日 立 防 爆 冷 蔵 庫 - HitachiU.D.C.る21.5占5.923_213.44 日 立 防 爆 形 冷 蔵 庫...

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U.D.C.る21.5占5.923_213.44 HitachiExplosion-prOOf Refrigeratorandits Construction 彦* Nobubiko Yokota 男* Kazuo Sait6 シンナー,エーテル,アルコールなど可燃性蒸気を生ずる薬品を普通の家庭用冷蔵庫に貯蔵すると,爆発の 危険があるため,これら危険薬品を安全に貯蔵することができる防爆形冷蔵辟が要望されてきた。この見地か ら開発した日立防爆形冷蔵庫について,防爆仕様の決定,防爆構造の選定,設計,構造および試験について述 べたものである。この冷蔵庫は発火度G4,爆発等級2の防爆性能を有し,労働省産業安全研究所の防爆性能 試験に合格している。 表1 危険薬品の区分および貯蔵取扱い方法 1.緒 家庭用電気冷蔵庫は一般家庭において食品類を貯蔵するのに使用 する限り,まったく安全に設計,製作されている。しかるに冷蔵庫 が実験喜,病院あるいは学校の教室などにおいて,揮発性溶剤,不 安定な化学物質あるいは液化ガスなどを貯蔵するのに使用されるこ とがある。これらの薬品のガスまたは蒸気が空気とある範囲の割合 で混合しているとき,そこに電気接点の火花やアーク,または高温 部が存在すると,それが点火源となって爆発を引き起こす危険があ って,ときとしてこの種の爆発事故が報告されている(い(3)。 省令(4)(5)によれば,可燃性ガスまたは引火性液体の蒸気が発散し ている場所においては,換気,通風などの措置を講じて,ガスまた は,蒸気が爆発の危険のある濃度に達するのを防止しなければなら ず,なお,ガスまたは蒸気が爆発の危険のある濃度に達するのを防 止できない場合には,防爆性能を有する電気機器を使用しなければ ならないとされている。またこれらガスまたは蒸気を生ずる薬品の 危険区分および貯蔵取り扱い方法を,日本化学会防災化学委員会が 定めた防災指針(6)から引用すると表1に示すとおりである。この表 からも,引火性薬品は防爆形冷蔵庫に貯蔵すべきであるとされて いる。 しかるにわが国においては,防爆形冷蔵庫が製作されていず,そ の開発が各方面から要望されていた。 日立製作所ではこの種の用途に適した冷蔵庫の試作研究を行なっ ていたが,各種の保安上の規格に合致し,また十分安全性のある防 爆形冷蔵庫を開発することができた。この防爆形冷蔵庫は発火度 G4,爆発等級2の防爆性能を有するものであって,以下その概要を 述べる。 2.防爆に関する規格 電気機器の防爆に関する規格は,メタンを主とする可燃性ガスや 乾燥炭じんを対象としたJISCO901(7)(炭坑用)および一般ガス蒸気 を対象とする工場電気設備防爆指針(8)(以下防爆指針という)とJIS CO903(9)とがある。 防爆指針は労働省産業安全研究所(以下産安研という)内に,昭 和29年6月18日組織された工場電気設備防爆委員会が中心となっ て昭和30年に制定した工場防爆に関する技術指針であって,昭和 36年に改訂され,昭和40年の全面的改訂増補で面目を一新してい る。