ポスター 佐藤将人 研究報告
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無尾両生類の変態における甲状腺ホルモン依存的フィードバック転写制御機構に関する研究広島大学理学部 生物科学科 分子遺伝学研究室 佐藤将人
無尾両生類の変態は、 急激な後肢の発達、 鰓や尾の消失などが甲状腺ホルモン (TH) により誘導されるユニークな発生現象の一つである。変態の分子機構は、 TH の受容体であり且つ転写制御因子でもある TR によって厳密に制御されている。ツメガエルでは trβ mRNA の転写量が急激に上昇する期間が変態する期間と重なっていることが分かっている。 この現象には trβ Exon 1 に確認されている甲状腺ホルモン応答配列 (TRE) による、 TRβ の TH 依存的フィードバックの関与が示唆されている。本研究では、 人工 DNA 切断酵素 TALEN を用いて、 Xenopus tropicalis trβ-TRE を破壊した変異体を作製した。興味深いことに 、 F2 変異体の幼生は変態することが確認された。培養細胞を用いたレポーターアッセイの結果から、 trβ-TRE 変異アレルの TH 応答性は著しく減少していることが判明した。
ネッタイツメガエル (Xenopus tropicalis )thyroid hormone receptor β の TREを破壊し、TRβ の TH 依存的フィードバック制御と変態への影響を精査する
?trβ-TRE(-/-)Mutant frog
無尾両生類の変態 甲状腺ホルモン依存的な尾の消失、後肢の発達などの 形態変化を伴う発生現象の一つ
甲状腺ホルモン受容体 (TR) の 甲状腺ホルモン依存的転写制御
thyroid hormone receptor β(trβ) の TH 依存的フィードバック制御 1. T3 非存在下では、 TRα/RXR が trβ-TRE に結合し、 Co-repressor が転写を抑制 2. TH (T3) が結合すると trβ が発現する
3. TRβ が自身の trβ-TRE に結合し、 さらに TRβ の発現を増強 【 Positive feedback 】
T3 依存的な TRβ の Positive feedback により、短時間に trβ 発現量が上昇
TR の構造
TRβ の TH 依存的フィードバック制御
2. 背景
1. 要約
GFP 蛍光によるインジェクション胚のスクリーニング
TALEN mRNA
受精卵
EGFP mRNA
F0 trβ-TRE モザイク
F1 trβ-TRE(+/-)
Genotyping Heteroduplex
mobility assay(HMA)
WTladde
r
trβ-TRE F1
ホモ個体 5 匹ヘテロ個体 6 匹
Heteroduplex bandHomoduplex band
Result
HMA 原理
3. 本研究の目的
TALEN mRNA
EGFP mRNA
Genotyping HMAHMA
RGEN-RFLP
受精卵
4. 実験概要
5. trβ-TRE Mutant F0 の作製
6. trβ-TRE Mutant F1 の産出
Genotype は(+/+), (+/-), (-/-)?
xGenotyping
ホモ個体 7 匹(?)
ヘテロ個体 4 匹
Heteroduplex bandHomoduplex band
F1 trβ-TRE (+/-) 変態は進んだ
ladde
r
HMA では優性ホモ / 劣性ホモの区別が出来ない
Result
RGEN-RFLP
HMA
trβ-TRE F2
7. trβ-TRE Mutant F2 の産出
切断バンド
耐性バンド
Result
優性ホモ 3 匹ヘテロ 4 匹
劣性ホモ 4 匹
trβ-TRE F2 (-/-) は変態した
Result
→ trβ-TRE Mutant アレルの TH 依存的転写活性について確認実験を行う
trβ-TRE F2
gcgtcctccccaggcAGGTCAtttcAGGACAgcccagcgccctggt gcgtcctccccaggcAGGT*******GGACAgcccagcgccctggt WT アレル
Mutant アレル
trβ-TRE
7 塩基欠損
day1 day2 day3 day5
T350 nM
DMSOtransfectio
n
Dual luciferase assay
HEK293T
or
8. Dual luciferase assay による
trβ-TRE の T3 応答能の評価
1. trβ-TRE を両 allele 破壊した Xenopus tropicalis 幼生 F2 は変態した。2. trβ-TRE を破壊した trβ Exon1 とその上流は TR/RXR を介した T3 への応答能を失っていた。
無尾両生類の変態における TRβ の T3 依存的フィードバック制御には、他のエレメントや制御因子の関与が考えられる
1. trβ-TRE Mutant F2 の変態時における TRβ 、及び他の変態関連遺伝子の T3 に対する応答性を確認する。2. 変態期における TRβ のフィードバック制御に関わる その他のシスエレメントの検出と破壊を行い、変態への影響を精査する。
Result
9. まとめ
10. 今後の予定
RGEN-RFLP 原理
変態現象の基本転写制御メカニズム
?
RXR
Co-repressorTR × OFF RX
R
Co-activator
TR ONT3
ACAGGTCAnnnnAGGTCAAGGTCAnnnnAGGTCA
TRE(Thyroid hormone response element)AGGTCA のリピート配列からなる甲状腺ホルモン受容体が結合する配列
DBD : DNA binding domainLBD : Ligand binding domain
表現型解析
HMA
RGEN-RFLP
T3
T4
AC AC AC
trβ-TRE Mutant は T3 依存的転写活性能を失った
X.tropicalis
TRα/RXR
trb-TRE -WT
trb-TRE -Mutant
trb-TRE -WT
trb-TRE -Mutant
( 図は X. laevis のデータ )
※ エラーバーは S.E ( n=3 ) *は t 検定で有意差があったことを示している。
(Ranjan et al.,1994; Machuca et al., 1995; Tata et al., 2000; Pia Bagamasbad et al., 2007; Machuca et al., 2013)
CMV
X.tropicalis
TRβ/RXR
Plasmid
CMV
(Ranjan et al., 1994)
F2
P < 0.001 P < 0.001
TRα/RXR
TRβ/RXR