『恵みを数える』 -...

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栄    光 2015 年 4 月号 宣 教 20 21 20 19 26 153 153 61 21 14 No.725 宣教……………1 特集・イースター そして「いのち」 について……… 2 受洗おめでとう …5 追悼・ 菊地田鶴姉…… 5 祈祷会…………6 西南支区総会 報告……………6 伝道師のメモ帳…7 牧師の書斎から…7 長老のファイル…8 (1)

Transcript of 『恵みを数える』 -...

  • 栄    光 2015 年 4 月号

    宣 教

     

    復活のキリストは、弟子たちに

    顕れました。「父がわたしをお遣

    わしになったように、わたしもあ

    なたがたを遣わす」と語りかけら

    れました(ヨハネ20・

    21)。

     

    弟子たちはそれからどうしたの

    でしょう。ペトロ、トマス、ナタ

    ナエル、ゼベダイの二人の息子、

    名前の伝えられていない二人の弟

    子とあわせて7人は、ペトロとゼ

    ベダイの息子たちの故郷ガリラヤ

    に戻っていました。復活の主に出

    会って彼らはすっかり生まれ変

    わったのでしょうか。

     

    元漁師ペトロは、「わたしは漁

    に行く」と声をかけました。仲間

    の弟子たちも、「わたしたちも一

    緒に行こう」と舟に乗り込みまし

    た。夜通し漁をしましたが網の中

    は空っぽでした。

     

    夜明けです。朝の光が射してき

    ます。そのキラキラした光の中か

    らキリストが顕れます。エルサレ

    ムで、キリストが弟子たちに出

    会った時とは違います。夕方では

    ありません。ユダヤ人たちを恐れ

    て、部屋のなかに鍵をかけて隠れ

    ていた(20・19、26)のではあり

    ません。夜明けの光の中で浜辺に

    立つキリストは、その輝きのため

    か、弟子たちには誰なのかまだわ

    かりませんでした。浜辺から舟ま

    での距離は百メートルほどでしょ

    うか。浜辺から沖合に向かって吹

    く風に乗って、声が聞こえてきま

    す。「子たちよ、何か食べる物が

    あるか」(5節)。弟子たちは、た

    だ一言「ありません」と答えました。

     

    それ以前に復活の主と既に二度

    出会っています。三度目の出会い

    です。人生こんなものかもしれま

    せん。私たちの人生でも、ぶっき

    らぼうに「ありません」と答える

    しかないことがあるでしょう。一

    生懸命働きました。でも空っぽで

    す。徒労としか思えないのです。

     

    この声の主がキリストだと分

    かった時、ペトロは裸だったので

    上着をまとって湖に飛び込みま

    した(7節)。不思議なことです。

    ある学者は、神との約束を破った

    最初の人間アダムとエバを思い浮

    かべるべきだと示唆します。蛇に

    唆されて禁断の木の実を食べた二

    人は目が開け、自分たちが裸だと

    気づいてイチジクの葉で覆いまし

    た。神の御前で、御心に背く恥ず

    かしい自分たちだと気づいたから

    隠すのです。

     

    三度キリストを知らないと裏

    切ったペトロにも復活の主は顕れ

    てくださいました。一度ではあり

    ません。既に二度顕れてください

    ました。そして、今や三度目の復

    活の主との出会いです。しかし、

    罪人が回心して、完全な真人間に

    なりきれないのです。キリストに

    遣わされても早々期待には答えら

    れません。御心には従えません。

     

    そんな弟子たちだから復活の主

    は顕れてくださいます。声をかけ

    てくださいます。三度目です。3

    は完全数です。何度でも、絶えず

    復活の主は私たちに出会い、私た

    ちに声をかけてくださいます。

    「舟の右側に網を投げてごらん。

    見つかるよ」(6節直訳)。この声

    に聞き従ってみるのです。悪魔の

    囁きではありません。復活の主イ

    エス・キリストの御声です。

     

    復活の主は顕れ、声をかけてく

    ださるだけではありません。浜辺

    で炭火をおこし、魚を焼き、パン

    を用意して、共に朝食をとること

    ができるよう待っていてください

    ます(9節)。

     

