第11章技術文書 図面・線図の作成 - jsa.or.jp · 技術文書 4...

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第11章 技術文書 図面・線図の作成 2007年3月1日 株式会社ビューポイント情報科学研究所 荒木純夫 (標準講義時間 90分) 標準化教育プログラム [個別技術分野編―電気電子分野] 本資料は,経済産業省委託事業である 「平成18年度基準認証研究開発事業 (標準化に関する研修・教育プログラムの 開発)」の成果である。

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第11章 技術文書 − 図面・線図の作成

2007年3月1日

株式会社ビューポイント情報科学研究所

荒木純夫

(標準講義時間 90分)

標準化教育プログラム [個別技術分野編―電気電子分野]

本資料は,経済産業省委託事業である「平成18年度基準認証研究開発事業(標準化に関する研修・教育プログラムの開発)」の成果である。

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技術文書 2

学習のねらい ・・・・・ 第11章 技術文書-図面・線図の作成

1 二値論理を含む電気・電子関係技術文書の作成・マネジメントについて,国際標準の存在を知り,国際標準に基づいた手法について学習する。

2 技術者でなくても,技術文書の内容が理解できるようにする。

3 技術文書を国際標準に基づいて作成・マネジメントすることの重要性,特に品質,環境及びリスクマネジメントの規格との関連を理解する。

4 日本国内の従来の文書作成・マネジメントと,WTOの枠組みの中での国際標準による方法との違いを理解する。

5 技術文書管理におけるオブジェクト指向の考え方を理解する。

6 日本語表記のあいまいな部分を解説する。

7 「10 技術文書 − 文書作成・マネジメント」では,文書マネジメントと文書作成の全般的な注意点について解説する。

8 「11 技術文書 −図面・線図の作成」では,技術文書のうち特に図面及び線図の基本的な作成上の注意点について解説する。

p. 2

◆ 指導のポイント

「10 技術文書 − 文書作成・マネジメント」 では文書の管理方法を中心に解説した。「11 技術文書 − 図面・線図の作成」では,具体的に国際規格に沿った図面及び線図の書き方について学習する。

小数点の表記方法など,日本ではほとんど知られていない内容も含んでいるので,特に強調して指導する。

教材で参照している規格は,「(国際規格番号 [JIS番号])」の形で表記している。これは,この教材で参照しているJISのほとんどが,国際規格を翻訳した規格であることを示している。これ以外の形式で表示している場合は,国際規格に対応するJIS存在しないか,その逆である。

教材には規格の番号だけ表記し,規格の表題を記述していない。講義では,参考資料記載のWebサイトで,受講者自身で調べるよう誘導する。

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技術文書 3

目 次 ・・・・・ 第11章 技術文書-図面・線図の作成

1 用語定義

2 文書作成原則

トピックス -イギリス英語とアメリカ英語-

まとめ

練習問題

参考資料

特に説明を行なうページについて解説の見出しを強調表示にしている。

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技術文書 4

1 用語定義① -情報表現の形式-

• 図面形式 (drawing form) (IEC 61082第2版)

– 図による情報の表示形式

• 実尺図形式 (pictorial form) (IEC 61082第2版)

– 画像又は実際に使用される遠近法にかかわらず幾何学的に正確な描写の情報の表示形式

– 二次元又は三次元の表現

• テキスト形式 (textual form) (IEC 61082第2版)

– 単語や数字による情報の表示形式

p. 4

◆ 解 説

情報表現の形式の用語について説明している。

電気・電子関係の技術文書の特徴として,対象物の外形を幾何学的に正確に表わす図面より,対象と対象を情報やエネルギーの流れのつながりで表わす線図(次ページ参照)の割合が大きい。その違いを明確にするため, IEC 61082第2版ではdrawing formとpictorial formという用語を定義している。 図面形式と実尺図形式は独立した関係ではなく,実尺図形式は図面形式に含まれる。

IEC 61082第1版ではdrawing formの定義はなく, IEC 61082第1版を翻訳したJIS C 1082:1999ではpictorial formを「図形式」と翻訳している。 「図形式」では包含する意味が広範にわたりあいまいになると考え,この教材では用語の定義に則して「実尺図形式」と表記している。

◆ 参考規格

IEC 61082:2006 Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: RulesJIS C 1082:1999 (IEC 61082:1991) 電気技術文書

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技術文書 5

1 用語定義② -技術文書の種類-

• 図面 (drawing) (IEC 61082第2版)

– 対象(object)及びそれらの相対位置の通常尺度を拡大縮小して示す,図面形式による情報の表現

• 線図 (diagram) (IEC 61082第2版)

– 対象(object)とそれらの関連を示すために図記号が使用される,主に図面形式による情報の表現

• チャート/グラフ (chart; graph) (IEC 61082第2版)

– 二つ以上の可変量,操作又は状態の関係を示す主に図形による情報の表現

• 表/リスト (table; list) (IEC 61082第2版)

– 縦列(columns)及び横列(rows)を用いる表示形式

p. 5

◆ 解 説

情報表現の形式に対して,ここでは具体的な技術文書の種類について説明している。

IEC 61082第2版では,図面 (drawing) の定義で「図面形式による情報の表現」としているが,「情報表現の形式」で説明したように図面には実尺図形式 も含まれる。実寸法と関係のない図面が多いことを示している。

線図 (diagram) は,エネルギーあるいは情報の流れのつながりを示す技術文書であり,実寸法を示さない。電気・電子関係の技術文書の中心である。

チャートとグラフ,表とリストはそれぞれ同じ意味で用いられる。

• ◆ 参考規格

IEC 61082:2006 Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: RulesJIS C 1082:1999 (IEC 61082:1991) 電気技術文書

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技術文書 6

• 用紙サイズ (ISO 5457第2版)

図又は線図形式の場合,主にA3サイズの使用を推奨

• 用紙余白 (ISO 5457第2版)

長辺長さ(mm)短辺長さ(mm)用紙サイズ呼称

297210A4

420297A3

594420A2

841594A1

1 189841A0

2 文書作成原則① -用紙サイズと用紙余白-

p.6

◆ 解 説

技術文書ではA系列の用紙,特に A3サイズを中心に使うことを説明する。用紙サイズにはB系列もあるが,これは使用しない。なおB系列のサイズは,JISとISOで異なる。

