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1 一般社団法人 青森県農業経営研究協会 平成 30 年度農業経営研究等支援事業実績報告書 青森県における農福連携の諸類型と サポート人材育成に関する研究 2019 年5月 国立大学法人 弘前大学 農学生命科学部

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1

一般社団法人 青森県農業経営研究協会

平成 30 年度農業経営研究等支援事業実績報告書

青森県における農福連携の諸類型と

サポート人材育成に関する研究

2019 年5月

国立大学法人 弘前大学 農学生命科学部

正 木 卓

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目次

はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

第 1 章 青森県の農業構造分析・・・・・・・・・・・・・・・・・2

1.青森県農業構造の概観 2.青森県における農業人口構成と変化 3.青森県における農地流動化 4.小括

第 2 章 農福連携の制度的枠組み・・・・・・・・・・・・・・・・20

1.農福連携の概要 2.農福連携事業の法制度 3.青森県における農福連携の現状と取組み 4.小括

第 3 章 青森県における農福連携の実態・・・・・・・・・・・・・28

1.事例の位置づけ 2.社会福祉法人 抱民舎 就労継続支援 B 型「ゆいまある」 3.社会福祉法人七峰会・拓心館グループ就労サポートひろさき 4.社会福祉法人 誠友会 観光農園アグリの里おいらせ

おわりに 課題整理と提言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45

1.事例分析から得られた課題 2.課題解決に向けた提言

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はじめに

近年、わが国の農業は高齢化の進展と担い手の減少、そして雇用労働力の減少が並進

しており、地域経済の根幹をなす農業の人口問題から発する競争力弱化が問題視されて

いる。そのため、地域農業を維持・発展させるための新たな担い手の確保・育成及び農

業労働力の拡充に取組む必要が地域農業全体の課題となっている。

こうした全国的な農業構造上の課題がある中で、青森県においてはさらなる過疎化の

進展が著しいため、農業者の高齢化や担い手不足が一層進むことが予想され、「労働力

の脆弱化」に対する対応策が強く求められる。

こうした状況下で、最近注目されているのが農業と福祉との連携、すなわち農福連携

である。農福連携は、農業における障がい者の雇用を通じた労働力確保と福祉におけ

る障がい者の就労機会拡大とを結びつけ、農業振興と障害者福祉の向上を同時に実現

していく取組みであり、そのことに大きな意義を持つものである。青森県において

は、今後より一層、農業労働力不足が懸念される中で、農福連携は農業労働力問題に

対応していく新たな取り組みとして大きく注目され、県の重要課題として取組みが進

められつつある。

しかし、こうした農業と福祉を連携させ農業労働力確保に取り組むことは、そう簡単

な取組みではなく、寧ろ農業部門および福祉部門における課題も多い。1つは、障害者

が農作業に取組む際の作業環境課題である。障がい者の基礎的な農業技術の習得、作業

管理等のノウハウの習得など障がい者の特性に合わせた作業体系など、農業分野・福祉

分野からの障がい者へのサポートが必要となる。2つに、農業分野(受入農家)におい

ては、障がい者を雇用するという福祉的な考えを持つことが課題となる。技術的な部分

だけではなく、受入農家は障がい者を福祉的に理解しその評価を適切に行うことが重要

となり、障がい者はそのことで労働への喜びを感じ雇用拡充に伴う社会参加に繋がるこ

ととなる。こうした農業分野・福祉分野双方の意識を高めるような教育支援を行うこと

もまた必要であり、そうした両分野の課題に対応することで、農福連携のメリットを活

かした新しい地域(産業)づくりにも繋がることとなる。

そこで本調査研究では、青森県における農福連携の取組実態を事例分析から試み、農

業と福祉の連携によって青森県における農業労働力確保がどのように展開していくの

か、その可能性についての実証的研究を行い、農福連携の取組みにおける人材育成につ

いて検討するものである。

調査研究にあたっては、各調査先関係者の皆様ならびに青森県農業経営研究協会の

方々に多大なるご協力をいただいており、この場をお借りしお礼申し上げたい。

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第1章 青森県の農業構造分析

我が国の農業が抱える課題については、これまで多くの議論がなされてきた。担い手

不足問題に始まり、農業経営者の高齢化、耕作放棄地の増加など早急に解決しなければ

ならない課題が山積しており、これらは青森県農業においても同様である。

本章では、青森県の農業構造を分析し、課題整理を行うことを目的とする。青森県の

現状を分析するにあたり、2000~2015 年青森県農林業センサスを資料として用いる。

また、青森県を東青・中南・三八・西北・上北・下北の 6 つの地域に分け、県全体と比

較することにより、各課題に対して地域性が存在するかについても分析を行う。

1.青森県農業構造の概観

表 1 は農業センサスより作成した青森県の農業構造変化の概観である。各項目で県全

体の農業構造の変化についてみていくこととする。

販売農家数は、59,996 戸(2000 年)から 34,866 戸(2015 年)と約 42%減少し、減

少率は毎年増加している。経営耕地面積も 117,582 ㏊(2000 年)から 92,422 ㏊(2015

年)と約 22%減少しているが、その内訳をみると、田・畑・樹園地のいずれも減少傾向

にあり、特に田の減少率が高い。

平均規模(経営耕地面積/販売農家数)は 2000―2005 年に 0.3 ポイント、2005―2010

年に 0.1 ポイント、2010―2015 年に 0.7 ポイント増加している。このことから直近の

15-20 年間が特に増加傾向にあり、今後も平均規模は増加していくと考えられる。こ

の数値から、一戸あたりの耕地面積が拡大しているようにみえるが、面積の減少率より

も農家数の減少率が大きいことを想定すると、平均規模の増加は農家数の減少により大

きく起因していると言える。そのため前向きな意味で、戸当り面積が拡大しているとは

4 5

78

9101112

13

1415

16

1718

1920

21

22

23

24 25

26

26

25

27

28 29

30

3133

32

34

35

3637

38

39 40

東青地域1 青森市2 平内町3 蓬田村4 外ヶ浜町5 今別町

中南地域6 弘前市7 西目屋村8 大鰐町9 鶴田町10 板柳町11 藤崎町12 田舎館村13 黒石市14 平川市

三八地域15 新郷村16 田子町17 三戸町18 南部町19 八戸市20 階上町21 五戸町

西北地域22 深浦町23 鰺ヶ沢町24 つがる市25 五所川原市26 中泊町

上北地域27 十和田市28 六戸町29 おいらせ町30 三沢市31 東北町32 七戸町33 野辺地町34 六ヶ所村35 横浜町

下北地域36 東通村37 むつ市38 佐井村39 大間町40 風間浦村

図1 青森県の6つの地域区分

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いえず、むしろ農家数が大きく減少していることが問題であると考えられる。

実際に規模別販売農家数の実数をみると、0~5.0 ㏊未満の農家数は年々減少してお

り、販売農家数の減少という問題が数値に顕著に表れていることがわかる。一方、5.0

㏊以上は増加傾向にある。このことから、全体の農家数は減少傾向にあるものの、一部

規模拡大している農家がいることがわかる。また、0~3.0 ㏊未満の農家数割合は減少

しているが、3.0 ㏊以上の農家数割合は増加している。このことからも少なからず規模

拡大が進んでいることがわかる。

借地面積は、県全体として毎年増加しており、内訳をみると田・畑・樹園地ともに増

加傾向にある。同様に、借地率も県全体・田・畑・樹園地ともに増加傾向にある。特に

田は 8,880 ㏊(2000 年)から 15,065 ㏊(2015 年)と倍の面積に近く増加している。借

地率に関しても、2010 年から 2015 年にかけて田が最も増加している。このことから借

地による農地の流動が進んでいること、特に近年に関しては田における借地が増加して

いることが指摘できる。

このように県全体の農業構造の特徴として、販売農家数の減少、規模拡大、借地によ

る農地の流動化が進んでいることが伺えた。次項からは青森県を 6 地域に分け、分析し

ていくこととする。

販売農家数

減少率

経営耕地面積

うち田うち畑

うち樹園地

平均規模 2.4

規模別農家数 実数 割合 実数 割合 実数 割合 実数 割合1.0ha未満 22,864 38.3% 18,679 36.8% 14,915 34.5% 11,279 32.4%

1.0~3.0ha 26,357 44.2% 22,396 44.1% 18,933 43.8% 15,067 43.2%

3.0~5.0ha 6,635 11.1% 5,786 11.4% 5,196 12.0% 4,349 12.5%

5.0ha 以上 3,814 6.4% 3,929 7.7% 4,202 9.7% 4,144 11.9%

借地計

うち田

うち畑

うち樹園地

借地率

うち田

うち畑

うち樹園地資料:各年次農業センサスより作成。

注1:販売農家の値である。

注2:1985年の販売農家戸数は67,885戸(1995年農業センサスより)。

表1 青森県の農業構造変化の概観

2000年 2005年 2010年 2015年

(単位:戸、ha、%)

117,582

72,31525,653

19,614

59,996

11.6

2.3

50,790

15.3

107,905

65,78523,925

18,194 17,455

3.1

34,866

19.5

16,111 20,867

92,422

55,422

16,229

20,759

43,314

14.7

102,114

61,07423,584

2.0

8,880

6,466

765

18,261

10,423

7,027

810

12,777

7,189

902

23,053

15,065

7,054

934

13.7

12.3

25.2

3.9

16.9

15.8

29.4

4.5

20.4

20.9

30.5

5.2

24.9

27.2

30.4

5.8

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2.青森県における農業人口構成と変化

1)年齢別経営者の動向

はじめに、農業において最も重要である農業経営者の動向を見ていく。図 1-1 は、

青森県における農業経営者数と年齢階層の変化を示したものである。これより農業経営

者数は、2000 年に合計 59,996 人であったのに対し、2015 年では合計 34,866 人にまで

減少しており、その減少率は 41.9%となっている。また、60 歳以上の農業経営者の割

合は 2015 年に 7 割を超え、2005 年からその割合は急増している。これに伴い、70 歳以

上の農業経営者の割合は、2010 年に3割を超え、農業経営者の高齢者層は非常に厚い

ものとなっている。特にこの傾向が顕著に見られるのが、2010 年、2015 年のグラフを

比較したときの 60~70 歳未満の層である。この層は他の層と比較しても、農業経営者

の減少数は小さく、農業経営者数全体における割合も大きいものとなっている。次に、

30 歳未満、30~50 歳未満、50~60 歳未満の層を見ると、農業経営者数が減少傾向にあ

ることは明らかであり、特に農業において若手と位置づけされる 30 歳未満の農業経営

者層が厚みを増しているような様子は見られない。

以上のことから、ここでは農業経営者の高齢化とそれに伴う農業経営者数の減少、若

手農業経営者が不足していることが指摘できる。特に 60~70 歳未満の農業経営者層は、

青森県の農業において大きな割合を占めており、近年の傾向として、この 60~70 歳未

満の農業経営者が県内農業を支えていると言える。一方で、今後の県内農業を支えてい

く 30 歳未満の農業経営者数は非常に少ない上、その数は年々減少しており、今後もこ

の状況が続けば、県内農業に更なる影響を与えるに違いない。そのため若手農業経営者

の育成は、早急に取りかからなければならない課題である。

次項では、農業就業人口について年齢別の比較と農業経営者が抱える諸問題との比較、

加えて 6 地域での比較を行い異なる特徴が見られるのか、県内の農業人口構造を掘り下

げていくことにする。

11,8867,134

3,923 2,105

16,555

15,34211,724

7,469

19,275

14,031

13,382

13,046

10,062

12,976

13,610

11,733

49

53

62

71

1726

3134

0

10

20

30

40

50

60

70

80

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

45,000

50,000

55,000

60,000

65,000

2000年 2005年 2010年 2015年

(%)(人)

図1−1 青森県における年齢別経営者数の推移資料:各年次農業センサスより作成。

注:販売農家である。

30歳未満 30~40歳未満 40歳~50歳未満 50歳~60歳未満

60歳~70歳未満 70歳以上 60歳以上の割合 70歳以上の割合

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2)農業就業人口の変化

表 2 は、青森県における農業就業人口を年齢別・地域別で区分した人口の変化を示し

たものであり、図 2-1 では青森県における農業就業人口を年齢別に区分し、人口の変

化を表している。これによると、農業就業人口は 15 年間で 109,550 人から 64,746 人に

まで減少し、その減少率が 40%を上回るなど、非常に早いスピードで人口減少が進ん

でいることが分かる。年齢層別の動向を見ると、どの層も減少傾向にあるのは違いない

が、年次ごとに農業就業人口の年齢層を比較するとその割合に変化が見られる。2000 年

~2015 年で、20~65 歳未満の農業就業人口の割合は徐々に減少し、相対的に 65 歳以上

の農業就業人口の割合は増加傾向にあることが読み取れる。このことから、農業就業人

口においても年齢層が上層へ移動し、高齢化が進んでいることが分かる。また、20 歳未

満の農業就業人口は年々減少しており、今後何らかの措置を取らなければこの層の増加

は見込まれない。以上から、前項で述べた農業経営者の動向と同様に、農業就業人口も

年々減少傾向にあり、高齢化と若手農業者の不足といった問題が見られる。

次に、地域別に農業就業人口の現状と特徴を整理し、県内のどの地域にどのような問

題が見られ、特に支援や対策を強化しなければいけない地域はどこなのかを明らかにす

る。図 2―2 は、東青地域における年齢別農業就業人口の割合を示しており、農業就業

人口は 15 年間で 8,899 人から 4,250 人まで減少し、その減少率は 52.2%と若手農業者

層・高齢農業者層ともに大きな減少がうかがえる。また、農業就業人口における 65 歳

以上の割合は 2015 年に 6 割に達し、20 歳未満の農業就業人口は 2000 年に 418 人であ

ったのに対し、2015 年では 59 人とその減少率は 85.9%となっている。このことから、

農業就業人口の大幅な減少に加え、高齢化と若手農業者の不足が顕著に見られる地域で

あると言える(表 2 参照)。

図 2-3 では、中南地域における年齢別農業就業人口の割合を示しており、農業就業

人口は 15 年間で 38,620 人から 24,669 人まで減少し、その減少率は 36.1%である。こ

の減少率は東青地域よりも小さいが、実人数の値を見ると 20~65 歳未満の人口減少が

極めて多いことが分かる。また、農業就業人口における 65 歳以上の割合は 2015 年に 5

割を超え、20 歳未満の農業就業人口が 2000 年で 1,423 人であったのに対し、2015 年で

は 237 人とその減少率は 83.3%となっている。このことから、中南地域は中間層である

20~65 歳未満の農業者によって農業が支えられている地域である一方で、若手農業者

の不足が課題として挙げられることがうかがえる(表 2 参照)。

図 2-4 では、三八地域における年齢別農業就業人口の割合を示しており、農業就業

人口は 15 年間で 21,406 人から 12,717 人まで減少し、その減少率は 40.5%となってい

る。また、農業就業人口における 65 歳以上の割合は 2005 年に 5 割を超え、2015 年に

は 6 割を目前とした。加えて、20 歳未満の農業就業人口は 2000 年に 674 人であったの

に対し、2015 年では 168 人と若手農業者の減少率が 75.1%となっている。三八地域は、

比較的減少率も他の地域より落ち着いているように見えるが、着実に人口減少と高齢化、

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若手農業者の不足が進んでいる。そのため、今のうちにそれらの問題に対応した対策を

