11

対対 LDCLDC 援助モダリティと援助モダリティと公共部門改革公共部門改革--　公共財政管理を中心に　　公共財政管理を中心に　 --

国際協力機構国際協力機構国際協力総合研修所国際協力総合研修所国際協力専門員　大塚　二郎国際協力専門員　大塚　二郎

22

はじめに：より良い議論のためにはじめに：より良い議論のために Chatam House RuleChatam House Rule

“Participants are free to use the information received, but neither the Identity nor the affiliation of the speaker(s), nor that of any other participant, may be revealed".

Wilton Park Conferences CentreWilton Park Conferences Centre““participants aren't taking part in a negotiation - they represent thparticipants aren't taking part in a negotiation - they represent th

emselves not their institution”.emselves not their institution”.

33

国際援助新潮流の里程標国際援助新潮流の里程標 19951995年コペンハーゲン社会開発サミット年コペンハーゲン社会開発サミット 19961996年年 OECD / DACOECD / DAC国際新開発戦略国際新開発戦略 19961996年年 HIPCsHIPCsイニシアティブイニシアティブ 19981998年世銀年世銀 CDFCDF 19991999年ケルン・サミットで拡大年ケルン・サミットで拡大 HIPCsHIPCsイニシアティブ合意イニシアティブ合意 同年同年 PRSPPRSP体制発足体制発足 20002000年年 MDGsMDGs採択採択 20012001年年WTOWTOカタール宣言カタール宣言 20022002年年 NEPADNEPAD発足発足 同年モントレー世界資金サミット同年モントレー世界資金サミット

44

新潮流のインプリケーション新潮流のインプリケーション 構造調整よりも貧困削減を優先構造調整よりも貧困削減を優先 開発援助の重点を開発援助の重点を LDCLDC（とりわけアフリカ）に（とりわけアフリカ）に 途上国のオーナーシップを重視（途上国のオーナーシップを重視（ Driver’s SeatDriver’s Seat ））→→構造調整がモラルハザードを生んだことへの反省。構造調整がモラルハザードを生んだことへの反省。したがって「きれいごと」ではないしたがって「きれいごと」ではない マルチ、バイの双方にわたる連携、協調の重視マルチ、バイの双方にわたる連携、協調の重視 これらを実質的に担保するフレームワークを国際これらを実質的に担保するフレームワークを国際的に形成（→的に形成（→ PRSPPRSP））

55

新潮流の背景新潮流の背景 19801980年代の構造調整貸付が所期の成果を上げずに終わった年代の構造調整貸付が所期の成果を上げずに終わった 「援助疲れ」と冷戦終了による東西援助競争消失により「援助疲れ」と冷戦終了による東西援助競争消失により

ODAODAのリソースフロー減少がのリソースフロー減少が LDCLDCに集中に集中19901990年年 19991999年年

DACDAC全体全体 38,69038,690 37,86037,860DAC(DAC(対対 LDC)LDC) 9,300 9,300 6,830 6,830DAC+DAC+マルチマルチ ((対対 LDC)LDC) 16,01016,010 11,79011,790（ディスバースベース　単位百万ドル）（ディスバースベース　単位百万ドル）

その結果、その結果、 LDCLDCの経済破綻と貧困増大がの経済破綻と貧困増大が 9090年代後半には、年代後半には、一層あからさまとなった。リソースの増大に限界がある以一層あからさまとなった。リソースの増大に限界がある以上、援助効率向上が重視されるようになるのは論理的必然上、援助効率向上が重視されるようになるのは論理的必然 その典型的なマニフェストは世銀レポートのその典型的なマニフェストは世銀レポートの Assessing Aid Assessing Aid

(1998)(1998)

66

構造調整の教訓構造調整の教訓 多くのコンディショナリティにより、オーナーシップは低多くのコンディショナリティにより、オーナーシップは低下（→下（→ Driver’s SeatDriver’s Seat））

改革による経済困難→政治的不安→一層の政治的指導力低改革による経済困難→政治的不安→一層の政治的指導力低下→経済停滞長期化の下→経済停滞長期化の vicious cyclevicious cycle（→貧困削減重視）（→貧困削減重視）

経済破綻によって債務が返済不能なほど増大（→経済破綻によって債務が返済不能なほど増大（→ HIPCsHIPCsイイニシアティブ）ニシアティブ）

客観的に見るなら、開発援助は「内政介入」となるのが宿客観的に見るなら、開発援助は「内政介入」となるのが宿命。本来、その道義的負い目を双方が共有することで、開命。本来、その道義的負い目を双方が共有することで、開発効果が促進されるもの。主権尊重としてのオーナーシッ発効果が促進されるもの。主権尊重としてのオーナーシップと、効果的な内政介入を両立させる必要性（→プと、効果的な内政介入を両立させる必要性（→ PRSPPRSP））

