グローバル ERP ベンダーの日本における 特許出願 … and Oracle commits to Japan...

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平成 25 年度プロジェクトレポート グローバル ERP ベンダーの日本における 特許出願戦略に関する考察 東京工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科 技術経営専攻 指導教員 田中 義敏 学生番号 12M45090 氏名 萱野 康親

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平成 25年度プロジェクトレポート

グローバル ERPベンダーの日本における

特許出願戦略に関する考察

東京工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科

技術経営専攻

指導教員 田中 義敏

学生番号 12M45090

氏名 萱野 康親

2

要旨

本研究では、グローバル企業が日本へ進出する際に本国で開発した技術と現地で開発し

た技術を特許として権利化する際に、これらの技術を区別しているかどうかを明らかにす

るために、日本市場における外資系 ERP(Enterprise Resource Planning)パッケージソフト

ウェアベンダー2社(SAP及び Oracle)の特許出願に着目した。研究開発の成果として特許

出願が行われるが、日本特許庁へ出願された特許の内、PCT出願及びパリ条約に基づく国

際出願を他国発明(日本以外での発明)とし、直接出願を国内発明(日本での発明)とし

て区分した。また、両者間の IPC(国際特許分類)比較及び製品群で区分したカテゴリー

分類と ERPの個別機能に着目したモジュール分類を抽出することにより、SAPと Oracle

の得意とする技術分野及び ERP機能群の比較を行った。

IPC比較の結果、両社は類似する技術分野を得意としながらも競合他社よりも注力する

分野は各社異なることが見て取れた。また、カテゴリー及びモジュール分類・比較から、

SAPはアプリケーション分野では Oracleに対して優位を築いているものの、Oracleはデ

ータベース分野とネットワーク分野に優位性があり、SAPに対してはアプリケーション分

野で対抗するというよりもデータベース、アプリケーション、ユーザ・インターフェイス、

ネットワークの統合によって競争力をたかめていること、そして両社ともに国内発明の方

が他国発明よりも ERPモジュールに関する出願割合が多いために、日本市場向けとして開

発・特許出願されたモジュールがあることが明らかにされた。そして、PCTルートとパリ

ルート及び直接出願の件数の差及び拒絶査定後の対応の違いから、Oracleは本国発明を

PCT出願による進出先国での権利化を強く推し進めるが、それ以外の発明に関してはあま

り権利化に積極的ではなく、特に日本国内発明は重要視していないという傾向がみられた。

本研究の結果、SAPは本国での基板技術の研究開発に加えて、日本での現地開発を行い

ローカリゼーションに注力していること、並びに Oracleは本国で開発した技術を日本にお

いても適用するグローバリゼーションを重視していると考えられる。外資系ソフトウェア

ベンダーの中でも、ドイツ企業 SAPと米企業 Oracleは特許出願に関して両社は異なる特

許出願戦略を採用していることが本研究の結果明らかにされた。

I

3

Study of Patent Application Strategy by Global ERP Vendors in Japan

Yasuchika Kayano

Department of Management of technology

Graduate School of Innovation Management, Tokyo Institute of Technology

Abstract

This study focuses on top 2 ERP(Enterprise Resource Planning) software vendors’

(SAP and Oracle) patent applications in Japan for the sake of disclosing their strategy

of acquiring rights which are developed by their research in their own country as well as

the abroad. As a general matter, patent application is conducted as the outcome of

research and development. The method of classifying is that the among all the patent

which are applied to Japan Patent Office, PCT application and any other international

patent which are based on Paris Treaty are defined as a foreign invention (Invention

outside Japan) and the direct application is so-called a domestic invention(Invention

inside Japan). The way of understanding each vendor’s field of expertise, is the

comparison of both of their research field which must be categorized as a product

line-up and ERP must be abstracted by its individual function module.

In the IPC comparison result is both companies have similar favorite technical

background, but focus on integration of database, application, user interface and

networking, and domestic inventions by both are much than foreign inventions so that

some of modules are invented and patent applied for Japan market. From the

comparison of PCT route, Paris route and direct application and the disparity of counter

actin for final rejection, Oracle pushes on patent rights acquisition by PCT route

application which is invented in foreign country and is passive for domestic inventions.

The result of this study shows that SAP commits to Japan market by additional

development in Japan in addition to generic research and development in the home

country, and Oracle commits to Japan by diffusion of technology which is developed in

US. Two foreign capital companies, SAP form Germany and Oracle from US, adopt

different patent application strategies.

II

4

内容

第 1章 序論 .......................................................................................................................... 5

1.1 ERPの概念と技術の変遷 ........................................................................................... 5

1.2 市場と競合 ................................................................................................................. 9

1.3 調査目的 ................................................................................................................... 12

(1)出願件数及び IPC ................................................................................................ 13

(2)出願内容のカテゴリー分類及びモジュール分類 ................................................. 13

(3)国内発明と他国発明の比較 .................................................................................. 13

1.4 先行研究 ................................................................................................................... 14

(1)ソフトウェアに関する研究 .................................................................................. 14

(2)特許出願に関する研究 ......................................................................................... 15

(3)SAP、Oracleに関する知的財産動向 .................................................................. 16

第 2章 調査手法 ................................................................................................................. 21

2.1 特許検索方法 ............................................................................................................ 21

第 3章 結果及び考察 ......................................................................................................... 22

3.1 IPC比較 ................................................................................................................... 22

3.2 カテゴリー分類・比較 ............................................................................................. 24

3.3 モジュール分類・比較 ............................................................................................. 26

3.4 他国発明と国内発明 ................................................................................................. 29

3.4.1 出願件数比率 ....................................................................................................... 30

3.4.2 特許査定比率 ....................................................................................................... 33

3.5 結果の考察 ............................................................................................................... 36

第 4章 まとめと今後の課題 .............................................................................................. 38

4.1 まとめ ....................................................................................................................... 38

4.2 今後の課題 ............................................................................................................... 39

5

第 1章 序論

1.1 ERPの概念と技術の変遷

本研究では、外資系企業が日本へ進出する際に本国で開発した技術と現地で開発した技

術を特許として権利化する際に、これらの技術を区別しているかどうかを明らかにするた

めに、日本市場における ERP(Enterprise Resource Planning:ERP)パッケージソフトウ

ェアベンダーの特許出願に着目する。IT の力が今日の企業経営の根幹を支えていることは

論を俟たないが、中でも ERPが経営の効率化の一翼を担ってきた。日本で主流である個別

のシステム開発は、企業ごとの要望に適したシステムの構築が可能である一方で、設計か

ら導入までに長い期間と多くの人員コストを必要とする。翻って ERPはパッケージソフト

ウェアであり、一般業務に関する汎用的なシステムを網羅しているため追加開発のコスト

が少なく済むというメリットがある。ERP を日本語にすると「企業資源計画」または「統

合基幹業務システム」などと呼ばれ、ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源をリアル

タイムで統合して効率化を達成できることが最大の特徴である。

本研究における ERP の定義とは、「経営資源を効率良く運用し、無駄を省くことで企業

としての強固な基盤を作ることを目的とする経営概念及びそれを実現するためのパッケー

ジソフトウェア」であり、特に断りの無い場合は ERPとは後者のパッケージソフトウェア

のことを指すこととする1。

ERPという概念は 1960年代の資材所要量計画(Material Requirements Planning: MRP)

という技法に端を発する2。MRPは部品表と基準生産計画表をもとに資材の所要量を求め、

資材の発注、納入、出庫をコントロールするシステムのことであり、換言すれば製品の生

産工程で必要なモノを管理する手法である。その後、実際の工程ごとの生産計画を目的と

する能力所要量計画(Capacity Requirements Planning: CRP)や生産能力計画、人員計

画、物流計画までの一連のバリューチェーンをカバーする製造資源計画(Manufacturing

Resource Planning: MRP II)への発展を経た。MRPからMRP IIまでの変遷過程におい

て、最初は資材調達を原初として製造工程マネジメントそして調達から出荷までの商流全

体をシステム化することが可能となった。1990 年代になり、メインフレームからオープン

システムに移行が進んだことによりシステムを刷新するニーズが現れると同時期に企業全

体の資源配分を統括して計画する ERP が誕生した。換言すれば、MRP 誕生時のモノの動

きを効率化するという考えからモノやヒトへと管理対象を広げ、最終的には企業が所有す

る経営資源全てを管理するという考えへと広がっていった(図 1)。

6

図 1.日米での経営資源管理計画法の変遷

(出典:特許庁 「サプライチェーン・マネジメントに関する技術動向調査」)

今日では、ERPは企業の経営資源の管理と業務の効率化に欠かせない存在となっており、

その機能は多岐にわたる。図 2で示されるように ERPは機能ごとに独立したシステムを構

築していると共に他のシステムと有機的に結びつく構造となっている3。結果として、各業

務間のトランザクション・データは連携・同期され、共通に使われるマスタ・データは一

元管理されることとなる。

7

図 2.一般的な ERPの基本性能及び構成

(出典:梅田弘之 「ERP導入プロジェクト成功の秘訣」)