この防爆指針はJISCO903の原案となり,また防爆に関する法 規(10)(11)のよりどころとなっているものである。一方外国において は防爆に関する研究は早くから真剣に取り上げられており規格化さ れている(12)(13〉。今回の防爆形冷蔵庫は適用規格として防爆指針に 日立製作所栃木工場 危険性区分 危険の種類および程度 発火性 水との接触によって 発火するもの,または 空気巾における発火点 40℃未満のもの。 可燃性ガス,または 引火性 可燃性 引火点30℃未満のも の。 引火点30℃以上, 100℃未満のもの。た だL引火点100℃以上 でも発火点の比較的低 いもの。 爆発性 前量5kgの渚槌を 用い,誇高1m未満に て分解爆発するもの, または加熱により分解 爆発するもの。 空気に直接度触させないようにして密封し,他の 危険薬品と隔離して貯蔵する。水と接触することを 避けなけれはならないものもある。取扱いには器具 を用い,直接皮膚に触れないようにする。 着火源があれば常温で容易に引火するので,貯蔵 取壊い中ほ近くで火気の使用を禁ずる。引火した場 合にすく小便用しうる消火設備を準備する。貯蔵中は 常に密封して,ガスまたは蒸気の漏れをなくす。 ガス爆発の危険性があるので,防爆形以外の家庭 用電気冷蔵庫に貯蔵してはならない。多見の廃液を 排水溝に捨ててほならない。 30℃未満の温変では引火しない。しかし繊維など にしみているときほ引火点未満の温度でも容易に着 火して火災となる。引火点以上の温度においては, 卜記の引火性の薬品と同じ程度の危険性をもつ。火 気の使用を禁じ,消火設備を準備する。 貯蔵中は常に密封して蒸気の漏れをなくす。多量 の廃液を排水溝に捨ててほならない。 購い衝撃や摩擦を与えないようにし,火気を禁ず る。必要以上に多量の貯蔵または取扱いを禁ずる。 表2 発火度および爆発等級の分漠 発火点の範囲 爆発等級 スキの 行25mnlにおいて 点火波及を生ずるスキの値 G G G G G 450℃をこえるもの 300℃をこえ450℃以下 200℃をこえ300℃以下 135℃をこえ200℃以下 100℃をこえ135℃以下* 0.6mm をこえるもの 仇4mmをこえ0.6mm以下 0.4mm以下 (注)*:JIS CO903によると「135℃以下+である。 準拠することとし,これに防爆に関する内外の規格を参酌すること とした。 防爆指針によると,防爆とは可燃ガスおよび引火点40℃以下の可 燃性液体の蒸気(以下爆発性ガスという)を対象とし,つぎに述べ るようにこの爆発性ガスおよびガス蒸気危険場所を分摸してそれぞ れに適合した防爆構造を選定しなければならない。なお引火点40℃ をこえる可燃性液体の蒸気であっても,周囲温度が40℃をこえる場 所で取り扱われる場合はこの温度条件を考慮して防爆指針を適用し なければならない。 2.1爆発性ガス 爆発性ガスは危険性によって発火度と爆発等級が定められ,それ ぞれ表2に示すように分類される。表3はこれらの等級に従って代 表的な爆発性ガスを分摂した一例を示す。 なお主要な爆発性ガスの特性値を表4に示す(8)(9)く14)(15)。 -42-

