1605 TOSHIBA FIRST Symposium 2016INNERVISION (31・5) 2016 別冊付録 3 TOSHIBA FIRST Symposium...

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整形外科領域を中心としたFIRSTの初期経験

─ 小児循環器領域におけるFIRSTの可能性

(JCHO)

─ Forward projected model-based Iterative Reconstruction SoluTion

東芝メディカルシステムズ株式会社 CT 営業技術 兼 臨床アプリ研究担当

座長:陣崎 雅弘慶應義塾大学医学部放射線科学教室教授

企画:東芝メディカルシステムズ 株式会社問い合わせ先: CT営業部〒108-0022 東京都港区海岸 3-20-20

(ヨコソーレインボータワー 12 階)TEL 03-6369-9642http: //www.toshiba-medical.co.jp

制作・発行:株式会社インナービジョン〒113-0033 東京都文京区本郷 3-15-1TEL 03-3818-3502http://www.innervision.co.jp

印刷 欧文印刷株式会社

禁・無断転載

座長:粟井 和夫広島大学大学院医歯薬保健学研究院放射線診断学研究室教授

Session 1

Session 2

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2  INNERVISION (31・5) 2016 別冊付録

 「FIRST」は,Full IR(逐次近似再構成)技術です(図 1)。CT で収集した raw data と初期画像の順投影から作成したraw dataの差異を画像に逆投影する処理を繰り返し,再構成関数を用いずに画像を作成します。このワークフローの中にいくつかのモデルを取り入れることで,従来の再構成では成し得なかったさまざまなメリットが得られます。例えば,焦点サイズや検出器マトリックスサイズを考慮したオプティクスモデルを適用することで,従来よりも精度の高いバックプロジェクションが可能となり,FBP よりも高い空間分解能を得ることができます。また,統計学的ノイズモデルを適用すれば,劇的なストリークアーチファクト改善効果が得られます。このようにFIRSTは,再構成関数からの脱却とモデルベースの投入によって,大幅な画質改善効果が期待できます。 FIRSTの特長をまとめると,①被ばく線量の低減,②空間分解能の向上,③低コントラスト検出能の向上,④ワークフロー性を重視した再構成速度,⑤対象部位に合わせた最適化パラメータの適用,となります。本講演では,この5つの特長についてご紹介します。

Regularization Model Anatomical-Based

Original Projection

Data

Forward-projected

Data

Comparison Engine

+ InputImage

Data Fidelity Model

Update

Optics Model

System Model

ConebeamModel

StatisticalNoise Model FIRST

Image

Adaptive Iteration for IQ Optimization

Artifact Reduction/ Spatial Resolution

Improvement

Noise Reduction/ Fine Structure Preservation

図1 FIRSTのワークフロー

被ばく線量の低減

 一般撮影はきわめて低被ばくなことから検診などで用いられますが,臓器の陰になる領域や淡い陰影の診断は困難です。2つの淡い模擬結節を封入した胸部ファントムを撮影すると,一般撮影では病変の指摘が困難であることがわかります(図 2 a)。また,一般撮影と同等の被ばく線量で撮影し,FBPで再構成したCT

画像では,強いノイズやアーチファクトにより読影は困難です (図2 b)。一方,同じデータをFIRSTで再構成すると,ストリークアーチファクトがほぼ完璧に除去され,模擬結節が明瞭に描出されます(図2 c←)。このように,FIRSTは診断能を落とさずに,被ばく線量を大幅に低減できる可能性を有しています。

津島  総 東芝メディカルシステムズ株式会社 CT営業技術 兼 臨床アプリ研究担当

FIRST技術紹介─�Forward projected model-based Iterative

Reconstruction SoluTion

図2 ‌‌低線量撮影における画像

a:一般撮影ライク画像

b:FBP‌0 .1mSv

c:FIRST‌0 .1mSv

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INNERVISION (31・5) 2016 別冊付録  3

TOSHIBA FIRST Symposium 2016

空間分解能の向上 ラダーファントムを撮影した画像では,高周波強調関数を用いたFBPよりもFIRSTの方がより細かいスリットを描出できています(図3)。FIRSTでは再構成関数を用いていないため,構造辺縁におけるCT値のオーバーシュート(↓)やアンダーシュートもなく,微細構造をより正しく,かつ高い分解能で描出できることがわかります。

図3 ‌‌FBPとFIRSTの空間分解能の比較

0.5mm×80/vol-scan/120kV/300mAs/40mm/18.7mGy/74.9mGy・cm

FIRST‌LungFBP(FC51)

低コントラスト検出能の向上 低コントラスト検出能の評価法はさまざまですが,FBPと比較した視覚評価では,FIRSTにてノイズやストリークアーチファクトを低減しつつ細かな粒状性を維持できていることがわかります。また,軟部組織の低コントラスト境界が明瞭化され,診断能の観点でメリットがもたらされます(図4)。

図4 ‌‌FBPとFIRSTの低コントラスト検出能の比較(画像ご提供:藤田保健衛生大学様)

FBP(FC51) FIRST

0 . 5 mm× 80 / PF : 0 . 812 / 120 kV/ 96 〜 186 mAs / 200mm /14.3mGy/ 350.5mGy・cm /5.3mSv (K=0.015)

ワークフロー性を重視した再構成速度

 Full IRの課題は演算量の多さですが,FIRSTでは専用ユニットを用いることで,この問題を克服しています。 1ボリューム(320列,160mm)あたり約3分,また,従来のFBPやAIDR 3Dと並列での再構成処理が可能なため,通常のルーチン検査にはストレスを与えずに処理を行うことが可能 です。

対象部位に合わせた最適化パラメータの適用 FIRSTでは,Full IR内部のパラメータを部位別に最適化することで,臨床目的,対象部位に合わせた最適な調整パラメータの選択(図5)や,3種類の強度(Mild,Standard,Strong)からノイズ低減率の選択が可能です(図6)。 現時点でLung(肺野),Body〔軟部組織(ノイズ低減優位)〕,Body Sharp〔軟部組織(粒状性,先鋭度優位)〕,Cardiac(心臓全般),Cardiac Sharp〔心臓(冠動脈内腔,先鋭度優位)〕,Bone〔骨(四肢,耳小骨など)〕の6種類の部位別パラメータがあり,さらに頭部パラメータについても現在開発を進めています。頭部領域では,ビームハードニング対策,コーンビームアーチファクト対策,低コントラスト改善を目的として調整を進めています。

図5 ‌‌対象部位に合わせた最適化パラメータの適用

120kV/20mAs/2mm slice/2 .2mGy/77.1mGy・cm/1.08mSv (K=0.014)

FIRST‌Lung FIRST‌Body‌Sharp

図6 ‌‌ノイズ低減率の違いによる画像の比較

SD:15.6 SD:12.7 SD:9.6(38%低減)

高分解能 ノイズ低減

まとめ

 以上,5つの特長が示すとおり,FIRSTのコンセプトは,さらなる被ばく低減と診断能の向上です。FIRSTが実臨床現場で役立つ技術として,今後さらなる改良,開発を進めてまいります。

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4  INNERVISION (31・5) 2016 別冊付録

Session 1

小川 正人 産業医科大学病院放射線部

FIRSTの物理評価

 Full IRの最新の逐次近似画像再構成技術である「FIRST」は,①被ばく線量の低減,②空間分解能の向上,③低コントラスト検出能の向上,④ワークフロー性を重視した再構成速度,⑤対象部位に合わせた最適化パラメータの適用などの特長があるが,⑤については明確な基準がないのが 実情である。日本放射線技術学会発行の