用紙は必ず 低限10 mmの余白を周囲に取る。加えてとじ代としてA3からA0サイズは短辺,A4サイズは長辺に10 mmを取る。すなわちとじ代は20 mmとなる。

技術文書に限らず日本人が作成する文書一般,特にPowerPointのようなプレゼンテーション資料ににおいて,余白や行間を考慮しない文書が多々見られる。これは理解してもらうという観点において,全く逆効果である。

◆ 参考規格

ISO 5457:1999 Technical product documentation -- Sizes and layout of drawing sheetsJIS Z 8311:1998 製図—製図用紙のサイズ及び図面の様式

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技術文書 7

2 文書作成原則② -ページ割り付け-

• ページ割り付け (IEC 61082第2版)

– 1又は複数の識別領域(1識別領域は必須)

– 内容領域

〔出所:IEC 61082-1:2006, Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: Rules, Figure 6〕

p. 7

◆ 解 説

識別領域は 低限1か所設け,2か所以上あっても良い。A4サイズは2か所,A3以上のサイズでは1か所という意味ではない。

識別領域に記述する情報として代表的なものは表題欄である。表題欄の詳細は次のページで説明する。

◆ 参考規格

IEC 61082:2006 Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: RulesJIS C 1082:1999 (IEC 61082:1991) 電気技術文書

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技術文書 8

2 文書作成原則③ -表題欄-

• 表題欄 (IEC 61082第2版, IEC 82045-2, ISO 7200)

– 識別領域の右下に表題欄(タイトルブロック)を置く

– 表題欄の表記例

+ 各項目はメタデータに対応(「10 文書作成・マネジメント」14,15ページ )

+ 文書指定はIEC 61355 [JIS C 0451]による(同16ページ)

〔出所:IEC 61082-1:2006, Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: Rules, Figure B.1〕

p. 8

◆ 解 説

表題欄について,文書の日付,表題等を記述する部分であるということを簡単に説明する。

強調項目は必須項目である。括弧の数字は「 10 技術文書 − 文書作成・マネジメント」 14ページと15ページのメタデータの番号との対応を示す。

ここで示している表題欄はあくまでも例であって,この通りに記述するという意味ではない。

文書ID (1)は,文書を作成する製造業等の組織内独自の規則によって決められたものである。文書指定(7)&(8)/(9)は, 「10 技術文書 − 文書作成・マネジメント」 16ページで説明した,規格(IEC 61355 [JIS C 0451])で規定された文書IDのことである。

ここで興味深いのは,組織内独自の文書IDの記入は必須であるが,規格に従った文書IDの記入は必須ではないということである。すなわち,従来からその組織で使われてきたシステムをやめて規格に合わせるということを強要していないということである。しかしながら,他者との情報交換の効率を考えると,規格に従った文書指定も記入することが望ましい。

◆ 参考規格

IEC 61082:2006 Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: RulesJIS C 1082:1999 (IEC 61082:1991) 電気技術文書

IEC 82045-2:2004 Document management - Part 2: Metadata elements and information reference model

ISO 7200:2004 Technical product documentation -- Data fields in title blocks and document headers

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技術文書 9

2 文書作成原則④ -基準寸法,製図格子及び区分参照-

• 基準寸法(Module) (IEC 61082第2版, IEC 81714-2第2版)

– 基準寸法として単位Mを使う

– 単位Mは次の中から選ぶ1.8 (2.0) mm; 2.5 mm; 3.5 mm; 5 mm; 7 mm; 10 mm; 14 mm; 20mm

+ ISO 128-20(1996) [Z 8312]では1.8 mmとしているが2.0 mmを推奨

• 製図格子(Drawing grid) (IEC 61082第2版)

– 1Mの格子を基準に配置する

• 区分参照(Reference grid) (IEC 61082第2版, ISO 5457第2版)

– 図面の中の対象の位置決めのために,区分参照を使用する

– 区分の間隔は10M,16Mまたは20Mを用いる (IEC 61082第2版)

– (用紙サイズに合わせて,若干異なる)

– 区分の横列(rows)は,左上からラテン大文字のIとOを除きA, B, C, …とする

– 区分の縦列(columns)は,左上から数字の0又は1で始まる番号とする

p. 9

◆ 解 説

基準寸法と製図格子

基準寸法は,次に説明する製図格子や区分参照,図記号の大きさ,線の太さ及び文字の大きさに適用される。すなわち,基準寸法の単位Mの大きさを変更すれば,図面のすべての大きさが簡単に変更できる。

基準寸法の単位Mには1.8 (2.0) mmも含まれるが,文書の縮小等を考えると2.5 mm以上を採用することが望ましい。IEC 60617 [JIS C 0617]で規定されている図記号は,製図格子M = 5 mmで表記されている。

区分参照

区分参照の定義はIEC 61082第2版とISO 5457第2版では異なるが,ここではIEC 61082に従って説明している。

ラテン文字のIとOは,数字の0と1と混同しやすいため使用しない。

区分参照の表記例については,次ページ参照。

◆ 参考規格

IEC 61082:2006 Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: RulesJIS C 1082:1999 (IEC 61082:1991) 電気技術文書

IEC 81714-2:2006 Design of graphical symbols for use in the technical documentation of products - Part 2: Specification for graphical symbols in a computer sensible form,including graphical symbols for a reference library, and requirements for their interchangeJIS Z 8222-2:2006 (IEC 81714-2:1998) 製品技術文書に用いる図記号のデザイン—第2部:参照ライブラリ用図記号を含む電子化形式の図記号の仕様,及びその相互交換の要求事項

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技術文書 10

2 文書作成原則⑤ -区分参照の例-

• 区分参照(Reference grid)の例 (IEC 61082第2版, ISO 5457第2版)

– A3用紙,基準寸法M=2.5 mm,間隔16Mの場合の表記例

〔出所:IEC 61082-1:2006, Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: Rules, Figure 7〕

p. 10

◆ 解 説

区分参照は,横列のラテン大文字と縦列の数字の組合せでゾーンを表わす。具体的な表記方法は,次ページの相互参照で説明する。

◆ 参考規格

IEC 61082:2006 Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: RulesJIS C 1082:1999 (IEC 61082:1991) 電気技術文書

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技術文書 11

2 文書作成原則⑥ -相互参照-

• 相互参照(Cross-references) (IEC 61082第2版, IEC 61355 [JIS C 0451]))