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U.D.C.る21.5占5.923_213.44

日 立 防 爆 形 冷 蔵 庫 の 構 造HitachiExplosion-prOOf Refrigeratorandits Construction

横 田 宜 彦* 斎Nobubiko Yokota

藤 一

男*Kazuo Sait6

要 旨

シンナー,エーテル,アルコールなど可燃性蒸気を生ずる薬品を普通の家庭用冷蔵庫に貯蔵すると,爆発の

危険があるため,これら危険薬品を安全に貯蔵することができる防爆形冷蔵辟が要望されてきた。この見地か

ら開発した日立防爆形冷蔵庫について,防爆仕様の決定,防爆構造の選定,設計,構造および試験について述

べたものである。この冷蔵庫は発火度G4,爆発等級2の防爆性能を有し,労働省産業安全研究所の防爆性能

試験に合格している。

表1 危険薬品の区分および貯蔵取扱い方法

1.緒 口

家庭用電気冷蔵庫は一般家庭において食品類を貯蔵するのに使用

する限り,まったく安全に設計,製作されている。しかるに冷蔵庫

が実験喜,病院あるいは学校の教室などにおいて,揮発性溶剤,不

安定な化学物質あるいは液化ガスなどを貯蔵するのに使用されるこ

とがある。これらの薬品のガスまたは蒸気が空気とある範囲の割合

で混合しているとき,そこに電気接点の火花やアーク,または高温

部が存在すると,それが点火源となって爆発を引き起こす危険があ

って,ときとしてこの種の爆発事故が報告されている(い(3)。

省令(4)(5)によれば,可燃性ガスまたは引火性液体の蒸気が発散し

ている場所においては,換気,通風などの措置を講じて,ガスまた

は,蒸気が爆発の危険のある濃度に達するのを防止しなければなら

ず,なお,ガスまたは蒸気が爆発の危険のある濃度に達するのを防

止できない場合には,防爆性能を有する電気機器を使用しなければ

ならないとされている。またこれらガスまたは蒸気を生ずる薬品の

危険区分および貯蔵取り扱い方法を,日本化学会防災化学委員会が

定めた防災指針(6)から引用すると表1に示すとおりである。この表

からも,引火性薬品は防爆形冷蔵庫に貯蔵すべきであるとされて

いる。

しかるにわが国においては,防爆形冷蔵庫が製作されていず,そ

の開発が各方面から要望されていた。

日立製作所ではこの種の用途に適した冷蔵庫の試作研究を行なっ

ていたが,各種の保安上の規格に合致し,また十分安全性のある防

爆形冷蔵庫を開発することができた。この防爆形冷蔵庫は発火度

G4,爆発等級2の防爆性能を有するものであって,以下その概要を

述べる。

2.防爆に関する規格

電気機器の防爆に関する規格は,メタンを主とする可燃性ガスや

乾燥炭じんを対象としたJISCO901(7)(炭坑用)および一般ガス蒸気

を対象とする工場電気設備防爆指針(8)(以下防爆指針という)とJIS

CO903(9)とがある。

防爆指針は労働省産業安全研究所(以下産安研という)内に,昭

和29年6月18日組織された工場電気設備防爆委員会が中心となっ

て昭和30年に制定した工場防爆に関する技術指針であって,昭和

36年に改訂され,昭和40年の全面的改訂増補で面目を一新してい

る。この防爆指針はJISCO903の原案となり,また防爆に関する法

規(10)(11)のよりどころとなっているものである。一方外国において

は防爆に関する研究は早くから真剣に取り上げられており規格化さ

れている(12)(13〉。今回の防爆形冷蔵庫は適用規格として防爆指針に串

日立製作所栃木工場

危険性区分 危険の種類および程度

発火性 水との接触によって

発火するもの,または

空気巾における発火点

40℃未満のもの。

可燃性ガス,または引火性

可燃性

引火点30℃未満のも

の。

引火点30℃以上,

100℃未満のもの。た

だL引火点100℃以上

でも発火点の比較的低

いもの。

爆発性前量5kgの渚槌を

用い,誇高1m未満に

て分解爆発するもの,

または加熱により分解

爆発するもの。

貯 蔵 取 扱 い 方 法

空気に直接度触させないようにして密封し,他の

危険薬品と隔離して貯蔵する。水と接触することを

避けなけれはならないものもある。取扱いには器具

を用い,直接皮膚に触れないようにする。

着火源があれば常温で容易に引火するので,貯蔵

取壊い中ほ近くで火気の使用を禁ずる。引火した場

合にすく小便用しうる消火設備を準備する。貯蔵中は

常に密封して,ガスまたは蒸気の漏れをなくす。

ガス爆発の危険性があるので,防爆形以外の家庭

用電気冷蔵庫に貯蔵してはならない。多見の廃液を

排水溝に捨ててほならない。

30℃未満の温変では引火しない。しかし繊維など

にしみているときほ引火点未満の温度でも容易に着

火して火災となる。引火点以上の温度においては,

卜記の引火性の薬品と同じ程度の危険性をもつ。火

気の使用を禁じ,消火設備を準備する。

貯蔵中は常に密封して蒸気の漏れをなくす。多量

の廃液を排水溝に捨ててほならない。

購い衝撃や摩擦を与えないようにし,火気を禁ず

る。必要以上に多量の貯蔵または取扱いを禁ずる。

表2 発火度および爆発等級の分漠

度火発 発火点の範囲 爆発等級スキの 行25mnlにおいて点火波及を生ずるスキの値

G

G

G

G

G

450℃をこえるもの

300℃をこえ450℃以下

200℃をこえ300℃以下

135℃をこえ200℃以下

100℃をこえ135℃以下*

0.6mm をこえるもの

仇4mmをこえ0.6mm以下

0.4mm以下

(注)*:JIS CO903によると「135℃以下+である。