『X線CT撮影における標準化〜GALAC-TIC〜(改定第 2 版)』にも,逐次近似画像再構成の特性として,メーカーにより挙動が異なる,検査目的による最適化が必要と記載されており,現状では画質・画像の評価法は確立されていないと言える。 本講演では,当院にて行ったFIRSTの物理評価の概要とその結果を報告する。

検討項目・方法

 汎用性のある市販のファントムや入手が容易な解析ソフトウエア(プログラム)を使用して,FIRST(Standard を使用)とFBPの評価を行った。評価項目は,①CT値の特性(挙動),②ノイズ特性(低減効果),③空間分解能の特性とし,被写体形状の影響を考慮してファントムは円形のCatPhan CTP700(テストモジュールはCTP 682 型)(Circular)と,それに楕円形のアダプタ(Body Annuli)を取り付けたもの(El l ipse)の2種類を用いた。

検討結果

1.‌‌CT値の特性‌(挙動)

 CircularとEllipseに て 各 信 号(A i r,PMP,Lung,Del-rin,Polystyrer,Teflon,Bone20%,Bone50%,LDPE,

Acrylic)とベース部の CT 値を測定し,再構成法の違いがCT値に及ぼす影響を評価した。 図1は,縦軸をCT値,横軸は水を1としたときの各信号の相対電子密度として,C T 値 の 直 線 性 を 評 価 した。管 電 圧120kVでは,CT値が−1000〜+1000のワイドレンジにおいて,各信号のCT 値の直線性は担保されていた。Bone の20%と50%については,相対電子密度とCT 値にほかの信号との相関がないため直線から外れている。また,管電圧を変化させる(80,100,135 kV)と線質への影響が若干見られるが,FIRSTとFBPに有意差はなかった。 次に,ベース部と各信号におけるCT値の変化を評価した。線質の影響を考慮し,横軸は管電圧とした。ベース部(図 2)では,管電圧120kVpにて再構成法の違いによる影響はほとんど見られなかったが,特に低管電圧にてFIRSTの方がCT値が低かった。また,FIRST,FBP共にCir-cularと比較してEllipseの方がCT値が低かった。ファントム外周の水等価物質,アクリル,LDPE(脂肪を模したもの)についても同様の傾向を示した。Bone50%では管電圧の上昇に伴いCT値が低下したが,FIRST と FBP に有意差は見られな

かった。Lungでは,管電圧の違いによるCT値の違いは見られず,FIRST,FBP共に有意差は認められなかった。2.ノイズ特性(低減効果) CatPhan CTP 700 の Circular とEllipse において,ベース部とファントム外周の水等価物質にROIを設定し,ノイズ(SD)を測定した。 図3は,横軸を管電流,縦軸を SD とし,ノイズ量を評価した。F B P と比較し,FIRSTでは低mAsでもSDが抑制されている。また,被写体形状の影響が大きく,CircularよりもEllipseの方がノイズが大きく低減されていた。Ellipse では AP 方向とLR方向でのノイズ分散の差異によって生じるストリークアーチファクトがあるが,それに対する低減効果,もしくは低線量で発生するノイズの低減効果においてはFIRSTの方が優位であることがわかった。 図4は,図3の結果を式①に当てはめて計算し,両対数グラフで表したものである。CircularではFBPは線形を示し,FIRSTも若干揺らぎはあるものの線形に近似され た。FBPとFIRSTのグラフは 260 mAsで交差することから,260mAs 以下ではFIRSTの有効性が大きいと言える。また,Circularよりも形状の大きいEllipseでは交点 940 mAs となり,FIRST の有効

スライス厚:5mm,各管電圧の小焦点における最大mAsで撮影 

CT(

HU

Relative electron densityRelative electron density1 1.5 20.50 1 1.5 20.50

-1000

-500

0

500

1000

CT(

HU

-1000

-500

0

500

FC14FC30FIRST-BodyFIRST-BoneFIRST-Lung

FC14FC30FIRST-BodyFIRST-BoneFIRST-Lung

1000

Bone20% Bone20%

Bone50% Bone50%Circular Ellipse

図1 ‌‌CT値の直線性の評価(120kV)

スライス厚:5mm,各管電圧の小焦点における最大mAsで撮影 

Tube voltage(kVp)

CT(

HU

Base Base

Circular Ellipse

1070 80 90 100 110 120 130 140

20

30

40

50

60

70

Tube voltage(kVp)

CT(

HU

1070 80 90 100 110 120 130 140

20

30

40

50

60

70

FC14FIRST-Body

FC14FIRST-Body

図2 再構成の違いによるCT値の変化の比較(ベース部)

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INNERVISION (31・5) 2016 別冊付録  5

Session 1 TOSHIBA FIRST Symposium 2016

性がより大きいことがわかる。この結果は,使用するファントムの大きさや楕円率の違いなどにより変化する可能性があるが,いずれにしても限定された条件下では直線形が示されているため,式②に示すように k ファクタを作ることが可能になれば,今後の評価につながっていくと思われる。 また,同一 SD における CNR の比較を 行 っ た と こ ろ,F B P と F I R S T のCNR はほぼ同等で あり,しかも同一SDでの線量はFIRSTの方がはるかに少ない

(図 4)ことから,FIRST の方が優位であることが示唆されている。3.空間分解能の特性 C a t P h a n C T P 7 0 0 のアクリル,Bone50%,LDPE,Lungの4信号について,管電圧 120 kV での MTF を日本CT 技術学会の CT 画像計測プログラム

“CTme asure”を用いて Ci r cu l a r Edge法にて測定した。 高コントラスト域のMTFをBone50%

(コントラスト差:630HU)で比較したところ( 図 5), 過 度に高 周 波 強 調したFC 30 を除くと FBP よりも FIRST の方が良好であり,また,FIRSTのBodyとLungに大きな差は見られなかった。被写体形状の影響を見ると,Ellipse の方がMTF が劣化していた。同じく高コントラス ト 域 の L u n g( コ ン ト ラ ス ト 差: −860HU)も同様の結果であった。 一方,低コントラスト域をアクリル

(コントラスト差:70HU)で比較したところ,図 5 と同様の傾向を示したが,FIRST のB o d y と L u n g の差は明 瞭とな っ た

(図6)。同じく低コントラスト域のLDPE(コントラスト差:150HU)も同様の結果であった。 次に,アクリルを用いて管電圧の影響を

比較したところ,FBPでは影響はほとんど見られなかったが,FIRSTでは管電圧が高いほどMTFが良好であった。 さらに,空間分解能の特性を AIDR 3 D も加えて評価した。低コントラスト域のアクリルを用いてFBP FC14,AIDR 3 D S t a n d a r d( S T D ),FIRST BodyのMTFを比較したところ,FIRST Body が最も良好であり,FBP FC14とAIDR 3D STDは同等であった。高コントラスト域の Bone 50%でも FIRST Body が最も良好であり,続いて FBP FC14がAIDR 3D STDよりもわずかに良好であった(図7)。

まとめ

 CT値の特性は,120〜135kVにおいて FIRST と FBP に有意差は見られな かった。 ノイズ特性は,線量との相関はあるものの,FBPと比較してFIRSTでは若干揺らぎが見られた。なお,同一SDの画像ではCNRに有意差は見られなかった。 空間分解能の特性では,過度の高周波

強調を付したFBP FC30を除くと,すべてにおいてFIRSTの方が優位であった。 FIRST と FBP 共に被写体形状による影響が見られ,CT値の変化やEllipseでのMTFの劣化が見られた。 今回の検討では,FIRST は FBP に比べて空間分解能の大幅な向上とノイズ低減によるSNR の向上,ならびに撮影(被ばく)線量の低減が可能であることが明確となった。しかしながら,被写体サイズ,形状,対象部位,疾患,検査目的に応じたプロトコルの適正化が必要であり,今後の課題と思われる。