77

国際開発援助改革の主要アジェンダ国際開発援助改革の主要アジェンダと現実のイニシアティブと現実のイニシアティブA. A. 途上国のオーナーシップ強化途上国のオーナーシップ強化B. B. 開発戦略に関する開発戦略に関する holistic approachholistic approach 強化強化C. C. 途上国の途上国の transaction costtransaction cost 削減削減

A+B = SIPA+B = SIPからから SWAPsSWAPs、そして、そして PRSPPRSPへへB+C = HarmonizationB+C = Harmonization 、さらに、さらに AlignmentAlignmentへへ

88

財政管理が注目される背景 財政管理が注目される背景 11 外為変動相場制が普及し、短期の国際収支混乱が外為変動相場制が普及し、短期の国際収支混乱が減少→減少→ BOPBOP 支援の必要性が低下支援の必要性が低下 経済成長と貧困削減を進めるために必要な公共支経済成長と貧困削減を進めるために必要な公共支出へ焦点が移る出へ焦点が移る これと同時に、開発援助の効率を低下させるものこれと同時に、開発援助の効率を低下させるものとして従来から問題視されていたファンジビリテとして従来から問題視されていたファンジビリティに、援助効率向上のため正面から取り組む必要ィに、援助効率向上のため正面から取り組む必要性を認識性を認識

99

象徴的な誤訳象徴的な誤訳 前記世銀レポート前記世銀レポート Assessing AidAssessing Aid の邦訳ではファンジビリの邦訳ではファンジビリティを「資金の流用可能性」と翻訳している。これは我がティを「資金の流用可能性」と翻訳している。これは我が国におけるファンジビリティへの理解不足を示す点で実に国におけるファンジビリティへの理解不足を示す点で実に象徴的な誤訳象徴的な誤訳 もし流用が問題ならば、もし流用が問題ならば、 In-kindIn-kind型援助、イアマーク、支型援助、イアマーク、支出証憑検査などで対応可能出証憑検査などで対応可能 しかし、ファンジビリティと流用は全く異なる概念しかし、ファンジビリティと流用は全く異なる概念 流用とは流用とは本来の資金使途には充当せず、他の使途に充てる本来の資金使途には充当せず、他の使途に充てることこと ファンジビリティとはファンジビリティとは本来の資金使途に充当し、その結果本来の資金使途に充当し、その結果浮いた自前の財源で、開発目的外の支出を増やすこと浮いた自前の財源で、開発目的外の支出を増やすこと In-kindIn-kind型援助、イアマーク、支出証憑検査などがほとんど型援助、イアマーク、支出証憑検査などがほとんど無意味なのは明らか無意味なのは明らか

1010

ファンジビリティの本質ファンジビリティの本質 広く言えば、ファンジビリティとは援助資金の流入により当初の予算広く言えば、ファンジビリティとは援助資金の流入により当初の予算制約が変化し、目的外の公共支出が増加すること制約が変化し、目的外の公共支出が増加すること 根本的にはドナーにとって、援助相手国の多元的な予算制約の全貌を根本的にはドナーにとって、援助相手国の多元的な予算制約の全貌を事前に掌握することは実質的に不可能であることによる。また予算を事前に掌握することは実質的に不可能であることによる。また予算を経常予算と開発予算に分けたところで、この区分けをドナーがレビュ経常予算と開発予算に分けたところで、この区分けをドナーがレビューできなければ大した意味はないーできなければ大した意味はない 主権事項である財政運用にドナーが深く介入することは、オーナーシ主権事項である財政運用にドナーが深く介入することは、オーナーシップ尊重と背反ップ尊重と背反 PRSPPRSP の画期的な点は、この両立を可能としたことの画期的な点は、この両立を可能としたこと→→開発に要する公共支出計画の全貌がドナー側にも掌握可能開発に要する公共支出計画の全貌がドナー側にも掌握可能→→開発目的外の公共支出増大の余地は限定開発目的外の公共支出増大の余地は限定→→同じリソース量なら開発効果は明らかに向上（同じリソース量なら開発効果は明らかに向上（ 2020 ～～ 3030 ％と推計）％と推計）

