寄 米国NSCA本部におけるストレングス& 稿 コンディショニ...

3
December 2017  Volume 24   Number 10 32 米国NSCA本部におけるストレングス& コンディショニング海外研修プログラムレポート 稿 2017年9月5日~14日、NSCAジャパン ストレングス&コンディショニング海外研修を米国NSCA本部(Performance  Center)にて開催しました。本研修は、NSCAジャパン研修助成制度のひとつとして、NSCA本部における講習費用をNSCA ジャパンが負担するものです。講師陣は、NSCA本部に所属するスタッフを中心に、大学のストレングスコーチらによって 構成されています。基礎的なレジスタンストレーニングや様々な器具を使用したエクササイズ、各シチュエーションに対す るプログラム作成や最新の栄養に関する情報など多岐にわたる内容を学びました。2017年は17名が参加し、そのうち 4 名 が女性でした。本稿では参加された皆様からのレポートの一部を掲載いたします(敬称略)。 NSCA JAPAN Volume 24, Number 10, pages 32-34 【高橋知花 上武大学NSCAジャパンS&C海外研修に参 加させていただき、9月5日~ 14日の 10日間、貴重な体験をしてきました。 日本では味わえないアメリカを存分に 楽しむことができたと思います。そし てたくさんの講義を聞き、実践し、た くさん考えさせられました。 今回この研修に参加した理由は、 “自 分の視野を広げること”です。自分に は何が足りないか、何が必要か、夢に 向かって頑張るにはどうすればいいの か、という疑問と悩みから、今後の自 分のために何か掴めたらと思い参加し ました。 日本とアメリカの違いを生で「見る・ 感じる・触れる」ことができ、アメリ カの規模の大きさに唖然としました。 大きな施設の中に、たくさんの器具が 備わっていました。またトレーナーの 重要性をとても感じることができまし た。トレーニング方法、栄養学、プロ グラム作成、FMSテスト、アジリティ、 エネルギー機構等幅広い講義を受け、 実際に実践することもありました。ど の講義も新鮮で、なかには珍しい講義 や器具もあり、毎日刺激のある勉強が できたと思います。 特に私は、トレーニングをするにあ たって何が大切か何が大事かを考えさ せられました。 私自身、スポーツをする中で必然的 にトレーニングとしてウェイトトレー ニングを取り入れたり、コアトレーニ ングをしていました。ですが、基本の 動作が伴っていないことが、講義を受 けてわかりました。例えばプローン プランクだと、このトレーニングは 「頭、体幹、両足」を一直線にすること が重要です。私もそれを意識して今ま で行なっていました。ですが私は、肩 甲骨が丸まっていて、肩関節の力でこ のトレーニングを行なっていたことが わかりました。胸を張ることで肩甲骨 が真っ直ぐになり、ちゃんとした動作 を行なえたというわけです。ひとつの 動作でも何かが欠けていたり、何かが 違えば、それはトレーニング方法が間 研修のスタートはケトルベルトレーニング オリンピックリフティングのトレーニング風景

Transcript of 寄 米国NSCA本部におけるストレングス& 稿 コンディショニ...

Page 1: 寄 米国NSCA本部におけるストレングス& 稿 コンディショニ …グラム作成、FMSテスト、アジリティ、 エネルギー機構等幅広い講義を受け、

December 2017  Volume 24   Number 1032

米国NSCA本部におけるストレングス&コンディショニング海外研修プログラムレポート

寄稿

 2017年9月5日~14日、NSCAジャパン ストレングス&コンディショニング海外研修を米国NSCA本部(Performance Center)にて開催しました。本研修は、NSCAジャパン研修助成制度のひとつとして、NSCA本部における講習費用をNSCAジャパンが負担するものです。講師陣は、NSCA本部に所属するスタッフを中心に、大学のストレングスコーチらによって構成されています。基礎的なレジスタンストレーニングや様々な器具を使用したエクササイズ、各シチュエーションに対するプログラム作成や最新の栄養に関する情報など多岐にわたる内容を学びました。2017年は17名が参加し、そのうち 4 名が女性でした。本稿では参加された皆様からのレポートの一部を掲載いたします(敬称略)。

