄物回収事業を行った。その結果、回収容

器の容量制限(小規模事業所の場合 180 リットル)の効果が明らかになったり、ハエ等の発生が

一部地域に限定された課題であることがわかった 34。

(3)ドイツ

1)廃棄物の区分

ドイツでは、EU の廃棄物枠組み指令(欧州指令 2008/98/EC)に基づいて 1996 年に施行された

「ドイツ循環経済・廃棄物法」を改正し、循環経済法(KrWG;Kreislaufwirtschaftsgesetz)を 2012年 6 月 1 日に施行した。 同法の第 3 条の定義によると、廃棄物は、実際に行われた処理により「資源ごみ」と「廃棄処

分ごみ」に分類される。一方、廃棄物の処理責任について規定いている同法の第 17 条では、廃棄

物は「家庭廃棄物」と「それ以外の廃棄物」に区分されている。

30 http://www.wrap.org.uk/content/wrap-funding-stimulates-increase-business-food-waste-collection 31 http://www.wrap.org.uk/content/wplf 32 http://www.wrap.org.uk/content/ad-loan-fund 33 http://lfhw-pages.wrap.org.uk/partners/; DEFRA (2011) Government Waste Review, P.50 34 http://www.wrap.org.uk/content/recycling-collections-flats-food-waste-collections

1.24

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<廃棄物の定義>

<処理責任に基づく区分>

図1.2-6 循環経済法における廃棄物の定義 (出所)循環廃棄物法(第 3 条、第 17 条) 2)食品廃棄物の定義等

循環経済法の第3条第7項では、同法による有機性廃棄物が規定されており、その分類区分と

して、食品廃棄物を「家庭からの生ごみ、飲食店・外食産業からの生ごみ、商業、食品製造業か

らの食品廃棄物」としている。 3)食品廃棄物の発生量

イルゼ・アイグナー大臣により発表された食品廃棄物の実態に関する報告書によると、食品廃

棄物の発生総量は年間約1,100万であった。この中で大半を占めるのが、家庭から捨てられる廃棄

物667万トン(61%)であり、次いで、外食由来の190万トンとなっている。さらに製造業由来の

185万トン、残りの5%にあたる55万トンは、流通経由の食品廃棄物である。

表1.2-7 ドイツにおける食品廃棄物発生量

発生元 発生量

家庭 667万トン

外食(レストラン、食堂等) 190万トン

製造業 185万トン

流通(小売・卸) 55万トン

合計 1,097万トン

(注)発生量は、2002 年~2012 年に実施された食品廃棄物等に関する調査結果と、それを補完

するアンケート、ヒアリング調査を元に推計したものであり、特定年における推計値ではない。 (出所)シュツットガルト大学『Ermittlung der weggeworfenen Lebensmittelmengen und Vorschläge zur Verminderung der Wegwerfrate beiLebensmitteln in Deutschland』2012 年

廃棄処分ごみ

廃棄物 家庭廃棄物

その他廃棄物(商業・製造業等の廃棄物)

廃棄物 資源ごみ

1.25

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4)食品廃棄物の手法別処理量

ドイツでは、食品廃棄物は堆肥化・飼料化(再利用)、バイオマスとしての利用(再利用)、焼

却(廃棄)が主な処理方法となっている。堆肥化、飼料化、バイオガス化が進んでおり、再生可

能エネルギー法により、バイオガス発電にも FIT が適用されている 35。 食品廃棄物に限った処理・リサイクルに関する統計はなく、有機性廃棄物については、連邦環

境省により、排出量と再生利用状況を 2007 年から 2010 年までの経年推移でまとめたものがある

(下表)36。この表から分別収集される有機性廃棄物の総量は 1,200 万トンでほぼ横ばいとなって

おり、2010 年では、コンポスト化に 740 万トン、バイオガス化に 430 万トン仕向けられている

のがわかる。2010 年には全国で 1916 箇所の再生利用施設があり、うち 252 箇所が廃棄物のコン

ポスト施設であり、672 箇所が樹木、植物などをコンポスト施設、992 箇所がバイオガス施設と

なっている。

表1.2-8 有機性廃棄物の発生量およびリサイクル量の推移(万t) 廃棄物の範囲 2007 2008 2009 2010

分別収集された

有機性廃棄物の総量 1,185 1,162 1,208 1,173

うちコンポストに投入された

廃棄物量 794 767 775 742

うちバイオガスなど発酵施設

に投入された廃棄物量 390 395 434 431

(出所)連邦環境省資料 なお、廃棄物の焼却については、焼却から得られるエネルギーが実際に利用された場合のみを

再利用とする。ドイツ連邦環境省によれば、小売業で発生する食品廃棄物のうち、家庭廃棄物と

類似したものは、自治体の一般廃棄物技術指令が適用されている。 5)主な法規制

廃棄物の処理・リサイクルに関する基本法として、循環経済法があり、廃棄物の定義、3Rの

優先順位、廃棄物処理の役割分担等が規定されている。 また、2001 年に定められた EU の廃棄物埋立指令に基づき、2005 年には一般廃棄物技術指導

令(Technische Anleitung Siedlungsabfall)により、有機性の廃棄物の直接埋立ては禁止されてい

る。 6)役割分担、罰則等

家庭廃棄物については、排出者が敷地内にリサイクル設備(例えばコンポスト)などを設置し

ていない限り、自治体もしくは自治体が運営する廃棄物処理業者の手に委ねなければならない。

35海外の食品産業_JETRO_2002年 10月 25日発行(No227号) 36 http://www.bmu.de/files/pdfs/allgemein/application/pdf/biokompost3.pdf

1.26

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一方、家庭以外の廃棄物(商業、製造業からの廃棄物)については、循環経済法改正後、「廃棄処

分ごみ」と「資源ごみ」という区分が導入されており、処分廃棄物については、その廃棄者自身

は、自ら処理ができない場合のみ、公営の処理業者に委託する義務がある。一方、資源ごみにつ

いてはこの委託義務がなく、民間の処理業者へ委託することができる。なお、民間の処理業者の

位置づけについては、公営処理業者の事業目的に反駁するものであってはならないとされ、営利

活動の追求が制限されている(循環経済法第 17 条)。 7)特徴(食品リサイクルに関する目標、施策、国民運動等)

①目標

循環経済法(法第 14 条)では、EU の廃棄物枠組み指令 (欧州指令 2008/98/EC)に基づき、2020年までに一般廃棄物のリサイクル率 65%(EU 指令では 50%の目標値)を達成するという国の目標

をかかげている(2010 年のリサイクル率は 63%37)。なお、ここで一般廃棄物とは、公営処理業

者の処理物を指し、家庭廃棄物とそれに類似する事業所からの廃棄物を含む。 また、法第 11 条に、法第 14 条の第1項の「2015 年までに一般廃棄物のうち、紙、金属、プラ

スチック、ガラス屑を分別しなけらばならない」という規定を実現するためには、有機性廃棄物

も、法 17 条第1項の引渡し義務に基づき、同時期までに分別しなければならないことが規定され

ている。 ②施策

堆肥化を促進する施策として、政府は連邦コンポスト品質共同体(Bundesgütergemeinschaft: BGK Ev)を設立している 38。連邦コンポスト品質共同体内には、研究所、分析所、土壌保護課

(自治体)、バイオマス施設運営者、ごみ清掃所(自治体、民間)、コンポスト利用者(農家、園

芸家)、農薬(自治体)を代表する 12 機関の代表者が名を連ねる専門委員会が設置されている。

専門委員会は、コンポスト品質基準を定める役割を持っている。また、品質保証部では定期的に

(製品によって年に 4 から 12 回)品質検査を行っている。製品の性状、成分分析結果は、品質保

証マークに添付されている。

また、バイオマス利用促進の一環として、以下のように、バイオガス施設設置の補助金、融資

制度が連邦、州レベルで行なわれている。 連邦レベルでは「再生エネルギー利用に関する推進措置」として、バイオガスによる電力、

熱生産に対する補助金制度がある。 バイオガス施設の建設については「再生エネルギー推進のためのプログラム」として、復

興銀行(KfW)による低金利の融資が行なわれている。 定格発電量 70kW 以下の設備であれば、利率の低い融資の他、政府財源で 15,000€までの

債務免責が受けられ、定格発電量 70kW 以上の設備では KfW の融資制度のみが適応され

る。その際の融資額は費用総額の最大 100%であり、5,000,000€までの融資が受けられる。

37https://www.destatis.de/EN/FactsFigures/NationalEconomyEnvironment/Environment/EnvironmentalSurveys

/WasteManagement/Tables/WasteBalance2010.pdf?__blob=publicationFile 38 http://www.kompost.de/

1.27

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2000 年に施行された「再生エネルギー法(Erneuerbare-Energie-Gesatz: EEG)」により、バイ

オガス発電も含めた再生可能エネルギーの固定価格買取制度が導入されている。廃棄物由来のバ

イオガス発電の電力売電価格は、2012 年現在、500kW まででkWhあたり 16.0 セント(1ユ

ーロ 110 円換算で 17.6 円)、20MW まででkWhあたり 14.0 セント(15.4 円)である(EEG27a条)。バイオマス法(Biomasseverordnung)にて定義されるバイオマス由来の電力の売電価格は、

500 キロワットまでで KWhあたり 12.3 セント(13.5 円)、20 メガワットまで KWhあたり 6.0セント(6.6 円)であるため、これと比べると廃棄物由来のバイオガス発電の方が割高の売電価格

が設定されていることがわかる(EEG27 条)。39 2012 年3月に農業省は、シュツットガルト大学の調査に基づき、ドイツでは食品廃棄物を毎年

約 1,100 万トン廃棄しており、このうち 65%が回避可能なものであると発表し、"Too good for the bin" イニシアチブを立上げ、食品廃棄物の発生抑制に向けたキャンペーンや関係者間の意見交換、

回避可能な食品廃棄物の削減のヒントやアドバイスを集めた専用ウェブサイトの開設などを行っ

ている。また、賞味期限の正しい理解の仕方をマスコミで紹介し、国民や企業からリサイクルや

再利用のアイデアを募集している 40。 また、販売店で売れ残った食品(品質に問題はないが廃棄されてしまう食品)を、生活貧困者

に無料または無料に等しい価格で提供する、「ターフェルン」と呼ばれる慈善事業が定着している。

(4)スウェーデン

1)廃棄物の区分

スウェーデンでは、廃棄物の区分を「家庭廃棄物」と「その他の廃棄物」に区分し、家庭廃棄

物のうち、生産者責任が課せられているもの(包装材、タイヤ、新聞紙、使用済自動車、電気·

電子機器の廃棄物)以外は、自治体が処理責任を有する。

図1.2-7 スウェーデンにおける廃棄物の区分 (出所)環境法典および環境省 HP ( http://www.naturvardsverket.se/en/In-English/Start/Products-and-waste/Waste/Objectives-strategies-and-results/Responsibility-for-waste/) 2)食品廃棄物の定義等

