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グリッドメタルを用いたRCはりの補修・補強法に関する実験研究 JFE シビル(株) 〇田中 佐愛 日大生産工 阿部 忠 JFE シビル(株) 塩田 啓介 吉岡 泰邦 (株)新星コンサルタント 中島 博敬 1. はじめに 近年,高度経済成長期に建設された RC 構造物は, 建設後 50 年が経過し,老朽化が進んでいる.例え ば,RC 部材は,老朽化によるひび割れの発生や海 岸線では飛来塩分や直接海水を受け,鉄筋の腐食に 伴う断面欠損,発錆によるコンクリートのはく落な どの損傷を受け耐荷力が低下している.よって,劣 化した RC 部材に対する補修・補強技術の開発が急 務となっている 1) そこで本研究は,静荷重実験を行い,ひび割れ損 傷を与えた RC はりのひび割れ補修を行い,2 タイ プのグリッドメタル(展張筋および格子筋)を配置 し,接着剤を塗布し,PCM 増厚補強 2)3) (以下,接 着剤塗布型 PCM 増厚補強とする)を施した場合の 補強効果を検証する. 2. 使用材料および供試体寸法 2.1 供試体材料 (1) RCはりのコンクリートおよび鉄筋 RC はりのコンクリートには,普通ポルトランド セメントと 5mm 20mm の砕石および 5mm 以下の 砕砂を用いる.次に,軸方向主鉄筋には SD 295AD13,スターラップには D10 を用いる.ここで,コ ンクリートおよび鉄筋の材料特性値を表-1に示す. (2) グリッドメタル 4) 1) 展張筋 グリッドメタルには,厚さ 4.5mm の縞鋼板(SS400)を用いた.展張筋の製作は縞鋼 板にレーザでスリットを挿入し,専用の装置で展張 する.軸方向の主筋に相当する寸法は 4.5×7mm(断 面積 31.5mm 2 )とし,軸直角方向の縦筋の寸法は 4.5×4mm(断面積 18mm 2 )とする.格子間寸法を 75×75mm とし,展張角度を 60 度とする.ここで, グリッドメタルの材料特性値を表-2に示す.また, 展張筋の寸法を図-1(1)に示す. 2) 格子筋 格子筋の製作方法は,鋼板にレー ザで格子状に加工する.格子筋の主筋および縦筋の 寸法は,展張筋同様とする.ここで,格子筋の材料 特性値を表-2に併記する.また,格子筋の寸法を 図-1(2)に示す. 表-1 コンクリートおよび鉄筋の材料特性値 表-2 グリッドメタルの材料特性値 (1) 展張筋 (2) 格子筋 図-1 グリッドメタルの寸法 表-3 PCMの配合条件 (3) ポリマーセメントモルタル(PCM) RC 床版の増厚補強に用いる PCM は,吹付け工法 に用いられているビニロン繊維を配合した市販のセ メント材料を用いた.ここで,本実験供試体に用い PCM の配合を表-3に示す. (4) ひび割れ補修用接着剤 ひび割れ補修用の接着剤には,浸透性接着剤 5) 用いる.本研究では,RC はりの静荷重実験におけ るひび割れ発生箇所に浸透性接着剤を注入し,補修 する.ここで,浸透性接着剤の性能試験の結果を-4に示す. (5) RCはりとPCMの付着性を高める接着剤 PCM 増厚補強法においては,既設コンクリート の削り面と PCM の付着性を高めるために補強界面 に高耐久型エポキシ系樹脂接着剤 5) (以下,付着用 接着剤とする)を用いる.ここで,付着用接着剤の 7 7 77 2 2 7 11 75 75 75 75 75 2 2 4 4 77 R5 75 75 75 75 75 77 2 2 7 77 7 7 4 2 2 R= 5 60° R=20 降伏強度 引張強度 ヤング係数 (N/mm 2 ) (N/mm 2 ) (kN/mm 2 ) D13 368 516 D10 370 511 コンクリー 圧縮強度 (N/mm²) 鉄筋(SD295A) 使用 鉄筋 25.5 200 水結合比 プレミックス粉体 (%) PCM 1860 595 32 単位量(kg/m 3 ) 項目 降伏強度 引張強度 ヤング係数 (N/mm 2 ) (N/mm 2 ) (kN/mm 2 ) 展張格子鋼板筋 339 441 格子鋼板筋 338 451 200 供試体 Experimental Study on Repair and Reinforcement Method of RC Beam Using Grid-Metal Sachika TANAKA, Tadashi ABE, Keisuke SHIOTA, Yasukuni YOSHIOKA and Hirotaka NAKAJIMA −日本大学生産工学部第50回学術講演会講演概要(2017-12-2)− ISSN 2186-5647 ― 119 ― 1-38

