03-01 管理計画...

29
沖縄県外来種対策行動計画に基づく セイヨウオオマルハナバチ 適正管理計画(案) 令和○年○月 沖 縄 県

Transcript of 03-01 管理計画...

Page 1: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動計画に基づく

セイヨウオオマルハナバチ

適正管理計画(案)

令和○年○月

沖 縄 県

Page 2: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画

1

1 背景と目的

セイヨウオオマルハナバチは、ミツバチ科に属するマルハナバチの一種で、農業資

材としてトマト等の温室栽培の受粉に広く利用されています。しかし、北海道におい

ては野外定着し、競合する在来のマルハナバチ類の減少や盗蜜による在来植物の受粉

の阻害なども指摘されています。

生態系への影響の重大さから、2006 年に特定外来生物に指定され、飼育する際に

は、外来生物法に基づく許可が必要なほか、野外に逃さないための管理体制等が定め

られています。また、環境省は 2020 年までにセイヨウオオマルハナバチの総出荷数

量(北海道を除く)を半減することを目指すとしており、最終的には利用をなくして

いくことが求められるとしています。

沖縄県では、産業又は公益的役割において重要であり、現状では生態系等への影響

がより小さい代替性を有するものがないなどのため、利用において逸出等の防止のた

めの適切な管理が必要な外来種を「産業管理外来種」として指定しています。セイヨ

ウオオマルハナバチは、沖縄県においてトマト栽培における受粉に利用されています。

セイヨウオオマルハナバチは基準を満たしたハウス内でのみ飼育が許可されていま

すが、沖縄島では野外における逸出個体が確認されています。本適正管理計画は、セ

イヨウオオマルハナバチの逸出を防止し、野外への定着を予防するための目標や方針

等を示すものです。

2 概要

⑴ 和名等

ハチ目ミツバチ科

セイヨウオオマルハナバチ(学名 Bombus terrestris)