– 相互参照の表記

+ 文書指定/ページ.ゾーン

– 相互参照の例

+ 文書”=EA2=S1&FS”の3ページのゾーン”B2”への参照

=EA2=S1&FS/3.B2

+ 同じ文書の3ページのゾーンB2への参照 /3.B2

+ 同じページの縦列(column)2への参照 /.2

– 相互参照の適用例

〔出所:IEC 61082-1:2006, Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: Rules, Figure 8〕

p. 11

◆ 解 説

文書指定については後ほど説明する。

相互参照の適用例の3番目は,「対象」図記号が1ページに収まらない場合の,分割表記の例である。

◆ 参考規格

IEC 61082:2006 Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: RulesJIS C 1082:1999 (IEC 61082:1991) 電気技術文書

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技術文書 12

• 線の太さ (IEC 61082第2版, IEC 81714-2第2版)

– 数式

+ M=2.5 mmの場合,0.25 mm, 0.35 mm, 0.50 mm, …– 複数の線の太さを使う時は,2:1の割合とする

• 文字(IEC 61082第2版, IEC 81714-2第2版)

– ISO 3098-5 [JIS Z 8313-5]の書体CBの直立体(V)を使うようにする

+ 線の太さは文字高さの1/10 (書体CAは1/14)

– 文字高さ数式

+ M=2.5 mmの場合,2.5 mm, 3.5 mm, 5.0 mm, …– 仮名は2.5 mm以上,漢字は3.5 mm以上にするとよい [JIS Z 8313-10]

+ 高さ2.5 mmは8ポイント,3.5 mmは10ポイントを適用する

– 16画以上の漢字はできる限り仮名を使う [JIS Z 8313-10]

2 文書作成原則⑦ -線の太さと文字-

p. 12

◆ 解 説

線の太さ及び文字の高さの数式は,CAD (Computer Aided Design: 設計支援システム,簡単に言えば製図システム)を意識したものである。ひとつのドキュメンテーションの中では,基本となるMとnの値をひとつに決める。例えば,M=2.5,n=2として線の太さを0.5 mm,文字の大きさを5 mmとしたら,これを基本の大きさとして統一する。これらの情報は必ず文書のいずれかに記述し,すぐわかるようにする。

IEC 81714-2:1998 [JIS Z 8222-2:2006]では,単純に線の太さは基準寸法Mの1/10としているが,IEC 61082:2006ではここで説明している数式に従い基準寸法Mに対する線の太さの選択の幅が増えている。又同様に,文字の高さも選択の幅が増えている。

◆ 参考規格

IEC 61082:2006 Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: RulesJIS C 1082:1999 (IEC 61082:1991) 電気技術文書

IEC 81714-2:2006 Design of graphical symbols for use in the technical documentation of products - Part 2: Specification for graphical symbols in a computer sensible form,including graphical symbols for a reference library, and requirements for their interchangeJIS Z 8222-2:2006 (IEC 81714-2:1998)製品技術文書に用いる図記号のデザイン—第2部:参照ライブラリ用図記号を含む電子化形式の図記号の仕様,及びその相互交換の要求事項

ISO 3098-5:1997 Technical product documentation -- Lettering -- Part 5: CAD lettering of the Latin alphabet, numerals and marksJIS Z 8313-5:2000 製図—文字—第5部:CAD用文字,数字及び記号

JIS Z 8313-10:1998 製図−文字−第10部:平仮名,片仮名及び漢字

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技術文書 13

2 文書作成原則⑧ -寸法線-

• 寸法線 (IEC 61082第2版,ISO 129-1)

①矢印,閉塞及び充填30°

②矢印,閉塞30°

③矢印,開放30°

④矢印,開放90°

⑤斜めストローク,45°

〔出所:IEC 61082-1:2006, Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: Rules, Figure 13〕

p. 13

◆ 解 説

ここで説明している寸法線は,代表的なものである。矢印の角度は,15°以上90°以下であればよい。

◆ 参考規格

IEC 61082:2006 Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: RulesJIS C 1082:1999 (IEC 61082:1991) 電気技術文書

ISO 129-1:2004 Technical drawings -- Indication of dimensions and tolerances -- Part 1: General principlesJIS Z 8317:1999 (ISO 129-1:1985) 製図—寸法記入方法—一般原則,定義,記入方法及び特殊な指示方法

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技術文書 14

• 引出線及び参照線 (IEC 61082第2版,ISO 128-22 [JIS Z 8322])

①対象の中で終っている引出線

②対象の上で終っている引出線

③線の上で終っている引出線

④線の上で終っているストローク付の引出線

– 接続線への引出線の使用例

2 文書作成原則⑨ -引出線及び参照線-

〔出所:IEC 61082-1:2006, Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: Rules, Figure 14 & 15〕

p. 14

◆ 解 説

対象に直接接している斜めの線が引出線,引出線に続く水平線が参照線である。

接続線への引出線の使用例は,1.5 mm2の心線3本という意味である。

◆ 参考規格

IEC 61082:2006 Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: RulesJIS C 1082:1999 (IEC 61082:1991) 電気技術文書

ISO 128-22:1999 Technical drawings -- General principles of presentation -- Part 22: Basic conventions and applications for leader lines and reference linesJIS Z 8322:2003 製図—表示の一般原則—引出線及び参照線の基本事項と適用

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技術文書 15

2 文書作成原則⑩ -文字の向き-

• 文字の向き (IEC 61082第2版)

〔出所:IEC 61082-1:2006, Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: Rules, Figure 3〕

p. 15

◆ 解 説

文書右からの視点で横向きに文字を書くのは,例えば後述する接続線に沿って記述する接続端指定と信号指定である。対象,すなわち図記号に対するこれも後述する参照指定は,横向きに記述することは一般的にはない。

◆ 参考規格

IEC 61082:2006 Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: RulesJIS C 1082:1999 (IEC 61082:1991) 電気技術文書

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技術文書 16

2 文書作成原則⑪ -色,影,模様-

• 色(colours) (IEC 61082第2版)

– 色は補足的な情報としてのみ使用し,内容を理解する唯一の手段としない

– 色の意味はその文書又は解説書に記述する

– 白黒印刷でも識別できるようにする

• 影(shading),模様(patterns) (IEC 61082第2版)

