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ユニシス・ニュースのバックナンバーは、日本ユニシスのホームページに全文が掲載されています。 http://www.unisys.co.jp/users/unisys_news/index.html 1999 No.458 6 物理学者ゴールドラット(EliYahu M. Goldratt)の 「制約条件の理論(TOC:Theory of Constraints)」が 注目されている。日本ではまだ翻訳がなく、稲垣 公夫氏の「TOC革命」以外には正確な書物がない。 この方法は、1884年の小説“The Goal”出版以来 利用され、「米国の製造業を立ち直らせた」と評価 されるほどの実績がある。以下に主要な特徴を紹 介する。 「かんばん」なしのジャスト・イン・タイム ゴールドラットは現在の生産方式の主流である 「MRPシステム」と「トヨタ生産方式」の問題点を克 服する方策を提案した。この概念に基づくスケジ ューリング・パッケージAPS(Advanced Planning & Scheduling)を従来の生産方式用のパッケージと組 み合わせて新しいビジネス形態「サプライ・チェー ン」に取り組む企業が増えている。特に、製番管 理型のMRPとは相性がよい。 これは新しいスケジューリング技法を柱にして いる。製番付の生産要求を与えると、部品や材料 の所要量計算と加工の日程計算および負荷調整を 同時並行に行い、生産リードタイム短縮と在庫削 減を目指して全体最適化を図る。この技法では生 産工程の中で最も能力の低い工程(ボトルネック) を中心にスケジュールを立て、材料供給の先頭工 程(複数)がボトルネックに同期し、ある時間だけ 先行して働くよう素材を投入する(Pull)。残りの 非ボトルネック工程は前工程から仕事がきたら到 着順に加工する(Push)。この制御方法DBR(Drum Buffer Rope)は、いわば「かんばん」なしのジャス ト・イン・タイムである。また、若干先行して (Time Buffer)素材を投入し、途中で若干の遅れや 進み過ぎが生じても、ボトルネック工程の計画に 狂いを生じさせない。 「かんばん」に比べるとゆとりがあり、現場の 人々の精神的負担が少ない。 重点指向の業務改革 ゴールドラットはTQCの無駄を排除すべしと主 張する。つまり、非ボトルネック工程を改善・改 革しても、工場全体としての収入は伸びない。そ こで、業務改善の5ステップを提示した。 ①ボトルネックを見つける。 ②ボトルネックをフル活用(計画)する。 ③そのほかの事柄はその計画に従わせる。 ④ボトルネックをフル活用できるようになった ら、ボトルネックの能力を増強する。 ⑤その結果として、ボトルネックが変化したら、 ステップ1に戻る。 この改革手法では、ボトルネックをフル活用し ない段階での能力増強を禁じている。したがって、 供給能力過剰は起きにくい。また、余剰設備の安 易な廃棄も批判する。つまり、ボトルネックは上 記のとおり変化するので、余剰設備もいつか活用 される可能性がある。 売上を伸ばす責任は工場側に “The Goal”では非ボトルネック工程の余力を 活用する方策を示している。工場側は自分達の余 力をスケジュールによって把握し、それを埋める 注文を取るよう営業に依頼する。そうすればボト ルネックへの投資なしに、売上を増やせ、利益が 増加する。もちろん、ボトルネックを現状よりも 高水準に活用すれば確実に利益が増加する。いず れにしても、売上を伸ばす責任は工場側にある。 これを裏返すと面白い見解が見えてくる。工場 の非ボトルネック工程が遊んで稼働率が下がると き、工場がどうあがいても稼働率は上がらない。 工場の遊休設備を遊ばせないよう注文がくること が重要である。つまり「工場の稼働率を高め、ひ いては生産性を向上させる責任は営業にある」。 さらに言い換えると、営業は完成した製品を売 るだけではいけない。企業が持つ生産能力を活用 し、お客様の求める製品を生み出す「顧客サービ ス」を提供する役割を持たなければならない。 TOCの影響と限界 TOCには世評と違う限界がある。企業外のサプ ライチェーンを最適化しようとしても、ベースに なるDBRが企業外では通用しない。業務改革手法 “ Thinking Process”では複雑系としてビジネス構 造を記述するには足りないところが多い。1980年 代に開発された方法だけで、21世紀の問題を取り 扱うことには無理がある。 しかし、TOCは新しい世界観を提示する。スケ ジューリングでは近未来の行動をシミュレートす る。不確実な未来に関する意思決定を行うとき、 需要予測に基づく最適解よりも、複数の「可能解」 とその成り行きの報告の方がはるかに役に立つ。 情報処理に関しても、「メモリ・レジデント・ア ーキテクチャ」とか「基幹アプリケーションのリア ルタイム化」など、注目すべき情報技術のパラダ イム・シフトをゴールドラットは提案している。 制約条件の理論(TOC)の経営的意義 ビジネス情報システム・アーキテクト 手島 歩三◆特集1生産システムとSyteLine-ABB(株) フレキシブルオートメーション事業部 (2面~4面) ◆特集2:OnNet Solution-eNT戦略 (6・7面) ◆ユーザ事例 *三菱重工業原動機事業本部-情報共有 一貫システムを構築 (5面) *農林漁業金融公庫-総合オンライン・ システム稼働開始 (8面) *北越銀行-金融新時代に対応の「新オ ンライン・システム」稼働 (9面) *アテナ-Tiny Call Centerでクイックメ ール・サービス開始 (10面) ◆IT最前線 *Tiny Call Center (11面) *VirtualCampus (12・13面) *お客様購買サポート・システム 「Frequent Shoppers Program」(14面) *ネットワーク技術の動向① (15面) UN ①生産システムとSyteLine ②OnNet SolutioneNT戦略 特集

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ユニシス・ニュースのバックナンバーは、日本ユニシスのホームページに全文が掲載されています。http://www.unisys.co.jp/users/unisys_news/index.html

1999No.458 6

物理学者ゴールドラット(EliYahu M. Goldratt)の「制約条件の理論(TOC:Theory of Constraints)」が注目されている。日本ではまだ翻訳がなく、稲垣公夫氏の「TOC革命」以外には正確な書物がない。この方法は、1884年の小説“The Goal”出版以来利用され、「米国の製造業を立ち直らせた」と評価されるほどの実績がある。以下に主要な特徴を紹介する。●「かんばん」なしのジャスト・イン・タイムゴールドラットは現在の生産方式の主流である「MRPシステム」と「トヨタ生産方式」の問題点を克服する方策を提案した。この概念に基づくスケジューリング・パッケージAPS(Advanced Planning &Scheduling)を従来の生産方式用のパッケージと組み合わせて新しいビジネス形態「サプライ・チェーン」に取り組む企業が増えている。特に、製番管理型のMRPとは相性がよい。これは新しいスケジューリング技法を柱にしている。製番付の生産要求を与えると、部品や材料の所要量計算と加工の日程計算および負荷調整を同時並行に行い、生産リードタイム短縮と在庫削減を目指して全体最適化を図る。この技法では生産工程の中で最も能力の低い工程(ボトルネック)を中心にスケジュールを立て、材料供給の先頭工程(複数)がボトルネックに同期し、ある時間だけ先行して働くよう素材を投入する(Pull)。残りの非ボトルネック工程は前工程から仕事がきたら到着順に加工する(Push)。この制御方法DBR(DrumBuffer Rope)は、いわば「かんばん」なしのジャスト・イン・タイムである。また、若干先行して

(Time Buffer)素材を投入し、途中で若干の遅れや進み過ぎが生じても、ボトルネック工程の計画に狂いを生じさせない。「かんばん」に比べるとゆとりがあり、現場の

人々の精神的負担が少ない。●重点指向の業務改革ゴールドラットはTQCの無駄を排除すべしと主張する。つまり、非ボトルネック工程を改善・改革しても、工場全体としての収入は伸びない。そこで、業務改善の5ステップを提示した。①ボトルネックを見つける。②ボトルネックをフル活用(計画)する。③そのほかの事柄はその計画に従わせる。④ボトルネックをフル活用できるようになったら、ボトルネックの能力を増強する。

⑤その結果として、ボトルネックが変化したら、ステップ1に戻る。この改革手法では、ボトルネックをフル活用しない段階での能力増強を禁じている。したがって、供給能力過剰は起きにくい。また、余剰設備の安易な廃棄も批判する。つまり、ボトルネックは上記のとおり変化するので、余剰設備もいつか活用される可能性がある。●売上を伸ばす責任は工場側に“The Goal”では非ボトルネック工程の余力を活用する方策を示している。工場側は自分達の余力をスケジュールによって把握し、それを埋める注文を取るよう営業に依頼する。そうすればボトルネックへの投資なしに、売上を増やせ、利益が増加する。もちろん、ボトルネックを現状よりも

高水準に活用すれば確実に利益が増加する。いずれにしても、売上を伸ばす責任は工場側にある。これを裏返すと面白い見解が見えてくる。工場の非ボトルネック工程が遊んで稼働率が下がるとき、工場がどうあがいても稼働率は上がらない。工場の遊休設備を遊ばせないよう注文がくることが重要である。つまり「工場の稼働率を高め、ひいては生産性を向上させる責任は営業にある」。さらに言い換えると、営業は完成した製品を売るだけではいけない。企業が持つ生産能力を活用し、お客様の求める製品を生み出す「顧客サービス」を提供する役割を持たなければならない。●TOCの影響と限界TOCには世評と違う限界がある。企業外のサプライチェーンを最適化しようとしても、ベースになるDBRが企業外では通用しない。業務改革手法“Thinking Process”では複雑系としてビジネス構造を記述するには足りないところが多い。1980年代に開発された方法だけで、21世紀の問題を取り扱うことには無理がある。しかし、TOCは新しい世界観を提示する。スケジューリングでは近未来の行動をシミュレートする。不確実な未来に関する意思決定を行うとき、需要予測に基づく最適解よりも、複数の「可能解」とその成り行きの報告の方がはるかに役に立つ。情報処理に関しても、「メモリ・レジデント・アーキテクチャ」とか「基幹アプリケーションのリアルタイム化」など、注目すべき情報技術のパラダイム・シフトをゴールドラットは提案している。

制約条件の理論(TOC)の経営的意義ビジネス情報システム・アーキテクト 手島歩三氏

主な記事

◆特集1:生産システムとSyteLine-ABB(株)フレキシブルオートメーション事業部

(2面~4面)◆特集2:OnNet Solution-eNT戦略

(6・7面)

◆ユーザ事例*三菱重工業原動機事業本部-情報共有一貫システムを構築 (5面)*農林漁業金融公庫-総合オンライン・システム稼働開始 (8面)

*北越銀行-金融新時代に対応の「新オンライン・システム」稼働 (9面)*アテナ-Tiny Call Centerでクイックメール・サービス開始 (10面)◆IT最前線

*Tiny Call Center (11面)*VirtualCampus (12・13面)*お客様購買サポート・システム「Frequent Shoppers Program」(14面)*ネットワーク技術の動向① (15面)

UN

①生産システムとSyteLine②OnNet Solution―eNT戦略特集

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21世紀を間近に控え、製造業の目指すべき方向が新たな領域に入ってきている。今までの企業内視点から国際標準化、基準・認証体系の国際統一、ISOに代表される社会的責任など企業を外から見る視点での課題が増えつつある。また、不確実性の高い市場変化、変化のスピードアップなど、分析を綿密に行い対策を講じていくスタイルが万能でなくなってきている感もある。このような状況の中で、これからの製造業の目指すべき方向は、いかにスループットを向上させビジネス・サイクルのスピードアップを図るかであろう。このための施策の考え方としては、迅速に対応すること、ダイナミック(動的)に対応すること、前工程(業者)および後工程(お客様)との距離を縮めることがその基本的な考え方となろう。迅速に対応することとはマネージメント・サイクルのスピードアップであり、PDCAの回転向上と複数PDCAのインライン化がその施策展開として考えられる。ダイナミック対応とは、リードタイムの短縮や部門組織の自律、協調、分散化がその施策展開として有効となる。前工程および後工程との距離の短縮は、品質、納期、原価のお互いのギャップ、すなわち距離を縮める施策であり、ビジネス・プロセスの短縮や複数プロセスのインライン化がその施策展開となり得る。

一般に、製造業における業務の中には図1に示すように、設計、調達、製造、販売に関わるいくつかの業務機能が存在する。さらにそれぞれの業務機能を経由して、仕様の流れ、計画指示統制の流れ、物の流れ、金の流れがある。ビジネス・サイクルのスピードアップを図ることは、これらの流れの特性をつかみそれぞれに対する施策を講じていくことにほかならない。

ビジネスの流れを迅速化させるための方策と情報システムの利用方法を各々の流れについて以下に述べてみたい。 (図2参照)

●仕様の流れ

仕様の流れの迅速化を図るためには、次の3つの観点での方策が必要であろう。*要求仕様決定の迅速化*製品・製造仕様伝達の迅速化*標準化、再利用の推進要求仕様決定の迅速化においては、顧客や開発部門からの要求をいかに速く物造りの仕様に落とせるかがキーとなる。このためには要求内容をナビゲーションしながら取り決めていく、製品編成の登録ナビゲーション・システムの利用が考えられる。製品・製造仕様伝達の迅速化・標準化・再利用の推進では、設計部門の業務効率化と製造部門とのコンカレントを支援するPDM(Product Data Management)や協力企業や、顧客などとの技術情報交換の電子化などが

挙げられる。●計画指示統制の流れ

計画指示統制を迅速化させるためには、次の方策が考えられる。*製品特性に応じたPDCAサイクル*意思決定の迅速化製品特性に応じたPDCAとは、製品の生産形態に合わせた生産管理システムを構築することである。1企業においても製品種によって見込み生産と受注生産とが混在することがある。このような状況において、単一の生産

形態に対応する生産管理システムを全体に当てはめようとしてもどこかに無理が生じてくる。生産管理システムには、これらの混在する生産形態に対応する機能が求められる。意思決定支援は経営者のみならず企業

の全階層で用いられるような使い方になってきている。一般に企業の中には業務遂行のいろいろな場面で大小の意思決定が存在し、随所に自律された業務活動が存在する。これらの活動を支援するために共有化された情報を随時活用できる意思決定支援システムが求められる。●物の流れ

物の流れを迅速化させるためには、次の方策が有用であろう。*部品調達の迅速化*ボトルネックの発見と改善部品調達の迅速化においては、購買リードタイムの見直しと電子取引(EDI)の活用が考えられる。特に購買リードタイムに関しては、伝票作成、決済などの社内作業手順のほかに取引相手の作業内容を分析する必要がある。往々にして生産計画に組み込まれる待ち時間をリードタイムに含んでいるケースが見受けられる。取引相手の生産計画立案のタイミングに合わせた発注など相手の作業計画と協調する工夫が有効である。また、ボトルネックの改善とともに電子取引とを組み合わせた相乗効果も大きな期待が持てる。

各々の流れを迅速化する施策を実施していく上で留意すべき点を、生産管理システム再構築のポイントとして次に整理したい。●ビジネスの流れの同時設計

仕様の流れ、計画指示統制の流れ、物の流れは、以上のようにそれぞれに改善のアプローチがある。生産管理システムとして再構築するときには、これらの流れを改善しつつ業務プロセスの流れに統合化して同時設計することが必要である。また業務プロセスの統合化に導くためには施策のパターンとして自動化、同期化、一体化、平準化、ルート変更の視点でプロセスの改善方向を探ることが有効であろう。●生産管理システムと管理技術との融合