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グリッドメタルを用いたRCはりの補修・補強法に関する実験研究

JFE シビル(株) 〇田中 佐愛 日大生産工 阿部 忠

JFE シビル(株) 塩田 啓介 吉岡 泰邦 (株)新星コンサルタント 中島 博敬

1. はじめに

近年,高度経済成長期に建設されたRC 構造物は,

建設後 50 年が経過し,老朽化が進んでいる.例え

ば,RC 部材は,老朽化によるひび割れの発生や海

岸線では飛来塩分や直接海水を受け,鉄筋の腐食に

伴う断面欠損,発錆によるコンクリートのはく落な

どの損傷を受け耐荷力が低下している.よって,劣

化した RC 部材に対する補修・補強技術の開発が急

務となっている1).

そこで本研究は,静荷重実験を行い,ひび割れ損

傷を与えた RC はりのひび割れ補修を行い,2 タイ

プのグリッドメタル(展張筋および格子筋)を配置

し,接着剤を塗布し,PCM 増厚補強2),3)

(以下,接

着剤塗布型 PCM 増厚補強とする)を施した場合の

補強効果を検証する.

2. 使用材料および供試体寸法

2.1 供試体材料

(1) RCはりのコンクリートおよび鉄筋

RC はりのコンクリートには,普通ポルトランド

セメントと 5mm ~ 20mm の砕石および 5mm 以下の

砕砂を用いる.次に,軸方向主鉄筋には SD 295A,

D13,スターラップには D10 を用いる.ここで,コ

ンクリートおよび鉄筋の材料特性値を表-1に示す.

(2) グリッドメタル4)

1) 展張筋 グリッドメタルには,厚さ 4.5mm

の縞鋼板(SS400)を用いた.展張筋の製作は縞鋼

板にレーザでスリットを挿入し,専用の装置で展張

する.軸方向の主筋に相当する寸法は 4.5×7mm(断

面積 31.5mm2)とし,軸直角方向の縦筋の寸法は

4.5×4mm(断面積 18mm2)とする.格子間寸法を

75×75mm とし,展張角度を 60 度とする.ここで,

グリッドメタルの材料特性値を表-2に示す.また,

展張筋の寸法を図-1(1)に示す.

2) 格子筋 格子筋の製作方法は,鋼板にレー

ザで格子状に加工する.格子筋の主筋および縦筋の

寸法は,展張筋同様とする.ここで,格子筋の材料

特性値を表-2に併記する.また,格子筋の寸法を

図-1(2)に示す.

表-1 コンクリートおよび鉄筋の材料特性値

表-2 グリッドメタルの材料特性値

(1) 展張筋 (2) 格子筋

図-1 グリッドメタルの寸法

表-3 PCMの配合条件

(3) ポリマーセメントモルタル(PCM)

RC 床版の増厚補強に用いる PCM は,吹付け工法

に用いられているビニロン繊維を配合した市販のセ

メント材料を用いた.ここで,本実験供試体に用い

る PCM の配合を表-3に示す.