Δ70HU:(120kV) Acrylic(120HU) Base(50HU) 

Circular Ellipse

Spatial frequency(cycle/mm)1 1.50.50

Spatial frequency(cycle/mm)1 1.50.50

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

1.6

MTF

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

1.6

MTF

FC14FC30BodyBoneLung

FC14FC30BodyBoneLung

図6 ‌‌低コントラスト域(アクリル)でのMTFの評価

Spatial frequency(cycle/mm)Spatial frequency(cycle/mm)1 1.50.501 1.50.50

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

MTF

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

MTF

Circular Ellipse

FC14 Bone50%BODY Bone50%AIDR Bone50%

FC14 Bone50%BODY Bone50%AIDR Bone50%

図7 ‌‌高コントラスト域(Bone50%)での‌FBP,AIDR‌3D,FIRSTのMTFの評価

mAs

Circular Ellipse

0 100 200 300 400

mAs

0 100 200 300 4000

100

200

300

400

500

SD(HU)

0

30

60

90

120

150

SD(HU) 120kV-Body

120kV-FC14120kV-Body120kV-FC14

y=1200.6*x^(-0.61202)R=0.99621y=36.894*x^(-0.10365)R=0.92975

y=239.25*x^(-0.51699)R=0.99821y=36.177*x^(-0.17643)R=0.95069

図3 画像処理とノイズ量の評価

mAs

SD(

HU

y=1200.6*x^(-0.61202)R=0.99621y=36.894*x^(-0.10365)R=0.92975

y=239.25*x^(-0.51699)R=0.99821y=36.177*x^(-0.17643)R=0.95069

940mAs940mAs260mAs

Circular Ellipse

①Noise(SD)=1/ Dose ratio

1 10 100 1000mAs

1 10 100 1000

1000

100

10

SD(

HU

1000

100

10

120kV-Body120kV-FC14

120kV-Body120kV-FC14

②Noise(SD)=1/ Dose ratio×k

図4 ‌‌図3の両対数グラフ表示

Δ630HU:(120kV) Bone50%(680HU) Base(50HU) 

Circular Ellipse

Spatial frequency(cycle/mm)1 1.50.50

Spatial frequency(cycle/mm)1 1.50.50

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

1.6

MTF

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

1.6

MTF

FC14FC30BodyBoneLung

FC14FC30BodyBoneLung

図5 ‌‌高コントラスト域(Bone50%)でのMTFの評価

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6  INNERVISION (31・5) 2016 別冊付録

Session 1

 当院では現在,3台のCTが稼働しており,このうちの2台は東芝メディカルシステムズ社製の「Aquilion 64」と,新たに導入した「Aquilion ONE / ViSION FIRST Edition」である。逐次近似応用再 構 成は, それぞれ「A I D R 3 D」と

「AIDR 3D Enhanced」を搭載しているが,加えて Aquilion ONE / ViSION FIRST EditionにはFull IRの「FIRST」が搭載されている。本講演では,当院におけるFIRSTの特性に合った適応部位・疾患の決定,ワークフローの構築について述べる。

FIRSTの特性に合った適応部位および疾患の決定

 FIRSTは,空間分解能および低コントラスト検出能の向上により高空間分解能とノイズ特性の改善,被ばく線量の低減を実現し,臨床で使用可能な画像再構成速度を実現した最新の逐次近似画像再構成技術である。これらの特性を生かし,当院のワークフローに合った適応部位や疾患について検討した。1.適応部位の検討 整形領域の骨折症例において,AIDR 3D Enhancedでは硬い再構成関数を用いるため骨周辺のアンダーシュートが目立つが,FIRST では認められず,骨皮質の評価や微細な骨折,骨片の描出能が高い(図 1)。骨折部位のプロファイルを取ったところ,FIRSTで は ア ン ダ ーシュートがないことが確認できた。  次に,ノイズ抑制目的に軟ら

かい再構成関数を用い,かつ高い分解能が要求される部位でFIRSTが有効性を発揮するのではないかと考えた。頸部血管では,AIDR 3 D の強度:Weak,再構成関数:FC04と比較して,FIRSTでは血管の辺縁がよりシャープに描出されており,狭窄率の解析における信頼性の向上などが期待できる(図 2)。同様に,冠動脈での比較においてもFIRSTの方が高分解能が得られ,末梢血管のCT値が上昇しており,有効性があると考えられた。2.低線量肺がんCT検診への適応 当院では,医師の要望に基づき肺野条件ではAIDR 3D Weakを用いてFBPに近い画像を提供しているが,FIRST を適応した場合の評価を,背側側に−700HUのすりガラス陰影(GGO)を模擬した腫瘤のあるファントムを用いて行った。  図 3 は, 通 常 線 量 の 約1 / 1 0 に 当 た る C T D I:0 . 7 mGy で撮影した画像だが,シャープさはAIDR 3D Weakの方がやや優位であるものの,描出能は FIRST の方が有効と考えられる。

3.‌‌アーチファクトの低減‌への適応

 FIRST は統計学的ノイズモデルを用いておりストリー

クアーチファクトの大幅な低減が可能であるが,それを実臨床で生かすための検討を行った。 腹部ファントムの両側に腕のファントムを置いた最もアーチファクトが発生しやすい状況で,撮影線量を0.6〜24 .1mGyに変えながら撮影し,FBP(boost+),AIDR 3 D Enhanced Mild,FIRST Standard,FIRST Strongを用いて再構成を行った。得られた画像のそれぞれ 3 か所にROIを設定し,各ROIのSDよりアーチファクトインデックス(AI)を算出して評価した。その結果,AIDR 3 D EnhancedとFIRSTは,いずれもFBPよりAIが低く,低線量域ではFIRSTが最もAIが低かった。実際の低線量画像でも,FIRST にて著明なアーチファクトの低減が確認できる(図4)。

遠藤 和之 東海大学医学部付属八王子病院放射線技術科

FIRSTのワークフロー

AIDR 3D Enhanced Mild FC31 2mm

FIRST Bone Mild2mm

図1 ‌‌骨折症例におけるAIDR‌3D‌EnhancedとFIRSTの比較

AIDR 3D Weak FC042mm

FIRST Body Standard2mm

図2 ‌‌頸部血管におけるAIDR‌3DとFIRSTの比較

AIDR 3D Weak FIRST Lung StandardCTDI0.7mGy

図3 ‌‌低線量肺がんCTにおけるAIDR‌3DとFIRSTの‌比較

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INNERVISION (31・5) 2016 別冊付録  7

Session 1 TOSHIBA FIRST Symposium 2016

当院におけるワークフローの構築

1.FIRSTの再構成時間の検討 当院の単純CT撮影の流れは,1台のCTを診療放射線技師 1 名が担当した場合, ①入室からスキャン終了(1〜2分),②スキャン終了〜退室(2〜3分),③次の患者の入室・検査(1〜2分)であり,②と③を合計した3〜5分が,ワークフローを延長せずに画 像 再 構 成を行える時 間となる。 また,単純+造影CT撮影では,①入室から単純撮影終了(1〜2分),②ルート確保

(4 〜 5 分),③造影撮影終了(3 〜 4 分),④撮影終了から退室(3〜4分),⑤次の患者の入室・検査(1 〜 2 分)であり,②の 4 〜 5 分と,④と⑤を合計した 4 〜 6 分をFIRSTでの画像再構成に当てることができる。 一方,FIRSTの再構成時間は,16cm