ERPの最大の特徴である統合とは、下記の 4点を指す。

①データベースによるマスタ・データの一元管理

②アプリケーション機能の共通化

③ユーザ・インターフェイスの均一化

④トランザクション・データの連携

8

以下にその説明を加える。また、第二章で 4 点に対応するカテゴリーで特許出願を分類す

る。

①データベースによるマスタ・データの一元管理

マスタ・データとは社員や部門、商品、勘定科目などあらかじめ登録しておくべき情報

のデータベースのことである。業務ごとにマスタ・データが独立して存在していると、デ

ータの一致のために余計な手間が生じたり、不一致による障害が発生したりする。そのた

め、マスタ・データは企業単位で一元管理されるべき最重要項目であり、ERP はこのマス

タ・データの統合を肝要としている。

②アプリケーション機能の共通化

業務アプリケーションには、帳簿の出力やログの管理、データ分析など様々な機能が搭

載されているが、機能ごとに異なるアプリケーションを導入しているとメンテナンスや操

作の習得にかかるコストは膨大なものとなってしまう。ERP では、これらの機能が企業全

体で共通化されるように考えられているため、ユーザは機能に関して 1 つの操作方法を身

につければよく、作業も容易となる。加えて、販売管理、生産管理、会計管理の分析デー

タが一元管理されているので、企業レベルのデータ分析が可能となる。

③ユーザ・インターフェイスの均一化

システムごとにユーザ・インターフェイスがばらばらであるとエンドユーザである企業

の従業員の生産性に大きな影響を及ぼしかねない。ERP では、キーに割り当てられた操作

や配色の意味合い、メッセージの表示方法などのユーザ・インターフェイスが統一されて

おり、複数業務の兼業や配置転換により担当ユーザが変わっても業務効率に悪影響を与え

ずに済むように設計されている。

④トランザクション・データの連携

トランザクション・データとは受注データや製造データ、仕訳データなど日々の業務を

行う過程で生成される情報のことである。トランザクション・データの連携が不十分であ

ると、データの重複入力やデータの不整合などの問題が生じてしまう。例えば、受注を受

けて販売管理システムから生産管理システムへとデータが移行し、製造実績を通して在庫

管理システムへ最終的には売上がたち会計システムへと情報が移り、これがトランザクシ

ョン・データとして処理される。このように ERPでは企業全体でトランザクション・デー

タの連携が行われる。

今節で述べてきたように、ERP はシステム設計からユーザ・インターフェイスまで企業

活動の効率化を達成するために構築されている。事実、SAPのERPは世界 120ヶ国 251,000

以上の事業体に採用されており、その有用性は非常に高いと考えられる4。

9

1.2 市場と競合

全世界の ERP市場規模は 2012年の段階で 245億ドル(2兆 5480億円:1ドル=104円

で算出)であり、第 1位の独 SAP AG社(SAP)は市場シェアの約 25%(60億ドル=6240

億円)を、第 2 位の米 Oracle 社(Oracle)は約 13%(31.2 億ドル=3245 億円)を占めてい

る(図 3)5。

図 3.全世界の ERPソフトウェア市場シェア(2012年)

(出典:Louis Columbus, “2013 ERP Market Share Update”)

SAPとOracleはグローバルERPベンダーとして、日本でも大きなシェアを占めている。

日本市場における 2011 年の ERP 市場規模は 1057 億円であり、今後も市場規模の拡大が

見込まれている(図 4)6。総売り上げの内およそ 4分の3にあたる 780億円を大企業(年

商 500億円以上)向け ERPが占めており、大企業向け ERPの 51.9%(全体の 38.3%)を

前述のグローバルベンダー2社が占めている(表 1)7。

SAP と Oracle というグローバルベンダーが大きなシェアを誇っているが、一方で図 3 に

て 3位以下の Sage、Infor、Microsoftといった上位 2社以外のグローバルベンダーは日本

市場で確固たる地位を築くことができていない。この背景には、ワークスアプリケーショ

ンズと富士通を初めとした国産ベンダーが鎬を削っており、特に中堅・中小企業向け市場

は国産ベンダーがシェア上位に名を連ねている点が挙げられる。

10

図 4.日本の ERP市場規模推移

(出典:富士キメラ総研 「ソフトウェアビジネス新市場 2012年版」より筆者作成)

表 1.品目別 ERP市場占有率推移

(出典:富士キメラ総研 「ソフトウェアビジネス新市場 2012年版」より筆者作成)

SAP、Oracleともに中堅・中小企業向け ERP市場を開拓しようと製品を投入していると

同時に SCSK(旧住友情報システム)やオービックといった中堅・中小企業向け市場で高

シェアの国産ベンダーも大企業向けERP市場を新たなマーケットとしてシェア獲得を狙っ

ている。日本における ERPベンダーの競合関係を示したものが図 5である8。

ERP の根幹機能は類似しているものの各社独自の機能などによって差別化を図っており、

また各社の規模やターゲットとする顧客企業も様々であるため、ベンダー比較を行う際に

金額 比率 金額 比率28500 36.5% 29000 36.3%16400 21.0% 17000 21.3%13000 16.7% 14000 17.5%12000 15.4% 12300 15.4%

8100 10.4% 7700 9.6%78000 100.0% 80000 100.0%3100 12.4% 3200 12.4%3050 12.2% 3200 12.4%2800 11.2% 2900 11.2%1400 5.6% 1500 5.8%

14650 58.6% 15000 58.2%25000 100.0% 25800 100.0%

品目ベンダ名 2011年度(実績)

合計

2012年度(見込)

中堅・中小企業向け

ERP

その他合計

大企業向けERP

富士通マーケティングSCSK

ワークスアプリケーションズ富士通日本オラクル

SAPジャパン

オービックオービックビジネスコンサルタント

その他

11

有用である情報は限られる。加えて、企業の内部情報は競争力に直結しているために外部

からでは把握しづらい点も多い。特にグローバル ERPベンダーが保有する技術はどれほど

の費用・期間をかけて開発し、どのような経路を辿って製品に採用されたのかがわかりに

くい。ソフトウェアベンダー比較を行う際にはこのような点が難点となるが、外部からの

情報の取得容易性と技術経路追跡容易性を勘案すると特許情報の利用は有用であると思わ

れる。自社が独占したい乃至は他者に使用されたくない技術を特許出願することは一般的

であり、かつ海外での発明を日本でも特許とするためにはどの国の特許庁に出願されたか

を明らかにする必要があるためである。そのため本リサーチでは、日本に進出・成功して

いるグローバルベンダー2社(SAP、Oracle)に着目し、日本における両社の特許出願を調

査・比較し、両社の類似点や相違点を考察する。

図 5.セグメント別 ERPベンダー戦略マップ

(出典:河田裕司 「中堅・中小企業の ERPベンダー戦略マップ分析」)