(4) ひび割れ補修用接着剤

ひび割れ補修用の接着剤には,浸透性接着剤5)を

用いる.本研究では,RC はりの静荷重実験におけ

るひび割れ発生箇所に浸透性接着剤を注入し,補修

する.ここで,浸透性接着剤の性能試験の結果を表

-4に示す.

(5) RCはりとPCMの付着性を高める接着剤

PCM 増厚補強法においては,既設コンクリート

の削り面と PCM の付着性を高めるために補強界面

に高耐久型エポキシ系樹脂接着剤5)(以下,付着用

接着剤とする)を用いる.ここで,付着用接着剤の

7777 2

27

11

7575

75 75 75

224

4

77

R5

7575

75 75 75

77

22

7

77

77

42 2

R=5

60°R=20

降伏強度 引張強度 ヤング係数

(N/mm2) (N/mm

2) (kN/mm

2)

D13 368 516D10 370 511

コンクリート

圧縮強度 (N/mm²)

鉄筋(SD295A)

使用鉄筋

25.5 200

水結合比

プレミックス粉体 水 (%)

PCM 1860 595 32

単位量(kg/m3)

項目

降伏強度 引張強度 ヤング係数

(N/mm2) (N/mm

2) (kN/mm

2)

展張格子鋼板筋 339 441

格子鋼板筋 338 451200

供試体

Experimental Study on Repair and Reinforcement Method of RC Beam Using Grid-Metal

Sachika TANAKA, Tadashi ABE, Keisuke SHIOTA, Yasukuni YOSHIOKA and Hirotaka NAKAJIMA

−日本大学生産工学部第50回学術講演会講演概要(2017-12-2)−

ISSN 2186-5647

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表-4 エポキシ系接着剤の特性値

材料試験の結果を表-4に併記する.

2.2 RCはり供試体の寸法

本実験の供試体の寸法を図-2に示す.

(1) RCはり

供試体寸法は支間 2,000mm,張出部 200mm,全

長 2,400mm である.また,断面寸法は,幅 250mm,

高さ 300mm とする.引張鉄筋には D13 を 3 本配置

し,有効高は 260mm である.圧縮側に D13 を 2 本

配置し,鉄筋中心からコンクリート表面までを 40mm

とする.スターラップには D10 を用い,150mm 間

隔で配置する.ここで,RC はりの供試体名称を供

試体RC-N とする.

(2) 補強供試体寸法

補強用供試体に応力履歴を与えた後にグリッドメ

タルを配置する補強用供試体の寸法は図-2(2)に示

すように、グリッドメタルの配置は支間内とし,は

りの高さ方向は RC はりの底面から 80mm とする.

ここで、応力履歴を与えるRC はり供試体名称をRC-

展張(応力),RC-格子(応力)とする.また,未損傷RC

はりに展張筋および格子筋を配置する供試体を RC-

展張,RC-格子とする.

3. RCはりおよび応力履歴に関する実験方法

3.1 実験方法

(1) RCはりの静荷重実験

荷重載荷位置およびたわみの計測位置を図-2に示

す.静荷重実験における荷重条件は 0kN から 5kN

ずつ増加し,25kN に達した後,荷重 5kN ずつ 5kN

まで除荷し,残留値を計測した.これを 1 サイクル

とし,供試体が破壊するまで荷重を増減する.本実

験におけるたわみ,鉄筋のひずみの計測は支間中央

のみとした.