1111

財政管理が必要とされる背景２財政管理が必要とされる背景２

国家運営の基本援助の文脈財政支援ファンジビリティオーナーシップ

達成主義予算外予算 ×中期予算ｱｶｳﾝﾀﾋﾞﾘﾃｨ

・財政支援を行うために財政管理が必要なのか？・財政管理は単体でも必要なのか？　　　　　　　　→答えはいずれも Yes

1212

財政支援の有効性財政支援の有効性 援助資金を途上国のシステム（優先順位付け、行政・議会援助資金を途上国のシステム（優先順位付け、行政・議会のプロセス、アカウンタビリティシステム）と開発戦略ののプロセス、アカウンタビリティシステム）と開発戦略のプライオリティに融合することができるプライオリティに融合することができる ファンジビリティを開発目的内部に閉じ込めることで、リファンジビリティを開発目的内部に閉じ込めることで、リソース利用のフレキシビリティは高まるソース利用のフレキシビリティは高まる 途上国政府・実施機関が地方財政や支出のプロセスの健全途上国政府・実施機関が地方財政や支出のプロセスの健全性と透明性に注意を払わざるを得なくなり、またドナーも性と透明性に注意を払わざるを得なくなり、またドナーも健全で透明なシステムづくりを支援することにインセンテ健全で透明なシステムづくりを支援することにインセンティブを持つことになるので、公共支出全体の管理能力が向ィブを持つことになるので、公共支出全体の管理能力が向上し、汚職の削減につながる上し、汚職の削減につながる 長期のコミットメントを伴うことにより、リソースフロー長期のコミットメントを伴うことにより、リソースフローの予測性が向上するの予測性が向上する 援助資金取り扱いに伴う援助資金取り扱いに伴う transaction costtransaction cost は（おそらく）低は（おそらく）低下する下する

1313

援助モダリティの比較優位（１）援助モダリティの比較優位（１）構 造 調 整支援 国際収支赤字に陥った途上国に足の速い援助（ QDA）が可能

国際収支は改善したがセクターレベルでの改革課題を抱える国には対応できない

一 般 財 政支援 途上国のオーナーシップ・財政管理能力改善を促進 途上国側にある程度の財政管理能力が必要　 資金のイヤーマークがないため援助国はアカウンタビリティ確保が困難

　 売り 弱み

　 マクロ政策改革を促進 途上国側に政策改革のオーナーシップが低ければ改革の持続性・執行は芳しくない

　 （一般財政支援では PRSPを通した援助国・途上国間での合意が前提となる）援助国・途上国で歳出規模・支出の優先順位に合意が必要。

1414

援助モダリティの比較優位（２）援助モダリティの比較優位（２）セクター財政支援 途上国のオーナーシップ・セクター管理能力改善を促進 援助国・途上国間でセクター政策・投資の優先順位に合意が必要。

プロジェクト支援 プロジェクト実施を通じて途上国の能力構築を促進 プロジェクト間・援助国間の調整がしばしば不十分　 事業の監理・アカウンタビリティの確保が容易 ファンジビリティの視点からは結局財政支援をしているのと変わらない　   政策策定・運営能力が不足し援助依存が高い途上国では援助国の供与するプロジェクトの集合体が結果としてその国の開発（セクター計画）となり、一貫性に欠ける。援助国手続きの共通化がなければ途上国の事務負担が大きい。　   援助国主導の場合途上国の能力開発・オーナーシップを阻害

　 セクターの一貫性が保てる 　

　 　 プロジェクトの効果がセクター・マクロレベルまで波及しない恐れ。

1515

現状での課題と問題点現状での課題と問題点 途上国側における一般財政支援適用の基準となるクライテリア途上国側における一般財政支援適用の基準となるクライテリアが未整備。公共財政管理の現状を診断するツールが乱立し、統が未整備。公共財政管理の現状を診断するツールが乱立し、統一的スタンダードが未確立（これを整備するものとして、多国一的スタンダードが未確立（これを整備するものとして、多国間フォーラムの間フォーラムの PEFAPEFAが発足）が発足） また、国際援助のアカウンタビリティの在り方も変革が必要にまた、国際援助のアカウンタビリティの在り方も変革が必要になる。ドナー側の意識改革が求められる（なる。ドナー側の意識改革が求められる（「顔が見え」れば、「顔が見え」れば、援助効果は二の次なのか？援助効果は二の次なのか？）） さらに、国ごとの開発段階や状況によって、財政支援の果たすさらに、国ごとの開発段階や状況によって、財政支援の果たす役割は当然異なってくる。開発課題によっては、例えば大規模役割は当然異なってくる。開発課題によっては、例えば大規模インフラのようにプロジェクト型援助の方が適切なものもあるインフラのようにプロジェクト型援助の方が適切なものもある 最後に、財政支援の事後評価手法は未だ確立したものではない。最後に、財政支援の事後評価手法は未だ確立したものではない。財政支援の目的はその国の経済開発、したがって財政支援の目的はその国の経済開発、したがって評価の対象は評価の対象はその国の開発を多面的に評価することその国の開発を多面的に評価すること。容易なことではない。容易なことではない