⑵ 分布

原産地:ヨーロッパ

県内での利用・確認状況:ハウス内でトマト栽培に利用されています。沖縄島で

は野外で逸出個体が確認されていますが、定着は確認

されていません。

Page 3: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画

2

⑶ 形態・生態

セイヨウオオマルハナバチは、ミツバチ科マルハナバチ属の昆虫です。女王バチ、

雄バチ、働きバチからなる社会性の昆虫で、全身が毛で覆われています。全体的に

黒く、黄色い帯が2本あり、おしりが白いことが特徴です。女王バチ、雄バチ、働

きバチに毛色の違いはほとんどありません。体長は、女王バチが 16.8~23.1mm、

雄バチは 13.2~16.8mm、働きバチは 11.6~16.2mm です。腹部先端に毒針を持ちま

す。攻撃性は低くおとなしいハチですが、素手で触ると刺されることもあるので注

意が必要です。雄には毒針はありません。

花の蜜や花粉を餌にしており、農業では主にトマトの受粉のために利用されま

すが、花筒に穴を空けて蜜を吸う盗蜜行動を行うことも知られています。盗蜜で

は、マルハナバチの体がおしべやめしべに触れないため、受粉は行われません。

野生化している北海道では、主に草地に生息し、土の中に巣を作ります。これ

までに、水田や畑の畔、用水路の法面や土手、河川敷、河畔林などで巣が見つか

っています。住宅の床下に巣を作っていたという報告もあります。

マルハナバチ類では、一般的に、夏から秋にかけて新しい女王バチが誕生し、

雄バチと交尾した後、冬眠します。春になると目覚めて新しい巣を創設し、働き

セイヨウオオマルハナバチの見分け方

セイヨウオオマルハナバチ オオハナアブ

沖縄には在来のマルハナバチはおらず、セイヨウオオマルハナバチと似た

生物はあまりいません。在来種のオオハナアブは同じくらいの大きさで毛

に覆われており、黄色い帯がありますが、おしりが白くないことなどで区

別できます。

Page 4: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画

3

バチを多数産出してコロニーを発達させます。夏から秋に新しい女王バチと雄バ

チを産むと、女王バチはその一生を終え、コロニーも崩壊します。北海道で野生

化しているセイヨウオオマルハナバチも概ねこのような生活史であると考えられ

ます。しかし、海外の比較的温暖な地域では、冬も活動する集団がいることが知

られています。

セイヨウオオマルハナバチは潜在的に数 km の飛翔が可能であるとされていま

すが、野外での実際の採餌探索距離は 625〜782m とされています。

⑷ 県内の利用状況

現在、沖縄県内では、主に沖縄島において、トマト栽培に利用されています。

3 指定の状況

4 生態系等への影響

セイヨウオオマルハナバチが野生化している北海道では、餌資源や営巣場所を巡っ

て競合する在来マルハナバチ類が減少しています。また盗蜜による受粉の阻害など、

植物への悪影響も指摘されています。沖縄県には在来のマルハナバチ類はいませんが、

その他の在来のハナバチ類との競合や、盗蜜による在来植物への影響が懸念されます。

特定外来生物に指定されており、基準を満たしたハウス内でのみ利用が許可されて

いますが、飼育施設の不備が全国的に指摘されており、沖縄島でも野外で逸出個体が

確認されています。

5 目標

◎ セイヨウオオマルハナバチの適正管理による野外への逸出・定着の予防

セイヨウオオマルハナバチは、気候的要因から沖縄県への定着の可能性は低い

とされていますが、外来種は原産地とは異なる環境に適応する場合があること、

また海外では比較的温暖な地域に適応した個体群も存在することから、確実に定

着を予防するには、飼育施設からの逸出を防止する必要があります。外来生物法

特定外来生物 ○

我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト 産業管理外来種

日本の侵略的外来種ワースト 100 -

世界の侵略的外来種ワースト 100 -

Page 5: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画

4

により定められている逸出防止措置が確実に実施され、継続的に野外への逸出が

防止されることを目標とします。また、野外巣が確認された場合には、速やかに

防除を実施し、定着を防止します。

6 対策の方針

◎ モニタリングによる逸出状況の把握

沖縄島では、セイヨウオオマルハナバチの逸出個体の偶発的な確認が報告され

ていますが、逸出状況が調査されたことはありません。セイヨウオオマルハナバ

チが利用されている地域において、モニタリング調査を実施し、逸出状況を把握

します。また、モニタリングにより、定着の早期発見に努めます。モニタリング

は「9.モニタリング方法」に従って行います。

◎ 農家に対する逸出防止対策の促進

モニタリング結果等、環境省と適宜情報を共有し、逸出防止のための対策を促

進します。

◎ 野外営巣が確認された場合の迅速な防除

外来種の定着を防ぐには、早期発見・早期防除がきわめて重要です。モニタリ

ングやその他の情報によって野外営巣が確認された場合には、速やかに防除を実

施します。防除は「10.防除方法」に従って行います。

◎普及啓発

ホームページ、イベント、チラシ配布等を通じて適正管理の必要性等を県民や

関係機関へ周知すると共に、発見情報の収集や管理、調査に向けた協力などが得

られるように取り組みます。

Page 6: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画

5

目標:セイヨウオオマルハナバチの適正管理による野外への逸出・定着の予防

対策の方針 実施項目 期間及び実施内容

モニタリングによる

逸出状況の把握

モニタリング 短期~

長期

セイヨウオオマルハナバチが利用されている地域において逸出状況を把握するため、定期的な

モニタリングを実施する。

農家に対する逸出防

止対策の促進

農家に対する指導や啓

発の促進

短期~

長期

環境省と連携し、農家に対する指導や啓発を支援・指導する。

野外営巣が確認され

た場合の迅速な防除

関係機関との連携体制

の構築

短期~

長期

関係機関との情報共有等、連携体制を構築する。

速やかな防除および周

辺のモニタリング

短期 野外営巣の確認後、速やかに防除を実施する。

野外営巣確認地点周辺の調査を実施するとともに、他の野外巣が見つかった場合等は速やかに

防除を実施する。

短期~

長期

野外営巣確認地点周辺で、重点的なモニタリングを継続する。

普及啓発 県民等への普及啓発 短期~

長期

ホームページ、イベント、チラシ配布等を通じて適正管理の必要性等を県民や関係機関へ周知

すると共に、発見情報の収集や管理、調査に向けた協力などが得られるよう取り組む。

短期は概ね3年目までの期間、長期は概ね4年目以降の期間

Page 7: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画

6

7 実施体制

効果的かつ効率的な対策のため、以下のような体制を目指し、関係機関と連携します。

○ モニタリング:沖縄県環境部、(環境省)

○ 農家への指導、普及啓発:沖縄県環境部及び農林水産部、(環境省、農業関連団体)

○ 野外営巣確認時の防除:沖縄県環境部、(環境省、その他関係機関)

