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3-4.地盤沈下に配慮した帯水層蓄熱が利用可能な地盤
・空調への帯水層蓄熱利用システムで想定される利用条件は、熱源井間の距離 100m 程度、同一帯
水層への揚水・還水、揚水・還水量 100m3/h 程度、季節間での揚水・還水の切替運転である。ま
た、地質条件として、帯水層が層厚 10m 程度、透水係数 1×10-3cm/s 程度の場合、解析ではそ
の上部粘土層の下面に与える応力変化は 16kN/m2 であるが、以下の検討では余裕を見てシステ
ムの運転による応力変化は 20kN/m2とする。
・地盤沈下を経験した大都市は、過去の地下水位低下の影響により粘土層の圧密が進行しているこ
とから、現有効土被り圧(P0)に対する過圧密量(Pc-P0)が大きくなっており、帯水層蓄熱利用で
想定される水圧変化量(ΔP)20kN/m2 を加えても、過圧密量に比べて十分に小さいことから、地
盤沈下は生じないと考えられる。
・なお、ここで想定される水圧変化量 20kN/m2は熱源井直近での水圧変化量であり、20m 離れた
地点ではさらにその 1/10 程度まで小さくなり、ほとんど無理できる水圧変化量となる。
大阪市域の Ma12 層 ( 洪積粘土層 ) の圧密特性
・大阪市域の Ma12 層(洪積粘土層)は、実証場所と同様に熱源利用で想定される応力変化に対して
十分に過圧密であり、圧密沈下を生じるおそれはない。
34.0
35.0
36.0
37.0
38.0
39.0
40.0
41.0
42.0
0 200 400 600 800
深度(
m)
応力(kN/m2)
Pc
P0
180kN/m2
Δp=10~20kN/m2
図-3.4.1 実証場所の Ma12 層(洪積粘土層)の圧密特性
-24-
-60.00
-55.00
-50.00
-45.00
-40.00
-35.00
-30.000 200 400 600 800
83 中島
p0(kN/m2) p0+ΔP(kN/m2)
Pc(kN/m2)
-25.50
-25.00
-24.50
-24.00
-23.50
-23.00
-22.50
-22.00
-21.50
-21.000 200 400 600 800
85 加島
p0(kN/m2) p0+ΔP(kN/m2)
Pc(kN/m2)
-40.00
-38.00
-36.00
-34.00
-32.00
-30.00
-28.00
-26.00
0 200 400 600 800
86 塚本
p0(kN/m2) p0+ΔP(kN/m2)
Pc(kN/m2)
-55.00
-53.00
-51.00
-49.00
-47.00
-45.00
-43.00
-41.00
-39.00
-37.00
-35.000 200 400 600 800
87 酉島
p0(kN/m2) p0+ΔP(kN/m2)
Pc(kN/m2)
図-3.4.2(1) 大阪市域の Ma12 層(洪積粘土層)の圧密特性の地域的特徴
(出典:新関西地盤 2007 –大阪平野から大阪湾-に一部加筆)
-25-
-60.00
-58.00
-56.00
-54.00
-52.00
-50.00
-48.00
-46.00
-44.00
-42.00
-40.000 200 400 600 800
88 桜島
p0(kN/m2) p0+ΔP(kN/m2)
Pc(kN/m2) -55.00
-50.00
-45.00
-40.00
-35.000 200 400 600 800
89 築港
p0(kN/m2) p0+ΔP(kN/m2)
Pc(kN/m2)
-50.00
-45.00
-40.00
-35.000 200 400 600 800
91 島屋
p0(kN/m2) p0+ΔP(kN/m2)
Pc(kN/m2)
-50.00
-48.00
-46.00
-44.00
-42.00
-40.00
-38.00
-36.00
-34.00
-32.00
-30.000 200 400 600 800
92 弁天町
p0(kN/m2) p0+ΔP(kN/m2)
Pc(kN/m2)
-43.00
-42.00
-41.00
-40.00
-39.00
-38.00
-37.00
-36.00
-35.000 200 400 600 800
95 梅田
p0(kN/m2) p0+ΔP(kN/m2)
Pc(kN/m2)
-60.00
-55.00