検討し、人口減少の緩和、改善に努めることが求められる。(表 2 参照)。

図 2-5 では、西北地域における年齢別農業就業人口の割合を示しており、農業就業

人口は 15 年間で 18,364 人から 10,717 人まで減少し、その減少率は 41.6%となってい

る。また、農業就業人口における 65 歳以上の割合は 2015 年に 5 割を超えた。また、20

歳未満の農業就業人口は 2000 年に 724 人であったのに対し、2015 年では 99 人とその

減少率は 86.3%になっている。これらの変化は中南地域の農業就業人口の変化とよく

似ており、20~65 歳未満の人口減少が激しく、65 歳以上の割合からも高齢化が進んで

いることが分かる。また、20 歳未満の若手農業者数が 100 人を切り、6 地域の中で 2 番

目に少ない値になっていることから、特に若手農業者の確保と育成に力を入れて取り組

まなければならない地域であると言える(表 2 参照)。

図 2-6 は、上北地域における年齢別農業就業人口の割合を示しており、農業就業人

口は 15 年間で 20,346 人から 11,703 人まで減少し、その減少率は 42.4%となってい

る。また、農業就業人口における 65 歳以上の割合は 2005 年に 5 割を超え、2015 年に

は 6 割を目前とした。また、20 歳未満の農業就業人口は 2000 年に 1,039 人であったの

に対し、2015 年では 182 人とその減少率は 82.5%になっている。これらの変化は三八

地域の農業就業人口の変化と非常に類似である。しかし、上北地域は三八地域に比べ、

2010 年から 2015 年で高齢農業者層の割合が急増し、農業就業人口における高齢化の進

行スピードが速くなっていることがうかがえる。加えて若手農業者が減少傾向であるこ

とから、今後も農業就業人口は縮小していくことは容易に推測できる(表 2 参照)。

図 2-7 では、下北地域における年齢別農業就業人口の割合を示しており、農業就業

人口は 15 年間で 1,915 人から 690 人まで減少し、その減少率は 63.9%となっている。

また、農業就業人口における 65 歳以上の農業就業人口の割合は 2005 年に 6 割を超え、

2015 年には 7 割を目前とした。また、20 歳未満の農業就業人口は 2000 年に 76 人であ

ったのに対し、2015 年では 10 人とその減少率は 86.8%になっている。下北地域は、6

地域の中で特に農業就業人口の高齢化が深刻であり、若手農業者の確保・育成が急がれ

る。農業就業人口の実人数が極めて少ないことの背景には、下北地域の産業形態が関係

していると考えられる。特に、下北地域は他の地域に比べ農業分野における問題が山積

しており、その対策が急がれる(表 2 参照)。

以上から、地域別に農業就業人口を比較すると、各地域とも農業就業人口の大幅な減

少と高齢化、若手農業者の減少が見られ、6 地域の中でも最も深刻な状況にあるのは、

下北地域であることが分かった。いずれにせよ、今後の県内農業を維持していくために

必要となってくるのは、労働力の確保と若手農業者の育成であると言える。

次項では、青森県における農業経営者の担い手について焦点を当て、農業後継者の有

無や後継者の区分について分析し、県内の農業経営について掘り下げていくことにする。

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表2 青森県における年齢別農業就業人口の動向

(単位:人、%)

20歳未満 20歳~65歳未満 65歳以上 合計 65歳以上割合

青森県全体

2000年 4,354 58,660 46,536 109,550 42

2005年 3,025 46,493 46,648 96,166 49

2010年 1,616 37,539 41,328 80,483 51

2015年 755 28,733 35,258 64,746 54

東青地域

2000年 418 4,142 4,339 8,899 49

2005年 268 3,011 4,122 7,401 56

2010年 152 2,252 3,318 5,722 58

2015年 59 1,637 2,554 4,250 60

中南地域

2000年 1,423 21,802 15,395 38,620 40

2005年 1,004 17,527 15,621 34,152 46

2010年 599 14,458 14,453 29,510 49

2015年 237 11,547 12,885 24,669 52

三八地域

2000年 674 11,222 9,510 21,406 44

2005年 557 8,798 9,320 18,675 50

2010年 241 6,975 8,351 15,567 54

2015年 168 5,353 7,196 12,717 57

西北地域

2000年 724 10,282 7,358 18,364 40

2005年 500 8,505 7,796 16,801 46

2010年 301 6,860 6,878 14,039 49

2015年 99 5,087 5,531 10,717 52

上北地域

2000年 1,039 10,424 8,883 20,346 44

2005年 660 8,170 8,898 17,728 50

2010年 309 6,675 7,679 14,663 52

2015年 182 4,901 6,620 11,703 57

下北地域

2000年 76 788 1,051 1,915 55

2005年 36 482 891 1,409 632010年 14 319 649 982 66

2015年 10 208 472 690 68

資料:各年次農業センサスより作成。

注:販売農家である。

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3)農業後継者の有無別農家数の推移

これまでの分析により、県内農業において高齢化と担い手不足という課題が挙げられ

た。ここでは県内における農業後継者の現状と傾向を把握し、今後の農業構造の予測を

計ることで、具体的にどのような対策が必要になるのかについて見ていく。

図 3-1 は、青森県における農業後継者の有無別農家数の推移を示したものである。

これより、2000 年に「後継者がいる」と答えた販売農家数は 59,996 人のうち 41,840

人、全体における割合は 69.7%となっている。その中でも同居後継者の割合は約 85%、

他出後継者の割合が約 15%となっている。これが 2015 年では、「後継者がいる」と答え

た販売農家数は、34,866 人のうち 15,833 人、全体における割合は 45.4%となってい

る。その中でも同居後継者の割合は約 69%、他出後継者の割合は約 31%となった。こ

れより、15 年間で後継者がいると答えた販売農家数の割合は 24.3 ポイントの減少、後

継者の区分別に見てみると、同居後継者が減少し、他出後継者が増加していることがわ

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かる。そして注目すべきは、後継者がいないと答えた販売農家である。2000 年~2015 年

で「後継者がいない」と答えた販売農家数は、18,156 人から 19,033 人と 4.8%増加し、

年々販売農家数が減少しているのにも関わらず、この数値のみが増加傾向にある。今後

何も対策を取らずこういった状況が続くと、県内の販売農家はどうなってしまうのか。

これを 15 年間の減少率より将来予測を立てたところ、2020 年に販売農家数は 28,000

人となることが推測できる。

農業経営者の高齢化という問題がある中で後継者の確保は重要であり、今後後継者が

いない農業経営者にどのような措置を取るのか、どのような形で次の世代に農業経営を

引き継ぐのか、これらは県内農業を維持していくためにも重要な課題であると言える。

また、農業経営を後継者に委譲するにあたって、他出後継者が増加していることにつ

いて述べる。他出後継者は農業センサスにおいて、次の世代でその家の農業経営を継承

する予定の人として、満 15 歳以上で他出し、独立して生活を行っている者と位置付け

られており、近年の職業構造と照らし合わせてみると、他出後継者が農業以外の職業に

従事している場合が多い(注1)。こういった場合、同居後継者が必ずしも家の農業に

従事しているとは言えないが、特に他出後継者は同居後継者に比べて、家の農業経営に

関して接する機会が少なくなると考えられる。そうした中で、他出後継者が家の農業経

営を把握しないまま自らの代に農業経営が移った時、スムーズな農業経営を始動出来る

のかという点が懸念される。よって、県内農業を維持するには後継者の確保が第一であ

るが、後継者へ農業経営を引き継ぐ準備や方法も重要であると言える。

以上の分析から、県内農業において農業経営者と農業就業人口における人口減少、高

齢化、後継者不足といった問題が明らかとなり、これらの問題によって県内における農

業労働力が不足している状況にあることが考えられる。そのため次項では、県内の農業

労働力について焦点を当てその動向を分析し、農業現場において求められる労働力の形

について見ていくことにする。

4)農業労働力の動向

表 3 は、青森県における農業労働力の推移を 2010 年と 2015 年で比較したものであ

る。2010 年~2015 年の 5 年間で実人数では、常雇用者は 3,590 人から 5,457 人と 1,860

35,583

22,05318,596

10,978

6,257

3,6295,900

4,855

18,156

25,108

18,818

19,033

28,000

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

2000年 2005年 2010年 2015年 2020年

(人)

資料:各年次農業センサスより作成。

注1:販売農家である。注2:男女合計の値である。

図3−1 青森県における農業後継者の有無別農家数(将来予測)

(同居後継者) (他出後継者) (後継者がいない) 将来予測

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人増加、延べ人日では 733,251 人日から 1,123,216 人日と 389,965 人日の増加で、増加

率は 52.0%となっている。臨時雇用者は 143,077 人から 104,513 人と 38,564 人の減

少、延べ人日では 2,026,973 人日から 1,707,232 人日と 319,741 人日の減少で、減少率

は 27.0%となっている。そして両者の合計では、実人数は 146,667 人から 109,970 人

と 36,697人減少しており、減少率は25.0%となっている。一方、延べ人日では2,760,224

人日から 2,830,448 人日と 70,224 人日の増加となっており、増加率は 2.5%となって

いる。

これより、常雇用者において実人数が増加し、両者の合計において延べ人日も増加し

ていることから、県内における農業労働力の確保はできているように見える。しかしな

がら、臨時雇用者における実人数の減少が常雇用者の増加人数を上回っており、青森県

全体として農業労働力が不足していることが分かる。また、延べ人日が増加している要

因として常雇用者の増加が挙げられるが、農業は時期よって作業内容とその時期に必要

とされる労働力が大きく異なるため、臨時雇用者減少は農業にとって大きなダメージを

与えていると言える。そして、青森県全体として 5 年間で農業労働力が大きく減少して

いることからも、県内における農業労働力の確保はさらに困難になることが推測できる。

以上のことから、農業労働力の確保は、人口減少と高齢化を抱えている青森県におい

て非常に困難な課題であるが、県内農業を維持していくためには、早急に取り掛からな

ければならない課題の一つであると言える。

次節では、青森県における農地流動化について焦点を当て、経営耕地面積の動向と経

営耕地の規模拡大について、借地率や農地の貸付状況等と照らし合わせつつ、どのよう

に県内の農地が動いているのか分析していくことにする。

3.青森県における農地流動化

1)青森県における農地流動の動向

前節では青森県における農業について、人的課題に焦点を置いて分析してきた。ここ

からは土地に焦点を置き農業構造を見ていくことにする。

まず、経営耕地面積の動向については、概観で述べた通りである。その特徴として経

営耕地面積は減少傾向にあるということが挙げられた。また田・畑・樹園地のどの項目

においても減少しており、特に田での減少が大きいということも挙げられた。

表3 青森県における農業労働力の推移

実人数(人) 延べ人日(人日) 実人数(人) 延べ人日(人日) 実人数(人) 延べ人日(人日)

2010年 3,590 733,251 143,077 2,026,973 146,667 2,760,224

2015年 5,457 1,123,216 104,513 1,707,232 109,970 2,830,448

両者の計臨時雇用(手伝い含む)

資料:各年次農業センサスより作成。

常雇用

経営体数

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さらに販売農家数の減少に伴い、一戸あたりの平均経営耕地面積は増加しており、こ

のことについて農家数が大きく減少していることが問題だと前述した。次項より、規模

別販売農家数、農地の借入・貸付状況、耕作放棄地状況を分析し、経営耕地面積の状況

と合わせながら、より詳細に特徴を捉えようと思う。

2)規模別販売農家の動向

県全体の規模別販売農家数については、概観で述べた通りであり、1.0ha~3.0ha の経

営規模をもつモード層となる農家の減少が、26,357 戸から 15,067 戸(減少率 42.8%)

と最も激しいことが分かる。それに対して 3.0ha~5.0ha 層の減少率は比較的小さく(減

少率34.5%)、特に5.0ha以上層では販売農家戸数に増加傾向が見られる(増加率8.7%)