CNSCA JAPANVolume 24, Number 10, pages 32-34

【高橋知花 上武大学】 NSCAジャパンS&C海外研修に参加させていただき、9月5日~ 14日の10日間、貴重な体験をしてきました。日本では味わえないアメリカを存分に楽しむことができたと思います。そしてたくさんの講義を聞き、実践し、たくさん考えさせられました。 今回この研修に参加した理由は、“自分の視野を広げること”です。自分には何が足りないか、何が必要か、夢に向かって頑張るにはどうすればいいのか、という疑問と悩みから、今後の自分のために何か掴めたらと思い参加しました。  日本とアメリカの違いを生で「見る・

感じる・触れる」ことができ、アメリカの規模の大きさに唖然としました。大きな施設の中に、たくさんの器具が備わっていました。またトレーナーの重要性をとても感じることができました。トレーニング方法、栄養学、プログラム作成、FMSテスト、アジリティ、エネルギー機構等幅広い講義を受け、実際に実践することもありました。どの講義も新鮮で、なかには珍しい講義や器具もあり、毎日刺激のある勉強ができたと思います。  特に私は、トレーニングをするにあたって何が大切か何が大事かを考えさせられました。  私自身、スポーツをする中で必然的

にトレーニングとしてウェイトトレーニングを取り入れたり、コアトレーニングをしていました。ですが、基本の動作が伴っていないことが、講義を受けてわかりました。例えばプローンプランクだと、このトレーニングは

「頭、体幹、両足」を一直線にすることが重要です。私もそれを意識して今まで行なっていました。ですが私は、肩甲骨が丸まっていて、肩関節の力でこのトレーニングを行なっていたことがわかりました。胸を張ることで肩甲骨が真っ直ぐになり、ちゃんとした動作を行なえたというわけです。ひとつの動作でも何かが欠けていたり、何かが違えば、それはトレーニング方法が間

研修のスタートはケトルベルトレーニング オリンピックリフティングのトレーニング風景

Page 2: 寄 米国NSCA本部におけるストレングス& 稿 コンディショニ …グラム作成、FMSテスト、アジリティ、 エネルギー機構等幅広い講義を受け、

C National Strength and Conditioning Association Japan 33

違っています。他の動作でも、頭でわかっていたとしても動きが伴わない場合も、できない場合もあります。そのときは、個々の動作を指摘することで動きを掴むことができました。ひとつのトレーニングをするにあたって、複数の動作が必要です。複数の動作が連携して、ひとつのトレーニングができることがわかりました。講義の一番最初に勉強したケトルベルも同じで、複数の動作が連携してひとつのトレーニングになりました。動作を理解することや、一連の動作を完成させることでより良い動きになり、パフォーマンスの向上につながることがわかりました。私自身、苦手だったトレーニングも、ひとつアドバイスを受けることでそこを重点的に意識した動きができました。また、重さが重要なのではなく、身体一つひとつの動きの確認をするためにトレーニングをしたり、頭を使うトレーニングもありました。  また、指導する立場としても考えることができました。年齢に合わせて一つひとつのトレーニングに対し、回数を競い合ったり、速さを求めたり、そういったことも含め、たくさんの講義を通して、たくさん学ぶことができ、

これからの自分に役立つことばかりでした。  最後に参加した方たちとコミュニケーションの場としてもたくさん話をすることができました。同じ方向性をもった方たちと語り合う、とてもよい機会になりました。大西さんをはじめとするNSCA関係者の皆様、たくさんの人のおかげで 10日間、貴重な毎日を過ごせました。今回、この研修に参加して本当によかったです。この研修に参加したことで得るものはたくさんありました。出会いと学びに感謝です。お世話になりました。この研修での経験を生かし、人としても信頼できるトレーナーになりたいです。これからもよろしくお願いします。

【林崎拓也 (株)ゼネラルフィットネス】 2017年9月5日~14日 の 間、NSCA本部での海外研修に参加してきました。 普段は、福島県にあるスポーツクラブにて勤務をしておりますが、首都圏に比べるとまだまだ S&C や適切な運動効果の普及されていないのが現状です。今回の研修を通して自分の知識や技術のブラッシュアップ、さらには本