自然保護庁が 2012 年 5 月にまとめた『廃棄物からリソースへ:スウェーデン新全国廃棄物計

画 2012-2017』(以下、新廃棄物計画)において、食品廃棄物の発生抑制やリサイクルの目標が設

39再生エネルギー法 2012年版(Erneuerbare-Energie-Gesatz:

EEG)http://www.gesetze-im-internet.de/eeg_2009/__27.html 40食品・農業・消費者保護省HPhttp://www.bmelv.de/EN/Food/food_node.html

廃棄物 家庭廃棄物

その他の廃棄物

1.28

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定されている。そこで対象となっている食品廃棄物は、第一次産業からの廃棄物の他、食品加工

産業、卸・小売業、飲食店、家庭から排出される食品廃棄物が含まれている。 3)食品廃棄物の発生量

自然保護庁の統計データによると、以下に示すように、食品廃棄物は合計で年間約 100 万トン

発生しており、うち、食品製造業からは 17 万トン、外食産業からは約 10 万トン発生しており、

家庭からは 67.4 万トン発生している。このデータはサンプル調査を元に拡大推計したものであり、

農業や病院からの食品廃棄物は定義としては含まれているが発生量は把握できていない。また、

流通上の返品の把握は不十分であると記載されている。

表1.2-9 セクター別および家庭由来の食品廃棄物の量(2010 年) セクター 重量(万トン) 割合(%)

農業

食品製造業

スーパーマーケット

レストラン

学校給食

病院の食事

家庭

食品のうち食べられない部分

廃棄する必要がない食品

-

17.1

3.9

9.9

2.6

-

67.4

43.5(65%)

23.9(35%)

-

17

4

10

3

-

67

合計 101

(出所)SMED(スウェーデン環境排出量データ)レポート第 99 号、2011 年

( http://www.naturvardsverket.se/Start/Produkter-och-avfall/Nyheter/Hushallen-slanger-mest-matavfall/)

4)食品廃棄物の手法別処理量

食品廃棄物の処理方法としては、メタン化とコンポスト化が進んでいる。2010 年の廃棄物のメ

タン化処理量は約 66 万トン、コンポスト化が約 57 万トンであり、このうち、食品廃棄物の処理

量は 21.4 万トンとなっている。

表1.2-10 スウェーデンにおける生物的処理の経年変化

2006 2007 2008 2009 2010

メタン化された量(万トン) 28.4 35.6 40.6 53.6 66.2

堆肥化された量(万トン) 45.2 51.5 56.9 63.1 56.6

生物的処理量合計(万トン) 73.6 87.1 97.4 116.6 123.0

1.29

Page 30: 1.海外の食品リサイクル制度の現状及び食品リサイクル等の ......ON FOOD WASTE ACROSS EU 27』(2010 年))。 排出された動植物性残さのうち、99%は飼料等およびバイオガ

うち食品廃棄物量(万トン) 13.5 16.7 16.3 17.9 21.4

生物学的に処理された家

庭廃棄物の総量(万トン) 47.0 56.1 59.7 61.8 58.7

消化生成物(万トン)

原料ガス量(MWh)※※

27.3

181,270

33.6

228,810

38.9

280,000

49.9

317,440

58.3

328,110

車両用燃料(MWh)

電力(MWh)

暖房(MWh)

合計(MWh)

106,430

1,680

63,600

181,270

149,230

1,230

67,960

218,410

204,720

700

48,740

254,160

262,600

0

41,280

303,870

264,680

0

50,980

315,660

*家庭コンポストで処理された 6 万トンを含む。

**原料ガス量以下のデータは、電力量換算で示されている。

(出所)Avfall Sverige『SWEDISH WASTE MANAGEMENT 2011』 5)主な法規制

2002年1月に制定されたEUの廃棄物埋立指令への対応として、スウェーデンでは、2005年に、

特定の例外を除く全ての有機性資源の埋立が禁止された41。これに伴い多くの埋め立て地が閉鎖さ

れ、また埋め立て課徴金が課され埋め立ての基準や重量の制限などが厳格化された。また、家庭

系廃棄物についてこれまで埋め立てられていた廃棄物は焼却によるエネルギー回収や、生物的処

理などにより2005年に約5%であったが2011年には1%以下に減少した。それまで全国で焼却され

ている廃棄物は年間約214万トンであったが、埋め立てが禁止されるとこれに加えてさらに約100万トンのリサイクルや焼却が必要となり、多くの自治体で新規に焼却施設が建設された。

1998 年 6 月に制定され、1999 年 1 月に施行された環境法典では、第 15 章のセクション 9 に

おいては自治体が廃棄物管理計画に必要な情報を政府に提出することが義務づけられている。 6)役割分担、罰則等

家庭系の一般廃棄物については、地方自治法(1991:900)第15 条8において、全ての自治体(コ

ミューン)が廃棄物管理体制や廃棄物処理計画を策定し、収集と処理を行う責任を負うとされて

いる。自治体は、廃棄物処理計画を4年ごとに見直し、必要に応じて更新を行い、地方政府に処理

計画の写しを送付しなければならない。また、地方政府は、管理計画の内容について自然保護庁

に報告することが義務付けられている。

一方、製造業、小売・卸、外食に関しては、環境法典第15章において排出する食品関連事業者

に責任があるとされている。その際、食品関連事業者は、廃棄物管理に関し、可能であれば以下

の優先順位に従うこととされている。

廃棄物の発生抑制

再利用のための準備(前処理)

再利用

41 EU埋め立てに関する規制(2001:512)

http://www.naturvardsverket.se/sv/Start/Produkter-och-avfall/Avfall/Hantering-och-behandling-av-avfa

ll/Deponering-av-avfall/Lagstiftning-och-vagledning/Deponeringsforbud/

1.30

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リサイクル

エネルギー回収など他のものへの回復

埋立て

食品廃棄物のリサイクルの手法は嫌気性消化によるバイオガス生成か、コンポストによる堆肥

化が一般的である。バイオガスは主に市バスやごみ収集車両の燃料となり、堆肥は農地や花壇の

肥料として使用されている。

7)特徴(食品リサイクルに関する目標、施策、国民運動等)

①目標

2008 年 11 月 19 日に発効された EU の廃棄物枠組み指令 (欧州指令 2008/98/EC) により、EU加盟国は、2013 年までに廃棄物処理および削減に関する計画を策定し、6 年ごとに評価し、必要

に応じて改訂する義務を負っている。 スウェーデンでは、2012 年に新全国廃棄物計画が策定された。食品廃棄物については、「2018

年までに家庭・レストラン・小売店からの食品廃棄物の分別収集を徹底し、全廃棄物量の少なく

とも 50%を生物的処理し堆肥として利用、さらに少なくとも 40%を嫌気性消化し、エネルギー利

用する」ことが目標に定められている(なお、分別収集の不履行に対する罰則や罰金の規定はな

い)。 また、以上の目標とは別に、自然保護庁は、2011 年 4 月に環境目標諮問委員会が政府に提出し

た『環境システムにおける指標』に基づいて、食品廃棄物について、2015 年までに 2010 年時の

排出量の 20 %を削減するという目標を設定している。

②施策

EU の農業補助金制度の一つである「環境農家に対する補助金(miljöbidrag)」により、化学肥

料や農薬を使わない、などの基準を満たした農家に特別手当が支給されている。これらは生ごみ

を利用する有機栽培農家の増加を促す効果がある。 スウェーデンでは、食品産業からの食品廃棄物など、分別された有機性廃棄物を原料とするメ

タン化、コンポスト化の工場の生成物には、品質を保証する証明書が発行されている。

図1.2-8 リサイクル認定証(品質保証マーク)のロゴ

(出所)FAO: http://www.fao.org/nr/sustainability/food-loss-and-waste/database/projects-detail/en/?dyna_fef%5Buid%5D=133915

分別された動物性廃棄物や食品産業から排出する食品廃棄物から堆肥やバイオ生成物を生産す

1.31

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る工場は、自社の製品に品質保証マークをつけることができる(上図)。この認証制度は、Avfall Sverige(廃棄物協会)が、農業と食品産業、堆肥製造者とバイオ生産者、土壌メーカーおよび政府

機関や研究者との協力のもとに確立したものである。この制度の検査機関は、スウェーデン科学

技術リサーチ機関(SP)である。

今日農地で使用されている嫌気性消化生成物の約 90%がこの認証を受けており、スウェーデン

国内では 13 のバイオガス生成工場と 3 つの堆肥生成工場が認定されている。 また、各自治体では食品リサイクルの取組みを促進するための独自の施策を講じている。一例

をあげると、スウェーデン南部の Kristianstad(クリファンスタッド 人口約 8 万人)では、「化

石燃料ゼロ宣言」をして、全市バス 25 台、スクールバス、市の公用車も全て市の下水処理場と家

庭の生ごみ、家畜 糞尿、食品加工メーカーの有機廃棄物を使ったバイオガスで走らせている。ク

リファンスタッドは、スウェーデンで最もバイオガスの取り組みが進んでいるといわれている。

それ以外の自治体も、エコカーであれば駐車料金を無料にする、渋滞税を免税するなどの免税措

置の導入、エコカーへの買い替え時には助成金があるなど、それぞれの自治体で独自の優遇政策

を導入している。

(5)韓国

1)廃棄物の区分

廃棄物管理法(一部改正 2011 年 7 月 25 日第 10911 号)によると、廃棄物は「生活廃棄物」と「事

業場廃棄物」の二つに分けられる。生活廃棄物とは事業場廃棄物以外の廃棄物のことで、一般的

に地方自治体にその処理責任がある。事業場廃棄物とは「大気環境保全法」、「水質環境保全法」ま

たは「騒音・振動規正法」により排出施設を設置・運営している事業場と、大統領令の定める事業場

で発生する廃棄物を指す。大統領令による事業場の範囲には、以下が含まれている。 ・「水質環境保全法」の規定により、排出終末処理の施設を設置・運営している事業場 ・ 「下水道法」により下水終末処理施設を設置・運営している事業場 ・ 「汚水・糞尿及び畜産排水の処理に関する法律」により糞尿処理施設や畜産排水公共処理施設を

設置・運営している事業場 ・ 指定廃棄物を排出している事業場 ・ 廃棄物を一日当たり 300kg 以上排出する事業場 ・ 建設工事により廃棄物を 5kg 以上排出する事業場

事業場一般廃棄物のうち、生活廃棄物と性状が類似している廃棄物の場合(事業場生活系廃棄物)