のボリュームスキャンは 3 分であるが,全肺を想定した32cmのヘリカルスキャンでは6分20秒であり,上記の時間をオーバーする。そこで,全肺以外でFIRSTの高空間分解能やノイズ特性の改善が有効な撮影として,HRCTでの検討を行った。 ヘリカルスキャン,30スライスでの再構成時間は,FIRST Lung Standardの1mmスライス厚で1 分 36 秒,0 . 5 mmスライス厚で 1分 26 秒であり,臨床で問題なく使用可能な時間であった(図 5)。また,FOV やスライス厚の違いは再構成時間に影響しなかった。 一方,FIRSTの部位や強度の設定の違いによる再構成時間を1mmスライス厚,30スライス固定にて測定した結果,Car-diac Sharpでは再構成時間の延長が見られた(図6)。

2.‌‌当院におけるFIRSTの‌適応部位

 上記の内容を踏まえ,当院では緊急性や即時性が求められないこと,体 軸 方 向の撮 影範囲が狭いことを条件に,FIRSTの適 応 部 位を決定した(図7)。  まず整 形 領 域 と内耳であるが,FIRST ではアンダーシュートがなく高 精 細な画 像 が得られるため有効である。軟部条件 は A I D R 3 D

Enhanced,骨条件はFIRST Boneを用いている。心臓では,位相探しにはAIDR 3 D,位相決定後は FIRST Cardiac, ステント留置例には FIRST Cardiac Sharp を用いている。低線量肺がん CT検診では,AIDR 3D Enhancedで画像確認を行い,その後 FIRST の Body とLungの画像を提供している。頸部血管では,3DやMPRの作成にはAIDR 3Dを用いているが,分岐部の拡大再構成にはFIRSTを用いている。 そのほか,上肢挙上困難例や下肢CTAにもFIRSTを用いることを検討している。3.‌‌当院におけるFIRSTの運用 図 8 に,当院の単純 CT 撮影におけるFIRSTの運用を示す。FIRSTは独立した再構成ユニットを有しているため,スキャン終了と同時にAIDR 3DとFIRSTの画像再構成を同時に実施でき,ワークフローの延長なく運用できている。

今後への期待

 当院では現在,FIRST を使用できるのは Aquil ion ONE / ViSION FIRST Edition のみのため,FIRST の適応を絞らざるを得ない状況である。今後,下位機種でも使用可能な再構成技術が確立され,より多くの部位にFIRST を適応できるようになれば,臨床への普及も促進されると考えている。

FIRST Lung Standard 0.5mm

FIRST Lung Standard 1mm

AIDR 3D Weak 5mm

FIRST Lung Standard 5mm

6min20s

20s

HRCT(30slice)

1min36s

1min26s

図5 ‌‌HRCTにおけるヘリカルスキャン,30スライスでのFIRSTによる再構成時間

入室~スキャン終了 スキャン終了~退室 次の患者入室~検査

AIDR 3D

FIRST

画像出力 画像出力

従来の再構成/FIRST再構成

1~2min 2~3min 1~2min

30s

3min~3min40s

図8 ‌‌当院の単純CT撮影におけるFIRSTの運用

CTDI:2.5mGyAIDR 3D Enhanced Mild FIRST Body Strong

図4 ‌‌FIRSTによるアーチファクトの低減

1:45 1:56 1:55

1:38 1:58

1:52 1:42 1:42 1:42

2:14 2:03

1:54 (min)

Lung Mild Lung Standard

Lung Strong Body Mild

Body Standard Body Strong Cardiac Mild

Cardiac Standard Cardiac Strong

Cardiac Sharp Mild Cardiac Sharp Standard

Cardiac Sharp Strong

図6 ‌‌FIRSTの部位と強度の設定の違いによる‌再構成時間の比較

図7 ‌‌当院のFIRST適応部位

部位 撮影方法 再構成1 再構成2 再構成3

整形 Volume AIDR3D Enhanced FC04 FIRST Bone

内耳 Volume AIDR3D Enhanced FC81 FIRST Bone

Coronary Volume AIDR3D Mild FC04 FIRST Cardiac FIRST Cardiac

Sharp

肺がん検診 Helical AIDR3D Enhanced FC04 FIRST Body FIRST Lung

頸部血管 Helical AIDR3D FC04 FIRST Body小児 Volume AIDR3D FC04 FIRST Body FIRST Lung

*スキャン連動再構成を組み込んで使用

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8  INNERVISION (31・5) 2016 別冊付録

Session 1

 当院では現在,3台の東芝メディカルシステムズ社製の CT 装置が稼働しており,

「Aquilion 64」と「Aquilion ONE / ViSION Edition」2台をそれぞれ,日常診療と救急および夜間・休日の撮影用に使用している。2015 年 10 月には Full IR の

「FIRST」を導入し,2 台の Aqui l ion ONEの画像再構成に用いている。本講演では,整形外科領域におけるFIRSTの初期経験を中心に,症例を供覧しながら報告する。

当院におけるFIRSTの運用 当院では,放射線科医や診療放射線技師の判断でFIRST画像を追加して運用している。FIRSTの画像再構成ユニットは日常診療用の Aqui l i on ONE/ViSION Editionに搭載されたが,もう 1台のAquilion ONE/ViSION Editionで撮影したraw dataを東芝プロトコル通信という方法で転送することで,2台とも FIRST での画像再構成が可能となっている。

整形外科領域の 症例提示

●症例1:腰椎骨折 FIRST ではアンダーシュートが 低 減 され,のっぺりした印象となるため,導入当初はAIDR 3 D との見え方の違いに戸 惑 う こ と も あ っ た

(図 1)。また,FIRSTでは,骨の表面がややザラザラとした画像となるものの,VR 画像は分解

能を保持したまま作成でき,CPR画像はウインドウ変更のみで脊髄など軟部組織の観察が容易となる(図2)。●症例2:腓骨骨折 AIDR 3Dなど従来のCTでは,アンダーシュートにより骨折線が強調されるが,FIRSTではアンダーシュートがない分,当院でも慣れないうちは骨折線が見えづらいという意見があった(図 3)。ただし,海綿骨内部の骨折線は,アンダーシュートが低減されたことで同定しやすくなっている

(←)。●症例3:踵骨骨折 図4では,AIDR 3Dで見られるアンダーシュートが FIRST で低減している。このため,FIRST では海綿骨の骨折線(←)

が同定しやすくなっている。●症例4:海綿状血管腫 血管腫の粗大な骨梁が見えているが,FIRSTではパーシャルボリューム効果が低減され,ややきれいに描出されている

(図5→)。●症例5:骨転移 肩口のレベルはストリークアーチファクトが発生しやすいが,FIRST では低減している(図 6)。転移性腫瘍の脊柱管内に軽度突出している部分(←)も,AIDR 3 D に比べて FIRST では辺縁がきれいに描出されている。●症例6:大腿骨骨折 図7では,AIDR 3DとFIRSTの両方で骨折が認められ,その部分の骨髄の濃

城戸 康男 佐世保市立総合病院放射線科

整形外科領域を中心とした FIRSTの初期経験

図1 症例1:腰椎骨折(どちらもWW,WLは同じ。図2〜11も同様)

Condition:0.5mm×80 / 120kV / VolumeEC / 0 .5s / BP:0.81AIDR 3D Weak(FC31) FIRST Bone Strong

図2 ‌‌症例1のFIRST‌Body‌Standardを用いた‌三次元画像処理例

Condition:0.5mm×80 / 120kV / VolumeEC / 0 .5s / BP:0.81VR画像 CPR画像

図4 症例3:踵骨骨折

Condition:0 .5mm×80 / 120kV / VolumeEC / 0 .5s / BP:0 .637 / 755mm / CTDI:9.9mGy / DLP:796mGy・cm