準拠することとし,これに防爆に関する内外の規格を参酌すること

とした。

防爆指針によると,防爆とは可燃ガスおよび引火点40℃以下の可

燃性液体の蒸気(以下爆発性ガスという)を対象とし,つぎに述べ

るようにこの爆発性ガスおよびガス蒸気危険場所を分摸してそれぞ

れに適合した防爆構造を選定しなければならない。なお引火点40℃

をこえる可燃性液体の蒸気であっても,周囲温度が40℃をこえる場

所で取り扱われる場合はこの温度条件を考慮して防爆指針を適用し

なければならない。

2.1爆発性ガス

爆発性ガスは危険性によって発火度と爆発等級が定められ,それ

ぞれ表2に示すように分類される。表3はこれらの等級に従って代

表的な爆発性ガスを分摂した一例を示す。

なお主要な爆発性ガスの特性値を表4に示す(8)(9)く14)(15)。

-42-

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2・2 ガス蒸気危険場所

ガス蒸気危険場所とは空気「いに爆発または燃焼をするに十分な量

7

性特のスガ性発爆要主

造 1187

什m■

ドヒテ7′

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ソケレチノレ⇒ノエ

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チエ塩

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ク酢酢酢酢酢酢酢シ

シ水水ス青石ト

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ドシキオン

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ソ〕じ

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チノー

2

ル化

チノ

ソサキ

ト素

C2H2

CH3CIiO

CH3COCH3

C5H110H

NH3

C8H18

C4H90H

C4H9COCH3

C5H8

CO

C2王†50H

C2H6

(C2H5)20

CH3COC2H5

C2H4

(CIi2)20

CH2CHCI

C8H18

C5H12~CgIT20

C6H4(CH3〕2

C6H5CI

CH3COOH

CH3COOC5Iill

CIi3COOC5Hll

CfI3COOC2H5

CH3COOC4H9

CI‡3COOC3H7

Cfi3COOCH3

(CN)2

C6HlOO

(CH2)6

H2

C6H5C2f‡3

HCN

C6H5CH3

CS2

C4H60

C4H6

C4H90H

C4HlO

C3H7CHO

C4H30CHO

C3H8

C3H60

C6H14

C6H6

C5HllOH

C5H12

(CH3CO)20

CH30H

CH4

C6H13CII3

HCOOCIi3

H2S 1(3)

21。謝46359。48537537946。37。43。475脚42。竺55。49。竺535慧州415慧州23。31646643。2335553。。慧山45553728。

260

2

4

1

2

1

2

2

1

3

1

2

1

一丁

1

2

2

G

G

G

G

G

G

G

G

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G

G

G

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G

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G

ー43-

火 点(℃)

諾33一一12271。ご11.二ご■3。

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121217284025254221010

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~11.3

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2.0~10.2

5.5~36.5

5.0~15.0

5.05~22.7

4.3~46

0.90

1.52

2.00

3.04

0.59

3.94

2.56

3.46

2.35

0.97

1.59

1.04

2.55

2.48

0.97

1.52

2.16

3.94

3~4

3.66

3.88

2.07

4.49

4.49

3.04

4.01

3.52

2.56

1.80

3.38

2.90

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3.59

0.94

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1

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1

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1188 昭和41年10月 日 立 評 論 第48巻 第10号

表5 耐 圧 防 爆 容 器 に 関 す る 規 定

区一スキおよびスキ

分岳\㌃

の奥行の許容値

圧力(ゲージ圧)