8 適性管理の方法

セイヨウオオマルハナバチを飼育する際には、外来生物法による許可が必要です。

さらに、ハウスや管理体制等の条件も定められており、これらが確実に守られていれ

ば、逸出はほぼ防げると考えられます。

しかし、環境省が実施した調査によれば、調査対象の 2~3 割で何らかの不備が見

つかったとされています。こうした不備が改善されない場合、許可の取り消しや罰則

が適用される場合があります。以下に、施設管理における注意点を列挙します。

ネットに隙間がないか

天窓、側窓、換気扇など、隙間ができやすいところにも確実にネットを張る。

ネットやビニールにやぶれはないか

定期的に点検し、破損はすぐに補修する。

出入り口は二重になっているか

出入りの際に開け放たれ、ハチが逃亡しないように注意する。

ハウスの外で巣箱を運ぶとき、二重囲いにしているか

巣箱をさらに別の箱や袋などに入れて運ぶ。

使用後、ハチを確実に処分しているか

巣箱ごとビニール袋にいれて密封し、直射日光に当てておく、あるいは巣箱に

熱湯を注ぐなどして確実に処分してから廃棄する。

その他、許可の標識の掲示、許可数量、更新手続等、外来生物法によって定められ

た条件を遵守する必要があります。

Page 8: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画

7

9 モニタリングの方法

⑴ 直接観察法によるモニタリング

モニタリングは、直接観察による方法と、ウインドウトラップや誘因衝突式トラ

ップによる方法があります。直接観察法は、定性的なデータしか得られないという

欠点がありますが、トラップによる捕獲効率は直接観察による発見効率より低いと

考えられるため、低密度状態におけるモニタリングには直接観察法が適していると

考えられます。現在、沖縄県内でのセイヨウオオマルハナバチの定着は確認されて

いないため、直接観察を基本としてモニタリングを実施します。

モニタリングは、セイヨウオオマルハナバチが利用されている地域において実施

します。当該地域において観察ルートを設定し、マルハナバチの活動が活発な午前

中を中心に、ゆっくり歩きながら、マルハナバチを探します。セイヨウオオマルハ

ナバチが観察された場合、地図上に地点を記録し、(2)の方法により捕獲します。

セイヨウオオマルハナバチ以外のマルハナバチ類(クロマルハナバチなど)が観察

された場合も、同様に記録し、捕獲します。

沖縄県では、セイヨウオオマルハナバチは 11 月~4 月頃に利用されます。よっ

て、マルハナバチの利用がもっとも多くなる 12 月~3 月頃、マルハナバチの利用

が終了する 5月頃(殺処分が不十分な状態で廃棄されたマルハナバチが逸出する可

能性があるため)、利用していない時期の調査として 8 月~9 月頃に調査を実施す

るものとします。また、確認個体が多く定着が疑われるなど、状況に応じて、追加

の調査を検討・実施するものとします。

調査は雨天を避けて実施します。気温は 10~30℃が観察に適しています。風が

強い日は、マルハナバチの羽音が聞こえづらくなり、発見が困難になるため、避け

るようにします。

⑵ モニタリングにおける個体の捕獲方法

マルハナバチ類が確認された場合、捕獲を実施します。外来生物法により、セイ

ヨウオオマルハナバチは生きたままの移動が禁止されているため、捕獲した個体は

その場で殺処分する必要があります。また、攻撃性は強くありませんが、毒針を持

つため、刺されないように注意します。

捕獲作業は、捕虫網、洗濯バサミ、毒ビン(ふたの閉まるガラス製の空き瓶で可、

70%エタノールに浸して軽く絞った脱脂綿を入れておく)、記録用紙(地点記録用の

地図)、筆記用具を用います。マルハナバチに刺された場合に備え、また農地には

Page 9: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画

8

ハブがいる場合もあるので、ポイズンリムーバーも携行します。

捕獲は以下の手順に従って実施します:①ハチの上からそっと捕虫網をかぶせ

る;②網の先端を洗濯バサミでつまんで引き上げると、ハチが上の方へ上がってく

るので、ふたを外した毒ビンを網の中に差し込み、ハチを追い込む;③ハチが毒ビ

ンの中に入ったら、網の上から(網を挟んで)すばやくふたをする;④ハチが弱っ

てきたら、一度ふたを外し、網の中でふたを閉め直す;⑤捕獲場所、日時等を記録

する。

10 防除方法

野外巣が確認された場合、あるいは野外巣の存在が疑われる場合には、関係機関お

よび専門家と連携し、対策を検討します。速やかな根絶が難しい場合には、必要に応

じて防除計画を策定するものとします。

基本的方針として、野外巣が確認された場合には速やかに巣の除去を行います。巣

の除去方法は、巣が作られた環境や営巣段階によって異なるため、適宜検討する必要

があります。土中営巣の場合、基本的にはシャベル等を用いて掘り返すことになりま

す。

セイヨウオオマルハナバチが利用されている地域から離れた場所や、利用されてい

ない時期に野外で多数の働きバチが確認された場合、野外巣の存在が疑われますが、

巣の探索は容易ではありません。そのため、巣の位置がわからない場合は捕獲による

駆除が基本となります。捕獲は「9.モニタリングの方法」の「(2)モニタリングにお

ける個体の捕獲方法」と同様の方法で実施します。

また、国立環境研究所で薬剤による駆除方法が開発されており、実用が可能であれ

ば検討するものとします。

防除後は継続的なモニタリングを実施します。

11 防除事例の紹介

現在、セイヨウオオマルハナバチは沖縄県では野外定着していないと思われ、県内

の防除事例がないため、北海道における取り組みを紹介します。北海道では、すでに

広域にセイヨウオオマルハナバチの分布が拡がっており、生態系への影響を軽減する

ために防除が続けられています。

Page 10: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画

9

⑴ ネットの展張

外来生物法により、現在ではセイヨウオオマルハナバチ使用時のハウスのネット

の展張は全国で義務化されていますが、北海道では、特定外来生物の指定に先立ち、

ハウス栽培におけるネットの展張の試験的導入が実施されました。その結果、ネッ

トの展張を確実に実施することによって逃亡をほぼ防止できることが示されまし

た。

⑵ 市民参加による駆除「セイヨウオオマルハナバチバスターズ」

北海道では「セイヨウオオマルハナバチバスターズ」を募集しており、登録した

一般の参加者が各地域で防除に取り組んでいます。捕獲による個体群抑制の効果に

ついては疑問視する指摘もありますが、道内の分布状況の把握や、市民のセイヨウ

オオマルハナバチ野生化問題と防除の必要性についての理解の深化に役立ってい

ます。

⑶ 高密度地域における大規模駆除実験

2005~2006 年、セイヨウオオマルハナバチの高密度地域である千歳市、恵庭市、

長沼町の農村地域では、大規模な駆除実験が実施されています。6地点の除去区で

捕殺が行われ、2005 年に 1,511 頭、2006 年に 2,978 頭が捕殺されました。その結

果、セイヨウオオマルハナバチの女王が減少し、在来マルハナバチの女王が増加す

るといった成果がみられましたが、セイヨウオオマルハナバチの働きバチは減少し

ませんでした。その理由として、周辺地域からの働きバチの流入や、営巣場所を巡

る競争の緩和による残ったマルハナバチの営巣成功率の上昇が考えられています。

北海道ではすでに広域にセイヨウオオマルハナバチが分布していたため周辺地域

からの流入が起こりましたが、侵入初期段階であればこうした捕殺による根絶が期

待できると考えられます。

12 適正管理計画の見直し

本適正管理計画は3年目に中間評価を行い、5年目に見直しを行います。なお、対

策上必要があると認められる場合は、随時見直しを行うものとします。

参考文献:北海道の“セイヨウオオマルハナバチ”ガイドブック(独立行政法人 北海道立総合

研究機構 環境科学研究センター)