AIDR 3D Weak(FC31) FIRST Bone Mild

図3 症例2:腓骨骨折

Condition:0.5mm×80 / 120kV / 15mAs / 0 .5s / BP:0.81 / 140mm / CTDI:1.4mGy / DLP:19.2mGy・cm

AIDR 3D Mild(FC03) FIRST Bone Standard

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INNERVISION (31・5) 2016 別冊付録  9

Session 1 TOSHIBA FIRST Symposium 2016

度が上昇しており出血が示唆される。やや近位側の画像(図 8)を見ると,背側部の濃度上昇は AIDR 3 D でも確認できるが,腹側部についてははっきりしない。しかし,FIRST では骨髄の淡い濃度上昇が同定しやすくなっている

(→)。これは,空間分解能の向上に伴いパーシャルボリューム効果が低減したためと考えられる。 骨髄の濃度上昇は,はっきりしたものであればAIDR 3DとFIRSTの描出能に差は見られないが,淡い濃度上昇ではFIRST がより有用な可能性がある。

その他の領域でFIRSTが有用 だった症例

●症例7:甲状腺腫瘍 AIDR 3 D では肩口の辺りにストリークアーチファクトが認められるが,FIRST では低減され,甲状腺左葉の腫瘍内部の構造が明瞭に描出されている(図9)。●症例8:交通外傷 本症例は上肢挙上困難であり,CTにて肘の付近に強いストリークアーチファクトが発生した。胸 水が貯 留しているものの,AIDR 3Dでは血性胸水かどうかの判断は困難であるが,FIRSTではアーチファクトがかなり低減し,胸水の濃度が評価しやすくなっている(図10)。●‌‌症例9:菲薄化した腸管壁の描出 本症例は腸管が拡張し,腸管壁が菲薄化しており,AIDR 3Dでは壁の同定がしづらいが,FIRST では明瞭に描出されている(図11)。これにより,読影時の負担軽減と読影時間の短縮が図られ,きわめて有用であると実感している。

今後の展望

 整形外科領域にFIRSTを用いることで,アンダーシュートが低減し骨を評価しやすくなるほか,ストリークアーチファクトの抑制は他領域も含め,診断にきわめて有用である。また,骨髄の脂肪髄内のわずかな吸収値の上昇をFIRSTで描出できれば,従来のCTでは指摘困難だった異常を指摘できるようになると期待している。 図11 症例9:菲薄化した腸管壁の描出

Condition:0 . 5mm×80 / 120 kV / VolumeEC / 0 . 5 s / BP:0 .81 / 545mm / CTDI:16.2mGy / DLP:960.8mGy・cm

FIRST Body Standard

AIDR 3D Mild(FC14)

図9 症例7:甲状腺腫瘍

Condition:0 . 5mm×80 / 120 kV / VolumeEC / 0 . 5 s / BP:0 .81 / 260mm / CTDI:21.3mGy / DLP:649.7mGy・cm

FIRST Body Standard

AIDR 3D Mild(FC04)

図10 症例8:交通外傷

Condition:0 . 5mm×80 / 120 kV / VolumeEC / 0 . 5 s / BP:0 .81 / 665mm / CTDI:26.7mGy / DLP:1898.3mGy・cm

FIRST Body Standard

AIDR 3D Mild(FC14)

図5 症例4:海綿状血管腫

AIDR 3D Mild(FC14) FIRST Body Standard

図6 症例5:骨転移

AIDR 3D Mild(FC14) FIRST Body Standard

図7 症例6:大腿骨骨折

AIDR 3D Mild(FC31) FIRST Bone StandardCondition:0 .5mm×80 / 120kV / VolumeEC / 0 .5s / BP:0 .637 / 280mm / CTDI:6.7mGy / DLP:219.2mGy・cm

図8 ‌‌症例6と同一症例(やや近位側)

AIDR 3D Mild(FC03) FIRST Body StandardCondition:0 .5mm×80 / 120kV / VolumeEC / 0 .5s / BP:0 .637 / 280mm / CTDI:6.7mGy / DLP:219.2mGy・cm

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10  INNERVISION (31・5) 2016 別冊付録

Session 2

 当院の小児循環器の入院患者数は年間450〜500人で,年間150例の先天性心疾患手術を行っている。主に心臓カテーテル検査や心エコー図検査を行っているが,ADCT などの登場で CT の診断能が向上したことで心臓CT検査も年々増加しており,年間約 160 件となっている。本講演では,小児心臓CTにおけるFull IRの被ばく低減技術である「FIRST」の臨床応用と今後の可能性について述べる。

小児心臓CT検査における FIRSTのメリット

  小 児 心 臓 C T は,① 心 拍数が速い, ②対象構造のサイズが小さい,③複雑な病態の疾患が多いなどの問題があるが,微細な構造の観察や位置関係を把握するための有力な診断ツールである。 320列のADCTでは,短時間で広範囲の画像データが収集できることが利点だが,さらに FIRST を適用することで,体重10kg以下の乳児の冠動脈やその分枝まで,非常に高い分解能で描出可能になる(図1)。図2は,冠動脈に瘤ができる川崎病の心臓CTだが,10年前の64列CTでは心拍数が成 人 並みになる 8,9 歳まで臨 床 診 断価値のある画像は撮影できなかった

(図2a)。ADCTとFIRSTを使うことで,1歳でも図 2 b のような画像が得られ,両側の冠動脈に瘤が拡張していることが診断できた。

先天性心疾患に対する CT検査の役割

 先天性心疾患の画像診断における CTの役割は,心臓外科手術やカテーテル治療に必要な形態情報の収集が挙げられる。特に小児の場合には,心奇形など複雑な構造を持つことから,体循環(動脈)と肺循環(静脈)の両方の血管形態の評価や,

心臓の内部構造の把握など,多くの情報が必要となる。術前のシミュレーションの1つとして,複雑な構造を理解するために,CT データを基に 3 D プリンタで作成した三次元模型なども活用している。 従来は,複雑な血行動態における心血管構造を心臓 CT により描出するために,造影剤の注入レートを上げる方法や,タイミングをずらして濃度の違う造影剤を注入する“二重濃度造影剤法”などの工夫を行ってきた。しかし,小児に対して太い留置針が必要だったり,撮影のタイミングが難しいなどの課題があった。320 列のADCTによって,広範囲かつ高速のダイナミック CT 撮影が可能になり,さらにFIRST を用いることで小児の心臓 CT の適応が広がってきた。

FIRSTを生かす 先天性心疾患の画像診断

1.‌‌主要体肺動脈側副血管(MAPCA)‌ ‌‌の診断

 主要体肺動脈側副血管(MAPCA)は,肺動脈閉鎖性先天性心疾患において動脈管の発生がない場合に,本来は胎生初期に退縮する節間動脈が肺動脈へ血流を送る通路として遺残した病態である。MAPCAが発生している心疾患症例では,細かく発生している血管を統合する手術を,乳児期から成長に合わせて段階的に行う必要がある。心臓を含めた細かい血管の構造の把握のため繰り返しの検査が必要で,CT には高解像度と同時に被ば

く線量の低減が求められる。  図 3 は,6 4 列 C T + 従 来 法(a)とADCT+FIRST(b)の画像だが,bでは被ばく線量が DLP 2462 mGy・cm → 148mGy・cmと1/16まで低減されている。実際の画像でも,MAPCA の細かい血管まで描出されていることがわかる