耐えるべき内部

温度上昇限度

‾‾‾‾】■`■■■■・・・・・・--

R

ス キ の広大許容値

W

内 容 舶

爆発等級1

爆発等級 2

爆禿等級 3

ス キ の 奥行 の 最小許容値 L

ボ ルト 穴 ま で の最短距維 Ll

爆 発 等 級 1 の も の

爆 発 等 級 2 の も の

爆 発 等 級

発 火 虻 Gl

発 火 度 G2

発 火 度 G3

発 火 姥 G4

発 火 皮 G5

の も ♂

の も の

の も の

の も の

2cm3以 下

0.3

0.2

0.1

100は…芸こ与l2ぷ3≡荒;吉こ辛l2・000cm3をこえるもの

0.2

0.1

10

0.25

0.15

0.3 0.4

0.2

爆発試験において火炎逸走しない最大スキの

15 25

50%

0.25

40

10 15

8kg/cm2以上

享担作上必要な墟さ

10kg/cm2 以

爆発試験により測定した爆発圧力の1.5倍以上,ただし最小値は

8kg/cm2以上】 10kg/cm2 以 上

320deg

200deg

120deg

の も の l 70deg

の も の 40deg

(江)*静止接合部に適用する。

(1)耐圧防爆構造:全閉構造で,容器内部で爆発性ガスの

爆発が起こっても,その圧力に耐え,かつ外部の爆発性ガスに引

火するおそれのない構造をいう。

(2)抽入防爆構造:火花,アークまたは点火源となりうる

高温を発生するおそれのある部分を抽中におさめ,油面上に存在

する爆発性ガスに引火するおそれのないようにした構造をいう0

(3)内圧防爆枯造= 容器内部に新鮮な空気または不燃性ガ

スなどの保護気体を圧入することにより,運転開始前に容器内に

侵入した爆発性ガスを駆逐するとともに,引き続き運転中にこれ

らのガスが侵入するのを防止した構造をいう。

(4)安全増防爆構造:常時運転中に火花,アークまたは過熱

を生じてほならない部分に,これらの発生するのを軌ヒするよう

に,構造上または温度上昇について特に安全度を増加した構造を

いう。

(5)特殊防爆構造‥(1)~(4)以外の方法によって,爆発

性ガスへの引火を防止できることを公的機関(慶安研をさす)に

おいて試験その他によって確認された構造をいう。

3.防爆形冷蔵庫の設計

3.1防爆仕様の設定

(1)ガス蒸気危険場所

危険薬品を実験室などの比較的広い空間で取り扱う場合,危険

なガス蒸気濃度に達しない程度に,量的に少ないとしても,それ

が冷蔵庫内に貯蔵された場合には,冷蔵庫内は密封され,かつ容

積も大きくはないので,容易に危険なガス蒸気濃度に達すること

が考えられる。また貯蔵される薬品の容器の密閉性も常に万全を

期すことは困難であり,仮に冷蔵庫内に爆発性ガスが充満したと

して,その状態でドアを開閉すれば冷蔵庫周辺の場所はその瞬間・

局所的にガス蒸気危険場所となることが予想される○

この意味で冷蔵庫内部はもちろんのこと,冷蔵庫が据え付けら

れる場所も第1種場所と考えられる。

(2)発 火 度

冷蔵樺の哀痛温度ほ最も温度の高い妊術機溶岩旨の表面におい

て,周囲温度30℃で連続運転している場合にも約70℃であるロ

防爆容器表面の温度上昇限度ほ表5に示すように規定されている

からこの場合ほ発火度G5を適用しうると恐われる。しかしJIS

CO903によると,発火度G5は135℃以下と定められている。こ

れは事実上実現不可能な値であって,今回は両者の値のうちで安

制御装 箭

f温 度 調 節 器

起動用コンデンサ

起 動 裳 諾(

外 箱

/琵熱荒肝歳庫そ二三.ユニ■ニー:∴〆三ジて十・∴

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一冷却器圧縮機

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図1 冷蔵庫構造原理図

全をとって,発火度G4とすることにした。

(3)爆 発 等 級

表3,4でわかるように,爆発等級3のガスとして知られている

ものはごくわずかである。したがって実用上著しい支障はないと

考えられるので,爆発等級2とした。