12

1.3 調査目的

本リサーチは、グローバルベンダーの日本での特許出願を調査・分析することで、日本

市場への注力度合及び日本進出時にどのようなローカリゼーション戦略あるいはグローバ

リゼーション戦略を採用するかの知見を得ることを目的とする。日本進出の際にコア技

術・発明を特許として保護することはもちろんのこと、日本現地で追加開発された発明も

特許として出願されることが予期される。出願特許を日本由来発明と他国由来発明とに区

分し、特許査定率と拒絶査定時の対応を比較することによって各社が開発した技術をグロ

ーバルで普及させようとしているのか、または進出先ごとに対応した技術開発を行い、ロ

ーカリゼーションを重視しているのかを推し量ることができると考える。具体的には、本

国を中心とする日本以外で開発された技術(他国発明)が多く、日本で開発された技術(国

内発明)が少なければ当該企業は日本市場よりもグローバルで統一された技術・製品を浸

透させようという意図があり、逆に国内発明が多ければ日本市場の独自性に対応したロー

カリゼーションに注力しているという意図があることがわかるのではないかと考えられる。

本研究で特許出願に着目した理由は、ERP は企業の根幹を支える土台となっており、国産

ベンダーを凌ぐために独自技術を特許として保護したうえで日本市場に参入してきたと考

えるためである。予想される研究成果として、グローバルベンダーの特許出願傾向から日

本の国産ベンダーの対抗策の策定が挙げられる。グローバルベンダーの特許出願が他国発

明に偏っている場合、国産ベンダーは日本独自の商習慣に適応した技術開発・特許出願を

行うことで差別化が可能となる。

SAPと Oracleは外資系企業であるが故、特許の出願ルートにしても直接出願、パリルー

ト出願そして PCT出願と多岐にわたる。日本での足場作りとして本国由来の技術を特許化

するに際し、どのような特許出願戦略を採用したのかを調査・分析することは有用である

と考える。

本研究では、SAPと Oracleを分析対象として両社の特許出願を他国での発明と日本国内

での発明とに分け、特許出願から特許査定または拒絶査定に至るまでにどのようなアクシ

ョンを採ったかを調査・分析することで、外資系ベンダーが日本に参入する際に重視する

発明や技術開発姿勢を明らかにすることを目的とする。両社の日本法人として、1985 年に

日本オラクル株式会社が、1992年に SAPジャパンが設立されている。本研究では両日本法

人に着目し、外資系 ERPベンダーの成功事例として、日本で ERPが発売された 1990年代

から 2011年までの期間において、2社の特許出願動向を以下の 3つの観点から調査・分析

する。まず、両社の特許出願トレンドを把握し、次に出願内容が ERP製品に関係している

のかどうかを確認する。最終的には、他国発明と国内発明との違いに着目し、両社の特許

出願動向及び戦略を明らかにすることを本研究の目的とする。

13

(1)出願件数及び IPC

調査対象期間において両社がどれだけの特許を出願してきたのかを明らかにする。この

ことにより、各々の出願傾向と概略を掴むと共に両社の共通点から当該分野のトレンドを

推量する。加えて、全出願の保有 IPC を調べることで各企業が得意とする技術分野を特定

する。本来であれば、特許公開公報に記載されている全情報を見る必要があるが、本研究

では IPCを観察することで簡略化を行う。

(2)出願内容のカテゴリー分類及びモジュール分類

出願内容の用途をカテゴリー分けしてどの製品群に用いられる特許であるのかを分類す

る。更に、図 2で示されているように ERPのうちどの機能(モジュール)にフォーカスし

た特許であるのかを特定できる特許に関してはモジュール分類分けを行い、各企業の得意

機能を抽出する。ERP は企業活動の統合こそが最大の特徴であるが、モジュールごとに分

けることで個別の機能と全体との統合具合が明らかになるのではないかと思われる。

(3)国内発明と他国発明の比較

(1)で特許出願の母数とその技術分野を把握でき、(2)で更に具体的な ERP 製品に関連す

る特許出願について明らかにできる。ここまでで SAP と Oracle の日本における特許出願

の傾向を掴むことができた。だが両者は共に外資系企業であり、研究開発は日本だけで行

われているとは限らない。そのため本節では、特許情報から海外で行われた他国発明と日

本で行われた国内発明の違いを明らかにすることで、本国と日本法人の特許に関する意識

を検討する。具体的には、両発明の特許査定率、出願第一国からみる発明由来地、早期審

査申請率、拒絶査定時の対応を比較することで、本国の技術を重視しているのか日本発の

技術を重視しているのか各企業の思惑を推察する。本項目を明らかにすることで、本国開

発と現地開発の違いが特許という観点から明らかになると共に各社の開発活動のグローバ

ル化及びローカルマーケットへの注力度合に対する知見を得ることが可能になると思われ

る。

本研究の成果は、今後日本企業が海外に進出する際にも有用な示唆を与えることができ

ると考えられる。

14

1.4 先行研究

本節では 4つの観点から先行研究を紹介する。

(1)ソフトウェアに関する研究

(1)-1. ソフトウェアの特許性に関する研究

日本特許法は、発明を積極的に定義する規定(2条 1項)を有している。このため、ソフ

トウェア関連発明は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」という発明の定義に該当す

るのか否かが従来から議論されてきた9。1997 年に「媒体特許」の保護が打ち出されたこ

と及び 2000年に特許・実用新案審査基準の改訂により、「ソフトウェアによる情報処理が、

ハードウェア資源を用いて具体的に実現されている」ソフトウェア関連発明は「自然法則

を利用した技術的思想の創作」であると認められ、2002 年の特許法改正によってプログラ

ムが「物」の発明に含まれることが明記された(2 条 3 項 1 号)10。この結果、発明の定

義に該当するプログラムは物の発明として保護されることが法律レベルで確認された。

ソフトウェアの特許性に関する先行研究から、日本で特許として保護されるべきソフト

ウェアの法律的解釈が明らかにされた。しかし、企業レベルでどのような対応がとられた

のか、また法改正の前後でソフトウェアの特許出願件数はどのような変化があったのかに

ついては触れられていない。

(1)-2. ソフトウェアの特許出願件数に関する研究

ソフトウェア関連特許の出願件数は 1996 年には 1,000 件に満たなかったものが、1997

年の運用指針の変更と 2000年の審査基準改訂によって、2002年には 16,000件を上回るほ

ど急激に増加することとなった(図 6)11。本調査では、発明の名称(Title)ないし特許

請求範囲(Claim)に「プログラム」を含む特許をソフトウェア関連特許としているため、

190 年から 2006 年までの全出願の概観をつかむという意味では非常に有用であるものの、

上記の定義にはずれたソフトウェア特許出願を取りこぼしている可能性がある。また、デ

ータが 2006年までのものでありため、直近の出願は含まれていないという課題がある。特

許・実用新案審査基準の改訂及び特許法改正という 2 つのターニングポイントを含む前後

の期間で特許出願件数がどのように推移したかを把握するには有用な研究であるが、実際

の企業活動にどのような影響を与えたのかミクロな視点での分析は含まれていない。

15

図 6.ソフトウェア関連特許の出願件数(日本公開特許)

(出典:特許庁 「ソフトウェア特許入門」)

(2)特許出願に関する研究

(2)-1. 日本での特許出願に関する研究

特許出願は発明を保護する場合の王道であり、特許出願を選択する理由は主に、①自社

事業からの利益の最大化、②特許権から得られる直接利益の獲得、もしくは③第三者によ

る権利化の阻止であり、企業が発明を創造する目的にも合致することが多い12。この研究

では、特許出願の他にノウハウ秘匿、実用新案出願、公知化を発明保護の手段として紹介

している。発明を権利化することを至上命題としていないため、発明の保護という観点か

らはこの研究は有用であると考えられる。しかし、天下り的な議論が多く、実際の企業活

動に必ずしも則してはいないという側面もある。また、日本企業が日本での発明をどのよ

うに扱うかを念頭においているため、多国籍企業が日本に参入した際の特許出願について

は考察されていないため、この研究で扱われている特許出願戦略は限定的である。

(2)-2. 日米欧の特許制度の違いに関する研究

日本と他国では知的財産法制度に相違点があり、特許出願や審査手続きに際して注意し

なければならない点がある。日米を比較すると、①日本が先願主義を採っているのに対し

て米国は先発明主義を採用していること、②米国には継続出願や継続審査請求といった日

本にはない知財制度があるといった違いがある13。また欧州の特許制度は日本や米国と異

なり、各国の制度と欧州地域内にまたがる欧州特許条約(EPC)という制度が併存してい

るという違いがある14。EPCのメリットには、①手続きの簡素化、②出願特許に対する評

価結果がサーチ・レポートという形であらわれる点、③特許審査にかける時間が長いため

に相対的に信頼性が高い特許となる点、が挙げられる。図 7 では、日米欧の特許出願手続

16

きの違いが示されている。これらの研究では、日米欧の特に特許出願時の制度の相違点が

明らかにされている。多国籍企業が日米欧に進出する際に上記の点を考慮に入れる必要が

あるという示唆を与えている点で有用であるが、具体的な企業のアクションとしての特許

出願戦略には触れられていない。よって、日米欧の違いを考慮した上での特許出願戦略を

考察することは既存研究にはない点であると考える。

図 7. 日米欧における特許審査開始までの手続きの比較

(出典:大嶋洋一 「欧州の特許制度を理解しよう」)