    主の言葉に従ってとれた魚は153

    匹。7人の弟子とキリストとでは

    とても食べきれないほど大量の魚

    でした。主が顕れ、声をかけ、食

    事の用意をしてくださっていま

    す。その恵みを弟子たちは見いだ

    しました。1匹1匹数えたら大き

    な魚153匹。どんなに大きな恵みで

    しょう。最後の晩餐と共に、復活

    の主との食事が私たちの聖餐の起

    源です。復活の主が聖餐の恵みを

    分かち与えてくださいます。

    『恵みを数える』

    イザヤ書61章1節~4節

    ヨハネによる福音書21章1節~14節

    岸 

    俊彦

    No.725

    宣教……………1

    特集・イースターそして「いのち」について………2

    受洗おめでとう…5

    追悼・菊地田鶴姉……5

    祈祷会…………6

    西南支区総会報告……………6

    伝道師のメモ帳…7

    牧師の書斎から…7

    長老のファイル…8

    (1)

  • 栄    光2015 年 4 月号 (2)

     

    アダムとイブが「エデンの園」

    から追放されたのはヘビに騙され、

    イブが「知恵の木」の実を食べた

    からですが、聖書の話はそれで終

    わりではなく、エデンにはもうひ

    とつ大切な「生命の木」がありま

    した(創世記3・22~24)。中世絵

    画には楽園追放のシーンでヘビの

    誘惑と「知恵の木」は見ますが、「生

    命の木」はさほど有名ではないの

    かと思っていましたら、最近読ん

    だ2冊のミステリ小説に重要な鍵

    として立て続けに出ていました。

    デボラ・ハークネス “

    Shadow of

    Night”

    (2012

    )とジェームズ・ロ

    リンズ “

    Bloodline”

    (2012

    )です。

     

    二人は同世代の米国作家でハー

    クネスは現役の歴史学者、ロリン

    ズは獣医出身の作家です。両者と

    も奇抜なストーリー展開の裏に中

    世や古代の時代考証がきわめて綿

    密にされており、史実の裏面やエ

    生命の木

    (The Tree of Life)安部隆雄

    ピソードがユニークな切り口で語

    られます。ハークネスは英国中世

    史をリアル・タイムで紹介するた

    め魔女を登場させ、ロリンズはテ

    ンプル騎士団の女性騎士がエルサ

    レムで「モーゼの杖」を発見する

    といった奇想天外ぶりですが、聖

    書や歴史のデータがふんだんに織

    り込まれているので面白くないは

    ずがありません。

     

    限りある生命を大切にする心を

    作家はフィクションの世界を使っ

    て「時空」を超えて表現してみせ

    るのですね。デボラ・ハークネス

    はTim

    ewalk

    する魔女を、ジェー

    ムズ・ロリンズは生命の木「モー

    ゼの杖」を守った500才の墓守を登

    場させています。しかし「時間」

    もまた果たして絶対的なもので

    しょうか…?

    「アインシュタインは現在・過

    去・未来の区別なんぞは頑固な先

    入観・幻想でしかなく、そのこと

    はすでに物理学者の常識になって

    いると言っていた。彼は人知を超

    える奇跡を信じ、時間が伸び縮み

    (elasticity of time

    )することも

    知っていた」(デボラ・ハークネ

    ス『魔女のめざめ』2010

    イースターそしていのちについて

    イースター。イエス様が復活された喜びが今年もまた、私たちに大きな力を与えてくれます。そしてこのとき、「よみがえり」や「いのち」についても考えます。私たち人間だけでなく、小さな草花にも同じように神様から命が与えられています。イースターについて、いのちについて、私たちは何を思い、願うのでしょうか。

    「 」

  • 栄    光 2015 年 4 月号(3)

     

    谷川の水を求めて、あえぎさま

    よう鹿のように、神よ、わが魂は、

    あなたを、慕う。(讃美歌21・131)

     