は、地方自治体の条例により、生活廃棄物として収集・運搬・保管・処理することができる。な

お、食品製造業において発生する食品廃棄物は、ほとんどが一日当たり 300kg 以上排出する事業

場で発生するものであり、事業場排出施設系廃棄物に含まれる。

1.32

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図1.2-9 韓国における廃棄物の分類 (出所)経済産業省 アジア各国における産業廃棄物・リサイクル政策情報提供事業報告書 http://www.jetro.go.jp/jfile/report/05001468/05001468_001_BUP_0.pdf 2)食品廃棄物の定義等

韓国環境省では、食品廃棄物とは、家庭や飲食業、市場、畜産業等での流通、加工、販売、消

費等を通じて発生する、食べ残し、腐敗、賞味期限切れ等であり 42、食品製造業において発生す

る廃棄物は定義に含まれていない。 3)食品廃棄物の発生量

食品廃棄物(製造業由来のものは含まない)の 2008 年~2010 年の発生量および処理・リサイ

クル量は以下のとおりである。同統計は、分離廃棄地域(生ごみを分離して廃棄している地域を指

し、全人口の 95%が分離廃棄地域に居住している。)のデータであり、2010 年の発生量は 490 万

トンである。なお、飲食店で発生する食品廃棄物は生活系に含まれており、大規模な食品製造業

等で発生する食品廃棄物はここには含まれていない。

表1.2-11 食品廃棄物の発生量及び処理現況(2008~2010 年)(万t/年) 発生量及び処理現況 2008 2009 2010

発生量

生活系 453 440 423

事業場 59 61 67

合計 512 500 490

処理方法

埋立 4 2 4

焼却 11 11 11

再利用 497 487 476

(注)統計データは一日当たり発生量のため、365 を乗じて年量とした。 (出所)環境省 環境統計ポータル 統計刊行物 2008、2009、2010

42韓国環境省 http://eng.me.go.kr/content.do?method=moveContent&menuCode=res_cit_was_energy

事業場

一般廃棄物

生活廃棄物

事業場

廃棄物

廃棄物

指定廃棄物(有害廃棄物)

建設廃棄物

感染性廃棄物

事業場排出施設系廃棄物

事業場生活系廃棄物

発生源 発生特性・有害性 性状

1.33

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4)食品廃棄物の手法別処理量

上記に示すとおり、食品廃棄物の再利用率は 97%と非常に高い。その主な要因として、これら

の食品廃棄物が分別排出により収集されているものであることが挙げられる。再利用の手法別の

内訳について、近年のデータはないが、2005 年のデータによると、飼料化が 54%、堆肥化が 30%、

バイオガス化が1%となっている。

処理能力(t/日)

飼料化, 0.54

堆肥化, 0.3

バイオガス化,0.01

下水処理, 0.04

ミミズ堆肥化,0.01

その他, 0.1

図1.2-10 韓国の食品廃棄物リサイクル用途 (出所)(財)地球環境戦略研究所『マレーシア国有機廃棄物管理プロジェクト支援業務報告書』

平成 23 年度 なお、生活廃棄物の回収に従量制を導入することによって減量を進めると同時に、回収された

廃棄物をエネルギー開発資源に利用を進めているが、現場レベルでは、2012 年から全国で行われ

るごみ従量制が以前のアパートの管理費の一部として一定額徴収されていた費用に比べてコスト

がかかるなどの負担の増加を感じるところから、家庭や給食所などで不法に廃棄物を下水処理し、

そのための設備販売市場も年々拡大している様相であり、環境省が出しているデータと実際のデ

ータには違いがあると言う指摘もある 43。 社団法人資源循環社会連体政策チームが 2010 年に全国の公共資源化施設を対象に調査した結

果 44によると、堆肥化や飼料化等を行う 91 施設の中で資源化製品を有償で販売している施設は

14 施設に過ぎないことが分かった。また、生ごみ搬入量に対して資源化製品生産比率が 5%未満

の施設は6施設、異物混入率が 20%以上の施設は 13 施設、廃水発生比率が 15%以上の施設は 8施設に及んでいるという 45。このような結果から、同チームは環境省に対して、控えめにみても

43 環境省「廃棄物エネルギー化総合対策」2008年 5月 44 社団法人資源循環社会連体政策チーム 長 ホンスヨル「生ごみ従量制及び資源化の評価」2010年発行『有機物

資源化』 45 同政策チームが調査したところ、資源化製品生産量が生ごみ搬入量に対して 5%未満しかない施設が 6施設で

あり、搬入された生ごみの中に異物混入量が20%以上ある施設が13施設、生ごみ量の中にある廃水発生の割合が

15%以上あったということである。つまり、厳密には異物や廃水などは除去されるべきであるのに、実際にはそ

ういうものが混ざった状態で生ごみとして計量されて統計が出されるということである。

1.34

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24 施設の適正運用に疑いがあると主張し、環境省への生ごみ処理施設の報告内容の正確性に対す

る疑問が残ると述べている。また、同報告書は、「従量制による生ごみ減量効果を限定的」と主張

している。その理由として、「経済的誘導による廃棄者の行動変化に対する過度な期待は禁物」で

あり、「経済的誘導により廃棄者の行動変化を誘導するためには、価格が非常に高くないといけな

い」が、一方で「価格を非常に高めた場合、低所得層の負担加重の問題と不法投棄の増加や、そ

れらに対する管理コストの増加の問題が同時に発生する」と述べている。そして、「廃棄者の行動

の変化を誘導するためには、継続的な教育と広報、市民の自負心を刺激する方法が必要である」

と主張している。

5)主な法規制

2005 年に食品廃棄物の直接埋立が禁止され、食品廃棄物のリサイクル率を押し上げる要因とな

った。 1995 年に一般廃棄物の袋回収による従量料金制度が導入されている。その後、生ごみについて

は、2012 年末までに各地方自治体は、計測による従量課金制度を導入することとなっており、先

進的な自治体では 2010 年度よりその導入を始めている。 6)役割分担、罰則等

廃棄物管理法によると、家庭から排出される生活廃棄物や、事業場生活系廃棄物は、自治体が

その収集・処理の責任を負うこととなっており(第 4 条)、製造業等の事業場廃棄物は、自ら処理

するか、廃棄物処理業者に処理を委託することが義務付けられている(第 18 条)。また、飲食業

以外の事業場廃棄物の排出者は、自治体に対して、廃棄物の種類と排出量を申告することが義務

付けられている(第 17 条)。 また、事業場廃棄物の排出事業者に対する罰則については、廃棄物管理法施行令([施行

2012.9.24] [大統領令第 24119 号、2012.9.24、一部改正])によって定められている。

表1.2-12 罰金賦課金額 46(単位:万ウォン)

一次違反 二次違反 三次違反

第 17条 1項 3号に従い確認せず委託した場合 100 200 300

第 17条 2項に違反し、申告をせず、うその申告をし

た場合 300 600 100

第 17条 2項に伴う変更申告をせず申告事項を変更し

た場合 100 200 300

(注)廃棄物管理法第 17 条(事業所の廃棄物排出者の義務等) ①事業所の廃棄物を排出する事業者(以下 "事業所の廃棄物排出者"という)は、次の事項を守

らなければならない<改正 2010.7.23>。 1 事業所から発生するすべての廃棄物を適正に処理しなければならない。

46 廃棄物管理法施行令 別表 8「罰金の賦課基準」(第 38条の 3関連) 改定 2012年 1月 6日

1.35

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2 生産工程(工程)は、廃棄物の減量化施設の設置、技術開発やリサイクルなどの方法で事業

場の廃棄物の発生を最大限に抑えなければならない。 3 第 18 条第 1 項の規定により、廃棄物の処理を委託する事業所の廃棄物排出者は、受託者が

第 13 条の規定による廃棄物の処理基準と方法、または第 13 条の 2 の規定による廃棄物のリサ

イクル用途や方法に合わせて廃棄物を処理する能力があるかどうかを、環境省令で定めるところ

により確認した後、委託しなければならない。ただし、第 4 条や第 5 条の規定による廃棄物処

理施設を設置•運営者に委託する場合は、この限りでない。 ②環境省令で定める事業場の廃棄物排出者は、事業場の廃棄物の種類と発生量などを環境省令で

定めるところにより、特別自治道知事、市長•郡首•区長に申告しなければならない。申告した事

項のうち、環境省令で定める事項を変更するときもまた同じ<改正 2007.8.3>。なお、この申告

義務に事業規模による適用除外規定はない。 7)特徴(食品リサイクルに関する目標、施策、国民運動等)

①目標

環境庁は、2008 年に以下の廃棄物エネルギー化細部推進目標を発表している。固形燃料/有機

性バイオガスエネルギーは、2008 年時点では年間、固形燃料 6 万トン/バイオガス 16 万トン、総

22 万トンであるが、2012 年までにそれぞれ年間、185 万トン/195 万トン(合計 380 万トン/年)、

2020 年までには 470 万トン/748 万トン(合計 1,218 万トン/年)、焼却余熱は 2012 年までに、128万 Gcal/年 (自治体 63 万、民間 65 万)の焼却余熱回収・利用すること等を目標としている。

この中で、2012 年の固形燃料/バイオガスの目標 380 万トン/年は、生活廃棄物と公共分野だけ

で行うことを前提としている。

表1.2-13 廃棄物エネルギー化細部推進目標(環境省 2008) 年度 2008 2012 2020

固形燃料/有機性バイ

オガス

22万トン/年

6/16

380万トン/年

185/195

1218万トン/年

470/748

焼却余熱 128万トン Gcal/年(自治体 63万

トン、民間 65 万トン)焼却余熱

回収・利用

埋立ガス 308,160 ㎥/日 資源化及び埋立

地安定化(自治体)

2012年までは現実的にエネルギー化が可能な物量を推進目標として設定。公共部門を重点推進

(338万トン/年)しながら、民間市場活性化に誘導(42万トン/年)。2020年までエネルギー化可能

廃棄物全量を目標に推進。

この中で、2012年の現実的な目標で設定した加熱性/有機性エネルギーの 380万トン/年は、生

活廃棄物と公共分野だけで行うことを前提。また、埋立ガスと焼却余熱(自治体埋立場・焼却場、

大規模民間焼却施設)の回収量は、2008 年の 70~80%から 2012 年に 80~90%基準に向上させる

計算。

1.36

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②施策

環境省によると、食品廃棄物のエネルギー化を促進するため、2008 年には 248 箇所の食品廃棄

物エネルギー化施設に対して 1 兆 4,480 億ウォンが投入された。さらに、リサイクル工業促進フ

ァンドにより 2013 箇所の廃棄物のエネルギー化施設の開発や研究に対して 7,310 億ウォンが投

入された 47。 政府は 2010 年 2 月から“環境に優しい食文化造成とエネルギー節約で「低炭素グリーン成長」

実現”というビジョンと“2012 年まで生ごみ発生量 20%以上削減”という目標で生ごみ削減対策

を推進している 48。この目標を実現するために、以下のような取組みが行われている。

①経済的インセンティブの導入等の制度構築として、生ごみ従量制の強化と自治体の減量化施

策(国・自治体の食堂には残飯秤、「空き容器希望運動」などのベストプラクティスを普及):

