18 班 Insulin による CCB 中毒の治療 Ca channel blockers, Ca 拮抗薬
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18 班
Insulin による CCB 中毒の治療
Ca channel blockers, Ca 拮抗薬鹿島和孝 下地直紀土山健一郎 村上圭吾中村 靖
問題提起
次のような患者に対しどのような治療を行えばよいか?
症例-1
34 歳 女性 既往歴:高血圧、腎不全 2.5mg/ 錠のアムロジピン( CCB)
を 12 錠服用した( 12 倍量を服用 ) 低血圧、徐拍を引き起こしている ※糖尿病ではない
症例 2ー 48歳 男性 既往歴:高血圧、慢性閉塞性肺疾患
うっ血性心不全、うつ病
ジルチアゼム( CCB) を多量に服用しているのを目撃される
低血圧、徐拍を引き起こしている ※糖尿病ではない
Ca 拮抗薬 (CCB) 虚血性心疾患や高血圧の治療薬として用い
られる ①フェニルアルキルアミン系( PAA 系) ベラパミル ②ジヒドロピリジン系( DHP 系)‥血管選
択性 ニフェジピン、アムロジピン ③ベンゾチアゼピン系( BTZ 系) ジルチアゼム
Ca 拮抗薬
作用:冠動脈拡張
副作用:ニフェジピン 血圧低下→圧受容器反射→頻脈
ベラパミル、ジルチアゼム 心拍数減少、房室ブロック、心不全
禁忌:低血圧、心原性ショック、妊婦
Ca 拮抗薬
作用機序
L 型 Ca チャネルに結合しこれを遮断し Ca チャネルが開けない状態にする。血管平滑筋および心筋細胞内への Ca2+ 流入を遮断し筋の興奮収縮連関を抑制する。
(新薬理学入門 p143 参照)
NO
心拍数
血圧 (mmHg)
( 収縮期 / 拡張期 )
血糖値(mg/dl)
1 60 40/ ー 3252 68 60/40 170
治療前のバイタルサイン・血糖値
徐拍、低血圧のほかに高血糖を示している
CCB 中毒の従来の治療法
点滴 Ca ドパミン ドブタミン ノルエピネフリ
ン グルカゴン
各患者へ行った治療患者14L点滴20μg/kg/min ドパミン10μg/kg/min ドブタミン14μg/kg/min ノルエピネフ
リン5mg グルカゴン※Ca の投与は見合わせた
⇒これらの治療ではバイタルサイン(心拍数、血 圧)の変化はなかった (回復しなかった )
患者22L点滴20μg/kg/min ドパミン10μg/kg/min ドブタミン4g グルコースカルシウ
ム塩
高インスリン 正常血糖値治ー療
hyperinsulinemia-euglycemia therapy
新しい治療法
今まで述べた従来の治療法がうまく効かなかったときに補助的に用いる方法
インスリンの持続的投与
(今回は 0.5 IU/kg/h の持続的投与)
インスリン
膵臓ランゲルハンス島 β細胞から分泌される血糖値を低下させるホルモン
機序:ブドウ糖の細胞内への取り込みを促進
インスリンレセプターは肝臓、脂肪組織、筋肉に多い
インスリンの分泌と標的臓器の効果
肝臓
膵臓
脂肪組織
筋肉
腸
インスリン
迷走神経
基質
+分泌
グリコーゲン合成↑
タンパク質合成↑
糖新生↓
グルコース取り込み↑
脂肪合成↑(分解↓)
グリコーゲン合成↑
タンパク質合成↑
アミノ酸取り込み↑
グルコース取り込み↑
K 取り込み↑+
+分泌
ランゲルハンス島 β細胞
インスリン分泌調節
ブドウ糖代謝により細胞内の ATP が上昇
→ β細胞の KATP チャネルが遮断
→膜電位が脱分極
→電位依存性 L 型 Ca チャネルが開く
→〔 Ca2+〕 i 上昇
→インスリン分泌 ( 興奮分泌連関 )
B 細胞におけるインスリン分泌機序とその調節因子
グルコース
Ca2+
Gi
Aキナーゼ
インス リン
インス リン
Gs AC
PLC Gq
IP3
Ca2+
cAMP
ATP
グリベンクラミド
+
-
+
P
脱分極+
KATP
-
ATP
ACh
[K ] + 0↑
++
Ca ストア
SU 受容体
