ジオエコノミクス・レビュー Vol.17 20161001

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1 ジオエコノミクス・レビュー 1 巻 17 号 理論編 PEST 分析に立ち戻る 第 9 号で触れましたように、マクロ環境分析のフレームワークとして PEST 分析があ ります。PEST とは、「P」=Politics(政治的要因)、「E」=Economy(経済的 要因)、「S」=Society(社会的要因)、「T」=Technology(技術的要 因)の頭文字を取ったものです。本号では引き続き社会的要因について見ていくこ とにしましょう。 社会的要因は顧客セグメントの変化として考える 社会的要因は、代表的な物として①人口動態・密度・構成、②ライフスタイル・価 値観、③流行、④宗教・教育・言語等の文化等が挙げられます。今回も引き続き ①を解説します。 人口動態を加味した外交・安全保障政策 前回の理論編(15 号)でも触れましたが、人口動態はかなりの精度で予測が可 能です。それはとりもなおさず、世界地図上での人口の動き方が予測できるということ です。ある 2 か国を取り上げたとき、仮に 1 人あたり GDP が同じだとすれば、人口 で GDP の規模が決まることになります。すなわちその国の経済力が人口で決まると いう訳です。新興国が急速な経済成長を遂げることで、先進国との 1 人あたり GDP の差が以前に比べれば少なくなってきています。その分、人口動態が経済力そ して安全保障政策に与える影響について、もっと注目する必要が出てきているのでは ないでしょうか。 新興国が急速な経済成長を遂げることで、先進国との 1 人あたり GDP の差が以前に比べれば少なくなってきています。その分、人口動態 ご挨拶 本ニューズレターも第 17 号発行とな りました。 本ニューズレターでは最近注目を集 めている「ジオエコノミクス」的観点か ら日本を取り巻く政治経済情勢を 分析し、皆様のビジネス上の意思 決定の一助となれればと思っており ます。 今回も引き続き PEST 分析につい て解説させていただきます。 株式会社藤村総合研究所 代表取締役 藤村慎也

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ジオエコノミクス・レビュー 1 巻 17 号 理論編

PEST分析に立ち戻る

第 9 号で触れましたように、マクロ環境分析のフレームワークとして PEST 分析があ

ります。PEST とは、「P」=Politics(政治的要因)、「E」=Economy(経済的

要因)、「S」=Society(社会的要因)、「T」=Technology(技術的要

因)の頭文字を取ったものです。本号では引き続き社会的要因について見ていくこ

とにしましょう。

社会的要因は顧客セグメントの変化として考える

社会的要因は、代表的な物として①人口動態・密度・構成、②ライフスタイル・価

値観、③流行、④宗教・教育・言語等の文化等が挙げられます。今回も引き続き

①を解説します。

人口動態を加味した外交・安全保障政策

前回の理論編(15 号)でも触れましたが、人口動態はかなりの精度で予測が可

能です。それはとりもなおさず、世界地図上での人口の動き方が予測できるということ

です。ある 2 か国を取り上げたとき、仮に 1 人あたり GDP が同じだとすれば、人口

で GDP の規模が決まることになります。すなわちその国の経済力が人口で決まると

いう訳です。新興国が急速な経済成長を遂げることで、先進国との 1 人あたり

GDP の差が以前に比べれば少なくなってきています。その分、人口動態が経済力そ

して安全保障政策に与える影響について、もっと注目する必要が出てきているのでは

ないでしょうか。

“新興国が急速な経済成長を遂げることで、先進国との 1人あたり

GDPの差が以前に比べれば少なくなってきています。その分、人口動態

ご挨拶

本ニューズレターも第 17号発行とな

りました。

本ニューズレターでは最近注目を集

めている「ジオエコノミクス」的観点か

ら日本を取り巻く政治経済情勢を

分析し、皆様のビジネス上の意思

決定の一助となれればと思っており

ます。

今回も引き続き PEST分析につい

て解説させていただきます。

株式会社藤村総合研究所 代表取締役

藤村慎也

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が経済力そして安全保障政策に与える影響について、もっと注目する必

要が出てきているのではないでしょうか。”

ご存知のように、中国の人口は日本の約 10 倍です。韓国や東南アジアの諸国を

足し合わせても、中国 1 国の人口には及びません。中国が巨大な人口を抱え、経

済発展を遂げている状況では、南シナ海問題でも各国の足並みがなかなか揃わな

いようです。

東アジア、東南アジアにおける人口動態の変曲点

しかしながらそのような状況は、将来の人口動態予測からすれば、変化する可能性

があります。まず第一に、中国の高齢化です。日本に負けず劣らず、中国でも今後

急速に高齢化が進行し、生産年齢人口比率が低下し、中国経済の押し下げ要

因になることが指摘されています。これは人口動態のお話ですから、かなり高い確率

で起こることです。第二に、インドネシアやフィリピン、ベトナムの人口増です。インドネ

シアの人口はすでに 2.5 億人。3 億人超えが予測されています。フィリピンも既に 1

億人を突破。ベトナムも 1 億人が見えてきています。フィリピンとベトナムは言うまでも

なく、南シナ海問題で中国と係争を抱えています。インドネシアは両国ほど直接的な

対立構造には内容ですが、中国漁船の違法操業に対して、不法漁船を拿捕したうえで爆破したり、監視施設を設置したりしていま

す。もっとも、これら 3 か国の人口および日本の人口を足し合わせたところで、中国の人口には遠く及びません。そこで、直接的には南

シナ海に関係していない、ある国が影響力を持つ可能性があります。続きは次回理論編でお伝えします。

参考文献

フィリップ・コトラー (著), Philip Kotler (原著), 木村 達也 (翻訳)「コトラーの戦略的マーケティング―いかに市場を創造し、攻略

し、支配するか」(東京: ダイヤモンド社、2000)

梅澤高明編著、「最強のシナリオプランニング」(東京: 東洋経済新報社、2013)

「2030年のアジア ーアジア経済の長期展望と自律的発展のための課題ー」内閣府 2010年11月19日

MIT のキャンパスにて

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