残飯秤は、電子天秤を用いて自分で残飯量をチェックし、一定量を超えた場合警告音と警告

灯作動、残飯量を超えた場合、自発的に罰金(100 ウォン程度)を支払うもの。空き容器希望

運動とは、残飯を残さなければポイントを支給し、換金できて社会団体に寄付するものであ

る。

②現実性のある対策の持続的推進として、小型・複合食器の普及(食器を小さくすることによっ

て一回につぐ量を減らすため)、食品共有文化の拡散、韓食の無駄の要因の解消、食材供給段

階で事前削減

③主要発生源別のカスタマイズされた対策推進として、家庭・食事・ホテル・休憩所など分野

別対策推進、関係省庁合同 TFチームの組織化

④汎国民実践運動と生活パターンの変化の誘導として、グリーン生活の実践連携、民間主導の

ガバナンス構築を推進のための政策として掲げている 49。

また、韓国では、再生可能エネルギーの導入支援策として、発電差額支援制度が導入されてい

る。同制度は、2002 年に改正された「新エネルギーおよび再生エネルギー開発利用普及促進法」

に基づく制度で、再生可能エネルギーにより供給された電力の取引価格が国の定める基準価格よ

り低い場合、その電気を供給した発電事業者に基準価格と電力取引価格の差額を電力産業基盤基

金から支援するものである(同法第 17 条)。基準価格は以下のように設定されており、バイオガ

ス発電の基準価格は 5.7 円/kWh~6.7 円/kWh に設定されている。

47韓国環境省 http://eng.me.go.kr/content.do?method=moveContent&menuCode=res_cit_was_energy

48 政策空間 食物ゴミ従量制投入に関する説明 http://blog.daum.net/hellopolicy/6981908 49 食物ゴミ減らしホームページ http://zero-foodwaste.or.kr/index.do

1.37

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表1.2-14 基準価格指針

エネルギー源 基準価格

(ウォン/kWh)

基準価格

(円/kWh)

設備容量

基準

太陽光

370.70~606.64

(30kW~3MW 超の 5 段

階区分を適用)

28.9~47.3 3kW 以上

風力 107.29 8.4 10kW 以上

小水力 66.18~94.64 5.2~7.4 5MW 以下

埋立地ガス 68.07(20MW 以上)

74.99(20MW 未満)

5.3

5.8 50MW 以下

潮力 62.81~90.50 4.9~7.1 50MW 以上

バイオガス 72.73~85.71 5.7~6.7 50MW 以下

バイオマス 68.99 5.4 50MW 以下

燃料電池 227.49~274.06 17.7~21.4 200MW 以下

(注)1ウォン=0.078 円で換算

(出所)知識経済部告示第 2010-176 号(2010 年 9 月 27 日)

1.38

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1.3 今後の課題および制度改正の方向性等の検討

ここでは、日本と1.2で詳細調査を行った五カ国との食品リサイクル状況、制度、取組等を

比較し、今後の課題および制度改正の方向性等について考察した結果を示す。表1.3-1に、

日本および詳細調査対象国の食品リサイクル状況、制度、取組等の比較表を示す。

(1)食品廃棄物の発生・リサイクルの状況

食品廃棄物の発生量やリサイクル状況について、日本のように網羅的な統計として把握されて

いる国はなかった。 発生量についてみると、スウェーデンではサンプル調査を基にした年間の発生量が統計情報と

して公表されているが、米国では、製造業等に発生する食品廃棄物の統計はなく、英国では食品

廃棄物の年次統計はなく、外食産業由来のデータが特に不足している。ドイツにおいて 2012 年

に公表された数値は、既存情報とアンケート調査結果から推計したものであり、特定の年次の発

生量ではない。また、韓国では、家庭や流通・外食産業から排出される食品廃棄物については把

握されているが、製造業由来のものは食品廃棄物に含まれておらず、その量は不明である。 リサイクルの状況についてみると、米国では、都市廃棄物中の食品廃棄物のリサイクル率は3%程度であり、欧州の英国、ドイツ、スウェーデンについては、有機性廃棄物としては把握されて

いるが、食品廃棄物に限定したリサイクルの状況は不明である。韓国のリサイクル率は統計上

97%であるが、異物混入率が高い、生成物が販売できていない施設が多く、実質の利用率はより

低いとの指摘がある。

(2)制度について

1)排出者に求められる義務について

詳細調査を行った国では、食品廃棄物の排出者に分別やリサイクルを義務づける法制度は、現

時点ではなかったが、今後、欧州各国では、EU の廃棄物埋立指令や、廃棄物枠組み指令への対

応として、有機性資源の分別(ドイツ)や、食品廃棄物の分別(スウェーデン)が導入される予

定である。また、韓国では、2005 年には食品廃棄物の直接埋立を禁止し、2010 年以降、2012 年

末を期限として、各自治体において、家庭系や事業系の食品廃棄物排出量への従量課金制度が導

入されている。

2)国の目標について

各国の目標についてみると、我が国のように、食品廃棄物を排出する業種ごとに、また、個別

の事業者に対して、そのリサイクル目標を設定している国はない。 英国、スウェーデン、韓国では、食品廃棄物の排出削減目標を掲げている(英国:2020 年に

1995 年比 35%、スウェーデン:2015 年に 2010 年比 80%、韓国:2012 年に 2000 年比 20%以上

削減)。また、その3カ国では、バイオガス化についても目標を設定している(英国:2020 年ま

でに 500 万トンのバイオガス化、スウェーデン:2018 年までに分別を徹底し、その 40%をバイ

オガス化、韓国:2020 年までに 748 万トンの食品廃棄物をバイオガス化)。

1.39

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(3)施策・取組みについて

発生抑制策として参考になる制度として、米国では、エマーソン・グッド・サマリタン食品寄

付法を定め、事業者が安全に食品の寄付が行なえるガイドラインがあり、フード・バンク活動がさ

かんである。

生成物の品質管理・品質保証制度として、ドイツでは、堆肥化を促進する施策として、連邦コ

ンポスト品質共同体を設立し、コンポスト品質基準の設定や、製品の品質検査などを行っている。

また、スウェーデンでは、食品産業からの食品廃棄物など、分別された有機性廃棄物を原料とす

るメタン化、コンポスト化の工場の生成物に、品質を保証する証明書が発行されている。また、

英国、ドイツ、韓国では、バイオガス化の促進策としてFIT(固定価格買取制度)等が導入さ

れている。

最終処分については、我が国の廃棄物処理施設整備計画においても有機性廃棄物の直接埋立は

原則禁止とされているが、欧州では、2001 年に定められた EU の廃棄物埋立指令において、有機

性廃棄物の埋立処分量を 2016 年までに 1995 年比 35%まで削減することが目標に掲げられ、ド

イツやスウェーデンでは有機性廃棄物の直接埋立が禁止されており、英国では最終処分量の排出

量取引が自治体間で行われている。また、韓国においても食品廃棄物の直接埋立は禁止されてい

る。

(4)我が国における法制度見直しに資する取組みについて

諸外国の食品廃棄物の実態把握や取組みの状況を踏まえると、我が国の実態把握の取組みや再

生利用の取組みは、世界的にも取組みが進んでいると言える。特に、実態の把握に関しては、最

も精緻な把握が行われていると考えられる。 今後、さらに食品廃棄物の再生利用等を進めていく上で参考となる取組みとしては、発生抑制

目標の設定が挙げられる。我が国においても、平成 24 年度より試行的に、業種別の発生源単位目

標が設定されたことから、目標設定業種を拡大し、施策(発生原単位目標の設定)による効果を

定量的に示すことが考えられる。 分別については、EUの廃棄物埋立指令に対応し、ドイツやスウェーデンでは、有機性資源や

食品廃棄物の分別を全国的に導入することを予定している。また、既に韓国では食品廃棄物の分

別、従量課金制を導入している。しかし、韓国では、「家庭や給食所などで不法に廃棄物を下水処

理し、環境省が出しているデータと実際のデータには違いがある」との指摘や、「再資源化施設の

中には、生成物が有償で販売されていない施設や、残渣率の高い施設など、適正運用に疑いのあ

る施設が少なからずある」との指摘があり、どのような分別区分がよいかについては、食品廃棄

物の組成や収集方法、再生利用方法との組合せなど、リサイクルシステム全体で考えていく必要

がある。

1.40

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表1.3-1 日本および詳細調査対象国の食品リサイクル状況、制度、取組等の比較表

日本 1.米国 2.英国 3.ドイツ 4.スウェーデン 5.韓国

基本情報人口:12,745万人面積:38万km2

人口:30,905万人面積:983万km2

人口:6,222万人面積:22万km2

人口:8,170万人面積:36万km2

人口:938万人面積:45万km2

人口:4,888万人面積:10万km2

①廃棄物の区分

廃棄物は、一般廃棄物と産業廃棄物に区分され、一般廃棄物は、法律上は、産業廃棄物以外のものであり、家庭からの廃棄物の他、小売、飲食店などから排出される食品廃棄物のように、産業廃棄物に含まれないものも該当する。

固形廃棄物は「有害廃棄物」と「非有害廃棄物」に分けられており、「非有害廃棄物」の内訳には、「都市廃棄物」「産業廃棄物」が含まれている。

廃棄物の区分を「管理廃棄物」と「非管理廃棄物」に区分している。家庭ごみ、商業廃棄物、産業廃棄物は管理廃棄物に、農業廃棄物、鉱山・採石場は非管理廃棄物に分類されている。

廃棄物は、実際に行われた処理により「資源ごみ」と「廃棄処分ごみ」に分類される。一方、廃棄物の処理責任についての規定では、廃棄物は「家庭廃棄物」と「その他廃棄物」に区分されている。

廃棄物の区分を「家庭廃棄物」と「その他の廃棄物」に区分し、家庭廃棄物のうち、生産者責任が課せられているもの(包装材、タイヤ、新聞紙、使用済自動車、電気•電子機器の廃棄物)以外は、自治体が処理責任を有するとしている。

・廃棄物は「生活廃棄物」と「事業場廃棄物」に分けられる。・「事業場廃棄物」のうち、生活廃棄物と性状が類似している廃棄物の場合(事業場生活系廃棄物)は、地方自治体の条例により、生活廃棄物として収集・運搬・保管・処理することができる。なお、食品製造業において発生する食品廃棄物は、事業場生活系廃棄物には含まれない。