(図4)。FIRSTを使うことで,さらに造影剤使用量の削減が図れる可能性があり検討中である。2.フォンタン手術 フォンタン手術は,右室と左室の分割ができない複雑型心奇形に対する機能的修復術で,体循環からの静脈血を肺動脈にバイパスして肺に直接流す手技である。新生児期に肺動脈絞扼術あるいはBTシャント術を行い,1歳で上大動脈と肺動脈吻合手術(グレン手術)を経て3歳でフォンタン手術へ到達する。その間に心臓CTを行う機会も多く,被ばく線量の増加が問題となる。

宗内  淳 独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)九州病院小児科

小児領域におけるFIRSTの臨床応用─小児循環器領域におけるFIRSTの可能性

図1 FIRSTでの小児心臓CTの血管描出a:従来法 b:FIRST

a b

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INNERVISION (31・5) 2016 別冊付録  11

Session 2 TOSHIBA FIRST Symposium 2016

 小児の心疾患における積算被ばく線量は,心移植を伴う心筋症が最も多いが,フォンタン手術など単心室系の疾患もそれに次いで多くなっている。F I R S T によって被ばく線量を低減できることは,繰り返し検 査が必 要なフォンタン手術の患 者にと っ ては メリットが大きく, 図 5 のように高い描出能によって,人工血管や側副血管を流れる血流など複雑な病態を把握できる。

FIRST適用に よる今後の期待

 FIRSTのこれからの小児循環器領域での臨床応用の可能性について述べる。 1 つ目は,4 DCT の活用である。心拍同期をせずに3秒ごとに連続撮影することで,造影剤が心臓から大動脈,肺静脈に広がっていく様子が観察できる。4 DCTでは連続撮影が必要なことから被ばく線量が問題となるが,FIRST を適用することで低線量撮影が可能になり,動態の観察やサブトラクションによって心臓だけを抽出したシネアンギオに類似した画像生成も期待される。 2つ目は,容量計測への応用である。心室容量計測は,現在,カテーテル検査のシネ画像から心室内腔をトレースし計算式から仮想的に求めているが,CTでは実際に造影剤が入っている部分を容積として計算することが可能になる。先天性心疾患の複雑な心臓病では心室の形も一様ではないことが多く,仮想的計算からCTによる実測的なボリューム計算が可能になることへの期待は大きい。実際に肺動脈閉鎖患者の左室拡張末期容積の計測結果をシネアンギオ,心エコーと比較したところ,同様の精度で計測が可能だった(図6)。 3つ目は,肺血管床の評価である。フォンタン手術が必要となる複雑心奇形の症

例では,肺血管床の状態を把握することが必要だが,FIRSTを用いることで肺血管の細い分枝まで描出されることで,肺血管床のより正確な評価が可能になる(図 7)。これによって,肺動脈コンプライアンスと肺血管抵抗の関係をより正確に把握することができ,手術の適応や時期について適切な判断が可能になると期待される。

まとめ

 CT では,これまで 解剖学的な形態情報の収集がメインだったが,ADCTとFIRSTを組み合わせた画像情報から,今後はボリュームの計測など機能情報の取得も可能になることが期待される。被ばく線量や造影剤の低減とも合わせて,小児循

環器領域でのFIRSTのさらなる活用の広がりに期待している。

図2 ‌‌FIRSTによる川崎病性冠動脈瘤の描出(1歳)a:64列CT+従来法 b:ADCT+FIRST

a b

10年前の画像

仮想的計算

ADCT(FIRST 使用)96mL/m2心エコー 95mL/m2アンギオ 85mL/m2

左室拡張末期容積

実測的計算

心室容量計測は獲得画像のトレースからSimpson法や心室内腔自動トレース等で計算

実際の造影剤が入っている部分の容量として計算

図6 ‌‌FIRSTの容量計測への応用

図3 ‌‌MAPCAの診断における被ばく線量の比較a:64列CT+従来法 b:ADCT+FIRST

使用造影剤        35mL被ばく線量DLP 2462mGy・cm

使用造影剤         35mL被ばく線量DLP 148mGy・cm

a b

図5 ‌‌フォンタン手術におけるADCTとFIRSTでの‌心血管構造の描出

9歳,フォンタン手術後,房室中隔欠損,大血管転位,肺動脈閉鎖,無脾症

a b

図7 ‌‌FIRSTの肺血管床定量評価への応用a:64列CT+従来法 b:ADCT+FIRST

a b

右肺血管床=7.33mL

図4 ‌‌ADCTとFIRSTによるMAPCAの描出a:64列CT+従来法 b:ADCT+FIRST

a b

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12  INNERVISION (31・5) 2016 別冊付録

Session 2

 本講演では,最新の被ばく低減技術であるFull IRの「FISRT」が,循環器疾患における冠動脈 CTA や心臓 CTにもたらすインパクトについて,当院での使用経験も含めて報告する。

冠動脈CTAにおける プラーク評価の意義

 循環器疾患において,冠動脈CTAや心臓CTは欠かすことのできない重要な検査となっている。冠動脈CTAは従来,被ばく低減を図りつつ,冠動脈をいかに高精細に描出するかが大きな命題であった。それが最近では,冠動脈の狭窄の評価に加えて,狭窄がもたらす機能情報や予後・治療方針にかかわる情報を得るための検査へと移行してきている。 冠動脈プラークの評価は,狭窄度とともにプラークそのものを見ることが重要である。冠動脈 CTA では,ナプキンリングサインと言われるプラークの辺縁がリング状に造影される現象があり,ハイリスクのプラークとして注目されている。ナプキンリングサインは,造影剤に染まらない壊死性コアの周囲に血管増生や線維化が起きていることを示しているが,高画質の画像で注意深く見なければ見落としてしまう可能性がある。 2015年にJCCT誌 に 発 表 さ れ たFerencikらの報告では,冠動脈 CTAにおけるCT 値の分布やボリュームの計測に関する検討を行い,急性冠症候群の診断には,プラークのボリュームや r e m o d e l i n g index などの非常

に細かい数値を計測することが有用であるとしている 1)。現在,当院では,医用画像処理ワークステーションの「Vitrea」を用いて,プラークの濃度分布やボリュームの自動計測を行っている。従来,CTの短軸像からこれらを計測するのはかなり煩雑で,現実的ではなかったが,ワークステーションの技術進歩により可能となってきた。 ただし,プラークのCT値は内腔の増強効果により変動することが指摘されており,造影剤の濃度を上げていくことによって,プラークの CT 値も上昇してしまう。CT値が変動することは,プラークの性状評価を見誤ることにもなるので,注意が必要である。

FIRSTによるプラークの評価

 当院では,FIRST がプラークの評価にどのような影響を与えるのか検討を行った。冠動脈模擬ファントム

(狭窄モデル:フヨー社製)に,CT値80HUのプラークを用い,造 影 剤を入れて 2 5 %,5 0 %,75%狭窄の状態にして,周囲に水を張った容器の中に入れた。内腔の CT 値を 350HUと450HUに設定して撮影し,FBP,AIDR 3D,

FIRST( Cardiac,Cardiac Sharp)で再構成を行った。 CT 値 350 HU の場合では,FIRST のCardiac Sharpが視覚的に内腔の濃度が高く,75%狭窄部も明瞭に確認できる

(図 1○)。また,25%狭窄の部分では,プラークの境界が明瞭に描出されていて,わずかな狭窄や小さなプラークでも検出できる可能性が示唆された(図 1←)。プロファイルカーブを見ると,75%狭窄では,FIRSTのCardiac,Cardiac Sharp共に真値に近い高い C T 値を示している

(図2)。一方で,FBPやAIDR 3Dでは,200 HU 前後という低い値となっている。冠動脈CTAでは,内腔の狭窄を過大評価しやすいことが指摘されているが,狭窄部の CT 値が正しく表現されていないことが一因となっている可能性があると思われる。

宇都宮大輔 熊本大学大学院生命科学研究部画像動態応用医学

FIRSTは循環器疾患の診断にインパクトをもたらすか?