製造業ではTQMやTPMなどの管理技術を用いた改善活動がされていることが多い。これらの活動も生産管理と同様に企業の経営に貢献することを狙いとしている。しかしながら多くの企業では、これらの管理技術と生産管理とが推進担当部門の違いから必ずしも同期が取れた活動となっていない。全社的視点で捉え直し生産管理システムと管理技術とを車の両輪として捉えることが必要である。このためには生産管理システムで流れをコントロールし管理技術で組織の学習能力を助成する役割を持たせる考え方が有用であろう。●あるべき姿からのアプローチ

あるべき姿からのアプローチは問題を顕在化することができる。問題とは「あるべき姿」と「現実」との間にあるギャップ(差)であり、解決されるべきものである。例えば、現実のリードタイムが10日であり、あるべき姿のリードタイムが4日とすると、その差の6日が問題であり問題の大きさを示している。問題が明らかになれば改善施策を生み出しやすくなる。また対策実施の合意形成がしやすくなり組織活動の生産性向上が期待できる。生産管理システムは今や企業のビジネスにとって大きな要素になってきている。生産管理システムの優劣が企業の競争力を左右すると言っても過言ではないだろう。以上のことがこれから生産管理システムの再構築を目指す方々のヒントになれば幸いである。

1999年6月1日第458号

UN

これからの施策

ビジネスの流れに着目

ビジネスの流れを迅速化する方策

生産管理システム再構築のポイント

生産管理システム再構築のポイント日本ユニシス株式会社

ビジネスソリューション三部ソリューション開発一室長 大塚仁司

特集1.生産システムとSyteLine

製造業�

購入先�顧客�

市場�製品企画� 市場分析�

詳細設計�

試作・評価�

部品仕様�

基本設計開発�

設備設計開発�

生産準備�

製品・製造仕様�

販売計画�

生産計画�

手配計画(MRP)

見積管理�

受注管理�

購買管理�

買掛管理�

製造管理(工程管理)

在庫管理(材料・仕掛・半製品・製品)在庫管理(材料・仕掛・半製品・製品)

加工� 組立� 検査�

実績管理/外注管理�

原価計算/原価管理�

財務会計�

出荷管理�

売掛管理�

製造業�

購入先�顧客�

市場�製品企画� 市場分析�

詳細設計�

試作・評価�

部品仕様�

基本設計開発�

設備設計開発�

生産準備�

製品・製造仕様�

販売計画�

生産計画�

手配計画(MRP)

見積管理�

受注管理�

購買管理�

買掛管理�

製造管理(工程管理)

在庫管理(材料・仕掛・半製品・製品)

加工� 組立� 検査�

実績管理/外注管理�

原価計算/原価管理�

財務会計�

出荷管理�

売掛管理�

仕様の流れ�

計画・指示統制�の流れ�

物の流れ�

金の流れ�

図1 生産システム業務モデル

図2 ビジネスの流れ

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SyteLineは米国SYMIX社が開発した、生販一体型

の統合生産管理ソフトウェアである。加工組立の製

造業向けのソリューションで、見込生産・受注生産

など多様な生産形態が混在した現場に対応し、世界

で3,300サイトの導入実績を持つ。

SyteLineを中核に、より顧客サイドに立った

「CSRP(Customer Synchronized Resource Planning)

コンセプト」を打ち出し、製造業のビジネスを強力

に支援するツール群を用意している。

近々リリースが予定されている「SyteLine ERP

V4」では、インタフェースとして、ビジュアル

BOM/ビジュアル・スケジューリングが実現し、「同

時複数製造品対応」および「副産物対応機能」が加わ

って、さらに利用範囲が広まった。

日本ユニシスは、三井サイミックスセンターのビ

ジネス・パートナーとして、日本市場への導入をい

ち早く手掛けてきており、各種プロフェッショナ

ル・サービスをお客様に提供している。

「SyteLine」では、これまで分離して考えられてきた生産管理と販売管理を連動し、製造と販売のタイムラグをなくし、生販一体化を実現している。 (図1)以下に主な特徴を示す。●ハイブリッド生産形態に対応

導入実績においては、約90%が加工組立型製造業での基幹業務をサポートしている。需要予測から生産計画の立案や、受注と製造オーダー・購買オーダーの紐付け管理などにより、見込み生産・受注生産・受注組立生産・個別受注生産・繰返し生産など多様な生産形態が混在する現場にいずれも対応している。●部品表と工程表の統合

部品表と工程表が統合されたことで製造の実態を正しく基準情報に反映でき、日程計画の結果によるJIT対応の供給や工程の実績報告による該当所要資材の引き落とし、工程別の原価把握などが可能となった。●マルチサイト

本社・組立工場・部品加工工場・配送センターなどのサイト間をネットワークで接続することで全体サイトの資源を連動させ、サイト間の在庫検索/在庫移動、リンクドMRP(資材所容量計画)や任意サイトからの集中(分散)した受注/出荷を可能としている。●ジョブ・スケジューリング/

キャパシティ・プランニング

グロ-バルなスケジューリングと個別ジョブのスケジューリングが可能で、ジョブ・オーダー単位の前進・後進スケジュールや関連するサブジョブとの同期化を行い、能力有限・無限の自動山崩スケジューリングにてスピーディな納期回答を実現。

●プロジェクト管理

プロジェクト全体の原価集計を行い、計画原価に対し原価進捗を見ることができる。原価は製造原価・購買原価・発生経費からなる。●RMA(Return Material Authorization)

返品に対する引取/承認機能で、顧客からの返品を返品情報として管理でき、代替品のオーダーの生成も可能。●あらゆるプラットフォーム上で稼働

4GL言語で開発されたデータベース、開発ツール群やGUIインタフェース、ODBCなどオープンなITの採用によりクライアント/サーバ系の各プラットフォームにて稼働している。

SyteLineの開発元であるSYMIX社では、ERPを包含してより顧客サイドの分野を考慮したCSRPコンセプトを提唱している。そしてこのCSRPを実現するために、サードパーティ製のツールを、SyteLineと連動させた支援アプリケーション群(Syte Suite)として構築している。OLAPをベースにした多次元分析ツールや検索・簡易帳票作成ツールとして、事務生産性の向上や意思決定を支援する「SytePower」、APS(AdvancedPlanning & Scheduling)ツールとして資材と能力を同期させたリアルタイム・スケジューリング用の「SyteAPS」、より自由度の高い製品編成機能を提供する「SyteSelect」、インターネットを活用して取引先や仕入先に受注や購買データのメンテナンス機能を提供する「SyteLine Web」、電子商取引の機能を支援する「SyteLine EDI」、製造現場の実績収集システムとのインタフェース・ツールとして作業進捗管理を支援する「SyteDC」などで構成される。 (図2)

SyteLineの次期バージョンである「SyteLine ERPV4」で追加・拡張された主な機能として、ビジュアルBOM、ビジュアル・スケジューリング、Co-Product /By-Productがある。ビジュアルBOMは、工程表と統合された部品表の

日本ユニシスでは、業務改善からSyteLine適用、本稼働立ち上げまで、一貫して充実した総合的なサービスを提供している。「適用コンサルテーション・サービス」は、業務分析/コンサルティングからSyteLine導入の計画策定、SyteLineを使ったビジネス・パイロット(プロトタイピング)などを行う。「実装コンサルテーション・サービス」は、上記で計画した内容に基づき、マスタデータ整備/システム運用設計/データ移行など、着実にシステムの立ち上げを行うための支援を行う。「インフラ構築サービス」は、SyteLineを対象としてLAN/WANネットワーク環境とシステムの導入など、情報基盤の構築を支援する。「受託開発サービス」は、付加価値判断を行った上で、外付けが必要と判断されたアドオン・各種インタフェースなどの開発受託を行う。「SyteLine教育サービス」は、SyteLineの機能およびシステム運用管理、プログラミング教育を行う。以上のサービスによって、期間内に確実にシステムを立ち上げてきている。

メンテナンスをドラッグ&ドロップで行う機能である。ビジュアル・スケジューリングは、製造オーダーの作業スケジュール(開始日/終了日など)をドラッグ&ドロップでの変更を可能とし、また、表示されるスケジュール情報のレイアウトをマウス操作のみで変更できるようにする機能である。Co-Productとは、同時に、または連続して生産される品目のことで、一連の作業で複数の品目が製造されるような製造形態にも対応した。By-Productとは副産物のことで、製造過程で発生する生産資材の管理が可能となった。また、支援アプリケーション群である「Syte

Select」(製品編成ツール)、「SyteAPS」(スケジューリング・ツール)、「SyteLine Web」(Webを利用して取引先や仕入先にシステムを構築する)、「SytePower」(多次元分析/簡易帳票作成ツール)も、このバージョンに合わせて機能強化された。

ユニシス・ニュース

1999年6月1日第458号

UN

ハイブリッド生産対応製造業統合システム「SyteLine」日本ユニシス株式会社

ビジネスソリューション三部ソリューション開発一室 第一グループマネジャー 長谷川正人

生販一体型を実現した「SyteLine」

ERPコンセプトを超えたCSRPアプリケーション群

次期バージョン「SyteLine ERP V4」

日本ユニシスのプロフェッショナル・サービス

お得意先�(顧客)��

納期確約��C・T・P(Capable to Promise)

営業支援�●見積支援�●販売支援�

EDI

●電子商取引�

インターネット対応�

●顧客用画面�●仕入先用画面�

取引先�(仕入先など)�

意思決定支援�(DSS)�■多次元分析�

リアルタイム・マニュファクチャリング・プランナー�■高速スケジューリング/シミュレーション�■リアルタイム生産計画�■リアルタイム資材計画�

事務生産性向上�■帳票作成ツール�■定/非定型レポーティング・ツール�

作業進捗管理�●現品票�●進捗管理�

ラベルプリンタ�実績端末�

バーコードリーダー�FAインタフェース�

工程�加工・組立・受入・出荷・検査・在庫 etc.

基幹情報�システム�SyteLine

Syte�

Select

Syte�APS

Syte�

Power

SyteLine�

EDI

Syte�

DC I/F

SyteLine�Web

図2 SyteLineアプリケーション群構成

CADインタ�フェース�

基準部品表�

ジョブ部品表�設変管理�

ジョブ・スケジューリング�&�

キャパシティ・プランニング�前進/後進�有限/無限�

所要量計画�

見積JOB�オーダー�

受注JOB�オーダー�

見積管理�

受注出荷管理�

受注�(部品表コピー)

在庫管理�

納期回答�

在庫推移状況�

購買管理�外注管理�

購買オーダー�JOBオーダー発行� 実績/進捗�

工程管理�進捗管理�

実績収集�設備制御�

ライン/設備/工程�

財務管理�

プロジェクト�管理�

原価管理�

概略能力計画�

基準生産計画�(繰返し生産)�

需要予測/販売計画�

ロット追跡�(ロットNo/シリアルNo)

品質管理�

仕入先/外注先�

集中受注�

受注�

引合/回答�

(

納期・

価格)�

製品編成�

顧 客�

図1 SyteLine機能フロー図

4

ABB(株)フレキシブルオートメーション事業部で

は、日本ユニシスが提供するハイブリッド生産対応

型製造業統合パッケージ「SyteLine」を導入して、

「生販一体型総合システム」を再構築し、本年1月か

ら稼働させた。その再構築への取り組みについて紹

介する。

ABBフレキシブルオートメーション事業部は、自動車メーカーの塗装ライン向け静電塗装装置の製作を行っており、これらの製品は、典型的な少量多品種の受注生産型製品であり、据付工事を伴う。また、受注から納品まで工期が長いのが特徴である。同事業部では、これまでオフコン(シリーズ8)を使って生産管理を主体に、受注、売上、会計業務などのトータル処理を進めてきたが、ゼネラルマネージャー青山 敬之助氏は、以下のような狙いでシステムを再構築することになったと語る。① ハイブリッド生産形態に対応すること② ABBグループ標準のオープンなシステム基盤に移行する③ 現行システムや新規システムとの緊密な連携を図る④2000年問題への対応を図る⑤リアルタイムなデータの共有を図るなどである。こうした狙いからERPパッケージをベースにしてシステムを再構築することにしたが、ABBが標準としている会計機能中心のERPパッケージは、同事業部が指向する受注生産型の生産管理には不向きと判断され、米国のABBパワー(電力発電)関連事業部を中心に20セットの使用実績があり、ハイブリッド生産に対応した「SyteLine」の導入が決定された。

Sytelineの導入に当たっては、全世界で実績のある導入方法論が確立されている。基本的な業務プログラムをベースに模擬データを流しながらカスタマイズや外付け開発すべき項目、機能不足部分を抽出するBP(Business Pilot)である。ABBではSyteLineの導入に先立ち、BPの簡易トライアルであるMiniBPによりカスタマイズ項目の検証が試みられた。この検証では、現場部門から改善要求が数多く出されたため、外付けの開発工数が膨らみ、カストマイズ費用が当初の予定をはるかにオーバーすると見積もられた。そこで、「パッケージの修正はできるだけ避けるという方針に切り替え、全体最適の観点からカストマイズ要求の絞り込みを行った」(青山氏)。その結果、新システムの核となる基本機能、つまり部品展開、生産管理および購買管理についてはSyteLineの機能をそのまま適用する。一方、外付け

新システムは、データベース・サーバ(UNISYS PCAquanta QR/6)およびクライアント17台で構成されるクライアント/サーバ・システムで、業務的には受注~部品構成表、購買/受入、入出庫、製造/実績、原価集計~出荷/売上までの生販一体型総合システムを実現している。 (図2)

新システムの主な業務機能は次のとおり。①個別受注生産品、受注生産品、見込生産品の一元

管理

SyteLineは、見込生産、受注組立生産、受注生産、個別生産などハイブリッド生産形態に対応でき、製番管理/MRP(資材所要量計画)の併用、先行手配、基準生産計画立案、納期回答、製品編成、品揃えの確認などの機能を備えている。これらの機能を駆使して個別受注(システム製品)、受注製品(パーツ売り)、見込生産(常備品)の一元管理を実現させた。②修理、サービス業務の一元管理

SyteLineはユニット/部品中心の管理を基本に、保守・修理・サービス業務までをシステム化の範疇としている。この機能を使って、得意先に対する修理・サービス業務の一元管理を実現させた。③プロジェクト単位の製造原価の一元管理

SyteLineのプロジェクト管理機能を使って、パーツ受注、設計を伴わない工事受注、出張修理、到着品修理、さらに社内設計費、旅費交通費などもプロジェクトとして一元管理し、きめ細かな原価把握を可能とした。④CADシステムからの部品表取り込み

個別生産品については、CADシステムから部品情報を取り込み、技術情報管理機能モジュールを使

の10カ月で再構築が進み、本年1月から新システムが稼働している。

2000年問題への対応も考慮して開発期間は10カ月とし、99年1月の稼働を目指して、新システム導入プロジェクト・チームが編成された。 (図1)

ERPパッケージの導入に当たっては、上層部の理解と権限委譲、正確・詳細な導入計画がその正否の鍵を握るといわれる。ABBでも、新システムの導入を円滑に進めるため、社長、事業部長などで構成する推進体制が組織された。このプロジェクトの実質的なリーダー役を務めたのが青山氏である。プロジェクト・チームには各部門から業務に精通した課長クラスの責任者が各チームの専任メンバーとして抜擢された。専任メンバーは、現場の代表者しての役割と全体最適の視点から現場との調整役の役目を担った。この導入プロジェクト体制と強力なプロジェ

クト・リーダーを得たことで、スケジュール通り

の受注・売上、会計処理の部分は全社会計システム(JDEdwords)を使用して再構築するという決断がなされた。

って部品表データの二重入力を廃止している。⑤全社会計システム(JDEdwords)との連動

仕訳、売掛、買掛データを全社会計システム(JDEdwordsを使用)側に送り込むインタフェースを作り込み、一元的で効率的な会計処理を実現した。⑥外部システムとの連動

