慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科

Sustainable Development プログラム　グローバル環境システム プロジェクト

　　　　最終発表＊修士課程２年　山田 衆三

　　　　　　　　　　　　　　　　２００５年２月１日

修士課程研究題目『北東アジア天然ガスパイプライン　のルート選定に関する研究』“Northeast Asia ｎ Natural Gas Pipeline's Route Planning”

（１）本研究の背景

● 天然ガスの特長　１．供給源の分散化（中東原油依存からの脱却）　２．化石燃料（石炭・石油等）のなかで最もクリーン

● 北東アジアにおける持続可能な「３Ｅ」政策の必要性

　１．Ｅｎｅｒｇｙ ｓｅｃｕｒｉｔｙ　２．Ｅｃｏｎｏｍｉｃ ｇｒｏｗｔｈ

　３．Ｅｎｖｉｒｏｎｍｅｎｔａｌ ｐｒｏｔｅｃｔｉｏｎ

中東原油依存度日本８７％

日中韓７７％

● パイプライン輸送の優位性（ＬＮＧとの比較）　１．陸路では必須、海路でも中短距離の場合は経済

的　２．輸送ライフサイクルにおける環境負荷を低減　３．分岐支線による輸送経路での需要波及効果四方海に囲まれた日本はパイプラインが未整備であり 天然ガス貿易の９７％をＬＮＧ輸送に依存する特殊事情

（２）本研究の目的

旧ソ連に存在する大規模天然ガス田（供給地）から北東アジア市場を考慮して日本三大都市圏へ輸送することを目的とした国際高圧パイプラインの最適なルート選定について研究

旧ソ連に存在する大規模天然ガス田（供給地）から北東アジア市場を考慮して日本三大都市圏へ輸送することを目的とした国際高圧パイプラインの最適なルート選定について研究

（３）本研究の対象エリア

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サササササササ

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ササササ

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ササササササ

（４）本研究の構成サササササササササササササササササササササササササササササササ

１．基礎調査　　先進事例の把握・考察　　欧米でパイプラインネットワークが発達した促進要因等

　　対象エリアの情報収集　 関連省庁・外郭団体、産業界等の専門家にヒアリング

２．ルートモデルを構築し、本モデルを用い　 経済性を評価して最適なルートを選定

３．選定ルートの検証＜現実的課題に対する解決策＞　　①開発資金調達面・②制度面・③国際協力面

（５）ルート選定の論理

Microsoft社の電子地球儀ソフト「 Dynamic Globe 」を用いて各ルートの敷設距離を測定

パイプライン整備動向を調査対象：日本・朝鮮半島・中国・旧ソ連等

①～③・通過条件を満たす、全てのルートを抽出各ルートの経済性を重視した評価基準によって最適なルートを選定

①既存のパイプライン及び計画策定済みルートを最優先

未確定区間

輸送回廊＝鉄道・道路網や港湾施設　欧米ではパイプライン埋設空間や貯蔵施設として活用

②天然ガス需要が見込まれる人口５万人以上の都市

並びに③輸送回廊及び国家級開発区を網羅

（６）ルートの評価基準

＜評価説明＞

①及び②の値が小さいほど経済的

③の値が小さいほど投資リスクが低い

①建設効率（万円／人）＝建設費／沿線人口 建設費＝敷設距離 × 敷設費単価（前提①） 潜在的市場規模の代理変数⇒ルート周辺を対象とした人口②建設効率指数＝①建設効率／一人あたりＧＤＰ係数 所得格差を考慮⇒沿線各国・地域別一人あたりＧＤＰ（前提②）