(2) 応力履歴に関する実験方法

応力履歴に関する荷重載荷は,RC はりと同様と

する.応力履歴の作用は,はり中央たわみが支間 L

の 1/400 に達するまで荷重を作用させる.たわみが

支間 L の 1/400 に達した後荷重を除荷した.たわみ

の計測位置は支間中央とする.また,鉄筋のひずみ

浸透性接着剤 付着用接着剤

主剤 無色液状 白色ペースト状硬化剤 無色液状 青色液状

10 : 3 5 : 11.2 1.42

104.4N/mm2

102.9N/mm2

3,172N/mm2

3,976N/mm2

92.8N/mm2

41.6N/mm2

58.2N/mm2

14.9N/mm2

2.6N/mm2 3.7N/mm

2 以上

または母材破壊

圧縮弾性係数

曲げ強さ

引張せん断強さ

コンクリート付着強さ

項目

外観

混合比

硬化物比重

圧縮強度(1) RCはり

(2) 補強供試体

図-2 RCはりおよび増厚用供試体の寸法

図-3 RCはりのひび割れ状況

はRC はりと同様に支間中央とした.

(3) 補強後の実験方法

展張格子筋を用いた補強法に関する実験方法は未

損傷のRC はりの静荷重実験と同様である.

3.2 RCはりおよび応力履歴時のひび割れ状況

たわみが床版支間 L の 1/400 に達した時点のひび

割れ状況を図-3に示す.

(1) RCはり

RC はりの破壊時のひび割れ状況はスターラップ

の配置位置に発生している.

(2) 応力履歴を与えたRCはり

グリッドメタルを配置する RC はりのたわみが床

版支間 L の 1/400 に達した時点の 1/400 に達した時

点のひび割れ状況は図-3(2),(3)に示すように,

両供試体もほぼ同位置にひび割れが発生している.

3.3 応力履歴を受けたRCはりのひび割れ補修法

曲げひび割れが発生した RC はりの補修法は,ひ

び割れ箇所に浸透性接着剤が漏れないようにコンク

リート表面をシーリング材で覆う.その後,浸透性

接着剤注入用の弁を取り付けし,接着剤を注入する.

養生は 8 時間行った.養生後は,シーリング材をデ

スクサンダーで研掃する.

2000200 200

▼ ▼

750 750500

404

02

20

40 40250170

25040402@85

300

A B

250 250

変位計

40 40170

300

8025

200 200

▼ ▼ 4040

220

A B

250

250

20001860

A B(1) RC はり

B

A B

(2) RC-展張用

(3) RC-格子筋用

A

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図-4 補強手順

3.4 補強法

補強手順を図-4に示す.補強手順は,RC はりお

よび応力履歴を与えた RC はりの補強範囲を研掃す

る.その後,グリッドメタルを設置し(図-4(1)),

補強範囲に型枠を設ける.次に,RC はりのコンク

リートと PCM との付着性を高めるために付着用接

着剤を厚さ 1.0mm 程度で塗布する.この接着剤の硬

化時間は 120 分ほどであることから,接着剤塗布後

は直ちに PCM を増厚補強する(図-4(2)1)).表面

仕上げ(図-4(2)2))した後,養生し,型枠を撤去

する(図-4(3)).

4. 結果および考察

4.1 静荷重実験における最大耐荷力

RC はりおよびグリッドメタルを配置し,PCM 増厚

補強したRC はりの耐荷力・耐荷力比を表-5に示す.

(1) RCはり

RC はりの供試体 RC-N の最大耐荷力は 93.8kN で

ある.この最大耐荷力を基準にして補強効果を検証

する.

(2) 未損傷RCはり

供試体 RC-展張の最大耐荷力は 152.1kN であり,

RC はりの供試体 RC-N の耐荷力の 1.62 倍である.

なお,補強後の耐荷力の差が補強効果による耐荷力

である.よって,供試体 RC-展張の補強効果による

耐荷力の増加は 58.3kN である.次に,供試体 RC-

格子の耐荷力は 157.4kN であり,供試体 RC-N の耐

荷力と比較すると 1.68 倍,補強効果は 63.6kN

である。

(3) 応力履歴を受けたRCはり

補修・補強後の供試体 RC-展張(応力)の 151.4kN

であり,RC はりの供試体 RC-N の耐荷力の 1.61 倍

である.また,補強効果は 57.6kN である.次に,

供試体 RC-格子(応力)の耐荷力は 148.7kN であり,

供試体 RC-N の耐荷力と比較すると 1.59 倍,補強効

果は 54.9kN である.破壊モードは全ての供試体で

80

25

1840

(1) 型枠の設置

(2) PCM増厚補強

1) PCM増厚補強 2) 表面仕上げ

(3) 展張子筋を配置したPCM増厚補強

表-5 耐荷力および耐荷力比

曲げ破壊となった.