その他、自動倉庫システムとの連動による入出庫データのオンライン送信、見積システムとの連動による個別原価データの更新などを実現させた。なお、今回のシステム再構築に当たり、日本ユニシスは、SyteLineの提供、教育、受託開発のみならず、適用コンサルテーションならびに専任SEによるITコンサルテーション・サービスを行った。

1999年6月1日第458号

UN

ハイブリッド生産対応の「SyteLine」で生産管理システムを再構築

パッケージ機能をそのまま活用する

短期導入を成功させたプロジェクト・チーム編成

新システムの構成と業務機能

特集1.生産システムとSyteLine

ABB(株)フレキシブルオートメーション事業部ERPパッケージ「SyteLine」を核に「生販一体型総合システム」を構築

ステアリング・コミッティ�

社長、事業部長、副事業部長、情報システム部責任者�

リーダー:業務課長�サブリーダー:システム担当責任者、システム管理者�

プロジェクト・リーダーズ�

業務・教育チーム� 移行・開発運用チーム� ネットワーク・�インフラ・チーム�

各業務部門責任者�システム担当責任者�システム管理者�

システム担当責任者�システム管理者�各業務部門責任者�

システム担当責任者�システム管理者�システム担当者�

*ステアリング・コミッティ:新システム導入を事業部プロジェクトとして、各メンバーの役割が円滑に行えるようトップダウン方式にて行う�*プロジェクト・リーダーズ:各プロジェクト・チーム、担当者の基本的な方向づけと調整を行う�*移行・開発運用チーム:既存のシステムを熟知し、移行の際のシステム切り分け、運用管理を行う�*業務・教育チーム:社内での新システム教育と意識改革を推進する�*ネットワーク・インフラ・チーム:SyteLineのシステム開発、外付けシステムの開発を行う�

会計システム�(JDEdwords)

SyteLine

プロジェクト�管理�

部品表管理� 在庫管理�

手配計画� 原価管理�

生産計画� 工程管理� 購買管理�

自動倉庫�

見積システム�

CADシステム�

■ABBグループ

ABBは、チューリッヒに本社を置き、世界140カ国に約1,000社の企業と21万人の従業員を擁し、主として発電・送配電機器および産業機械の分野で活躍する世界有数の総合エンジニアリング・グループ。ABB(株)フレキシブルオートメーション事業部(東

京都大田区矢口2-29-6)の静電塗装システムは、国内、海外の多くの自動車メーカーに採用され世界でNo.1のシェアを誇っている。

青山敬之助氏

図1 SyteLine導入プロジェクト体制

図2 新システム概要

5

原動機事業本部は、発電プラントとその主要構成機器であるタービン、ボイラ、計装制御装置などの設計・生産を一貫して手掛けている。近年、発電プラント事業は電力事業の投資の抑制、欧米メーカーとの熾烈な価格競争や納期の短期化など厳しい環境に置かれている。こうした環境変化を踏まえ、全社的な業務改善プロジェクトとして営業情報から見積・設計・製造・調達・輸送・現地工事に至るまでの一貫システム「原動機統合システム構想」が策定された。その基本方針は、『業務プロセスの中で、上流側の1回の入力で下流側が何度もデータを利用できる国際的な情報ネットワーク・システムを構築する』ことである。これにより情報伝達の共有化、単純作業の機械化、重複作業の排除、工場管理の能率化を目指すことになった。

統合化プロジェクトでは営業、設計、生産の各部門が事業所横断的なプロジェクト体制を敷いて必要な機能を整理し、全事業所が使う共通システムを作る活動が96年度から2年かけて実施され98年10月から順次、運用されている。原動機統合システムは、大きく営業、設計、生産の3部門の計5システム(営業情報、事業所生産、プラント統合、タービン統合、ボイラ統合)で構成さ

れ、各システムはそれぞれネットワークを介してデータ連携されている。

(図1)

これらのシステムの中で、最も大規模に業務効率化を行ったのがプラント統合システムで、以下に同システムの取り組みについて紹介する。

プラント設計部門では、機器の配置、配管のルート設計など発電プラント全体の計画・設計を行っている。従来から各種の設計計算システムやCADシステムが多用されてきたが、各部門や各事業所単位での開発・運用であったため、部門間のデータ連携に不備があった。そこで、◇設計情報共有化のための標準化

*機器名称、コード体系、データ形式◇複数設計部門間の設計情報を電子情

報として共有

*プラント計画・設計、配置、配管、土

木建築、計装制御、電気などの設計情報

*部門間でのオンライン・データ授受*本社・事業所間でのシステム統一などを基本方針としてプラント統合システムの構築が進められた。プラント統合システムは、8つの機能別設計システムから構成されており、それぞれがシステム内にデータベースを持ち、このすべてのシステムが“システム統合機能”によって相互のデータ共有化を実現している。

このシステム統合機能の実現に当たっては、日本ユニシスが開発パートナーとして参画した。日本ユニシスを選んだ理由について、原動機事業本部原動機業務部システム技術グループ主任日岡孝則氏は次のように語っている。「このシス

テムは、データ共有化が大命題である。その実現方法として、PDM(Product Data Management)で、という発想が自然であった。PDMでは製品構成をシステム化するのは容易で、それに対応する図面の管理もできる。しかし、命題の“データの2度入力をしない”という機能の実現にはPDMシステムの中にデータ転送機能が必要に

なるし、投資コストもかかる。提案を求めたベンダのほとんどがPDMによる共有化を提案した中で、唯一日本ユニシスだけが、Web技術による共有化を提案し、その斬新な発想に虚をつかれる思いがした。両者の優

劣を比較してみると、Webベースのシステムは、ブラウザを搭載するだけで済み、コスト面において圧倒的に有利である。このような大規模システムの全クライアントにPDMソフトウェアを導入するのはコスト負担が大きくなるからである。また、Webでは8つの設計システム間のデータ共有を柔らかな連携の下に行える。それぞれの事業所の特性を活かし、自由度を確保しつつ柔軟に連携するにはPDMよりもWebが適している。そこで、こうした提案を評価し、特定の技術に固執せず、技術を客観的に評価できるSIベンダとしての日本ユニシスを開発パートナーとして選び、システム化全体の情報技術の側面からのコンサルティング全般を依頼することとした」。

すべてのシステムの設計データを共有化する「システム統合化機能」としては次の3つが開発された。①プロジェクト管理情報の共有化機能

分散化された設計システムで、共通のプロジェクトを扱うため、各システムにプロジェクト管理情報を配信する機能。本社でプロジェクト管理コードを付番し、各事業所の管理データべースにも配信されるためシステム間のデータ共有のみならず事業所間のデータ共有も併せて実現している。 (図2)

②設計データベース間のデータ連携機

標準コードを共通に使って、必要な設計データを分散したデータベース間でダイレクトに転送したり、データを取得できる。③図面情報の共有化機能

各システムから出力した図面を図面管理システムに集約し、所内での図面閲覧とともにWebを使って事業所間での検索ルートを開き、図面レベルでのデータ共有化を図っている。これらの機能によって、1度の入力で、下流側の再入力が排除できるシステムが実現された。

ユニシス・ニュース

1999年6月1日第458号

UN

三菱重工業原動機事業本部三菱重工業株式会社 原動機事業本部では、情報の共有化・一元化による業

務効率の向上を目的とした情報共有一貫システム(原動機統合システム)を構

築し運用している。

本システムの中で、規模的に大きなウェイトを占めるプラント統合システ

ムのデータ連携/共有化機能については日本ユニシスが開発パートナーとして

参画しサポートに当たった。

■三菱重工業株式会社◆近代日本産業のパイオニアとして、船舶、鉄構、原動機、プラント、航空・宇宙機器、産業用・一般用機械など産業活動の基盤となる各種製品を提供し

ている総合機械メーカーである。◆本社=東京都千代田区丸ノ内2-5-1◆従業員数=40,521人(98年4月)◆売上高=2兆6,532億円(97年度)

発電プラント部門の情報共有一貫システムを構築

製造工業情報システム

事業環境の変化が業務改革を促す

全社横断プロジェクトで統合システム構築を推進

プラント統合システムの基本方針

日本ユニシスがWebでの情報共有化を提案し開発パートナーに

システム統合化機能の仕組み

POWER-P

プラント統合システム�

・プラント計画・系統設計�・3次元配置配管CAD�・計装制御・電気設計�・土木建築設計�

POWER-T

タービン統合システム�

・設計システム�・3次元CAD

営業情報システム�

・商談・引合フォロー�・定型情報データベース�

全社�ネットワーク�

POWER-B

ボイラ統合システム�

・設計システム�・3次元CAD

POWER-C

事業所生産システム�

・生産支援システム�・B/Mシステム�・見積システム�・資材調達システム�・発送システム�・現地工事システム�・プロジェクト統括管理� システム�

図1 原動機統合システム全体像

プロジェクト管理情報の共有化�  ・各設計システムにプロジェクト管理情報を配信�  ・Web(イントラネット)による登録と検索�

各事業所�

社内LAN��

Webサーバ�

Web�アプリケーション�

ブラウザ�

プロジェクト情報�

登録�

検索�

プロジェクト管理DB�(マスタ)��

クライアント�(設計用PC)�

�設計�

アプリケーション�

設計�アプリケーション�

設計DB 設計DB

参照��

サーバ�

プロジェクト管理DB�(複製)

複製�

図2 データの共有化:システム統合化機能

日岡孝則氏

6 1999年6月1日第458号

日本ユニシスは、創造性のあるソリューションを提案する「Solu t ionCreators」を目指して「OnNet Solution」を提唱した。(99年5月号参照)OnNet Solutionは、ソリューション体系であり、企業が抱える課題の解決と同時に新たなビジネスの創造を支援するものである。

これにより日本ユニシスは、業種・業務に関わる経験と実績を基に、最新のITを活用し、最適な製品やサービスを組み合わせ、最適でトータルなビジネス・ソリューションを短期間で構築することを可能にする。図1にOnNet Solutionの全体像と特徴を示す。 (詳細は後述)

日本ユニシスは、98年6月、コスト・パフォーマンスに優れたWindowsNTベースの企業情報システム構築を推進するエンタープライズNTビジネスをビジネス基盤の重要な柱と位置づけ、「エンタープライズNT(eNT)戦略」として本格的な取り組みを開始した。このeNT戦略は、今後、OnNet Solution体系に基づき、強力に推進するとともにeNTを実現する堅牢なプラットフォームのラインアップ充実を図る。日本ユニシスが目指すエンタープライズNT(eNT)戦略は、メインフレーム

で培ったソリューション力をWindowsNTに投入して、エンタープライズNTを実現することにある。このeNTの実現には、①強力で堅牢なプラットフォーム②優れたソリューション構築力が必要とされる。堅牢なプラットフォームについては高可用性を実現した高性能サーバ「AQUANTA ES5000シ リ ー ズ /同ES2000シリーズ」を発表するとともにHA(High Availability)製品を強化した。

eNTによる企業情報システムには、高可用性を実現するプラットフォームが求められる。日本ユニシスは、エンタープライズ・コンピューティング環境におけるWindowsNTの適用を実現するために、独自に開発した拡張機能「ess(Enterprise Server Software)」を標準搭載した高性能サーバ「AQUANTAES5000シリーズ」(4機種)の販売を4月末から開始した。ES5000シリーズは、日本ユニシスが推進する「eNT戦略」のプラットフォームとなるサーバ・シリーズの「プレミアム・モデル」に位置づけられるもので、先に発表した「AQUANTA ES2000」シリーズの上位プロダクトに当たる。これまでWindowsNTを搭載したサーバは、メインフレームなどと比較してシステムの管理機能や可用性の面で機能が不足しているといわれてきた。「ess」はこうした機能を補完し、エンタープライズ・クラスのシステムでの運用を支援するものである。◆ES5000シリーズの特徴

ES5000シリーズ(4機種20モデル)の特徴は次のとおりである。①最新のペンティアムⅢ Xeon(ジーオン:500MHz)を最大4CPUまで搭載(4wayサーバ)可能拡張規模に応じて2つのクラス(上位モデルであるES5045、5045Rとバリュ

ーモデルであるES5043、5043R)の4機種20モデル(末尾がRのモデルはラック型)を提供する。②システムの可用性を高める付加機能「ess」を搭載アプリケーションごとにCPUを動的に割り当てる「esProcess.mgr」をはじめとする6つのツールにより、プログラマブルで強力なスクリプト機能を利用してシステムの運用状態の管理や保守性の向上を実現する。③UNIX/RISCサーバを上回る高性能を達成トランザクション性能(TPC-C)、Webサーバ性能(SPECWeb96)、メールサーバ性能(MicrosoftExchange MMB)といった各種ベンチマークで優れた値を測定しており、同等の4wayインテル・アーキテクチャ・サーバのみならずUNIX/RISCサーバと比較しても上回る性能を示している。④高可用性を確保する H A ( H i g hAvailability)モデル

も提供クラスタリング技術を用いてシステムの可用性を向上させるHAモデルも合わせて提供。これは使用する規模や目的に応じてMi c r o s o f t

る。(後述参照)◆ ES2000シ

リーズに2機

種を追加

さらに3月に発表した

ClusterServerを用いる「共有ディスク型フェイルオーバー・クラスタ」であ

「AQUANTA ES2000」シリーズに新たに2wayサーバモデルとして「AQUANTAES2025」「同ES2025R」を追加し販売を開始した。

ウン時間は8時間以内と想定される。③ES5000シリーズをベースにパッケージ化したもので導入時のシステム構成と導入作業の負荷を軽減できる最新のインテル製CPUである

Xeon(ジーオン)を採用した高性能4wayサーバと、メインフレームでも利用している大容量共有ストレージの組み合わせはエンタープライズ・クラスの高性能と信頼性を提供する。④各種サービスの利用が可能多くのエンタープライズ・システムを手がけてきた日本ユニシスが提供する各種サービス(導入前のコンサルテーション・サービス、クラスタ・システムの導入サービス、設置後の運用保守サービスなど)を利用できる(別途契約による有償サービス)。本セットの提供で、安価な部門サーバから大規模な基幹システムまで、「NTハイ・アベイラビリティ・ソリューション」の適用範囲を大きく拡大した。

サーバの可用性を高め、WindowsNT環境におけるエンタープライズ・システムの構築・運用を強化するための製品として最上位レベルに位置する「並列型負荷分散クラスタセット」をラインナップに加え、「NTハイ・アベイラビリティ・ソリューション」製品群を大幅に強化した。今回発売の製品はオラクル社の

「Oracle Parallel Server」を利用した「並列型負荷分散クラスタセット」で、従来提供していたセットより大規模なシステム構築を可能としている。本セットの主な特徴は次のとおり。①最大4ノードまでクラスタリング可能従来のセット(最大2ノード)と比較してスケーラビリティが拡張されている。②99.9%以上(目安)もの優れたシステム可用性24時間365日連続稼動した場合、ダ

「ess」は、ユニシスが独自に提供する拡張機能で、ES5000シリーズに標

準バンドルされる。現在のWindowsNTは、サーバ管理

お客様�

顧客サー�ビス向上�

意思決定�の迅速化�

外部企業�との連携�

営業活動�の改善� 本業強化�

お客様の課題の解決� 新たなるビジネスの創造�

OnNet Solution

OnNet �Application

Solution�Framework

OnNet �Technology�Framework

OnNet Enabler

OnNet Baseline

OnNet �Service

コンサルテーション�

システム構築�

要件定義�

設計�

開発�

導入�

運用・保守�

教育�

プラットフォーム�

ネットワーク�

実証・

実験センター�

開発センター�

サポート・

センター�

お客様の課題に対する解決策を最新のITを適用し、S/W、H/Wそれに定評あるサービスを組み合わせたトータルなビジネス・ソリューションとして提供�

・短期間でのシステム開発を可能とする�・変化への対応を可能とする�

・情報システム構築期間を短縮する�・構築されたアプリケーションの継続的な使用を可能とする�

・アプリケーションに対し、オープン環境で信頼性の高い安定した基盤を提供する�

・エンタープライズ・サーバ(汎用機、UNIX、エンタープライズNT)�・プラットフォームの共存/連携機能�

・実績豊富なトータルなネットワーク・サービス�

・日本ユニシスの経験と実績を集大成し、さらに最新ITの効果的な活用を図ることによって、ミッション・クリティカルなビジネス・ソリューション実現(システム構築)を支援�・コンサルテーションから保守に至るまで、トータルなサービスを提供�・PCクライアントからNTサーバ、UNIXサーバ、汎用機までを対象としてトータルなサービスを提供�・豊富な実績と経験に基づく、LAN/WANを統合したトータル・ネットワークの設計、構築、保守サービスを提供�

TEAMmethod

OnNet Solution-新たなるビジネス創造のために

日本ユニシスが目指すeNT戦略

eNT実現に向けた高性能サーバ「AQUANTA ES5000シリーズ」発表

ess(Enterprise Server Software)でサーバ管理機能等を大幅に向上

図1 OnNet Solutionの全体像と特徴

ES5043R(ラック型)

ES5045(スタンド型)

OnNet Solutionに基づくエンタープライズNT(eNT)戦略日本ユニシス株式会社eNTビジネス推進部

特集2.OnNet Solution―eNT戦略

HA(High Availability)製品群も大幅に強化

7

機能や性能管理機能、または障害発生時の原因追求ツールなどが不充分であり、エンタープライズ・システムにWindowsNTを適用させるにはこれらの機能を拡張させることが不可欠である。essは、目的別に表1のよ

うに3つのカテゴリ(Suite)に分類される。これらは、それぞれ独立

して稼働するのではなく、相互に連携してシステムの可用性を向上させるものである。また、essは強力なスクリプト言語を備えており、Visual Basicなどの一般的な言語を利用してカスタマイズすることができる。例えば、特定のサービスが停止した際、それをイベントとし

ソリューションとアプリケーションは同一視されることが多いが、eNTの実現にはアプリケーションの提供だけでは不充分であり、システムの構築・運用・適用・保守などすべてを含めて“ソリューション”となり得る。“Solution Creators”を目指す日本ユニシスが提唱するOnNet Solutionは、この考えに基づき最新のITを活用して最適な製品やサービスを組み合わせ、

て捉えて管理者に通知する。または異なるサービスを起動させたり、システム稼働状況を保存して障害原因の追求をサポートするなどさまざまな要望に応えることができる。 (図2)

最適でトータルなビジネス・ソリューションを短期間で構築することが狙いである。つまり、①企業間連携や業務間連携の容易な実現②個別業務ではなく経営および業務プロセスの視点での体系化③最適でトータルなビジネス・ソリューションの短期間での構築を目的としている。

OnNet Solutionは、①アプリケーション群を体系化した「OnNet Application」

②システム構築と運営を支援する「OnNet Service」

③システム構築基盤を体系化した「OnNet Technology Framework」

で構成される。日本ユニシスは、OnNet Solutionに基づき、次のようなeNTの展開を図っている。◆ アプリケーション群の体系化:

OnNet Application

これはソリューションを企業の業務モデルに基づいて表2のように体系化し、業種別業務ソリューションと業種共通ソリューションの業務間連携あるいは

複数の企業間をまたがった各種ソリューションの企業間連携を推進する。

(図3)

◆ システム構築と運営を支援するサ

ービス:OnNet Service

◇ワンストップ対応のサービス体制ワンストップで応えられるサービス実現のため、昨年7月、eNTによる企業情報システムの企画・設計から構築・運用、教育に至るトータルなサービス/サポート拠点として「eNTテクノロジセンター(eNTEC)」を開設した。

このeNTECは、先進のパートナー企業と連携したグローバルなサービス/サポート体制の日本での拠点である。現在、eNTECではお客様が安心して活用できるeNTを目指して、プロダクトの実証・検証、常設デモ環境の提供、ベンチマーク・テストやプロトタイピングでの活用、セミナーなどを実施している。今後、長年にわたり培ったメインフレームやUNIXによるミッション・クリティカル・システムの構築実績やノウハウ、サービス、技術力をeNT分野に適用し、eNTECを中核としたサービス/サポート体制の強化・拡充を図る。◇パートナーシップによる障害対策の強化日本ユニシスは先進のパートナー企業と戦略的な提携を行っている。その狙いは、最も優れたコンポーネントを選定してパートナー企業の先進ITを組み合わせ、実証実験を行い品質を保証し、万全のサービス/サポート体制を確立することにある。このため、マイクロソフト社と提携して「eNTバックオフィスコンピテンスセンター(BOCC)」を開設し、Windows NTや

Back Office製品に関するセミナーやソリューションの提案、コンサルティングなどを実施している。一方、米ユニシスでは、米マイクロソフト社とHA契約を結び、緊急トラブルに対する24時間サービスを実施しているが、このHAサービスの導入も検討するなどパートナーシップによる障害対策の強化も図る。◆システム構築基盤の体系化:OnNet

Technology Framework

これはソリューション構築を支援し、企業間連携、業務間連携を容易に実現するもので、OnNet EnablerとOnNet Baselineで構成する。OnNet Enablerは、エンタープライズNTの構築を支援するソフトウェア製品群で、これを使用することによって最適なITを適用した情報システムの短期間での開発や開発成果の継続的な使用が可能となる。OnNet Baselineは、自社製品、市販製品から精選したeNTを支えるプラットフォーム・ソリューション群である。これを使用することによって情報システム基盤の早期構築と安定性の確保が可能になる。

今日のビジネス変革を支えるポイントの1つは最新ITを活用した企業情報基盤の確立にある。PCのOSとして登場したWindowsは、今や企業の基盤業務を担うサーバOSとして発展、WindowsNTによるミッション・クリティカル・システムの構築事例が増えている。例えば、アメリカNASDAQ証券取引所では、ユニシス提供の高性能サーバ「AQUANTA ES5000シリーズ」を核とする大規模NTシステム(証券取引監視システム)を構築し、1秒間に300件以上の処理の維持やトラブルが複数発生しても充分に実用に耐えられる高可用性を実現するなどエンタープライズNT化を成功させている。また、日本の(株)KG情報では、

AQUANTA QS/2とOracleを採用して求人情報検索システムを構築した。これは都内10カ所、335台のPCからインターネット経由で、求人情報を検索するシステムである(詳細:本紙5月号で紹介)。このようにWindowsNTの基幹業務への適用が顕著になってきている。

◇OnNet Solution体系に基づくソリューションやサービスの提供、ess搭載による強力なサーバの提供などは、日本ユニシスのeNT戦略を推進するために不可欠なもので、今後もeNT分野に向けてさらなる上位サーバ・シリーズの提供やパートナー企業との連携強化によるHAサービスの提供などを予定している。

ユニシス・ニュース

1999年6月1日第458号

UN

ビジネス・ソリューションの短期実現を目指す「OnNet Solution」

OnNet Solutionに基づく「eNT」

「eNT」の構築事例

顧客対応業務ソリューション�

対取引先業務ソリューション�

経営支援企画業務ソリューション�

基礎業務ソリューション�

ソリューション�業種共通�

業種共通�ソリューション�

業務間連携�イネーブリング�

業種別業務�ソリューション�

企業間連携イネーブリング�

情報技術・製品� サービス�

業種別業務�ソリューション�

金融� 製造�

電力・ガス�

医療�航空�

流通�

・OnNet Applicationの目的� ―「業種別業務ソリューション」と「業種共通ソリューション」による「企業間連携」「業務間連携」を推進する�

表2 Solution Frameworkの分類

業種共通ソリューション

顧客対応業務ソリューション対取引先業務ソリューション経営支援企画業務ソリューション基礎業務ソリューション

業種別業務ソリューション

金融ソリューション製造ソリューション流通ソリューション電力・ガスソリューション航空ソリューション医療ソリューション自治体ソリューションなど

図3 OnNet Applicationの概念

・強力なスクリプト言語でカスタマイズ可能�

・サーバ管理機能の強化�

 ―esManagement Suite�

・性能管理機能の強化�

 ―esPerformance Suite�

・可用性の強化、�

 障害発生時の追及支援�

 ―esUptime Suite

essでエンタープライズOSの�水準に機能拡張�

管理機能� 性能管理�

可用性�

WindowsNTの機能�

図2 独自開発機能「ess」

表1 essのカテゴリ

目的

パフォーマンスを向上

管理機能を向上

可用性・保守性を向上

分類(Suite)

esPerformance Suite

esManagement Suite

esUptime Suite

構成するツール

esProcess.mgr

esSystem.mgr

esPower.mgr

esAnalysis.mgr

esService.mgr

esContrast.mgr

8

農林漁業金融公庫では、総合オンラインのシステム開発に当たって次のような5つの課題を持って取り組んできた。(1)保守・管理が容易な勘定系システム

構築

現行のシステムは、1972年に開発以来、制度改正に伴う修正や事務改善のための業務のシステム化を行ってきたため、システムが複雑化し、保守コストの増大を招いていた。また、委託貸付(農林中央公庫など他の金融機関を通じた貸付)はバッチ処理、公庫の直接貸付はオンライン処理と、公庫資金でありながら事務処理方式が異なっていた。(2)情報化への対応

従来のシステムでは、情報の活用には、統計表や一覧表を利用するしかなく、新たな資料の要請には、その都度システム開発が必要であった。(3)データ処理の迅速化

受託金融機関からの報告は、半旬ごとの取りまとめ報告で、このデータ処理もバッチ処理になっていたため、月締めの統計などの作成に長時間を要していた。(4)事務処理の簡素化・迅速化

公庫資金の取り扱いをシステム化している受託金融機関からの報告はMT伝送により行われているが、それらの報告以外は紙の報告書を郵送する方式となっていたため、事務処理が複雑で手間もかかった。

(5)情報を活用した融資業務の推進

①貸付や融資先の情報などが書類やファイル、コンピュータやFDに分散して保管されていた、②勘定系データを利用するためには、その都度システム開発を行っていた、③紙の情報が多く情報の加工や分析が簡単に行えなかった。このため、営業活動や審査に必要な情報の検索に手間がかかり、情報の加工や情報の共有化も進展しなかった。

基本設計に当たり、総合オンライン化対策推進プロジェクト・チームを公庫内に設置し、具体化に必要な事項の検討・立案を行った。実際の開発体制としては、設計段階における公庫業務の知識の必要性、システム完成後の維持管理者の必要性と開発規模などを考慮し、内部要員14名を確保した。一方日本ユニシスでは、LINCシステム開発経験者、金融システム業務設計精通者などのメンバーを投入して開発に当たった。

総合オンライン・システムでは、課題を解決するために、次のような対応を図った。(1)システム全体を刷新して、分かりやすいものとし、資金制度の改正に迅速に対応できるよう、リレーショナル・データベースを採用した。(2)半数以上の統計・帳票を廃止し、これに代わるものとして必要なデータ

をC/SSで提供し、必要の都度利用者が加工・分析できるシステムとした。

(3)報告の日報化、内部処理の日次化によりデータ処理の迅速化を図り、統計などの作成期間を大幅に短縮した。

(4)直接貸付と委託貸付のシステムを同一の処理形態に統合し簡素化を図るとともに、データ処理効率を向上させた。また報告書類の大幅削減と、MT伝送対象データの拡大により事務を合理化した。

(5)C/SSを構築し、顧客情報や営業活動に必要な情報のデータベース化、貸付審査の迅速化・的確化、情報の共有化、情報利用の高度化を図った。

総合オンライン・システムは、ホスト・コンピュータ(UNISYS2200/5211)を中心とした勘定系システムとC/SSによる情報系システムから構成されている。勘定系システムは、貸付を中心とした公庫の基幹システムである。1995年4月から開発を開始し本年5月6日に稼働した。本店および21支店内にLANを敷設しISDN回線で本・支店を接続している。 (図参照)

情報系システムは、勘定系から提供されるデータを全職員が自由に利用でき、また文書をはじめ、写真、図面などの送受信が可能になっている。情報系システム用の機器は97年度より導入を開始し、段階的に増設を行ってきた。

適用ソフトウェアとしてLINCが採用された。LINCは、オンライン・トランザクション処理システムの開発/保守/運用の全工程を一貫して支援する生産性の高い統合CASEツールであり、既存システムやデータベースとの共存、インタフェースの容易性に優れている点が評価され、採用につながった。LINCを採

用したことで、

次のような点が実現された。(1)開発の生産性向上

プログラム規模は、COBOLでは180万ステップにのぼるが、LINCではその半分の90万LDL(ステップ数)で済み、その結果プログラム開発工数も削減でき、プログラム開発の生産性を飛躍的に向上させた。①総合オンライン・システムを構築するための時間とコストを削減

②制度変更など不断の変更に迅速に対応するシステムを構築

③システム・ライフサイクル全般にわたって各種の方法論と技法を駆使した統合CASEによって、品質、生産性、経済性に優れたシステムを構築できる

(2)保守の生産性向上

融資条件が毎年定常的に変更され、これに伴うプログラム保守量は年間1,000本前後にのぼり負荷が大きい。LINCでは、データベース、データ項目、ロジックなどがカプセル化され、画面上で一気に修正・テストできるため、保守の生産性を大幅に高めることができた。

1999年6月1日第458号

農林漁業金融公庫農林漁業金融公庫では、統合CASEツール「LINC」を採用して「総合オンライ

ン・システム」を構築し、5月6日より稼働を開始した。LINCの採用でプログラ

ミングの生産性向上、高品質化、さらにメンテナンス性の大幅な向上を実現

している。

■農林漁業金融公庫◆1953年4月、全額政府出資により設立された農林水産業関連の唯一の政策金融機関。農林水産業と関連産業に対する長期・低利資金の融資を通じて生産基盤の整備や経営の改善を支援している。

◆本店=東京都千代田区大手町1-9-3◆代表者=鶴岡俊彦総裁◆融資残高=4兆3,179億円(97年度末)◆店舗数=21支店◆主な使用機種=エンタープライズ・サーバ「UNISYS2200/5211」×2台。

総合オンライン・システム稼働開始統合CASEツール「LINC」の採用で開発/保守の生産性向上を実現

金融情報システム

総合オンライン・システム開発の課題

開発体制

総合オンライン・システムによる改善点

総合オンライン・システムの構成

北海道支店��

本 店�

端末�

端末�

端末�

端末�

端末�

端末�

端末�

端末� 端末� 端末� 端末� 端末�

端末�

端末�

端末�

端末�

端末�

端末�

端末�

端末�

端末�

端末�

端末� 端末� 端末�

9600bps

9600bps

センター�マシン�

UNISYS�2200/5211

48Kbps

NTT��

INS64

鹿児島支店�

宮崎支店�

熊本支店�

長崎支店�

福岡支店�

松山支店�

高松支店�

松江支店� 岡山支店� 近畿支店�

東海支店�

北陸支店�

新潟支店�

東京支店�

長野支店�

関東支店�

仙台支店�

盛岡支店�

秋田支店�

青森支店�

総合オンライン・システム稼働式でテープカットする(左から)日本電気コンピュータシステム常務取締役 菅野 眞二氏、農林漁業金融公庫前監事 渋谷 孝義氏、副総裁 藤原 和人氏、総裁鶴岡 俊彦氏、前理事 澤田 茂氏、日本ユニシス代表取締役常務鳥居洋介

