ポリイソプレン( ) PIP ー70cis-1,4 ポリフッ化ビニリデン PVDF ー40...

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-1- 第1章 高分子の分子構造の概観 この章では、高分子鎖を分子構造などの視点から分類して、高分子の特徴を考える。 1-1 様々な高分子(高分子の分子構造の比較) 合成高分子 <ビニル系高分子> nCH =CHR -(CH -CHR) - ポリエチレン PE ポリプロピレン PP ポリイソブチレン PIB 用途: フィルム、シート、 パイプ、繊維、日用品雑貨、 様々な容器など。 ポリ塩化ビニル(PVC) ポリ塩化ビニリデン(PVDF) 用途:様々なパイプ 等、様々なフィル ム 靴底やブーツ 医療用バックやチュ ーブ、など。 ガスバリア性。 ポリフッ化ビニリデン(PVDF) ポリテトラフルオロエチレン(PEFE) 用途: 電気機器の構 造材料、機械加工材 料、など。 ポリ酢酸ビニル(PVAc) ポリビニルアルコール ポリビニル (PVA) イソブチルエーテル 用途: 主に、ビニロン原料として使われる。チューイインガムベース、接着剤、繊維糊 剤、紙加工、など。

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第1章 高分子の分子構造の概観この章では、高分子鎖を分子構造などの視点から分類して、高分子の特徴を考える。

1-1 様々な高分子(高分子の分子構造の比較)

合成高分子

<ビニル系高分子>nCH =CHR → -(CH -CHR) -2 2 n

( ) ( ) ( )ポリエチレン PE ポリプロピレン PP ポリイソブチレン PIB

用途: フィルム、シート、パイプ、繊維、日用品雑貨、様々な容器など。

ポリ塩化ビニル(PVC) ポリ塩化ビニリデン(PVDF)

用途:様々なパイプ等、様々なフィル、 、ム 靴底やブーツ

医療用バックやチューブ、など。ガスバリア性。

ポリフッ化ビニリデン(PVDF) ポリテトラフルオロエチレン(PEFE)

用途: 電気機器の構造材料、機械加工材料、など。

ポリ酢酸ビニル(PVAc)

ポリビニルアルコール ポリビニル(PVA) イソブチルエーテル

用途: 主に、ビニロン原料として使われる。チューイインガムベース、接着剤、繊維糊剤、紙加工、など。

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ポリアクリロニトリル(PAN) ポリメタアクリロニトリル(PMAN)

用途: 自動車及び電化製品のハウジング材料、など

ポリメタクリル酸メチル(PMMA)

ポリアクリル酸メチル(PMA)

( )ポリメタクリル酸エチル PEMA酢酸アリル

用途: 各種光学機器 シート材料 などの光、 、学分野、建材分野で使われている。

ポリスチレン(PS)用途: 板、様々な包装容器、電気製品の部品、など。

<ジエン系高分子>nCH =CHR → -(CH -CHR) - R:C=C基を含む2 2 n

ポリブタジエン( 1,4)(PBd) ポリイソプレン( 1,4 (PIP)cis- cis- )

<エ-テル系高分子(主鎖にヘテロ原子を含んだ高分子)>n(C H X) → -(C H -X-) -m 2m m 2m n

ポリオキシメチレン(POM) ポリオキシエチレン(POE)

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ポリ環状チオエーテル ポリジメチルシロキサン(PDMS)

用途: 高温、高湿下での電気絶縁材料。

( )ポリエーテルスルホン PESF

<縮合系エステル型高分子>nHOR OH+mHOOCR COOH → -OR OCOR CO-1 2 1 2

ポリラクトン ポリ環状無水物

ポリエチレンテレフタレート(PET)、 、用途: フェルト 工業用布

釣り糸 ロープ 漁網 様々、 、 、なテープなど。

ポリカーボネート(PC)用途: 電気絶縁材料、自動車部品、機械部品、ギヤー、写真フィルム、録音テープ、など。

<縮合系アミド型高分子>nH NR NH +mHOOCR COOH → -NHR ONHCOR CO-2 1 2 2 1 2

ナイロン6 ナイロン66

ポリ フェニレンイソフタラミド( )-m- Nomex

ポリ フェニレンテレフタラミド( )-p- Kevlar

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ポリピロメリットイミド(PPI)用途: 様々な繊維 衣料 漁、 、

、 、 、網 タイヤコード 釣り糸ブラシ ガット ベアリン、 、グ ギヤー ケース 電線被、 、 、覆 瓶類 印刷用活字 自動、 、 、車部品 電気部品 建築部、 、品、繊維機械部品、など。

天然高分子系

<多糖類>

セルロ-ス

セルローストリアセテート( ( ) )Cellulose OAc 3

<蛋白質類>

蛋白質

<核酸類>

DNA

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表1-1 主な高分子のガラス転移温度(T )と融点(T )g m