(図4-1)。つまり、販売農家戸数が減少していく中でも一戸当たりの規模拡大が進み、

下層規模の農家がより上層へと移行したものと言える。これは経営耕地面積の減少率に

対し販売農家数の減少率が大きいことからも、減少した分の販売農家が、規模を縮小な

いし農地を手放した結果として残存農家に農地が集積されたものと考えられる。

次に6地域区分で規模別販売農家数の動向を見ていく。東青地域では、5.0ha 以上層

が増加する一方で 1.0ha 未満層も多く、規模拡大が進む中で小規模農家の存在もいまだ

多いことが分かる(図 4-2)。中南地域では、5.0ha 以上の大規模層は実数でみても他

地域より少なく、1.0ha 未満の層や 1.0ha~3.0ha の層が厚く、多くの小規模農家によ

って構成されている事が伺える(図 4-3)。三八地域は 5.0ha 以上の大規模層が増加し

ていることなど東青地域に似た構造であるが、全体のモード層でもある 1.0ha~3.0ha

の中間層が厚い(図 4-4)。西北地域では 5.0ha 以上の大規模層が増加しているのに対

して、小規模層の減少見られるなど規模拡大の傾向が強く見られる(図 4-5)。上北地

域では、5.0ha 以上層に特徴的変化は見られないものの、それ以外の 1.0ha 未満、1.0ha

~3.0ha、3.0ha~5.0ha の三層で等しく減少していることが分かる(図 4-6)。下北地

域では全体的に急激な減少が見られ、特にモード層である 1.0ha 未満での減少が激し

い。しかし 5.0ha 以上層では増加が見られることから規模拡大が見受けられる(図 4-

7)。

どの地域でも規模拡大が見られたが、小規模農家と二極化した地域や等質的に 5.0ha

以上層以外の3層が減少する地域など、地域によって差異が見られた。ここで注目する

べき点は、この規模拡大がどのような形態で進んでいるのか、すなわち売買または貸借

のどちらによる農地の流動の割合が大きいかという点である。次項では、農地借入貸付

状況からこの点について詳しく見ていく。

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3)農地流動化の状況

概観では、戸当たりの経営耕地面積また借地率は増加傾向にあり、特に近年では田に

おいて借地による農地の流動化が進んでいると前述した。以下ではまず青森県、そして

6 地域ごとに農地の借入貸付状況を分析し、農地流動の特徴を掴んでいく。

22,86418,679

14,915 11,279

26,357

22,396

18,933

15,067

6,635

5,786

5,196

4,349

3,814

3,929

4,202

4,114

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

2000年 2005年 2010年 2015年

資料:各年次農業センサスより作成。

注:販売農家である。

図4−1 青森県における規模別販売農家戸数の推移

1ha未満 1.0~3.0 3.0~5.0 5.0ha以上

(戸)

2,5981,932

1,387956

2,222

1,734

1,368

951

458

383

328

270

249

274

289

286

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

2000年 2005年 2010年 2015年

資料:各年次農業センサスより作成。

注:販売農家である。

図4−2 東青地域における規模別農家戸数の推移

1ha未満 1.0~3.0 3.0~5.0 5.0ha以上

(戸)

8,818 7,461 6,314 5,219

9,807

8,5507,710

6,642

1,432

1,400

1,390

1,277

401

447

516

567

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

2000年 2005年 2010年 2015年

資料:各年次農業センサスより作成。

注:販売農家である。

図4−3 中南地域における規模別農家戸数の推移

1ha未満 1.0~3.0 3.0~5.0 5.0ha以上

(戸)

4,2333,496

2,7812,205

3,961

3,404

3,039

2,441

818

724

733

639

311

327

371

360

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

9,000

10,000

2000年 2005年 2010年 2015年

資料:各年次農業センサスより作成。

注:販売農家である。

図4−4 三八地域における規模別農家戸数の推移

1ha未満 1.0~3.0 3.0~5.0 5.0ha以上

(戸)

3,298 2,7191,819 1,178

5,057

4,312

3,244

2,417

1,685

1,395

1,231

951

1,166

1,223

1,356

1,327

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

2000年 2005年 2010年 2015年

資料:各年次農業センサスより作成。

注:販売農家である。

図4−5 西北地域における規模別農家戸数の推移

1ha未満 1.0~3.0 3.0~5.0 5.0ha以上

(戸)

3,150 2,496 2,233 1,509

4,959

4,1713,400

2,499

2,189

1,838

1,471

1,175

1,582

1,578

1,597

1,510

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

2000年 2005年 2010年 2015年

資料:各年次農業センサスより作成。

注:販売農家である。

図4−6 上北地域における規模別農家戸数の推移

1ha未満 1.0~3.0 3.0~5.0 5.0ha以上

(戸)

767575

381212

351

225

172

117

53

46

43

37

105

80

73

64

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

2000年 2005年 2010年 2015年

資料:各年次農業センサスより作成。

注:販売農家である。

図4−7 下北地域における規模別農家戸数の推移

1ha未満 1.0~3.0 3.0~5.0 5.0ha以上

(戸)

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表4において、青森県では 2005 年から 2010 年にかけての借入耕地面積の増加率は

28.4%と全国の 10%を上回っていることがわかる。2010 年から 2015 年にかけては 15%

と 13.4 ポイントもの減少を見せたものの、2005 年から 2015 年の間で 11.1 ポイントも

借入耕地面積率が増加したことからも、借地による農地流動が読み取れる。

ここからは、6 つの地域区分それぞれで農地借入貸付状況を見ていく。経営耕地面積

減少率が 2005 年から 2010 年に比べて、2010 年から 2015 年はそこまで大きくない地域

である東青地域や上北地域は、借入耕地面積増減率で見ると、東青地域は 2005 年から

2010 年では 6.0%、2010 年から 2015 年 16.0%と、近年でより借地による農地流動が進

んでいる。

上北地域は 2005 年から 2010 年で 13.0%から 14.0%となっており、以前から借地に

よる農地流動は進んでおり、2010 年から 2015 年の間で中南地域や三八地域ほど耕地面

積に減少が見られなかった。これらの地域は、2005 年から 2015 年にかけての借入耕地

面積率も高くなっている。東青地域では特に 2010 年から 2015 年の間に、上北地域では

2005 年から 2015 年の間に借地による農地流動化を安定的に増加させてきた。この 2 地

域では借地による農地の流動化が活発に行われており、継続的に農地集積されているこ

とが分かる。

中南地域、西北地域は 2005 年から 2010 年で借入耕地面積を大きく増加させている。

しかし、2010 年から 2015 年にかけてそれ以上に伸びていない。特に西北地域では 12.2

ポイント減少し、さらに借入耕地面積率も伸び悩んでいる。つまり、これらの地域では

2005 年から 2010 年の間に借地による農地流動がかなり進んでいたが、2010 年から 2015

年にかけて借入耕地面積の増加が収まるなど停滞局面に移行したことが推察される。た

だし、西北地域においては借地による農地流動が続いていたため、中南地域ほど経営耕

地面積に大きな減少は見られなかったと推測できる。

三八地域では、2010 年から 2015 年で借地率がほとんど増加せず、経営耕地面積は

2005 年から 2015 年で大幅に減少、また借入耕地面積増減率が 2005 年から 2010 年で

11.0%と、他の地域に比べ借地による農地移動がそこまで盛んではなかったことが読み

取れる。

下北地域では、2005 年の時点で借り入れ耕地面積率が 22%とすでに高い数字を示し

ているのに対して、借入耕地面積増減率は 2005 年から 2010 年の間で 2.3%とかなり低

く、続く 2010 年から 2015 年では減少に転じている。借地による農地集積、さらには経

営耕地確保に限界が来ていたものと考えられる。それは経営耕地面積が 2005 年から

2010 年の時点で 14.8%、2010 年から 2015 年の間で 16.8%とそれぞれ高い減少率を示し

ていることからも推察される。借入耕地面積増減率がマイナスに転じたのにもかかわら

ず、借入耕地面積率が増加しているのは、経営耕地面積自体が急速に減少し、相対的に

借入耕地面積率が高まったものと考えられる。

上北地域における、2010 年から 2015 年の借入耕地面積の増減率は前 5 年の増加水準

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14

を維持し、東青では 10 ポイントもの増加を見せた。経営耕地面積の増減率をみると、

この 2 地域は 2010 年から 2015 年にかけての減少率が小さい。反対に、同年での借入耕

地面積が減少した中南地域、三八地域、西北地域では、2010 年から 2015 年にかけて経

営耕地面積の大幅な減少が見られる。これらから、借地によって農地が流動することで

経営耕地面積の減少に歯止めがかかったと示唆される。

表5は、県内における経営田の面積から借入状況を全国と比較したものである。概観

において、借地は特に田で高まっていると前述した。経営田面積増減率は全国と比べて

も、2005 年から 2010 年で全国での減少率 10.3%に対して県内は 0.8%と減少率が小さ

く、2010 年から 2015 年においても県内の経営田面積の減少率は非常に小さい。県内の

農業において米生産が重要であることは周知の事実であり、経営田面積は大きく減少せ

ず一定数を確保しながらその中身に推移が見られると考えられる。しかし米農家におけ

る農業人口の減少も他品目同様に起きており、実際、田の借入面積率は 2005 年から 2015

年で 16 ポイント増加となっており、田では特に借入によって農地集積が進んでいると

言える。

さらに 6 地域別で販売農家の経営田・借入田面積の動向を見ていく。借入田面積増減

率でみると、東青は特に 2010 年から 2015 年にかけて増加していることから、借地によ

る農地流動化は最近の傾向と言える。上北では借入田面積増加率が他の地域に比べても

高く、借地による田の農地流動が盛んであることがわかる。さらに経年でみると 2005

年から 2010 年、2010 年から 2015 年ではそれぞれ 41.7%、40.3%となっており、減少し

たとはいえ 1.4 ポイントのみの減少となっている。つまり、継続的に借入田の面積を増

加させている事がうかがえる。この 2 地域では経営田面積の減少も小さく、借入田面積

率が高まっていることなどからも借地田による農地流動が活発であると考えられる。

中南地域、西北地域では、借入田面積増減率から 2005 年から 2010 年の時点でそれぞ

れ 26.0%、20.6%と他の地域に比べてもある程度は、借地による田の移動があったこと

が分かる。しかし、続く 2010 年から 2015 年にかけて借り入れ田面積の増加率が前 5 年

表4 販売農家の経営耕地・借入耕地面積の動向

(単位:%)

05−10年 10−15年 05−10年 10−15年 2005年 2010年 2015年

全国 ▲7.4 ▲8.7 10.0 3.1 20.0 23.8 26.9

青森県 ▲0.3 ▲6.4 28.4 15.0 18.8 24.3 29.9

東青地域 ▲11.0 ▲11.0 6.0 16.1 22.1 26.3 34.2

中南地域 ▲6.2 ▲15.5 16.6 9.5 9.7 12.1 15.6

三八地域 ▲3.1 ▲14.2 11.3 4.6 15.9 18.2 22.2

西北地域 ▲1.3 ▲8.6 19.8 7.6 19.1 23.2 27.2

上北地域 ▲6.8 ▲9.5 13.3 14.6 20.6 25.0 31.7

下北地域 ▲14.8 ▲16.8 2.3 ▲3.1 22.0 26.5 30.8

資料:各年次農業センサスより作成。

注:販売農家である。

経営耕地面積増減率 借入耕地面積率借入耕地面積増減率

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ほどの伸びを見せず、さらに経営田面積も同 5 年で減少を見せていることなどからも借

地による田の流動化は停滞局面に入ったものと考えられる。

これら 4 つの地域は表 3 の経営耕地面積でみた推移と近似しているため、借地田によ

る農地流動化を中心としているものと思われる。

経営田面積は呼応するように、2010 年から 2015 年の間に大きな減少となっている。

三八では、借入田面積増減率は 2005 年から 2010 年で 21.7%と上記の中南地域、西北地

域と変わらない数値を見せる。しかし 2010 年から 2015 年では、借入田面積の増加はや

や減少したものの 18.4%と安定した増加率を見せている。しかし経営田面積増減率で

見ると 2010 年から 2015 年にかけての減少率は大きい。

さらに下北地域では、借入田面積は 2005 年から 2010 年では大幅に減少している。

2010年からはやや増加を見せたものの、13.2%という数値は他地域と比較して小さい。

しかしながら、借入田面積率をみると、2005 年時点から 5 分の 1 以上が借地であり、

この割合は他地域と比較し、大きいといえる。2010 年から 2015 年にかけてその割合は

約 10%増加しており、この 5 年間で急激に増加したといえる。

ここまで借地による農地集積を指摘してきたが、ここからは表6より土地持ち非農家

による土地の貸付状況について整理を行う。この表から上北地域、東青地域などは土地

持ち非農家に加えた自給農家の一戸あたりの平均貸付面積が他の地域と比べ大きいこ

とが読み取れる。対して中南地域、三八地域などは、土地持ち非農家に加えた自給農家

の一戸当たりの平均貸付面積が小さいことが伺える。

前記の通り、上北地域、東青地域では 2010 年から 2015 年における借入耕地面積の顕

著な増加がみられ、2015 年度における借入耕地面積率も高い。一方、中南地域、三八地

域の 2010 年から 2015 年における借入耕地面積の増加は前 5 年と比べ縮小しており、

2015 年度における借入耕地面積率は他地域と比べ低い数値となっている。さらに、土

地持ち非農家、自給的農家の一戸あたり貸付面積が大きい地域は、借入耕地面積率が大

きいことなどから、借地の供給源は、主に土地持ち非農家、自給的農家であると考えら

表5 販売農家の経営田・借入田面積の動向

(単位:%)

05−10年 10−15年 05−10年 10−15年 2005年 2010年 2015年

全国 ▲10.3 ▲9.3 12.6 5.3 21.0 26.4 30.6

青森県 ▲0.8 ▲6.6 52.5 18.1 16.9 26 32.9

東青地域 ▲10.5 ▲8.5 5.9 17.3 25.7 30.4 39.0

中南地域 ▲9.1 ▲17.5 26.0 13.5 14.2 19.7 27.1

三八地域 ▲4.9 ▲16.5 21.7 18.4 10.1 12.9 18.3

西北地域 ▲1.7 ▲7.6 20.6 8.3 19.4 23.8 27.9

上北地域 ▲11.4 ▲8.7 41.7 40.3 10.8 17.3 26.5

下北地域 ▲20.1 ▲23.6 ▲22.9 13.2 21.3 20.5 30.4

資料:各年次農業センサスより作成。

注:販売農家である。

経営田面積増減率 借入田面積増減率 借入田面積率

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れる。さらに自給農家の割合は土地持ち非農家に比べ小さいため、主に土地持ち非農家