総合オンライン・ネットワーク(勘定系)図

統合CASEツール「LINC」を採用し開発・保守の生産性向上を実現

UN

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ユニシス・ニュース

1999年6月1日第458号

北越銀行では、89年9月からUNISYS1100/92×2ホストを中心としたホットスタンバイ方式の第3次オンラインを稼働させた。その後、データ量の増加に伴い、93年9月に同2200/622×2にレベルアップするなど処理能力の増強を図ってきたが、96年3月末にシステムの能力調査を行った結果、98年9月末に能力の限界に達するものと予測された。そこで後述の新事務センターの建設と合わせ、ホスト・システムの処理能力を増強して、金融新時代に備えた情報基盤の整備を図ることになった。新オンライン・システムは、①現行システム資産(プログラム)の継承

②稼働開始時において実処理能力で1.5倍の処理能力の確保

③今後の課題に対応可能な柔軟な拡張性の確保

④ノーダウン・システム実現による信頼性の向上

⑤24時間オンライン稼働に向けたインフラの確保

⑥最新OSによる2000年問題のクリア⑦最新技術の採用による省電力・省スペースの実現

などを基本方針として96年10月から移行作業が開始され、本年5月6日に本番稼働を迎えた。

新システムは、本番機としてClearPathサーバ「ITASCA N3800モデル22G」×2台、開発機として「UNISYS2200/5211」×1台ならびに拡張データ処理装置「XPC」など最新機器が導入され、XTPA(拡張トランザクション処理アーキテクチャ)に基づく、並列処理によるトランザクション処理能力の増強とノーダウン・システムが実現された。また、営業店端末も汎用OS搭載の新端末機に更改された。新システムで実現された主な機能・特徴は次のとおり。*無停止連続処理の実現

XTPA化により、障害発生時の切り替え動作を必要とせず、処理はバックアップ機で無停止状態で継続される。また、ホスト分散運用が可能なため、各営業店のすべての端末を止めることなく稼働できる。

*データ入出力処理/ト

ランザクション処理

の高速化

XPCのグローバル・キャッシュ機能などの採用により、使用者プログラムを変更することなくデータの入出力処理を飛躍的に高速化した。また、XPCに更新ログが書き込まれた時点でトランザクション処理が完了するため処理が高速化された。*最小限の投資でシステム増強が可能

省スペースのため将来の設置場所において1ホスト当たり8IPモデル、1システム当たり最大32IPまでの拡張が行える。このため、今後の拡張はIPの増強だけで可能となる。*CMOS技術採用で価格性能費が向上

CMOS技術を全面採用した最新ハードウェアの採用により、低消費電力によるコストの削減、省スペースによる設備コストの低減などが図れた。*システム運用の統合管理

統合運用管理システム(拡張IOF)の採用により、複数システムの一元管理が可能となった。*システム開発効率の向上

最新規格に準拠したソフトウェア(UCOBなど)およびマンマシン・インタフェースを高めたソフトウェア(PADSなど)が使用できるため開発効率が向上できる。*汎用OS化した営業店端末への更改

汎用OS化した新端末に更改するとともにLAN化した。これによりプログラムの自動配信や端末別精査などが可能となった。今後、ATMもLAN化の予定。*伝票共通化による事務効率の向上

事務効率化のために各種伝票類を共通化するとともにA5版に大型化し見やすく・書き込みも容易にした。*2000年問題対応のクリア

西暦2000年対応の最新機器に一新したことにより、ホスト・システム関連の2000年問題対応が図れた。

同行では、新オンライン・システムの構築と合わせ、新事務センターを長岡市近郊の三島郡三島町に竣工させた。従来、コンピュータ・センターは本店内に置かれていた。しかし、銀行のオンライン・システムは経済活動や個人生活に深く関わっており、そのトラブルは社会的に大きな影響を与える。そこで、オンラインの中枢機能を担うセンターを本店と切り離して、コンピュータの安定稼働と万全な安全対策、ならびに分散していた事務集中部門の1カ所集中化などを狙いに新事務

センターが新設された。事務センターは、電算棟と事務棟からなり、電算棟の設備関係の設計施工は、FISC(金融情報システムセンター)のメンバーであり、その安全基準に準拠したセンター施工に実績を持つ日本ユニシスが担当した。

新事務センターは、FISCの安全基準を遵守した地震・水害などの災害対策、監視・防犯のための入退館システム、自家発電装置、無停電電源設備などを備えたインテリジェントビルで、その特徴は次のとおりである。*二重のバックアップ施設

UPS300KVA無停電電源装置×3台など重要電源設備の二重化を図るとともに1,500KVAガスタービン式発電装置・地下燃料タンク5万リットルを装備し3日分(72時間)の稼働を確保するなど非常時対策を施している。*防災・防火対策

地震に強い2次元免震床を採用するとともに電算室に感震器を設置し、管理室に震度を表示。河川からの水害対策として建物地盤を1.5m地上げし、コンピュータ機器は3階フロアに設置した。また、電算室・CVCF室・受変電室・PBX室に最新ガス消化設備(FM-200)を設置した。*万全なセキュリティ対応

コンピュータ機器などの障害信号を伝送して集中監視する中央監視装置は各設備機器と二重経路を有し、各機器の状況を常時監視している。また非接触IDカードを使用した個人ごとの入退館システム、防犯ビデオカメラを施設内各所に配置するなど細心のセキュリティ対応を図っている。

◇システム部システム二課長関 雄介氏は、「今銀行の情報システムはいかに自由化や競争激化に適応できるかが求められ、経営戦略の実践的武器としてますます重要度が増している。今回、その中枢を担う事務センターとシステム基盤の整備ができた。今後は、情報系を含め戦略に結びつくシステム化対応を図っていきたい」と語っている。

北越銀行北越銀行では、金融新時代に対応した金融サービスの展開を図るために、

安全対策に万全を期した新事務センターを竣工させるとともに、最新鋭の

ClearPathサーバ「ITASCA N3800」や拡張データ処理装置「XPC」を採用して並

列処理によるノーダウン・システムや大規模・高速なトランザクション処理な

どを実現した「新オンライン・システム」を5月6日から本番稼働させた。

■株式会社北越銀行◆明治11年の創業以来、新潟県の地域経済の発展、地元企業の繁栄、地域住民の生活向上に貢献してきた。さらに地域に役立つ銀行・信頼される銀行を目指して金融サービス活動を展開している。◆本店=新潟県長岡市大手通2-2-14◆代表者=高橋正康頭取

◆預金量=1兆7,826億9,600万円(98年9月末)◆店舗数=100店(同)◆従業員数=2,122人(同)◆新事務センター=新潟県三島郡三島町大字吉崎字塚田985-85◆使用機種=ClearPathサーバ「ITASCAN3800モデル22G」×2、「2200/5211」×1、「A7-711」×1など

金融新時代に対応の「新オンライン・システム」稼働

並列処理によるノーダウン・システムを実現

金融情報システム

大幅な処理能力の向上、無停止稼働を狙いに

新オンライン・システムの機能・特徴

安全基準に準拠した新事務センターも竣工

新事務センターの特色

新オンライン・システム稼働式でテープカットする(左から)、北越銀行 専務取締役 堀 健治氏、日本ユニシス 社長 天野 順一、北越銀行頭取 高橋 正康氏、沖電気工業 社長 篠塚 勝正氏、北越銀行常務取締役池田徹氏

新事務センター

UN

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通信販売の受付業務から代金回収までのフルフィルメント業務の代行が同社の中核業務である。クライアント側のコールセンターから発送依頼データを受けて、データベースへの顧客データ蓄積、さらにそのデータを分析してダイレクトメールのデータ抽出時に提案するのが業務の流れである。常務取締役 営業本部長 鈴木秀人氏は、「各種メーリング業務に対するクライアントからの要望はいろいろある。例えば、資料や商品が届くのが遅い、電話回線やFAX、電子メールなどの設備が足りない、外注するにはコストが見合わず自社では人手が足りない、カタログやサンプルを保管するスペースがない、請求者の情報をデータ化できない、アンケート収集・分析のノウハウや余裕がない、顧客情報やアンケート情報を迅速に現場に提供できない等々である。こうしたニーズに応えられるサービスを提供することが当社の使命と考えている。そこで、コールセンターを設置して受注から発送までの一連の業務を一括して請け負うことで、当日発送が可能な迅速体制を整備した。これによって、多様な通信手段で受け付けた発送依頼

を迅速に処理し、午後3時までに受けた依頼を当日に、3時以降に受け付けた依頼を翌朝処理する当社ならではのサービスを提供できる」と語っている。Tiny Call Center導入の狙いとして次の点を挙げている。*データの受け入れ口に幅を持たせ、既存の郵便、FAX、電子メールに加えて迅速性に優り、顧客の生の声を収集できる電話対応能力を保有し、かつ顧客からの問い合わせに常に同一の回答を行える仕組みを作る。*既存の情報処理機能、フルフィルメント機能、物流機能などとのシームレスな統合を図る。*コスト・パフォーマンスが高く柔軟性に富んだコールフロー設計を実現する。

CTIシステムの選定に当たって、開発、テストを含み1週間から10日で業務を立ち上げられるスピード性を確保し、自社でコールフロー・アプリケーションを開発できること、既存のシステムとの連携が容易であること、低コストであることを要件とした。その結果、次のような点から、ユニシスの「Tiny Call Center」を選定した。*コールフローを容易に迅速に作成

鈴木氏は「速やかに対応ができることが選定の第一条件であった。クライアントからの新製品の情報は1週間前に出されることも多い。その時点から

新商品用のコールフローを設計し、作成・テスト・実際の稼働まで行えなくてはならない」と語る。Tiny Call

CenterはGUIアプリケーション・ジェネレータによって社内で簡単にコールフローを作成できるため、時間を短縮し、コストを抑えられる。*低コストで

経済性に優れ

ている

コールセンターに必要なPBX(構内交換機能)、ACD(自動呼配分機能)、IVR(音声応答機能)、CT Iを1台のWindowsNTパソコンにオールインワンで搭載しており機能面が充実している。また、PBX機能をPCで実現したUnPBX型のため場所もとらず、低価格でコストも大幅に削減できる。*既存システムとの容易な連携

WindowsNTを基本としたシステムのため、既存のクライアント/サーバ・システムとの連携が容易であり、すでに自社開発している入力システムとのリンクが円滑に行える。*保守・サポートのコスト削減

現場のSEが自ら管理、運用できるため、保守・サポートのコストが少なくてすむ。

こうした経緯で、同社は98年11月にコールセンターを開設した。コールセンターの対応機能は、回線数30回線、端末数33台、稼働体制は土・日曜を含む午前9時から午後9時までの12時間、深夜帯は自動音声応答システムで対応している。コールセンターの最大の特徴はクイック・レスポンスにある。見込み客や顧客からの電話を受け付けると同時に顧客データベースを作成し、データはサーバを通じて即出力する。午後3時までの受け付けであれば当日中にDMや商材を発送することができるという。

(図2参照)

また、マーケティング・サポートや

業務効率サポートの強化に向けて、データベース分析の新システムやFAXのイメージ入力システムも構築し、これらのトータル・サポート体制によって、より効果の高いアウトソーシングを実現できるとしている。

昨年11月開設以来、同社ではコールセンターを、ソフト会社のバージョンアップ業務(アップグレード申し込み~受注~発送)、出版会社の受発注業務(購読申込受付・カタログ請求~発送・通販受注~発送)などに活かしている。また、新聞広告キャンペーンに対する消費者からの資料請求への対応、顧客データの収集・分析など新規取り組みにもコールセンターは威力を発揮している。さらに同社ではコールセンターを活かした新ビジネスの展開も進めている。鈴木秀人氏は、「これからはコールセンターを新規ビジネス展開の核に据えていく。例えば、販売チャネルや販売ノウハウを持たない産地業者の商品をデータベース化し、当社が受注から発送、代金回収まで一括して行う産地直送代行サービスの具体化を進めている。これは情報処理機能に優れた当社にして初めて実現できるビジネスの1つであり、秋頃にはテスト販売を開始する」と語っている。

1999年6月1日第458号

アテナではユニシスのUnPBXシステム「Tiny Call Center」を導入してコー

ルセンターを開設し、受注から発送、代金回収まで一連の業務を一括して受

託する当日処理・当日発送のQMS(クイックメール・サービス)を開始するとと

もに、データベース・マーケティングを視野に入れた新ビジネスの展開を推

進している。

■株式会社アテナ

◆メーリング・サービスを中核に情報処理とダイレクト・マーケティング機能を活かして顧客管理からDM発送・商品配送、代金回収まで企業の販売促進を支援する多様なサービスを展開している。さらにデータベース・マーケティング分野におけるアウトソーサーと

してさらなるビジネス展開を推進中である。◆本社=東京都江戸川区臨海町5-2-2◆代表者=渡辺順彦社長◆売上高=78億円(98年度)◆従業員数=152名(99年3月現在)

Tiny Call CenterでQMS(クイックメール・サービス)を開始受注から発送までのトータル・サポート体制を強化

流通情報システム

アテナ

NTT

発送�

CTIサーバ�(IVR機能)

100BT/LAN

DBサーバ�

電話帳DB(4,000万件)�顧客DB�資料DB�商品DB�※Disk容量=80GB

コミュニケータ端末33台�NTT回線30回線、5400call�オペレータ60名体制目標�

ナンバーディスプレイ�対応で電話帳DB検索表示�

コミュニケータが�対応する内容を表示�

カタログ・

サンプル請求者�

資料請求ありがとう�ございました…�

請求者の情報を�リアルタイムに検索�

顧客�情報�

クライアント�

請求受付�TEL�〒�FAX�E-Mail

カタログ�サンプル�顧客DB

アンケート情報も�収集します�

翌~翌々日で到着�

カタログ�サンプル�情報�

アテナ�QMS

カタログ�サンプル�

在庫�

クイック発送�

カタログ情報を�事前に登録�

カタログ�サンプル�

カタログ在庫を�封入保管して�在庫調整もします�

午後3時まで当日、�3時以降は翌朝発送�

すぐに資料や�カタログが�届いて対応も�迅速だ�

図1 CTIコールセンター概要図

図2 QMS(クイックメール・サービス)の全体像

ユニシスUnPBXシステム

CTIの導入で、さらなる顧客満足度の向上を追求

迅速な対応と既存システムとの容易な連携をポイントに「Tiny Call Center」を選定

当日処理・当日発送のQMS(クイックメール・サービス)を実現

産直代行サービスなど新ビジネスの展開も推進

鈴木秀人氏

UN

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情報技術の適用で最近大きくクローズアップされている分野として、CRM(Customer Relationship Management)がある。CRMとは顧客と関わりを持つ部門(コールセンターや営業部門など)において顧客中心のシステム化を図り、顧客満足度の向上に寄与し売上増大を目指そうという考えである。CRMを実現するシステムやIT技術には、コールセンター、CTI(ComputerTelephony Integration)、Webコミュニケ ー シ ョ ン 、 SFA(Sales ForceAutomation)、データマイニングなど多岐にわたり、現実的なシステム構成を構築するには考慮する点が多い。理想的なCRMを実現するためには、以下3つの統合を意識しなければならない。(1)コミュニケーション・メディアの統合

現在顧客と企業のコンタクト手段としては電話が主流であるが、最近ではWebやE-mailによるコンタクトが増えつつある。CRMのシステムを実現するにあた

り、さまざまなコミュニケーション・メディアを同一の管理化で、運用できる仕組みが必要とされてきている。コールセンターを最近ではコンタクトセンターと言い換えた表現は、まさにこの傾向の現れであり、システム化においてはサイバー・コールセンター化に進む。サイバー・コールセンターとは

従来の電話、FAX系に加え、特にWeb、E-mailといったインターネット系のコミュニケーションを同一管理下でフロー制御を可能としたコンタクトセンターである。(2)顧客対応データベースの統合