    イエス様は死んで3日目によみ

    がえり、今生きておられる。これ

    を信ずる私達には、永遠の命が与

    えられ、イエス様と共に天に入る

    ことができる。クリスチャンに

    とって、最も大切な福音であり喜

    びです。「わたしは、世の終わり

    まで、いつもあなたがたと共にい

    る」(マタイ28・20)と約束して

    くださっています。「朽ちるもの

    が、主イエスによって朽ちないも

    のに変えられる日が来ます」(1

    コリント15・53)とも…。神は、

    和解の御業の収穫に参与させるた

    めに、私達に独立した自由な主体

    を与え給え、イエス様の第一の来

    臨の時と最後の来臨の時を分離さ

    れ、中間時―不明瞭な継続の時間

    的中間地帯―を設け給いました。

     

    同窓会へ行くと、20歳代は結婚

    の話、30歳代は子供、40歳代は住

    宅、50歳代は定年準備、60歳代は

    病気自慢、70歳代は終活と、話題

    は大体決まっている。

     

    友人が私に「自分も終活を行っ

    た」と話してくれた。彼によると

    財産分与はもちろん、お墓を用意

    し、戒名までも決めたそうである。

    お墓はともかく戒名までも、と私

    は驚いたが、本人は真剣である。

     

    誰でも自分に関心のあることに

    ついては真剣に取り組むが、関心

    のないことについては聞き流す。

     

    私にとっての最大の関心事は何

    であろうか? 

    私達に約束されて

    いる天国とはどんな処だろうか。

    悩みも憂いもない穏やかな永遠の

    命が与えられる処だとしたら、そ

    のようなストレスの無い状況が果

    たして私達が望む幸せな処なのだ

    ろうか。天国とは、いくら考えて

    イースターについて、

    「いのち」について

    私の終活

    石丸良明

    桜岡 元

    復活後の40日から使徒信条「かし

    こより来たりて…」との間の時間

    を、私達は、地上を旅する神の民

    として、教会と共に歩んでいます。

     

    心をつくして祈ります。イエス

    様のからだであります教会の一部

    として、罪深く信仰の薄い、なん

    の取り得のない私を用いていただ

    けますように。神様に喜ばれ祝福

    される者に変えられますように。

     

    3月、銀座・教文館にて、灇眞

    智子さんの写真展で光を受け、今

    も強く焼き付いています。フォト

    五行歌集の刊行記念。本はすでに、

    読ませていただいていましたが、

    やはり本物の大きな作品のインパ

    クトは、強烈な光、メッセージを

    発し、にぶい私の感性にも、目覚

    めのスイッチが働きます。神の創

    り給う命、私たち人間だけでなく、

    小さな草花にも神様から同じよう

    な命が与えられている。眞智子姉

    の作品に感謝。「み言葉うちひら

    くれば光をはなちて、おろかなる

    者をさとからしむ」(詩119・130)。

    ありがとうございました。

     最後に「一身にして二生を経る」。

    自分という人間の中で二つ目の人

    生に生まれ変わりますように。

    も、いくら想像してみても分らな

    い。それは当たり前のことで、行っ

    たことも無ければ見たこともな

    い。しかも天国を経験した人の話

    を聞いたことも無い。きっといく

    ら想像してみても、いくら考えて

    みても納得できる答えは得られな

    いと思う。ただ言えることは、十

    字架のキリストにより復活の途は

    開かれているということだ。私達

    のために備えられている神の国が、

    私達にとって悪いはずが無い。

    きっと私達の想像をはるかに超え

    た素晴らしい処であるはずである。

     

    それでは、終わりの日に向けて

    どのような備えをすればよいの

    か。神の国がどのようなもので

    あっても喜びと共に受け入れる心

    の準備をしておくことが重要であ

    ると思う。そのための心の準備は

    信仰によって導かれる。

     

    神様を信じる者にとっては、神

    様の救いが不安を取り除き、安心

    をもたらし、慰めとなるはずだと

    すれば、神様を信じる信仰をさら

    に強めていくしか、今の不安を取

    り除く方法はない。

     

    キリスト者の終活は、ただひと

    つ信仰を高めることだ。

  • 栄    光2015 年 4 月号 (4)