が借地の供給源と思われる。

4)耕作放棄地

ここまで、規模別販売農家数や借入・貸付状況を分析してきたが、最後に耕作放棄地

の状況を分析し、各データを照らし合わせながら特徴を捉えていくこととする。

青森県全体では、土地持ち非農家による耕作放棄地面積が多く、推移を見ると土地持

ち非農家の増加が大きいことがわかる。販売農家、自給的農家の推移は横ばいである(図

5-1)。

東青地域では、販売農家、自給的農家の推移は横ばいであり、土地持ち非農家が大き

く増加している。2015 年時点で土地持ち非農家の割合が大きいことがわかる(図 5-2)。

中南地域では、全体的にみると、2005 年から 2010 年にかけて耕作放棄地面積は増加

しており、2010 年から 2015 年にかけてやや減少している。東青地域と異なるのは販売

農家による耕作放棄地割合が多いという点である(図 5-3)。

三八地域では、販売農家による耕作放棄地が 2005 年から 2010 年にかけて減少し、

2010 年から 2015 年にかけて増加しており、長期間でみると横ばい状態である。一方、

自給的農家や土地持ち非農家による耕作放棄地が増加している。三八地域の場合、2015

年時点で、販売農家、土地持ち非農家の耕作放棄地面積がほぼ同等であり、自給的農家

がその半分ほどであることがわかる(図 5-4)。

西北地域では、三八地域と同様な推移の仕方をみせている。三八地域に比べ、販売農

家よりも土地持ち非農家による耕作放棄地がやや多いことがわかる(図 5-5)。

上北地域では、三八地域と同様な推移の仕方をみせている。三八地域、西北地域に比

べ、販売農家よりも土地持ち非農家による耕作放棄地が大きいことがわかる(図5-6)。

下北地域では、全体として、面積は横ばい状態である。比率は、土地持ち非農家によ

る耕作放棄地が徐々に増加していることがわかる(図 5-7)。

東青地域や上北などの地域は土地持ち非農家や自給的農家の戸あたりの貸付面積が

表6 土地持ち非農家・自給的農家による農地貸付状況(2015年)

(単位:戸、ha)

土地持ち非農家 自給的農家

農家 面積 貸付面積 農家 面積 貸付面積 農家 面積

全国 944,029 635,909 0.67 297,708 170,149 0.57 1,241,737 806,058

青森県 18,066 17,489 0.97 3,379 2,913 0.86 21,445 20,402

東青地域 2,652 2,322 0.88 400 342 0.86 3,052 2,664

中南地域 4,100 2,642 0.64 668 444 0.66 4,768 3,086

三八地域 1,805 1,166 0.65 807 481 0.60 2,612 1,647

西北地域 4,503 5,041 1.12 493 545 1.11 4,996 5,586

上北地域 4,521 5,952 1.32 850 1,003 1.18 5,371 6,955

下北地域 485 368 0.76 161 98 0.61 646 466

資料:農業センサスより作成。

注:販売農家である。

0.65

土地持ち非農家 自給的農家 両者の計 一戸平均

貸付面積

0.72

0.95

0.87

0.65

0.63

1.12

1.29

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大きい。そして中南地域や三八地域は反対に、戸あたりの貸付面積が小さいことは前項

で述べた。東青地域や上北地域を見ると、これらの地域は土地持ち非農家による耕作放

棄地の割合が多いことが見て取れる。次に、中南地域、三八地域では、土地持ち非農家

による耕作放棄地割合が少ない。

ここから東青地域や上北地域など土地持ち非農家や自給的農家の戸あたりの貸付面

積が大きい地域は、土地持ち非農家による耕作放棄地の割合が大きく、そして中南地域、

三八地域のような土地持ち非農家や自給的農家の戸あたりの貸付面積が小さい地域で

は、土地持ち非農家による耕作放棄地が少ないことが示唆される。つまり、土地持ち非

農家は販売農家などの借地の供給源とともに耕作放棄地の供給源となる、二極化の状況

にある存在であると考えられる。

6,150 5,292 5,724

1,8312,143

2,253

6,609 7,776

9,342

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

2005年 2010年 2015年

(ha)

資料:各年次農業センサスより作成。図5−1 青森県における耕作放棄地面積の推移

販売農家 自給的農家 土地持ち非農家

536 509 413

230 281258

8961,088 1,292

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

2005年 2010年 2015年

(ha)

資料:各年次農業センサスより作成。図5−2 東青地域における耕作放棄地面積の推移

販売農家 自給的農家 土地持ち非農家

1,0411,282

1,057

1…

207

175

459

802

785

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

2005年 2010年 2015年

(ha)

資料:各年次農業センサスより作成。

図5−3 中南地域における耕作放棄地面積の推移

販売農家 自給的農家 土地持ち非農家

1,608 1,392 1,619

574724

814

1,101 1,388

1,693

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,500

2005年 2010年 2015年

(ha)

資料:各年次農業センサスより作成。

図5−4 三八地域における耕作放棄地面積の推移

販売農家 自給的農家 土地持ち非農家

802504

814

99

131

199

679

810

999

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

2005年 2010年 2015年

資料:各年次農業センサスより作成。

図5−5 西北地域における耕作放棄地面積の推移

販売農家 自給的農家 土地持ち非農家

1,8621,390 1,616

405

429478

2,520

2,570

3,411

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

2005年 2010年 2015年

(ha)

資料:各年次農業センサスより作成。

図5−6 上北地域における耕作放棄地面積の推移

販売農家 自給的農家 土地持ち非農家

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4.小括

ここでは、青森県の農業構造における近年の動向から、今後早急に対策を立てる必要

のある課題について整理していく。青森県の農業構造を農業センサスによって分析した

ところ、農業人口の減少と高齢化、後継者不足、土地持ち非農家の増加とそれに伴う耕

作放棄地の増加等の問題が明らかにされた。また 6 地域の比較では、下北地域において

特に農業構造の縮小が見られ、他の 5 地域においても農業人口の減少と高齢化が着々と

進行していることが分かった。

これらの問題をまとめると、県内の農業構造における課題として第一に、農業人口の

減少と高齢化に対する、若手農業者の確保と育成が挙げられる。農業センサスによる分

析で、農業経営者、農業就業人口における人口減少率は 2000 年~2015 年で両者共に約

4 割を示し、60 歳以上の農業経営者割合は7割を超え、65 歳以上の農業就業人口の割

合は 5 割以上となった。また、今後の県内農業を担っていく若手農業者は年々減少し、

2015 年時点で農業就業人口全体における 20 歳未満の割合は 1.2%、農業就業人口全体

における 65 歳以上の就業人口の割合は 54,5%と半数以上を占めていることから、県

内農業は 65 歳以上の高齢農業者によって大きく支えられていることが分かる。県内農

業の行く末をこれらの分析結果と、農業後継者の有無別農家数の推移から推測すると、

高齢化の進行による農業人口の減少止まることを知らず、加えて後継者不足にある現状

を踏まえると、若手農業者の確保と育成は早急に取りかからなければならない課題であ

る。

続いて第二の課題として挙げられるのは、十分な農業労働力の確保である。先述した

とおり、青森県の農業構造として農業人口の減少と高齢化が進行しており、県内の農業

労働力は確実に縮小している。県内における農業労働力の推移を見ると、常雇用者の増

加により数値的に労働力は維持されているように見られたセンサスデータであったが、

臨時雇用者の大幅な減少もあり、全体として農業雇用者の実人数が減少していることが

明らかとなり、農業労働力は不足している状況にあることが分かった。また、農業は栽

培する農作物によっても必要とされる労働力が異なり、それは自然環境によっても左右

されることがある。これらのことを踏まえると、農業雇用者における需要は常雇用者で

は低くなり、時期や期間を定めた臨時雇用者の方が高くなることが示唆され、農業労働

300191 165

357365 322

953 1,109 1,146

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2005年 2010年 2015年

(ha)

資料:各年次農業センサスより作成。

図5−7 下北地域における耕作放棄地面積の推移

販売農家 自給的農家 土地持ち非農家

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力の確保という課題に対して、今後どのような対策を講じるのかが焦点となってくる。

そして第三の課題として、県全体における耕作放棄地の増加が挙げられる。県内にお

ける農地流動化について分析したところ、一戸当たりの経営耕地面積の増大、つまり規

模拡大が進んでいることが明らかとなった。経営耕地の規模拡大の要因としては、借地

によるものであることが図表から読み取れ、その主な供給源は土地持ち非農家であるこ

とが分かった。しかしながら土地持ち非農家は、借地の供給源となっている一方で耕作

放棄地を増加させている存在ともなっている。

注 1)総務省統計局 Ⅲ 変化する産業・職業構造を参照。

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第2章 農福連携の制度的な枠組み

1. 農福連携の概要

1) 農福連携とは

農福連携とは、農業分野と福祉分野が連携し双方の課題解決や利益創出を目的とした

取組であり、今日、全国的にこの取組が推進されている。農林水産省は、障害者等の農

業分野での活躍を通じて自信や生きがいを創出し社会参画を促す取組と定義づけてい

る(注 1)。農業分野と福祉分野、双方の課題解決が農福連携の本来の狙いであり、双方

が掲げている課題は以下のように整理できる。

農業分野では、全国的に高齢化による担い手不足や耕地面積の減少、耕作放棄地の増

加などが挙げられ、青森県においても農業就業人口や販売農家数の減少による担い手不

足や耕作放棄地の増加、労働力不足等の同様な課題が見られた。

次に福祉における課題として、障害者の就職率の低さや工賃(賃金)の低さ、雇用契

約の不安定性などが挙げられる。以下の図は障害者福祉サービスの利用者数(図 1-1)

やその事業所数(図 1-2)の推移であり、雇用契約が結ばれない(後述)就労継続支援 B

型事業の利用割合、事業対数が増加している現状がわかる。

このように双方において課題は山積しているが、互いに連携することで課題を解決し

ようというのが農福連携である。具体的に、農業分野では障害者雇用による労働力の確

保、福祉分野では農業分野における障害者の就労機会の拡大や工賃の向上を課題解決の

糸口としている。しかし農福連携事業の運営体制が整備しきれていないのが現状である。

例えば、障害者への農業の専門知識の享受や、障害者のための労働環境の整備、農業者

による障害者の理解、互いの分野をつなぐ存在の必要性などの問題がある。今後、事業

を推進するためには、これらの問題に目を向けることが必要であると考えられる。

2)農福連携事業の分類

農林水産省によると、農福連携はその取り組みの主体によって大きく 3 つに分類され

る。1 つ目は農業側が主体となって行うものである。規模や売上が大きい農家や農業法

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人を中心に障害者雇用が進められている。具体的な内容として、農作業時の障害者雇用

の他に障害者向け農作業体験の実施などがある。

2 つ目は福祉側である NPO 法人や社会福祉法人などの社会福祉事業所が主体となって

行うものであり、特に障害福祉サービス事業所が主体となる事例が多い。敷地内の畑あ

るいは敷地外に農地を借りて農作業を行うケースや社会福祉法人が農家の経営を受け

継ぐケース、農家や農業法人に障害者を派遣するケースがある。

3 つ目は上記の農業側と社会福祉事務所以外の企業が主体となって行うものである。

企業による農福連携は大きく 2 つのケースに分けられる。1 つ目は障害者を集めて特例

子会社を作り、農福連携に取り組むケースである。近年、この事例が増加している。2

つ目は企業が健常者とともに障害者を雇用するケースである。更に上記の特例子会社と

して農業生産に取り組むケース以外に、自治体と連携し就労継続支援 A 型事業所を設立

する例も存在する。

農業側が主体となった場合、障害者が現場で怪我や事故に遭った際の責任は、雇用側

である農業側が取らなければいけない。また、農作業について指導する際に、障害者と

適切にコミュニケーションが取れるかなどの不安があり、主体である農業側が負担を強

く感じることも少なくない。そのため農業側が主体となるケースは比較的少なく、代わ

りに、福祉側が主体となるケースの一部である施設外就労が広まりつつある。これは福

祉事業所の支援事業として実現されており、事業所が農家や農業法人から農作業を受託

するパターンが多い。この場合、事業所の職員が障害者に付き添い作業も一緒にするた

め、農家の負担が減るというメリットがあり、比較的増加傾向にある。

3)障害者の就労制度

障害者の就労方法は一般就労と福祉的就労の二つに大別される。一般就労とは企業と

雇用契約を結び就労することを指し、福祉的就労とは通常の事業所に雇用されることを

困難とする者が、障害福祉サービスを受け就労を目指すことを指している。後者の障害

福祉サービスとは障害者の一般就労に向けた能力の向上を図る訓練と位置付けられる。

障害福祉サービスには就労移行支援事業、就労定着支援事業、就労継続支援 A 型事業、

就労継続支援 B 型事業、の 4 つの事業がある(表 2)。

就労移行支援事業は、一般企業での就職を希望する障害者を対象とした事業であり、

利用期間の 2 年間で就職に必要な知識やスキルの提供、さらに就職後の支援を行ってい

表1 農福連携事業の主体による分類

主体 概要

農業 農業法人や農家が障害者を従業員として雇用したり

障害者への農作業体験を実施するケース

福祉 福祉事業所が就労訓練の一環として農作業を行なう、

または農家や農業法人から農作業を受託するケース

企業 特例子会社が事業として農業に取り組むケース資料)「農」と福祉の連携(農林水産省)より作成。

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る。就労継続支援 A 型・B 型事業は、共に一般就労が困難な障害者を対象に就労に関す