コミュニケーション・メディアの統合により顧客からのコンタクトルートを、同一管理化でフロー制御できたとしても、各コミュニケーション・メディアによるコンタクト履歴が統合された顧客データとして管理されなければならない。コミュニケーション・メディアを統合するとともに、顧客対応データベースも同時に統合されたシステムを考慮する必要がある。(3)プロセスの統合

CRMの目的は、顧客との継続的な関係を維持・強化し企業の売上拡大に寄与するものである。したがって、顧客のライフサイクルを考慮したプロセス、またそれらを実現する企業サイドの顧客対応プロセスのすべてをカバーできるシステムを考慮する必要がある。マーケティング部門、コールセンター部門、営業部門など個別の顧客対応プロセスのシステム化ではなく顧客を潜在顧客発掘から優良顧客に導くためのすべてのプロセスを統一的にカバーできるシステムを考慮しなければならない。

3つの統合を目指したCRMを実現するためには、現行の社内システムや業務プロセスの見直しを図り、かなりのシステム化への投資が必要となる。こうした状況の中、CRM実現への

第一歩としてコールセンター部門およびシステムの構築を実施する企業が多い。顧客との接点で現在最も活用されている電話でのコンタクト業務を改善していこうという考えである。しかしながら、最新のCTI技術を活用したコールセンター・システムを構築するには、専用PBXなど多大な投資コストを必要としてきた。そこで近年脚光を浴びてきている技術がUnPBXシステムである。UnPBXシステムは文字どおりPBXを必要としないPCベースですべてを実現するCTIシステムである。従来高価でかつ高度なインテグレーション・スキルが必要であったCTIシス

テムをオールインワンでPCに搭載したため、低コストかつWindowsが得意とする容易な操作性でCTIシステムを実現できるというものだ。日本ユニシスは、数年前より本技術に着目し本格的コールセンター向けUnPBXシステムとしては日本市場初めての「Tiny Call Center」を昨年10月にリリースした。他社がUMS(UnifiedMessaging System)向けへのUnPBXシステムの適用を優先する中、Tiny CallCenterはコールセンター向けプロダクトとして注目されている。以下にその特徴に関し記載する。(1)コールセンター・システムに適した

アーキテクチャ

現在市場に投入されているUnPBXシステムには4種類のものがある。

(表参照)

この中でコールセンター向けとして評価が最も高いモデルは単一ボード・

スイッチアプローチ型である。本モデルは単体としてPBX機能を実現しており、インテグレーションのしやすさから、コールセンター向けシステムへの効果的なUnPBXシステムへの拡張が容易である。Tiny Call Centerは本モデルを採用しており、コールセンター・システム用のUnPBXシステムとして最適なアーキテクチャを採用している。(2)コールセンター専用の各種ツール群

Tiny Call Centerはインテグレーションしやすい単一ボード・スイッチアプローチ型UnPBXをベースにコールセンターに適した各種ミドルソフトウェアを搭載している。その中でもコールセンターの運用を考慮した専用ミドルソフトウェアにより、ハイレベルなコールセンターの運用を可能としている。①本格的ACD機能の提供コールセンターのオペレータは全員が同一のスキルを有しているとは限らない。テクニカル・サポートなど複数のかつ難易度が違うコールを処理しなければならないコールセンターにおいては、コールの内容により最適なオペレータを選択して割り振りしなければならない。Tiny Call CenterはスキルベースACDなどハイエンドなPBXしか提供できないようなコールセンターに特化したACD(Automatic Call Distribution)機能を提供しており、複数かつ複雑なコール業務に耐えられるシステムが構築できる。②Agent(電話オペレータ)管理機能本格的かつ戦略的コールセンターでは、スーパーバイザというオペレータ管理者が存在し、顧客対応業務の品質向上を目的として常時監視・管理を実施している。Tiny Call Centerは、Agentの稼働状況をリアルタイムに監視し、管理するためのハイレベルなツール群を用意している。

③レポート機能コールセンターを効率良く運営するためには、コール数やオペレータの稼働状況をロギングして、効果的なオペレータの勤務形態、回線やシステム計画を立案しなければならない。TinyCall Centerには、これらコールセンターの運用設計に必要とされる各種ロギングデータをレポーティングするツール類が用意されている。④コールフロー開発支援機能戦略的コールセンターは企業のマーケティング・プランに基づいて、ダイナミックにコールセンターの運用を変更していく必要がある。その際にコールフローを迅速かつ的確に変更していかなければならない。Tiny Call CenterではWindows GUIベースでエンドユーザが簡単に作成・編集が可能なコールフロー作成ツールを用意しているため、コンピュータ・ベンダなど専門家に委託することなく、迅速にコールフローの作成が可能となる。(3)障害時対策

戦略的かつプロフィット・センターとして活動するコールセンターではシステム障害による業務ストップは許されない。UnPBXでの最大の弱点であるシステム信頼性に対し、Tiny CallCenterでは、PCのダウン時も業務がストップしないよう以下のような障害対策機構を準備している。①PBXボード自体の信頼性Tiny Call Centerで採用しているPBXボードはPCダウン時においても会話中の呼は切断することなく会話が可能となっている。②障害切替装置Tiny Call CenterではPC障害時の自動切替装置を用意している。これにより、PC障害時以降の新しい呼を自動的に非常用IVRや直通電話、あるいは待機用サーバへの自動切換えが可能となる。

ユニシス・ニュース

1999年6月1日第458号

UN

CRMを実現する3つの統合

PBX不要でCTIを実現するUnPBXシステム「Tiny Call Center」

コールセンター向けにカスタマイズされたUnPBXシステム「Tiny Call Center」

戦略的コールセンターの構築がCRM実現の第一歩日本ユニシス株式会社

ソフトウェア事業企画部CRM室課長 渡部弘毅

IT最前線

UnPBXのモデルと特徴

モデル 特徴

VRU(Voice Response Unit)アプローチ型

外線ボードと音声処理ボードからなるVRU構成をベースとしている。ユニファイド・メッセージ向き

KTS(Key Telephone System)アプローチ型

ビジネスフォン・メーカーのアプローチで内線電話を独自仕様のデジタル電話機にすることで差別化を図っている。

LANアプローチ型VoIP(Voice Over IP)技術に着目してPBX化している。内線をVoIP化しているため、他のシステムに比べ音声が劣る可能性あり。

単一ボード・スイッチアプローチ型

外線・音声処理・内線を1枚の複合ボードに集約し、特定用途を目的とするPBXソフトウェアをインストールすることにより実現。

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WBL(Web Based Learning)あるいは、NBL(Network Based Learning)という言葉が注目を集めている。その名のとおり、情報ネットワークを利用して行われる教育のことである。情報ネットワークの進展に伴い、1人1台のパソコン環境で仕事をするのが当たり前になってきた。企業内教育も情報ネットワーク環境で効果的に行えないだろうか。この疑問に答えるのがWBLである。従来から企業内教育の手段といえ

ば、集合研修が挙げられるが、この技術革新の時代、知識付与型の教育需要が増大する一方で集合研修形態だけで

は時間的にも、コスト的にも対応できなくなってきていることは明らかである。本来、企業内教育の目的は仕事ができる人材や組織環境を育てることである。言い換えれば、仕事の現場で、必要な時にすぐ業務遂行の役に立つ知識や技術が吸収できる学習システム、つまり、ジャスト・イン・タイム・ラーニングができることである。このように、知識付与型の企業内教育を効率よく実現し、さらにネットワーク・チームで構成された組織環境で新しい学習の仕方を創造し、組織学習を可能にする。それがWBLの目指す方向でもある。

◆WBL導入形態の選択

WBL製品はすでに20社前後から発売・提供されている。それらの製品構成や提案などから、企業のWBL導入の形態は次の3つに整理することができる。①WBLシステムを購入し、自社用の教育コンテンツ(コースウェア)を開発し、自社内ネットワークで要員教育を実施する。②WBLシステムおよび教育コンテンツをともに購入し、自社内ネットワーク環境で要員教育を実施する。③教育ベンダの提供するWBLサービスを利用し、要員教育を実施する。一般企業では、自社の教育需要やネットワーク環境などから判断し、導入するWBL形態を選択・決定することになるが、次の検討項目と合わせて判断する必要がある。 (表1参照)

◆WBLシステムの具備すべき機能

WBLシステムにおいて一般的に要求される機能には次のものがある。①教材配信機能②テスト診断機能③学習管理機能④成績管理機能⑤コミュニケーション機能⑥オーサリング(教材作成)機能導入時の検討ポイントは、単にこれらの機能の有無ではなく、導入するネットワーク環境とコンテンツ(コースウェア)との関係で得られるこれらの機能の有効性である。例えば、教材配信機能にはコンテンツをWebブラウザで検索可能なHTML形式と、クライアント側にダウンロードしてから自由に利用するCBT(Computer Based Training)形式があるが、学習するネットワーク環境がイントラネットかインターネットかによって、配信速度が効率(時間)やコストに

表1WBL導入のためのチェック・ポイント

大きな影響を与える。一方、必要に応じ、検索して利用するコンテンツはHTML形式が優れているが、マルチメディアを扱い学習効果に重きを置くコンテンツはCBT形式が有効である場合が多いなどである。テスト診断機能、学習管理、成績管理機能などは学習管理者の立場から、あるいは学習者自身の自己管理の立場から要求されるものであり、ニーズに応じて企業独自の方法で簡単に学習データを加工・編集して利用できることが重要になる。特に、ネットワークを利用した新しい教育形態では教授・学習者間のインターラクションおよび学習者相互間のコミュニケーション機能が重要視されている。特に、後者は新たな学習スタイルであるチーム学習や協調学習を形成するために注目される機能である。あるいは、WBLシステムを導入し、自社用コンテンツを開発する場合は何といってもオーサリング・システムの使い勝手がポイントになるだろう。◆教育コンテンツに要求されること

WBLコンテンツの開発に関しては、学習理論やそれに基づく教育工学・技術からなるID技法(Instructional DesignMethod)を駆使した開発が要求される。それは、CBT(CAI)の時代から多くの研究と経験を経て形成された次のようなコースウェア開発関連技術である。①学習目標詳細化/構造化技法②目標系列化技法/授業内容展開法③各種教材開発技法④教授・学習評価技法などこれらの中で、コンテンツの学習目標が構造的に明らかにされ、自分の不明な箇所や必要な所だけを学習することができるようになっていることは個別学習の上で最も重要なことの1つである。また、教育効果の観点からは教授・学習者間のインターラクション、KR(Knowledge of Result)情報の使われ方がポイントになる。学習システムにおけるマルチメディア教材の有効性は改めて論ずる必要はないが、扱う内容領域やネットワーク環境によって逆に有効性を妨げる要因

になることも念頭に置くべきであろう。往々にして、開発現場から市場に直行した教育効果の確認がなされていないコンテンツが出回っていることも珍しいことではない。当然、販売ベンダの事前の十分なトライアウト(学習効果の確認)や急激な技術の進歩に対応するバージョンアップ体制などがベンダとそのコンテンツを選ぶ最も重要な要素といえる。◆WBLサービスの留意点

従来の通信教育でも見られたようにWBLによる教育で最も学習者を悩ます問題は学習意欲の継続・維持である。学習意欲を阻害する要因は、教材の配信スピードやタイムリーな質疑応答など時間的/技術的課題と、学習効果・達成感の確認や受講者相互の共有・共育感の不足など個別学習本来の仕組みからくる課題が挙げられる。WBLシステムによる学習は、元来

孤独でハードタッチな学習形態である。WBLサービスはこの側面にどれだけ人間性重視のソフトタッチなサービスを付加されているかがポイントである。まず、自企業のネットワーク環境が提案されるWBLサービスに適合するか否かが基本な留意点であるが、学習中の疑問・質問に応えるFAQ機能の完備や学習者とのダイレクトなQ&Aサービスの提供は不可欠である。研修形態の教育サービスでもいえることであるが、WBLにおいても学習者に対する受講前後のサービスの有無が重要であることに変わりはない。◆ 何よりも大事な学習する企業風土

の変革

集合研修が中心に推進されている教育の環境にWBLシステムを導入することは、いわば企業内教育の変革である。言い換えれば、トレーニングからラーニングへのパラダイム・シフトである。新たな学習の仕方を受け入れる企業の学習風土を創り上げることが最も重要になってくる。例えば、仕事中に学習することが認められないような企業環境ではWBLの成功はありえないからである。

日本ユニシスでは、WBL商品として98年より『VirtualCampus』を販売している。VirtualCampusは、企業内教育活動の全工程を対象としたシステムを指すが、このうちWebを介した学習環境によって、学習と教授活動を実現するサ

ブ・システムを『VirtualCampusラーニングシステム』と呼んでいる。

(図参照)

VirtualCampusラーニングシステムは多様な機能群(表2)を備えており、情報ネットワークを活用した新しい企業内教育環境を構築することができる。

1999年6月1日第458号

WBL(Web Based Learning)で企業内教育の改革が始まった「VirtualCampus」日本ユニシス株式会社

総合教育部企画開発室担当課長 今西憲次

IT最前線

WBLとは何か?

WBL導入のポイント

VirtualCampusラーニングシステムの紹介

☆教材配信機能はユーザのさまざまなネットワーク環境ごとに対応できるか?☆診断的・形成的・総括的評価のためのテスト・診断機能が完備しているか?☆学習状況管理データを使い目的に応じ収集・分析・評価ができるか?☆総括的評価データを使い学習者の成績管理ができるか?☆アドバイザー間とのインターラクション、学習者相互間のコミュニケーション機能は十分か?☆オーサリング・システムは自社コンテンツを効率よく開発できるか?☆教育管理担当者のための初期環境設定・保守管理などの操作が簡単で、かつ、学習者のための自己学習計画・進捗管理などに対応できるか?

☆学習目標が明確で事前知識に合わせ選択・検索学習ができるか?☆インターラクションが効果的に行われ、KR情報が適切か?☆扱う内容領域/レベルにマッチしたマルチメディア教材になっているか?☆教育現場でのトライアウトによる効果確認ができているか?☆提供コンテンツのバージョンアップ体制ができているか?

☆コンテンツの配信は自企業のネットワーク環境に適しているか?☆FAQが完備し、TQ(リアル&バッチ)サービス体制が整備されているか?☆提供コンテンツ体系(質と量)およびアフターサービスは十分か?

☆ライセンス/一括料金の条件は(受講者指定、受講数指定、無制限…)?☆社内ユースおよびビジネス・ユースに対する条件は?☆WBLサービスの場合、回線料金/受講料金は妥当か?