高分子 略号 Tg(℃) Tm(℃)

ポリジメチルシロキサン PDMS ー123ポリブタジエン( ) PBd ー102cis-1,4ポリオキシメチレン POM ー82 181

ポリイソプレン( ) PIP ー70cis-1,4ポリイソブチレン PIB ー70ポリオキシエチレン POE ー65 65ポリフッ化ビニリデン PVDF ー40

ポリエチレン PE ー30 ( ) 140-125ポリ塩化ビニリデン PVDC ー18ポリプロピレン PP ー10 180

ポリアクリル酸メチル PMA 6ポリ酢酸ビニル PVAc 28ナイロン6 50 228ナイロン66 60 265

ポリメタクリル酸エチル PEMA 65ポリエチレンテレフタレート PET 70 270

ポリ塩化ビニル PVC 80 273ポリビニルアルコール PVA 85 270

ポリスチレン PS 100 250ポリアクリロニトリル PAN 105 330セルローストリアセテート 115 310ポリメタクリル酸メチル PMMA 115

ポリテトラフルオロエチレン PTFE 126 ( ) 330-80ポリカーボネート PC 150 270ポリエーテルスルホン PESF 225

ポリ フェニレンイソフタラミド Nomex 250 430-m-ポリピロメリットイミド PPI 410

ポリ フェニレンテレフタラミド Kevlar 520 600-p-

<分子構造と高分子の性質の概観>

上記の様々な合成高分子の分子構造と用途を見比べ 且つ ガラス転移温度 T をみ、 、 ( )gると、以下のような概観が見えてくる。(1)一般の合成高分子では、ビニル系、ジエン系、エーテル系(主鎖にヘテロ原子を含

)、 、 、 、 、 。む エステル系 アミド系 など 分子構造に基づいて 分類することができる(2)ビニル系高分子(-(CH -CHR) -)の場合、残基により、以下の性質が現2 n

れる。(A)R基がバルキ-になると、結晶性が弱くなり、透明性が増大し、Tgも上がる。(B)R基にハロゲン原子を導入すると、高分子鎖が堅くなり、Tgが上がる。

(3)主鎖に酸素原子などのヘテロ原子を導入すると、水溶性が増す。(4)縮合系エステル及びアミドは、主鎖が剛直となり、Tgが上がる。特に、アミドや

イミドでは、耐熱性高分子になる。

1-2 分子量とその分布 (分子量分布という概念)

<分子量分布>モノマ-が逐次重合或いは付加重合で高分子になる時、本質的に単一の分子量にはなら

ない。即ち、分子量分布を持つ高分子が生成する。例えば、R → R-R → R-R-R → R-R-・・・・・-R-Rを考える

と、官能基がどれだけ反応したかを表す反応度をpとして、重合度xの高分子が生成する確率をP とすると、次式となる。x

(1-2)ここで、数平均重合度x は次式となり、n

Px=(1-p)px-1

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(1-3)

ここで、W をx量体の重さとすると、重合度xの分子量はM=M xであるので、重量平x 0

均重合度x とw は、次式となる。w x

(1-4)

(1-5)従って (1-5)式を(1-4)式に代入して (1-3)式に当てはめれば、分子量分、 、布に関する関係が求まる。

(1-6)

(1-7)即ち、反応が完全に進む(p=1)と、x /x =2となる。つまり、段階的に反応が進w n

む縮合重合が完全に終わった状態では、高分子の重合度分布は、2となるのである。付加重合も同様に生成した高分子には分子量分布が存在する このような分子量分布をx /x。 w

=1にするような方法として リビング重合など特殊な条件下で重合させる方法が開発さn 、れた。

<平均分子量>高分子の分子量は重合度と繰り返し単位の分子量の積として表すことができる。上述し

たように高分子は1本1本が同じ分子量ではなく、分子量に分布があるので、平均分子量で表す。いま、分子量M の分子がN 個あるとすると、N M =W は分子量M の分子のi i i i i i

重量を表す。数平均分子量M は、次式となり、n

(1-8)

重量平均分子量M は、重量分率による分子量の平均であるから、次式となり、w

(1-9)

Z平均分子量は、次式となる。

(1-10)

表1-2 高分子の分子量測定法

測定法 平均分子量

沸点上昇(束一的) 平均のM が求まる。n

凝固点降下(束一的) 平均のM が求まる。n

浸透圧(束一的) 平均のM が求まる。n

粘度法 平均のM が求まる。v

光散乱法 平均のM が求まる。w

、 、 。GPC法 平均のM とM が 更に 分子量分布が同時に求まるn w

xn=最初の系中にあった分子数

系中のの分子数=1-p1

xw=WxxWx

Wx=M0x 1-p px-1

Xw=M0x2 1-p px-1

M0x 1-p px-1=1+p1-p

xwxn=1+p

Mn=系中の分子数

系の全重量=NiMi

Ni

=Wi

Mi

Wi

Mw=NiMi

NiMi

=MiWi

Wi

MZ=NiMi

NiMi2 =

Mi2Wi

MiWi

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1-3 繰り返し単位の配列(高分子の一次構造)

<立体配置と立体配座の定義>立体配置( ):configration分子鎖に沿ったモノマ-単位間の共有結合の様式を高分子の立体配置という.