– 影及び模様は,領域を区別するのに使用する

p. 16

◆ 解 説

色あるいは影又は模様の多用は,かえって視認性を悪くする。

「色」のつづりはcolorではなくcolourとなっているが,国際規格の英語はイギリス英語を使用することが原則となっているためである(25ページ「トピックス」参照)。

◆ 参考規格

IEC 61082:2006 Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: RulesJIS C 1082:1999 (IEC 61082:1991) 電気技術文書

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技術文書 17

2 文書作成原則⑫ -尺度と実尺図表現-

• 尺度 (ISO 5455 [JIS Z 8314])

– 尺度(scale)は識別領域に表示し,尺度線(scale bar)は内容領域に表示

– 推奨尺度

• 実尺図表現 (ISO 128-30, ISO 5456-2 [JIS Z 8315-2])

– 二次元実尺図表現は正投影法による

– 正投影法の種類

+ 第一角法

+ 第三角法 − 日本で主流

+ 矢字法

+ 鏡像投影

1:2 1:5 1:10 1:20 1:50 1:1001:200 1:500 1:1 000 1:2 000 1:5 000 1:10 000

縮尺

1:1現尺

50:1 20:1 10:1 5:1 2:1倍尺

推奨尺度類別

p. 17

◆ 解 説

• 尺度

尺度は,実尺図表現において使われる。尺度は推奨尺度の表のように表記し,識別領域,特に表題欄の中に含めるのが一般的である。尺度線は内容領域の四隅のいずれかに置き,描かれた対象の実寸法を測るのに使われる。

• ◆ 参考規格

ISO 5455:1979 Technical drawings -- ScalesJIS Z 8314:1998 製図—尺度

• 実尺図表現

正投影法はここで説明している種類がある。日本で主に採用されているのは第三角法であるが,ヨーロッパでは第一角法が主流である。図面を読む時にはこの点に注意しなければならない。

ここではどのような種類があるかの説明に止め,具体的な内容についてはISO 5456-2 [JIS Z 8315-2]を参照のこと。

• ◆ 参考規格

ISO 128-30:2001 Technical drawings -- General principles of presentation -- Part 30: Basic conventions for views

ISO 5456-2:1996 Technical drawings -- Projection methods -- Part 2: Orthographic representationsJIS Z 8315-2:1999 製図—投影法—第2部:正投影法

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技術文書 18

• 図記号の選択 (IEC 61082第2版, IEC 81714-2第2版)

– 関連する規格を確認する

+ IEC 60617 [JIS C 0617]: 線図用図記号 [電気用図記号]

+ ISO 14617: 線図用図記号

+ ISO 5807 [JIS X 0121]:情報処理用流れ図・プログラム網図・システム資源図記号 等

– 図記号が見つからない場合 (IEC 60617 Database)

+ 既存の図記号を組み合せる

• IEC 60617の中の限定図記号又は他の図記号

• 関連文書で定義される他の図記号又は識別子

+ IEC 60617の「対象(object)」図記号を適用し記号の中に文字で記述

2 文書作成原則⑬ -図記号の選択-

p. 18

◆ 解 説

JIS C 0617「電気用図記号」の原規格のIEC 60617は,オンラインのデータベース化している。ISO 14617「線図用図記号」は,電気・電子以外の図記号である。 IEC 60617とISO 14617の英語の表題はどちらもGraphical symbols for diagramsであるが,JIS C 0301を置き換えたJIS C 0617では, JIS C 0301の表題を引き継いで「電気用図記号」となっている。

限定図記号とは,一般図記号に付加して図記号の意味を限定的にする図記号のことで,単体では使用されない図記号であり,「対象」図記号は3種類ある。

IEC 60617 [JIS C 0617]の大きな特徴は,規格にない図記号は規格の中の図記号を組み合せたり,「対象」図記号に文字記号を組み合せて,利用者が独自の図記号を作るところにある。残念ながら,このようなIEC 60617 [JIS C 0617]の基本的な概念が,日本国内で未だ充分理解されているとは言えない。

◆ 参考規格

IEC 60617-DB Graphical symbols for diagramsJIS C 0617:1997/1999 (IEC 60617:1996/1997) 電気用図記号

IEC 61082:2006 Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: RulesJIS C 1082:1999 (IEC 61082:1991) 電気技術文書

IEC 81714-2:2006 Design of graphical symbols for use in the technical documentation of products - Part 2: Specification for graphical symbols in a computer sensible form,including graphical symbols for a reference library, and requirements for their interchangeJIS Z 8222-2:2006 (IEC 81714-2:1998) 製品技術文書に用いる図記号のデザイン—第2部:参照ライブラリ用図記号を含む電子化形式の図記号の仕様,及びその相互交換の要求事項

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技術文書 19

• 図記号の組合せ例 (IEC 61082第2版, IEC 60617 [JIS C 0617])

– ミニチュア遮断器 – 一般図記号と限定図記号の組合せ

– ミニチュア遮断器 – 「遮断器」図記号と限定図記号の組合せ(別の組合せ)

2 文書作成原則⑭ -図記号の組合せ例-

〔出所:IEC 61082-1:2006, Preparation of documents used in electrotechnology- Part 1: Rules, Figure A.3 & A4〕

p. 19

◆ 解 説

図記号を組み合せる場合,複数の組み合せ方があることをこの例では示している。いずれも,規格に沿った正しい図記号である。これが旧JIS C 0301と異なる点である。

複数の組合せ方があるということは図記号の統一を欠き,混乱を招く可能性もある。現在IEC 60617 (JIS C 0617)には組合せ図記号も登録されているが,一貫性を欠いている。組合せ図記号をどこまで含めるか,現在検討中である。

図記号の下のSで始まる番号は,IEC 60617がデータベース化した時に付加された「図記号識別子(図記号ID)」である。この番号に意味はない。

[ ]で囲ったXX-YY-ZZ形式の番号は「出版物識別子(出版物ID)」であり, 初のXXは「以前の版の出版物」のパート(部)番号を表す。2番目のYYは,「以前の版の出版物」の附属書を含む節番号を表す。Aが使われている場合,旧形式の図記号の節番号である。 後のZZは各節の中での連番である。この識別子がない図記号はIEC 60617がデータベース化されてから制定された図記号であり,JIS C 0617にはない。

◆ 参考規格

IEC 60617-DB Graphical symbols for diagramsJIS C 0617:1997/1999 (IEC 60617:1996/1997) 電気用図記号

