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378 公募研究:2001年度 ヒト腎疾患に対する遺伝子レベルの診断法の確立と治療法の開発 ●下条 文武 ◆坂爪 実 ◆風間 順一郎 ◆黒田 毅    新潟大学医歯学総合病院腎・膠原病内科 〈研究の目的と進め方〉 本研究の目的は、原因不明の各種腎疾患の遺伝子レベ ルでの共通性と特異性を解析することによって分子レベ ルでの診断を確立し、特異的かつ有効な治療のターゲッ ト分子を特定することにある。直接ヒト腎生検標本から、 あるいは末梢血免疫細胞など腎症の発症に関与している と考えられる細胞群からmRNAを抽出し、DNAマイクロ アレイを用いて各腎疾患に特徴的な発現遺伝子を同定す る。そして候補遺伝子の機能的な相互関係を明らかにす る。 〈研究開始時の研究計画〉 腎疾患動物モデル(ラット抗糸球体基底膜抗体腎炎) でのDNAマイクロアレイを用いた病因遺伝子を行う。こ の腎炎は、予後不良な原発性糸球体腎炎のひとつである ヒト半月体形成性糸球体腎炎のモデルとされており、多 量の蛋白尿と腎機能低下が進行する。抗糸球体基底膜抗 体静注後、時間経過を追って発現が亢進する遺伝子を包 括的に解析する。 上記に併行して、ヒト腎生検試料へのDNAマイクロア レイ解析の応用を試みる。 〈研究期間の成果〉 1)糸球体腎炎モデル(ラット半月体形成性腎炎)を用 いてDNAマイクロアレイ(GeneChip TM :RatGenomeU34A) 解析の後、階層的クラスタリングを行った。その結果、 細胞外基質と分解酵素(metalloproteinase)遺伝子群の 同期した特徴ある発現が観察された。この中から、in situ hybridizationによって発現部位を確認し、病態形成に 重要と考えたmetalloproteinaseの1つ(MME)に着目し て抗血清を作成、投与し、その役割を報告した。MRL lpr マウス腎炎(ループス腎炎)では、発現が増強した遺伝 子群のうち免疫機能分子の3遺伝子に注目して、in situ hybridizationによる発現部位の特定を行った。これら2 つの腎炎モデルでは、各々特徴的な遺伝子発現様式が観 察され、疾患特異性が認められた。 2)一方、動物モデルでの解析を基に、当研究施設の特 徴と言える豊富な臨床サンプルを利用して、ヒト腎疾患 での解析を進めた。ネフローゼ症候群患者検体の末梢血 免疫細胞での発現遺伝子データを得、疾患特異的に発現 する遺伝子群を絞りこんでいる。さらに、ラット腎炎モ デルで針腎生検を行い、得られた1以下の微量RNAか らmRNAを増幅 (T7-based RNA amplification)してDNA マイクロアレイ解析を行った。wholeの腎組織から得た 遺伝子発現プロファイルと近似したデータを得ることが できた。 〈国内外での成果の位置づけ〉 本研究では種々の進行性腎疾患を対象とする予定で、 体系的・網羅的に発現遺伝子を解析、機能的な相互関係 を明らかにする点が特徴である。各腎疾患に特異的な、 あるいは共通の進行機序が解明される可能性があり、慢 性腎不全への進行を抑制し、透析療法への導入を阻止す る治療法を確立するための道を開くことが期待できる。 〈達成できなかったこと、予想外の困難、その理由〉 動物モデルでの腎臓局所における網羅的遺伝子解析は、 当初の目的を達成し、新たな組織障害因子を同定するこ とができた。しかし一方、ヒトのサンプルの解析数が足 りず発現遺伝子のプロファイリング、疾患特異的発現遺 伝子の絞り込みが不完全である。十分な研究期間の設定 により解決できると考える。 〈今後の課題〉 ヒト糸球体疾患での解析を進め、分子レベルでの診断 と特異的かつ有効な治療のためのターゲット分子を特定 する。腎疾患モデル動物の解析では、ESTを含めた発現 遺伝子の糸球体障害における役割を明らかにし、ヒト腎 疾患の分子病態解明への応用をめざす。 〈研究期間の全成果公表リスト〉 1. 0111081256 Sakatsume M, Xie Y, Ueno M, Obayashi H, Goto S, Narita I, Homma H, Tasaki K, Suzuki Y, Gejyo: Human glomerulonephritis accompanied by active cellular infiltrates shows effector T cells in urine. J Am Soc Nephrol 12: 2636-2644 20012. 0111081310 Xie Y, Sakatsume M, Nishi S, Narita I, Arakawa M, Gejyo F: Expression, roles, receptors and regulation of osteopontin in the kidney. Kidney Int 60: 1645-1657 20013. 0602011401 Kaneko, Y., Sakatsume, M., Xie, Y., Kuroda, T., Igashima, M., Narita, I., Gejyo, F: Macrophage metalloelastase as a major factor for glomerular injury in anti-glomerular basement membrane nephritis. J Immunol 17063377- 3385 20034. 0602011616 Saga, D., Sakatsume, M., Ogawa, A., Tsubata, Y., Kaneko, Y., Kuroda, T., Sato, F., Ajiro, J., Kondo, D., Miida, T., et al. Bezafibrate suppresses rat antiglomerular basement membrane crescentic glomerulonephritis. Kidney Int 67 5), 1821-1829 20055. 0601301605 Alchi B, Nishi S, Kondo D, Kaneko Y, Matsuki A, Imai N, Ueno M, Iguchi S, Sakatsume M, Narita I, Yamamoto T, Gejyo F: Osteopontin expression in acute renal allograft rejection. Kidney Int 67 3), 886-896 2005