立体配座( ):conformation結合ボンドの周りに部分鎖が回転することによって,互いに移り変わることのできるモ

ノマ-単位の空間的な配置を立体配座という.

<高分子の立体配置>

(1)頭-頭結合と頭-尾結合ビニル系高分子head-head CHR=CH CHR=CH -CHR-CH -CHR-CH -(頭-頭結合) + →2 2 2 2

head-tail CH =CHR CHR=CH -CH -CHR-CHR-CH -(頭-尾結合) + →2 2 2 2

どちらかの結合が実現すると,置換基がどのように回転してももう一方の様式に移り変わることができない.いずれの結合様式が実現するかは,置換基の電気的性質や立体障害などにより規制されている (ポリ塩化ビニル:99%頭-尾結合).

(2)幾何異性体高分子主鎖に多重結合を含む高分子(ポリブタジエン)

幾何異性体は高分子の集合体としての凝集状態に影響を与える。シス型 →多くの分子を規則的に束ねることが困難→ゴム状態トランス型→多くの分子を規則的に束ねることが容易→結晶状態

(3)立体規則性2種以上の異なる置換基が結合している炭素を主鎖に持つ高分子において,その主鎖上

の炭素原子は結合している両側の主鎖の鎖の長さが異なるので4つの結合手に全て異なる原子団のついた不斉炭素と見なすことができる.

-CH -C HR-2*

アイソタクチック :R基が平面に関して片方のみに結合した高分子

シンジオタクチック:R基が交互に両方向に結合した高分子

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アタクチック :R基が両側に不規則に結合した高分子

立体規則性は鎖の空間パッキングに影響を与えるので,高分子凝集体の構造や物性に反映する.アイソタクチック・ポリスチレン → 結晶性アタクチック・ポリスチチレン → 側鎖基の出方が出鱈目 → 非晶質

ジアド: 隣合う2つのR基の対トリアド:隣合う3つのR基の対dd対 :アイソタクチック・ジアド(i)dl対 :シンジオタクチック・ジアド(s)

ddd対:アイソタクチック・トリアド(I)dld対:シンジオタクチック・トリアド(S)ddl対:アタクチック・トリアド(H)

<高分子の立体配座>ブタン(CH -CH -CH -CH )の立体配座3 2 2 3

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<共重合体>共重合体:2種以上のモノマ-単位からなる高分子

2元共重合体交互共重合体 ( ) ABABABABABA・・poly A-alt-B周期的共重合体 ( ) AAABBAAABB・・・poly A-per-Bランダム共重合体 ( ) ABBAAABAABA・・poly A-ran-Bブロック共重合体 ( ) ( ) AAAAAAABBBB・・poly A -block-poly B

連鎖数( )run number連鎖:同一モノマ-の連なり連鎖数 R :R=任意の100個の連続し( )たモノマ-中にある連鎖の数の平均値

例:・・・A-BB-AAA-B-AA-B-A-BB-A-B・・・

モノマ-数:15 連鎖の数:10R=10×100/15=66.6・・

A%がAモノマ-から成る共重合体の上で、100個の連続したモノマ-単位を考える。

定義より,A連鎖の数=B連鎖の数=AB%=BA%

=R/2

( ) 、そこでP B をAの隣りにBがある確率A

などとすると,AB結合の数はAB%=A%P (B)=B%P (A)=R/2 (1-11)A B

同様に、AA%=A%P (A)=A%(1-P (B )=A%-R/2 (1-12)A A )

BB%=B%-R/2 (1-13)AA結合が起こらない:R=2A% (1-14)

BB結合が起こらない:R=2B%=2(100-A%) (1-15)完全にランダム : ( ) ( ) より,P B =B%/100, P A =A%/100A B

R=2A%B%/100 (1-16)

1-4 枝分かれ構造と網目構造 (高分子の高次構造)

<非線状高分子>環状高分子:両端が閉じた高分子分岐高分子:枝分かれのある高分子星型高分子:一つの中心から3本以上の枝が出ている高分子爆裂星型櫛型高分子:一本の幹に枝が複数ついた高分子樹木型高分子:不規則に枝分かれした高分子統計的分岐高分子ゲル(3次元ネットワ-ク :)

多官能性モノマ-単位の縮合重合を進めていくと 樹状や網目状の高分子が成長し つ、 、いには反応系中に非溶解性の3次元的につながった分子構造物が生成される。

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<ゲル(3次元ネットワ-ク)>

ゲルのイメ-ジの概観

ゲルの構造による分類