Page 11: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動計画に基づく

クロマルハナバチ 適正管理計画(案)

令和○年○月

沖 縄 県

Page 12: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動計画に基づくクロマルハナバチ適正管理計画

1

1 背景と目的

クロマルハナバチは、国内では本州、四国、九州に在来昆虫として生息するマルハ

ナバチです。トマト等の受粉のための農業資材として流通していたセイヨウオオマル

ハナバチの特定外来生物指定にともない、在来の受粉昆虫として、環境省はセイヨウ

オオマルハナバチからクロマルハナバチへの転換を推進しています。ただし、沖縄県

には在来のマルハナバチ類は生息しておらず、クロマルハナバチは外来種となります。

現在、県内におけるクロマルハナバチの普及率は高くはない状況です。環境省は、

全国的にクロマルハナバチへの転換を推進する一方、在来マルハナバチ類が存在しな

い沖縄県については引き続きリスク評価が望まれるとしています。しかし、沖縄県で

は利用可能な在来の代替種は存在せず、新規就農者のセイヨウオオマルハナバチの利

用は認められていないことなどから、今後、クロマルハナバチの利用の拡大が予想さ

れます。

沖縄県では、産業又は公益的役割において重要であり、現状では生態系等への影響

がより小さい代替性を有するものがないなどのため、利用において逸出等の防止のた

めの適切な管理が必要な外来種を「産業管理外来種」として指定しています。今後、

沖縄県におけるトマト等のハウス栽培では、クロマルハナバチの利用が拡大する可能

性があります。本適正管理計画は、クロマルハナバチの逸出を防止し、野外への定着

を予防するための目標や方針等を示すものです。

2 概要

⑴ 和名等

ハチ目ミツバチ科

クロマルハナバチ(学名 Bombus ignitus)

⑵ 分布

原産地:日本(本州、四国、九州)、朝鮮半島、中国東北~中南部

県内での利用状況:ハウス内でトマト栽培等に利用されています。野外における

定着は確認されていません。

⑶ 形態・生態

クロマルハナバチは、ミツバチ科マルハナバチ属の昆虫です。女王バチ、雄バチ、

働きバチからなる社会性の昆虫で、全身が毛で覆われています。働きバチと女王バ

Page 13: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動計画に基づくクロマルハナバチ適正管理計画

2

チは全体的に黒く、おしりがオレンジ色であることが特徴です。雄バチは全体的に

黄色で、胸と腹に黒い帯があり、おしりがオレンジ色です。体長は、働きバチ 12.4

~18.8mm、女王バチ 21.0~23.8mm、雄バチ 15.6~18.8mm です。腹部先端に毒針を

持ちます。攻撃性は低くおとなしいハチですが、素手で触ると刺されることもある

ので注意が必要です。雄には毒針はありません。

4 月上旬から 6月下旬に新しい巣が作られます。森林の地中のノネズミの穴など

を利用して巣を作ることが多く、5月下旬から 9月下旬にかけて働きバチを産出し

コロニーを発達させます。8 月上旬から 10 月上旬に新しい女王バチと雄バチを産

むと、女王バチはその一生を終え、コロニーも崩壊します。新女王は交尾後越冬し、

春になると単独で巣を作り始めます。

花の蜜や花粉を餌にしており、農業では主にトマトの受粉のために利用されます。

Page 14: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動計画に基づくクロマルハナバチ適正管理計画

3

⑷ 県内の利用状況

現在、沖縄県内では、農家がトマト栽培等に利用しているほか、他の作物への利

用についても実施・検討されています。セイヨウオオマルハナバチの利用が制限さ

れていることから、今後、利用の拡大が予想されます。

クロマルハナバチの見分け方

セイヨウオオマルハナバチ(働きバチ)

クロマルハナバチ(働きバチ)

沖縄には在来のマルハナバチはおらず、クロマルハナバチと似た生物は

あまりいません。同じく農業に利用されているセイヨウオオマルハナバ

チとは毛色が異なります。

クロマルハナバチ(雄バチ)

Page 15: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動計画に基づくクロマルハナバチ適正管理計画

4

3 指定の状況

4 生態系等への影響

クロマルハナバチは本州、四国、九州の在来昆虫であり、近年になって受粉昆虫と

して利用されるようになったため、生態系等への影響については報告がありませんが、

沖縄県には在来のマルハナバチ類がいませんので、その他の在来のハナバチ類との競

合や、盗蜜等による在来植物への影響が懸念されます。

クロマルハナバチには法的規制はなく、管理は利用者の自主性に任されている状況

ですが、沖縄県においてはクロマルハナバチは外来種であることから、逸出防止対策

が必要です。

なお、原産地である本州、四国、九州では、農業で利用されるクロマルハナバチが

野生のクロマルハナバチと交雑し遺伝子撹乱が起こることが懸念されていますが、沖

縄県には在来のマルハナバチ類が生息していないため、遺伝子撹乱の心配はありませ

ん。

5 目標

◎ クロマルハナバチの適正管理による野外への逸出・定着の予防

クロマルハナバチは、気候的要因から沖縄県への定着の可能性は低いとされて

いますが、外来種は原産地とは異なる環境に適応する場合があること、また利用

後の巣箱で繁殖虫(新女王、雄)が生産されていたことから、野外への定着の可

能性は否定できません。確実に定着を予防するには、飼育施設からの逸出を防止

する必要があります。クロマルハナバチは特定外来生物ではありませんが、特定

外来生物であるセイヨウオオマルハナバチと同様の逸出防止措置が確実に実施さ

れ、継続的に野外への逸出が防止されることを目標とします。また、野外巣が確

認された場合には、速やかに防除を実施し、定着を防止します。

特定外来生物 -

我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト -

日本の侵略的外来種ワースト 100 -

世界の侵略的外来種ワースト 100 -

Page 16: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動計画に基づくクロマルハナバチ適正管理計画

