150430 教育学特殊XIV 第3講

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慶應義塾大学教育学特殊 XIV(3 ) 学級規模を研究する 1. 海外の文献をレビューする 文部科学省 国立教育政策研究所 総括研究官 やま もり こう よう (教育心理学) [email protected] 2015 4 30 この内容は個人的見解であり 国立教育政策研究所の公式見解ではありません

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慶應義塾大学教育学特殊 XIV(第 3講)学級規模を研究する

1. 海外の文献をレビューする

文部科学省国立教育政策研究所

文部科学省

国立教育政策研究所

総括研究官やま山もり森

こう光よう陽

(教育心理学)[email protected]

2015年 4月 30日

この内容は個人的見解であり国立教育政策研究所の公式見解ではありません

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はじめに

今回の内容

1 制度と個人差の関係を探るにあたって

2 当面の課題

3 注意事項

慶應義塾大学教育学特殊 XIV 第 3 講 2015 年 4 月 30 日 3 / 18

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制度と個人差の関係を探るにあたって

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制度と個人差の関係を探るにあたって

調べ物と研究の違い調べ物

興味の赴くままに調べる。興味の赴くままに調査を行い分析する。

研究学問の文脈に位置づける。新たな知見がその後の学問の発展につながる。知見は個人の知的好奇心を満たすものではなく公共財として扱われる。

特に学級規模のような社会的関心が高く,導かれた知見により多くのヒト,カネが動くような研究領域の場合には細心の注意が必要となる。

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制度と個人差の関係を探るにあたって

研究の一般的手順問題

これまでの研究史に基づき,明らかになっていることといないことを特定し,必要性の有無を判断し,問題を特定する。

目的特定された問題から,研究の目的を定義する。

方法研究目的を達成するために適合的な方法によってデータを収集するとともに,研究目的とデータの性質に見合った手法による分析を行う。

結果研究の目的に沿いつつ,主観を排して結果を提示する。

考察結果を研究目的に沿って解釈し,特定された問題に再投入して考察を行い,自身あるいは他者による次なる研究につなげる。

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制度と個人差の関係を探るにあたって

この講義では

問題設定のためのレビュー国内外の知見を概観しなければならないが,海外の知見を読むのはしんどい。欧文文献はみんなで力を合わせて,和文文献はひとりで。

分析に用いるデータ学級規模を研究するためのデータは簡単には手に入らない。担当教員の集めた(割と)良質な児童生徒の学力や教師による指導方法に関するデータ。国際調査(TIMSS2011)の公開データのうち児童の学習意欲など(非認知能力)のデータ。

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制度と個人差の関係を探るにあたって

この講義では

分析手法様々な変数が影響した結果の児童生徒の能力等のデータを分析するのには中程度に困難な分析(回帰分析など)はかえって不適切。学校ごとの集計を属性(学級規模など)ごとにまとめてその傾向を解釈する方が筋がいい。

ギリシャ文字と複雑な統計処理からの解放!(めでたしめでたし)

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制度と個人差の関係を探るにあたって

この講義では

分析手法様々な変数が影響した結果の児童生徒の能力等のデータを分析するのには中程度に困難な分析(回帰分析など)はかえって不適切。学校ごとの集計を属性(学級規模など)ごとにまとめてその傾向を解釈する方が筋がいい。

ギリシャ文字と複雑な統計処理からの解放!(めでたしめでたし)

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当面の課題

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当面の課題

力をあわせて欧文文献を読もう

最近の学級規模研究の動向を把握しやすくするために厳選した欧文文献 8編と,学級規模の大小による教室の様子の違いをイメージしやすい和文文献 8編を 180ページにコンパクトに収録!

「授業支援」の「資料室」からダウンロードすれば,携帯端末に入れていつでもどこでも読めます。

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当面の課題

欧文文献の内容:学力

学級規模と学力分布Bosworth, R. (2014). Class size, class composition, and thedistribution of student achievement. Education Economics,22, 141-165.

国際調査データを用いた分析Konstantopoulos, S., & Traynor, A. (2014). Class size effectson reading achievement using PIRLS data: Evidence fromGreece. Teachers College Record, 116, 1-29.

中学校ではKrassel, K. F., & Heinesen, E. (2014). Class-size effects insecondary school. Education Economics, 22, 412-426.

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当面の課題

欧文文献の内容:動機づけ・学習意欲等

非認知能力に対する長期的影響Dee, T. S., & West, M. R. (2011). The non-cognitive returnsto class size. Educational Evaluation and Policy Analysis,33, 23-46.

不安や身体反応等への影響Jakobsson, N., Persson, M., & Svensson, M. (2013).Class-size effects on adolescents’ mental health andwell-being in Swedish schools. Education Economics, 21,248-263.

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当面の課題

欧文文献の内容:教師による学習指導教師ー児童相互作用

Folmer-Annevelink, E., Doolaard, S., Mascareno, M., &Bosker, R. J. (2010). Class size effects on the number andtypes of student-teacher interactions in primary classrooms.Journal of Classroom Interaction, 45, 30-38.

授業実践の違いGalton, M., & Pell, T. (2012). Do class size reductions makea difference to class-room practice? The case of hong kongprimary schools. International Journal of EducationalResearch, 53, 22-31.

学級集団の質の違いGraue, E., Rauscher, E., & Sherfinski, M. (2009). Thesynergy of class size reduction and classroom quality.Elementary School Journal, 110, 178-201.

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文献をアサインします

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当面の課題

読み進め方分担など

1編当たり 4~5人程度で担当しサマリーを作る。5月 10日中に「授業支援システム」に全員が提出。同じグループ内の塾生は同じ成果物を提出することとなる。成果物は PDFで提出すること。

読み進める上でのヒントアブストラクトはきちんと訳してみる。対象(学校種,学年,人数)は細かく抜き書きする。特に重要そうな図表を特定し解釈し,アブストの内容をやや詳しく加筆する感じで。質問は授業支援システムの掲示板で受け付け。

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当面の課題

まとめ方(様式)1 問題及び背景:サマリーの対象となる研究はどういった問題意識で取り組まれることとなったのか。

本研究の筆者は先行研究で○○○なことは明らかになっている反面,○○○な問題があると指摘している。

2 目的:本研究で明らかしようとされたこと。上記のような問題を踏まえ,本研究は○○○を明らかにすることを目的として実施された。

3 対象:国,地域,学校種,学年,学校数,児童生徒数等。対象は○○国(○○州)の○学校○年生であった。○○校(○○人)を対象に調査を実施した。

4 方法:どのように調査(または実験)が行われたのか。調査内容は○○○であった。特に重要な図表を画像で貼り付けること。

5 結果:「目的」に対してどういうことが明らかとなったのか。○○○な分析を行った結果,○○○が明らかとなった。

6 その他(必要であれば「考察」「まとめ」などを書く)慶應義塾大学教育学特殊 XIV 第 3 講 2015 年 4 月 30 日 16 / 18

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注意事項

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注意事項

注意事項

ひとりではしんどいが,数人集まればどうにかなる。数式は気にしないこと。統計表は意味不明に見えるが,影響の強さを並べていると思えば,そんなに難しいことはない。隅々まで読もうとしないこと。全訳は論外。大事そうなところを特定すること。質問するときには内容を具体的に示すこと。○○の論文の○ページの○行目,表○など。画像を貼り付けて質問するとなお円滑に回答できる。

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