以上述べたことを要約すればつぎのようになる。

(a)ガス蒸気危険場所……第1種場所

(b)発 火 度‥…・G4

(c)爆 発 等 級‥・…2

3.2 各部の防爆構造の選定

冷蔵庫は図1に示すような構造であって,貯蔵庫,冷凍サイクル

および制御装置の3部から構成される。

貯蔵庫は鋼板製のキャビネットと鋼板またはプラスチック成形品

で作られた内箱の間に,グラスウール,発泡ポリスチロールまたは

硬質ポリウレタンフォームの断熱材をつめて成形した恒温容器であ

って,上部に装置した冷却器により内部を冷却する。冷凍サイクルは圧縮機,凝縮器,冷却器,ドライヤ,キヤピラリ

チューブ,配管煩より構成され,冷媒が冷凍サイクル内の通路を循

環しながら,圧縮,凝縮,膨張,蒸発の四段階の物理的変化を繰り

返している。

制御装置ほ冷却器の温度を検出して,圧縮機の運転を断続させて

一44-

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冷形爆防立 庫 の 構 造 1189

表6 日立防爆形冷蔵庫仕様

形 式 RX【161

図2 RX-161形日立防爆形冷蔵庫の構造

閑3 御上研一装置の構造

貯蔵庫内の温度を一定の値に保つための装置であって,温度調節器,

起動装置,起動用電解コンデンサなどより構成されている。

冷蔵庫において,爆発性ガスの点火源としては,圧縮機および引刈

御装置があり,これらに防爆指針の規格に合致した防爆構造を選定

しなければならない。

(1)貯 蔵 庫

貯蔵庫は恒温容器で,点火源となるおそれがある電気部品をい

っさい除去すれば,内部に爆発性ガスが充満することがあっても,

引火爆発の危険がない。

(2)冷凍サイクル

冷凍サイクルは溶接および銀ろう付により各部を完全に密閉し

ており,充てんした冷媒の漏出を防1上している。また圧縮機は軸

を直結したモートルによって駆動され,密閉した耐圧容器の内で,

冷媒ガスふん四気の中に納められている。

冷媒ガスほジクロールジフルオルノタン(R-12)という絶縁性

の良好な不活性ガスであり,圧紡機容岩芹内ほもとより,冷凍サイ

クル内各部の圧力は大気圧よりも高い圧力に充てんされている。

このため冷凍サイクルには内圧防爆構造を適用することとした。

内圧防爆構造では封入冷媒ガスの圧力が大気圧以下に低‾Fする

と,爆発性ガスが機体容器内に侵入して危険となるから,保護装

置を必要とする。しかし冷凍サイクルでは冷媒ガスが漏出すると

冷蔵庫としての機能を失うことになるため,密封を完全にして,

漏えい量を絶無とするよう厳重な生産管理のもとに量産されてい

る。防爆指針によるとこのような場合には,lノ淵;の圧力を表ホす

る装置をつけるだけでよいとされており,冷媒ガスが漏れると冷

凍能力が失われて冷却器の温度が上界する現象を利用して,冷却

器の温度を貯蔵庫の外に表示する装匠をつけることにした。

防 機 構

総 内 容

格定

て凍サイクル

研削

外法

寸法

lノぅ法

+一法

]偶

Hl+

旺縮磯

、トヒノとエ

椚(り

代数水仙力

〔は

仙野

小岨周花柄

奥行「

IllJ

奥行

Ⅴ〃A

W

さ (mm)

(mm)

′、ソトノし含む八mm)

さ rmml

ぐmm)

最深J月ソ般浅甜;〔mm)棚低州製

容 旨芹

氷 肌

ス /ミ

セルフクーソバスケ ット

ノミ タ 【 ケー

除 霜‾ 水 容 岩諒

ド ア 開 閉 機 橘

却 話語 (蒸発器)

取 り 方 式

W力

式道11

構機

牒励

形防■屯

形 式

防 爆 鵬 遺

温 度 調 節 暑旨形式

起 動 装 置 形 式

起動用コンデンサ定格

辱埋 品 屯 丑(kg)

電気fH品型式認可蘇号

d#f2 G4

161

100

50/60

1.95/1.65

105/115

iブ占綬仕__1二鉄板ノラミソ樹脂焼付塗装

1,356

540

669

硬質塩化ビニル樹脂板貞空成形

990

420

416/407

4個(上3段可変)

令幅引出式窟受皿兼用

大小各1個

スイングアウト式

2個

引J‾一丁式

ノ、ンドル(マグネット′ミッキソ式)