5

6 対策の方針

◎ モニタリングによる逸出状況の把握

クロマルハナバチが利用されている地域において、モニタリング調査を実施し、

逸出状況を把握します。また、モニタリングにより、定着の早期発見に努めます。

モニタリングは「9.モニタリング方法」に従って行います。

◎ 農家に対する逸出防止対策の実施

モニタリング結果等を考慮し、必要に応じて逸出防止のための対策を実施しま

す。

◎ 野外営巣が確認された場合の迅速な防除

外来種の定着を防ぐには、早期発見・早期防除がきわめて重要です。モニタリ

ングやその他の情報によって野外営巣が確認された場合には、速やかに防除を実

施します。防除は「10.防除方法」に従って行います。

◎普及啓発

ホームページ、イベント、チラシ配布等を通じて適正管理の必要性等を県民や

関係機関へ周知すると共に、発見情報の収集や管理、調査に向けた協力などが得

られるように取り組みます。

Page 17: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動画に基づくクロマルハナバチ適正管理計画

6

目標:クロマルハナバチの適正管理による野外への逸出・定着の予防

対策の方針 実施項目 期間及び実施内容

モニタリングによる

逸出状況の把握

モニタリング 短期~

長期

クロマルハナバチが利用されている地域において、逸出状況を把握するため、定期的なモニタ

リングを実施する。

農家に対する逸出防

止対策の実施

農家に対する指導・啓発

の促進

短期~

長期

関係機関と連携し、必要に応じて、農家に対する指導・啓発を実施する。

野外営巣が確認され

た場合の迅速な防除

関係機関との連携体制

の構築

短期~

長期

関係機関との情報共有等、連携体制を構築する。

速やかな防除および周

辺のモニタリング

短期 野外営巣の確認後、速やかに防除を実施する。

野外営巣確認地点周辺の調査を実施するとともに、他の野外巣が見つかった場合等は速やかに

防除を実施する。

短期~

長期

野外営巣確認地点周辺で、重点的なモニタリングを継続する。

普及啓発 県民等への普及啓発 短期~

長期

ホームページ、イベント、チラシ配布等を通じて適正管理の必要性等を県民や関係機関へ周知

すると共に、発見情報の収集や管理、調査に向けた協力などが得られるよう取り組む。

短期は概ね3年目までの期間、長期は概ね4年目以降の期間

Page 18: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動画に基づくクロマルハナバチ適正管理計画

7

7 実施体制

効果的かつ効率的な対策のため、以下のような体制を目指し、関係機関と連携します。

○ モニタリング:沖縄県環境部

○ 農家への指導、普及啓発:沖縄県環境部及び農林水産部、(環境省、農業関連団体)

○ 野外営巣確認時の防除:沖縄県環境部、(その他関係機関)

8 適性管理の方法

外来生物法により、セイヨウオオマルハナバチを飼育する際には、適切な管理体制

が求められます。一方、クロマルハナバチには法的規制はありませんが、沖縄県にお

いてはセイヨウオオマルハナバチとクロマルハナバチはともに外来種であり、同等の

リスクがあります。そのため、クロマルハナバチについても、外来生物法によりセイ

ヨウオオマルハナバチの飼育において求められるハウスの基準や管理体制が確実に

守られなければいけません。以下に、施設管理における注意点を列挙します。

ネットに隙間がないか

天窓、側窓、換気扇など、隙間ができやすいところにも確実にネットを張る。

ネットやビニールにやぶれはないか

定期的に点検し、破損はすぐに補修する。

出入り口は二重になっているか

出入りの際に開け放たれ、ハチが逃亡しないように注意する。

ハウスの外で巣箱を運ぶとき、二重囲いにしているか

巣箱をさらに別の箱や袋などに入れて運ぶ。

使用後、ハチを確実に処分しているか

巣箱ごとビニール袋にいれて密封し、直射日光に当てておく、あるいは巣箱に

熱湯を注ぐなどして確実に処分してから廃棄する。

9 モニタリング方法

⑴ 直接観察法によるモニタリング

モニタリングは、直接観察による方法と、ウインドウトラップや誘因衝突式トラ

ップによる方法があります。直接観察法は、定性的なデータしか得られないという

欠点がありますが、トラップによる捕獲効率は直接観察による発見効率より低いと

Page 19: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動画に基づくクロマルハナバチ適正管理計画