    原稿の依頼を受けた頃、ちょう

    ど東日本大震災の追悼行事が報道

    されていたこともあって、失われ

    てしまった「いのち」に思いがよ

    ぎりました。「いのち」について

    普段あまり思い巡らすことはあり

    ませんが、改めて思い返すと、自

    分の周りにも、もう会えなくなっ

    てしまった方が何人もいることに

    気づかされます。

     

    私には30年以上の付き合いのあ

    る幼馴染が数人います。同じマン

    ションに住んでいた頃に知り合

    い、子供の頃は、両親の都合で引っ

    越した後も、たまに会って遊んで

    いました。今でも年に一度程度で

    すが集まって近況を語り合ってい

    ます。

     

    私が小学生だったある日、母か

    ら幼馴染の一人が病気で亡くなっ

    たことを聞かされました。当時私

    は富山県に住んでおり、その友人

     

    津波が引いた後の惨状を見て98

    才の母は「これから日本はどうな

    るのかしら」と目をみひらいた。

    艱難辛苦をのりこえて、中国から

    引き揚げ上陸して見た焼土とかさ

    なっているのだと思った。

     

    一世紀は生きて今後の日本をみ

    たいというので、「八重の櫻」を

    みながら母の若い頃の話を聞き質

    した。

     

    祖父は群馬生まれ、新島襄をし

    たって京に上り、丁稚から叩き上

    げて功成った時、同志社女子第一

    期生の才媛をめとった。

     

    祖母の実家は滋賀県水口。この

    辺りは、奈良京都の街づくりのた

    めに渡来した職人集団の部落が多

    い。祖母の面長色白一重まぶたは

    その末裔と思わせる。

     

    世界大恐慌の波にのまれて、祖

    父は会社をつぶし、三人娘を医者

    に嫁がせた。

    亡き友を思う

    母 森春恵の事

    持田祐介

    寺田恵子

    とは年に一度会うかどうかという

    くらいでした。彼がそんなに重い

    病気と闘っていることなど露ほど

    も知らなかったため、本当に衝撃

    的でした。もう二度と会うことの

    できない寂しさで只々泣いていた

    のを覚えています。

     

    大人になり、息子が当時の彼と

    同じ年頃になった今、彼の死を思

    うと親としての目線から考えてい

    る自分に気づきました。当時は彼

    と会えなくなった自分の境遇を嘆

    いていたように思います。今は、

    彼の死がご両親に与えた大きな悲

    しみを思い、そして彼が生きてい

    たらどんな仕事をし、どんな風に

    仲間たちと酒を飲み交わしたのだ

    ろうと、息子と重ね合わせて彼の

    ことを思い出します。

     

    普段はなかなか彼のことを思う

    ことなく過ごし、少々薄情だなと

    自省しています。これを機に、同

    じ幼馴染の友人と共に彼について

    語り合いたいなと思いました。

     

    イースターを迎え、改めて彼を

    思い出すきっかけをいただきまし

    た。このような機会を与えられた

    ことに感謝し、イースターの喜び

    を祈りたいと思います。

     

    父は賀川豊彦の中国旅行に同行

    した事をきっかけにキリスト者に

    なっており、教会の紹介で母と出

    会った。お見合の席で聡明な祖母

    に魅せられ、この夫人に育てられ

    た娘さんならと結婚にふみ切った

    という。

     

    母は神戸女学院を卒業して上京

    し、保母になりたいと思っていた

    時だった由で、いやいや、泣き泣

    き中国へ渡り、満州医科大学外科

    助教授と結婚。長男を奉天で、長

    女をさらに僻地の蒙古病院で出

    産。祖父母も同居していた。

     

    母の最晩年は、4人目の子、森

    洋二のもとでおだやかに、四国松

    山ですごす事が出来た。

     

    弟の初孫、千の父親は米国人。

    生まれは松山。ベッドで寝てい

    る「ジイジのママ」の事は大好き。

    この度妹が生まれるので再び松山

    に来ている最中2月5日。4人の

    子、11人の孫、14、5人の曽孫を

    残して母は天に召された。

     

    千ちゃんは妹が生まれた23日、

    病室で妹を愛撫した後、キョロ

    キョロと見まわして「ジイジのマ

    マがいる」と言った。母は、幼な

    子にも「命」の継承を伝えたようだ。

  • 栄    光 2015 年 4 月号(5)