WBLシステムの具備すべき機能は

WBLコンテンツの要件

WBLサービスの留意点

使用条件、価格体系など

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◆学習機能(学

習形態の基

本型)

次の各々の学習形態はユーザのニーズに応じ選択して利用できる。*CBT型学習音声や動画

などによるマルチメディアの学習が可能。基礎教育や初心者教育に効果的。*HTML型学習WebブラウザからHTMLで記

述された教材を利用する学習様式。ハイパー・リンクを活用した検索学習が可能。*課題解決型学習受講者自身で課題を解決する

学習形態。個人指導や誘導的発見的学習形態に有効。*テキストベース型学習ダウンロードした業務マニュアルやテキスト教材などを参照する学習形態。◆学習支援機能

*Q&Aシステムチャットやメールによる学習者-教授者間の質疑応答機能。任意に利用時間帯の制御が可能。◆教授(支援)機能(教育担当者支援機能)*登録/保守機能

教材や学習者の登録、削除など教育担当者のための運営管理機能。*学習進捗管理機能学習の進捗管理など教育担当者のための学習者管理機能。*CBTオーサリング・システム自社用教育コンテンツ(CBT教材)を開発するためのツール。*汎用テストツール&成績管理システム評価診断用のテスト問題作成ツールと成績を管理する機能。

◆VirtualCampus導入の経緯

日本ユニシスではNEXT4と呼ぶ人材開発制度を設けている。NEXT4は、営業、システム、技術、スタッフの全職群ににまたがる研修体系を設定し、全国約7,000名を対象に実施している。NEXT4では、95年度からの全社情報化武装による社員へのPC配布に伴い、自席において自分のPCで学習できる在席学習環境の整備を推進してきた。集合教育おける、距離的・時間的な制約、受講者の前提知識の有無や理解度に関する問題、講師の確保や教室、実習環境など教育環境に関する問題など、従来からの研修に関わる制約や問題を解消・解決する一方策としてVirtual Campusを開発し、97年度12月より運用を開始した。開始から99年3月末までの利用状況は表3のとおりである。◆多様なコンテンツの登録と活用

現在、登録しているコンテンツ(コース)は約200種に及ぶ。PCリテラシ、

情報技術、プロダクト関連など各分野別に目的や対象者を考慮し、これに応じた学習形態の教材を登録している。VirtualCampusの標準教材以外に、NEXT4独自の教材として、新商品発表時の全国版社内説明会資料や関連資料を登録、情報提供型のコンテンツとして利用している。また、社員が投稿した解説記事や社内研修で使用するテキストやお客様に提供しているテキストもPDFとして公開しダウンロードなどにより活用できるようにしている。受講者の学習時における問い合わせやTQは、専任者をあて、チャットや電子メールを介して行われる。また、質問と回答は、VirtualCampusにFAQとして登録されているので受講者は自ら検索・利用することができる。◆運用上の配慮

現在運用しているVirtualCampusは、自社LANとWANを経由して全国で利用できるようにしているが、CBT教材のようにデータ量が気になる教材への

対応は、支社・支店にミラー・サーバを設け回線の負荷を回避したり、ダウンロードにおける時間の短縮を図っている。一方、学習状況は、教材へのアクセス回数などを把握している。これにより学習者を管理するのではなく、関連部門のコンテンツ開発者へフィードバックし、利用状況の把握と教材の品質向上に役立てている。◆ VirtualCampus導入への基本的

な考え方

新しい研修形態の導入においては、学習者はもとより上司や周囲の人の理解と有効性の認知が重要である。したがって、VirtualCampusの導入にあたり、基本に置いた方針は次のとおりである。①研修の目的は自分の業務遂行を支援することである。したがって、そのための学習は何時でも机上で学習をすることができる。

②学習者の履歴管理情報は、教材(学習)ニーズの把握や品質向上を目的としてコンテンツの開発指針の材料とすること。また、推進面では、常務会や、各部門長会議を利用しての導入の目的や機能、今後の展開を説明した。また、商品知識など業務知識のコンテンツ化を働きかけるなど、相互活用の土壌作りも重要と考えている。

◇VirtualCampusによる在席学習の取り組みは堵に就いたばかりであり、ネットワーク環境や受講者が所有する

PC能力の改善など課題は多い。在席学習に対する受講者の反応を調査した結果は表4のとおりである。今後は、ハードウェア技術者向け教育用のコンテンツ開発など、適用分野の拡大と開発体制の拡充を推進しつつ、業務支援のジャスト・イン・タイム・ラーニングを実現すべく取り組む考えである。なお、VirtualCampusの機能詳細は、下記へ問い合わせていただきたい。

*日本ユニシス株式会社 総合教育部企画開発室VirtualCampus担当TEL(03)5546-4229

ユニシス・ニュース

1999年6月1日第458号

UN

VirtualCampus�サーバ�

参照�

学習者�

必要なソフトはブラウザのみ!�必要な時間に、必要な場所で、必要な内容を、自分のペースに合わせて学習!�マルチメディアで、わかりやすく楽しく学習!�困ったときには質問可能!�

管理者�

各学習者の進捗状況を�自由に検索�

進捗確認�

� インターネット�イントラネット�

質問

応答�

アドバイザー�

リアルタイムで、きめ細やか�に学習をサポート��

FAQ学習�履歴�

日本ユニシスの企業内教育でのVirtualCampus活用事例

表2 VirtualCampusラーニングシステムの機能

基本システム 拡張システム

学習機能

CBT型学習

HTML型学習

課題解決型学習

テキストベースド学習

チーム学習

(協調学習)

学習支援機能 Q&Aシステム 学習計画システム

教授機能

登録・保守機能

学習進捗管理機能

CBTオーサリング・システム

汎用テスト・システム&

成績管理システム

コンテンツ(教材)名� 種類� アクセス回数�

CBT�

Office関連� 12 6,329

1

1

1

1

1

1

1

1

1

1

1

4

4

2

9

1

1

138

155

184

1

1

17

UNIX入門� 1,045

シェル・プログラミング�

viエディタ使用法�

Lotus Notes入門�

教育工学概論�

ネットワーク・テクノロジ�

オブジェクト指向�

C/Sシステム入門�

HTML関連�

WWWサーバ構築�

Oracle7

ホームページ関連�

データベース入門�

イントラネット構築�

Microsoft Transaction Server

Java関連�

NTStartメニュー�

イントラネットAP開発�

電子メールマスター�

新商品情報(HMPシリーズ)

総計�

HTML�

テキスト�

303

280

244

110

8,311

15,142

3,054

1,817

3,777

783

641

458

438

321

113

253

729

571

231

176

58

32

210

12

表3日本ユニシスにおけるVirtualCampusの利用状況(98年1月~99年3月)

表4個別学習に関する受講者アンケート調査結果4段階評価(肯定的:4~否定的:1) 評価�

1 学習内容は合致したか�

2 学習目的は達成できたか�

3 この方式は自分に合っているか�

4 学習環境はよいか�

5 テキストは分かりやすいか�

6 実習/演習は効果があったか�

7 画面の説明は分かりやすいか�

8 音声は聞きやすいか�

9 補助資料は分かりやすいか�

3.45�

3.51�

3.54�

3.76�

3.54�

3.64�

3.58�

3.64�

3.44�

�定性的意見での肯定的評価� 件数� 件数�

自分のペースでできる。弱いところを�重点的にできる。囲りが気にならない�

実習しながらで身につきやすい�

反復学習ができる。納得できるまで学習�ができる�

音声・映像による説明が理解に役立つ�

テキストがあるので、後で役に立つ�

確認テストが良い�

眠くならず集中できる�

入門コースはこの形式が合っている�

自宅での学習が可能と思われる�

定性的意見での否定的評価�

指導が一方的で柔軟性に欠けるところが�ある�

長時間画面を見ていると疲れる�

個別だと集中しすぎて疲れる�

テキストどおり進むため質問を見つけにくい�

何も知らない初心者には個別学習は難�しい�

途中で飽きる�

講習会形式が自分に合っている�

画面の文字が小さい�

競争意識がなくなる。�難しいレベルにはこの方式は合わない�

自主性がない人にはこの方式は効果が�上がらない�

1人で学習するのは辛い。孤独�

件数合計� 件数合計�

305

38

71

28

16

8

38

2

2

508

11

2

2

3

3

4

4

5

5

6

6

7

7

8

8

9

9

10

11

12

6

2

8

2

2

2

6

2

2

2

3

2

39

VirtualCampusとは(オンデマンドな個別学習環境)

7

もうお済みですか�

14 1999年6月1日第458号

同一商品� 特定商品群�

価格イ� 価格ロ� 価格ハ� 価格ニ�

個客A 個客B 個客C 個客D 個客E 個客F

従来から経験的に「2・8の原理」と呼ばれる考え方があった。店舗小売業では確たる証明もされないままに放置されていた。そんな直感を具体的に証明してみせたのがダイレクト・マーケティング(以下DM)である。DMでは個客の顔が見えない。したがって個々の個客とのやり取りをすべてデータベース化し、それを通して個客の顔を見るしかなかった。その見方の基本は①「今、私と対話している個客の購買に関わる履歴は何で、今どのような購買行動を起こそうとしているのか」②「次のキャンペーンでより購入可能性の高い個客は、自社リストのどこに存在しているか。そしてその人々は次回いくら我々に売上げをもたらしてくれるか」であった。この見方が店舗の個客にも通用したのだ。あるポイント付きの自社カードを発行している企業の個客データを分析したところ、実に見事に「すべての個客は同じでない」ということが分かった。それは単にRFMという、従来から流通で個客判定に使用する数値的要素ばかりでなく、商品または商品群の購買行動においても理解された。しかも「2・8」ではなかった。食品小売の場合「3.5・7」、つまり35%の個

客で売上げの70%であった。ロードサイドの洋服専門店では一定期間における上位10%の個客の平均売上げ予測が35,000円弱、下位10%の個客が5,000円弱と7倍近い効率の違いが認められたのである。その後いくつかの店舗のデータ解析を行ったが実にほとんどの企業の個客が同じような傾向を示していた。しかもその上位30%の個客の中でもすべての個客がまったく異なる購買行動、つまり店舗に対する売上げに対する貢献をしていることが判明した。しかし今までの顧客対応は「すべての顧客に対してまったく同じ行動」であった。たまたま出張の途中で入ってきた一見の顧客にも、チラシのディスカウント商品に反応してきた顧客も、最も売上げや粗利に貢献していただいている顧客にもまったく同じ対応をしていた。小売業の方々はこの分析データを見て愕然とした。実は今まで個客が見えていなかったのだ。こうして小売業は個客の情報、ことに「どの個客が」「どの店やどのキャンペーンで」「何を購入したか、またはしなかったか」を蓄積し始めた。そしてその情報に基づいて、個々の個客に対する対応を変えることを始めた。

流通の最先端である小売業が「個客データベース」を持ち始めた。従来小売業の

情報システムの中心は「商品管理」であり商品を通じて顧客を見ていたが、個客の

情報をデーターベス化し、これにより商品による管理から個客による管理に移行

しようとしている。この個客データベースを使用して個々の個客とのリレーショ

ン管理(CRM)と流通環境の変化への素早い対応を企図している。

その結果、どのような個客でも企業の提供するインセンティブに反応することも理解された。「本当に優良な一部の個客はどんなインセンティブにも興味を示さない。なぜなら彼らは富裕であって店舗が提供する微々たるインセンティブには見向きもしない」といわれる。しかしこれが事実ではないことも分析の結果理解された。どんな売上げ上位個客だろうと自分の蓄積したポイントは有効期限内に使っていただけるし、プレゼント商品にはやはり反応してい

ただける。それではその差別化のインセンティブにはどのようなものがあるのだろう。表にまとめる。このインセンティブの使用法には別にルールはなく、これらのインセンティブを組み合わせ、変化させて使用することによって個客と対話する。

それではこれらのインセンティブのうち「販売価格による対応」について見てみよう。 (図)

現在、すでに個客は自分に提供される商品やサービスの価格が他の個客と異なることについて了解しようとしている。その現象が最も顕著に現れているのは「保険」という商品であり、車輌にかける傷害保険はその最たるものである。自動車保険料(つまり支払価格)はそれぞれの保険者のリスクによって異なる。年齢や居住地域、自動車の色、使用用途をアンダーライティング(個別認識と分析)することにより個人個人異なる保険料を算定する。英国においては実に1:36もの価格格差が見られる。我が国においても通信販売では30%までの個人別保険料ディスカウントが行われることが新聞などのマスメディアに掲載され始めている。このような個客を取り巻く環境の変化に基づいて今、米国の半分近くのスーパーマーケットでは以下のような価格政策が取られている。①2つの価格

一般の顧客とカード保有個客(通常会員と呼ばれる)では異なる価格が提示される。その場で値引かれるか否かは別にして通常より低価格で商品が購入できる。これには個客がカード会員であるか否かの判定が必要である。②いく通りかの価格が用意され、個客

のロイヤルティや購入金額によって

それぞれの価格が提案される

例えば4つの価格が用意され一般の顧客には正規の価格で、その時点の総購入金額が1万円以内の個客には5%

の、1万円から2万円までであれば10%の、2万円から3万円であれば15%のディスカウントがその場で適用される。これには個客の購買履歴による判定が必要である。③特定商品のディスカウント

特定商品群をよく購入する個客に対して、あまり購入しない個客より低い価格で提供する。これには個客別、購入商品別の判定が必要である。④関連商品のディスカウント

ある商品を購入した個客に対してその商品に関連する商品をディスカウントするクーポンを提供する。例えばパンを購入した個客にジャムのクーポンをレジで自動発行させて次回利用していただく。⑤段階的値引き、もしくはポイント付与

個客が購入した過去の購入商品の総額に基づいて、例えば過去12週間で5万円の購入であれば5%の値引きか5%のポイント、10万円であれば10%の値引きか10%のポイント、15万円以上であれば15%の値引きか15%のポイントとする。購入金額に基づいてこのように段階的に変化させたり、またはポイントとの併用をする。このように、価格政策1つ取り上げてもさまざまな個客インセンティブの付け方がある。無論価格による差別化だけがインセンティブでないのは前述のとおりである。

[注]本報告には一部、ワン・ツー・ワン・マーケ

ティング協議会主催、ブライアン・ウルフの講演「個客識別マーケティング」の内容を使用致しました。

POSやキオスク、ネットワークやデータベースといったITにより、流通の最先端である小売業が個客データを蓄積し、分析し個客ごとのマーケティングを展開し始めた。流通でもツールが変わりルールが変わろうとしている。こうして流通業は新しい段階を迎えようとしている。それは前述のとおり「商品」を通じて「顧客」を見るのではなく「個客」の情報を見て「個客」を識別しようとする試みである。我が国でもFSPを前向きに検討する

企業が増えている。海外と異なるのは「個客の購入を促進し、個客を囲い込む小売技法」としてよりも、あくまでも「個々のお客様の購入をサポートするシステム」としての日本流「個客データベース」として進化しつつあるようだ。

UN

始まった小売業におけるOne to Oneマーケティングお客様購買サポート・システム「FSP(Frequent Shoppers Program)」

日本ユニシス株式会社I&Cシステム営業第二本部DM営業部

ダイレクトマーケティングコンサルティング担当部長 大倉伸夫

IT最前線

それは「すべての個客は平等ではない」から始まった

「個客の購買活動は企業の付与するインセンティブに強い影響を受ける」は正しかった

「流通業が持ち始めた個客情報」はルールを変える

個客識別による価格個別化

表 10の顧客インセンティブ

①価格 顧客別に販売価格を変える

②購入総額特典 一定期間の売上げに応じて特定商品の無料提供

③ポイント 購入金額に従ってポイント蓄積ができる

④パートナー 複数の企業が同一のインセンティブに参加する

⑤懸賞 懸賞や籤

⑥社会貢献 顧客と一緒に社会活動に参加する

⑦特別待遇 特定顧客に、その個客だけの特典

⑧個人対応 その顧客を個客として対応する

⑨顧客参加 顧客がビジネスに参加する

⑩即時性 その顧客の情報をリアルタイムに把握して、即対応する

図 個客識別による価格設定

15

オフィス内の身の回りを見てみるだけでも通信・ネットワークに関連した分野が大きく変わっていることに気がつくだろう。かつてはメインフレームの端末が数台置いてあるというのが一般的だったが、今では、ほとんど1人1台のコンピュータが実現されてきた。さらに、それらがネットワークで接続され、各部門には数台のサーバが配備され、クライアント/サーバは当たり前になっている。そしてクライアント/サーバ・システムで使われるネットワークも大きく変わった。特別なものであったネットワークは、すでに誰でも当たり前に使うようになり、クライアント・パソコンのOSとして標準になったWindowsにも、最初からネットワーク機能が搭載されている。ネットワークOSの勢力も大きく様変わりした。かつて米国ではNetwareがパソコン・ネットワークにおいて大多数を占めていたが、現在は世界的にWindowsNTやUNIXがその位置を占めるようになった。そして最近では、LinuxといったフリーのパソコンUNIXも登場し、さまざまなものを選択でき