8

考えられるため、低密度状態におけるモニタリングには直接観察法が適していると

考えられます。現在、沖縄県内でのクロマルハナバチの定着は確認されていないた

め、直接観察を基本としてモニタリングを実施します。

モニタリングは、クロマルハナバチが利用されている地域において実施します。

当該地域において観察ルートを設定し、マルハナバチの活動が活発な午前中を中心

に、ゆっくり歩きながら、マルハナバチを探します。クロマルハナバチを含むマル

ハナバチ類が観察された場合、地図上に地点を記録し、(2)の方法により捕獲し

ます。

沖縄県では、マルハナバチは 11 月~4 月頃に利用されます。よって、マルハナ

バチの利用がもっとも多くなる 12 月~3 月頃、マルハナバチの利用が終了する 5

月頃(殺処分が不十分な状態で廃棄されたマルハナバチが逸出する可能性があるた

め)、利用していない時期の調査として 8 月~9 月頃に調査を実施するものとしま

す。また、確認個体が多く定着が疑われるなど、状況に応じて、追加の調査を検討・

実施するものとします。

調査は雨天を避けて実施します。気温は 10~30℃が観察に適しています。風が

強い日は、マルハナバチの羽音が聞こえづらくなり、発見が困難になるため、避け

るようにします。

⑵ モニタリングにおける個体の捕獲方法

マルハナバチ類が確認された場合、捕獲を実施します。捕獲した個体はその場で

殺処分します。攻撃性は強くありませんが、毒針を持つため、刺されないように注

意します。

捕獲作業は、捕虫網、洗濯バサミ、毒ビン(ふたの閉まるガラス製の空き瓶で可、

70%エタノールに浸して軽く絞った脱脂綿を入れておく)、記録用紙(地点記録用の

地図)、筆記用具を用います。マルハナバチに刺された場合に備え、また農地には

ハブがいる場合もあるので、ポイズンリムーバーも携行します。

捕獲は以下の手順に従って実施します:①ハチの上からそっと捕虫網をかぶせ

る;②網の先端を洗濯バサミでつまんで引き上げると、ハチが上の方へ上がってく

るので、ふたを外した毒ビンを網の中に差し込み、ハチを追い込む;③ハチが毒ビ

ンの中に入ったら、網の上から(網を挟んで)すばやくふたをする;④ハチが弱っ

てきたら、一度ふたを外し、網の中でふたを閉め直す;⑤捕獲場所、日時等を記録

する。

Page 20: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動画に基づくクロマルハナバチ適正管理計画

9

10 防除方法

野外巣が確認された場合、あるいは野外巣の存在が疑われる場合には、関係機関お

よび専門家と連携し、対策を検討します。速やかな根絶が難しい場合には、必要に応

じて防除計画を策定するものとします。

基本的方針として、野外巣が確認された場合には速やかに巣の除去を行います。巣

の除去方法は、巣が作られた環境や営巣段階によって異なるため、適宜検討する必要

があります。土中営巣の場合、基本的にはシャベル等を用いて掘り返すことになりま

す。

クロマルハナバチが利用されている地域から離れた場所や、利用されていない時期

に野外で多数の働きバチが確認された場合、野外巣の存在が疑われますが、巣の探索

は容易ではありません。そのため、巣の位置がわからない場合は捕獲による駆除が基

本となります。捕獲は「9.モニタリングの方法」の「(2)モニタリングにおける個体

の捕獲方法」と同様の方法で実施します。

また、国立環境研究所で薬剤による駆除方法が開発されており、実用が可能であれ

ば検討するものとします。

防除後は継続的なモニタリングを実施します。

11 防除事例の紹介

クロマルハナバチは本州、四国、九州の在来昆虫であり、近年になってセイヨウオ

オマルハナバチの代替として受粉に利用されるようになったため、防除の事例はあり

ません。

12 適正管理計画の見直し

本適正管理計画は3年目に中間評価を行い、5年目に見直しを行います。なお、対

策上必要があると認められる場合は、随時見直しを行うものとします。

参考文献:北海道の“セイヨウオオマルハナバチ”ガイドブック(独立行政法人 北海道立総合

研究機構 環境科学研究センター)

Page 21: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動計画に基づく

セイヨウミツバチ 適正管理計画(案)

令和○年○月

沖 縄 県

Page 22: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウミツバチ適正管理計画

1

1 背景と目的

セイヨウミツバチは、ミツバチ科に属し、採蜜や受粉のための養蜂に利用される代

表的な昆虫です。国内外に広く普及しており、沖縄県でもほぼ全域で利用されていま

す。

一方で、沖縄県では、セイヨウミツバチのノグチゲラの古巣への営巣が報告される

など、生態系への影響が懸念されています。鳥の巣箱や自然樹洞、樹上での開放巣な

どにおける営巣も確認されています。小笠原諸島では、飼育されているミツバチによ

る在来送粉系への影響が懸念されており、沖縄県でも同様の懸念があると指摘されて

います。

沖縄県では、産業又は公益的役割において重要であり、現状では生態系等への影響

がより小さい代替性を有するものがないなどのため、利用において逸出等の防止のた

めの適切な管理が必要な外来種を「産業管理外来種」として指定しています。本適正

管理計画は、セイヨウミツバチによる生態系等への影響を軽減するための目標や方針

等を示すものです。

2 概要

⑴ 和名等

ハチ目ミツバチ科

セイヨウミツバチ(学名 Apis mellifera)

