線型変換のイメージ 固有値、固有ベクトル
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話の概要
• 線型写像、線型変換とは• 線型変換と図形、ベクトル• 固有値と固有ベクトル• 線型変換と座標変換• 線型変換・座標変換の応用
線型変換
• ベクトル x, y 、行列 A によって: yy = A xで表される x → y の関係
• ( x, y は n 次元ベクトル、 A は n×n 行列)
• 正比例 y=ax の一般化(多変数化)「掛け算」で表せる関係
線型変換の(代数的)定義• ベクトル空間 V 上の写像 f: V→V で:
足してから掛けても掛けてから足しても同じ: f (x+y) = f (x)+f (y)
定数倍してから掛けても、掛けてから定数倍しても同じ: f (ax) = af (x)
特に f (0) = 0 ( 0 はゼロベクトル)
• 行列積はこの条件を満たす(確かめよ): A(x+y) = Ax+Ay A(ax) = aAx
変換の合成、逆変換
• 2つの変換 φ 、 ψ (変換行列 A, B )の合成 x → φ(x) → ψ(φ(x))は、行列の積として表せる。 x → Ax → BAx
• 逆変換は逆行列で表せる。 x → y = φ(x)= Ax ⇒ x = A-1y(ただし正則変換であることが条件)
(参考:「線形」と「線型」)• “linear” の訳語で、どちらでもいいような
ものだが、正確に言えば「線型」のほうが正しいだろう。
• しかし世の中は「線形」のほうが優勢。ここでは(趣味として)「線型」を用いる。
• 高校等で「1次結合」、「1次変換」、「1次独立」などと言う場合の「1次」も同じ意味。
図形的な性質(1)
• 一般には、線型変換によってベクトルの向きも大きさも変わる。
• どのように変わるかは、変換行列 A の性質として決まる。
• 個別のベクトルでは特殊な性質が成り立つものがある。 向きが変わらない⇒「固有ベクトル」
デモ1
図形的な性質(2):正則変換• 直線 ⇒ 直線
原点を通る直線 ⇒ 原点を通る直線 平行な2直線 ⇒ 平行な2直線
• 同じ向きの線分は長さの比が変わらない
• 多角形 ⇒ 多角形平行四辺形 ⇒ 平行四辺形
(長方形 ⇒ 平行四辺形)三角形 ⇒ 三角形
図形的な性質(3):正則変換• 円 ⇒ 円、楕円• 放物線 ⇒ 放物線• (一般に2次曲線は2次曲線に写る)
• 図形の面積 ⇒ 定数倍(定数:行列式の値(の絶対値))
デモ2
図形的な性質(4):非正則な場合• A x = 0 ( x≠0 )となるベクトル x が存在
する場合、 A は非正則行列。• 非正則な場合、変換によって情報が失われ
る(復元不能である)。• 例: (正)射影
• 任意の x について、 Ox = 0 ( O はゼロ行列)
デモ31 00 0
xy
x0
= 0 00 1
xy
0y
=
(正則)線型変換の分類(2次元)• 角 の回転
• 相似拡大
• 反転(鏡映)
• ずらし変換( Shear 変換)
cos -sinsin cos
a 00 b
0 11 0
1 a0 1
1 00 -1
a 00 a
デモ4
(続き)• どのベクトルの向きも変わらない変換
←この場合だけ
• どのベクトルの大きさも変わらない変換 ⇒ 直交変換(直交行列)
• 直交変換は回転と鏡映の2種類。これに平行移動を加えたもの:「合同変換」
• 直交行列の列ベクトル同士・行ベクトル同士は互いに直交する。
• 直交行列の行列式は ± 1。
a 00 a
固有値、固有ベクトル(1)
• 行列 A によって向きが変わらないベクトル⇒ A の 固有ベクトル
• x が A の固有ベクトルなら、 Ax = xとなる定数 がある ⇒ A の 固有値
固有値、固有ベクトル(2)
• 一般に n 次正方行列には、複素数まで許せば(重複も数えて) n 個の固有値がある。
• 回転行列の固有値は複素数(非実数)。⇔ 回転はすべてのベクトルの向きを変える。
• 対称行列の固有値はすべて実数。• A が非正則 ⇔ A は固有値 0 をもつ。
( Ax = 0 ・ x = 0 だから) デモ5
固有値、固有ベクトル(3)
• が A の固有値なら、 Ax = x = x ( I は単位行列)
• したがって: (A ー x = 0つまり行列 A ーは非正則 ⇔ det(A ー ) = 0 ( det A は A の行列式)
• これを A の 固有方程式、左辺を 固有多項式 と呼ぶ。
固有値、固有ベクトル(4)
• 2次元なら: A ー = det(A ー ) = (a - )(d - ) - bc = 2 - (a+d) + ad - bc = 0つまり はこの2次方程式の根。(一般に n 次行列なら n 次方程式になる)
• 参考: n 次方程式は複素数の範囲で必ず n 個の根を持つ(代数学の基本定理)。
a- bc d-
おまけ
• 行列 A の固有多項式を () とする。このとき () = O が成り立つ。( Cayley-Hamilton の定理)
• () は普通の多項式であるのに対し、 () は行列の多項式であることに注意。
• 2次元の場合が高校で覚えさせられるもの: 2 - (a+d) + ad - bc = O
固有値・固有ベクトルの役割
• 行列 A による線型変換は、固有ベクトルの方向には単なる定数倍として働く。
• したがって固有ベクトルを軸とする座標系では、 A は簡単な形で表せる。対角行列(対称行列の場合など)一般には対角化できない場合もあるが、その場合
でも「ジョルダン標準形」にはできる。
• ⇒ 座標変換
座標変換
• 座標系を固定して図形を変換するのと、図形を固定して座標系を逆変換するのとは実質的に同じこと。 例: 図形を角回転するのと、座標系を 角 ( - ) 回転するのとは同じ結果。
• 座標系の移動 ⇒ 座標変換
デモ6
座標変換(2)
• = x + y が、一次独立なベクトル
, により = X + Y と表せる
⇒ (x,y) 座標系から (X,Y) 座標系への変換
• = F = :座標変換行列
xy
10
01
ab
cd
ab
cd
xy
xy
XY
a cb d
a cb d
座標変換(3)
• 行列(=線型変換) A により y = Ax とする。
• x = FX, y = FY として、 FY = AFX 、つまり Y = F-1AF X ( XY 座標系での変換)
• 同様に Y = BX なら y = FBF-1 x
• B = F-1AF : A の 相似変換
座標変換(4)
• xy 座標系での y = Ax を計算するには、XY 座標系で Y = BX を計算して xy 座標系に戻せばよい。
• B = F-1AF が簡単な形の場合に有効。(特に B が対角行列の場合)
• 例えば An = (FBF-1)n
= (FBF-1) (FBF-1)...(FBF-1) = FBnF-1
であり、 B が対角行列なら計算が簡単。
相似変換
• B = F-1AF が対角行列であるような F が存在するとき:B の対角成分は A の固有値F の行・列ベクトルは A の固有ベクトル
• (一般には対角化できない場合もある。)
• A が対称行列の場合、固有値はすべて実数、対角化可能で、 F は直交行列。
線型変換・座標変換の応用
• 応用例はヤマのようにある。漸化式(線型差分方程式)の解法(線型)微分方程式の解法統計解析(回帰分析、相関分析等々)2次曲線・2次曲面の分類コンピュータグラフィックス、計算幾何
• 正射影(平行投影)• 透視射影• 同次座標
事例紹介