プレゼンスライド改善作戦 PSI-#3「文字の大きさ」と「情報の構造化」

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プレゼンスライド改善作戦 PSI-#3 「文字の大きさ」と「情報の構造化」 (使用事例:東南アジア・南シナ海の重要性) アイデアクラフト 開米瑞浩 http://ideacraft.jp Collaborating with 政策研究集団 Cubic Argument 提供

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プレゼンスライド改善作戦 PSI-#3

「文字の大きさ」と「情報の構造化」 (使用事例:東南アジア・南シナ海の重要性)

アイデアクラフト 開米瑞浩 http://ideacraft.jp

Collaborating with 政策研究集団 Cubic Argument提供

概要・想定読者・使い方

プレゼンテーション用のスライドを「わかりやすく」

改善する事例を解説します

文中の随所にあるヒントを手がかりに考えてみてください

情報量が多くなりがち、難解になりがちな

研究発表系のプレゼンテーションを行う方

【著作権者】ドキュメント・コンサルタント 開米瑞浩

著者公式サイト http://ideacraft.jp

(著者および Cubic Argument の紹介を本書末尾に掲載しています)

【使い方】

【本書の概要】

【想定読者】

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本書の事例は政策研究集団 Cubic Argument が原案を提供し、ドキュメント・コンサルタント開米瑞浩が改善事例・解説を作成しています。

【特記事項】

事例:東南アジア・南シナ海の重要性(原案)

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・・・え、文字が小さくて読めません?→ では、大きく貼り付けたものを次のページに掲載します

改善前のスライド原案です。中国の政戦略にとって東南アジア・南シナ海が重要であるという理由を説明しています。

1.東南アジア・南シナ海の重要性

①6億人を抱え、拡大を続けるASEANマーケット

・製造業の生産拠点→消費市場・2030 年には7 億人に増加することが予測されている。

②南シナ海に埋蔵する資源

・石油:367億8千万トン・天然ガス:7兆5500億立方メートル

③インド洋、太平洋の海上輸送ルート、マラッカ海峡などのチョークポイントの安全確保

・マラッカ海峡を通過する船舶の60%が中国船・輸入石油の70%が通過・米国がシンガポールのチャンギー基地駐屯権を取得済み・ベトナムカムラン湾を米空母拠点

④複雑で、平均水深は千二百十二メートル、潜水艦の理想的な活動地域である海底地形

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1.東南アジア・南シナ海の重要性

①6億人を抱え、拡大を続けるASEANマーケット

・製造業の生産拠点→消費市場・2030 年には7 億人に増加することが予測されている。

②南シナ海に埋蔵する資源

・石油:367億8千万トン・天然ガス:7兆5500億立方メートル

③インド洋、太平洋の海上輸送ルート、マラッカ海峡などのチョークポイントの安全確保

・マラッカ海峡を通過する船舶の60%が中国船・輸入石油の70%が通過・米国がシンガポールのチャンギー基地駐屯権を取得済み・ベトナムカムラン湾を米空母拠点

④複雑で、平均水深は千二百十二メートル、潜水艦の理想的な活動地域である海底地形

拡大版です。それでもちょっと字が小さめですね

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改善のヒント

原案スライドの改善案を考えるための注目ポイントです

① 文字の大きさ

② 情報の構造化

20pt以上のフォントを使う情報のレベル別にメリハリをつける

教科書的セオリー

理解するために重要な「構造」を見極めて、それを視覚的に表現すること

→ それぞれもう少し詳しく書くと・・・

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最低20・理想は28(1)

目的 戦略 戦術 成果

→ ただし・・・・・・(次ページへ)

教科書的セオリーとしては「プレゼンで使うフォントは最低20pt以上」できれば28pt以上のほうがよい。

目的 戦略 戦術 成果

目的 戦略 戦術 成果

36pt 目的 戦略 戦術 成果

28pt

20pt

16pt

これでもかなり小さい

できればこのぐらい

読む気が無くなるレベル

場合によってはこれを基本に

これ以上のサイズは重要フレーズ限定で

44pt 目的 戦略

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最低20pt(2)

→ 次の「レベル別にメリハリをつける」とは?