②食品廃棄物の定義

食品リサイクル法上の食品廃棄物とは、「食品が食用に供された後に、又は食用に供されずに廃棄されたもの」または「食品の製造、加工又は調理の過程において副次的に得られた物品のうち食用に供することができないもの」である。製造業、卸・小売業、飲食店等の食品関連事業者から排出されるものが対象であり、農業廃棄物や家庭からの生ごみは対象外である。

食品廃棄物には、事業者、消費者へ売る目的の食品の製品化にあたり調理、調整によって排出された残留物、消費者が食品を購入した後に家庭で調理する際に排出される残片、食べ残しによる残飯の廃棄物がある。

環境・食料・農村地域省第4次報告書において、食品廃棄物を含め、家庭由来の有機性廃棄物、産業由来の有機性廃棄物ともに「生分解可能な都市廃棄物(Biodegradable Municipal Waste:BMW)」と定義されている。

循環経済法(2012年6月施行)では、同法による有機性廃棄物が規定されており、その分類区分として、食品廃棄物を「家庭からの生ごみ、飲食店・外食産業からの生ごみ、商業、食品製造業からの食品廃棄物」としている。

食品廃棄物には、一次産業からの廃棄物の他、食品加工産業、卸・小売業、飲食店、家庭から排出される食品廃棄物が含まれている。

食品廃棄物とは、家庭や飲食業、市場、畜産業等での流通、加工、販売、消費等を通じて発生する、食べ残し、腐敗、賞味期限切れ等であり 、食品製造業において発生する廃棄物は定義に含まれていない。

③食品廃棄物の発生量

平成22年度の食品産業全体における食品廃棄物等の年間総発生量は2,086万トン。業種別には、食品製造業1,715万トン、食品卸売業22万トン、食品小売業119万トン、外食産業229万トン。

国の統計として食品廃棄物全体の発生量データはないが、農務省発表の統計データを基にまとめた推計によると、食品廃棄物の発生量(2009年)は5,540万t(製造工程292万t、小売工程(卸売、飲食店を含む) 1,878万t、家庭3,370万t)である。

英国のNPO「廃棄物・資源アクションプログラム」(WRAP(Waste & Resources Action Programme) によると、英国の食品廃棄物発生量(2006年および2008年のデータ)は約1,400万トンであり、食品製造業由来が約260万トン、流通由来が約37万トン、家庭系が約830万トン、学校・病院由来が約260万トンである。

・2012年3月公表のドイツ連邦政府 食糧・農業・消費者保護省調査によると、食品廃棄物の発生総量は年間約1,100万トン(一般家庭由来:667万トン、外食由来:190万トン、産業工業製造業由来:185万トン、 流通由来:5.5万トン)である。

・自然保護庁の統計によると食品廃棄物発生量(2010年)は、合計101万トン、うち、食品製造業17万トン、外食産業約10万トン、家庭67.4万トンである。

・食品廃棄物(製造業由来は含まず)の2010年の1日当たり発生量は13,429t/日である。これは年間にすると約490万トンとなる。・食品廃棄物のリサイクル率は統計上100%に近いが、家庭や給食所などで不法に廃棄物を下水処理し、環境省が出しているデータと実際のデータには違いがあるとの指摘や、再資源化施設の中には、生成物が有償で販売されていない施設や、残渣率の高い施設など、適正運用に疑いのある施設が少なからずあるとの指摘がある。

④食品廃棄物の手法別処理量

平成22年度は、食品リサイクル法上の再生利用手法の処理量は14,191千t(肥料2,449千t、飼料10,708千t、メタン543千t、油脂443千t、炭化燃料41千t、エタノール7千t)で、熱回収や、その他の利用、減量化、発生抑制量を含めた再生利用等実施率は82%

米国では、都市廃棄物に含まれる食品廃棄物のうちリサイクルされる割合は3%以下(2010年)である。

食品廃棄物全体についての統計情報はないが、2007年の調査によると、英国の家庭系食品廃棄物のうち、堆肥化量は2004年度で11万トンと推計されている。また、20011年の調査によると、2009年度に自治体に収集された廃棄物のうち、13.6%が再生エネルギーに使用され、46.9%が埋め立てられている。

食品廃棄物に限った処理・リサイクルに関する統計はなく、有機性廃棄物については、連邦環境省が、排出量と再生利用状況をまとめており、分別収集されるバイオ廃棄物の総量は1,200万トンで、コンポスト化に740万トン、バイオガス化に430万トン仕向けられている(2010年)。

有機性廃棄物のメタン化とコンポスト化が進んでいる。2009年の廃棄物のメタン化処理量は約66万トン、コンポスト化が約56万トンであり、このうち、食品廃棄物の処理量は21.4万トンとなっている。

食品廃棄物のリサイクルの方法は、飼料化が54%、堆肥化が30%、バイオガス化が1%(2005年)

⑤主な法規制

食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)が平成13年5月に施行され、平成19年12月に改正されている。食品関連事業者には、業種別の再生利用等実施率目標が定められ、また、個々の事業者ごとに再生利用等の実施率目標が定められている。

資源再生保全法(The Resource Conservation andRecovery Act :RCRA)は、1976年に制定され、主に、有害廃棄物の定義、有害廃棄物に関する各主体の義務が定められている。非有害廃棄物については、州や地方自治体が具体的な規制を行うことが定められている 。

EUの廃棄物埋立指令の制定を受け、2003年に廃棄物及び排出権取引法が成立し、各廃棄物処理当局は、BMWのリサイクルやコンポスト化を進め、生分解性廃棄物の量を削減できた場合には、余った排出枠を売ることができ、一方で、排出枠を超過してしまった場合は、他の当局から排出枠を購入しなければならない。

・廃棄物の処理・リサイクルに関する基本法として、循環経済法があり、廃棄物の定義、3Rの優先順位、廃棄物処理の役割分担等が規定されている。・2001年に定められたEUの廃棄物埋立指令に基づき、2005年には一般廃棄物技術指導令(Technische AnleitungSiedlungsabfall)により、有機性廃棄物の直接埋立ては禁止されている。

・2005年に、特定の例外を除く全ての有機性資源の埋立が禁止された 。これに伴い多くの埋め立て地が閉鎖され、また埋め立て課徴金が課され埋め立ての基準や重量の制限などが厳格化された。・環境法典(1999年施行)では、第15章のセクション9においては自治体が廃棄物管理計画に必要な情報を政府に提出することが義務づけられている。

2005年には食品廃棄物の直接埋立を禁止2010年には、家庭系や事業系の食品廃棄物排出量への従量課金制度が開始され、2012年末までに全自治体での導入が義務付けれられている。

⑥役割分担、罰則等

・食品関連事業者は、食品循環資源の再生利用等を、各事業に応じて組み合わせ、食品廃棄物の発生抑制に努めることが義務付けられており、年間100t以上排出する事業者には勧告・命令等の罰則も規定されている。・自治体(県・市町村)には、地域の経済的、社会的な条件に応じて、食品循環資源の再生利用の促進に努めることが求められている。

・非有害廃棄物については、都市廃棄物についても産業廃棄物についても、州や地方自治体ごとに規制が定められているため、その役割分担も様々である。・都市廃棄物の収集・処理は、一般的には、排出者が、プラスチックの収集容器に廃棄物を入れ、カーブサイド(路肩)に出したものを自治体が収集し、処理している。一方、産業廃棄物の収集・処理については、民間事業者、自治体の業者が収集をおこない、廃棄物の量や種類によって収集が可能な場合と、商業を営む事業者が独自で処理場へと運び込む場合がある。

・2005年の環境・食料・農村地域省第4次報告書において、地方自治体が主体となって廃棄物の収集・処理を行うこと、及び、食品廃棄物を含む都市廃棄物は地方自治体がその処理の全責任を負うことが確認されている 。

・家庭廃棄物については、排出者が敷地内にリサイクル設備(例えばコンポスト)などを設置していない限り、自治体もしくは自治体が運営する廃棄物処理業者の手に委ねなければならない。・家庭以外の廃棄物(商業、製造業からの廃棄物)については、循環経済法改正後、「廃棄処分ごみ」と「資源ごみ」という区分が導入されており、廃棄処分ごみについては、その廃棄者自身は、自ら処理ができない場合のみ、公営の処理業者に委託する義務がある。一方、資源ごみについてはこの委託義務がなく、民間の処理業者へ委託することができる。

・家庭系の一般廃棄物については、全ての自治体が廃棄物管理体制や廃棄物処理計画を策定し、収集と処理を行う責任を負うとされている。自治体は、廃棄物処理計画を4年ごとに見直し、必要に応じて更新を行い、地方政府に処理計画の写しを送付しなければならない。・一方、製造業、小売・卸、外食に関しては、環境法典第15条において排出する食品関連事業者に責任があるとされている。

・廃棄物管理法によると、家庭から排出される生活廃棄物や、事業場生活系廃棄物は、自治体がその収集・処理の責任を負うこととなっており、製造業等の事業場廃棄物は、自ら処理するか、廃棄物処理業者に処理を委託することが義務付けられている。また、飲食店以外の事業場廃棄物の排出者は、自治体に対して、廃棄物の種類と排出量を申告することが義務付けられている。

⑥特徴(食品リサイクルに関する目標、施策、国民運動等)

<目標>・食品関連事業者には、業種ごとに再生利用実施率目標が定められている(食品製造業85%、食品卸売業70%、食品小売業45%、外食産業40%)。また、個々の事業者ごとに、前年度の再生利用実施率に応じて、その増加ポイント目標(現状維持、1%、2%)が定められている。・さらに、平成24年4月より、「発生抑制の目標値」が暫定的に16の業種に設定されている。

<施策>・現在、フードバンク活動の実施に向けた関係者による具体的な検討を支援する「フードバンク活動推進事業」、食品リサイクル・ループ構築の実現に向けた関係者による具体的な検討等を支援する「食品リサイクル・ループ構築促進事業」、中小規模の食品関連事業者による飼料化施設のリース料を補助する「食品廃棄物オンサイト飼料化設備導入事業」が予算化されている。

<目標>・食品廃棄物の管理は、州政府に委ねられているため、全米単位での3R等に関する目標はない。・カリフォルニア州では廃棄物のリサイクル率を2020年までに75%にするという目標を設定している。

<施策>・米国では、環境保護局(EPA)の「持続可能な資源管理プログラム」において食品廃棄物の有効利用を目指している。参加者はシステムを利用して食品廃棄物の購入、廃棄、寄付、堆肥化した量などを管理する。・食品廃棄物抑制として1996年に食品事業者が残った食品を非営利団体に寄付するためのエマーソン・グッド・サマリタン食品寄付法(The Emerson Good Samaritan FoodDonation Act)が定められ、事業者が安全に食品の寄付が行なえるようガイドラインがつくられており、フード・バンク活動がさかんである。全米最大ネットワークを有するフィーディング・アメリカの食品取扱量は、2011年の年次報告書によると年間約150万トンである。