場アメリカの指導現場を体感することで地方への普及のヒントを見つけることを目的としていました。 研修に関しては、講義を受けてから実技を行なうという形式で、頭の中で理解したことをすぐに自分の身体で体感することができ、理解を深めることができました。10日間という限られた期間の中で、ベーシックエクササイズの他に FMS やケトルベル、TRXなど日本ではまだ普及していない分野に関する知識やトレーニング方法、指導技術を学ぶことができ、自分の中の知識、指導技術の向上につなげることができたのではないかと考えております。今回の研修で学んだことをそのままにしていては何も意味がないので、しっかりと整理して、今の現場では何ができるのかを考えて行動していきます。 今回の研修は、同行していた NSCAスペインの方やインターンの方々とも英語でコミュニケーションを試みる場面もありました。自分からコミュニケーションを取ることで、とても親身になって聞いてくれました。国や言葉に違いはありますが、コミュニケーションの重要性に関して改めて理解す

コーチCaulfield氏の下でログリフト キャッスルビュー高校にて米国理事のコーチMchenry氏と

Page 3: 寄 米国NSCA本部におけるストレングス& 稿 コンディショニ …グラム作成、FMSテスト、アジリティ、 エネルギー機構等幅広い講義を受け、

December 2017  Volume 24   Number 1034

ることができました。 また、講義の他にもチリビーンズのコンテストや College Football の観戦、Garden of The Gods 散策などのプログラムが用意され、アメリカの文化にも触れることができました。オリンピックセンター、Air Force Academyの見学では実際に選手がトレーニングしている施設を見学し、日本にいては聞くことのできない話を聞けて、経験できないことを実際に肌で感じることができました。 最後になりますが、今回の海外研修のメンバーにも恵まれてとても有意義な時間を過ごすことができました。この研修に参加していなかったら会えていないメンバーですので、これからもこの繋がりを大切にして活動していきます。来年以降参加を迷われている方は、将来の自分への自己投資だと思って参加してアメリカの現場を肌で感じるべきだと思います。 大西さんをはじめとするNSCAの皆様、研修に参加された皆様、このような研修の機会を作っていただき、本当にありがとうございました。。

【金澤 良 岩倉高等学校 教諭】 この研修を通しての一番の収穫は、日本の S&C は決してアメリカに引けを取るものではないということを自身の身体と目で確認できたことと、NSCAが研究と現場の架け橋になっており信頼の置ける情報源であるということを実感できたことである。 ただ、教育環境・生活様式などの日米の違いは多く、それがS&Cの認知の差にも繋がっているというネガティブな面も感じることができた。 その中でも、見学地の空軍士官学校やオリンピックトレーニングセンター、CastleView High schoolなど各施設の巨大さや掲示物のメッセージ性、学生たちの愛校心と自由度、S&CコーチやATなどの分業化された各スタッフの存在、選手の階級制など、なかなか日本では見ることのできない環境や、競争社会が見られた経験は大きかった。 講義に関しても、8 コマの実技と 13コマの講義全てが充実していてエビデンスに基づいた確かな内容であった。特に、全講師に共通して感じたことは、

米国NSCA本部スタッフと

クライアントの運動や成果の評価の際に、『トレーニングの目的』と『クライアントの要求』を追求し、常に運動処方をしていることである。また、指導においても、機能的な動作獲得に向けての習得過程を細分化して工夫して指導(ケトルベル・ラバーバンドなど)している場面は、大雑把だというイメージをもっていたアメリカ人のイメージを覆す点であった。各講師が確かな知識と観察力でコーチングする場面は、私自身のコーチングを今後見直す中で大きなきっかけとなった。 今回の海外研修に仕事の休暇をとり参加するには大きな勇気と準備が必要であったが、それに勝る価値ある経験ができた。日本の教育現場に出ているからこそ気づくことが多く、特にアメリカ人のもつコミュニケーション力は日本人にはないすばらしいものであり、見習うべきところであると感じた。ぜひ、多くの方とアメリカの S&C 文化を共有し、日本の教育現場にFITした普及を確立していきたい。そしてS&C を通して国をまたぎ仲間ができたことを何よりもうれしく思う。◆

米国オリンピックセンターを見学

ハイスクールフットボールを観戦