     

    私が教会というものを知ったの

    は15年前でした。私はキリスト教

    系児童養護施設に3歳の頃に預け

    られました。当然、幼い頃の記憶

    はないため、ここでの生活が普通

    だと思っていました。物心がつき、

    思春期にもなると、養護施設にい

    ることを恥じるようになり、反抗

    期を迎えます。その上、毎日の食

    前・就寝前のお祈り、毎週の教会

    学校。素直にクリスマスプレゼン

    トを喜びたいはずなのに、望んで

    もいないクリスマス礼拝。普通の

    生活を送りたいのに、受洗をして

    いない私たちは、何となく讃美歌

    を歌ってお祈りをして…。そんな

    毎日を15年間過ごしました。これ

    が簡単な私の歩んできた道です。

     

    高校1年の時、私は上野峻一伝

    道師と出会いました。当時、彼は

    養護施設に夜勤のアルバイトとし

    受洗おめでとう

    受洗の決意

    て来ていました。今と変わらず人

    の話を聞かず、お節介で、少しず

    れた人だという印象でした。養護

    施設の子供たちは外部の人間を嫌

    います。上野先生も例外ではなく、

    最初はみんな探り探りで接してい

    ました。が、不思議と彼のオーラ

    にみんなが惹かれ、いつの間にか

    彼が来るのを待つようになってい

    ました。私自身も大学受験のこと

    でお世話になりました。児童養護

    施設の子が大学に進学するケース

    はほとんどありません。私の施設

    も30年以上いませんでした。みん

    なからの期待でプレッシャーに負

    けそうになった時にはいつも上野

    先生に励ましていただきました。

     

    ある時、彼は「鷹広が大学進学

    を考えた時に僕がアルバイトで来

    て、受験を終えたときに僕も辞め、

    進学した大学の近くに経堂北教会

    があるのは偶然じゃない。きっと

    神様が導いてくれてるんだよ」と

    言いました。私もそう思います。先

    生に感謝し、彼を遣わしてくれた

    神様に感謝します。神様を信じら

    れたことと、私も上野先生と同じ

    ように隣人に信仰を伝えたいと望

    んで、今回の受洗を志願しました。

    諸橋鷹広

     

    母といえば、忙しい家事の合間

    に食堂の隣で絵を描いていたのが

    思い出される。日本画の絵の具、

    花瓶の花を私は幼い頃から日常の

    光景として目にしてきた。展覧会

    の前になると、大きな作品を器用

    に梱包して画廊まで電車に乗っ

    て(私もお供するが)搬入するこ

    ともあった。絵描きというのは芸

    術のセンスだけでなく力仕事も必

    要で、小柄な母が大変な作業をよ

    くこなすと感心したものだ。当時

    通っていた用賀教会の婦人会の活

    動もしており、家事、絵画、教会

    の三つが生活の軸だったと思う。

    父と共に経堂北教会に転入してか

    らも同じように生活していた。

     

    父が召されてからは息子と二人

    の生活になり、大変苦労した母は

    よく祈っていた。制作も続けてい

    たが、この頃から腰椎の圧迫骨折

    に悩まされ、痛みが酷くなるとし

    ばらく寝込むので私が手伝いに通

    うようになった。私が来る日を心

    待ちにして母は辛抱強く耐えてい

    た。もし自分が同じ状況だったら

    忍耐強くいられるか自信はない。

     

    そのようなことが続き、母が私

    達の住む東大和市に転居したのは

    91歳のときだった。年齢の割りに

    は適応能力もあり、近所の花屋で

    買った花を写生したり、私と散歩

    に出かけて草花を愛でたりして、

    ゆったり過ごして幸せそうだった。

     

    2年後、最愛の息子に先立たれ

    た悲しみのなかでも、母は変わら

    ず祈っていた。近くの老人ホーム

    に入居してからは目も悪く思うよ

    うに描けなくなり、筆を取ること

    もなくなったのは少し残念だった

    が、時折ヘルパーさんに昔のイギ

    リス旅行のスケッチを見せたりし

    て、なかなかの人気者だったようだ。

     