「最低20pt以上」はあくまでも目安。わかっていてあえて破るのはかまいません。

ちなみにこれは18pt

少人数だから全員がスクリーンの近くで見られる

聞き手の関心レベルが高く、熱心に読んでくれる

説明しなければいけない情報量がどうしても多い

・・・といった条件が成り立つ場合には、20pt以下でも大きな問題にはなりません

(ただし、「情報量」については後で補足します)

細かい字は配付資料で確認できる

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メリハリをつける

→ 試しに、原案のメリハリ強化版を作ってみると?

印象に残したい部分限定で、ハッキリと大きなフォントを使います

②南シナ海に埋蔵する資源

・石油:367億8千万トン・天然ガス:7兆5500億立方メートル

②南シナ海に埋蔵する資源

・石油:367億8千万トン・天然ガス:7兆5500億立方メートル

メリハリなし

メリハリあり

すべて18pt、プレーン

24pt、Bold

18pt、プレーン

フォントサイズに2段階以上の差をつける

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→ 今度は構造化を考えます

1.東南アジア・南シナ海の重要性

①6億人を抱え、拡大を続けるASEANマーケット

・製造業の生産拠点→消費市場・2030 年には7 億人に増加することが予測されている。

②南シナ海に埋蔵する資源

・石油:367億8千万トン・天然ガス:7兆5500億立方メートル

③インド洋、太平洋の海上輸送ルート、マラッカ海峡などのチョークポイントの安全確保

・マラッカ海峡を通過する船舶の60%が中国船・輸入石油の70%が通過・米国がシンガポールのチャンギー基地駐屯権を取得済み・ベトナムカムラン湾を米空母拠点

④複雑で、平均水深は千二百十二メートル、潜水艦の理想的な活動地域である海底地形

①~④の見出し部分が目立つようになったのは良いのですが、大きくした分だけ余白もなくなり、ビッシリ書き込んだ印象も強くなってしまったのは欠点です。

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情報の構造化

→ さて、どう分類しましょうか?

「構造化」の一番の基本は、「分類すること」です。

①6億人を抱え、拡大を続けるASEANマーケット

②南シナ海に埋蔵する資源

③インド洋、太平洋の海上輸送ルート、 マラッカ海峡などのチョークポイントの安全確保

④複雑で、平均水深は千二百十二メートル、潜水艦の理想的な活動地域である海底地形

まずは、箇条書きの見出し部分を分類することを考えます。

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構造化例(1)

→ 他の構造化パターンも見てみましょう

たとえばこれが一例

①6億人を抱え、拡大を続けるASEANマーケット

②南シナ海に埋蔵する資源

③インド洋、太平洋の海上輸送ルート、 マラッカ海峡などのチョークポイントの安全確保

④複雑で、平均水深は千二百十二メートル、潜水艦の理想的な活動地域である海底地形

経済上の価値

安全保障上の価値

分類することによって、こうした見出しがつけられるようになり、説明しやすくなります

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構造化例(2)

→ 一例を示すと・・・

赤字で示した3つの単語に注目します

①6億人を抱え、拡大を続けるASEANマーケット

②南シナ海に埋蔵する資源

③インド洋、太平洋の海上輸送ルート、 マラッカ海峡などのチョークポイントの安全確保

④複雑で、平均水深は千二百十二メートル、潜水艦の理想的な活動地域である海底地形

「構造化」のもう1つの基本は「真っ直ぐ並べること」です。赤字で示した3語を何らかの基準で真っ直ぐ並べる事を考えてください。(残念ながら「何らかの基準」についてのわかりやすい法則はありません)

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構造化例(3)

→ 一例を示すと・・・

そもそも経済活動というのは、「価値ある資源」を「輸送ルート」で運んで「マーケット」で売ることである、と考えると、この順番で書けます

資源 マーケット輸送ルート

③インド洋、太平洋の海上輸送ルート、 マラッカ海峡などのチョークポイントの安全確保

④複雑で、平均水深は千二百十二メートル、潜水艦の理想的な活動地域である海底地形

さらにここに下記の赤字部分の意味合いを加筆してみましょう

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構造化例(4)