⑵ 分布

原産地:アフリカ、ヨーロッパ~中央アジア

県内での利用状況:県内各地で利用されており、沖縄島、西表島では野外営巣が

報告されています。

⑶ 形態・生態

セイヨウミツバチは、ミツバチ科ミツバチ属の昆虫です。体長は、女王バチ 15

~20mm、雄バチ 15~17mm、働きバチ 12~14mm です。体色は品種によって異なりま

すが、一般的には黄褐色~黒褐色で、腹部に特徴的なしま模様があります。攻撃性

は低くおとなしいハチですが、刺激すると刺されることもあるので注意が必要です。

雄には毒針はありません。

Page 23: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウミツバチ適正管理計画

2

花の蜜や花粉を集め、後肢に花粉団子をつけていることがあります。花に対する

選り好みはあまりなく、さまざまな花を訪れます。

活動期間は地域により異なりますが、温暖な沖縄では一年中活動しています。野

外では、樹洞のような閉鎖空間に好んで営巣しますが、樹木の枝などに巣を作るこ

ともあります。また、市街地でも営巣することがあります。

群が発達し、営巣空間が十分ではなくなると、分蜂(巣分かれ)が起こります。

王台と呼ばれる女王バチ専用の育房が作られ、そこに産みつけられた卵が成長して

くると、元の女王バチは多数の働きバチとともに巣を飛び出します。飛び出したハ

チたちはいったん巣の近くの木などに集結します。そこから偵察のハチが飛び立っ

て、新しい巣を作る場所を探します。適当な営巣場所が見つかれば、群はそこに向

かって一斉に飛び立ち新たな巣作りを始めます。営巣場所を見つけることができな

かった場合、同じ場所にとどまりそこで露出した巣を作ってしまうこともあります。

分蜂の際、残された巣では新女王が誕生します。普通、王台は複数作られ、群が

小さい場合は最初に産まれた女王が他の王台に穴をあけ中の女王を刺殺してしま

います。群が大きい場合、引き続き分蜂が起こることもあります。

分蜂は飼育下の巣箱でも起こることがあり、こうした分蜂群が野外に定着すると

考えられます。

アメリカハマグルマに訪花するセイヨウミツバチ

Page 24: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウミツバチ適正管理計画

3

市街地の事業所敷地内の木の根元に営巣した事例

3 指定の状況

※ アフリカミツバチとアフリカ化ミツバチが侵入予防外来種(我が国の生態系等

に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト)に指定されています。アフリカミツ

バチはセイヨウミツバチのアフリカ産亜種の一つで、アフリカ化ミツバチはアフ

リカミツバチとヨーロッパ産亜種の交雑により生じたものです。流通しているヨ

ーロッパ産亜種に比べ、攻撃性が非常に強いとされています。アフリカミツバチ、

アフリカ化ミツバチは日本には未定着で、輸入もないとされています。

4 生態系等への影響

沖縄県では、沖縄島や西表島でセイヨウミツバチの野外営巣が報告されています。

やんばる固有の希少鳥類であるノグチゲラの古巣や自然樹洞、樹の枝の開放巣、鳥の

巣箱における営巣が確認されています。ノグチゲラの古巣や自然樹洞は、本来ノグチ

ゲラやヤンバルテナガコガネ等の希少動物を含むさまざまな在来生物によって利用

特定外来生物 -

我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト -

日本の侵略的外来種ワースト 100 -

世界の侵略的外来種ワースト 100 -

Page 25: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウミツバチ適正管理計画

4

されるべき資源であり、セイヨウミツバチの営巣によるこれらの在来生物への影響が

懸念されています。

また、セイヨウミツバチは送粉能力が非常に高く、在来植物より外来植物を好む傾

向があるため、外来種同士の相利共生関係になっている可能性があると指摘されてい

ます。小笠原諸島では、セイヨウミツバチが優占することによる在来送粉系の撹乱が

指摘されており、実際に固有種のシマザクラの結果率が低下していることが報告され

ています。同様の影響が、沖縄県においても生じている可能性があります。

本州などでは在来種のニホンミツバチと競合していると考えられていますが、沖縄

県には在来のミツバチ類は生息していません。ただし、在来のその他のハナバチ類と

競合する可能性があります。

鳥の巣箱への営巣

5 目標

◎ やんばる等の保全上重要な地域を中心とした野生化及び蔓延の防止

やんばる等の保全上重要な地域に定着したセイヨウミツバチは、ノグチゲラ

の古巣や樹洞に営巣することによって、本来そのような環境を利用する在来生

物の生息場所を奪うとともに、競合するハナバチ類や在来送粉系の撹乱等の影

響が懸念されます。すでに野生化したセイヨウミツバチを防除し、養蜂農家か

ら逸出した分蜂群の野外定着を防止することによって、保全上重要な地域にお

Page 26: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウミツバチ適正管理計画

5

けるセイヨウミツバチの蔓延を防ぐことを目標とします。

6 対策の方針

◎ 保全上重要な地域の野外定着個体群の抑制

セイヨウミツバチの分蜂群を捕獲・駆除するため、林内における捕獲器の設置

試験を行います。試験により野外定着個体群の駆除手法を確立し、保全上重要な

地域における野外個体群を抑制します。

◎ 養蜂場からの分蜂群の逸出を阻止するための管理方法の普及

養蜂場から逸出した分蜂群が野外に営巣することを阻止するため、分蜂の防止

や分蜂群の捕獲のための手法を確立し、県内養蜂家に普及します。

◎ セイヨウミツバチの適切な管理を促すための普及啓発

セイヨウミツバチによる生態系への影響はほとんど知られていません。問題意

識を持ち、適切な管理を促すため、養蜂家を中心に普及啓発を行います。

Page 27: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動画に基づくセイヨウミツバチ適正管理計画