(3)SAP、Oracleに関する知的財産動向

本リサーチの調査対象企業である SAP と Oracle は世界有数のソフトウェアベンダーで

あり、日本のみならず世界主要各国で競合している。中でも両社に関する知的財産動向と

して、米国における著作権侵害訴訟が最も知られている。この訴訟は、SAP の旧子会社が

Oracle 製ソフトウェアの不正なダウンロードやコピーを繰り返し、ライセンス料の回避や

顧客を奪おうとしたとして 2007 年に Oracle によって提訴された15。結果として、2012

年 8月 2日に SAPが Oracleに 3億 600万ドルを支払うことで暫定的合意に至った16。本

訴訟では特許権ではなく著作権に関する侵害が議論となったが、両社の知的財産権に関す

る意識の高さが表れた事件であるといえる。

この事件に前後して、Oracle は 2010 年にオープンソフトウェア開発やサーバー事業を

手掛ける Sun Microsystems社(Sun)を買収し、Sunが保有するおよそ 7000件の特許も同

時に取得した。この買収により、Oracle はビジネスモデル及び特許戦略を大きく転換した

と考えられる17。また、SAP は 2011 年にインテレクチュアル・ベンチャーズ社(IV)と

17

長期ライセンス契約を締結し、SAPは IVが保有する特許ポートフォリオを防衛目的のため

に使用できることとなった18。

SAP、Oracle 共に著作権侵害訴訟、企業買収そしてライセンス契約締結を初めとして知

的財産権に関する意識は非常に高いといえる。グローバルベンダー同士が知財において国

外では戦いを繰り広げており、日本においても注視する必要があると考えられる。そのた

め、日本において両社の特許を調査・分析することは有用であると考えられる。

・(4)海外進出・ローカリゼーションに関する研究

グローバル企業の海外進出は一気に進むものではなく、いくつかの段階を踏んでいくこ

とが知られている。海外進出段階の代表的な分類として 5 段階説がある19。5 段階とは即

ち、①輸出中心段階、②現地化段階、③国際化段階、④多国籍化段階、⑤グローバル化段

階を指す。進出の最初期段階では、自国内で開発から販売までを担い、代理店などを通し

て輸出するが、現地化段階からは進出先に現地法人を設立し、最終的には開発から販売ま

での機能を現地法人が備えるようになる。グローバル企業が海外進出先で上記の段階を通

して現地化を行うとする 5 段階説は、ローカリゼーションを理解する先行研究として秀で

ているものの、本説は 1980年代の日本の自動車産業を中心とした製造業を念頭に議論して

いるため、現在の多様な企業のグローバル化とそれに伴うローカリゼーションを網羅して

いるわけではない。そこで、次に「ERP 業界において外資系企業が日本進出する際のロー

カリゼーション」を先行研究として取り上げる。

JETROのマーケットリポートによると、日本特有の商習慣として以下の4点が挙げられ

ている20。

1.パッケージ・ソフトウェアは日本語化が必須。

2.日本のユーザ企業は、経営トップも含めた多数の階層による合議制で製品導入を決定する

ため、導入ベンダー側のセールス期間が非常に長くなる。

3.日本の会計制度では、企業間取引に手形決済が使われる。

4.日本企業の組織形態は階層型で、複雑な社内決裁システムが存在する。

日本進出に際して日本特有の商習慣に留意するのは当然のことであり、事実 SAP と

Oracleの両者ともに日本語の対応に加えて以下のような対応を行っている。

・SAP

償却計算エンジン、償却資産税レポート、リステートメント機能、マルチ期間連結、保

留伝票とモデル伝票、自動データ収集、伝票の承認ワークフロー、貸借対照表項目別の繰

越税金、消費税の見越・繰越処理機能の追加21

・Oracle

和暦の日付形式、ユーザ定義コード、銀行口座、支払処理、仕入れ先源泉徴収、税額の丸

め、手形処理、財務諸表、固定資産の一部機能追加22

ERP 業界の日本におけるローカリゼーションに関しては上記のような先行研究及び企業

18

対応があるが、特許という観点からローカリゼーションを論じた先行研究は見つからなか

った。公開されている特許情報からローカリゼーションを議論することは新しい試みであ

り、また情報に関して漏れが少ないという点からも有用であると推量する。

以上(1)~(4)の先行研究によって、日本のソフトウェア特許の概観、日米欧の特許制度の違

いとそれに伴う特許出願戦略の重要性、そして SAP と Oracle の海外における知的財産に

関する意識の高さが明らかにされた。本研究では、SAP、Oracle の日本における特許出願

戦略の違いに着目しており、既存研究とは異なったスコープで新しい知見を得ることがで

きると考える。

1.5 調査対象企業データ

本研究の調査対象企業である SAP AG及び SAPジャパンと Oracle及び日本オラクル株

式会社の企業データを以下の表 2に示す23242526。

表 2.SAPと Oracleの本社及び日本支社 会社概要

表 2より、Oracleは SAPよりもおよそ 1.7倍の売上高を誇っており、同様のことが日本

法人についてもいえる。一方で、従業員 1人あたりの日本円換算売上高は SAP 3480万円/1

人、SAPジャパン 7440万円/1人、Oracle 3230万円/1人、日本オラクル 5720万円/1人で

あり、SAP の方が上回る。またグローバルよりも日本法人の方が、売上効率が良いことが

みてとれる。

表 1で ERP製品に関して、日本オラクルよりも SAPジャパンの方が 2.37倍の売上があ

るにも関わらず総売上は日本オラクルの方が上回っている理由として、Oracle 並びに日本

オラクルはERPを初めとするソフトウェアのみならずデータベース等ハードウェアを製品

群に持っているためであると考えられる。図 8は SAP、Oracleを含む日本における主要ソ

フトウェアベンダーのカテゴリー別売上構成比を示している27。SAP と Oracle に注目す

ると、SAPは売上の大半が業務アプリケーションであるのに対して、Oracleは 20%超であ

り残りはプラットフォームである。ここで示されているように、売上構成比が両社異なる

社名 SAP AG SAPジャパン Oracle 日本オラクル株式会社所在地 ドイツ ヴァルドルフ 東京都千代田区 アメリカ カリフォルニア 東京都港区代表者 Rodolpho Cardenuto 安斎 富太郎 Larry Ellison デレク・ウイリアムズ設立 1972年4月 1992年10月 1977年6月 1985年10月

事業内容

資本金 未公開 36億円 未公開 223億円

売上(2012年)163億ユーロ

(2兆2983億円)5億8028万ユーロ

(818億1900万円)372億ドル

(3兆8688億円)1429億1900万円

従業員数 66,061名 1,100名 120,000名 2,497名

コンピュータソフトウェアの開発販売教育ならびにコンサルティング

企業活動の基盤となるソフトウェア・ハードウェアならびにそれらの利用を支援する各種サービスの提供

出典:各社HPより作成 1ドル=104円 1ユーロ=141円で算出

19

ため、総売上では Oracleが上回っているが、ERP事業においては SAPが Oracleを抑えた

結果となっている。

図 8. 主要ベンダーのカテゴリー別構成比(2011年実績)

(出典:富士キメラ総研 「ソフトウェアビジネス新市場 2012年版」)

次に、両社の ERPについて比較を行う。両社ともに売上が 500億円以上の大企業から売

上が 100 億円に満たない中小企業までを幅広くカバーする ERP を発売している。だが 1.2

で考察されたように、両社ともに主力製品は大企業向けの SAP Business Suite 7と Oracle

E-Business Suiteであり、中堅・中小企業向け ERPはダウンサイズされた補助的位置づけ

である。また、SAPは大企業向け ERPでは個別開発のシステムを、また中堅・中小企業向

け ERP は富士通 GLOVIA やオービック奉行新 ERP を競合とする一方で、Oracle は全セ

グメントにおいて SAPを競合と位置付けている(表 3)28。

20

表 3. SAP及び Oracleの ERP製品一覧

(出典:大山繁樹 「ERP導入・活用実践ガイド」)

製品名 SAP Business Suite 7 SAP Business All-in-One SAP Business One対象ユーザー企業規模 大企業 中堅企業、中小企業 中小企業

適用業務

財務、管理会計、固定資産、債権債務、人事、給与、販売、購買、在庫、生産

財務、管理会計、販売、購買、在庫、生産

財務、管理会計、債権債務、販売、購買、在庫、生産

パートナー数 220社 35社 13社国内出荷時期 2008年11月 2007年7月 2004年6月導入実績 非公開 非公開 非公開修行ユーザー業種 特定の業種に限定しない 特定の業種に限定しない 特定の業種に限定しない

競合と考える製品 個別開発のシステムGLOVIA smart、Superstream

奉行新ERP

製品名 Oracle E-Business Suite PeopleSoft Enterprise JD Edwards Enterprise One対象ユーザー企業規模 大企業、中堅企業 大企業 大企業、中堅企業、中小企業

適用業務

財務、管理会計、固定資産、債権債務、人事、給与、販売、購買、在庫、生産

財務、管理会計、固定資産、債権債務、人事、給与、販売、購買

財務、管理会計、固定資産、債権債務、販売、購買、在庫、生産

パートナー数 約100社 約50社 約40社国内出荷時期 1995年 1992年 1987年導入実績 650社 650社 650社

修行ユーザー業種製造業、流通業、金融機関、サービス業、官公庁

製造業、流通業、金融機関、サービス業、官公庁

製造業、流通業、金融機関、サービス業、官公庁

競合と考える製品 SAP Business Suite SAP Business Suite SAP Business All-in-One

SAP

Oracle

21

第 2章 調査手法

2.1 特許検索方法

SAPと Oracleの日本特許庁への公開特許公報と公表特許公報を抽出した。公開特許公報

は、出願から18ヶ月経過後に発行される公報であり、公表特許公報は、特許協力条約(Patent

Cooperation Treaty: PCT)に基づき出願された国際出願のうち、日本を指定国とする出願

の日本語の翻訳文が提出された公報である。特許庁での審査を経て特許権が付与されると

特許公報も発行されるが、本研究では重複を避けるために公開特許公報及び公表特許公報

を調査対象とした。公開特許公報などの情報抽出には、日本パテントデータサービス社が

提供する JP-NETを使用した。JP-NETに収録されているデータは 1983年以降の特許情報

であること及び特許は出願から公開までに 18ケ月を要するために 2012年~2013年の出願

分に関しては、出願数が正確ではない可能性があるために検索対象期間は 1983年 1月 1日

~2011年 12月 31日までとした。

本研究では出願対象国を日本に限定している。理由としては、日本ではグローバルベン

ダーと国産ベンダーが競合しており、特殊な市場が形成されているために対象国を限定し

たこと、及び SAP、Oracle共に日本は本国ではない第三国であるために両社の立場から海

外への特許出願戦略を調査・分析することは有用であると考えたことの 2点が挙げられる。

特許検索を行う際に、出願人名に特に傾注した。SAP はドイツの企業であるため、検索

時に出願人名を「エスアーペー」というドイツ読みに直して、「*エスアーペー*」を含む中

間一致検索を行った。また、Oracle に関して同様に「*オラクル*」として同様に検索を行

った結果、Oracle の事業内容にない出願(発明の名称:美容院でのシャンプー用台座)が

「有限会社オラクル」から 1 件出されていたため、公開特許公報を確認の上でノイズとし

て検索結果対象から除外した。両社の特許検索・収集に関しての条件及び結果をまとめた

ものが下表である(表 4)。

表 4.JP-NETにおける特許情報検索式及び結果一覧

(出典:JP-NETを用いて筆者作成)