→ 構造化をすると新しい気づきも得られます

輸送ルート上に「チョークポイント」が存在し、その地域が「潜水艦の活動に理想的な地形」であるということで、「輸送ルート」に注釈をつけるように書けます

資源 マーケット輸送ルート

チョークポイント

潜水艦の活動に理想的な地形

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構造化例(5)

→ さらにもうひとつ気がつくことがありますね

構造化をすると新しい気づきも得やすくなります。資源・輸送ルート・マーケットの並びは、こう書いたほうが良いでしょう。

資源 消費

輸送ルート

加工

資源を採掘し、加工して製品を作り、それを消費する、という経済活動の3要素と輸送ルートという4つの面で東南アジアが重要な地域であることを、これで表現できます。(「加工」は「生産」や「製造」でも可)

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構造化例(6)

→ それはどこかというと・・・?

この範囲は東南アジア・南シナ海について語っています

資源 消費

輸送ルート

加工

さらにこの2ヶ所に別な地域を書くと、「東南アジア・南シナ海が日本にとって重要である」ということを、よりハッキリ表現できそうです

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構造化例(7)

→ 具体的には・・・?

資源 消費

輸送ルート

加工

要するに「日本と他の地域(特に中東産油国)」を結ぶ輸送ルートとしての意味もある、ということが、こう書けば明確になります。

他地域(特に中東)

日本

ただし、↑このままだと本題である「東南アジア・南シナ海」の印象が薄れてしまうので、それは補強します。

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構造化例(8)

→ チョークポイントと潜水艦の話を書き足して最終形を作ります

資源 消費加工

他地域(特に中東)

日本

東南アジア・南シナ海

経済圏として

輸送ルートとして

中央に「東南アジア・南シナ海」を大きなフォントで書き、上下の2面で2つの意味を表すようにする方法が一例です。(上下を2つの図に分けてしまってもかまいません)

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構造化例(9)

→ タイトルとメッセージをつけると?

資源 消費加工

他地域(特に中東)

日本

東南アジア・南シナ海

経済圏として

輸送ルートとして

潜水艦の活動に理想的な地形でチョークポイントになりやすい

図版の最終形はこれです。これに、タイトルとメッセージをつけます

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資源 消費加工

他地域(特に中東)

日本

東南アジア・南シナ海

経済圏として

輸送ルートとして

潜水艦の活動に理想的な地形でチョークポイントになりやすい

経済圏として、さらに輸送ルートとして、日本にとって重要な地域

東南アジア・南シナ海の2つの意味

→ ところで、残りの細かい情報はどうしましょう?

タイトルとメッセージをつけた最終形。原案と比べてみてください

細かい情報の処理(1)21

「残りの細かい情報」というのはこういうもの

→ さらに情報量について補足があります

・製造業の生産拠点→消費市場・2030 年には7 億人に増加することが予測されている。

・石油:367億8千万トン・天然ガス:7兆5500億立方メートル

・マラッカ海峡を通過する船舶の60%が中国船・輸入石油の70%が通過・米国がシンガポールのチャンギー基地駐屯権を取得済み・ベトナムカムラン湾を米空母拠点

・複雑で、平均水深は千二百十二メートル

情報量が少なければ図中に小さなフォントで追記し、多ければ参考資料として別紙にします。ただし、「少ない」かどうかは主観的に判断するしかありません。

情報量が多いのはダメ?(1)22

↑p7でこんなことを書きましたが・・・・

→ それは・・・・

・・・と思われるかもしれません。そこで、改めて考えてみてください。

説明しなければいけない情報量がどうしても多い

・・・といった条件が成り立つ場合には、20pt以下でも大きな問題にはなりません

「情報量が多いのはダメ」 だという本当の理由は何でしょうか?