る訓練を行う事業であり、福祉的就労はこの 2 つの事業が中心となっている。両者の違

いは雇用契約を結ぶか否かという点にある。就労継続支援 A 型事業は雇用契約に基づい

た就労機会が提供されるため、利用者は労働法に保護され、賃金や労働時間などが整備

された環境で就労することができる。対して、就労継続支援 B 型事業は雇用契約の締結

がないため労働法規の埒外にあり、A 型のように賃金や労働時間の規定がない。現状と

して、B 型事業利用者の工賃が最低賃金を下回るという問題が常時発生している(月額

3,000 円以上という下限はある)。

就労定着支援事業は、移行支援・A 型・B 型事業を経て一般就労した障害者を対象に

就職継続・定着を図る事業である。職場環境で困難なことがないか障害者と相談し、環

境が改善するようサポートをするといった内容である。この支援事業は、障害者総合支

援法改正(2018 年)に基づき新たに追加されたため、今後さらなる動向を見ていく必要

があるだろう。そして福祉的就労は、B 型において工賃の低さや雇用契約の不安定性な

どの問題を抱えている。農福連携を推進する上で、福祉的就労における就労訓練環境が

障害者に不利であるため、整備し保護することが必要不可欠となるだろう。

2.農福連携事業の法制度

1)農福連携の走り

農福連携という言葉が全国的に広がる以前にも、農業分野と福祉分野との連携による

取り組みは既になされていた。園芸療法やアロマセラピーなどの農産物を利用したもの

に始まり、農業体験を通した交流、農家による障害福祉サービス事業所への農作物の寄

付、特別支援学校や障害福祉サービス事業所での職業訓練を目的とした農作業の実施な

ど、多岐に渡るものであった。またそれらが目的とするものは心身のケアや交流活動、

職業訓練や地域貢献などであり、障害福祉サービス事業所や病院、農家がその事業の主

体となっていた。

表2 福祉的就労における障害者サービスの類型

事業名 就労移行支援事業 就労継続支援A型事業 就労継続支援B型事業 就労定着支援事業

対象者 通常の事務所に雇用 可能 困難 困難 就労移行支援等の利用を経て

雇用契約に基づく就労 ー 可能 困難 一般就労し6ヶ月が経過し

課題が生じている者

就労に関する支援・訓練 就労に関する支援・訓練 就労に関する訓練 就労継続のための指導・支援

求職に関する支援

就職後の支援

2年 制限なし 制限なし 3年

(最大1年間更新可能)

年齢制限 平成30年4月より65歳以上でも、過去に事業を利用していれば使用可能資料)社会福祉施設調査(厚生労働省)より作成。

事業内容

利用期間

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農福連携が全国的に広まった経緯は、2006 年に施行された「障害者自立支援法」(注

2)により、障害者の支援制度が大きく変更されたことが始まりである。この法律は障害

者の地域での自立を促進、同時に障害者によるサービスや事業所の選択を自由化、さら

に一層の工賃の向上を図るものであった。しかし当時の景気は円高やリーマンショック

などにより低迷しており、企業は従来障害福祉サービス事業所などへ委託していた作業

を海外に移し、障害者達は仕事を失った。しかし一方で、障害者支援自立法による工賃

の向上は変わらず求められた。そこで地域から離れる事のない産業である農業での障害

者就労支援が取り組まれ始めたのである。これは 2000 年台の後半から、先進的な自治

体において農業分野での障害者就労支援が始まり、農業分野での障害者就労が農福連携

として政策的に位置づけられるようになった。自治体による農福連携事業の例として、

鳥取県の鳥取発!農福連携モデル事業や、香川県の障害福祉サービス事業所と農家のマ

ッチング事業が挙げられる。

2)全国的な農福連携の取り組み

農林水産省では、2005 年頃から障害者を農業の新たな担い手と見据え、調査研究や

マニュアル作りなどを行っていた。また 2013 年度から都市農村共生・対流総合対策交

付金や「農」のある暮らしづくり交付金など、交付金の助成対象に農福連携事業を含め、

自治体による農福連携事業の支援体制の整備を進めた。

2015 年の経済財政運営と改革の基本方針には、農業分野を含めた就労・定着支援や

社会参加支援等、障害者に向けた取組について明記され、同年には全国農福連携推進協

議会が設立された。この協議会は農林水産省、厚生労働省、日本基金等により構成され、

様々な農福連携事業を実行している。具体的には、ノウフクマルシェという農作物の展

示・即売会をするイベントを実施している。この企画は 2016 年に開催以降、各都道府

県において毎年開催されている。これらの政策的な農福連携の取り組みやその支援は今

日に至るまで継続を続けており、これからも農福連携事業が推進されるものと考えられ

る。

3)障害者就労に関する法制度

はじめに障害者就労に関する法律として障害者自立支援法(2006 年)がある。この法

律では障害者の自立や地域への移行を促し、障害者が受給したいサービスや事業所を個

人が自由に選択できるものとし、障害者の工賃の向上が求められた。さらにこの法律の

後押しとして 2013 年に障害者総合支援法が制定された。

障害者総合支援法とは、社会福祉制度を通した障害者へのサービス支給法を示した法

律であり、その対象者は障害者手帳が交付された者となっている。この法律により定め

られる内容は以下の二点である。一つ目は障害福祉サービスを利用する際に、その利用

料の一部を都道府県、また市町村が負担する自立支援給付という制度である。二つ目は

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障害者の自立生活のために必要な各支援を都道府県、また市町村が行う地域生活支援事

業である。

障害者総合支援法は、福祉的就労においても重要な役割を持つ。障害者に就労の機会

を提供する障害福祉サービスとしての福祉的就労は、この法律によりサービス内容が規

定されている。前記の通りサービスには、就労移行支援事業、就労定着支援事業、就労

継続支援 A 型事業、就労継続支援 B 型事業の 4 つの種類が存在する。また障害者総合支

援法は 2018 年 4 月より改正され、就労定着支援事業はこの度新たに開始されたサービ

スである。加えて、障害者就労に関する法制度として労働法がある。労働法は、労働条

件の最低ラインを規定し労働者を保護する分野、労働者が団結・交渉し労働条件の向上

をはかる際に助成をする分野の二つに大別される。障害者就労において特に重要となる

のは、前者の労働者保護分野の法律である。前述の通り就労継続支援 B 型事業では、雇

用契約を事業所と結ばないため、労働法における労働者の保護、最低賃金や労働時間の

規定などは適用されない。

このように障害者就労に関する法律はいくつか存在するものの、就労継続支援 A 型、

B 型事業などの福祉的就労の規定などが主なものであり、農福連携を直接指し示したも

のは未だ存在しない。更に障害者が労働者となった場合に、それらを守るための労働法

規は確かに存在するが、その恩恵に預かれない労働者が未だに多く、障害者就労のグレ

ーゾーンとなっている。これらの事実から障害者就労に関する法制度にはまだ改善すべ

き余地が残されているものと考えられる。中でも労働法規における労働者保護の法整備

は喫緊の課題であると言える。

4)制度変更による影響

就労継続支援 A 型事業の給付金システム下では、一日 6,000 円から1万円の給付金を

受け取る事が出来る。交付条件は、一日 30 分の労働で給付金が交付される、事業所外

での活動によって追加で給付金が下りる、など達成が容易なものであった。そのため、

事業所が利用者全員を賄えるだけの給料を得られないという状況であっても、事業存続

を可能としていた。更に、多くの就労継続支援 A 型事業所が、収益を挙げられなくても

給付金で不足分を補えると認識としていたのが以前の状況だった。

しかし、2017 年の指定基準の改正により、給付金を賃金に充てることが禁止になり、

収入から経費を差し引いた額から利用者へ賃金を支払わなければならなくなった。その

ため、多くの就労継続支援 A 型事業所は大きな打撃を受け、その多くがその事業から撤

退ないし就労継続支援 B 型事業への移行を行った。この事業所数の変動によって大きな

混乱が現場にもたらされることとなった。またその動きに応じて利用者も B 型事業所へ

移行したのだが、就労継続支援 A 型事業所では最低賃金か、それ以上の賃金がもらえて

いたのに対し、就労継続支援 B 型事業所ではそれ以下の工賃であった。上記のシステム

変更に伴い事業所を移動した利用者が受けるこの大きな賃金と工賃の差が現在問題と

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なっている。

3.青森県における農福連携の現状と取組み

1)青森県における農福連携の現状

以下の図からは次のことが読み取れる。まず図 2-1 からは就労継続支援 A 型事業での

月額の平均賃金(月額)は 2006 年から 2008 年にかけては全国より青森県のほうが高い

数字を示していたものの、2009 年以降は全国平均がそれを上回り、2016 年までその推

移を続けている。次に図 2-2 では就労継続支援 B 型事業の平均工賃(月額)が互いにその

差を縮めつつあるものの、未だ青森県が全国平均の数値を下回っている現状がわかる。

いずれの図も青森県が全国の後塵を拝する結果を示しており、青森県における障害者

就労は未だ発展途上にあると言えるだろう。また前記の 2017 年度における指定基準の

改正により農業分野での障害者就労において次のような問題が発生した。多くの就労継

続支援 A 型事業所が撤退ないし就労継続支援 B 型事業所への移行を行ったが、就労継続

支援 A 型事業所において農業に関わる仕事をしていた利用者は必然的に慣れている農

業関係の職業を就労継続支援 B 型事業所にも求める。そのため農業による就労支援など

を行っている就労継続支援 B 型事業所に利用者が詰めかけ、容量オーバーとなっている

というものだ。加えて、この事業所変更における賃金と工賃の差額、事業所数の変動や

一般企業の参入により利用する事業や職業の幅が広がりつつある事なども青森県にお

ける障害者就労の現状と言える。

2)青森県での農福連携の取り組み

青森県における主たる農福連携の取り組みは、農業側と福祉側をつなぐマッチングで

ある。先進的な例としては三八地域県民局地域農林水産部の取組みが挙げられる。三八

地域県民局地域農林水産部は 2011 年から福祉部局の協力のもとで、三八地域を中心に

農福連携事業を推進している。さらに、2012 年には三八地域障害者農業就労促進ネッ

トワークを設立し、農業分野における障害者就労を促進するための体制作りや農業側と

福祉側のマッチングを独自に行っている。そこで得られた成果をもとに農林水産部農林

水産政策課が 2014 年度より、農福連携による障害者就労促進事業を開始し、農業分野、

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福祉分野、教育分野などが、情報共有できる体制やマッチングのモデルを実施している。

この実証モデルでは県が農家と社会福祉法人等とそれぞれ契約を行い、必要経費(賃

金は含まず)を支出し、短期間(2~3 日程度)の農作業をモデル的に行わせるという

ものである(注 3)。また青森県は農福連携を推進するための取り組みとして 2016 年度

より農福連携推進事業を行っている。この事業は農業労働力の安定的な確保と、障害者

就労の場の提供による共生関係の構築によって、県内全域に農福連携のマッチング体制

を構築することを目的としており、青森県内における障害者就労促進のための農業側と

福祉側のマッチング体制の構築や、農福連携の PR 活動などが主な事業内容である。更

にこの活動に加え、農福連携の推進セミナーや農福連携マルシェなどの取組みも行われ

ている。

このように農業側と福祉側とをつなぐマッチング体制の構築を中心として青森県で

は農福連携事業が行われているが、農福連携そのものの取り組みは、就労継続支援事業

所などの福祉側が主体となっており、農業側の参画が少ないのが現状である。

4.小括

ここでは小括としてこれまで述べてきた内容から読み取れる、重要と思われる課題を

整理していきたい。

農福連携の制度をまとめた上で見られた課題としては、第一に、農福連携に関わる法

制度の不完全性が挙げられる。前述の通り農福連携は障害者就労という名目で障害者総

合支援法や労働法などの法律に間接的に規定されているのみで農福連携そのものを指

し示すような法律は未だ存在しないため、その定義付けが難しく農福連携そのものが曖

昧となってしまう。更に、労働法の適用外にある就労継続支援 B 型事業においてその利

用者は最低賃金、労働時間などが保証されないのが現状と言える。この制度下で農福連

携が推し進められれば障害者を不当に安い工賃で長時間労働せざるを得ない等の問題

が発生することが考えられる。

第二に、指定基準の改正などの制度変更がある。この変更により、就労継続支援 A 型

事業所は、給付金なしに賃金や工賃を確保しなければならなくなった。加えて、事業所

数の変動と、それに伴う利用者の移動など、現場への混乱がもたらされた。

このように農福連携を直接規定する法律がなければ、上記のような最低賃金などが保証

されないといった障害者就労のグレーゾーンが生まれてしまうため、各種法改正や農福

連携を規定する新たな法律の制定など早急の対応が望まれる。また、制度変更に対して

現場が対応するため、という意味合いでも、それは必要となる。これらの農福連携にお

ける課題を解決する上でどのような方法が望ましいのか次章ではその指標となる事例

を紹介していきたい。

注 1)農林水産省『「農」と福祉の連携』より引用。

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注 2)2013 年度に障害者総合支援法に改正。

注 3)農林水産省『農福連携を推進する地方公共団体等で行われている支援の特徴と効率的な支援の

あり方』を参照。

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第3章 青森県における農福連携の実態

1.事例の位置づけ

以下で紹介する三つの事例はいずれも青森県における農福連携の先進事例となって

いる。1 つ目の就労継続支援 B 型「ゆいまある」や就労サポートひろさきなどは、弘前

市において施設外での就労とその支援を中心に弘前中央青果等の企業と連携し、地域の

産業であるリンゴの生産において障害者が出来る作業を判断するためのカルテ作りを

通して障害者就労の試行モデル作りを行っている。2つ目の観光農園アグリの里おいら

せでは、地域の連携拠点としての農福連携の取り組みや外部との交流を通した人材育成

を行っている。これらの事例は、青森県における農福連携事業の推進において地域に根

差した、地域の拠点としての役割を果たしている。ここからは実際に地域における農業

分野での障害者就労においてこれらの事例がどのような活動を行い、どのような位置付

けにあるのかを見ていく。

2. 社会福祉法人 抱民舎 就労継続支援 B 型「ゆいまある」

1)社会福祉法人 抱民舎の概要

抱民舎は旧岩木町高屋安田(現弘前市)に 2000 年に設立された社会福祉法人である。

その活動は、利用者の意向を尊重し提供される多種多様な福祉サービスを工夫する事で、

利用者が自立した生活を地域社会の中で営むことができるように支援を行う事を目的

として、障害福祉サービス事業、移行支援事業、相談支援事業等の第二種社会福祉事業

を行っている。その中で偏見と差別のない等生社会の実現のため障害者特性や支援法な

どの意識啓発活動、地域のニーズを把握し、地区社会福祉協議会、町会住民との連携に

よる課題解決、男女の区別なく活躍できる環境の形成と信頼や協力の中で培われる働き

がいがある職場づくりなどを法人の運営方針としている。

また利用者の地域での自立生活並びに社会生活を目標とした、生産活動や日中活動を

通じ、知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の便宜を図るなど、社会生活力を

身につけるための活動支援を事業所の目標としている。さらには、工賃向上を図るとと

もに個別支援の計画・評価の充実、実習から就職へのステップアップ、職場定着のため

のジョブコーチ支援などを今後取り組むべき方向性としている(注1)。

2)社会福祉法人 抱民舎の設立経緯

法人設立の経緯としては、初代の施設長の A 氏の家族が重度の知的障害、肢体不自由

を抱えている背景と共に障害者の卒業後の活動の場が地域にない、施設はあるが、利用

しやすい施設ばかりではないなどの現状があった。そしてこの状況を変えるため、ボラ

ンティアで活動施設「生活リズムセンターノーム」を開設した事を始まりとする。その

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後 2001 年に知的障害者更生施設「であいの家あうん」を開所した。2007 年には障害者