出願対象国 対象期間 出願人(PA) 該当件数 出願人

SAP *エスアーペー* 233件エスアーペー アクチエンゲゼルシャフトエスアーペー アーゲー

Oracle *オラクル* 200件

オラクル コーポレイション日本オラクル株式会社オラクル・インターナショナル・コーポレーションオラクル・アメリカ・インコーポレイテッド

検索式 検索結果

日本1983.1.1~2011.12.31

22

検索結果として、SAPの出願人名は「エスアーペー アクチエンゲゼルシャフト」と「エ

スアーペー アーゲー」がヒットした。SAPは 2003年の出願までは「エスアーペー アク

チエンゲゼルシャフト」であり、それ以降は「エスアーペー アーゲー」であったことと

両出願人の住所が同一であったため、出願時期によって名称は異なるものの実態は同一企

業である SAPだと考えられる。

また、Oracleの出願人名は「オラクル コーポレーション」、「日本オラクル株式会社」、

「オラクル・インターナショナル・コーポレイション」そして「オラクル・アメリカ・イ

ンコーポレイテッド」の 4件が該当した。詳細は第 3章で検討するが、「日本オラクル株式

会社」による出願は日本国内の発明であり、その他は他国発明であることと 2002年までは

「オラクル コーポレーション」として、その後は「オラクル・インターナショナル・コ

ーポレイション」ないし「オラクル・アメリカ・インコーポレイテッド」として出願され

ていた。尚、「日本オラクル株式会社」を除いた 3出願人はいずれも住所が同一であったた

めに同じ事業体である Oracleであるとみなした。

第 3章 結果及び考察

3.1 IPC比較

SAPと Oracleの全出願に付与された IPCの内上位 10位までを抽出した(図 9)(表 5)。

両社ともに G06F(電気的デジタルデータ処理)に関する出願が圧倒的に多かった。これは

ソフトウェア・ハードウェア共に G06F 群に属するためであると考えられる。SAP の出願

件数第二位は G06Q(管理目的、商用目的、記入目的、経営目的、監督目的または予測目的

に特に適合したデータ処理システムまたは方法)であり、Oracle の第二位は H04L(デジ

タル情報の伝送、電気通信)であった。この結果は 2.2 でみられたように、SAP はアプリ

ケーションに注力しており、Oracle はデータベースの他にネットワークに注力している結

果ともほぼ一致している。

G06F、G06Q、H04L、G06K(データの認識)、H04M(電話通信)に関しては両社とも

出願している一方で、B65G(運搬または貯蔵装置)、G05B(制御系または調整系一般)、

G07D(コインまたは紙幣または類似の有価証券の取り扱い)、B22C(鋳造用鋳型造)、B23K

(ハンダ付またはハンダ離脱)、B41J(タイプライタ、選択的プリンティング機構)、B62D

(自動車;付随車)、G06N(特定の計算モデルに基づくコンピュータ・システム)、G08B

(信号または呼び出し装置)、G09B(教育用または教示用の器具)は SAPのみが出願して

おり、G11B(記録担体と変換機との間の相対運動に基づいた情報記録)、H04N(画像通信)、

G09C(秘密の必要性を含む暗号または他の目的のための暗号化または暗号解読装置)、

23

H04Q(選択)、G09G(静的手段を用いて可変情報を表示する表示装置の制御のための装置

または回路)、H01L(半導体装置)は Oracleのみによって出願されている。特に Bセクシ

ョン(処理操作、運輸)に関しては、SAPのみが 17件の特許出願を行っており、その内の

9件は【発明の名称】もしくは【要約】の中で明示的に在庫管理に関連する発明であること

が記されていた。G セクション(物理学)及び H セクション(電気)に関しては、両社と

もに出願の多数を占めている。中でも、H04L、H04M、G11B、H04N といったネットワ

ーク通信に関する IPC分野は SAPよりも Oracleの方が件数が多い、ないしは Oracleのみ

によって出願されていた。

本節では、IPCという切り口から両社の技術領域を比較し、両社が出願した発明は技術

分野が重複しているものが多いことが分かった。また、SAPが Oracleよりも出願件数が多

い G06Qを有する出願の多くは ERPの個別機能に関する特許出願であり、Bセクションを

IPCにもつ発明は在庫管理やサプライチェーンに関連するものであり、逆に Oracleの方が

SAP よりも H04L を初めとするネットワーク通信に関連する出願件数が多かったことから、

類似する技術分野を得意としながらも競合他社よりも注力する分野は各社異なることが見

て取れた。

図 9. SAP及び Oracleの出願上位 IPC

(出典:JP-NETを用いて筆者作成)

24

表 5.SAP及び Oracleの出願上位 IPC実数及び IPC分類説明29

(出典:JP-NETを用いて筆者作成)

3.2 カテゴリー分類・比較

1.1 にて述べたように、ERP はデータベースあるいはミドルウェアを基盤として複数の

アプリケーションが連携し、均一なインターフェイス上で動作する。2.1にて得られた特許

合計 433件の【発明の名称】及び【要約】の内容からキーワードを抽出してデータベース、

アプリケーション、ユーザインターフェイス、ネットワーク及びその他の 5 つにカテゴリ

ーに分類し、キーワードで分類できなかった残りの特許に関しては内容の読み込みによっ

て機能別に振り分け、結果を図 10 及び図 11 にまとめた30。尚、A~D はそれぞれ 1.1 の

説明の際に用いた①~④に対応している。

A. データベース(①データベースによるマスタ・データの一元管理)

定義:複数のプログラムによって利用されるデータを 1 つの場所で保管するものに関する

発明

キーワード:データ定義、データ操作、トランザクション管理、行、列、SQL等

B. アプリケーション(②アプリケーション機能の共通化)

定義:ユーザが直接扱うソフトウェア発明

キーワード:リクエスト、システム、機能を実行するプログラム等

C. ユーザインターフェイス(③ユーザ・インターフェイスの均一化)

定義:ユーザの使い心地に関する発明

キーワード:ビジュアライゼーション、視覚化、可視提示等

D. ネットワーク(④トランザクション・データの連携)

定義:端末と端末、データベースとアプリケーションなどデータ通信を行う発明

キーワード:情報交換、サーバ通信、アクセス、通信インフラストラクチャ

SAP オラクル IPC説明G06F 190 194 電気的デジタルデータ処理G06Q 65 12 管理目的,商用目的,金融目的,経営目的,監督目的または予測目的に特に適合したデータ処理システムまたは方法B65G 12 0 運搬または貯蔵装置,荷積みまたは荷あげ用コンベヤ;作業場コンベヤシステムまたは気体式チューブコンベヤG06K 11 4 データの認識;データの表示;記録担体;記録担体の取扱いH04L 10 18 デジタル情報の伝送,電信通信G05B 3 0 制御系または調整系一般;このような系の機能要素;このような系または要素の監視または試験装置G07D 3 0 コインまたは紙幣または類似の有価証券の取扱いH04M 3 8 電話通信B22C 2 0 鋳造用鋳型造型B23K 2 0 ハンダ付またはハンダ離脱;溶接;ハンダ付または溶接によるクラッドまたは被せ金;局部加熱による切断B41J 2 0 タイプライタ;選択的プリンティング機構,すなわち版以外の手段でプリンティングする機構B62D 2 0 自動車;付随車G06N 2 0 特定の計算モデルに基づくコンピュータ・システムG08B 2 0 信号または呼出し装置;指令発信装置;警報装置G09B 2 0 教育用または教示用の器具;盲人,聾者または唖者の教習,または意志を通じるための用具;模型;地図;図表G11B 0 7 記録担体と変換器との間の相対運動に基づいた情報記録H04N 0 7 画像通信G09C 0 3 秘密の必要性を含む暗号または他の目的のための暗号化または暗号解読装置H04Q 0 3 選択G09G 0 2 静的手段を用いて可変情報を表示する表示装置の制御のための装置または回路H01L 0 2 半導体装置,他に属さない電気的固体装置

25

E. その他

定義:A~Dのいずれにも属さない発明

図 10. SAPカテゴリー分け結果

(出典:JP-NETを用いて筆者作成)

図 11. Oracleカテゴリー分け結果

(出典:JP-NETを用いて筆者作成)

26

表 6. SAPと Oracleのカテゴリー別出願件数及び割合

(出典:JP-NETを用いて筆者作成)

図 10より、SAPは全出願のうちおよそ半数にあたる 112件がアプリケーション分野であ

るため、アプリケーションに強みがあると考えられる。マスタ・データを司るデータベー

ス分野やユーザインターフェイス、ネットワーク分野にもある程度の出願は見られるもの

の、アプリケーションの出願数とは大きく差をつけられている。カテゴリー分類から見た

場合、SAP ERPは豊富なアプリケーションが競争力の源泉であると推量できる。

図 11より、Oracleは全出願の内およそ 1/3がデータベース分野の出願であり、アプリケ

ーションとネットワークがその後に続く。1.5で述べた通り、Oracleはソフトウェアの他に

データベースを初めとするハードウェアも事業内容としている。そのため、Oracle はデー

タベース、ERPそしてそれらを繋ぐネットワークによってワンストップで企業の IT環境を

整備できる点を強みにしていると推量できる。

次に表 6 に示されているカテゴリーごとに両社を比較する。データベース分野において

は、Oracle が SAP を出願件数にて約 2 倍、割合にして約 2.27 倍上回っている。逆にアプ

リケーション分野では、SAP の方が件数にして 2.8 倍、割合で 2.4 倍上回っている。ユー

ザ・インターフェイスは両社ほぼ同件数、動割合であり目立った差異は認められない。ネ

ットワーク分野では Oracleの方が件数で 1.28倍、1.5倍上回っている。以上の比較結果か

ら、SAP はアプリケーション分野では Oracle に対して優位を築いているものの、Oracle

はデータベース分野とネットワーク分野に優位性があり、SAP に対してはアプリケーショ

ン分野で対抗するというよりもデータベース、アプリケーション、ユーザ・インターフェ

イス、ネットワークの統合によって競争力を強めていると推察される。

3.3 モジュール分類・比較

前節では、SAP及び Oracleが出願した特許はどのような技術分野にカテゴライズされる

のかを調査した。本節では、両社の特許の内どの程度が ERPに直接的に関係しているかを

調査する。ERP は企業活動の統合を目的としているため、個別の事業分野よりもそれらの

集合体をいかに高効率化するか、還元すればいかに全体最適を達成するかが最重要課題で

ある。しかし、システムごとに注目することは各企業の得意とする事業分野を特定できる

と考えられるため ERPを機能ごとに 8つに分解し、図 2の構成を参考にモジュール分類を

行った(図 12)(図 13)(表 7)。

データベース アプリ UI ネットワーク その他 合計SAP 35(15.0%) 112(48.1%) 19(8.2%) 25(10.7%) 42(18.0%) 233(100%)Oracle 68(34.0%) 40(20.0%) 17(8.5%) 32(16.0%) 43(21.5%) 200(100%)