FBP AIDR 3D FIRST

Cardiac Sharp 冠動脈内腔 =350HU

図1 ‌‌350HUでのFBP,AIDR‌3D,FIRST‌(Cardiac‌Sharp)のプラークの描出

内腔350HU(プラーク80HU)75%狭窄

300

250

200

150

100

50

0

-50

ー FBP ー AIDR 3D ー FIRST Cardiacー FIRST Cardiac Sharp

(HU)

図2 ‌‌350HUでのFBP,AIDR‌3D,FIRST‌(Cardiac,Cardiac‌Sharp)のプロファイルカーブ

内腔450HU(プラーク80HU)75%狭窄

300

250

200

150

100

50

0

-50

ー FBPー AIDR 3D ー FIRST Cardiacー FIRST Cardiac Sharp

(HU)

図3 ‌‌450HUでのFBP,AIDR‌3D,FIRST‌(Cardiac,Cardiac‌Sharp)のプロファイルカーブ

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Session 2

INNERVISION (31・5) 2016 別冊付録  13

Session 2 TOSHIBA FIRST Symposium 2016

F I R S T の C a r d i a c,Cardiac Sharp の CT値は,本来あるべき CT値を示していると言える。 さらに,50%狭窄の結果 を 見 る と,F B P とAIDR 3 D でも CT 値が上昇しているが,真値より低い CT 値であった。一方,FIRSTの Cardiac,Cardiac Sharpではほぼ正確な CT 値を示していた。 また,450HUの場合,7 5 % 狭 窄 の 部 分 は,F I R S T の C a r d i a c Sharpでは多少ノイズが見られるが,内腔がはっきりと描出されており,CT 値も正確に表現されていた。内腔の CT 値が4 5 0 H U と 高 い た め,FBP や AIDR 3 D では,その影響でプラークのCT値も高くなってしまうが,FIRSTのCardiac Sharpではプラークの CT 値は 100 HU 弱に抑えられており,真値に近い CT 値を呈した(図 3)。50%狭窄では,FBPやAIDR 3D共にCT値が上昇してはいるが,FIRSTではCardiac,Cardiac Sharp 共に 450 HUという本来の値が得られ,プラークの形状も正確に描出できていた。

FIRSTによるステント内腔評価 当院では,FIRST による冠動脈ステントの内腔評価についても検討した。図4は,3mm径の冠動脈ステントをFBPとAIDR 3D,FIRSTのCardiac,Cardiac Sharpで再構成したものである。FBP や AIDR 3 D はステント内腔の濃度が視覚的にも 高くなっているが,FIRST の Cardiac,Cardiac Sharpではステント部と非ステント部の内腔濃度に大きな違いは見られない。プロファイルカーブでも,FBP やAIDR 3DはステントのCT値に影響され,ステント内腔の CT 値が 800 HU まで上がってしまっている(図5)。 症例1は,心筋梗塞の既往があり,LADの中間部にステントを留置している。FBPと

AIDR 3D,FIRSTのCardiac,Cardiac Sharpで再構成した画像を比較してみると,真のCT値は400HU前後だと思われるが,AIDR 3Dではステント内腔のCT値が500HU近くまで高くなっている。一方,F I R S T の C a r d i a c,C a r d i a c Sharpは400HU前後であった(図6)。

FIRSTによる心筋ダメージの評価

 心筋ダメージの評価は,遅延造影 MRIがスタンダードであるが,当院ではFIRSTの適応も検討している。遅延造影画像を見ることで,心不全の重症度や心筋ダメージを非侵襲的に評価することができる。また,心筋の線維化や微小血管の機能障害も心不全の経過を左右する重要な因子であるが,遅延造影の有無を見ることで,冠動脈造影上で病変がなくても線維化や機能障害が起きていることを定量的に評価できる。 症例 2 は,心筋症が疑われ,動脈硬化と冠動脈狭窄を除外する目的で冠動脈CTA を施行し,検査の最後に遅延造影CT を追加した。300 mA,80 kVp の低被ばく撮影のため,FBPでは評価できず,

AIDR 3Dでは心尖部にわずかに遅延造影が認められるが,FIRSTではさらに明瞭に描出されている(図 7←)。心筋症患者の場合,ペースメーカーを埋め込んでいる患者も多くMRIが施行できないことがあり,遅延造影 CT は臨床的意義が大きいと考える。今後も検討課題として取り組んでいきたい。

◎  冠 動 脈 C T A において,F u l l I R のFIRST は CT 値を正確に評価できるためプラークの質的診断に有用であり,プラークの境界を明瞭に描出し定量評価にも優れている。また,ステントの内腔を高精度に描出することが可能である。さらに,冠動脈CTAの後に遅延造影CTを追加することで,低被ばくでの心筋ダメージの評価ができるようになってきた。

●参考文献1)Ferencik, M., Mayrhofer, T.,, Puchner, S.B.,

et al. : Computed tomography-based high-risk coronary plaque score to predict acute coronary syndrome among patients with acute chest pain ; Results from the ROMICAT II trial. J. Cardiovasc. Comput. Tomogr., 9・6, 538 〜545, 2015.

FBP AIDR 3DFIRST

Cardiac SharpFIRST

Cardiac

冠動脈ステント(3 mm径)

図4 ‌‌FBP,AIDR‌3D,FIRST(Cardiac,‌Cardiac‌Sharp)による冠動脈ステントの描出

内腔350HU(3mm径ステント)

2000

600

140016001800

12001000800

400200

0-200

ー FBP ー AIDR 3D ー FIRST Cardiacー FIRST Cardiac Sharp

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

(HU)

図5 ‌‌FBP,AIDR‌3D,FIRST(Cardiac,Cardiac‌Sharp)による冠動脈ステントのプロファイルカーブ

400HU

465HU380HU

FBP AIDR 3D

FIRST Cardiac FIRST Cardiac Sharp

475HU

420HU395HU395HU 490HU 435HU375HU

555HU430HU

図6 ‌‌症例1:LAD中間部ステント留置

FBP AIDR 3D FIRST

300mA,80 kVp

遅延造影

図7 ‌‌症例2:心尖部肥大型心筋症

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14  INNERVISION (31・5) 2016 別冊付録

Session 2

 現在,広島大学では,頭部アルゴリズムを新たに搭載したFIRSTの評価を行っている。本講演では現行のFIRSTの全身領域への臨床応用,そして,新しい頭部領域 の 臨 床 的 有 用 性 を 示 すとともに,FIRSTの物理評価の課題について述べる。

頭頸部CTにおけるFIRST1.頭部CT 症例 1(70 歳代,男性)は,大動脈弁置換術後に左上下肢麻痺が出現し,発症後数時間で CT が撮影された症例である

(図 1)。FBP と比べ AIDR 3 D ではノイズが改善されているが,FIRST では中心溝辺りの白質・灰白質コントラストの消失が明瞭である。MRI の拡散強調画像では同じ位置に高信号が認められ,急性期の脳梗塞と診断されている。 症例2(70歳代,男性)は,左半身不全麻痺を発症後2日にCTを撮影した(図2)。スライス厚 1mm でも,FIRST では右後頭葉の低吸収域が明瞭に描出されており,急性期脳梗塞などの診断に有用であると思われる。 FIRSTでは,強力なビームハードニング補正およびコーンビームのアーチファクト抑制により,非常に強いノイズ抑制効果を得られるようになった。また,1mm前後の薄層スライスでもコントラスト分解能が良好な画像が得られ,あたかもMRIのT1強調画像のような印象を受ける。FIRSTでは,acute strokeの診断能が向上する可能性が高く,当研究室でも今後も検証を行っていく予定である。2.頸部CT 症例 3(60 歳代,男性)は,内頸動脈ステント留置後に CT を撮影した(図 3)。FIRSTは,空間分解能が高く,ステントのメッシュ構造も明瞭に描出されている。当初,ステント内腔に見られる黒い線(↑)

