東大新図書館トークイベント Vo.3 『境界条件』2013/10/18

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株式会社ユニークアイディ 代表取締役 前田邦宏 書籍空間と情報空間における境界条件 2013年10月18日 東大新図書館トークイベントVo.3 再生する図書館:境界条件 Boundary Condition in Bibliography Space and Digital Sphere

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研究雑誌の電子化や電子書籍の導入、アクティブラーニングに代表される授業形態や学習様式の多様化を受けて、いま大学図書館の役割は大きく変わろうとしている。 図書館の内部と外部、書物と書物でないもの、モノと情報、現実と仮想現実etc...。その「境い目」はどこにあるのか?ダイナミックに「境界条件」が変化し続ける世界の中で未来の図書館の「輪郭」をいかにデザインすべきなのか? 東京大学情報学環・暦本純一教授*川添善行(建築家)*前田邦宏(ユニークアイディ)の三名が、来るべき東大図書館の姿について徹底討議する。

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株式会社ユニークアイディ 代表取締役 前田邦宏

書籍空間と情報空間における境界条件

2013年10月18日

東大新図書館トークイベントVo.3 再生する図書館:境界条件

Boundary Condition in Bibliography Space and Digital Sphere

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世界は関係性の織物である。

世の中にあるあらゆる物質や情報は、かならず別の断片と意味のあるつながりを持っており、それらは巧妙に紡がれ、世界という名の美しい織物となっている。世界は、神が織った関係性の織物であり、われわれが目にするのは、その断片を垣間みるだけなのだが、本や映画、音楽は特にその断片としての美しさが際立っている。

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世界は関係性の織物である。

世の中にあるあらゆる物質や情報は、かならず別の断片と意味のあるつながりを持っており、それらは巧妙に紡がれ、世界という名の美しい織物となっている。世界は、神が織った関係性の織物であり、われわれが目にするのは、その断片を垣間みるだけなのだが、本や映画、音楽は特にその断片としての美しさが際立っている。

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本の表紙や背表紙を遠目で見たとしても、コンテンツ内容が判別可能

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本の表紙や背表紙を遠目で見たとしても、コンテンツ内容が判別可能

日経BP マガジンハウス

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内装や棚揃え、店員の顔やしぐさで、コンテクストの質の判別が可能

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本の表紙や背表紙を遠目で見たとしても、コンテンツ内容が判別可能

紀伊國屋札幌店 恵文社一乗寺店 TUTAYA代官山

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無数のファセットに色を加えて、立体的に構造化出来ないだろうか?

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虹は何色あるか?(われわれは判別可能な色を割合多く持っている)

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われわれには見えない色(電磁波の波長)も、活用している。

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量子の世界にも光の三原色と呼応する量子色力学という概念がある

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関係性は多次元にも関わらず、表現は二次元に制約される。

メタデータの活用は、重要でありながら、実用性において課題が多い。今回アプローチしたのは、シラバスや参考図書のメタデータと領域横断的なメタデータ、意外性を含むメタデータなどメタデータのヴィジュアル化によって、利用者の先入観や敷居を低くする動的なインターフェイスデザインを採用した。

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シラバスに含まれる参考図書に書評とキーワードを付与し、構造化Critical Plateauは、ハイブリッド図書館利用者が自分の関心から出発しながらも、伝統的な学問と学際的な研究とを縦横に横断し、知の先端フィールドへと関心を広げることにある。

東大には、図書館を起点に、選ばれた知のフィールドワーカーたち(東大在籍教員、研究者、大学院生、学生は、常時3万名)がおり、それぞれ関心にもとづいた書籍知を相互に共有し、構造的にデータベース化されることで、

<クレディビリティの高い集合知>と<セレンディピティに富んだ読書推薦支援システム>が構築され、

学内外の高度な教養形成に資することができると考えている。

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知の経路(パッサージュ)をつなぐキーワードのカバーフロー表示

書評『夢判断』の脚注「ジークムント・フロイト」を選択すると、その詳細説明と「夢判断」と関係のある別のキーワードが、カード状のカバーフローとして表示される。更にこのパサージュは青で表現されているが、次に紹介する「ザビーナを巡る三角関係」というようなパサージュはピンクのパサージュとして、同時に表示、推奨される。