IEC 61082:2006 Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: RulesJIS C 1082:1999 (IEC 61082:1991) 電気技術文書

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技術文書 20

• 「対象」図記号の使用例 (IEC 61082第2版, IEC 60617 [JIS C 0617])

– 直流電動機の詳細表記

2 文書作成原則⑮ -「対象」図記号の使用例-

〔出所:IEC 61082-1:2006, Preparation of documents used in electrotechnology- Part 1: Rules, Figure 10〕

p. 20

◆ 解 説

直流電動機の回路を詳細に表記することを例に,「対象」図記号と他の図記号又は文字記号の組合せでの表記方法を示している。ここでも複数の組合せ方があることを示している。

◆ 参考規格

IEC 60617-DB Graphical symbols for diagramsJIS C 0617:1997/1999 (IEC 60617:1996/1997) 電気用図記号

IEC 61082:2006 Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: RulesJIS C 1082:1999 (IEC 61082:1991) 電気技術文書

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技術文書 21

2 文書作成原則⑯ -図記号の大きさ-

• 図記号の大きさ (IEC 61082第2版, IEC 81714-2第2版)

– 図記号の大きさと線の太さは図記号の意味に影響しない

– IEC 60617の図記号は基準寸法Mの格子で大きさを規定されている

– 図記号はなるべく基準寸法Mの大きさを維持するようにする

– 図記号の拡大縮小は縦横縮尺率同一の相似形で行ない,基準寸法M及び線の太さは変更しない

– 基準寸法Mの大きさを変更して,図記号全体の大きさを変更する方法もある

– 一般図記号の「対象」は,入出力の増加や記述する情報に応じて変形してよい

p. 21

◆ 解 説

IEC 60617 [JIS C 0617]の図記号の基準寸法Mは5 mmである。

図記号の大きさの詳細な規定については, IEC 81714-2に詳しい。

回転による図記号の変形は,次ページ以降で説明する。

◆ 参考規格

IEC 60617-DB Graphical symbols for diagramsJIS C 0617:1997/1999 (IEC 60617:1996/1997) 電気用図記号

IEC 61082:2006 Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: RulesJIS C 1082:1999 (IEC 61082:1991) 電気技術文書

IEC 81714-2:2006 Design of graphical symbols for use in the technical documentation of products - Part 2: Specification for graphical symbols in a computer sensible form,including graphical symbols for a reference library, and requirements for their interchangeJIS Z 8222-2:2006 (IEC 81714-2:1998) 製品技術文書に用いる図記号のデザイン—第2部:参照ライブラリ用図記号を含む電子化形式の図記号の仕様,及びその相互交換の要求事項

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技術文書 22

• 図記号の向き① (IEC 60617 [JIS C 0617], IEC 81714-2第2版)

– S00057 [05-04-04] 「3端子サイリスタ(形式無指定)」

– S00642 [05-03-02] 「発光ダイオード(LED)(一般図記号)」

+ S00127 [02-09-01] 「非電離電磁放射」(矢印)の向きは常に同じ

2 文書作成原則⑰ -図記号の向き①-

p. 22

◆ 解 説

これらの例の表の中で,IEC 60617 [JIS C 0617]に記載されている図記号は”A”のみである。この図記号を90°ずつ回転させた図記号及び左右反転して90°ずつ回転させた図記号の,8通りの向きで使うことができる。ただし,回転や反転によって図記号の意味が変わってしまう場合はそのままとする。

S00642 [05-03-02]「発光ダイオード」は,S00641 [05-03-01]「半導体ダイオード」 (一般図記号)とS00127 [02-09-01] 「非電離電磁放射」 (限定図記号)を組み合せた図記号であるが,「非電離電磁放射」には,「特定の照射体が示されないときは,矢先を右上へ向けること。」という意味があり,矢印の向きを変えることはできない。したがって,この図のような表現になる。

図記号とともに記載されている接続端の番号は,図記号に含まれない。

◆ 参考規格

IEC 60617-DB Graphical symbols for diagramsJIS C 0617:1997/1999 (IEC 60617:1996/1997) 電気用図記号

IEC 61082:2006 Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: RulesJIS C 1082:1999 (IEC 61082:1991) 電気技術文書

IEC 81714-2:2006 Design of graphical symbols for use in the technical documentation of products - Part 2: Specification for graphical symbols in a computer sensible form,including graphical symbols for a reference library, and requirements for their interchangeJIS Z 8222-2:2006 (IEC 81714-2:1998) 製品技術文書に用いる図記号のデザイン—第2部:参照ライブラリ用図記号を含む電子化形式の図記号の仕様,及びその相互交換の要求事項

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技術文書 23

• 図記号の向き② (IEC 60617 [JIS C 0617], IEC 81714-2第2版)

– 接点図記号

+ 見間違いを防ぐために2方向のみ

+ S00227 [07-02-01] 「メーク接点(一般図記号),スイッチ(一般図記号)」

+ S00229 [07-02-03] 「ブレーク接点」

2 文書作成原則⑱ -図記号の向き②-

〔出所:IEC 61082-1:2006, Preparation of documents used in electrotechnology- Part 1: Rules, Figure 72〕

p. 23

◆ 解 説

接点図記号は,誤認識しないように”A”と”B”の向きのみを使用する。

慣用的に, 通電でオンとなるS00227 [07-02-01]は「a接点」,通電でオフとなるS00229 [07-02-03] は「b接点」と呼ばれている。

◆ 参考規格

IEC 60617-DB Graphical symbols for diagramsJIS C 0617:1997/1999 (IEC 60617:1996/1997) 電気用図記号

IEC 61082:2006 Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: RulesJIS C 1082:1999 (IEC 61082:1991) 電気技術文書

IEC 81714-2:2006 Design of graphical symbols for use in the technical documentation of products - Part 2: Specification for graphical symbols in a computer sensible form,including graphical symbols for a reference library, and requirements for their interchangeJIS Z 8222-2:2006 (IEC 81714-2:1998) 製品技術文書に用いる図記号のデザイン—第2部:参照ライブラリ用図記号を含む電子化形式の図記号の仕様,及びその相互交換の要求事項

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技術文書 24

2 文書作成原則⑲ -小数点と数値の桁区切り及び日付の表記-

• 小数点 (ISO/IEC Directives Part 2, 6.6.8.1)