1616

予算管理と財政管理診断ツール予算管理と財政管理診断ツール予算

Preparation

CPAR

CFAA

PER

CPAR

政策 監査 報告 執行 策定

　　　　　PEFA　　　　　 PEFA

1717

途上国での公共支出管理を進める途上国での公共支出管理を進める欧州援助国の背景欧州援助国の背景 OECDOECD諸国を中心とした行財政改革の進展諸国を中心とした行財政改革の進展→→Value for MoneyValue for Money （（ VFM)VFM)等、アカウンタビリティ等、アカウンタビリティの側面で国内に説明可能であることが求められるの側面で国内に説明可能であることが求められる→→ユーロ統合に伴うユーロ統合に伴う EUEU諸国の財政改革への高まり諸国の財政改革への高まりと複数年度予算の導入と複数年度予算の導入→→多年度のコミットメントはほとんどの国で既に制多年度のコミットメントはほとんどの国で既に制度上は可能となっている度上は可能となっている

1818

各国別中期支出枠組へのコミット各国別中期支出枠組へのコミット•DenmDenm •IrelanIrelan

dd•DutchDutch •NorwNorw •SwedSwed •UKUK •Ger.Ger.

•予算予算年年 •1/11/1 ～～12/3112/31

•1/11/1 ～～12/3112/31

•1/11/1 ～～12/3112/31

•1/11/1 ～～12/3112/31

•1/11/1 ～～12/3112/31

•1/11/1 ～～12/3112/31

•1/11/1 ～～12/3112/31

•発生主義発生主義へ移行へ移行 •中期中期的的 •中期中期的的 •22 年年 •中期中期的的 •中期中期的的 •即即 •中期中期的的•多年多年度配分度配分 •１１ •３３ •３＋３＋ •３３ •３３ •３３ •３３•議会／議会／内閣の内閣の承認承認

•○○ •×× •×× •×× •×× •×× •○○

1919

結論結論 PRSPPRSPをベースとして、対をベースとして、対 LDCLDCの援助は一般財政の援助は一般財政支援に向けて、かなり強固な基礎を持つに到った。支援に向けて、かなり強固な基礎を持つに到った。この流れは、我が国のスタンスに関係なく進んでこの流れは、我が国のスタンスに関係なく進んでいくことは間違いないいくことは間違いない VisibilityVisibility に固執するだけでは、我が国に固執するだけでは、我が国 ODAODAの国際の国際的評価は低下し（→的評価は低下し（→ Foreign PolicyForeign Policy 誌ランキング）、誌ランキング）、いずれは援助相手国からも見限られるおそれいずれは援助相手国からも見限られるおそれ 求められるのは、求められるのは、 constructive engagementconstructive engagement によって、によって、その適用基準を明確にすること、また公共財政管その適用基準を明確にすること、また公共財政管理能力向上のためのキャパシティビルディングを理能力向上のためのキャパシティビルディングを推進すること推進すること

2020

補論：ベストミックス論の効用と限界補論：ベストミックス論の効用と限界 いわゆるベストミックス論は、それ自体根拠のある真っ当いわゆるベストミックス論は、それ自体根拠のある真っ当な主張であり、あまり多くの議論を呼ぶものではないな主張であり、あまり多くの議論を呼ぶものではない

例えば大型インフラ案件などは、プロジェクト型援助の方例えば大型インフラ案件などは、プロジェクト型援助の方が効率性が高い事は殆どのドナーが認めるところが効率性が高い事は殆どのドナーが認めるところ

しかし、しかし、 HIPCsHIPCs向けの円借款を国内的事情から封印してい向けの円借款を国内的事情から封印している我が国としては、これに依拠するのも限界ありる我が国としては、これに依拠するのも限界あり

また、ベストミックスを国際的に主張するならば、「何がまた、ベストミックスを国際的に主張するならば、「何がベストなのか」という点に関するクライテリアを敷衍するベストなのか」という点に関するクライテリアを敷衍する義務があった筈。これを怠るならば、基本的に義務があった筈。これを怠るならば、基本的に Status QuoStatus Quoのロジックと見做されても止むを得ないのロジックと見做されても止むを得ない

そうこうしている内に、世銀は１年前に世銀版ベストミッそうこうしている内に、世銀は１年前に世銀版ベストミックスを開示クスを開示

2121

Emerging Partnership Model: Emerging Partnership Model: Forms of Support Forms of Support (excluding Post Conflict)(excluding Post Conflict)

PRSCCore econ policy

Health

Education

Other

Low High

CDD & Social Funds (includes responses to shocks)

Health projects Health SWAP

Projects (infrastructure, agriculture, rural, etc.)

Other (PSD, finance,ag., etc)

Economic TA Economic Capacity bldg

HIV/AIDS MAP

Stacked Segments

TA Capacity building facility

IDA rating

Adjustment (shocks only)

Education projects Education SWAPS