自立支援法による事業移行で就労継続支援 B 型「ゆいまある」が設立され、2008 年には

事前に購入されていたつがる弘前農協旧駒越支店で移転オープンする運びとなった。続

く 2009 年には居宅介護「であいの家あうん」、2010 年には共同生活介護サービスの

「SEEDS」、そして 2011 年の障害福祉サービス事業者の指定変更により、就労継続支援

A 型「cona」など多機能型の事業拡大が進められた。2013 年の障害福祉サービス事業者

の指定変更では多機能型事業から単独事業へと変更がなされ、就労移行支援「クレッシ

ェンド」、放課後等デイサービス ワンハンドクラブ・キキなどが設立された。近年で

は 2017 年の障害福祉サービス事業者の指定変更により就労移行支援「クレッシェンド」、

就労移行支援 A 型「cona」などの所在地が変更された。

3)就労継続支援 B 型「ゆいまある」の概要

就労継続支援 B 型「ゆいまある」(以下、ゆいまある)は、2007 年に設立された就労継

続支援 B 型事業所(定員20)であり、現在男性 12 名、女性 11 名の計 23 名の利用がい

る(表 1)。ゆいまあるの月平均の利用者はおよそ 390 人となっており、そのうち約四割

の利用者が自社で製造したパンなどを含む給食を使用している(表 2)。ゆいまあるでは、

パンの製造販売、そして農業による障害者就労を行っている。パン製造では、ゆいまあ

るに併設されるパン工房、直売所において 8:30 から 17:00 まで製造販売を行ってお

り、利用者たちは計量、発酵、焼成、仕分け、清掃などの業務にあたっている。このパ

ン製造での工賃は時給 85 円から 125 円、月平均にして 8,000 円ほどとなっている。

農業による障害者就労としては、2009 年に行われた作業人数2人でのブルーベリー

収穫作業に始まり、2012 年の作付け収穫した大豆を加工した味噌の販売、そして 2017

年度まで自社農園での農作物の栽培を継続し、2018 年現在では、リンゴ栽培における

施設外就労を行っている。

4)ゆいまあるによる農福連携(2017 年度まで)

このゆいまあるによる農福連携は、前章の3類型に当てはめると社会福祉法人が農業

を行うタイプに分類される。ゆいまあるでは、自社が所有する 8976 ㎡、約 90a の7つ

の畑において小麦、大豆などを主として野菜や果樹を栽培しており、その定植や除草な

どの農作業に利用者が従事していた (表 3) (表 4)。また収穫した農作物は、利用者に

よって販売のために計量、袋詰め、ラベル貼りや蒸す、茹でる皮を剥くなどの作業を通

表1 ゆいまある利用状況

年度 2017 2018

定員 20 20

利用者数 24 23

うち男 12 12

うち女 12 11資料)施設提供資料より作成。 

表2 ゆいまある利用実績2018年度

月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

開所日数 25 24 28 25 26 25 27

延べ利用者数 413 443 408 412 415 305 329

給食使用者数 198 214 196 162 152 130 135

送迎利用者数 137 143 140 108 114 106 109資料)施設提供資料より作成。

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し加工、販売される。この自社農園での農業は、自社栽培による原材料の低コスト化、

有機農法による自社栽培という高付加価値化、農作業の得意な利用者の作業確保を目的

として始められた。

自社農園での農業開始から 2011 年度までは、自事業所店舗での販売、A 型 cona での

販売やサンドイッチの原料、B 型ゆいまあるのパン製造部門への原材料供給などを目標

として農業が行われていた。しかし、続く 2013 年度では味噌の製造販売に合わせた大

豆の栽植密度を上げる、2015 年度では大豆収量向上のための規模拡大、さらに次年度

には収量向上、品質向上のため小麦、ライ麦、大豆に作付を限定するなどの生産技術の

向上や工夫が見られた。

表3 自社農地面積

農場名 面積(坪)面積(㎡)

農場A 97 320

農場B 311 1,028

農場C 110 363

農場D 975 3,223

農場E 227 750

農場F 900 2,975

農場G 96 317

合計 2,716 8,976資料)施設提供資料より作成。

表4 農作業の概要

年度 2014 2015 2016 2017 2018

形態 自社農業 自社農業 自社農業 施設外就労

環境 露地栽培 露地栽培 露地栽培 露地栽培

品目 野菜、果実、麦 野菜、果実、麦 野菜、果実、麦 りんご

作業内容 定植 定植 定植 摘果

冠水 冠水 冠水 袋かけ資料)施設提供資料より作成。

表6 農福連携に関わる利用者数(属性により分類)

2014 2015 2016 2018

種類別 知的 5 5 5 1

身体 0 0 0 0

精神 2 2 2 0

発達 2 2 1 1

高次脳 0 0 0 0

難病 0 0 0 0

合計 9 9 8 2

男女別 男 4 4 4 2

女 5 5 5 0

合計 9 9 9 2

年齢別 10~19 0 0 0 0

20~29 1 1 1 2

30~39 3 3 3 0

40~49 2 2 2 0

50~59 1 1 1 0

60~69 1 1 1 0

合計 8 8 8 2資料)施設提供資料より作成。

表5 パン部門、農業部門の工賃

2013 2014 2015 2016 2017

利用者工賃 2,631,089 2,745,550 2,764,394 2,899,113 2,892,142

パン部門 1,480,202 1,696,942 1,666,349 2,431,918 2,892,142

農業部門ほか 1,150,887 1,048,608 1,098,045 467,195 0資料)施設提供資料より作成。

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この農作業の活動時間は、火曜日から土曜日の 8:30 から 15:30 となっている。そ

して前述の通り生産した農産物は、就労継続支援 A 型「cona」の店舗での販売、法人内

での給食の材料、または加工の原料とすることなどを目的に生産され、特に加工の部門

では、小麦などを製粉し、パンを製造する、また大豆を味噌に加工しそれぞれ販売する

など生産、加工、販売のすべてをゆいまあるで行っていた。農業部門、パン部門の工賃

は以下の通りである(表 5)。この表から農業部門における工賃よりもパン部門における

工賃のほうが高いことが読みとれ、農業による障害者就労の難しさを示している。また

作業する障害者は、成立者の家族 2 人が重度の知的障害であったというこの法人の成立

経緯もあってか知的障害者の割合が多くなっている。また年齢層別で見るといずれの年

も 30 歳から 39 歳の割合が最も多く、10 歳から 29 歳の若年層の利用者が少ないことが

分かる(表 6)

この自社農園での栽培は、原材料費の支出を削減することにより工賃の向上を目標と

するものである。またこれらの農作物の栽培は、法人内の事業所へ向けた安心安全な農

作物の生産や販売の際の高付加価値化のため有機的農法によって取り組まれてきた。

5)ゆいまあるによる農福連携(2018 年度以降)

農業分野で収益を上げることが難しくなった事、2016 年度より農作業部門を担当し

ていた就労継続支援 A 型「cona」の生産活動が給食業務と変更されたなどの理由から、

長らく続いた自社農園での農業を 2017 年に施設外就労へと移行した。この施設外就労

は主にりんご生産現場での就労であり、弘前中央青果(以下、弘果)との連携で弘果りん

ご園が所有する園地において作業が行われている。この事業はリンゴ農家の人手不足と

いう大きな課題を解決するため、ゆいまあるが弘果と業務請負契約を交わし、りんご生

産における障害者就労のモデルづくりを目的として 2018 年度より始められたものであ

る。未だに試行モデルの段階にあるため、作業を細分化し、それぞれに評価内容を定め、

どのくらい作業が出来るのかというカルテ作りが行われているのが現状である。主な作

業内容は摘果や袋かけなどであるが、どの作業が向いているかは未知数である。現在 2

人の利用者が施設外就労によりリンゴ生産に係る作業を行っている。

6)ゆいまあるによる農福連携の特徴

これらのゆいまあるによる農福連携の活動は、いずれも当初掲げた抱民舎の目標の通

り旧岩木町を含む弘前市という地域に根ざした物となっている。それは自社が所有する

地域内の農園での農作業はもちろんの事、リンゴ作業という地域の産業での障害者就労

を目的とし、その先駆けとなる試行モデル作りを行っている事などからも分かる。上記

の通り障害者には出来る作業と出来ない作業があり、障害の種類別によりそれらも変化

する。この違いの特徴を理解し、それらに応じた細やかな対応、つまり障害者に対する

理解が必要となるが、この試行モデル作りはまさに障害者を理解し、農業分野における

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障害者就労を実現しようとしている例と言える。

また地域での農福連携は、前章で挙げた移動の問題の解決に寄与するものと思われる。

障害者にとって公共交通機関の利用は難しいケースが多く、事業所の職員の付き添いも

必要となる。さらに移動時間を考えた場合そう遠くへの移動は現実的ではない。そうす

るとその移動範囲は、必然的に地域に限定される。これらの移動に付随する問題を解決

する上で、ゆいまあるのような地域を中心とした農福連携が必要になってくるのではな

いだろうか。実際に施設の外へ赴く施設外就労では、この移動の観点から地域を中心と

した農福連携は特に重要となるだろう。さらにゆいまあるでは自社農園での栽培を行っ

ていたが、これは原材料費など支出を抑え有機農法による高付加価値化等による工賃の

向上などを目標としており、農福連携における就労継続支援 B 型事業の工賃の低さとい

う同じく前章で挙げた課題に対する有効打になるのではないだろうか。これからの農福

連携の方向性として、今回のゆいまあるのような地域の拠点として障害者就労を行って

いる事例を参考として、障害者理解に基づく細やかな対応、事業内容を工夫する事によ

る工賃の向上などを念頭に置いた上での農福連携の推進が必要となってくるのではな

いだろうか。

7)ゆいまあるの事例から見られる農福連携の課題

自社農園での農作業を 2017 年に施設外就労へと移行した事、ゆいまあるにおいて農

業部門の工賃よりもパン部門の工賃が高い事などから、農業で収益を上げるのは難しい

という事実が見えてくる。つまり農業という分野そのものが持つ難しさである。農作物

の栽培自体の難しさや農繁期、農閑期があり一年を通しての労働が出来ない事などその

特殊性が農福連携における課題となっている。

また農場までの交通手段の確保は特に施設外就労には不可欠といえる。障害者にとっ

て公共交通機関等の利用は難しく、また施設外就労の場合支援員が同行していない時に

施設外で起きた事故等の責任は利用する施設の責任となるため、必ず同行する支援員が

必要となる。そこから車両など交通手段の確保や職員の配置調整の課題が出てくる。

さらにゆいまあるでの聞き取りから、事業所を利用する障害者が出来ない農作業や休

日の作業を職員が負担しなければならないこと、農業未経験の職員には農作業自体が大

きな負担となる、雨天の中の作業で体調を崩す職員が多い事など職員に対する負担も同

様に農福連携における課題となっていることが分かった。

3. 社会福祉法人七峰会・拓心館グループ就労サポートひろさき

1)七峰会・拓心館グループ就労サポートひろさきの概要

七峰会は青森県津軽地域を拠点に活動する社会福祉法人である。組織は法人本部事務

局と 6 つのグループから成り立っており、グループによって高齢者支援や障害者支援な

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ど支援は様々である(図 1)。拓心館グループは就労支援・自立支援・生活支援・児童発

達支援と多岐にわたる福祉事業を展開している。グループの基本理念の一つに「地域社

会の一員として共に生きていけるよう支援する」と掲げ、地域に根ざした福祉事業を目

指している(注2)。

拓心館グループ内の事業所である就労サポートひろさきは 2007 年に知的障害者への

就労移行支援を目的に設立され、さらに 2 年後の 2009 年に同事業所で就労継続支援B

型事業も開始された。どちらの事業も利用者の定員は 20 名であり、2018 年 11 月現在

の利用者数については、就労移行は 19 名、B型は 30 名(登録者)である。設立当初の

主な利用者は知的障害者であったが拡大し現在は知的:精神:身体=6:3:4 である。

2)就労移行支援事業

就労移行支援事業では「ワークサンプル」という取組を通して利用者の能力を見極め

ている。この取組は、職員が利用者に様々な作業を体験させ、その結果を基に利用者の

能力を数値化しカルテを作成するというものである。作業はパソコンの操作や会計、工

具の操作など多種多様であり様々な職業に対応できるものとなっている。

指導や訓練を通して十分にスキルが向上した利用者は施設外就労を行う。施設外就労

とは企業で実習、就職するという活動である。就労サポートひろさきの場合、作業内容

は福祉施設の清掃作業やスーパーマーケットの品出し作業などが多く、1 年間当たり 7

~8 人が一般企業に就職するという実績を残している。一般就労後に労働環境(担当者

等)が変わり、仕事を続けることが厳しくなると施設に戻り再度支援を受けるケースも

ある。

3)就労継続支援B型事業

B型事業は施設内就労と施設外就労、施設外支援がある。施設内就労では自主生産品

(豆腐や豆乳プリン)の製造業をしている。製品は弘前市内のスーパーマーケットなど

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で常時販売している。最近はイベントなどで販売する機会が増え売上数が増加している。