全幅□字形アルミニウムロ【ルポン

ダイアル式オフサイクル

CC755A

f G4

75

EPBIA

d2G4

F3DE

SC75

125V 70′!F

70

∇9-2788

(3)制 御 装 置

制御装置を耐圧防爆構造とし,電源に接続するための端子箱も

耐圧防爆構造とした。制御装置からは圧縮機に給電するためのケ

ーブルを出す必要があるが,これらは磯体内配線であるから,冷

蔵極を集成機器と考えた場合,それぞれの部分の独立の端子箱を

省略することができる。

4.防爆形冷蔵庫の構造

上述の設計に基づいて製作したRX-161形日立防爆形冷蔵庫の構

造および仕様は図2,3および表るに示すとおりである。

以下これらの各部の構造について述べる。

4.1防 燥 容 器

耐圧防爆構造の容器は表5に示す内部圧力ならびに,スキおよぴ

スキの奥行の規定を満足しなければならない。制御装置は図3に示

す構造であって,爆発等級2に対応する表5に示す値を満足してい

る。また容器の取りはずし可能なふたの取付けに関しては,これを

不用意にゆるめると防爆性が失われて危険となるから,一般の工

具でゆるめることができないよう錠締構造としなければならない

が,これにはM6の六角穴付ボルトを使用し,防爆指針に合致する

錠締構造を採用している。

4.2 導線引込部

制御装置と圧縮機の問を結ぶケーブルおよび電源に至るケーブル

の引込部には,耐圧/ミッキン式引込方式を採用した。電源用ケーブ

ルには第3種クロロブレンキャブタイヤケーブルを使用し,グラン

一45-

Page 5: 日 立 防 爆 冷 蔵 庫 - HitachiU.D.C.る21.5占5.923_213.44 日 立 防 爆 形 冷 蔵 庫 の 構 造 HitachiExplosion-prOOf Refrigeratorandits Construction 横 田 宜 彦*

1190 昭和41年10月 日 立 評 論 第48巻 第10号

ビニ【ルフイルム

爆発試験槽

フアン供試Ii占

1J2

Vl

V3

ポンプ

\Jヰ \/ぅ

カ■、ス膿性i郎こ個所

l

空与t

L文14 爆発試験装経略1ズ1

仔ノJ計

′ア

\r6

排1i

ドのねじ込み部に管用平行ネジを切って,電線管ネジ結介式による

配線工事を可能としてある。

端子箱から棟器本体内への導線の接続は,耐圧容器隔壁に溶接し

たハーメチックターミナルを通すことにより行なわれている。

制御装置から圧縮擁へゃる間,外部に露呈するケーブルは硬質ビ

ニル管によって外侮から保護されている。)

4.3 冷凍サイクル

冷凍サイクルの各訊ま溶接またほ銀ろう付により密封され,気密

試験により,漏えい量は0.01lusec(J・〃Hg/s)以下に管理されてい

る。このようにして生産された冷蔵庫の冷媒漏出は長年月にわたる

実続から判断してほとんどない。フラー冷媒ガスが漏えいすれば冷凍

能力を失うから,貯蔵庫内温度は上昇し,正常な状態でみられた冷

却器の霜の付着生成がなくなることから容易に発見できる。しかし

外部からもこのことを検知できるよう冷却器の温度を外部に表示し

てある。

冷蔵庫の背面に設置してある凝縮器および配管の一部ほガードに

よって外傷から保護されている。

4.4 絶 縁 距 離

防爆容器内に収められた電気機器および接続部などは,安令増防

爆構造に定められた絶縁距離の伯を満足するよう,酌而距離および

空間距離をそれぞれ6mm以上としてある。

5.試 験

防爆指針に定められた試験のうち爆発試験と温度試験について説

明する。

5.1爆 発 試 験

耐圧防爆構造の電気機器でほ,内部で爆発を生じてもその爆発忙

力に耐え,かつ機器外部への火炎逸走を防止できなければならない。

したがってこれは爆発強度試験と爆発引火試験に分けられる。

(1)爆発強度試験

耐圧防爆構造の枚器内に表5に定められた圧力が得られるよう

混合気体を満たして爆発試験を10回繰り返す。試験の結果,容器

に破損を生じたり,実用上支障のある変形を生じてはならない。

供試品に対し実施したメタンガスによる爆発試験では規定圧力

が得られなかったので,別に牢圧試験を実施して礁度を確かめた。

(2)爆発引火試験

容器内部で爆発させて外部への火炎逸走の有無を調べるもの

で,その機器の爆発等級より1等級上の可燃性ガス混合物で15~

表7 制御装置爆発引火試験結果

爆発回数供試品外のガ

ス濃度(%)