– 国際標準では,小数点は言語に関係なくコンマ(comma)を使用する

+ 例 2,345 0,001

– 日本国内では,小数点はピリオド(full stop)としている

+ 例 2.345 0.001

• 数値の桁区切り (ISO/IEC Directives Part 2, 6.6.8.3)

– 国際標準では,10進数の表記は西暦を除き3桁毎に空白(space)で区切る

+ 例 23 456 2,345 67 西暦 2006

– 日本国内では,3桁毎の区切りはコンマ(comma)としている

+ 例 23,456 2.34567

• 国際標準における日付の表記

– 西暦で,年月日の順序でyyyy-mm-ddと表わす

+ 例 2007-01-08

p. 24

◆ 解 説

国際標準と日本国内の小数点と桁区切りの表記は異なるので注意する。特に外国の企業が国際標準に従って表記した文書は,読み間違いをしないようにしなければならない。また,同じドキュメンテーションの中で,表記方法を混在させてはならない。

IEC及びISOでの規格作成の正式言語は英語(イギリス英語),仏語,ロシア語であるが,実質的には英語と仏語である。国際規格で小数点をコンマ,桁区切りを空白で表記するのは,仏語由来である。一般的にヨーロッパ大陸ではフランスに限らずこのような表記が使われており,そのために国際規格ではこのような表記で固定されてしまった。

日本国内ではこのような国際規格の規定に関わらず,小数点にピリオド,桁区切りにコンマをJISで使用している。

現在,アメリカからの提案に基づき,ISOを主体に国際規格で小数点にピリオド,桁区切りにコンマを使用することを認めるかどうかの審議が,2007年1月から開始された。

国際規格はイギリス英語に従うという原則から,ピリオドはfull stopと表記している。

西暦の表記は,同じ英語でもイギリスとアメリカでは異なる。そこで,国際標準では日本語のように,年月日の順序で表記している。

◆ 参考規格

ISO/IEC Directives Rules for the structure and drafting of International StandardsPart 2 Ed. 5:2004

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技術文書 25

トピックス -イギリス英語とアメリカ英語-

• 国際標準では,イギリス英語が基本

• イギリス英語とアメリカ英語の違い

March 1st, 20071st March, 2007

centercentre

periodfull stop

elevatorlift

colorcolour

groundearth

antennaaerial

アメリカ英語イギリス英語

p. 25

◆ 解 説

トピックス -イギリス英語とアメリカ英語-

イギリス英語とアメリカ英語は,その表現が異なることがあり,ここでは規格にも良く登場する用語を掲げた。電気・電子分野の基本的な技術用語でも異なることがあり,この表では「アンテナ」と「接地」を代表的な用語として取り上げている。

特に注意しなければいけないのは「接地」である。日本の専門書の中にはearthとgroundを異なる機能として解説している書籍があるが,その違いはイギリス英語とアメリカ英語の違いであって,用語の意味としては全く同一である。

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技術文書 26

2 文書作成原則⑳ -数量,単位,数値及び色コード-

• 数量,単位及び数値 (IEC 61082第2版)

– 数量,単位及び数値の表現は文字記号で表わす (IEC 60027)

– 単位はSI単位系を使うようにする (ISO 31 [JIS Z 8202])

– 文字記号の表記例 (IEC 60617 [JIS C 0617])

• 色コード (IEC 60757)

GD金(Gold)VT紫(Violet)OG橙(Orange)

GNYE緑黄(Green-and-Yellow)

PK桃(Pink)BU青(Blue)RD赤(Red)

SR銀(Silver)WH白(White)

GN緑(Green)BN茶(Brawn)

TQ青緑(Turquoise)GY灰(Grey)YE黄(Yellow)

BK黒(Black)

p. 26

◆ 解 説

ここで例として提示している組合せ図記号は,IEC 60617 [JIS C 0617]に掲載されている。

色コードは,文字記号の一つとして使われる。ケーブルの心線の色も,この色コードの範囲が使われている。

◆ 参考規格

IEC 60617-DB Graphical symbols for diagramsJIS C 0617:1997/1999 (IEC 60617:1996/1997) 電気用図記号

IEC 61082:2006 Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: RulesJIS C 1082:1999 (IEC 61082:1991) 電気技術文書

IEC 60027-1:1992 Letter symbols to be used in electrical technology - Part 1: General

IEC 60757:1983 Code for designation of colours

ISO 31-0:1992 Quantities and units -- Part 0: General principlesJIS Z 8202-0:2000量及び単位—第0部:一般原則

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技術文書 27

2 文書作成原則 -範囲と要素の表現-

• 範囲と要素の表現 (IEC 61082第2版)

– 数量(連続量)の範囲の表記例

+ 1から5アンペア 1 A … 5 A

– 要素(離散値)の表記例

+ 数値要素1, 2, 3, 4, 5及び6 1, …, 6

+ 25以上無制限の数値要素 25, …+ 25で終る無制限の数値要素 …, 25

+ アルファベット要素C, D, E, F及びG C, …, G

• 大文字と小文字は混在させない

+ 要素R2, R3, R4, R5 R2, …, R5

+ 要素R2, S2, T2, U2, V2 R2, …, V2

+ 要素1, 8, 9, 10, 11, 12, 14, A, B, C及びD 1, 8, …, 12, 14, A, …, D

21

p. 27

◆ 解 説

連続量(アナログ)と離散値(デジタル)の省略表記について説明している。離散値の場合,必ずコンマが入る。

◆ 参考規格

IEC 61082:2006 Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: RulesJIS C 1082:1999 (IEC 61082:1991) 電気技術文書

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技術文書 28

2 文書作成原則 -参照指定①-

• 参照指定① (IEC 61082第2版, IEC 61346-1 [JIS C 0452-1])

– 接頭辞

+ “=”対象(object)の機能観点(Function aspect)

+ “-”対象(object)の製品観点(Product aspect)

+ “+”対象(object)の位置観点(Location aspect)

– 参照指定は文書下からの視点で読めるようにし,対象(object)の上か左に表記する

– 参照指定の表記例(IEC 61346-2[JIS C 0452-2])

=G01-M001 給水ポンプG01のモーターM001

=192.168.1+A01-K05 セグメント192.168.1のA01区画にあるハブK05

– 簡略化表現の例

-A2C4F1, -A2C4F2, -A2C4F3及び-A2C4F4 → -A2C4(-F1, …, -F4)