自主生産品の年間売上高は 2014 年度 5,677,944 円であるのに対し、2017 年度は

7,575,281 円にまで増加している(表-1)。施設内就労では地域企業からの請負作業も

あり、具体的には施設内でゲームソフトの洗浄作業やゲームカードのパック詰めなどの

内職を行っている。施設外就労、施設外支援では農作業を行っている。これに関しては

次の節で詳細を述べようと思う。

B 型事業を展開する上で重視すべき点は利用者の工賃を増加させることである。なぜ

なら工賃が増加すると、国から評価され事業所に報酬金が支払われ事業展開に活用でき

るからだ。そのため事業所は自主生産品の売上を伸ばし受託作業を多く受け入れ、工賃

を増加することに力を注いでいる。表-1 の支払工賃総額や平均工賃月額の推移をみる

と減少している箇所もあるが維持していることがわかる。

4)就労サポートひろさきが行う農福連携

かつて、就労サポートひろさきでは施設内就労(B 型事業)の一環として農業を行っ

ていた。当時施設内には大根と白菜の畑があったが新しい事業所を建設する際に取り壊

され、現在施設内での農業は行われていない。

しかし現在、施設外就労(B 型事業)という形態で農作業は行われている。具体例と

して、JAつがる弘前選果場からの受託作業が挙げられる。作業内容はシール貼り、コ

ンテナ洗浄である。また 2018 年から実施された県による農福連携のモデル事業では、

弘果弘前中央青果のリンゴ農園にて実選りや葉取り、収穫などの農作業を行っている。

施設外支援(B型事業)として農業を行うケースもある。施設外支援とは利用者と職

場をマッチングさせるような支援であり、利用者が通勤する際に職員の付き添いは不要

であることが特徴である。就労サポートひろさきの場合、農業を希望する利用者と地域

のりんご農家をマッチングさせた。県が実施した農福連携のモデル事業(2015~2017)

に参加したことで農家と連携を取り始めたことがきっかけとなり、モデル事業が終了し

た後も引き続き農家から農作業の受託がされたことからこの支援が継続されている。

工賃(時給)についてはJAつがる弘前が平均 200 円、弘果は 369 円(収穫作業時は

約 442 円)、個人農家は 550 円(2018 年)であった。いずれも農業法人・農家が利用者

の作業を評価し工賃を決めるという制度である。事業所のヒアリング調査によると、J

Aと弘果は評価によって工賃が変動することは少なく対して個人農家は評価によって

表―1 就労継続支援B型事業の実績

年間売上高(円) 支払工賃総額(円) 延人数(人) 平均工賃月額(円)

2014年 5,677,944 3,380,376 254 13,308

2015年 5,673,713 2,447,665 240 10,642

2016年 6,624,406 2,475,683 272 9,1022017年 7,575,281 3,283,252 314 10,456資料)就労サポートひろさきデータより作成。

注)年間売上高は自主生産品(豆腐、豆乳プリン)のものである。

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工賃が毎年大きく変動する傾向があるという。

ちなみに自主製造業の工賃は好調時でも 140 円で、比較的農業の工賃が高値であるこ

とがわかる。つまり工賃に着目すると利用者にとって農業は良い労働条件であると考え

られる。農家側としても利用者を雇用することで人件費を削減することができる。

5)農福連携の課題

前項で述べたとおり、工賃においては農家・福祉双方にメリットがあると考えられる。

しかし実際に農福連携を実施するにあたり、運営において課題が生じる。例えば天候に

よって突然作業が中止になる、あるいは農家が繁忙期で人手がほしい時に福祉事業所自

体が休日で利用者が出勤できないなどの問題により、安定的な活動が難しいという課題

がある。また農業が行われない冬期間、利用者はどのように活動するかといった問題が

ある。また前述したとおり、施設外支援の場合利用者に福祉事業所職員は付き添わず、

さらに職場への送迎も無いため、利用者は一人で交通機関を利用し職場に通わなければ

ならない。そのような条件に適応できる利用者は限られるであろう。

さらに農福連携を行うにあたり福祉事業所や農福連携を推進する行政役員は意欲的

であるが、農家側はそうでないというケースが多々ある。就労サポート弘前では、県の

モデル事業がきっかけとなり、施設外就労という形態で農福連携が今も継続されている

という現状があり、この実績情報は広報で他の農家に知らせているが、影響力が少ない

という。広報の仕方も一層工夫するべきだと考えられる。就労サポート弘前の場合、事

業所から農家へ情報が伝わっているが、そうではなく農家から農家、事業所から事業所

など同業者間で情報が広まると、その情報に対して信頼性が向上するのではないかと思

う。また広報の影響力が少なかったことについて、利用者の農作業に関する能力を農家

に事前に示すことができないということ、施設外支援において工賃や労働時間に関する

規定が無いため農家側もどのような条件で利用者を雇用するべきか曖昧であり決定す

るのが難しいということ等、別の問題が発生していることも関係している。農家側が障

害者に対して不安を払拭できるように事前に利用者に関する情報を示す仕組があると、

より利用者を雇用しやすくなると考えられる。こうした動きを強化するためにも、雇用

者である農業者に対して雇用のルール作成が早急に求められるのではないか。

6)地域に根ざした福祉

就労サポートひろさきは地元のスーパーや企業、農家と密接に関わった支援を提供し

ており、冒頭に述べた「地域社会の一員として共に生きていけるよう支援する」という

基本理念に沿った活動を実施していることが伺えた。

また農業に関する支援については行政が一方的に推進しているモデル事業だけでな

く、個人農家と福祉事業所とが自主的に連携をとって農業をしているという点から、農

福連携が地域に根ざしているということがわかる。しかし地域ではこのような事例は実

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際には少なく、農家側の農福連携への意欲が少ないという現状がある。農家向けに農福

連携への意欲を向上し障害者への理解を深められるような対策が必要だと考えられる。

4. 社会福祉法人 誠友会 観光農園アグリの里おいらせ

1)社会福祉法人 誠友会の概要

誠友会は 1983 年に青森県上北郡おいらせ町に設立された社会福祉法人である。この

誠友会では、基本理念を「社会福祉法人誠友会は、心のこもったサービスの提供により、

利用者・家族の安らかな生活の実現を目指し、地域福祉の推進に貢献します」と定めてい

る(注1)。この基本理念をもとに利用者の意向を尊重し、利用者の立場に立ったサービ

スの提供、利用者の家族のニーズの把握など家族や地域との連携などを行っている。現

在は、今回の調査事例である観光農園アグリの里において障害者就労を行う就労継続支

援事業所 工房あぐりの里、同じくおいらせ町に所在する老人福祉施設 木崎野荘や、認

知症ケア施設グループホームいこいの森を運営している。

2)観光農園アグリの里おいらせの概要

観光農園アグリの里おいらせは「見る、収穫する、食べる、ふれあう」をテーマとし

た体験型の総合観光農園である。また「農業・地域・福祉・観光・教育」を繋ぎ合わせ

た事業を通して、子どもからお年寄りまで障がいの有無にかかわらず「ともに学び、と

もに活躍、交流、体験」できる場の創造をその設立の想いとしている(注2)。この観光

農園アグリの里おいらせには、上記のテーマや設立の想いを反映させた多様な施設が存

在する(図1)

図1 施設の概要図 写真 観光農園アグリの里おいらせ外観

資料) 施設提供資料より作成

観光農園アグリの里おいらせ内にある自社農園では、熱帯果樹園においてバナナやパ

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パイヤ、ドラゴンフルーツなど熱帯果樹(約 30 品種)を、イチゴ農園ではとちおとめな

ど複数品種を全 4 棟(約 60a)の軽量鉄骨栽培ハウスで栽培している。さらに水耕プラン

ト(約 4a)ではレタス、隣接する圃場(約 10ha)においてなどは、高嶺ルビーという赤い

花を咲かせるそば、全国でも生産量が少ないもち小麦を栽培している。

これらの自社農園ではイチゴやバナナなどの農産物の収穫体験が開催されているが、

この収穫体験は車椅子での参加が可能であり、高齢者や障害を持った人も楽しめるよう

な工夫がなされている。さらに収穫された農産物は、産地直売所や農園レストラン百果

良彩で訪れた人に提供されている。

併設された産地直売所アグリの里では、上で述べた自社農園で栽培された野菜、果物

などに加えて、地元で収穫された農産物が販売されている。隣のおいらせ広域物産館で

は、地元特産品や館内のパン工房で製造されたパンやお菓子を販売しており、米粉パン

やジェラートが人気である。桃川敷地内にあり、高校生レストランなどを開催するおい

らっせ交流館は旧商店街の造り酒屋を改装した交流拠点施設で、酒蔵見学などが楽しめ

るものとなっている。他にもパン作りやそば打ちなどの体験、研修が可能な体験型多目

的工房などの食品加工施設が存在する。

写真 ハウス栽培施設

これらの施設では上記の収穫体験やパン作りなどの体験活動、食育教室、料理教室な

どが開催され、来訪者が地元で収穫された農産物や特産品に直接触れる機会となってい

る。さらに、体験活動は子供から高齢者まで障害の有無に関わりなく楽しむことが可能

であり、交流施設での交流を含め、地域における交流の場となっている。つまり観光農

園アグリの里おいらせは自社農園や産地直売所、各種交流施設などを通して地域におけ

る交流や学びの場の提供者となっていると言えよう。

3)観光農園アグリの里おいらせの沿革

この観光農園アグリの里おいらせは、障害者に農業を基本とした雇用と活躍の場を提

供し、なおかつ賃金、工賃の向上を図る施設として開所された。障害者就労において農

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業を選んだ理由としては、植物は人間と違い手間をかければその分だけ応える、つまり

自分の関わりが実際に目に見えるため、植物を育てることは障害者のやりがいや自己実

現に繋がるのではとの考えがあった。この考えのもと、2005 年に温泉熱を利用した亜

熱帯果樹のハウス栽培を開始した。このハウス栽培は、同施設が所在する八戸市の降雪

量が少ないことから省エネルギーでのハウス栽培が可能であること。さらにハウス栽培

は年間を通した栽培が可能となっており、年間を通した障害者雇用に繋がるなどの理由

から開始されたものである。続く 2006 年には産地直売所などの体制整備を行った。こ

れらの準備段階を経て観光農園アグリの里おいらせは本格的に稼働された。

その後は 2008 年に障害者雇用、自立支援を行うアグリの里作業所を開設し、2009 年

には観光いちご農園の他に、就労支援を目的とした工房あぐりの里を開設した。このよ

うに、本格的に農作業での障害者の就労支援を開始したのは観光農園アグリの里おいら

せの本格稼働から少し後のことであり、最初は農作業においてよく失敗したとの事から

基礎準備なども含め農業による障害者就労の難しさが伺える。

2010 年からはパン工房、豆腐工房などのつくりたて工房、2013 年にはそば工房、高

齢者多目的施設、野菜水耕栽培ハウスなどと食品加工やその体験活動の方向へと事業を

拡大した。2016 年には多機能型・施設外就労先として桃川においらっせ交流館を、そし

て 2017 年には、オープン型オレンジカフェおいらっせを開設しており、地域における

交流の場としての側面を見せてきている。

図 2 観光農園アグリの里おいらせの沿革

資料) 施設提供資料より作成

農業を基本とした障害者の雇用と活躍の場の創出のため、はじめはハウス栽培施設

など農業側の基盤整備を進め、続いてアグリの里作業所や工房アグリの里など障害者

就労の整備を行ってきたが、後半からは地域の体験活動など、交流の場としての側面

が見られるようになる。これは地域との交流が障害者就労において重要な役割を果た

すからであり、詳しくは後述する。

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4)交流拠点としての観光農園アグリの里おいらせ

観光農園アグリの里おいらせは、農業法人(株)アグリの里おいらせ、社会福祉法人 誠

友会、NPO 法人平成謝恩会の 3 つの団体によって構成される。1 つ目のアグリの里おい

らせは、観光農園や農園レストランの運営、農産物の生産、販売など観光農園アグリの

里おいらせの全体を通しての運営を行う団体である。2 つ目の誠友会は、就労継続支援

事業所である工房あぐりの里において、観光農園アグリの里おいらせ内の自社農園での

農作業や農産物の加工などの障害者就労に取り組んでいる。そして 3 つ目の NPO 法人平

成謝恩会は、山桜や紅葉の植樹など地域への社会貢献活動、ボランティア活動を通して

障害者の自立生活や地域福祉の推進などを行っている。農業法人アグリの里おいらせが

自社農園で栽培した農産物を誠友会の工房あぐりの里が障害者就労によって加工し、そ

れを産地直売所で販売する、農園レストランで食材として使用するなどといった連携に

よって観光農園アグリの里おいらせは成り立っている。

さらに、この観光農園アグリの里おいらせを交流の中心としたいくつかの団体との相

互の連携が存在する(図 3)。この各団体は下記の図の通りであるが以下で詳しく解説し

ていく。

図 3 連携の概図

資料) 施設提供資料より作成

観光農園アグリの里おいらせと交流を持つ団体として、消費者・観光客、生産者、学

校、施設の給食、福祉法人・NPO・各団体・行政が挙げられ、また実際の活動として人

材育成支援、地域連携活動などが挙げられる(図 4)。

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はじめに消費者や観光客は、直売所や農園レストラン、広域物産館において地域の農

産物や特産品に触れることにより、観光農園アグリの里おいらせとの交流を持っている。

さらに生産者との交流会において、野菜の選び方、調理方法などの講習や食育教室など

の機会を得ることが可能となっている。

図4 連携の全体図

資料) 施設提供資料より作成

次に生産者は、主に農産物の生産並びに直売所への出荷を行っている。また、広域を

含めた情報交換会や試食会、交流会などに参加しており、観光農園アグリの里おいらせ

との交流によって生産者同士、また消費者との交流の機会を得ている。

観光農園アグリの里おいらせでは、収穫された農産物の加工品などを地域の学校給食

センターや医療、福祉施設に提供すると同時に、それらの加工品流通の勉強会や講習会

など実施しており、食の形で地域との交流を深めている。地域の福祉施設・NPO・各団

体・行政などの各団体との交流もあり、その連携の中で観光農園アグリの里おいらせは、

六次産業化によるもち小麦のブランド化に取り組んでいる。この活動には生産者や加工

業者はもちろんのこと、行政や教育機関、県民局なども参加している。

人材育成支援の活動は、観光農園アグリの里おいらせによる学校の施設体験や実習受

け入れ、農福連携推進などの形で行われている。小学校の体験活動として農産物の収穫

体験の受け入れ、後述するが農福連携事業における福祉側の人材育成の取り組みなどが

その主な活動の内容である。さらに平成謝恩会などによる植樹などのボランティア活動、

啓発事業、もち小麦でのブランド化における地域の団体同士の連携など、地域連携活動

においても観光農園アグリの里おいらせは大きな役割を果たしている。

第一に、自社農園での収穫体験を行う観光客、農産物を購入する消費者、そして直売

所に農産物を出荷する生産者との繋がりなどの農産物を通した交流がある。さらに食育

教室や学校給食としての食材提供、各種体験活動など教育を通した交流、そして地域産

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品のブランド化における生産者、行政、教育機関との地域を介した交流など多様な連携