<目標>・食品廃棄物は1995年と比較し2010年に75%、2013年に50%、2020年には35%に減少する目標を設定。・家庭廃棄物については、2005年までに25%、2015年までに33%リサイクルまたはコンポスト化に組み込む目標を設定。・2020年までに約500万トンの食品廃棄物と2000万-6000万トンの家畜排泄物を嫌気性処理(メタン発酵)を行う目標を設定。

<施策>・再生可能エネルギー使用証明書(ROCs)、再生可能電源を対象とした固定価格買取制度(FiT)、再生可能熱利用インセンティブ(RHI)の適用により、バイオガス化、堆肥化を推進。FITにおいて、バイオガス化については、9.0p/kWh[約11.35円(1ポンドの為替レートを126.128円とした場合)]と設定されており、500kW以下の農場規模のプラントには、追加の買取が適用され、11.5p/kWh(11.5ペンス=約14.5円)が設定されている。・埋立のディスインセンティブとして、埋立税が導入されているが、埋立税の標準税率を2011年から1トン当たり8ポンドに引き上げ、少なくとも2014年まで継続することとしている。

<目標>・循環経済法では、EU廃棄物枠組み指令に基づき、2020年までに一般廃棄物のリサイクル率65%(EU指令では50%の目標値)、建築廃棄物のリサイクル率70%を達成するという国の目標をかかげている(法第14条)。なお、ここで一般廃棄物とは、公営処理業者の処理物を指し、家庭廃棄物とそれに類似する事業所からの廃棄物を含む。・循環経済法第11条に、有機性廃棄物を2015年までに分別しなければならないことが規定されている。

<施策>・堆肥化を促進する施策として、政府は連邦コンポスト品質共同体を設立し、コンポスト品質基準の設定や、製品の品質検査などを行っている。・バイオガス施設の建設については「再生エネルギー推進のためのプログラム」として、復興銀行(KfW)による低金利の融資が行なわれている。定格発電量70kW以上の設備ではKfWの融資制度が適応され、融資額は費用総額の最大100%、500万€までの融資が受けられる。・「再生エネルギー法」の買い取り制度により、バイオマス由来の電力は国が一定価格での買い取りを保証している。廃棄物由来のバイオガス発電の電力売電価格は、2012年現在、500キロワットまででKWh(キロワットアワー)あたり16.0セント(1ユーロ110円換算で17.6円)、20メガワットまででkWhあたり14.0セント(15.4円)である。

<目標>・2012年に策定された新全国廃棄物計画において、食品廃棄物については、「2018年までに家庭・レストラン・小売店からの食品廃棄物の分別収集を徹底し、全廃棄物量の少なくとも50%を生物的処理し堆肥として利用、さらに少なくとも40%を嫌気性消化し、エネルギー利用する」ことが目標に定められている。・自然保護庁は、2011年4月に環境目標諮問委員会が政府に提出した『環境システムにおける指標』に基づいて、食品廃棄物について、2015年までに2010年時の排出量の20 %を削減するという目標を設定している。

<施策>・食品産業からの食品廃棄物など、分別された有機性廃棄物を原料とするメタン化、コンポスト化の工場の生成物には、品質を保証する証明書が発行される。

<目標>・2008年に廃棄物エネルギー化細部推進目標を発表し、固形燃料/有機性バイオガスエネルギー利用量は、2008年時点では合計22万トンであるが、2020年までには1,218万トン利用すること等を目標としている。・2010年2月から“環境に優しい食文化造成とエネルギー節約で「低炭素グリーン成長」実現”というビジョンと“2012年まで生ごみ発生量20%以上削減”という目標で生ごみ削減従量対策を推進している 。

<施策>・食品廃棄物のエネルギー化を促進するため、2008年には248箇所の食品廃棄物エネルギー化施設に対して1兆4,480億ウォンが投入され、リサイクル工業促進ファンドにより2013箇所の廃棄物のエネルギー化施設の開発や研究に対して7310億ウォンが投入されている 。・再生可能エネルギーの導入支援策として、再生可能エネルギーにより供給された電力の取引価格が、国の定める基準価格より低い場合、その電気を供給した発電事業者に基準価格と電力取引価格の差額を電力産業基盤基金から支援する発電差額支援制度がある。バイオガス発電の基準価格は5.7円/kWh~6.7円/kWhに設定されている。

1.41

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2.地方自治体における廃棄物処理の実態調査

2.1 調査概要

食品リサイクル制度の見直しに向けた議論を行っていくために、制度の見直しに資する基礎的

な情報を得ることを目的として、全自治体および一部事務組合における事業系生ごみの処理・リ

サイクル等の把握を行った。食品リサイクル法では、特に小売・卸売業や飲食店から排出される

事業系一般廃棄物の食品廃棄物(事業系生ごみ)の再生利用等実施率の向上が課題となっている

ため、地方自治体における食品廃棄物の受け入れ可能施設における受入実績や、食品リサイクル

に関する取組み状況を把握した。 なお、本調査に用いたアンケート調査票は巻末に掲載した。

(1)調査実施期間

アンケート調査発送回収期間:2012 年 10 月 3 日~2012 年 11 月 30 日 (2)調査発送・回収方法

環境省廃棄物対策課殿より都道府県の一般廃棄物処理実態調査のご担当部署に対して、本調査

への協力依頼メールを送付いただき、都道府県ご担当者より自治体ご担当者に調査票をメール送

付いただいた。調査票は、各自治体より三菱総合研究所にメールにて返信いただいた。 (3)回収結果

回答の回収率は、自治体・一部事務組合の合計で 59.0%であった。

表2.1-1 回収結果

全体数 回答数 回収率

自治体 1,742 981 56.3%

一部事務組合 428 299 69.9%

合計 2,170 1,280 59.0%

2.1

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2.2 調査結果

「平成 22 年度一般廃棄物処理実態調査」の調査結果も交え、以下に、自治体における事業系生

ごみの処理・リサイクルに係る実態等についてとりまとめた。 (1)自治体・一部事務組合における生ごみの処理・リサイクル状況について

一般廃棄物処理実態調査(平成 22 年度実績)によると、自治体・一部事務組合の保有する生ご

みや生ごみを含む可燃ごみ・混合ごみの処理・リサイクル施設数は以下のとおりである。各施設

の処理量に環境省「平成 23 年度廃棄物の広域移動対策検討調査及び廃棄物等循環利用量実態調査

報告書」(平成 21 年度実績値)における厨芥類組成比率を乗じて生ごみ量を推計すると、全国の

自治体・一部事務組合では、約 1,479 万トンの生ごみの処理・リサイクルが行われていることと

なる。

表2.2-1 自治体・一部事務組合の保有する生ごみの受入施設の状況

受入施設種類 施設数 処理量

(千 t/年)

うち生ごみ

(千 t/年)

焼却施設(溶融施設含む) 1,245 34,946 14,153

固形燃料化施設(RDF) 57 650 517

メタン化施設 3 24 18

BDF化施設 8 1 1

資源化等を行う施設 71 140 100

合計 1,384 35,761 14,789

注1)生ごみ処理量は、環境省「平成 23 年度廃棄物の広域移動対策検討調査及び廃棄物等循環利用量

実態調査報告書」の厨芥類組成比率(焼却施設 40.5%、燃料化施設 79.6%、メタン化施設 75.4%、

堆肥化施設 71.1%)を全体量に乗じて算出した。

注2)資源化等を行う施設には、堆肥化施設、堆肥化とメタン化の一体施設、飼料化施設(1 件のみ)

が含まれているため、注1)の堆肥化施設の厨芥類組成比率を乗じて生ごみ処理量を算出した。

注3)BDF 化施設については厨芥類組成比率を 100%とみなした。 (出所)環境省『平成 22 年度一般廃棄物処理実態調査』 一方、今回のアンケートでは、自治体・一部事務組合が保有する生ごみの受入施設について、

施設種類ごとに以下の施設数、処理量等を調査しており、アンケートで回答が得られた施設分に

ついて、上記と同様の方法で生ごみの処理量を推計すると、全体で 1,006 万トン、事業系生ごみ

で 302 万トンとなる。これは、全国の自治体における生ごみ処理量の 68%(=1,006 万トン÷1,479万トン)をカバーしていると考えられる。

2.2

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表2.2-2 自治体・一部事務組合の保有する生ごみの受入施設の状況(アンケート回答分)

受入施設種類

処理実績(全体) 処理実績(事業系一般廃棄物)

N 合計

(千 t/年)

うち生ごみ

(千 t/年) N

合計

(千 t/年)

うち生ごみ

(千 t/年)

焼却施設 572 21,854 8,851 517 6,871 2,783

溶融施設 48 1,764 715 41 430 174

固形燃料化・炭化施設 30 410 326 26 64 51

堆肥化施設 34 197 140 27 8 6

メタン化施設 7 42 32 7 6 5

合計 691 24,267 10,063 618 7,380 3,019

注1)生ごみ処理量は、環境省「平成23年度廃棄物の広域移動対策検討調査及び廃棄物等循環利用

量実態調査報告書」の厨芥類組成比率(焼却施設40.5%、燃料化施設79.6%、メタン化施設75.4%、

堆肥化施設 71.1%)を全体量に乗じて算出した。また、溶融施設については焼却施設の厨芥類組

成比率を用いている。

注2)飼料化施設については回収データなし

なお、全体と事業系一般廃棄物の両方の処理実績の回答があった 614 施設に限定すると、生ご

みの全体処理量は 911 万トン、事業系一般廃棄物の生ごみ処理量は 302 万トンであり、生ごみ中

の事業系一般廃棄物の割合は 33.1%であることから、全国の自治体で処理されている事業系一般

廃棄物の生ごみ量は 489 万トン(=1,479 万トン×33.1%)と推計される。

2.3

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(2)事業系生ごみの処理状況について

自治体・一部事務組合が焼却施設、溶融施設、固形燃料化・炭化施設において受け入れている

事業系生ごみの区分は「可燃ごみ」が 70%以上となっている。堆肥化施設、メタン化施設におい

ては、「生ごみ」が 90%以上となっている。

図2.2-1 受入れている事業系生ごみのごみ区分 <自治体・一部事務組合施設>

注)飼料化施設については回収データなし

民間施設においても、焼却施設、溶融施設、固形燃料化・炭化施設においては主に「可燃ごみ」

として受け入れられている。堆肥化施設、メタン化施設においては、主に「生ごみ」として受け

入れられている。

図2.2-2 受入れている事業系生ごみのごみ区分 <民間施設>

11%

25%

6%

0%

0%

83%

71%

81%

0%

0%

2%

2%

6%

90%

100%

1%

0%

3%

3%

0%

3%

2%

3%

8%

0%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

焼却施設(n=633)

溶融施設(n=51)

固形燃料化・炭化施設(n=31)

堆肥化施設(n=39)