いやいや、そんなこと言うけどやっぱり、20pt以下が必要なほど情報量多いのはダメでしょ

情報量が多いのはダメ? (2)23

通常の「プレゼンテーション」は、「自分が考えたことを人に伝える」手段なので、下記左のようになるのが理想です

→ 「情報量が多くなってしまう」ことの本当の意味は・・・・

よく調べる

とことん考え抜く

シンプルな論理の筋道が見つかる

短い言葉で伝わる

良いプレゼン

とりあえず調べてみる

あんまり考えてない

よくわからないので、調べたことを全部書いてみる

情報量が多すぎて伝わらない

ダメなプレゼン

情報量が多いのはダメ? (1)24

「スライドにいろいろ書きすぎてしまう」という場合のほとんどは、「よく考えてない」ことを意味する場合が多いもの。

→ 次ページへ

とりあえず調べてみる

あんまり考えてない

よくわからないので、調べたことを全部書いてみる

情報量が多すぎて伝わらない

ダメなプレゼン

もちろん、このパターンは絶対に禁物です。

しかし、実際には、「正しく伝えるためにはどうしても情報量を増やさざるを得ない」ということが「よく考えれば考えるほどわかってくる」というケースも存在します。

情報量が多いのはダメ? (1)25

したがって最初に戻りますが

どうしても必要である、と判断するのならば、16ptだろうが12ptだろうが断固として使ってください。スクリーンでは読めないのなら印刷して配ればよいだけです。

説明しなければいけない情報量がどうしても多い

・・・といった条件が成り立つ場合には、20pt以下でも大きな問題にはなりません

なお、「正しく理解してもらうためには情報量を増やさざるを得ないケース」については本書では省略します。興味のある方は別途ご質問ください。(お問い合わせ先は最終ページに記載)

まとめ

• とにかく字は大きくしよう– 最低20pt、できれば28pt以上が良い

– ただし、分かっていてあえて外すのは可

• 「構造」をしつこく探すこと– 分類してみる

– 真っ直ぐ並べてみる

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以上。

謝辞27

本書の事例は政策研究集団 Cubic Argument 様からご提供いただきました。この場で御礼申し上げます。

自ら生業を定め、社会へと歩み出し、そしてこれからの日本を支えていくこと。それが、私たち若者の果たすべき役割です。

とはいえ、若年の私たちには今すぐ社会で活躍できるほどの実力はなく、日本を導いていくに相応しい計画を携えているわけでもありません。しかし、「ない」ことを自覚しているからこそ、私たちはその必要性を痛切に感じています。それゆえ、私たち Cubic Argument は、「日本国がなすべきこととは何なのか」を、人の受け売りではなく自分たち自身で考えること、そしてそれを実現するための力を自ら養うことを目指しています。

Cubic Argument は、同世代の若者の連携を強化し、これからの日本を支えていくことを目指す団体です。

Cubic Argumentでは、活動のなかで採択された会全体の主張を基に、より具体的な目的や活動指針を盛り込んだ「Cubic Argument活動大綱」を定めていきます。そして、「日本国がなすべきこと」についての我々の意見を「Cubic Argument綱領」として定めることを目指していきます。

活動内容 ・テーマ別勉強会(月1、2回) ・政策提言会(12月) ・機関誌発行(6、12月) ・専門講座(原子力、軍事学、金融など)

HP http://cubic-argument.org/FB https://www.facebook.com/CubicArgument?fref=ts

【著者紹介】

→著者公式サイト http://ideacraft.jpお問合せ先: http://ideacraft.jp/cms/main-contact.html

技術屋のためのドキュメント相談所(誠ブログ)→ http://blogs.bizmakoto.jp/doc-consul/

開米 瑞浩 (カイマイ ミズヒロ)

元:IT技術者。現:ドキュメント・コンサルタント。

難解な情報を整理分析して論理構造を見抜き、「素人にも分かりやすく表現する」ことを得意とする。

技術者向けの「分かりやすく書く力」研修や、難解な技術文書のリライト業務コンサルティングを提供。

技術者向けおよび一般ビジネスパーソン向けの「書く技術、説明する技術」に関する著書多数。

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