+K ↓チャネル活性+
+ -
L Ca 型チャネル
2+
(M4 )受容体
(2 )受容体 (2 )受容体
グルカゴン ソマトスタチン
アドレナリン
[A ]細胞 [D ]細胞
ジアゾキシド+
(新薬理学入門p26表2 -1一部抜粋 )
*~ 100 mM Ba2+ を電荷キャリアーとして測定したもの
電位依存性 Ca2+ チャネルの分類と系統発生的関係
型
L (long lasting) N (neuronal) P (小脳 Purkinje)
T (transient)
単一チャネルコンダクタンス
25 pS 12~ 20 pS 10~ 12 pS 8 pS
活性化電位(以上)
高 ( 心筋: -40mV) (神経: -10mV)
高 (-20mV) 中 (-50mV) 低 (-70mV)
ブロッカー( 遮断薬 )
DHP 系 Ca 拮抗薬ベラパミルジルチアゼムCalciseptine(ヘビ毒 )
ω-conotoxin GVIA (貝毒 )
ω-agatoxine IV(サソリ毒 )
フルナリジン(非選択的 )Ro 40-5967U-92032
局在 興奮性細胞全般 ニューロンのみ ニューロン 興奮性細胞
機能 興奮収縮連関(骨格筋、心筋、平滑筋)興奮分泌連関( 内分泌細胞、ある種のニューロン)
神経伝達物質の遊離Gタンパク質共役型受容体により調節される
神経伝達物質の遊離神経活動
ペースメーカー活動(洞房結節、ニューロン、内分泌細胞)
α1 (%) (CLUSTAL W)サブユニット相同性
100806040200
高閾値活性型
低閾値活性型
L C型( )
L D型( )
L F型( )
L S型( )
P/Q A型( )
N B型( )
R E型( )
T G型( )
T H型( )T I型( )
C. eleglans C54
Na電位依存性 +チャネル
DHP感受性
DHP非感受性
非選択性陽イオンチャネル
K電位依存性 + チャネル ( 遺伝子重複 ) 2回
電位依存性Ca2+チャネル
電位依存性 Ca2+ チャネルの分子進化系統樹心臓 平滑筋・神経
内分泌
骨格筋
網膜
CCB 中毒のメカニズム
Ca チャネルの遮断
(低用量では主に平滑筋、心筋で遮断の影響が現れる) ↓
高用量では D クラス L 型チャネルも遮断 ↓
インスリンの分泌が不十分で高血糖となる(低インスリン血症)
低インスリン血症の危険性
低インスリン血症は筋細胞によるグルコースの取り込みを
阻害 ↓
心筋および平滑筋の収縮連関が大いに抑制される
心 筋ATP
ATP
実際に行われた治療
高インスリン 正常血糖値治療(ー 6時間投与)
NO
インスリンの投与量
心拍数 血圧 補助的なグルコース投与
1 0.5 IU/kg/h 100 150/60
なし
2 0.5 IU/kg/h 65 115/60
10%ブドウ糖液を 100ml/h
見解
CCB 中毒による循環性ショックに対する治療として、従来の治療法に加えて高インスリン 正常ー血糖値治療は可能であり、安全であり、十分効果があると言える。
問題① 心筋の収縮機能について誤っているものを選べ。
1.収縮にはグルコースが必要である。 2.心筋に存在するアドレナリンリセプタ-
は β1 で ある。 3.収縮に必要な Ca は主に細胞外からの流入
に 依存する。 4.低インスリン血症のとき収縮力が低下す
る。 5.交感神経における収縮増強には cAMP に
よる A キナーゼ活性化が必要である。
×
問題② インスリンについて誤っているものを選べ。
1.膵臓ランゲルハンス島 β細胞から分泌されるホルモンで血糖値を低下させる。
2.ブドウ糖の細胞内への取り込みとその利用を促進する。
3.ランゲルハンス島 β細胞の KATP チャネルが閉じることはインスリン分泌の引き金となる。
4.ランゲルハンス島 β細胞の Ca チャネルは心筋、平滑筋と同様に L 型である。
5.血中のインスリン濃度が低くなると筋収縮に必要なグルコースの血中濃度が上がるので筋収縮は促進される。
×
『薬はリスク ! 』なのだ
監修
柳澤輝行