4.2 荷重とたわみの関係

本実験における各供試体の荷重とたわみの関係を

図-5に示す.

(1) RCはり

RC はりの荷重とたわみの関係は図-5に示すよう

に荷重 84.2kN まで線形的に増加し、その後の荷重

増加によりたわみが急激に増加している.破壊時の

たわみは荷重 93.8kN で 15.4mm である.

(2) 未損傷RCはり

供試体 RC-展張の荷重とたわみの関係は,荷重

145kN 付近までは線形的に増加している.この時点

のたわみ 4.1mm である.その後の荷重増加からたわ

みが急激に増加し,最大耐荷力時には 15.8mm であ

る.次に,供試体RC-格子の荷重とたわみの関係は、

荷重 145.5kN まで線形的に増加し、この時点のたわ

みは 4.5mm である.その後の荷重増加においてたわ

みが急激に増加し,最大耐荷力時のたわみは 15.5mm

である.

(3) 応力履歴を受けたRCはり

供試体 RC-展張(応力)の荷重とたわみの関係は荷

重 140kN までたわみはほぼ線形的に増加している.

この時点のたわみは 4.0mm である.その後の荷重増

加からたわみの増加が著しくなり,最大耐荷力時の

たわみは 16.7mm である.残留値を加えると 18.9mm

である.次に,格子筋を配置した供試体も同様に荷

重 140kN 付近まで線形的に増加している.最大耐荷

力時のたわみは 19.9mm である.残留値を加えると

22.0mm である.

4.3 荷重と鉄筋ひずみの関係

荷重とひずみの関係を図-6,荷重とグリットメ

タルのひずみの関係を図-7に示す.

(1) RCはり

RC はりの荷重と鉄筋ひずみの関係は最大耐荷力

時まで線形的に増加している.この時点の鉄筋のひ

ずみは 1620×10-6であり降伏に至ってない.

(2) 未損傷RCはり

供試体 RC-展張の荷重と鉄筋のひずみの関係は,

荷重 152kN 付近までは線形的に増加している.鉄筋

供試体

最大耐荷力

(kN)

分担耐荷力

(kN)耐荷力比

RC-N 93.8 ― ―RC-展張 152.1 58.3 1.62RC-格子 157.4 63.6 1.68

RC-展張(応力) 151.4 57.6 1.61RC-格子(応力) 148.7 54.9 1.59

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図-5 荷重とたわみの関係 図-6 荷重とひずみの関係 図-7 荷重とひずみの関係

(鉄筋) (グリッドメタル)

0

50

100

150

200

250

0 1000 2000 3000 4000

荷重

(kN

)

ひずみ(×10-6)

降伏ひずみ RC-展張筋

RC-格子筋 RC-展張筋(応)

RC-格子筋(応)

0

50

100

150

200

250

0 5 10 15 20

荷重(

kN)

たわみ(mm)

RC-N RC-展張

RC-格子 RC-展張(応)

RC-格子(応)

0

50

100

150

200

250

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000

荷重

(kN

)

ひずみ(×10-6)

降伏ひずみ RC-N

RC-展張筋 RC-格子筋

RC-展張(応) RC-格子(応)

が降伏した荷重は 146kN である.また,展張筋のひ

ずみは図-7に示すように荷重 65kN 付近からひずみ

の増加が多きくなり,降伏ひずみ(1690×10-6)に達

した荷重は 141kN である.降伏ひずみに達した後,

ひずみは急激に増加している.