27

1. 販売管理システム

見積りから売上に至るまでの製品販売に関するモジュール

2. 生産管理システム

生産計画から製造実績に至るまでの製品の生産・製造に関するモジュール

3. 調達管理システム

発注から仕入れまでの資材等の調達に関するモジュール

4. 在庫管理システム

在庫の保管と棚卸に関するモジュール

5. 債務・債権管理システム

企業活動の結果として生ずる債権・債務に関するモジュール

6. 資産・経費管理システム

企業が保有する資産と経費に関するモジュール

7. 会計システム

財務会計及び管理会計に関するモジュール

8. 人事管理システム

人事及び給与に関するモジュール

図 12. SAPモジュール分類結果

(出典:JP-NETを用いて筆者作成)

全 73 件

28

図 13. Oracleモジュール分類結果

(出典:JP-NETを用いて筆者作成)

表 7. SAPと Oracleのモジュール別出願件数及び割合

(出典:JP-NETを用いて筆者作成)

図 12より、SAPは全モジュールに関する特許出願を行っていることがうかがえる。特に、

販売管理、在庫管理、債務・債権管理、会計システムに強みを持っている。また、全出願

中 31.3%(73/233)がモジュールに関する出願であることからSAPはERPをコア事業に据え

ていることが推察される。

図 13より、Oracleの全出願中 ERPモジュールに関連する出願は 13%(26/200)であり、

ERP事業と同等かそれ以上にデータベース等ハードウェア事業に注力しているのではない

かと考えられる。一方でモジュール別にみると、生産管理、債務・債権管理、資産・経費

管理、人事管理に多くの出願を行っており、特に生産管理、資産・経費管理及び人事管理

は SAPよりも多数の出願が行われている。このことから、Oracleの ERPはバックオフィ

ス系のシステムに強みがあり、データベースと一体になることで企業活動を支えているこ

とが推察される。

表 7で両社のモジュールごとの出願件数割合を比較すると、販売管理、調達管理、在庫

管理、会計に関しては SAPの方が Oracleよりも多数の特許出願をしておりかつ割合も高

いことがわかる。一方で先述の通り、生産管理、資産・経費管理そして人事管理は Oracle

の方が出願件数・出願割合共に上回っている。そして、債務・債権管理に関しては、SAP

販売管理 生産管理 調達管理 在庫管理 債務・債権 資産・経費 会計 人事管理 合計SAP 13(17.8%) 1(1.4%) 6(8.2%) 13(17.8%) 17(23.3%) 4(5.5%) 14(19.2%) 5(6.8%) 73(100%)Oracle 1(4.2%) 3(12.5) 0(0%) 1(4.2%) 6(25.0%) 5(20.8%) 2(8.2%) 6(25.0%) 24(100%)

29

の方が Oracleよりも出願件数は多いものの、出願割合は逆転する。以上より、SAPは ERP

のモジュールに関する特許出願件数は多いが、必ずしも全分野で Oracleよりも優位である

とは言えない。

3.4 他国発明と国内発明

SAPと Oracle両社の他国発明と国内発明の出願件数比率、特許率そして拒絶査定時の対

応の違いを検討する。2.1 で述べたように、SAP はドイツに、Oracle は米国に本社がある

外資系企業であるため、他国発明(日本以外での発明)と日本国内発明を分けて検討する

ことは、日本市場への注力度合や日本国内での発明を本国がどのように考えているかにつ

いて重要な示唆を得ることができると考えられる。本研究では【国際公開番号】及び【優

先権】を参考に、PCTルート(特許協力条約に基づく国際出願)、パリルート(パリ条約に

基づき優先権を主張する国際出願)、そして日本特許庁への直接出願の 3ルートに分類分け

を行った3132。3ルートの内、PCTルートとパリルートは他国発明として、直接出願は国

内発明とみなした。

今節で他国発明と国内発明の違いに着目した背景には、自社開発した技術を世界中に遍

く広めるグローバリゼーションを重視するのか、それとも自社開発した技術を基に進出先

に合わせた追加開発を行い現地顧客の実態により則した製品を提供するローカリゼーショ

ン重視かの違いを両社の特許出願から見て取ることができるのではないかという狙いがあ

る。他国発明が多く国内発明が少ない場合は統一された製品を世界中で採用するグローバ

リゼーション重視であり、他国発明よりも国内発明の方が多ければより現地顧客に対応し

た製品開発を行った証左でありローカリゼーション重視であると考えられる。

(1)PCTルート(他国発明)

PCTとは一度の出願で、同時に世界中の PCT加盟国に対して出願したと同じ効果を与え

る出願制度である。国内移管しても出願日は同日として扱われる。国際出願がなされると、

国際調査機関による先行技術などの調査が行われ、国際調査書及び見解書が発行される。

これにより出願した発明の特許性を知ることが可能となる。その後、出願から 30ヶ月以内

に特許を取得したい国に対して逐語的に翻訳した翻訳文を移行国へ提出する必要がある。

PCT 出願を行うと「WO」で始まる【国際公開番号】が付与される。本研究においては、

この国際公開番号を有している特許出願を PCTルート発明とした。

SAPは 77件が、Oracleは 168件が PCTルートによる出願であった。

(2)パリルート(他国発明)

パリ条約とは工業所有権の保護に関する国際条約であり、優先権についての規定が設定

されている。優先権とは第一国においての出願に基づき、12 ヶ月以内に第二国にした出願

30

に対して第一国の出願として扱ってもらうことができる権利のことである。第一国に出願

した後、これに基づき優先期間に希望の出願国に対して各国の言語、方式に従って出願す

ることにより、同じ内容として日本の出願日が希望の出願国において確保される。本研究

においては、【国際公開番号】は有さないが、【優先権】を有している特許出願をパリルー

ト発明とした。

SAPは 77件が、Oracleは 23件がパリルートによる出願であった。

(3)直接出願(国内発明)

(1)PCTルート及び(2)パリルートの出願にはいずれも【優先権】の欄に優先権を主張する

国(出願第一国)が記載されている。この項目が「US」であれば米国特許庁を、「EP」で

あれば欧州特許庁を示すこととなる。そのためこの項目が空白であれば、該当特許はそれ

までどこの国にも出願されていない、即ち日本が出願第一国であるということとなる。そ

のため、【優先権】の欄が空白かつ日本特許庁に対して、所定の方式を満たした出願を直接

出願(国内発明)として扱う。直接出願は、出願後に PCTルートによる国際出願は不可能

であるが、パリルートで日本を第一国として他国へ特許出願を行うことは可能である。し

かし、本研究は調査対象国を日本に限定しているため、この直接出願に該当する特許出願

が後にパリルートで日本以外の国へ出願されるかどうかは検討しない。

SAPは 79件が、Oracleは 9件が直接出願に該当した。

3.4.1 出願件数比率

SAPは全出願件数 233件のうち、他国発明が 154件、国内発明が 79件であり、Oracle

は全出願件数 200件のうち、他国発明が 191件、国内発明が 9件であった(図 14)。SAP

は他国発明比率がおよそ 66%であるのに対し、Oracleはおよそ 95%が他国発明であった。

出願ルート別にみると、PCTルートは、SAP77件、Oracle168件であり、パリルートはそ

れぞれ 77件、23件、そして直接出願はそれぞれ 79件、9件であった(表 8)。SAPはそれ

ぞれのルートの出願比率がほぼ同じ割合であるが、Oracleは出願の内 84%が PCTルート

であり、その内の 1件を除いた 167件が米国由来の発明であった。また、SAPは他国発明

と国内発明の間に【出願人】の名称に差はなかったが、Oracleは他国発明の【出願人】の

名称は「オラクル コーポレーション」、「オラクル・インターナショナル・コーポレイシ

ョン」、「オラクル・アメリカ・インコーポレイテッド」であったが、国内発明は日本法人

の名称である「日本オラクル株式会社」であった。

31

表 8. SAP及び Oracleの出願ルート別特許出願件数及び割合

(出典:JP-NETを用いて筆者作成)

図 14. SAPと Oracleの他国発明と国内発明比率

(出典:JP-NETを用いて筆者作成)