    今、母はたくさんの花に囲まれ

    て微笑んでいる。長い間元気でい

    てくれてありがとう、天国で父と

    兄に会えてよかったね、と私は語

    りかけている。   (内田直美)

    描く事、祈る事

    ー母の思い出ー

    故・菊地田鶴姉

    追 悼

  • 栄    光2015 年 4 月号 (6)

    西南支区総会報告

     

    3月8日(日)午後2時から頌

    栄教会にて「3・11を覚える礼

    拝」が持たれました。東日本大震

    災で亡くなられた方々、被災され

    た方々を覚えて祈りを合わせ、讃

    美歌を歌いました。本多記念教会

    の梅津裕美先生が司式と説教を担

    当してくださいました。

     

    連祷(リタニー)では司式者と

    会衆が交互に声を出して、被災さ

    れた方々のために祈りを合わせま

    した。祈りの言葉を一つひとつ丁

    寧に読まれた梅津先生の声から、

    被災者の方への優しく温かな思い

    と、大きな励ましを感じることが

    出来ました。最後の「震災より4

    年を迎えた我々を、逃避と忘却の

    誘惑から救ってください。苦しみ、

    悲しみの中にある方々を日々思い

    やり、主なる神様、あなたに希望

    を見出してゆく群れとなさしめて

    ください。私たちの主、イエス・

    キリストの御名によって、祈りま

    す」という祈りに、一同が大きく

    「アーメン」と声を合わせること

    が出来ました。この祈りの言葉を

    心に刻み、私たちに今出来ること

    を続けて行けますように。

     

    礼拝後には西南支区第76回定期

    総会が行われました。議長は副支

    区長の清弘剛生先生が担当され、

    及川信支区長を欠いての開会とな

    りました。議事最初の「支区長選

    出の件」の時、会場から「支区長

    選出にあたり、説明出来る範囲で

    結構なので今の及川先生の病状の

    ことを教えていただけないか」と

    いう申し出があり、清弘先生が説

    明をされました。説明を聞いて皆

    少し安心しました。引き続き及川

    先生の一日も早い回復をお祈りし

    ます。その後、支区長、副支区長、

    書記には清弘剛生先生、生原美典

    先生、北川正弥先生がそれぞれ選

    出されました。議事の後、「その他」

    で報告がありました。「隠退教師

    を支える会」の百円献金運動のこ

    と、続いて教団年金局担当の方が

    前に出られて報告をされました。

    お二人とも手元に何も資料を持た

    ず、それぞれの働きと必要性を熱

    く訴えかけられました。初めて参

    加した支区総会、その場にいなけ

    れば聞けなかった様々な声に耳を

    傾ける機会が与えられました。

    (沢田寛子)

     

    私は、小倉正大・京子の孫で、

    重藤直樹・栄子の娘です。まだ若

    く颯爽としていた、今は亡き祖父

    の自転車を先頭に、私たち孫一同

    の子供用自転車がカルガモのよう

    に連なり、毎週教会へ通っていま

    した。教会から長く離れていた間

    に、幾度か夢にでてきた光景です。

     

    完全に安心できる自分の居場所

    だったCS、中学から大学まで学

    んだ恵泉、そしてクリスチャン

    ホームに守られて育った箱入り娘

    は、社会に出て初めて目にする

    様々な世界に気をとられ、放蕩息

    子さながらに勝手をし、教会に十

    何年も背を向けていました。身勝

    手に人生を歩くなかで、大きな過

    ちや失敗も重ねてきました。

     

    しかしとにかく今を何とか生か

    されているのは、「あなたにはキ

    リスト者としての基礎の基礎を叩

    き込んである。価値観の全てを信

    仰に基づいて育ててきた。だから

    生き、踊り、

    主に喜ばれる

    重藤優子

    崖のどん底からでも自分の力で主

    に喜ばれる道まで這い上がってき

    なさい」という厳しい訓示を暗闇

    の中だからこそ受けとることがで

    きたからに他なりません。

     

    現在、駆け出しではありますが、

    フラメンコを踊り、教える仕事を

    しています。不安定な職業ですが、

    自分のなかに育まれてきた、主に

    与えられた生命力のような何かを

    不思議と信じることができ、崖を

    這い上がっている途中です。

     