次に,供試体 RC-格子の鉄筋ひずみは,最大耐荷

力時、荷重 157kN 付近までは線形的に増加している.

鉄筋か降伏した荷重は 141kN である.また,図-7

より,格子筋が降伏ひずみに達した荷重は 132kN で

ある.降伏ひずみに達した後,ひずみは急激に増加

している.

(3) 応力履歴を受けたRCはり

供試体 RC-展張(応力)の荷重と鉄筋ひずみの関係

は図-6に示すように応力履歴時の残留ひずみが

650×10-6であり,補強後の鉄筋ひずみはこの残留ひ

ずみを起点とする.荷重 150kN までは線形的増加し,

これを超えた荷重から急激に伸びている.また,展

張筋が降伏した荷重は図-7に示すように 135kN で

あり,その後の荷重増加でひずみは急激に増加して

いる。

次に,供試体 RC-格子(応力)の鉄筋ひずみは応力

履歴時の残留ひずみが 650×10-6であり,補強後の鉄

筋ひずみはこの残留ひずみを起点とする.荷重

150kN までは線形的増加し,これを超えた荷重から

急激に伸びている.また,格子筋が降伏した荷重は

展張筋と同様に 135kN であり,その後の荷重増加で

ひずみは急激に増加している。

以上より,最大耐荷力に達した付近までは鉄筋と

グリッドメタルが応力を分担し,耐荷力性能が向上

している.

5. まとめ

(1)未損傷RC はりに展張鋼板格子筋を配置し,接着

剤塗布型 PCM 増厚補強した供試体 RC-展張の耐

荷力は RC はりの供試体の 1.62 倍,格子鋼板筋

を配置した供試体は 1.68 倍に耐荷力が向上した.

よって,C 型に折り曲げ加工した鋼板格子筋を

配置し,接着剤塗布型 PCM 増厚補強法は耐荷力

性能の向上を図る補強法として実用性が評価で

きる補強法である.

(2)無補強RC はりにたわみが支間 L の 1/400 まで荷

重を載荷し,応力履歴を与えた後,浸透性接着

剤注入によるひび割れ補修した後,展張格子筋

を配置し,接着剤塗布型 PCM 増厚補強した RC

はりは 1.61 倍,格子鋼板筋を配置した供試体は

1.59 倍に耐荷力が向上した.よって,老朽化し

た RC はり部材にひび割れ補修後,鋼板格子筋

を配置し,接着剤塗布型 PCM 増厚補強を施すこ

とで大幅な耐荷力の向上を図られた.

(3)無補強 RC はりの最大耐荷力の 90%の荷重,支

間 L の 1/400 まで応力履歴を与え,ひび割れ補

修に浸透性接着剤を浸透させ,それぞれの鋼板

格子筋を配置し,接着剤塗布型 PCM 補強するこ

とで破壊時まで一体性が確保され,たわみの増

加が抑制され補強効果が大幅に向上する結果が

得られた.

参考文献

1) 日本道路協会:道路橋補修・補強事例集,2009.10

2) 土木学会:鋼構造シリーズ 27 道路橋床版の維持

管理マニュアル 2016,2016.10

3) RC 構造物のポリマーセメントモルタル吹付け補

修・補強工法協会:ポリマーセメントモルタル

吹付け工法によるコンクリート構造物の補修補

強設計・施工マニュアル(案),2011.7

4) 阿部忠,塩田啓介,吉岡泰邦,今野雄介:2 タイ

プの鋼板格子筋を用いた RC はりの PCM 増厚補

強における補強効果の検証、セメントコンクリ

ート論文集Vol.69、pp.634-641,2016.3

5) 伊藤清志,阿部忠:2 タイプの接着剤を塗布した

RC 床版の上面補修法の耐疲労性の評価および施

工技術,コンクリート工学年次論文集,Vol.39,

No.1,pp.2131-2136,2017.7

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