チームワーク (Teamwork) - ƒームワーク(Y. Imai) 2011/9/4 1 チームワーク(Teamwork)...

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チームワーク (Y. Imai) 2011/9/4 1 チームワーク (Teamwork) 担当: 今井芳昭 1 本章の目標 1. チームワークとは何かを理解する。 2. 効果的なチーム作りを理解する。 Key Words 2 (1) チームワークとは 例えばチーム・スポーツ 野球、サッカー、ラグビー、バスケなど 工場、建設作業現場 医療・看護現場 オーケストラ、ブラスバンド、ジャズバンド ビジネス・プロジェクト・チーム 研究プロジェクト・チーム 3 集団の定義 集団(group)とは、共通の目標を達成する ために(相互に影響を及ぼし合うように)相 互作用している複数の個人の構造化され た集まりである。 今井(1989) 集団の構成要素 複数の個人、課題と目標、 相互作用、地位と役割の分担、規範、 われわれ感情(境界の存在) 4 5 今井(1989) 山口(2008) 6

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チームワーク (Y. Imai) 2011/9/4

1

チームワーク (Teamwork)

担当: 今井芳昭

1

☆ 本章の目標

1. チームワークとは何かを理解する。

2. 効果的なチーム作りを理解する。

☆ Key Words

2

(1) チームワークとは

例えば…

• チーム・スポーツ

野球、サッカー、ラグビー、バスケなど

• 工場、建設作業現場

• 医療・看護現場

• オーケストラ、ブラスバンド、ジャズバンド

• ビジネス・プロジェクト・チーム

• 研究プロジェクト・チーム

3

① 集団の定義

• 集団(group)とは、共通の目標を達成するために(相互に影響を及ぼし合うように)相互作用している複数の個人の構造化された集まりである。 今井(1989)

• 集団の構成要素

複数の個人、課題と目標、

相互作用、地位と役割の分担、規範、

われわれ感情(境界の存在)

4

5

今井(1989)

山口(2008)

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② チームの定義

(a)  Salas, Bowers, & Edens (2001)

チームとは、価値のある共通の の達成、あるいは、職務の遂行のために、ダイナミックで相互依存的、適応的な

を行う2人以上の人々から構成される、 の明確な集合体である。

なお、メンバーには課題遂行のための

を割り振られており、メンバー期間には一定の期限がある。

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② チームの定義(b)  堀・加藤・加留部 (2007)   概念モデル

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② チームの定義(c)  山口 (2008)  cf. Arrow, McGrath, & Berdahl (2000)

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② チームの定義

<集団の存続期間に基づいた分類>

1.

・ 医療の手術チーム、消防隊

・ 任務遂行のために即座に形成され、任務完了と共に解散される。

2.

・ 新車開発チーム

・ ある程度期間のかかるプロジェクト遂行のために形成される作業集団で、メンバーは選抜され、役割分担が明確にされる。

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② チームの定義

3.

・ 企業内の部署、スポーツ・チーム

・ 長期間にわたり、多様なプロジェクトの遂行を行う集団

・ 集団内の人間関係も密になる。

・ チーム=作業集団(ワーク・グループ)

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② チームの定義

☆ チームの行動的側面と認知的側面

(a) 行動的側面

・ 目標や作業計画の確認

・ 情報の伝達・共有

・ 協応行動

・ 相互支援

・ 状況・成果の確認

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② チームの定義

(b) 認知的側面

・ 集団凝集性

・ 集団規範

・ (チームが行う課題、メンバーに関する心的イメージ)

・ 集団アイデンティティ(チームに所属することによる自分の存在の把握)

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② チームの定義

☆ 原子力発電所の運転チームの行動分析

佐相・淡川・蛭子(2006)

a. 方向づけ-目標共有、状況共有、情報授受

b. 意思決定-議論、主張、受容、促進

c. 権限と責任-権限委譲・指揮命令、

課題遂行、主体的行動・判断

d. 作業量管理-ストレス管理、タスク管理

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② チームの定義

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(2) チームの測定

☆ チームごとのチーム特性を可視化する。

三沢・山口・田原(2006)

・ 医療現場の看護チームを対象にしたチームワーク測定尺度の作成

・ 現場の状況に適合させた質問項目(60項目)の作成(5点尺度)

・測定次元

チームの指向性、チーム・リーダーシップ、コミュニケーション、モニター、フィードバック、支援、相互調整 具体的な質問項目は ↓

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(2) チームの測定

a. 

・ 自分の知識、技能を高めるための取り組みがなされている。

・ 仕事の手順を守ることについて厳格である。

・ 皆が互いの長所を認め合っている。

b.

・ 簡潔で要点をついた指示・コメントをする。

・ 各スタッフの役割と責任を明確に示している。

・ スタッフみんなの話をよく聞く。

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(2) チームの測定

c.