③建設効率指数危険度＝②建設効率指数／安全係数 投資リスクを考慮⇒安全係数（前提③）

ササササササササササ

ササササササ

（７）サハリン大陸棚⇒日本のケース

サハリン大陸棚想定ルート①

想定ルート②

近畿・中部圏

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ササササササササササササササササササササ

白子

新潟

宗谷海峡道央圏（札幌・千歳等）

ハバロフスク

ウスリースク

清津

釜山

北九州

ハルビン

大連

瀋陽

平澤

大邱

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ササササササ

黄海ササ

長春

元山

　豊橋清水

中国東北地区

対馬海峡

苫小牧津軽海峡

間宮（タタール）海峡

咸興

首都圏

石狩

姫路

稚内

⇒ 　 ① ②サハリン大陸棚 日本 想定ルート ・ 評価結果

2.3 2.5 2.4

1.1 1.32.4

1.51.1 1.3

2.6 2.5

3.94.6

0.9 1.02.4

2.42.61.31.10.0

3.0

6.0

①日本海 ①太平洋 ②朝鮮半島 ②日中韓

敷設距離（千ｋｍ） 建設費（兆円） 建設効率（万円／人）建設効率指数 建設効率指数危険度

ササササササササササササササササササササササササササササササササ

サササササ①ササササササササササササササササササササササ②ササササササササ

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サハリン大陸棚⇒日本　評価結果まとめ

（８）東シベリア⇒日本のケース

首都・近畿・中部圏

バイカル湖

イルクーツク

ウランバートル

瀋陽

大連

平壌ソウル釜山

チタ

ハルビン満洲里

太原

包頭

靖辺

上海

西気東輸中継地

南京

連雲港 北九州

サハ共和国・チャヤンダ天然ガス田（確認埋蔵量１ .２兆ｍ 3）

木浦

ササササササササササ

サササササササササササササササササササササササササササササ

ササササササササササ

長春

中国東北地区

フフホト

黄海

イルクーツク州・コビクタ天然ガス田（確認埋蔵量１ .１兆ｍ 3 ）

錦州

チチハル

平澤北京

集寧

⇒ 　東シベリア 日本 想定ルート評価結果

5.6 5.7 5.4 5.5

6.9

2.7 2.8 3.1 3.2 3.3 3.1

1.6 1.6 1.9 1.9

0.6 0.6

2.8 2.8 3.2 3.3 3.0 2.9

7.6

2.7 2.7 3.0 3.2 2.9 2.70.0

4.0

8.0

両国通過 北朝鮮迂回 モンゴル迂回 両国迂回 北京 集寧

敷設距離（千ｋｍ） 建設費（兆円） 建設効率（万円／人） 建設効率指数 建設効率指数危険度

サササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササ

サササササササササササササササササササササ

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ササササササササ ササササササ

サササササササ　 サ　 サササササササササササササササササササササササササ　 サササササササササササササササササササ　 サササササササササササササササササササササササササ

サ

サ

サササササ

想定ルート モンゴル

北朝鮮

（１）

両国通過 〇 〇

（２）

北朝鮮迂回 〇 ×

（３）

西気東輸経由（集寧） 〇 ×

（４）

西気東輸経由（北京） 〇 ×

（５）

モンゴル迂回 × 〇

（６）

両国迂回 × ×

サササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササ

東シベリア⇒日本　評価結果まとめ

（現状計画案）

ササササササササササ

１．アジア開発銀行（ＡＤＢ）の既存特別基金に追加設置ササササササササササササササ

ササササササササササササササササササ　 　 　 　 　 ササササササササササササササササ　 　 　 　 　 サササササササササササササ　 　 　 　 　 ササササササササササササササササササ