20 1 9.5

供試品内のガ

ス濃度(%)

9.0

爆 発 圧 力

(kg/cm2G)

0.6

火 炎 逸 走の 有 無

(柱)客 筋

ガスの種類

室 温

~吉良 度

1,430cm3

メ タ ンガス

11℃

49%

20回繰り返し行ない,1回でも外部ガスに引火してはならない。

図4ほ使用した試験装置を示したものである。可燃性ガスをバ

ルブVlを通してボンベか巨)試験槽に注入し,最も爆発しやすい

状態の混合公休を作る。混合気休の一部をポンプによって供試品

内部に送り,試験槽内とほぼ同一状態とする。その後全バルブを

閉じて,供試品に設けた電気接点に火花アークをとばして爆発を

起こさせ,外部への火炎逸走の有無を確認する。

表7は制御装置に対して実施した爆発引火試験結果の一例であ

る。ノ爆発圧力が低かったのは温度調節器ダイアル軸またはキャピ

ラリチューブ冥通部のスキによるものと考えられる。試験では火

炎の逸走はなく,各部の異常は認められなかった。

5,2 温 度 試 験

防爆構造の容器外面の温度上昇は表5の値以下でなければならな

い。最も粘度の高い部分は圧縮機であるが,冷蔵庫を室温35℃で連

続的に運転するという悪条件においても,最高温度は71.0℃程度で

あって,粘度試験結果ほ十分規格値を満足している。

占.精 白

以上防爆形冷蔵庫について防爆構造の概要を述べた。

まず防爆に対する規格を概説し,これに基づいて防爆形冷蔵庫の

防爆仕様を決定し,設計上の要点を述べた。つぎに各部の防爆構造

を説明し,各種の試験によって防爆性能を確認したことを述べた。

この防爆形冷蔵庫は工場防爆試験に関するわが国唯一の公的機関

である産安研における防爆性能試験に合格した。

この冷蔵庫の使用iこよって,危険薬品による爆発事故を防止でき

るのであって,実験室,研究室,病院などにおいて採用されて,危

険な状態が一日も早く解消されることを熱望するものである。

終わりに,この防爆形冷蔵庫の開発に際し有益なご教示を賜わっ

た東京大学工学部難波教授,産安研防爆課田口課長ならびに坂主技

官に対し,また試験にご協力いただいた日立製作所日立工場器具検

査課沢木,赤梓両氏および関係各位に対して炎心より謝意を表

する次第である。

(7)

(8)

(9)

(10)

(11)

2

3

4

5

-46-

参 芳 文 献

朝日新開または産経新聞夕刊(昭40-1ト13)

Chem&IndJune11,1960,686

労働省産業安全研究所資料:

の爆発+(昭35-4-21発生)

労働省令第9号第140粂(昭

通産省令第61号第208条(昭

口本化学会防災化学委員会

「某研究所における電気冷蔵庫

22-10-31)

40-6-15)

化学とコニ業18(1),228

(昭40)

JISCO901電気機器の防爆構造(炭坑用)

二l二場電気設備防爆委員会:工場電気設備防爆指針(ガス蒸気

防爆-1965)

JISCO903電気機器の一般用防爆構造通則

労働省告示第42ぢ・:電気機械器具防爆構造規格(昭36-

9-30)

通産省告示第271号第33条:電気機械器具の防爆構造の規

格(昭40-6-15)

BS229(制定1926,4次改訂1957)

VDEO171(制定1943,4次改訂1965)

日本化学会:化学便覧(丸善昭37)

D.M.Hillebrand,蒲生訳:防爆電気機器原論(コロナ昭19)