SAPと Oracleの他国発明と国内発明の出願件数割合は対照的な結果となった。SAPは

国内発明がおよそ 1/3を占める一方で、Oracleの国内発明は 1/20以下であった。このこと

から、SAPは進出先での追加開発を重視している一方で、Oracleは本国での発明を最重視

し日本での追加開発はほとんど行われていないことがわかった。

3.4.2 発明由来地

3.4.1で明らかにされた他国発明を発明由来地別に比較した(表 9)。PCTルート及びパ

リルートで優先権を主張する国(出願第一国)を当該発明の出願由来地とした。SAPは他

国発明の内、およそ 82.5%が米国由来であり 14.3%が欧州特許庁由来、3.2%がドイツ由来

の発明であった(図 15)。また Oracleの他国発明はその全てが米国由来であった(図 16)。

本来、研究開発拠点は製品の競争力の根幹に関わるために、外部からは正確に把握するこ

とは極めて難しい。よって本レポートでは、出願第一国にて発明されたものとみなし、そ

の当該国を研究開発拠点として類推する。

発明由来地の比較から、SAPは米国由来の技術が多いものの、一定数の出願は欧州ない

しはドイツ由来であり、特に欧州由来技術は 2000年代初頭に日本へ出願されていることか

ら、基礎研究・開発はドイツをはじめとする欧州で行われ、改良発明が主に米国で行われ

たことが推量される。対して Oracleは他国発明の全てが米国由来となっており、基礎から

改良までを一貫して米国で開発していることが読み取れる。3.4.1で明らかにされた日本で

PCTルート パリルート 直接出願 合計SAP 77(33.0%) 77(33.0%) 79(34.0%) 233(100%)Oracle 168(84.0%) 23(11.5%) 9(4.5%) 200(100%)

32

の国内発明の少なさと併せて考察すると、Oracleは米国発の技術を進出先へと適応させよ

うとする姿勢が見て取れる。

表 9. SAP及び Oracleの出願第一国件数

(出所:JP-NETを用いて筆者作成)

図 15. SAPの日本への出願状況

(出所:JP-NETを用いて筆者作成)

日本 米国 欧州 ドイツPCTルート 58件 15件 4件パリルート 69件 7件 1件直接出願 79件

日本 米国 欧州 ドイツPCTルート 168件 0件 0件パリルート 23件 0件 0件直接出願 9件

SAP

Oracle

33

図 16. Oracleの日本への出願状況

(出所:JP-NETを用いて筆者作成)

3.4.2 特許査定比率

両社の他国発明と国内発明そして日本特許庁(2006年~2010年)との特許査定比率を比

較した(表 10)33。両社とも日本特許庁の平均よりも高い特許査定率を誇り、かつ特許国

内発明よりも他国発明の方が査定率は良かった。

個別の企業に注目すると、SAPは PCTルート(63.6%)、パリルート(66.2%)共に高い

特許査定率を誇っていた。ただ、PCTルートは一度拒絶査定を受けた後に拒絶査定不服審

判請求により、前置審査あるいは拒絶査定不服審判を経て最終的に特許となった件数が 21

件あるのに対して、パリルートでは 13件でありパリルートの方が通常審査の結果特許査定

となった割合が多かった。拒絶査定不服審判請求を含む拒絶査定後の対応は 3.2.3にて詳細

を説明する。

Oracleは圧倒的に他国発明の方が件数が多く、また特許査定率も高かった。一方で、国

内発明は出願件数が 9件と少なく、特許査定率も 22.2%と非常に低かった。中でも、国内

出願の内 1/3にあたる 3件が「未審査請求による出願取下げ」となっていた。このことも特

許査定率を引き下げた原因であると考えられるが、こちらも詳細は 3.2.3で検討する。ルー

ト別比較を行うと、PCTルートの特許査定率が 52.2%であるのに対して、パリルートは

66.1%と高く、SAPと比べて PCTルートよりもパリルートの方が出願件数が多く、また特

許査定率も高かった。以上より、SAPは他国発明と国内発明を意識的に区別していないと

考えられるが、Oracleは本国での発明を最重視し日本を含めその他の国での発明はさほど

重視していないことが推察される。

34

表 10. SAP、Oracle、日本特許庁の特許査定比率

(出典:JP-NETを用いて筆者作成)

3.4.3 拒絶査定時の対応

特許査定あるいは拒絶査定の判断が下された後、この判断に出願人が納得すれば審査段

階で手続は終了することになる。だが、その審査に対して納得できなければ、出願人は不

服申し立てを行うことができる。これを「審判制度」という(図 17)34。審判請求時に補

正書を提出した場合は、前置審査というプロセスを経ることになる。これは審判による審

理を始める前に、拒絶査定を下した審査官がその補正書の内容を確認して、拒絶理由が解

消されたかを審査するプロセスである。前置審査では、審査官が特許性について再度判断

し、補正書によって拒絶理由がなくなった場合には特許査定することとなるが、拒絶査定

の心証が変わらない場合は、審判合議体で改めて審理が行われることとなる。審判過程で

は審判官 3人が担当することとなるので、より緻密な審査が行われることとなる。

図 17. 拒絶査定不服審判のフローチャート

(出典:大嶋洋一 「電子技術者のための特許マニュアル 第 17回審判制度を理解しよう」)

本研究においては、SAPと Oracleの出願のうち、特許査定された出願、審査請求前に取

り下げられた出願及び査定が下されていない未決の出願を除き、「一度拒絶査定を受けた」

出願を抽出した(表 11)。更に、その中で拒絶査定を受け入れて審判へと進まなかった出願

SAP Oracle JPO平均他国発明 64.9% 64.4%国内発明 58.2% 22.2%

50.7%

35

と不服審判請求を行い、最終的に特許査定をされた出願と審判を経ても尚特許査定をされ

なかった出願に区分した(表 12)。

表 11. SAP及び Oracleの特許査定・拒絶査定件数及び割合

(出典:JP-NETを用いて筆者作成)

表 12. SAP及び Oracleの拒絶査定後の対応

(出典:JP-NETを用いて筆者作成)

表 11より、SAPはいずれのルートもほぼ同量の出願件数がなされており、その中でもパ

リルートでの出願が最も特許査定率が高かった。Oracleは PCTルートによる出願が最も多

く直接出願が最も少なかった。また、直出願のうち 1/3にあたる 3件が審査未請求による取

下げとなっており、結果的に特許査定率の低下へとつながった。

表 12より、拒絶査定時の対応は SAPと Oracleで対照的となった。SAPは拒絶査定後に

PCT ルート、パリルート、直接出願のいずれに対しても同じような対応をとった。不服審

判請求を行わず手続を終了する割合は、PCTルートが最も高く(49.0%)、続いてパリルート

(45.7%)、直接出願(40.3%)と続き、その差は 8.7ポイントであった。未だに審判が継続して

いる出願もあるために最終的な判断はできないが、現時点においては直接出願が前置審査

ないしは審判にて特許登録となる割合が最も高かった(47.1%)。Oracle は PCT ルートで拒

絶査定を受けた出願のうち 56.2%に関しては不服審判請求を行っているが、パリルートで

の出願と直接出願によって拒絶査定を受けたものに関しては 1 件も不服審判請求を行って

いなかった。SAP と Oracle を比較すると、SAP の 3 ルートに関しての拒絶査定後の対応

全出願 特許査定 取下げ 未決 拒絶査定PCTルート 77件(100%) 23件(29.9%) 3件(3.9%) 0件(0%) 51件(66.2%)パリルート 77件(100%) 38件(49.4%) 1件(1.3%) 3件(3.9%) 35件(45.5%)直接出願 79件(100%) 22件(27.8%) 5件(6.3%) 0件(0%) 52件(65.8%)

全出願 特許査定 取下げ 未決 拒絶査定PCTルート 168件(100%) 78件(46.4%) 10件(6.0%) 0件(0%) 80件(47.6%)パリルート 23件(100%) 12件(52.2%) 4件(17.4%) 0件(0%) 7件(30.4%)直接出願 9件(100%) 2件(22.2%) 3件(33.3%) 0件(0%) 4件(44.4%)

Oracle

SAP

拒絶査定件数(割合) 不服審判請求せず 前置審査にて特許査定 審判にて特許登録 審判にて請求不成立 未決PCTルート 51件(100%) 25件(49.0%) 9件(17.6%) 12件(23.5%) 5件(9.8%) 0件(0%)パリルート 35件(100%) 16件(45.7%) 12件(34.3%) 1件(2.9%) 0件(0%) 6件(17.1%)直接出願 52件(100%) 21件(40.3%) 12件(23.1%) 12件(23.1%) 6件(11.5%) 1件(1.9%)

拒絶査定件数(割合) 不服審判請求せず 前置審査にて特許査定 審判にて特許登録 審判にて請求不成立 未決PCTルート 80件(100%) 35件(43.8%) 21件(26.3%) 12件(15.0%) 11件(13.8%) 1件(1.3%)パリルート 7件(100%) 7件(100%) 0件(0%) 0件(0%) 0件(0%) 0件(0%)直接出願 4件(100%) 4件(100%) 0件(0%) 0件(0%) 0件(0%) 0件(0%)