    この仕事を始めて間もない数年

    前、ある日突然左足に原因が全く

    わからない麻痺がおき、踊ること

    はもちろん、歩行すら大きく制限

    されました。大袈裟かもしれませ

    んが、生きることの根本に影を落

    とす出来事でした。そして、教会

    に再び通い出し1年ほどした一昨

    年頃でしょうか、氷が溶けるかの

    ように回復をみせ、何とか踊れる

    ようになっています。精神と直結

    しているのかもしれません。この

    不自由な左足が私の踊りに教えて

    くれることは計り知れません。

     

    生き、踊り、主に喜ばれる道に

    這い上がって行くしかないので

    す。

    祷祈

    3.29

  • 栄    光 2015 年 4 月号(7)

     

    主の復活ハレルヤ! 

    新年度の

    最初の日曜日が復活祭というの

    は、何だかいいスタートができそ

    うな気がします。この時、私たち

    には、さらに大きな喜びが与えら

    れました。4月5日、洗礼を授け

    られ、新しく主イエスに従う者が

    教会に加えられます。まだ、20歳

    にもならない彼の歩みを思いなが

    ら、本当に不思議な聖霊の導きを

    感じさせられます。

     

    林愛子さんの葬儀の準備をしな

    がら、この原稿を書いています。

    教会創立時からの唯一の信徒で

    す。姉妹を天に送り、私たちの教

    会には当時の証人がいらっしゃら

    なくなりました。とても寂しいこ

    とです。しかし、私たちは「見ず

    して信じる者は幸い」との信仰を

    与えられています。この信仰を受

    け継ぎ、次の世代に信仰を伝えた

    いと思います。

    「先生、何してるの?」。一人の

    男の子が声をかけてきました。宿

    直の仕事を始めたばかりで、何を

    していいか分からず、私はいつも

    当直の時間になるまで、鏡の前で

    素振りをしていました。思春期

    真っ盛りの中高生男子が、突然

    やってきた余所者の私を簡単に受

    け入れてくれるはずはありませ

    ん。そんな時、哀れな私に声をか

    けてくれたのが、諸橋くんでした。

     

    その後、3年間「のぞみの家」

    で勤める間、東神大の高校生会に

    連れて行ったり、東神大のフット

     

    年度の変わり目の慌ただしい季

    節、集会や総会の準備をしなが

    ら、合間を縫うように一人の若者

    の受洗講座を続けました。試問会

    を無事に終え、この号が出るイー

    スターの当日、洗礼式に臨みます。

    とても嬉しいことです。

     

    一段落したと思っていたら、高

    校生が相談にやってきました。教

    会学校の生徒です。洗礼を受けた

    いとの相談でした。うすうすは聞

    いていましたが、人生は長いので

    す。受洗は人生の一大事です。充

    分時間をかけて自分で考えたらよ

    サル部の試合に呼んだり、共に過

    ごす時が与えられました。そして、

    大学受験の合格を共に喜び、昨年

    の4月からは、彼の大学と経堂北

    教会が近かったことから、教会に

    時々顔を出してくれました。今、

    彼と過ごしたこれまでの日々、ま

    た「のぞみの家」で育まれた聖書

    による教育や礼拝などを思うと、

    人間の想像を超えた主のご計画が

    確かにあるのだと思わされます。

     

    そして、今日からは経堂北教会

    のメンバーです。一人でも多くの

    教会員の皆さんが彼に声をかけて

    いと思って、こちらから声をかけ

    ることはありませんでした。本

    人の気持ちはもちろん、両親の考

    えなども確かめるように言いまし

    た。そして、また新たに受洗講座

    が一対一で始まりました。高校生

    とはいえ忙しい日々です。お互い

    のスケジュールを調整しながら、

    10回の受洗講座を修了した時には

    「心で信じて口で告白して救われ

    る」ことの確信がより強くなって

    いるようにと願っています。

     