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メディア論と精神分析との深い関連性を可視化したパッサージュ

石田英敬は、フロイトの『夢判断』が著された「1900年」という年に着目している。なぜなら、フロイトが無意識によって選択される「夢」の素材としての「記憶」を解き明かそうとしていたまさにその同じ時期に、フッサールが「記憶」の構造を探り、ベルクソンが「夢」や「記憶」について語っていたからだ。「夢」や「記憶」を手がかりに、人間の心理や文化の成り立ちを読み解く新しい知の枠組みが提示されたのである。しかし、期を同じくして、人間の「夢」は、産業とメディア技術によって、加工され生産され、世界中に流通し、大衆の無意識、記憶を生み出していくことになる。文化産業としてのハリウッド映画に典型的にあらわれているように、人間の「夢」は資本の力に屈従して、大衆意識は画一化され、大量に消費されていく。これが、アドルノ=ホルクハイマーの『啓蒙の弁証法』を引き継ぎ、スティグレールが『象徴の貧困』で批判する記憶の産業化の問題である。

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専門分野を横断し、意外な“知の経路(パッサージュ)”を創出する

書物に含まれる無数のコンテキストを、東大は一世紀以上キューレーションし続けている。これらはひとつのデータベースに集積されることなく、散逸・消失し、新しい価値創出機会を失っている。それらを可視化するのが、知のパッサージュである。

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セレンディピタス(Serendipitus)な“知の経路”を創出する

子弟関係であったフロイトとユングのザビーナを巡る三角関係とその破局に関するつながり

フロイトとミケランジェロのモーセ像(ユダヤ人・フロイトの葛藤)

精神分析とメディアの関係

フロイト「夢判断」の書評に付与された脚注つながり

若きユングの最初の患者にして恋人、後にフロイトに師事して独創的な精神分析家/児童心理学者として高い評価を得たザビーナ・シュピールライン。しかし母国ロシアに戻った彼女を待っていたのは、スターリン時代の粛清により弟三人を銃殺され、自らも侵攻してきたドイツ軍に娘二人とともに虐殺されるという残酷な運命だった。ユングとフロイトの決裂の原因となったスキャンダルの当事者という歪曲された烙印を押されたまま、先駆的な業績とともに歴史の闇に葬られていた波乱の生涯と学問が再度見直されている。2011年、 デビット・クローネンバーグ監督にょって、シュピールラインとユング、フロイトの3者を描いた映画『危険なメソッド』が制作公開された。

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関係性は多次元にも関わらず、表現は二次元に制約される。

メタデータの活用は、重要でありながら、実用性において課題が多い。今回アプローチしたのは、シラバスや参考図書のメタデータと領域横断的なメタデータ、意外性を含むメタデータなどメタデータのヴィジュアル化によって、利用者の先入観や敷居を低くする動的なインターフェイスデザインを採用した。

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それならば仮想空間や拡張現実に、多次元空間を次元削減しては?

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それならば仮想空間や拡張現実に、多次元空間を次元削減しては?将来的に、アカデミックコモンズの一区画もしくは、別の建物でも良いが、小さな閉じた小部屋の床面に全方向ルームランナーを設置し、その上を歩きながら、過去に集積した図書空間を三次元で投影、その中を回遊し、電子書籍をプレビューし、紙の本を借りることが出来ないかを検討している。

これにより閉空間に無限空間を創出することが可能になる。もちろん重力がなく、梯子を使わず高い戸棚から本を取り出す事も出来る。

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大学図書館そのもののメディア化→「図書館の未来」「東大教授の書棚」等

書評

キーワード

東大総合図書館新館プロジェクトの推進プロセス、イベント内容は「マニフェスト 図書館の未来」的なるものにして行く必要がある。なぜならば、本の進化と図書館の進化は重なってはいても、別の思想設計を必要とするからである。特に学問の世界における知の流通は、商業的な評価とは違うために、良い本なのに売れない、手に入らないという悪循環を断ち切るために、本と本、本と人の精度の高いマッチングをする必要があるからである。

キューレーティッド・メディア

学術書

東大教授

2013年度版

消えて行く運命にあるシラバスと参考書籍が、書評やキーワードを組み合わせて電子書籍としてパッケージ化することも可能