=B2-C1, =B2-D3, =B2-F5 → =B2(-C1, -D3, -F5)

=Q3=1=H1, =Q3=2=H1及び=Q3=3=H1 → =Q3(=1, …, 3)=H1

22

p. 28

◆ 解 説

ある対象(object)に対して,一意的に特定できるようにするのが参照指定である。IECではこの参照指定を,機能,製品,位置という3種類の観点から表記できるようにしている。例えば,参照指定の表記例の2番目のように,コンピューターネットワークの論理的つながりと物理的配線を関連付けて同時に表記することができる。

参照指定の機能観点のラテン文字は, IEC 61346-2[JIS C 0452-2]でその意味が規定されている。

• 例

- G: エネルギー又は材料の流れの発生(ポンプ,発電機,乾電池等)

- K: 信号又は情報の処理(CPU等)

◆ 参考規格

IEC 61082:2006 Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: RulesJIS C 1082:1999 (IEC 61082:1991) 電気技術文書

IEC 61346-2:2000 Industrial systems, installations and equipment and industrial products - Structuring principles and reference designations - Part 2: Classification of objects and codes for classesJIS C 0452-2:2005 電気及び関連分野−工業用システム,設備及び装置,並びに工業製品−構造化原理及び参照指定−第2部:オブジェクトの分類(クラス)及び分類コード

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技術文書 29

• 参照指定② (IEC 61082第2版, IEC 61346-1 [JIS C 0452-1])

– 複数レベルの参照指定は木構造の階層表現とする

– 複数レベルの参照指定の表記例

=A1=B=C3 -A1-B2-C-D4 +G1+H2+3+S4=A1B2C3 -A1B2C-D4 +G1H2+3S4=A1.B2.C3 -A1.B2.C.D4 +G1.H2.3.S4

2 文書作成原則 -参照指定②-

〔出所:IEC 61082-1:2006, Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: Rules, Figure 18〕

23

p. 29

◆ 解 説

参照指定はオブジェクト指向の考え方に従って,木構造の階層表現にすることを説明している(「10 技術文書 − 文書作成・マネジメント」 8ページ参照)。オブジェクト指向の説明ではクラスという抽象的な概念について木構造の包含関係を説明しているが,製品のような具体的なインスタンスについても,製品の中の部品のように木構造の階層表現ができる。

◆ 参考規格

IEC 61082:2006 Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: RulesJIS C 1082:1999 (IEC 61082:1991) 電気技術文書

IEC 61346-1:2000 Industrial systems, installations and equipment and industrial products - Structuring principles and reference designations - Part 1: Basic rules JIS C 0452-1:2005 電気及び関連分野−工業用システム,設備及び装置,並びに工業製品−構造化原理及び参照指定−第1部:基本原則

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技術文書 30

2 文書作成原則 -接続端指定-

• 接続端指定 (IEC 61666 [JIS C 0455])

– 明確にするには,接続端指定の前にコロン( : )を置き,参照指定をつける

+ 参照指定:接続端指定

– 接続端指定の例

=A1-M1:U

=A1-M1:V

=A1-M1:W

=A1-M1:PE

〔出所:JIS C 0455:2005 (IEC 61666:1997),システムにおける接続端の識別,図2〕

24

p. 30

◆ 解 説

接続端すなわち端子の指定方法の表現について説明している。

例の図にあるように,明確に接続端指定とわかる場合は参照指定とコロンを付加する必要はない。

◆ 参考規格

IEC 61666:1997 Industrial systems, installations and equipment and industrial products - Identification of terminals within a systemJIS C 0455:2005 電気及び関連分野—工業用システム,設備及び装置,並びに工業製品—システムにおける接続端の識別

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技術文書 31

2 文書作成原則 -信号指定-

• 信号指定 (IEC 61175第2版)

– 信号指定の表記

+ 参照指定;信号名:別形(付加情報)

• 信号名の表記

– 分類_簡略名_基本信号名

– 分類コードと表記例

制御信号追加クラスY(n)報告信号追加クラスX(n)制御信号設定値S報告信号測定信号M報告信号一定値信号L

報告信号表示信号I報告信号イベント信号E制御信号コマンドC報告信号警報信号A

種類分類コード

25

p. 31

◆ 解 説

信号の種類と内容について表記する方法についての説明である。

参照指定を省略した場合も,頭に必ずセミコロンを付ける。

IEC 61175:2005では,旧版に比べて信号名の指定が詳しくなっている。信号名の頭に分類コードを付けることを求めており,基本信号名の推奨表現も規格に記載されている。

JIS C 0450:2004 (IEC 61175:1993)では,参照指定のことを品目指定(Item designation)と表現している。

◆ 参考規格

IEC 61175:2005 Industrial systems, installations and equipment and industrial products - Designation of signalsJIS C 0450:2004 (IEC 61175:1993) 電気及び関連分野−信号指定及び接続指定

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技術文書 32

2 文書作成原則 -接続線の参照指定と信号指定-

• 接続線の参照指定と信号指定 (IEC 61082第2版)

– 表記例

〔出所:IEC 61082-1:2006, Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: Rules, Figure 51〕

26

p. 32

◆ 解 説

参照指定と信号指定を同時に表記する場合の例である。この例では,信号指定とともにケーブルの参照指定を表記している。

◆ 参考規格

IEC 61082:2006 Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: RulesJIS C 1082:1999 (IEC 61082:1991) 電気技術文書

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技術文書 33

• 接続 (IEC 61082第2版, IEC 60617 [JIS C 0617])

– 図記号の接続ノード(接続点)

+ 図記号の接続ノードは1M又は0.5Mの格子に乗るように配置する

+ 接続ノードと結線の位置に意味がある図記号は,接続ノードと結線の位置によって意味が変わらないようにする

– 接続線の接続点の図記号

2 文書作成原則 -接続-26

p. 33

◆ 解 説

“M”は基準寸法のことである(9ページ)。

例にあるS00555とS00305は実際には図記号の大きさが異なるが,混同しやすい。そこで,ここで説明しているように,規格に記載してある接続ノードの位置以外に結線を描かないようにする。

T接続はS00019又はS00020のいずれで表記しても全く同じ意味であるが,同じドキュメンテーションの中で混在して使用しない。

◆ 参考規格

IEC 60617-DB Graphical symbols for diagramsJIS C 0617:1997/1999 (IEC 60617:1996/1997) 電気用図記号