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公募研究:2001年度

ヒト腎疾患に対する遺伝子レベルの診断法の確立と治療法の開発

●下条 文武 ◆坂爪 実 ◆風間 順一郎 ◆黒田 毅   

新潟大学医歯学総合病院腎・膠原病内科

〈研究の目的と進め方〉本研究の目的は、原因不明の各種腎疾患の遺伝子レベ

ルでの共通性と特異性を解析することによって分子レベルでの診断を確立し、特異的かつ有効な治療のターゲット分子を特定することにある。直接ヒト腎生検標本から、あるいは末梢血免疫細胞など腎症の発症に関与していると考えられる細胞群からmRNAを抽出し、DNAマイクロアレイを用いて各腎疾患に特徴的な発現遺伝子を同定する。そして候補遺伝子の機能的な相互関係を明らかにする。

〈研究開始時の研究計画〉腎疾患動物モデル(ラット抗糸球体基底膜抗体腎炎)

でのDNAマイクロアレイを用いた病因遺伝子を行う。この腎炎は、予後不良な原発性糸球体腎炎のひとつであるヒト半月体形成性糸球体腎炎のモデルとされており、多量の蛋白尿と腎機能低下が進行する。抗糸球体基底膜抗体静注後、時間経過を追って発現が亢進する遺伝子を包括的に解析する。

上記に併行して、ヒト腎生検試料へのDNAマイクロアレイ解析の応用を試みる。

〈研究期間の成果〉1)糸球体腎炎モデル(ラット半月体形成性腎炎)を用いてDNAマイクロアレイ(GeneChipTM:RatGenomeU34A)解析の後、階層的クラスタリングを行った。その結果、細胞外基質と分解酵素(metalloproteinase)遺伝子群の同期した特徴ある発現が観察された。この中から、insitu hybridizationによって発現部位を確認し、病態形成に重要と考えたmetalloproteinaseの1つ(MME)に着目して抗血清を作成、投与し、その役割を報告した。MRLlpr

マウス腎炎(ループス腎炎)では、発現が増強した遺伝子群のうち免疫機能分子の3遺伝子に注目して、in situhybridizationによる発現部位の特定を行った。これら2つの腎炎モデルでは、各々特徴的な遺伝子発現様式が観察され、疾患特異性が認められた。2)一方、動物モデルでの解析を基に、当研究施設の特徴と言える豊富な臨床サンプルを利用して、ヒト腎疾患での解析を進めた。ネフローゼ症候群患者検体の末梢血免疫細胞での発現遺伝子データを得、疾患特異的に発現する遺伝子群を絞りこんでいる。さらに、ラット腎炎モデルで針腎生検を行い、得られた1裹以下の微量RNAからmRNAを増幅 (T7-based RNA amplification)してDNAマイクロアレイ解析を行った。wholeの腎組織から得た遺伝子発現プロファイルと近似したデータを得ることができた。

〈国内外での成果の位置づけ〉本研究では種々の進行性腎疾患を対象とする予定で、

体系的・網羅的に発現遺伝子を解析、機能的な相互関係を明らかにする点が特徴である。各腎疾患に特異的な、あるいは共通の進行機序が解明される可能性があり、慢

性腎不全への進行を抑制し、透析療法への導入を阻止する治療法を確立するための道を開くことが期待できる。

〈達成できなかったこと、予想外の困難、その理由〉動物モデルでの腎臓局所における網羅的遺伝子解析は、

当初の目的を達成し、新たな組織障害因子を同定することができた。しかし一方、ヒトのサンプルの解析数が足りず発現遺伝子のプロファイリング、疾患特異的発現遺伝子の絞り込みが不完全である。十分な研究期間の設定により解決できると考える。

〈今後の課題〉ヒト糸球体疾患での解析を進め、分子レベルでの診断

と特異的かつ有効な治療のためのターゲット分子を特定する。腎疾患モデル動物の解析では、ESTを含めた発現遺伝子の糸球体障害における役割を明らかにし、ヒト腎疾患の分子病態解明への応用をめざす。

〈研究期間の全成果公表リスト〉1. 0111081256Sakatsume M, Xie Y, Ueno M, Obayashi H, Goto S, NaritaI, Homma H, Tasaki K, Suzuki Y, Gejyo: Humanglomerulonephritis accompanied by active cellularinfiltrates shows effector T cells in urine. J Am Soc Nephrol12: 2636-2644 (2001)2. 0111081310Xie Y, Sakatsume M, Nishi S, Narita I, Arakawa M, GejyoF: Expression, roles, receptors and regulation ofosteopontin in the kidney. Kidney Int 60: 1645-1657(2001)3. 0602011401Kaneko, Y., Sakatsume, M., Xie, Y., Kuroda, T., Igashima,M., Narita, I., Gejyo, F: Macrophage metalloelastase as amajor factor for glomerular injury in anti-glomerularbasement membrane nephritis. J Immunol 170(6) 3377-3385 (2003)4. 0602011616Saga, D., Sakatsume, M., Ogawa, A., Tsubata, Y., Kaneko,Y., Kuroda, T., Sato, F., Ajiro, J., Kondo, D., Miida, T., et al.Bezafibrate suppresses rat antiglomerular basementmembrane crescentic glomerulonephritis. Kidney Int 67

(5), 1821-1829 (2005)5. 0601301605Alchi B, Nishi S, Kondo D, Kaneko Y, Matsuki A, Imai N,Ueno M, Iguchi S, Sakatsume M, Narita I, Yamamoto T,Gejyo F: Osteopontin expression in acute renal allograftrejection. Kidney Int 67 (3), 886-896 (2005)