メタン化施設(n=7)

混合ごみ 可燃ごみ 生ごみ その他 無回答

16%

50%

0%

1%

0%

0%

68%

0%

100%

1%

4%

0%

0%

0%

0%

86%

67%

83%

0%

0%

0%

7%

26%

17%

16%

50%

0%

5%

4%

0%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

焼却施設(n=25)

溶融施設(n=2)

固形燃料化・炭化施設(n=1)

堆肥化施設(n=124)

飼料化施設(n=27)

メタン化施設(n=6)

混合ごみ 可燃ごみ 生ごみ その他 無回答

2.4

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自治体・一部事務組合の堆肥化施設では、生ごみと下水汚泥、し尿汚泥、浄化槽汚泥、剪定枝

の混合処理事例が確認され、メタン化施設では、下水汚泥、し尿汚泥、浄化槽汚泥との混合処理

事例が確認された。

表2.2-3 生ごみ以外の受入有機性廃棄物 <自治体・一部事務組合施設>

受入施設種類 回答数 下水汚泥 し尿汚泥 浄化槽汚泥 剪定枝 その他

焼却施設

633 15 87 43 392 37

- 2.4% 13.7% 6.8% 61.9% 5.8%

溶融施設

51 9 18 12 36 7

- 17.6% 35.3% 23.5% 70.6% 13.7%

固形燃料化・炭化施設

31 1 0 0 17 4

- 3.2% 0.0% 0.0% 54.8% 12.9%

堆肥化施設

39 4 9 7 6 5

- 10.3% 23.1% 17.9% 15.4% 12.8%

メタン化施設

7 2 3 4 0 2

- 28.6% 42.9% 57.1% 0.0% 28.6%

注)飼料化施設については回収データなし

2.5

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民間の堆肥化施設では、生ごみと下水汚泥、し尿汚泥、浄化槽汚泥、剪定枝との混合処理事例

が確認された。飼料化施設においては、剪定枝との混合処理事例が1件確認された。メタン化施

設においては、浄化槽汚泥、剪定枝との混合処理事例が1件ずつ確認された。

表2.2-4 生ごみ以外の受入有機性廃棄物 <民間施設>

設問文 回答数 下水汚泥 し尿汚泥 浄化槽汚泥 剪定枝 その他

焼却施設

25 5 3 2 9 3

- 20.0% 12.0% 8.0% 36.0% 12.0%

溶融施設

2 1 1 1 1 0

- 50.0% 50.0% 50.0% 50.0% 0.0%

固形燃料化・炭化施設

1 0 0 0 0 0

- 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0%

堆肥化施設

124 15 13 8 25 14

- 12.1% 10.5% 6.5% 20.2% 11.3%

飼料化施設

27 0 0 0 1 2

- 0.0% 0.0% 0.0% 3.7% 7.4%

メタン化施設

6 0 0 1 1 2

- 0.0% 0.0% 16.7% 16.7% 33.3%

2.6

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(3)自治体・一部事務組合における事業系廃棄物受入施設の処理計画の実態について

自治体における一般廃棄物の処理・リサイクル事業は、廃棄物処理計画に基づいて実施されて

いる。一般廃棄物処理実態調査(平成 22 年度実績)によると、処理計画を策定している自治体数

は 1,650 であり、策定していない自治体数は 100 であった。 アンケート調査では、処理・リサイクル施設ごとに、処理計画量と処理実績量を確認しており、

処理計画に対する計画達成率をみると、以下のように焼却施設や溶融施設、固形燃料化・炭化施

設ではほぼ 100%の達成率となっている。 家庭系ごみと事業系ごみのそれぞれについて計画量を設定している施設もあり、事業系一般廃

棄物に限定した計画達成率も、上記施設についてはほぼ 100%の達成率を示しており、事業系一

般廃棄物の処理も重要な位置を占めていることがわかる。

表2.2-5 処理計画の達成率<自治体・一部事務組合>

受入施設種類 全体 事業系一般廃棄物

N 平均(%) N 平均(%)

焼却施設 572 94% 172 107%

溶融施設 48 95% 13 101%

固形燃料化・炭化施設 30 94% 6 96%

堆肥化施設 34 63% 13 68%

飼料化施設 0 - 0 -

メタン化施設 7 63% 4 51%

2.7

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(4)事業系一般廃棄物の処理コスト、処理手数料について

1)処理コストの実態

アンケート調査では、自治体および民間の処理・リサイクル施設ごとに、処理能力、処理実績、

初期投資額、補助金額、耐用年数、ランニングコスト等を把握した。処理能力あたりの初期投資

額、t(処理量)あたりランニングコストを算出すると以下のとおりであり、処理能力あたりの

初期投資額、t(処理量)あたりランニングコストのいずれにおいても、自治体・一部事務組合

施設の方が民間施設よりも高額となっている。

表2.2-6 初期投資額・ランニングコスト<自治体・一部事務組合>

受入施設種類

処理能力(t/日)

あたりの初期投資額

t(処理量)あたり

ランニングコスト

N 平均(百万円) N 平均(千円)

焼却施設 210 96 490 30

溶融施設 18 80 43 32

固形燃料化・炭化施設 13 162 28 80

堆肥化施設 15 129 25 56

飼料化施設 0 - 0 -

メタン化施設 5 111 6 72

表2.2-7 初期投資額・ランニングコスト<民間施設>

受入施設種類

処理能力(t/日)

あたりの初期投資額

t(処理量)あたり

ランニングコスト

N 平均(百万円) N 平均(千円)

焼却施設 1 71 7 31

溶融施設 0 - 1 24

固形燃料化・炭化施設 0 - 0 -

堆肥化施設 35 72 42 39

飼料化施設 4 34 3 57

メタン化施設 2 75 0 -

2.8

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129

72

0

25

50

75

100

125

150

自治体・一部事務組合施設

民間施設

56

39

0

10

20

30

40

50

60

70

自治体・一部事務組合施設

民間施設

図2.2-3 堆肥化施設の処理能力あたり初期投資額、tあたりランニングコストの官民比較

注1)処理能力(t/日)あたり初期投資額=初期投資額÷(受入施設処理量計画÷365)

t(処理量)あたりランニングコスト

=ランニングコスト(用役費+人件費+その他維持管理費用の合計)÷受入施設処理量実績

注2)堆肥化施設について、自治体施設全体で受け入れている生ごみに占める事業系生ごみの割合は

4%であり、民間施設で受け入れている事業系生ごみの割合は 52%であった。

t (処理量)あたり ランニングコスト

処理能力(t/日) あたりの初期投資額

(百万円) (千円)

2.9

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2)処理手数料の実態

一般廃棄物処理実態調査によると、事業系一般廃棄物に対して、収集手数料を徴収している自

治体は 1,410 件、直接搬入手数料を徴収している自治体は 1,502 件であり、事業系一般廃棄物の

収集・処理に対して、事業者に費用負担を課していることが一般的である。

表2.2-8 事業系一般廃棄物の収集、受入に際しての手数料の有無状況

(出所)環境省『平成 22 年度一般廃棄物処理実態調査』 しかし、自治体における事業系一般廃棄物の収集、持ち込み手数料は、実際の処理・リサイク

コストよりも低く抑えられており、民間の食品リサイクル事業の事業阻害要因になっているとの

指摘がある。以下の表は、自治体と民間の事業系生ごみの受入における手数料水準と手数料によ

るランニングコスト、フルコスト(=ランニングコスト+減価償却費)の補填率を示したもので

ある。 表2.2-9 事業系生ごみの受入手数料、ランニングコスト補填率、フルコスト補填率

<自治体・一部事務組合>

注1)手数料収入によるランニングコスト補填率

=事業系生ごみの受入手数料÷処理量あたりランニングコスト

手数料収入によるフルコスト補填率

=事業系生ごみの受入手数料÷(処理量あたりランニングコスト+処理量あたり減価償却費)

注2)減価償却費は初期投資額÷耐用年数として算出。

初期投資額は補助金額を控除した額である。

有料 無料 一部

有料

収集

(受入)

無し

混合ごみ収集(受入)自治体 混合ごみ

収集(受

入)無し 有料 無料

一部

有料

収集手数料 1,410 43 9 286 35 0 0 251

直接搬入手数料 1,502 46 14 184 38 3 1 142

受入施設種類

事業生ごみの

受入手数料

手数料収入による

ランニングコスト補填率

手数料収入による

フルコスト補填率

N 平均(円/kg) N 平均(%) N 平均(%)

焼却施設 496 13 401 78.5 127 57.6

溶融施設 45 14 38 67.1 13 35.4

固形燃料化・炭化施設 23 11 20 24.3 10 11.8

堆肥化施設 15 7 11 41.8 3 17.6

飼料化施設 0 - 0 - 0 -

メタン化施設 5 10 4 36.8 0 -

2.10

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表2.2-10 事業系生ごみの受入手数料、ランニングコスト補填率、フルコスト補填率

<民間施設>

民間施設の場合、処理手数料によるランニングコストの補填率は 100%を超える水準であるが、

自治体・一部事務組合では焼却施設や溶融施設で7~8 割程度、固形燃料化、堆肥化、メタン化

などでは 2~4 割に抑えられていることがわかる。

7

17

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

自治体・一部事務組合施設

民間施設

41.8%

17.6%

115.4%

76.7%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

120%

140%

手数料収入による

ランニングコスト補填率

手数料収入による

フルコスト補填率

自治体・一部事務組合施設 民間施設

図2.2-4 堆肥化施設の手数料、ランニングコスト・フルコスト補填率の官民比較

注)堆肥化施設について、自治体施設全体で受け入れている生ごみに占める事業系生ごみの割合は 4%

であり、民間施設で受け入れている事業系生ごみの割合は 52%であった。

以下の図は、都道府県別に焼却施設の kg あたり手数料と kg あたり処理コストの平均値を示し

たものである。 焼却施設については、処理量あたりランニングコストは全国平均で 19.1 円であるが、搬入手数

料は全国平均で 13.1 円と低く抑えられており、民間のリサイクル施設の搬入手数料との差を広げ

る結果となっている。

受入施設種類

事業生ごみの

受入手数料

手数料収入による

ランニングコスト補填率

手数料収入による

フルコスト補填率

N 平均(円/kg) N 平均(%) N 平均(%)

焼却施設 8 20 5 119 4 97.0

溶融施設 1 2 1 8 1 6.0

固形燃料化・炭化施設 1 10 0 - 0 -

堆肥化施設 51 17 29 115 23 76.7

飼料化施設 5 29 1 152 1 149.6

メタン化施設 1 20 0 - 0 -

事業生ごみの受入手数料

(円/kg)

2.11

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図2.2-5 都道府県別の焼却施設の処理量あたりランニングコスト<自治体・一部事務組合施設>