    二人とも、昨夏に行われた教団

    の青年大会に参加したことが刺激

    くれることを願っています。また

    同時に、経堂北教会を通して、公

    同の教会、頭なる主イエス・キリ

    ストと繋がっていることが大切な

    ことです。宇宙規模に主の御業は

    広く深く偉大なものです。私たち

    が見上げるのは、いつも主なる神

    さまです。一人の受洗者が与えら

    れ、きっと今の私たちと同じよう

    に、いやそれ以上に大きな喜びが

    天にあります。どうか、彼に続く

    者が一人でも与えられるように、

    喜びと感謝のうちに、今日もまた

    共に祈りましょう。 (上野峻一)

    になりました。様々な環境にある

    同世代との若者との出会いが、信

    仰について改めて考えるきっかけ

    となりました。まことに人生は出

    会いです。出会いの真理です。た

    だし、一時の熱を冷まして、落ち

    着いて考える時が必要です。主

    は、その御計画の中でそれぞれに

    最善の時を準備してくださってい

    ます。目を覚まして、その時を見

    極めることが大切です。

     

    信仰の光は、まことにささやか

    な形ではありますが確実に受け継

    がれて行くことでしょう。 (岸)

  • 栄    光2015 年 4 月号

    ○定期教会総会 4 月 26 日(日)礼拝後~午後 3:00

    ○子どもの日合同礼拝 5 月10 日(日)午前 10:15○聖霊降臨日礼拝・全体祈祷会

    5 月 24 日(日)午前 10:15○教会コンサート 5 月 24 日(日)午後 1:30

    ヴァイオリン 久保田巧(桐朋学園大学准教授)

    ▽教会に新しいメンバーが与えられました。次に続くのは誰? 祈って待ちましょう。(沢田)

     

    レントの季節は年度末の季節で

    もあります。私は財務担当ですの

    で、2014年度の決算をまと

    め、2015年度の予算案を策定

    する時期となります。2014年

    4月より消費税が増税され、物価

    も上昇している中、景気回復基調

    と言われても実感がわかないのが

    現実ですが、2014年度経常会

    計及び基金は教会員の皆様のご協

    力とご理解により、ほぼ予算通り

    の決算となりました。また、東日

    本大震災救援募金をはじめ、東京

    神学大学、教団年金局への対外援

    助も支えていただきました。あら

    ためて皆様に深くお礼申し上げま

    す。経済情勢は依然厳しいですが、

    2015年度も皆様のご協力をよ

    ろしくお願いいたします。尚、東

    日本大震災救援募金はほぼ目標額

    を達成できましたので、2014

    年度で終了いたしました。

     

    2014年度を振り返ると、伝

    道師を迎え、2年ぶりの2名教

    職体制となり、礼拝はもちろん、

    様々な委員会や集会、教会学校で

    の活動を通じ、私たち教会員は若

    いエネルギーをもらうことができ

    ました。また、上野伝道師は1月

    にご結婚され、奥様も私たちの群

    れに加わり、大きな喜びに包まれ

    ました。そしてイースターには大

    学生が1人受洗。イースターの喜

    びと共に、若き受洗者の誕生とい

    うダブルの喜びで2015年度を

    スタートできるのは本当にうれし

    く、神様に心から感謝いたします。

     

    日本がますます少子高齢化に向

    かって進んでいく中、私たちの教

    会でも少子高齢化が進んでいるこ

    とは否定できない事実です。とも

    すると、私たちはその事実を後ろ

    向きに考え、希望を見失いがちで

    すが、礼拝を土台とし、地道に一

    つひとつの働きを誠実に担う、そ

    れこそが経堂北教会のこれからの

    歩みにつながるのだと信じます。

    創立80周年まであと2年余り、教

    会全体で思いをひとつにし、祈り

    つつ、2015年度も様々な課題

    に取り組んでいきたいと思いま

    す。       (尾藤美紗子)

    「栄 光」2015 年4月号日本基督教団 経堂北教会〒 156―0051 東京都世田谷区宮坂 3―21―11電 話 :03―3428―5029 / FAX:03―3428―5038牧 師 :岸 俊彦  伝道師:上野峻一編 集 :栄光編集委員会Email :[email protected] :http://homepage2.nifty.com Kyo-doKitaChurch

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