-50.00
-45.00
-40.00
-35.00
-30.000 200 400 600 800
96 平林南
p0(kN/m2) p0+ΔP(kN/m2)
Pc(kN/m2)
-50.00
-48.00
-46.00
-44.00
-42.00
-40.00
-38.00
-36.00
-34.00
-32.00
-30.000 200 400 600 800
97 平林北
p0(kN/m2) p0+ΔP(kN/m2)
Pc(kN/m2)
-14.00
-13.00
-12.00
-11.00
-10.00
-9.00
-8.00
-7.00
-6.00
-5.00
-4.000 200 400 600 800
98 平林東
p0(kN/m2) p0+ΔP(kN/m2)
Pc(kN/m2)
-50.00
-45.00
-40.00
-35.00
-30.000 200 400 600 800
99 南恩加島
p0(kN/m2) p0+ΔP(kN/m2)
Pc(kN/m2)
-50.00
-48.00
-46.00
-44.00
-42.00
-40.00
-38.00
-36.00
-34.00
-32.00
-30.000 200 400 600 800
100 市岡
p0(kN/m2) p0+ΔP(kN/m2)
Pc(kN/m2)
-50.00
-45.00
-40.00
-35.00
-30.00
-25.000 200 400 600 800
101 泉尾
p0(kN/m2) p0+ΔP(kN/m2)
Pc(kN/m2)
-50.00
-48.00
-46.00
-44.00
-42.00
-40.00
-38.00
-36.00
-34.00
-32.00
-30.000 200 400 600 800
102 九条・北堀江
p0(kN/m2) p0+ΔP(kN/m2)
Pc(kN/m2)
-55.00
-50.00
-45.00
-40.00
-35.00
-30.000 200 400 600 800
104 淀屋橋
p0(kN/m2) p0+ΔP(kN/m2)
Pc(kN/m2)
-25.00
-23.00
-21.00
-19.00
-17.00
-15.00
-13.00
-11.00
-9.00
-7.00
-5.000 200 400 600 800
106 門真南
p0(kN/m2) p0+ΔP(kN/m2)
Pc(kN/m2)
-25.00
-23.00
-21.00
-19.00
-17.00
-15.00
-13.00
-11.00
-9.00
-7.00
-5.000 200 400 600 800
110 安田
p0(kN/m2) p0+ΔP(kN/m2)
Pc(kN/m2)
-35.00
-33.00
-31.00
-29.00
-27.00
-25.00
-23.00
-21.00
-19.00
-17.00
-15.000 200 400 600 800
111 鴻池
p0(kN/m2) p0+ΔP(kN/m2)
Pc(kN/m2)
図-3.4.2(2) 大阪市域の Ma12 層(洪積粘土層)の圧密特性の地域的特徴
(出典:新関西地盤 2007 –大阪平野から大阪湾-に一部加筆)
-26-
工事の出水による地下水低下に伴う地 盤の弾性変形について
・1991~1997 年頃に地下鉄 JR 東西線の海老江駅工事中の出水が原因と考えられる広域的な地下
水低下が発生した。これにより、約 1.5km 離れた中之島観測地点においても約 5m の地下水位
低下と約 3㎝の地盤高の低下が生じた。
・しかし、工事終了後、地下水位が回復、これに伴い地盤高も回復傾向に転じ、一連の地盤変動が
弾性的な変形であったことを示された。
・この広範囲な弾性変形の原因となった出水は、第一洪積砂礫層からのものと推定され、変形は主
に Ma13 層(沖積粘土層)の下部と Ma12 層(洪積粘土層)で発生していると考えられる。
・一方、大阪市域における帯水層蓄熱利用システムの導入は、第 1 洪積砂礫層(Dg1)より深い第
2 洪積砂礫層(Dg2)以深を対象地層としていることから、揚水による応力変化は Ma13 層(沖積粘土層)に影響を与えないこと、また、地下水位の低下量が揚水井直近で 2m 以下と小さいこと
から、当該システムによる影響は上記の工事における出水による弾性変形に対して更に小さく、
影響を及ぼすおそれはないと考えられる。
図-3.4.3 JR 東西線工事の出水による地下水位変動と地盤変動