・ 仕事をうまく行うためのコツを伝え合っている。

・ みんなが納得するまで話し合っている。

d.

・ 自分たちの職務とその目的を確認し合っている。

・ 他のスタッフの仕事の進み具合に注意を払っている。

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(2) チームの測定e.

・ ケアや処置を間違って行っているスタッフがいたら、それを本人に教えてあげる。

・ チーム内での決まりごとを守っていないスタッフがいたら、その場で率直に注意している。

f.

・ 仕事を一人でたくさん抱えているスタッフがいたら援助している。

・ 仕事の仕方や仕事で困ったことについて相談し合っている。

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(2) チームの測定

g.

・ 仕事の負担が特定のスタッフに偏りすぎないよう互いに気を配っている。

・ 互いの都合や仕事の進み具合に合わせて仕事の仕方を工夫して調整し合っている。

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(2) チームの測定

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(3) チームの効果性

Rico, Sanchez‐Manzanares, Gil, & Gibson (2008)

cf. 明示的な協調行動

「状況に応じて必要な行動をあらかじめ予測したり、他のメンバーの行動や思考を推測したりして自分の行動を修正すること」

阿吽の呼吸(←情報の共有、信頼関係)

高業績

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(3) チームの効果性

a. エラー回避の失敗プロセス

Sasou & Reason (1999)

検出失敗→指摘失敗→

訂正失敗→エラーの発生

*検出失敗

社会的手抜き、傍観者効果

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• 例: 小学校校庭の草むしり

運動会の綱引きや玉入れなど

• 「各人が同じ作業を行い、集団全体の作業成績が評価される場合、

作業への動機づけが低下して、

人数が多くなるほど、一人あたりの作業量が低下する現象」

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☆ 社会的手抜き

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• Ingham et al. (1974)

綱引き作業 1人~6人条件

• 実験Ⅰ

実験参加者の平均牽引量を測定した

1人条件 59.0kg(100%)

2人条件 53.5kg( 91%)

3人条件 48.1kg( 82%)

それ以降は、人数が増えても牽引量の低下なし

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Latane et al. (1979)より

他の研究結果を見ると、

●社会的手抜きの防止法

Harkins & Petty (1982)

1.  作業(課題)を難しいものにする。

2.  簡単な作業の場合は、高い目標を設定して挑戦的にする。

3.  可能であれば、各人に少しずつ異なる作業を分担させる。

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4.  同じ作業を行う場合は、各人の責任分担を明確にする。

5.  各人にとって作業を行う理由が明確な、意味あるものにする。

6.  各人の所属している集団が各人にとって魅力的になるようにする。

(集団凝集性を高める)

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(3) チームの効果性*

・ エラーを検出しても、それを当該メンバーに指摘できない。

・ 権威への服従、対人葛藤の回避(自分で個人的に訂正)

・ 指摘されても訂正しない。

・ 訂正方法を知らない。間違った対処

・ エラーのごまかし(自己正当化;権威者)29

(3) チームの効果性

・ 高チーム業績をもたらすチーム特性の保持

+ 状況に応じたチームの変容

・ 古川(2004)のチームワークの3レベル

・ 基本的なチーム特性の獲得を超えて、相互に刺激し合い、新しいものを生み出す雰囲気をもてるチーム作り

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(4) チームの育成

①コーチングによるチーム・マネジメント

☆ : メンバーのコンピテンシー(課題遂行能力)を高め、効果的なリーダーシップを発揮できるような人材へ導くこと

・メンバーの成長への強い関心

・メンバーの可能性・能力・意欲への信頼

・リーダー自身の自己管理

cf. クライエント中心療法

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☆ コーチング技法 鈴木(2005)

・ 相手がすぐに応えられる質問から始める

・ 「なぜ」ではなく「何」で始まる質問にする

・ 答えは相手の中にあると信じる

・ 不満を提案に変えさせる

・ 相手に関する質問をたくさん作る

・ 究極の質問で変化を起こす

・ オウム返しをする

・ 上手な相づちを打つ

・ 自分の気持ちを話す( I メッセージ)

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(4) チームの育成

チーム・ビルディングに基づくチーム育成

安全教育・訓練のための手法

・個人レベル: スキルの修得

・チームレベル:メンバー相互の協調

・組織レベル:人的資源の有効活用

気づき→実践・フィードバック→強化38

(4) チームの育成a. 

講義、事例紹介、ロールプレイング

安全への気づきの感受性を高める

b.

シミュレーション装置を用いた実践

教官からの評価

c.

チームに監督者を置いて日常的に評価

チームで頻繁に打合せを行い情報を共有

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これで、終わりです…。

• この授業を通じて「集団現象」に興味をもつようになってもらえれば幸いです。

• 最後に、皆さんの

後輩たちのために

この授業に関する

アンケートにご協力

ください。

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