IEC 61082:2006 Preparation of documents used in electrotechnology - Part 1: RulesJIS C 1082:1999 (IEC 61082:1991) 電気技術文書

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技術文書 34

ま と め ・・・・・ 第11章 技術文書-図面・線図の作成

1 技術文書は,図面,線図,チャート/グラフ,表/リストに分類される。

2 用紙サイズはA系列の用紙,特にA3サイズを中心に使用する。

3 用紙の余白は最低10 mmとり,とじ代は10 mm余計にとって20 mmとする。

4 表題欄を必ず設ける。組織独自の文書IDは必須項目であるが,国際規格に従う文書ID(文書指定)は必須項目ではない。

5 基準寸法Mを指定し,製図格子,区分参照,図記号及び文字の大きさをそろえる。

6 図記号が規格に見つからない場合,図記号を組み合せて使用する。

7 図記号の向きは8通りあるが,図記号によっては向きに制限がある。

8 国際規格では,小数点はコンマ,数値の桁区切りは空白である。

9 参照指定には,機能観点“=”,製品観点“-”,位置観点“+”の3種類の接頭辞がある。

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技術文書 35

演習問題A ・・・・・ 第11章 技術文書-図面・線図の作成

次の文章を読んで,正しいものには○,間違っているものには×をつけよ。

(1) [ ] 電気・電子関係の技術文書の中心は,対象(object)及びそれらの相対位置の通常尺度を拡大縮小して示す,図面 (drawing) である。

(2) [ ] 技術文書の割り付けでは用紙下に「識別領域」を取り,表題欄を置く。

(3) [ ] 電気・電子関係の図面あるいは線図では,主にB4サイズの用紙を使う。

(4) [ ] 1ページにできる限り記述するために,余白を取る必要はない。

(5) [ ] 文書の表題欄には,IEC 61355による文書指定を記述すれば企業独自の文書IDを記述する必要はない。

(6) [ ] 図面の文字及び図記号の大きさは,基準寸法Mによって決まる。

(7) [ ] 線の太さは,基準寸法Mの10分の1が基本である。

(8) [ ] 国際規格では,小数点にはコンマ(comma)が用いられている。

(9) [ ] 図記号が見つからない場合,図記号を組み合せて使ってはならない。

(10) [ ] 参照指定の接頭辞は,機能観点“+”,製品観点“=”,位置観点“-”がある。

p. 35

◆ 回 答

(1) [×]: 線図 (diagram) 。

(2) [○]: 識別領域は,1か所とは限らない。

(3) [×] : A3サイズ。

(4) [×]: 低限周囲に10 mmの余白をとり,合わせて20 mmのとじ代を取る。

(5) [×]: 企業独自の文書IDが必須であり,文書指定は付加的情報である。

(6) [○]: 単位Mを指定することによって,図記号の大きさや線の太さ等が決まる。

(7) [○]: 基準寸法Mの10分の1を基本に,2の平方根の累乗で太さが決まる。

(8) [×]: 国際規格ではコンマ(comma)ではなくピリオド(full stop)を採用している。

(9) [×]: 既存の図記号を組み合せて使うか,「対象」図記号に文字を記入して表わす。

(10) [×]: 機能観点“=”,製品観点“-”,位置観点“+”。

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技術文書 36

演習問題B ・・・・・ 第11章 技術文書-図面・線図の作成

(1)電気・電子関係の技術文書について,建築図や機械図と異なる特徴を説明せよ。

(2)小数点が国際規格と日本の様式で異なる背景について,国際標準化活動の問題点と限界について説明せよ。

(3)電気用図記号は従来からのJISの様式とIECの様式に大きな違いがあり,TBT協定に従って従来からのJISの様式を廃止した。これによって技術文書の修正等の不利益を蒙ることになったが,どこまで国際規格との整合性を取るか,すなわち日本独自の図記号を残す必要があると考えるか。

(4)参照指定では機能,製品,位置という3種類の観点から表記できるようにしているが,このように表記することの利点を説明せよ。

p. 36

◆ 解 説

1 電気・電子関係の技術文書では,エネルギーあるいは情報の流れのつながりを示す線図 (diagram) が中心であり,実寸法を示さない。

2 IECとISOでは,規格の内容は各参加国1票の多数決で決まってしまう。したがって,走数点のような各国の言語に依存するような内容でも,多数決で強制的に「小数点はコンマ」といった具合に決定してしまう。これを覆すには,地道な努力が必要である。

3 JIS C 0301という従来からの様式を廃止してIEC 60617の様式をJIS C 0617として採用したことにより,a接点とb接点の向きが変わってしまうという切実な問題も起きた。しかしながら, 日本もTBT協定に従っている以上,様式を統一しなければならない。それは日本がSI単位に切り替えたことと同じ考え方である。

(参考) JIS C 0303「構内電気設備の配線用図記号」はIEC 60617と関係なく存続しており,JIS C 0617 (IEC 60617)とのダブルスタンダードのようになっている。 JIS C 0303の様式をIECに提案し,このような状態を解消する必要がある。すなわち,日本独自の図記号を国際規格に取り込むことによって,TBT協定を遵守すればよい。

4 機能,製品,位置という3種類の観点の接頭辞を使うことによって,これら異なる観点の参照指定を同時に表わすことができる。

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技術文書 37

参考資料 ・・・・・ 第11章 技術文書-図面・線図の作成

各組織URL 1) 国際電気標準会議 (IEC) http://www.iec.ch/

2) 国際標準化機構 (ISO) http://www.iso.org/

3) 国際電気通信連合 (ITU) http://www.itu.int/

4) 世界貿易機関 (WTO) http://www.wto.org/

5) 日本工業標準調査会(JISC) http://www.jisc.go.jp/

6) 日本規格協会(JSA) http://www.jsa.or.jp/

7) 文化庁国語施策情報システム http://www.bunka.go.jp/kokugo/

8) 米国規格協会 (ANSI) http://www.ansi.org/

9) 電気電子学会 (IEEE) http://www.ieee.org/

規 格 10) IEC 61082-1 Ed.2:2006

Preparation of documents used in electrotech-nology - Part 1: Rules

その他 11) 日本規格協会;JIS C 0617「電気用図記号」CD-ROM,2002年