(出典:H29 年度地下水情報に関する報告書,H30.6)
-27-
揚水 - 還水を交互に繰返した場合の影響
・うめきた地区における地盤調査のサンプリング試料を用いて、繰返し圧密試験を実施し、揚水-還水を交互に繰返した場合の地盤沈下予測を行った。
図-3.4.4 うめきた地区の Ma12,Ma11 層(洪積粘土層)の繰り返し圧密試験結果
(出典:大島教授提供データ)
・繰返し荷重の影響が現れる地下水位変動は 12.5m 以上である。
・実証事業での揚水-還水による水位低下は井戸直近で 1.6m 程度と充分に小さく、繰返し圧密によ
る地盤沈下への影響はないと言える。
大阪市域の洪積粘土層の長期圧密特性
・大阪湾海底の洪積粘土層(関西空港埋立地を含む)は、地史的に見て現在の有効土被り圧以上の
荷重履歴を受けていないが、圧密試験の結果からは過圧密を示す。
・しかし、これは年代効果(二次圧密やセメンテーションなど)による見掛け上の過圧密(これを
擬似過圧密と呼んでいる)であり、圧密降伏応力 Pc よりも小さい荷重でも時間経過とともに過
圧密から正規圧密挙動に移行することが報告されている(例:関西空港埋立地)。
Ma12
pc=710
-28-
図-3.4.5 大阪港の Ma12 層(洪積粘土層)の長期圧密試験結果例
(出典:大阪市立大学 大島教授提供データ)
・図-3.4.5 に示す大阪港の試験結果例では、ひずみ速度依存性、時間依存性の挙動現れており、過
圧密領域でも長期圧密により 10%を超えるひずみが生じている。
・地下水の長期的な利用を行うに当たり、上記挙動が陸域の洪積粘土層でも生じるかどうかを確認
するため、うめきた地区でサンプリングした粘土を用いて長期圧密試験を実施した。
・その結果、Ma12 層(洪積粘土層)およびMa10 層(洪積粘土層)ともに圧密降伏応力(Pc)に至る
まで大きなひずみは生じず、通常の過圧密粘土の挙動を示すことがわかった。
・以上より、大阪市域の陸域の洪積粘土は、大阪湾洪積粘土のようなひずみ速度依存や時間依存性
といった擬似過圧密挙動は考慮する必要ないと考えられる。
図-3.4.6 うめきた地区の Ma12 層(洪積粘土層)の長期圧密試験結果
(出典:大阪市立大学 大島教授提供データ)
図-3.4.7 うめきた地区の Ma10 層(洪積粘土層)の長期圧密試験結果
(出典:大阪市立大学 大島教授提供データ)
-29-
大阪市域の洪積 Ma11 、 Ma10 層 ( 洪積粘土層 ) の圧密特性
・大阪市域の Ma11、Ma10 層(洪積粘土層)の圧密降伏応力(Pc)は、Ma12 層(洪積粘土層)を含めて直線的な深度分布を示し、平均的に Pc が有効土被り圧の 1.2~1.5倍(OCR=1.2~1.5)ある
過圧密状態である。
・Ma11 層、Ma10 層は、Ma12 層と類似した圧密特性(応力履歴,年代効果)を示し、より深部
に堆積することから過圧密量は大きく、熱源利用で想定される応力変化による沈下は生じないと
評価できる。
図-3.4.8 うめきた地区の洪積粘土層の圧密特性
(出典:大阪市立大学 大島教授提供データ)
-30-
中間まとめ
3-5.その他の配慮すべき地盤環境
① 地下水・地盤温度への影響
② 地下水質への影響
4.帯水層蓄熱利用システムの設備・構造事項と維持管理事項
4-1.帯水層蓄熱利用の設備・構造事項
4-2.帯水層蓄熱利用の維持管理事項
5.適正な地下水の熱利用に関する管理のあり方
-33-
・地盤沈下による地下水障害を回避して、地下水を適正に利用するためには、地下水収支を健全に保ちながら利用することが重要であり、大都市で十分な涵養量を確保するには、帯水層に直接涵養する注水法による人工涵養が有効である。
・再生可能エネルギーとしての地中熱利用の一つである帯水層蓄熱利用技術は、注水法による人工涵養機能を兼ね備えたものであるが、環境省技術開発・実証事業で開発した帯水層蓄熱利用システムの熱源井により全量還水できることを確認でき、地盤沈下防止策としての人工涵養機能を十分に備えていることが確認できた。
・大阪市の陸域における Ma12 層(洪積粘土層)は、実証場所と同様に熱源利用で想定される応力変化に対して十分に過圧密であり、圧密沈下は生じない。この圧密特性は、Ma11 層(洪積粘土層)およびMa10 層(洪積粘土層)でも同様である。
よって、当該地域の Ma12 層(洪積粘土層)直下の第 2 洪積砂礫層(Dg2)以深の帯水層において地下水の熱源利用が可能と考えられる。