6

目標:やんばる等の保全上重要な地域を中心とした野生化及び蔓延の防止

対策の方針 実施項目 期間及び実施内容

保全上重要な地域

の野外定着個体群

の抑制

野外定着個体群の駆除技

術の確立および確立され

た技術による防除

短期 野外定着個体群の駆除技術を確立するため、林内において捕獲器の設置試験等を実施する。

長期 保全重要な地域の野外定着個体群を抑制するため、確立された駆除技術による防除を実施する。

養蜂場からの分蜂

群の逸出を阻止す

るための管理方法

の普及

分蜂を防止するための技

術の確立と普及

短期 分蜂を防止する樹脂製の巣脾の使用等を試験的に実施し、実用可能な運用方法を確立する。

長期 確立された分蜂防止技術を県内養蜂家に普及する。

分蜂群の野外営巣を阻止

するための分蜂群の捕獲

技術の確立と普及

短期 運用されている巣箱周辺の捕獲器の設置等を試験的に実施し、分蜂群の野外営巣を阻止する技

術を確立する。

長期 確立された分蜂群の捕獲技術を県内養蜂家に普及する。

セイヨウミツバチ

の適切な管理を促

すための普及啓発

生態系影響や適切な管理

手法の周知

短期~

長期

養蜂家を対象とした講演会等で、セイヨウミツバチの生態系影響や適切な管理手法について周

知する。

短期は概ね3年目までの期間、長期は概ね4年目以降の期間

Page 28: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウミツバチ適正管理計画

7

7 実施体制

効果的かつ効率的な対策のため、以下のような体制を目指し、関係機関と連携します。

○ 対策全体:沖縄県環境部、(その他関係機関)

○ 普及啓発:沖縄県環境部及び農林水産部、(その他関連機関)

8 適性管理の方法

セイヨウミツバチの分蜂を防ぎ、適切に管理を行うためには、まずは定期的な内検

を行うことが重要であるとされます。特に分蜂が起こりやすい春は頻繁に内検を実施

し、王台を発見したら、取り除くか、もしくは人工分蜂することによって分蜂群の野

外への逸出を防ぎます。

適切な内検作業に加え、樹脂製の巣脾や捕獲器の設置など、養蜂場からの分蜂群の逸

出防止技術の確立のための試験を実施します。これらの技術が確立されれば、適切な運

用方法を検討し、県内養蜂家に普及するものとします。養蜂場からの分蜂群の逸出防止

技術の試験について以下に示します。

⑴ 分蜂を防止する樹脂製の巣脾の試験的運用

木製の巣礎枠に針金でミツロウを固定して作る通常の巣脾と違い、生分解性樹脂

を使用した巣脾が販売されています。この巣脾を使うことで王台が作られなくなり、

分蜂が抑制されたという情報があるため、試験的に養蜂家に生分解性樹脂の巣脾を

使ってもらい、その抑制効果を検証します。また生分解性樹脂の巣脾が分蜂の抑制

に有効であれば、その効果的な運用方法を検討し、確立します。

⑵ 分蜂群の野外営巣を阻止するための捕獲器の試験的設置

養蜂における分蜂群を捕獲するため、養蜂場に分蜂群の捕獲器を設置する試験を

実施します。設置後は定期的に見回りを行い、分蜂群が入っているかどうか確認し

ます。分蜂群が入っていた場合、巣箱に誘導し、養蜂に利用できるものとします。

捕獲器が分蜂群の捕獲に効果的であることが確認されれば、設置個数など効果的な

運用方法を検討し、確立します。

9 モニタリングの方法

林内で野生個体群の防除等を行う場合には、防除効果を検証するためのモニタリン

グが必要です。モニタリングの方法は、訪花植物の目視や自動撮影カメラによる観察、

Page 29: 03-01 管理計画 セイヨウオオマルハナバチ...沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウオオマルハナバチ適正管理計画 2 ⑶ 形態・生態

沖縄県外来種対策行動計画に基づくセイヨウミツバチ適正管理計画

8

砂糖水などでの誘引個体の観察などが考えられます。防除等を実施する際には、状況

に応じて適切なモニタリング方法を設定します。ただし、これらのモニタリング方法

では、養蜂家による飼育個体と野生化個体を見分けることができないため、注意が必

要です。

10 防除方法

沖縄県において、セイヨウミツバチはすでに野外に定着していると思われ、特に保

全上重要な地域ではこれらを抑制する必要があります。しかし、セイヨウミツバチが

外来種として駆除された事例はほとんどなく、体系的な防除方法は確立されていませ

ん。市街地などに造巣した場合、安全上の理由から巣を除去することがありますが、

通常は薬剤を用いて駆除を実施します。しかし森林内の樹洞などでは、環境影響が懸

念されるため、薬剤を用いない除去方法を検討する必要があります。

巣の除去のほかに、野外における分蜂群を捕獲することで野生個体群を抑制できる

と考えられます。そこで、林内に分蜂群の捕獲器を設置する試験を実施します。設置

後は定期的に見回りを行い、分蜂群が入っているかどうか確認します。捕獲器が分蜂

群の捕獲に効果的であることが確認されれば、継続的に防除を実施していくための効

果的な設置方法等について検討を行い、防除方法を確立します。

11 防除事例の紹介

セイヨウミツバチが外来種として防除の対象となった事例はほとんどありません。

12 適正管理計画の見直し

本適正管理計画は3年目に中間評価を行い、5年目に見直しを行います。なお、対

策上必要があると認められる場合は、随時見直しを行うものとします。