注)県平均については、受入処理量(実績)に基づく加重平均を行っており、全国平均については、県ごとの人口に基づく加重平均を行った。(人口データは

平成 22 年国勢調査を利用)。

図2.2-6 都道府県別の焼却施設の手数料<自治体・一部事務組合施設>

注)県平均については、受入処理量(実績)に基づく加重平均を行っており、全国平均については、県ごとの人口に基づく加重平均を行った。

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

北海道

青森県

岩手県

宮城県

秋田県

山形県

福島県

茨城県

栃木県

群馬県

埼玉県

千葉県

東京都

神奈川県

新潟県

富山県

石川県

福井県

山梨県

長野県

岐阜県

静岡県

愛知県

三重県

滋賀県

京都府

大阪府

兵庫県

奈良県

和歌山県

鳥取県

島根県

岡山県

広島県

山口県

徳島県

香川県

愛媛県

高知県

福岡県

佐賀県

長崎県

熊本県

大分県

宮崎県

鹿児島県

沖縄県

加重平均(円/kg)

民間リサイクル

肥料化平均 18.2 円

民間リサイクル

飼料化平均21.4円/kg

民間リサイクル

メタン化平均 25.0 円

自治体の搬入手数料

全国平均 13.1円/kg

ランニングコスト

全国平均 19.1円/kg

2.12

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(5)廃棄物処理法の運用について

1)一般廃棄物処理計画について

市町村は廃棄物処理法第6条の規定により、当該市町村の区域内の一般廃棄物の処理に関する

計画(一般廃棄物処理計画)を定めなければならない。しかし、自治体もしくは一部事務組合に

よる一般廃棄物処理計画の策定率は約 95%であり、一般廃棄物処理計画を策定していない自治体

が見られる。

一般廃棄物処理計

画を策定している

83%

自治体単位では策

定していないが、

一部事務組合単位

で一般廃棄物処理

計画を策定してい

12%

一般廃棄物処理計

画は策定していな

5%

図2.2-7 一般廃棄物処理計画の策定状況<自治体> (n=942)

注)本設問には自治体のみが回答しているが、「一部事務組合単位で一般廃棄物処理計画を策定してい

る」との選択肢があることから、自治体・一部事務組合を含めた一般廃棄物処理計画の策定状況を

示している。

2.13

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市町村は廃棄物処理法第6条の規定により、一般廃棄物処理計画を定め、又はこれを変更した

ときは、遅滞なく公表する義務がある。実際には、策定された一般廃棄物処理計画の約 81%が公

表されており、約 19%については公表されていない。

一般廃棄物処理計

画を公表している

81%

一般廃棄物処理計

画は公表していな

19%

図2.2-8 一般廃棄物処理計画の公表 (n=996)

<自治体・一部事務組合>

環境省では、一般廃棄物処理計画の策定及び適用に当たっての重要事項を取りまとめ、ごみ処

理に関する基本的な事項を定める「ごみ処理基本計画策定指針」を策定している。一般廃棄物処

理計画を策定している自治体・一部事務組合のうち約 72%が「ごみ処理基本計画策定指針」に従

った計画策定を行っている。

策定している

72%

策定していない

28%

図2.2-9 「ごみ処理基本計画策定指針」の利用状況(n=984)

<自治体・一部事務組合>

2.14

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2)事業系一般廃棄物について

食品リサイクル法では、自治体には明確な役割が示されていない。また、焼却施設等の処理計

画上、事業系生ごみも重要な位置を占めている場合があり、そのような場合には、民間によるリ

サイクルを促進するよりもむしろ自治体の処理施設での処理量を確保するインセンティブが働く

と考えられる。 下図は、アンケート調査において、自治体の食品リサイクルへの取組み意向を尋ねた結果であ

るが、積極的に取組んでいるとする自治体が4%、可能な範囲で取組んでいるとする自治体が

87%であった。

積極的に、食品循

環資源の再生利

用等の促進に取

組んでいる

4%

可能な範囲で、食

品循環資源の再

生利用等の促進

に取組んでいる

87%

自治体の方針(又

は認識)としては、

食品循環資源の

再生利用等の促

進に取組んでいな

い9%

図2.2-10 事業系一般廃棄物や産業廃棄物の食品循環資源のリサイクルに関する対応

<自治体>(N=502)

下図は、アンケート調査において、自治体がどのような食品リサイクルに関する取組み、対応

をしているかについて把握したものである。食品循環資源の再生利用等に関する取り組みとして

上位に挙がっている項目は、「再生利用事業者への一般廃棄物処分業許可の付与」、「パンフレット

の配布」、「登録再生利用事業者の紹介・情報提供」である。食品循環資源の再生利用等に関する

取り組みのうち、廃棄物処理計画に記載されている割合はおよそ半数以下である。 なお、どの取組みもしていないという自治体は 577 件、59%であった。

2.15

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図2.2-11 事業系一般廃棄物や産業廃棄物の食品循環資源の再生利用等に関する対応

<自治体> (N=981)

103

50

92

35

67

115

42

1

50

38

30

33

15

17

30

20

0

27

0 20 40 60 80 100 120 140

制度に関するパンフレットの配布

セミナー・講習会の実施

登録再生利用事業者等の紹介・情報提供

再生利用事業者の事業支援(資金援助、収集の仕

組みづくり、再生利用製品のPRなど)

収集運搬業者や再生利用事業者への再生利用業指

定証(廃棄物処理法施行規則第2条第2号及び第

2条の3第2号)の交付

再生利用事業者への一般廃棄物処分業許可の付与

自治体の焼却施設・最終処分施設からの排除

貴自治体が保有している生ごみ等のリサイクル施

設におけるリサイクルの証明証書の発行

焼却施設・最終処分施設の処理原価に相当する受

入料金の設定

取組み・対応内容 うち、廃棄物処理計画に記載されているもの

(件)

2.16

Page 58: 1.海外の食品リサイクル制度の現状及び食品リサイクル等の ......ON FOOD WASTE ACROSS EU 27』(2010 年))。 排出された動植物性残さのうち、99%は飼料等およびバイオガ

また、食品リサイクルに対する取組意向で、積極的に取組むとした自治体と、可能な範囲で取

組むとした自治体とで上記の具体的な取組み・対応の実施率を比較したところ、取り組みに差が

見られたのは「パンフレットの配布」「セミナー・講習会の実施」「登録再生利用事業者等の紹介・

情報提供」であった。

図2.2-12 事業系一般廃棄物や産業廃棄物の食品循環資源の再生利用等に関する対応

<食品循環資源の再生利用等に取り組んでいる自治体>

40.9%

40.9%

31.8%

18.2%

9.1%

22.7%

22.7%

0.0%

13.6%

16.5%

7.6%

17.4%

6.9%

11.0%

20.1%

7.6%

0.2%

5.7%

0% 10% 20% 30% 40% 50%

制度に関するパンフレットの配布

セミナー・講習会の実施

登録再生利用事業者等の紹介・情報提供

再生利用事業者の事業支援(資金援助、収集の仕組みづく

り、再生利用製品のPRなど)

収集運搬業者や再生利用事業者への再生利用業指定証(廃

棄物処理法施行規則第2条第2号及び第2条の3第2…

再生利用事業者への一般廃棄物処分業許可の付与

自治体の焼却施設・最終処分施設からの排除

貴自治体が保有している生ごみ等のリサイクル施設におけ

るリサイクルの証明証書の発行

焼却施設・最終処分施設の処理原価に相当する受入料金の

設定

食品資源循環の再生利用等に積極的に取り組んでいる(N=22)

食品資源循環の再生利用等に可能な範囲で取り組んでいる(N=437)

2.17

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事業系一般廃棄物や産業廃棄物の食品循環資源の再生利用等に関する対応を見たところ、「収集

運搬業者や再生利用事業者への再生利用業指定証の交付」または「一般廃棄物処分業許可の付与」

に取り組んでいない自治体は 85%(833 件)あり、その自治体にそれらを与えていない理由を尋

ねたところ、「指定証や許可は与えない方針である」とした自治体が 60%を占めた。

事業者等から

の申し出や相

談がないため

34%

事業者等から

の申請につい

て検討したが

要件を満たさ

なかったため

5%

指定証や許可

は与えない方

針であるため

60%

その他

1%

図2.2-13 収集運搬業者や再生利用事業者に再生利用業指定証や

一般廃棄物処分業を与えていない理由

<再生利用業指定証の交付や廃棄物処分業許可の付与に取組んでいない自治体> (N=833)

下図は、自治体における今後の取組み意向として最も強いものを把握した結果である。これに

よると、事業系生ごみの受入手数料を処理原価水準に設定することを選択した自治体が約7割で

あった。

事業系生ごみも受

入れる食品リサイ

クル施設の建設・

保有の検討

8%

事業系生ごみも対

象とする食品リサ

イクル施設の誘致

や起業支援

9%

事業系生ごみを受

入れている焼却施

設や最終処分施設

の処理原価に相当

する受入料金の設

69%

その他

14%

図2.2-14 今後の取り組み意向 <自治体> (N=605)

2.18

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自治体の受入手数料が処理原価水準に設定されることで、競合する民間のリサイクル事業のコ

スト競争力が高まることが期待される。しかし、「事業系生ごみの受入手数料を処理原価水準に設

定する」を選択した自治体のうち、「指定証や許可を与えない方針である」とした自治体が 75%を占めており、自治体の受入手数料が処理原価の水準に近づいたとしても、これらの自治体では、

民間事業者が食品リサイクル事業を実施することは困難であると考えられる。

図2.2-15 今後の取り組み意向

<今後の取り組み意向として、「事業系生ごみを受け入れている焼却施設や最終処分施設の処理原

価に相当する受入料金の設定」と回答した自治体> (N=376)

また、一般廃棄物処理実態調査によると、そもそも原価計算を行っている自治体は少なく、原

価計算を導入していない自治体が 1,287 自治体あり、一般廃棄物会計基準を導入していない自治

体や独自の方法で原価計算を行っている自治体において、国が導入を薦めている一般廃棄物会計

基準の導入意向は低く、処理原価に見合った手数料設定を実際に行うことのできる自治体は多く

ないと考えられる。

有り,

8

検討

中,

237

なし,

1,390

廃棄物会計基準の導入意向

52

47

292

1,287

0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400

一般廃棄物会計基準

廃棄物処理事業原価計算の手引き

市町村の独自方法

導入していない

自治体数

現状の原価計算方法

(平成19年6月 環境省)

(昭和54年(社)全国都市清掃会議)

図2.2-16 自治体の原価計算への取り組み状況

(出所)環境省『平成 22年度一般廃棄物処理実態調査』

事業者等からの

申し出や相談が

ないため22%

事業者等からの

申請について検

討したが要件を

満たさなかったた

め3%

指定証や許可は

与えない方針で

あるため75%

その他0%

2.19