サ . ササ . サササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササ

１９９７年、第７回北東アジア経済フォーラムでスタンリー・カッツ元ＡＤＢ副総裁らが北東アジアに特定したサブ・リージョナルな地域専用開発金融機関の創設を提唱

サササササササ

基盤インフラ整備を通じた機動的開発金融スキームの構築

ササササササササササ

（９）選定ルートの検証①

２．ＡＤＢ及び国際協力銀行（ＪＢＩＣ）等との協調融資

３．北東アジア開発銀行（ＮＥＡＤＢ）構想の実現

①エネルギー資源の流通促進及び自由な国境通過を保証　“通過（ Transit ）”の義務規定等⇒法的拘束力の確立

「北東アジアエネルギー憲章」の制定ササササササササササササササ ササササササササ

統一的対応と連帯を確保する多国間協定の執行機関として朝鮮半島エネルギー開発機構（ＫＥＤＯ）の支援対象を北東アジア全域とする「北東アジアエネルギー開発機構」に改組

「欧州エネルギー憲章（ European Energy Charter ）」が手本になり得る

政治的な安定性を維持する最大限の努力を払い相互融通し合うことが主眼⇒協調性の遵守

（９）選定ルートの検証②

②パイプライン通過国間での利害調停や紛争解決手続き等　を規定⇒危機管理対応の明確化

（９）選定ルートの検証③

供給地 想定ルート 開発区 備考

サハリン大陸棚

朝鮮半島縦貫（ロシア～北朝鮮～韓

国）

東シベリア

朝鮮半島縦貫（中国～北朝鮮～韓国）

モンゴル縦貫（ロシア～ ～中ﾓﾝｺﾞﾙ

国）

各開発区がバッファーゾーン（緩衝地帯）となって、朝鮮半島・モンゴル縦貫パイプライン敷設の障壁を払拭

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サササササササ

サササササササササササササササササササササササササ

サササササササササササササササササ

図們江下流 ロ中朝ロシア

ハサン

中国琿春北朝鮮羅先

鴨緑江沿岸 中朝中国丹東北朝鮮サササ

南北

南北

金剛山

開城モンロアルタンブラ

グモン中ザミンウー

ド

ササササササ

⇒ 　旧ソ連の各供給地（天然ガス田） 日本 想定ルート評価結果総括

1.12.6 2.8 2.9

4.02.9 3.2 3.6

0.0

5.0

10.0

①ｻ ﾊﾘﾝ ②ｻ ﾊﾘﾝ 東ｼﾍ ﾘ゙ｱ 東ｼﾍ ﾘ゙ｱ 西ｼﾍ ﾘ゙ｱ ﾄﾙ ｸﾒﾆｽﾀﾝ ｶｻ ﾌ゙ｽﾀﾝ ｳ ｨ゙ﾘｭｲ盆地

敷設距離（千ｋｍ） 建設費（兆円） 建設効率（万円／人） 建設効率指数 建設効率指数危険度

サササササササササササササササササ

ササササササ

ササササササササササササササササササ

　 　ササササササ ササササササササ ササササ ササササ

地政学的リスク

地政学的リスク

ササササササササササササ

ササササササササササササササササササササササ

サササササササササササササササササ

ササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササ

ササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササ

（１０）本研究の成果

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（前提①）パイプライン敷設費単価表（億円／ｋｍ）

欧州・北米 一般陸上北東アジア（ユーラシア大陸部）総合研究開発機構の受託で㈱コーエイ総合研究所試算

一般陸上 　特殊陸上（永久凍土・山岳部等）

　

日本列島アジアパイプライン研究会事務局㈱三菱総合研究所試算

陸上（現状）陸上（規制緩和後）

　

陸上（中位値） 　

海域総合研究開発機構の受託で㈱コーエイ総合研究所試算

海底 　

ササササササササササササササササササササ

１～２

３

９

１０

８

９４

（前提②）国別一人あたりＧＤＰ（２００２年）

0.07 0.05 0.02 0.01 0.010.03

0.3

0.02 0.01

1.0

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

日本 韓国 北朝鮮 中国 モンゴル ロシア ｶｻ ﾌ゙ ﾄﾙ ｸﾒ ｳｽ ﾍ゙ ｷ゙ ｷ ﾙ ｷ ｽ゙0.0

0.5

1.0サササササ サササササ

サササササササササササササササササササササササ

ササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササ

（前提③）投資リスク表（２００４年１０月２９日現在）

国　名 ランク

日本 Ａ韓国・中国 Ｃロシア Ｅカザフスタン Ｆ北朝鮮・モンゴル・キルギス・ウズベキスタン・トルクメニスタン

Ｈサササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササササ※ ササササササササササササササササササササササササササササササササササササササ

安全係数8/8 = 1.0

6/8 = 0.8

4/8 = 0.5

3/8 = 0.4

1/8 = 0.1

サ

サ

サササササササササササ

「西気東輸」天然ガスパイプラインの概要

　　　　　　　　　　　　　

特徴：将来の天然ガス需要拡大を見越した供給先行型ﾊﾟｲﾌﾟﾗｲﾝ全長：新疆ウイグル自治区～上海に至る東西横断４１６７ｋｍ　沿岸部と内陸部の経済格差解消を目指す「西部大開発」の一環として実施（２００４年末に竣工）

サササササササササササササササササ

確認埋蔵量２３１１億ｍ 3

中継地陝西省靖辺

　 ササ　 サ　 ササ　 サ

主力供給源新疆ウイグル自治区タリム盆地北部確認埋蔵量

３７５４億ｍ 3 起点は輪南

（参考①）中国の一人あたり地域内総生産（ＧＲＰ）

ササ

ササ

サササ

サササ

寧夏

ササ

ササ ササ 陝サササ

ササ ササ

ササササ

ササ

サササササササササササササ

ササ

ササ

ササササ

ササササササササ

ササササ

ササササ

ササ

ササ

ササ

ササ

ササササ

サササササササササ

ササササササササ

３ .２

３ .０

０ .８

１ .１

１ .８１ .２

１ .５

４ .８２ .１

２ .５

０ .８

１ .９

０ .８

１ .７

２ .１１ .１

０ .４０ .７

０ .９

０ .９

０ . ６

１ .２

２４ .７１５ .２

０ .９

サササササササササ

ササササササササ . サササササ

ササササ . サ

０ .８

１ .３

１ .１

０ .９

０ .７

０ .９０ .８

（参考②）中国の「西部大開発」

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ササササササササササササササ

ササ

サササ

ササ ササササ

陝サササササササ

ササ

寧夏

ササ

ササ

ササ

サササ

ササササ

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ササササササササササササササ

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