の形態が存在する。

これらの連携の中心にあるのが観光農園アグリの里おいらせではあるが、上で述べた

各団体どうしの繋がりも多く、そのような有機的な連携のもとに交流拠点としての観光

農園アグリの里おいらせは成り立っている。そして同時に、この観光農園アグリの里お

いらせを中心とした連携は障害者就労においても重要な役割を果たしている。以下では

この交流が、どのような形で障害者就労に寄与しているのかを見ていく。

5)観光農園アグリの里おいらせによる農福連携の概要

観光農園アグリの里おいらせによる農福連携は、沿革の部分でも述べたとおり農業を

基本として障害者にやりがいのある雇用先と活躍の場の提供、そして賃金、工賃の向上

を目標としている。障害者就労を主に行っているのは、2009 年に設立された就労継続

支援事業所 工房あぐりの里である。この工房あぐりの里は、現在 A 型 13 名、B 型 42 名

の計 55 名の利用者がおり、主な活動内容は、農園レストランやパン工房、そば工房で

の調理補助、加えて熱帯果樹園、イチゴ農園における葉取りなどの農作業である。これ

らの作業内容は、障害者の持つ障害の種類や、細かく時間をとるような作業を飽きずに

出来る、単一作業が得意などそれぞれの特性を理解した上で利用者に合わせて割り振ら

れたものとなっている。さらにはイチゴ栽培において、障害者が実際に可能な作業のメ

ニューの作成を行っていることなどからもより障害者に寄り添った農作業体系の構築

に取り組んでいることが分かる。

6)観光農園アグリの里おいらせによる農福連携の特徴

観光農園アグリの里おいらせによる農福連携の特徴として挙げられるのは、交流を通

した賃金、工賃向上、やりがい創出、人材育成の仕組みだ。現代では出荷規格など一定

の品質を保証された農産物が多く、良い農産物を生産したとしても実際に市場において

利益を出すのは難しいという現実がある。しかし観光農園アグリの里おいらせでは、訪

れた人に収穫や料理教室などの体験活動や交流を楽しんでもらった上で、農産物やその

加工品を買ってもらう、また農園レストランを利用してもらうような流れが形成されて

いる。つまり農産物に交流という付加価値をつけて販売することにより、安定した売り

先を確保し、賃金や工賃の向上に繋げているのである。実際に工房あぐりの里における

賃金、工賃は、それぞれ月額平均は A 型が 10 万円、B 型が 2 万 3,000~4,000 円で高く

なっており、賃金、工賃向上にこのような仕組みが重要な役割を果たしていることが分

かる。

また訪れた観光客などに実際の作業を見てもらうことにより、自分にも出来る作業が

あり、活躍の場を得られているとの認識が作業者の中で生まれるため、このような交流

を持つことは障害者のやりがいや自己実現にも繋がると言える。

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このような地域での交流を通した障害者就労における賃金、工賃向上や障害者の自己

実現、やりがい形成に繋がる仕組みの基盤となっているのは、前項で述べた各団体との

連携からなる観光農園アグリの里おいらせが地域の交流拠点として存在する形である。

この仕組みの上では特に、訪れる消費者や観光客との交流が重要な役割を果たしている

が、観光農園アグリの里おいらせを拠点とした交流を通して農福連携を活性化させる取

り組みでは、農福連携を行っている機関との関係性も重要となる。

観光農園アグリの里おいらせでは農業と福祉の人材育成のため、三重県障害者就農促

進協議会へ加入し、この組織が開催する研修講座や農福連携事例の発表会に職員を派遣

している。この三重県障害者就農促進協議会は、農業ジョブトレーナの育成とその認証・

派遣制度、障害者就労体験のコーディネート、障害者雇用拡大のための情報発信などを

主な事業内容とする団体であり、以下で詳しく説明していく。

農業ジョブトレーナーとは、農業経営者と就労を希望する双方にかかわり、障害者が

より働きやすくなるよう支援・指導するものである(注4)。この農業ジョブトレーナー

の育成の取り組みとして、福祉側の職員が農業分野での障害者支援を行う際に必要とな

るスキル、知識の習得を目的とする研修を実施している。具体的な研修の内容としては、

障害の特性の理解やその特性を配慮した農作業指導の方法、障害者雇用制度の講義など

が挙げられる。さらにこの農業ジョブトレーナの認証・派遣に加え、障害者就農支援の

スキルアップ研修、農業者と農業ジョブトレーナーのための障害者支援マニュアルの構

築なども行われている。

農業分野で働きたい障害者と農作業での障害者雇用を進めたい農業者をつなぐ取り

組みとして雇用型の就労体験のコーディネート活動を行っている他、農福連携に取り組

む農業者や福祉事業所とのネットワークの構築と農福連携の事例発表会における情報

発信になどにも取り組んでいる。

観光農園アグリの里おいらせは、この三重県障害者就農促進協議会への加入によって

農業ジョブトレーナー育成の研修など人材育成の機会と農福連携に関わる団体との関

係構築、農福連携の情報獲得の機会を得ている(図 5)。つまり各種研修講座によって農

福連携における福祉職員のスキル向上、特に農業の知識やスキルの獲得が可能となり、

農業において障害者が働きやすい環境の形成が可能となる。さらに就労体験のコーディ

ネート活動などの農福連携の情報を、実施している福祉事業所や農業者などから得る機

会ともなっている。

この観光農園アグリの里おいらせによる農福連携の特徴は、冒頭でも述べたとおり交

流を通した農福連携の推進である。観光客や消費者、教育機関、三重県障害者就農促進

協議会など様々な団体との連携によって障害者のやりがいや賃金、工賃向上、福祉の人

材育成、農福連携の情報の獲得に繋げていく仕組みが農福連携の推進に重要な役割を果

たしている。

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図5 連携の概要図

資料) 施設提供資料より作成

7)観光農園アグリの里おいらせから見られる農福連携の課題

今回の聞き取り調査からは、観光農園アグリの里おいらせは設立当初、農業の知識不

足よる失敗が多かった事が分かった。ここからは福祉側の農業に対する知識や理解の不

足が課題として挙げられる。ケアマネジャーなどの福祉の資格は所持しているものの農

業を行うにあたって必要な資格はそもそも存在しないため、農福連携に携わる福祉職員

は農業の知識が不十分なままに障害者へ農業指導をしなくてはならないケースが多い。

現在の青森県は、前章で述べた通り主に福祉施設の就労継続支援などの福祉側を中心

として農福連携が進められているため、農業側の参画が少なく福祉側の農業の知識、理

解が足りていない現状にある。故に障害者を支援する福祉側の人間が農業の知識を持つ

ことが今後重要な課題となる。理想となるのは、現在の福祉中心の農福連携から、福祉

側の農業の知識の深化や理解がより進み、農業側も福祉を理解した上で積極的に参画す

る福祉と農業が対等な農福連携である。上記の三重県障害者就農促進協議会での農業ジ

ョブトレーナなどの育成講座を職員が受講し、農業分野の知識、スキルを獲得する取り

組みは、福祉側の農業分野の知識、理解不足を補う良い手段であると言える。

前項で述べた観光農園アグリの里おいらせが地域の交流拠点となり、様々な団体と連

携するような仕組みは青森県ではあまり見られない。この仕組みは地域活性化のみなら

ず障害者就労においてやりがいや賃金や工賃の向上、人材の育成などが望めるものであ

るため、この観光農園アグリの里おいらせを青森県での先進事例として参考にしつつそ

れぞれの地域の現状を参酌した仕組み作りが農福連携の推進に重要となる。

この観光農園アグリの里おいらせの取り組みが県民局単位でのものであるように、農

福連携の取り組みがそれぞれの県民局単位で行われている。しかし、農福連携における

県民局同士の繋がりは無く、互いの取り組みの間に区切りが出来てしまっている。そこ

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で青森県がこれらの農福連携の取り組みをまとめ、県全体のネットワークの下に統合す

ることが必要となる。

注1)観光農園アグリの里おいらせ資料より

注2)観光農園アグリの里おいらせ資料より

注3)観光農園アグリの里おいらせ資料より

注4)観光農園アグリの里おいらせ資料より

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おわりに-課題整理と提言-

この章では、総括としてこれまで述べてきた青森県の現状や、3 つの事例から得られ

た課題を整理し、これらの課題を解決するにはどのような手段を取るべきなのか、その

際に青森県が果たす役割について考察する。

1.事例分析から得られた課題

1)農業の課題

農業者の農福連携に対する関心の薄さや、実際に農業者が農福連携を行う際に、どの

ような条件で障害者を雇用すればよいかなどの情報が不足していることが課題として

挙げられる。事実として青森県での農福連携は福祉側が主体となって行われており、農

家、農業法人など農業側の参画は少ないため、農業側が農福連携の情報を得る機会が少

ない。また、農業は自然を相手にする産業であるため、作業自体が難しく、安定的な雇

用供給の難易度も高いことなどが課題となる。具体的には、作業内容が天候などの影響

を受ける、栽培そのものにある程度の知識、技術を必要とする、農繁期と農閑期に分か

れているため、安定的な活動が出来ないといったものが挙げられる。

2)福祉の課題

福祉側の農業の知識不足や就労継続支援事業所の職員への負担が大きいことが主な

課題である。観光農園アグリの里おいらせの事例でも述べたが、農業には特別な資格は

必要ない。そのため、福祉職員はケアマネジャーなどの資格を持っているが、農業の知

識などは持ち合わせていない場合が多い。しかし、農福連携の現場では障害者に農業を

教える必要があるため、農業の知識、理解は必要不可欠である。また農作業は重労働で

あり、農業の知識や農作業の経験がなければより大変なものとなる。実際に雨天での作

業で体調を崩す職員がいることに加えて、施設外就労であれば、その付き添いなどの負

担も大きい。

3)その他の課題

ゆいまある、就労サポートひろさきの事例でみられた、農作業において障害者が作業

可能なメニュー作りの取り組みを、地域の農産物で行うなどの地域に根差した農福連携

の仕組み、観光農園アグリの里おいらせの事例のような、地域の交流拠点として障害者

の活躍の場の創出、同時に賃金、工賃の向上や人材育成に寄与する仕組みなどが農福連

携の推進に重要となると考えられる。そしてこれらを農福連携の先進事例として、県全

体に浸透させていくことが望ましい。これらの取り組みは地域や県民局単位での取り組

みとなっているが、それらの間には区切りが存在し、互いの取り組みが見えないのが現

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状となっている。つまり県全体を通した農福連携のネットワークが必要になると考えら

れるが、そのような仕組みは未だ存在しないため、その構築が今後の課題となる。

2.課題解決に向けた提言

1) 教育の機会と場

教育の機会と場は、具体的には福祉側への農業教育の機会と場の提供を指す。農業教

育を福祉側の職員が受けることで農業の知識不足の解消に繋がり、同時に障害者に農業

を教える際や実際の農作業時に負担を減らすことが可能となる。そのためこのような教

育を行う機会と場が必要となる。観光農園アグリの里おいらせの事例において、三重県

障害者就農支援協議会へ加入し、農業ジョブトレーナーや、障害者就農支援におけるス

キルアップの研修などの講座を職員に受講させる取り組みは、教育の機会と場を提供す

るという意味でも参考にすべき優良事例と言える(図1)。また、農福連携における農業

の資格を作成し、農業と福祉の資格を両方所持した専門職員を置くことで、福祉側が農

業について自発的に学ぶ機会を作ることなども福祉側の農業の知識不足解消に繋がる

と考えられる。

図1 教育の機会と場の提供の概要図

資料) 観光農園アグリの里おいらせ提供資料より作成

2)農業側が参加しやすい環境の整備

農家や農業法人が農福連携に関わりやすい環境の整備は、農業側に農福連携への関心

を持たせ、農業側の積極的な参加を促す事に繋がる。農業側が農福連携に積極的に関わ

ることで農業分野での障害者雇用が増大すると共に、農業側の労働力不足の解決につな

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がる。さらに前項の農業教育や、実際の農福連携の現場における農作業補助といった形

での参加なども考えられ、これらは福祉職員の負担減少にも繋がると言えよう。そのた

めには農業側へ農福連携の情報を提供する講習会などの機会や両者をつなぐ取り組み

を増やすことが必要となってくる。

3)青森県による推進

前述のとおり、青森県全体での農福連携のネットワーク構築が必要となる。そのため

には、今回の事例で取り上げた地域に根ざした農福連携の仕組みや、交流と連携による

農福連携推進の仕組みなど、地域単位や県民局単位での取り組みの間に県が入り、互い

に連携させることが必要となる。さらに前項の福祉側への農業教育の機会と場の提供や、

農業側が農福連携に参加しやすい環境の整備なども県によって行われることが望まし

い。実際に三重県では、上記の障害者就労促進協議会を中心として県主体での農福連携

を行っており、農福連携の先進県となっている。その取り組み内容としては前記の通り、

農福連携における人材育成の取り組みや情報発信、農業側と福祉側をつなぐ活動などで

ある。この取り組みを参考にしつつ、農福連携のネットワーク構築を青森県が行うこと

で、農福連携の地域での取り組みが県全体に広がることとなり、農福連携の推進に繋が

ると考えられる。