がアンダーシューティングか内膜の増生かの判断が難しかったが,超音波画像にて内膜の増生であることが確認された。現在われわれは,ステント留置例について超音波画像と比較する前向き研究にも取り組んでいるところである。 また,CT では頸の肩口はストリークアーチファクトが非常に強く出るため,診断が困難となることもある。FIRSTでは,頸椎症術後の症例4に示すようにストリークアーチファクトが劇的に改善されている(図4)。3.正常例の側頭骨 側頭骨について FBPとFIRSTを比較すると,一見,FIRST は鮮鋭さに欠けるように思えるが,FBP では蝸牛や三半規管に小さな気泡のよう な も の が 認 め ら れ る

(図 5 →)。図 5 は正常例で,実際には気泡状のものは存在しないと考えられることから,高吸収体に隣接して出現したアンダーシューティングで あ る と 判 断 で き,FIRSTの方が真実に近い画像であると考えられる。

胸部CTにおけるFIRST

1.肺がんCT われわれは広島県三次市で低線量肺がんCT検診を実施している。

 症例5(60歳代,男性)は,低線量CT検診で要精検となり,腺癌stage1Aと診断された(図 6)。低 線 量 C T 検 診データをFIRSTで再構成した画像と,精検時の通常

粟井 和夫 広島大学大学院医歯薬保健学研究院放射線診断学研究室

全身領域における FIRSTの臨床応用

120kV,219mAs,helical scan,HP 0.813,slice thickness:1.0 mmFBP(Kernel:FC30)AIDR 3D(Kernel:FC30) FIRST(Bone)

図4 ‌‌症例4:頸椎症術後(60歳代,女性)

slice thickness:1.0mm WL/WW=35/80

FBP(FC26) AIDR 3D(FC26) FIRST

図2 ‌‌症例2:左半身不全麻痺(70歳代,男性)

slice thickness:1.0mm,WL/WW=40/80

FIRSTAIDR 3D(FC26) FBP(FC26)

図1 ‌‌症例1:左上下肢麻痺(70歳代,男性)

AIDR 3D 3D

超音波画像B-mode

石灰化

0.9~1.1mm

B-Flow

後方陰影

FBP

FIRST

石灰化

0.9~1.1mm

図3 ‌‌症例3:内頸動脈ステント留置後(60歳代,男性)

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INNERVISION (31・5) 2016 別冊付録  15

Session 2 TOSHIBA FIRST Symposium 2016

線量 CT の AIDR 3 D を比べると,空間分解能はほぼ同等であることがわかる。低線量CT検診は高ヘリカルピッチ(1.38)で撮影しているため,心臓のブレが少なく,通常線量CTよりもむしろ空間分解能が上がっている印象さえある。 FBPとFIRSTのNPSを比較すると,FIRSTでは0.2mm−1

以上の高周波領域のノイズが著明に抑制されており,画質向上の要因の一つと考えられる。 症例 6(60 歳代,男性)では,MIP 像による末梢血管の描出を,通常線量CTのAIDR 3Dと低線量CT検診のFIRSTで比較した(図7)。線量を約 1/ 4 に抑えても,FIRST で再構成することで同等の空間分解能を得られることがわかる。 さらに,われわれは,超低線量CTのトライアルも行っており,超低線量(0.15mSv)撮影でもFIRSTを適用することで,低線量(1.5mSv)のAIDR 3Dと同等の検出能が得られるものと期待される。2.冠動脈CT 冠動脈CTAについても,AIDR 3Dと比べてFIRSTでは空間分解能の向上が見られる。胸痛により冠動脈CTAを撮影した症例の右冠動脈内腔の CT 値を測定したところ,AIDR 3Dは297HU,FIRSTは 343 HU と差異があった。血管ファントムによる空間分解能の検証では,3mm径という微細な模擬血管において AIDR 3DよりもFIRST の方が高い空間分解能が得られ,FIRST ではより正確な CT 値を得ていると推測される。

腹部CTにおけるFIRST1.高度肥満者のCT 症例7(50歳代,女性)は,BMI38 .5の高度肥満で,胃の縮小手術のために受診した(図 8)。高度肥満の場合,特に肝臓の上方辺りはストリークアーチファクトが強く出て診断が困難なことも多いが,AIDR 3D,さらにFIRSTでは,ストリークアーチファクトが強力に抑制されることがわかる。2.低線量肝Perfusion‌CT 肝Perfusion CTでは線量抑制のために低管電圧で撮影しているが,ノイズが多く,FBPではPerfusion演算のエラーが起きやすいと考えられる。FIRSTでは強力

にノイズやストリークアーチファクトを抑 制すること ができ,Perfusion 演算 画像も真実に近いものが得られているものと思われる

(図9)。

FIRSTに関する物理 評価の課題

 われわれは従来,画像を評 価する際には S D 値が 低いほど高画質であると判断してきたが,FIRSTにおいてこの評価法は適切だろうか。 一般的に病変の視認性

(low contrast detect-ability)は,ノイズ,コントラスト,オブジェクトサイズ,SNR,CNRといった指標で評価されるが,これらの指標は線形画像であることが前提となっている。非線形画像(AIDR 3D,FIRST)では,境界が明瞭であったり,コントラストがついているものは,それを際立たせる処理が行われ,反対にコントラストのない肝臓などではノイズを抑制した均一な画像が作られる。そのため,human observer performance testやmodel observer performance testといった複雑な検証が必要となり,FIRSTにSNRやCNRなどの指標を単純に適用すると,評価を誤る可能性があることを肝に銘じなければならない。

まとめ

 FIRST は,①空間分解能向上によるCT 値の精度向上,②高周波領域での著

明なノイズ低減,③アーチファクトの劇的な低減,④強力なビームハードニング補正効果,⑤臓器や部位に応じた画像の最適化という特長を持ち,これらを高精度にバランス良く実現していると言える。FIRSTの進化を把握するためには,SNRやCNRなどで単純に評価するのではなく,FIRSTの特長を総合的に評価しなければならない。今後も進化し続けるFIRSTをいかに臨床に適用して,患者さんのために使いこなすかが求められている。

FBP FIRST

図5 ‌‌正常例:側頭骨低線量CT検診時のデータからFIRSTで再構成(1.0mm)CTDI:3.0mGy

精検CT時のデータからAIDRで再構成(1.0mm)CTDI:14.3mGy

図6 ‌‌症例5:肺腺癌stage1A(60歳代,男性)

低線量CT検診時のデータからFIRSTで再構成(1.0mm)CTDI:3.0mGy

精検CT時のデータからAIDRで再構成(1.0mm)CTDI:14.3mGy

図7 ‌‌‌‌症例6:肺がん検診例(60歳代,男性)

FBP AIDR 3D FIRST80kVp, 75mAs, slice thickness:0.5mm,DLP 40.6mGy・cm/volume

図9 ‌‌低線量肝Perfusion‌CT

FBP AIDR 3D FIRST

図8 ‌‌‌‌症例7:高度肥満(50歳代,女性)

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