ネットワークや通信分野の動きは非常に激しく、スピードも速い。この分野を

専門にしている技術者でさえ、1~2年先がどのように変化していくのかほとん

ど予測することはできないだろう。通信業界の動向としては、NTTの分割、事業

区分の拡大/廃止、国際サービスの開始など、さまざまな動きが複雑に絡み合って

進んでいる。ネットワークの分野も、インターネットの普及、低価格な通信サー

ビスの登場、さらにそれらに関連した数多くのテクノロジの導入など、少し目を

離すと大きく様変わりしているという状況になっている。「IT最前線:ネットワー

ク技術の動向」では、これから約1年にわたって、こうした通信・ネットワークの

話題を取り上げ、その中に使われている技術の解説、業界の動きなどを探ってみ

る。通信・ネットワークに関わる人はもとより、コンピュータに関わるすべての人

にとって有益となる情報を伝えていくつもりである。

るようになった。ネットワークで使われている通信手段も変わってきた。ネットワークOSごとにそれぞれ独自のプロトコルを使うというのはすたれ、ネットワークに繋がっているほとんどすべてのパソコンではインターネットの標準プロトコルであるTCP/IPが一般的になった。インターネット自体も、ほんの短い間に大きな成長を遂げたものの1つだ。パソコンが社員1人1台持てるようになったと同時に、社員に与えられたメール・アドレスも、今や名刺代わりとしてビジネスを円滑に進める上で不可欠なツールとなっている。かつては数えるほどしかなかったインターネットのサーバは、1年間で数十倍から数百倍といった指数関数的な速さで増加し、社名を使ったドメインのあるメールアドレスも珍しいものではなくなった。そして、メール・サーバを稼働させると同時に、WWWサービスも稼働させて情報発信を行うようになった。WWWサーバがあるのは、会社に受け付けがあるのと同じくらい一般的になってきた。 (図1・図2参照)

インターネットも単に便利だとか、面白いといった理由だけで普及したわけではない。世の中の景気が低迷している中で、それだけの理由で新たな設備投資ができるはずはない。これほどまで進んだことの理由には、利用料金の低価格化の進行がある。中でも、通信回線の低価格化には目を見張るものがある。インターネットを使うための通信回線が低価格化したのは、競争の原理が働いたというところが大きい。競争の原理を正常に機能させるには、多くの規制を緩和しなくてはならなかった。規制の緩和は、通信ビックバンによって実現されてきた。

99年7月にNTTは長距離・国際通信会社と東西2つの地域通信会社、そしてそれらの持ち株会社に再編成される。これは85年に施行された日本電信電話株式会社法の付則に規定されていた経営形態見直しを受けてのものだ。97年

6月に国会で同法の改正案(再編成法案)が可決された。そしてこの時に国際通信への進出が認められた(ただし、分割までの間は子会社方式での進出となる)。第一種電気通信事業者の国内・国際という事業区分は取り払われる。自由競争が可能になり、多くの事業者が参入、市場を活性化させてきた。こうして通信ビックバンは本格始動した。そしてこうした自由化に合わせて、さらに規制は緩和される。96年10月に公専公接続の自由化、97年12月に国際公専公接続の自由化、第二種電気通信事業者が電話の再販サービスやインターネット電話にビジネス展開できる下地が整ってきたわけだ。もちろんこうした動きを第一種電気通信事業者はだまって見ているわけではない。自前の回線を使ってプロバイダ事業を始めるなど、第二種電気通信事業者が専門にしていたビジネスの分野でも競争が激

化してきた。ユーザ側からすれば、より便利で低価格なサービスを同じ土俵に乗せて比較、選択できるようになった。サービスの充実、低価格化は一層進むことになる。第一種電気通信事業者間での競争も激しくなり、高速なデジタル回線の使用料はあっという間に低価格化が進んだ。低価格で便利な通信回線が登場するためのインフラ整備は急速に進んでいる。そして今後もさらに進むことが予想される。 (図3参照)

しかしネットワークやその回線は、通常ユーザの目に見えないところで働いている。上記した業界の動きも、コストや回線速度以外の面は一般企業に直接影響する部分は少ない。そして今後はさらにネットワークや通信の隠蔽化は進む。つまり、ユーザが意識する必要がないものになっていく。データを伝えるということ自体ではほとんど差別化はできない状態になってきた。そして今後競争が激しくなるのは、伝えるデータの内容やサービスである。そしてハードウェアにしても、データを送受信するという点においての差別化はできなくなってきた。ユーザは、ネットワークを意識しなくなり、知らず知らずのうちに、通信回線やネットワークを使うということになる。意識せずに使えるようになるのは、それが一般化し、使い方が簡単になるためである。広く普及し、現在でも情報伝達/収集の手段として大きなウェ

イトを占めるものにテレビ、ラジオ、電話などがある。これらは、それ自体を意識することはほとんどない。つまり、

テレビがどのような構造で電波を映像や音声に変えているのか、どのようにデータを発信/受信しているのか、どれだけ大量のデータを処理しているのか、こういったことを意識することはほとんどなく、テレビを使うことができる。もちろんテレビを使うのに、分厚いマニュアルを読まなければならないといったことはない。ネットワークの将来像もこうなる。どこからどのようにしてデータが送られているのか、どのような経路で接続しているのか意識することなく、そこに流れる情報を選択して受け取れる。自由競争が行きつくところまでいくと、やがて差別化は送信するデータの内容の違いになり、受け取る経路に関しては意識する必要はなくなる。水道やガス、電気と同じようにデータを使えるようになるわけだ。

◇本連載では、ネットワークや通信の将来像を、過去から現在、そして近い将来の状態を解説することで探っていく。今回は総論としてネットワーク業界や通信業界、一般的な技術を非常に大雑把に述べた。次回はこの分野において最も注目を集めているインターネットに的を絞り、利用されている技術や提供されているサービスについて解説する予定である。

ユニシス・ニュース

1999年6月1日第458号

UN

ネットワーク環境の過去・未来日本ユニシス株式会社

ネットワークシステム部統合技術室

IT最前線新連載・ネットワーク技術の動向(1)

ネットワーク関連の変化

変貌するネットワーク発展の基盤

水道から出る水のように情報を受け取る

1995 1996 1997 1998 1999 20000

20

40

60

80

100

120

140百万�

1995 1996 1997 1998 1999 20000

20

40

60

80

100

120

140百万�

出典:CommerceNet

1996年� 1997年� 1998年� 1999年�

*NTTの分割・再編成の実施�

(国際通信と電話の公―専―公接続に限定)�

*特別第二種電気通信事業の範囲の縮小�

  (

合併による再編成・

外資参入の動き)�

*KDD法の廃止�

*第一種電気通信事業者の料金認可制を廃止、�

*加入電話技術基準の緩和(

外国の基準との整合)

*外資規制の撤廃(

NTT・

KDDは除く)

*国際の電話 公―専―公接続解禁�

*NTTの分割決定(

日本電信電話株式会社法の改正)

*NTTの子会社方式での国際通信参入許可�

*KDDの国内通信参入許可�

*一般第二種電気通信事業の範囲拡大�

*国内の電話 公―専―公接続解禁�

届出制へ移行�

図1 インターネットの人口 図2 WWWの人口

図3 通信の主な規制緩和の動き

16

日本ユニシス情報システムは、インターネット・サービス「U-net SURF」の会員向け新サービス・メニューとして、格安な料金で海外からのインターネット接続を可能とする「ローミング・サービス」の提供を開始した。このサービスは、海外プロバイダのアクセス・ポイントを利用してインターネット接続し、電子メールの送受信やWWW閲覧などが利用できるサービスである。海外出張や海外旅行などの際に、海外の現地プロバイダへの加入や手続きが不要で、また日本のアクセス・ポイントに国際電話をかける必要もなく現地市内通話料金でインターネット・サービスを利用できる。

ローミング・サービスの特徴は、次のとおり。*U-net SURFダイアルアップIP接続サービスの加入者であれば面倒な事前の申込みや手続きは不要である。ただし海外で電子メールを送受信する場合は、セキュリティ確保のためメールサーバの利用申込(無料)が必要となる。国内で現在使用しているメールアドレスでそのままメールの送受信ができる。*世界79カ国約3,700カ所のアクセス・ポイントが利用できる。*利用料金は、他社と比較しても格安の20円/分、ローミング・サービスのための基本料金は無料となっている。

www.uis.co.jp/

日本ユニシス情報システム

U-net SURF会員向け「ローミング・サービス」提供開始海外からのインターネット・アクセスを低価格で

日本ユニシス「CADCEUS/MoldDesign Ver2.1」を販売開始3次元モールド金型設計・製造システムの機能を大幅強化

ユニアデックス「Linux向けサポートサービス」を提供開始

オープンネットワーク時代のサポートサービス領域を拡大

日本ユニシスは、操作性のさらなる向上と、よりスピーディな設計を指向した、3次元モールド(樹脂)金型設計・製造システム「CADCEUS/MoldDesign(キャドシアス/モールドデザイン)Ver2.1」の販売を開始した。「CADCEUS/MoldDesign Ver2.1」は次の2大特徴を備えており、型設計全体の工期を大幅に短縮することができる。*3次元ソリッドデータを2次元感覚で使うことができるモールドベース、スライド、水管、エジェクタピンなどの金型標準部品を製品/三面図のデータに2次元的に配置

していき、最後に金型のソリッドモデルを自動的に生成する。*不完全な製品データからでもキャビ・コア設計を進めることができる面の欠落や離れなど、不完全なデータがあった場合でも、あえてそれを無視して欠落部以外を接合したサーフェスを利用して、キャビ・コア設計が行える。「CADCEUS/MoldDesign Ver2.1」のシステム価格は430万円から。すでに「Ver2.0」を使用中のユーザは、日本ユニシスとのサポート契約に基づき「Ver2.1」にアップグレードできる。www.unisys.co.jp/CADCEUS/index.html

ユニアデックスは、進展著しいLinuxサーバ・システムに焦点を当てた導入およびサポート・サービスの提供を開始した。Linuxは、世界中の優秀な開発者たちが自ら「ユーザの倫理」に立って発展させてきたオープンソースのオペレーティング・システム(OS)であり、その可用性、安定性の高さから、インターネット・サービス・プロバイダなどでの採用をはじめ、ビジネス分野で広く普及してきている。ユニアデックが提供するサービス

は、①Linux導入相談サービス、②Linux導入サービス、③Linuxテレフォンサポート、④Linuxテクニカルサポート、⑤Linux更新版の適用サービス

までのサービスメニューを用意している。また、ネットワーク構築からオープン・ネットワーク・システムの運用保守管理サービスとして現在提供中の「NetMAN」ならびに「HelpMAN」と併せてこの「Linux向けサポートサービス」を提供することにより、企業ユーザはLinuxをプラットフォームとしたシステム導入の検討段階から構築、その後の運用、さらにはテレフォン・サービス、障害の切り分けをはじめとする各種テクニカル・サポートに至るまでのフルサービスを効果的に活用することができる。

www.uniadex.co.jp/

◆ United Bank of Switzerland―イントラネット・システムの短期

構築を実現

チューリッヒに本部を置く世界有数の金融機関であるUnited Bank ofSwitzerland(UBS)では、統合Webシステム構築ツール「COOLICE」を導入してイントラネット・システムの短期構築を実現した。UBSでは、イントラネットを実践するに当たってリアルタイムにクレジットリスク情報にアクセスすることが大きな課題であったが、COOLICEの導入により、その課題を克服するとともにイントラネットで使用するクレジット・アプリケーションの迅速な開発を可能とした。COOLICEが導入される以前は、月に1回更新されるオフラインのデータベースを使用していたため必ずしも最新情報の活用とはいえなかった。COOLICEは、Web経由でレガシーシステムにダイレクトにアクセスすることができるため、UBSのアカウント・マネジャーはリアルタイムなデータの分析が可能になった。また、データベースへのリアルタイム・アクセスをWeb経由で行う場合、当然セキュリティ確保が問題となるが、COOLICEはデータやシステム保護のための万全なセキュリティ機能を提供している。このセキュリティ機能を使うことで世界でも最も安全なイントラネットの運営を迅速に実現させた。◆ローマ市

―市長選挙でインターネットを活用

300万人を超える投票者、30の政党を抱えるローマ市での市長選挙にインターネットが活躍した。選挙へのインターネット活用の賛同を得るのは、法律で選挙手続きに関する厳しい規制が設けられているため容易ではなかった。許可が得られたのは市長選挙実施の1カ月前。この1カ月という短期間で、オンライン選挙プロセスの監視からWebを使っての選挙結果を市民に知らせる仕組みを作ることになり、採用されたのがCOOLICEであった。COOLICEを使用したことにより、

1週間でシステムのデザインと導入ができ、厳しい開発条件を見事クリアして市長選挙当日にAQUANTAサーバで稼働するCOOLICEにより投票結果をインターネット上で迅速に市民に知らせることができた。当日のローマ市Webサイトへのアクセスは、平均4~5回/秒を記録した。

海外でも相次ぐCOOLICEの導入 イベント・ショウガイド

●設計・製造ソリューション展

◇日時:6月16日(水)~18日(金)◇会場:東京ビッグサイト◇出展内容:*CAD/CAM関連:本格的な3次元金型・製造システムで、2次元感覚で3次元モールド金型設計を可能としモールド金型設計・製造の全工程を支援する「CADCEUS/MoldDesign(Ver.2.2)」を紹介。

*生産管理関連:ERPソリューション「SyteLine」、多次元分析ツール「SytePower」などCSRPコンセプトに基づく製品群や資材と能力の同期計画により納期確約を行う「SyteAPS」を紹介。

*PDM/CSM関連:コンサルティング、開発、保守に至るPDM構築メニューと手法、CMSソリューションとして実績のあるAspect社の「Explore」を紹介。

●Computer Telephony World Expo

/Tokyo '99

◇日時:6月30日(水)~7月2日(金)◇会場:幕張メッセ◇出展内容:メインシアターでは以下の3点を紹介する。①CRMの適切な考え方とプロダクト、②SFAで適切なセールス・プロセスを提供するシェブロン機能、オペレータの適切な応答を可能とするブランチ・スクリプト機能、Web対応など日本語化された「Vantive 8」の新機能、③ACD(Automatic Call Distribution)、容易なコールフロー構築などTCC(Tiny CallCenter)機能の紹介。実演コーナーではサイバーコールセンター、「Vantive8」の新機能紹介、TCCの管理ツール機能紹介とコールセンターで獲得したデータ分析ツールとVantiveの統合、ヘルプデスクと高速動画圧縮技術の統合などを紹介。●国際モダンホスピタルショウ

◇日時:7月7日(水)~9日(金)◇会場:東京ビッグサイト◇出展内容:新製品 「 M E D I -ORDER/21医療会計システム」、「MEDI-ORDER/21オーダリング・システム」を中心に、中規模病院向け医療情報システムを紹介。

●データウェアハウスEXPO'99

◇日時:7月7日(水)~9日(金)◇会場:東京ビッグサイト◇出展内容:多次元分析ソリューション「売上分析Pro」、データマイニング・ソリューション、販売計画策定&分析ソリューション(参考出品)等々をデモと合わせて紹介。

発行日本ユニシス株式会社広報部広報室 〒135-8560 東京都江東区豊洲1-1-1 (03)5546-4111 発行人山下宗久 編集人武井 浩 制作ピー・アールセブン 発行日 1999年6月1日 ISSN 0915-051X

1999年6月1日 第458号*本紙記載の社名、製品名、およびシステム名は各開発会社の登録商標または、商標です。*社外からの寄稿や発言内容は、必ずしも弊社の見解を表明しているわけではありません。