Oracle

SAP

36

と Oracle の PCT ルートに関しての同対応は似ているが、Oracle のパリルートと直接出願

に関しては全く不服審判請求を行っておらず、その全てを拒絶査定として確定させるに至

っていた。

出願のルート別特許査定率をみた場合、両社ともにパリルートが最も特許査定率が高か

った。全出願の内、SAPよりも Oracleの方が拒絶査定率が低いが、取下げ率は高かったこ

とから Oracleは特許出願の内、特許査定が難しいと感じた場合には取下げ、全体としての

拒絶査定率を低くしているようである。また、拒絶査定後の対応にも両社で違いが認めら

れた。SAP は拒絶査定を受けた後に、拒絶理由を解消できると考える出願に関しては不服

審判請求をしており、出願ルート別に大きな違いは見られなかった。対して Oracleは PCT

ルートの出願のみを対象に不服審判請求を行っていた。3.2.2 でも述べたように、拒絶査定

時の対応も Oracle は他国発明、特に PCT ルートによる特許出願を最重視していることが

明らかとなった。

3.5 結果の考察

SAP と Oracle 両社の特許出願を IPC という観点からみると、両社とも G06F に関する

出願が最も多かったものの、第二位以下に着目すれば SAPはサプライチェーンや在庫管理

という実際に製品を製造・販売する製造業を初めとして事業全体を統括的に統合する ERP

に注力しているが、Oracleは ERP関連以外の分野にも出願しており、バリューチェーン全

体をカバーするというよりもハードウェアとソフトウェアそしてそれらを繋ぐネットワー

ク技術によって企業のバックオフィス関連事業を縦串で貫いた製品を開発・販売している

ことが推察される。

カテゴリー分類・比較からは、SAPはアプリケーション分野では Oracleに対して優位を

築いているものの、Oracle はデータベース分野とネットワーク分野に優位性があり、SAP

に対してはアプリケーション分野で対抗するというよりもデータベース、アプリケーショ

ン、ユーザ・インターフェイス、ネットワークの統合によって競争力を強めていると推察

される。だが、両社には得意分野はあるものの不得意分野は見受けられなかった。ERP は

統合が大きなテーマとなっているだけに、両社とも業務システムの統合という点に関して

は競合他社に遜色なく構築し、その上で自社独自の得意分野を練り上げていったと考えら

れる。

両社の出願を ERPのモジュール単位として分けると、SAPは Oracleの 3倍強の出願を

行っており、特に販売管理、在庫管理、債権・債務管理、会計システムモジュールに多く

の出願を行っていた。一方で Oracleは債務・債権管理、資産・経費管理、そして人事管理

モジュールに重点的な出願を行っていた。また、両社ともに国内発明の方が他国発明より

も ERPモジュールに関する出願割合が多いために、日本市場向けとして開発・特許出願さ

れたモジュールがあると考えられる。

37

特許出願を他国発明と国内発明という発明由来地で分けると両社の特許出願に関する意

識の差が感じられる。SAP は全出願中およそ 1/3が国内発明である一方で、Oracle の国内

発明割合はおよそ 1/20でしかなかった。このことから、SAPは製品の基礎技術は本国で開

発を行うものの進出先国でローカリゼーションを行い、その成果を特許出願しているので

はないかと推量される。また、SAP の他国発明は米国由来と欧州由来とに大きく区分でき

るが、Oracleは他国発明の全てが米国由来であることから、SAPは欧州で基礎研究開発を

行い、米国で改良開発を行う一方で Oracleは米国で一貫した研究開発を行うという両社の

研究開発姿勢の差が明らかにされた。更に、特許査定率は他国発明の方が高いものの、拒

絶査定を受けた後の対応は他国発明であろうと国内発明であろうと大きく変わるものでは

なく、発明由来地によって異なる扱いをしている傾向は認められなかった。出願ルート別

にみても、PCT ルート、パリルート、直接出願の件数はほぼ同数であり、特許査定率はパ

リルートが高いが、その他に大きな差異は見受けられなかった。一方で、Oracleは PCTル

ートによる出願が最も件数が多く、拒絶査定後にも半数以上の出願に関して拒絶査定不服

審判請求を行っており、PCT ルートを最重視していることが見てとれた。パリルートと直

接出願に関しては、特許出願を行うもののその数は少なく、拒絶査定を受けた後も不服審

判請求を行うことなく審査を終えている。PCT ルートとパリルート及び直接出願の件数の

差及び拒絶査定後の対応の違いから、Oracleは本国発明を PCT出願による進出先国での権

利化を強く推し進めるが、それ以外の発明に関してはあまり権利化に積極的ではなく、特

に日本国内発明は重要視していないという傾向がみられた。

本章での SAP と Oracle の特許出願動向の分析から、SAP は他国発明と国内発明を意識

的に区分することはせず、ローカリゼーションに力を入れていること、そして Oracleは他

国発明、特に PCTルート出願、を最重視して、ローカリゼーションよりも本国での技術を

より普及させるグローバリゼーションを意識していることが推察される。更に、両社とも

に特許出願が拒絶査定を受けた後に半数以上の出願に関して不服審判請求を行っているこ

とは、当該出願の拒絶理由が解消可能であるという考えに加えて、ERP 市場での競合との

競争に打ち勝つために必要な発明であり、特許権として保護されることで市場での競争優

位性を確保しようという考えが背景にあると考えられる。

38

第 4章 まとめと今後の課題

4.1 まとめ

本研究では、SAP と Oracle という日本市場において成功を収めている ERP ベンダー2

社を対象に特許出願傾向を調査・分析した。特に、両社の特許出願に関して、①出願件数

と IPC 比較②出願内容のカテゴリー及びモジュール分類・比較③日本由来の国内発明と他

国由来の他国発明の違いを軸に分析した結果、SAPと Oracleは異なる特許出願戦略を採用

していることが明らかにされた。

まず、IPC という観点からは両社が出願した発明は技術分野が重複しているものが多い

が、Bセクション(処理操作、運輸)に関する出願は SAPだけが行っていること、ネット

ワーク通信に関連する特許出願は Oracle の方が件数が多いことがわかった。また、G06Q

(管理目的、商用目的、記入目的、経営目的、監督目的または予測目的に特に適合したデ

ータ処理システムまたは方法)や Bセクションを付与された特許出願は ERPの統合という

側面よりも、むしろ個別の機能に関連する特許出願が多く、モジュール比較の結果と矛盾

のない結果が得られた。IPC 比較からは、類似する技術分野を得意としながらも競合他社

よりも注力する分野は各社異なることが見て取れた。

次のカテゴリー分類・比較によって、SAPはアプリケーション分野で、Oracleはデータ

ベース分野とネットワーク分野でお互いに優位性を構築していること、そして SAPは豊富

なアプリケーションが、また Oracleはデータベース、アプリケーション、ユーザ・インタ

ーフェイス、ネットワークの統合によって競争力を強めていることが分かった。モジュー

ル分類・比較からは、SAPは販売管理、在庫管理、会計システムといった ERPのモジュー

ルに関する特許出願件数が多く、個別の ERP機能を網羅しているものの、必ずしも全分野

で Oracleよりも優位であるとは言えないことが明らかになった。

そして他国発明と国内発明の比較により、SAP は他国発明と国内発明を意識的に区別

することなく同じような特許出願傾向があり、また拒絶査定後の対応も同様であること、

そして Oracleは国内発明よりも他国発明の件数が圧倒的に多く、特に拒絶査定後の対応か

ら PCTルート経由での特許出願を最重視していることがわかった。更に、発明由来地比較

からは、SAP は基礎研究開発を欧州、特にドイツで行い、追加研究開発を米国で行うこと

で ERPパッケージのひな形を構築し、日本では日本固有の機能を開発し、特許出願してい

ること、並びに Oracleは基礎研究開発を全て米国で行い、追加の研究開発もそのほとんど

を米国で完了させており、日本での開発と特許出願はごく少数にとどまることが明らかに

された。これらの結果から、SAP は本国での基盤技術の研究開発に加えて、日本での現地

開発を行いローカリゼーションに注力していること、並びに Oracleは本国で開発した技術

を日本においても適用するグローバリゼーションを重視していると考えられる。一口に外

資ベンダーとはいうが、ドイツ企業 SAP と米企業 Oracle は特許出願に関する考えが多少

39

異なることが本研究の結果明らかにされた。また、本リサーチの成果は、両社の特許出願

戦略の違いから、どこでの技術開発を重視しているのか、またローカリゼーションかグロ

ーバリゼーションかの企業意識の違いが判明した点にあると考える。

4.2 今後の課題

本研究では、ドイツの SAP と米国の Oracle が日本という市場においてどのような特許

出願戦略を採用しているかが明らかにされた。SAPがローカリゼーションに、Oracleがグ

ローバリゼーションによって販売を伸ばしている傾向は日本のみならず他国においても観

察できることが予測される。そのため、今後は調査対象国を拡大し、日本以外の国におい

ても同様の結果を得ることができるかどうかが課題となる。

本研究では述べられなかった点として、両社の開発拠点がどこにあるのか、IPC 分析、

カテゴリー及びモジュール分類・比較の際に他国発明と国内発明に差異があるかどうか等

が挙げられる。

また、本研究では日本特許庁に出願された特許のみを調査対象としたが、本国での出願

も調査対象に加えた方が更に正確な結果となることが予期される。

グローバル化が日進月歩で進展する現在のビジネス環境においては、特許出願を発明由

来地による区分のみならず新たな評価軸を加えることがより各企業の特許出願戦略、ひい

ては技術開発動向や販売戦略を正確につかむためには必須となるであろう。本研究では明

らかにされなかったこれらの点を、今後の課題としたい。

40

謝辞

プロジェクトレポートの執筆にあたって田中義敏教授からは普段の助言をいただいた。

田中教授の熱心な指導及び激励に心から感謝いたします。また、日高一義教授並びに梶川

裕矢准教授を始め研究科教員の皆様にご指導いただいたことを感謝いたします。そして、

臆病な自尊心と尊大な羞恥心によって遅々として研究が進まない私に対して常に真摯な態

度で切磋琢磨してきてくれた田中研究室の皆様及び研究科の学生の皆様に御礼申しあげま

す。

2014年 3月 萱野 康親

41

参考文献

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