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Ⅱ 小1プロブレム

小1プロブレムとは...

○ 小学校に入学したばかりの小学校1年生が集団行動が取れない、授業中に座って

いられない、話を聞かないなどの状態が数か月継続する状態。これまでは1か月程

度で落ち着くと言われていたが、これが継続するようになり就学前の幼児教育との

関連や保護者の養育態度が注目され出した。

1 子育てに関する最近の傾向と問題点

(1) 現場から見た最近の傾向

現在、少子化、核家族化や情報の氾濫などにより、子供を取り巻く環境は大きく変

化し、複雑化している。テレビ・電子ゲームなど、子供が一人遊びする傾向が増大し、

戸外で思い切り遊ぶ姿が減ってきている。また、家庭や地域社会における教育力の低

下や人間関係の希薄化が感じられる。

① 気になる親の姿

・ その時の感情でかわいがったり、叱ったりと、親の感情が子供とのかかわりに

影響している。

・ 子供とかかわったり、向き合ったりせず、子育てに無関心である。子育ての大

切さ・喜びが実感できず、他者に依存しようとする。

・ 教育熱心で、早期教育に走りがちである。

・ 子育てに自信がなく、言い聞かせたり、諭したりせず、子供の言いなりになる。

・ 子育てと仕事の両立で心の余裕がなく、子供の背中に向かって言葉を発したり、

せかしたりし、子供の言葉に耳を傾けられない。

・ 子供同士の喧嘩にすぐに親が介入したり、時には、それがきっかけで親同士の

気まずさやトラブルに発展してしまったりすることがある。

・ 保護者同士の関係が以前に比べ、希薄になってきている。

・ 親自身の成育歴の問題(両親の離婚、自分の離婚など)があったり、精神的に

不安定であったりすることがある。

・ 食事のしつけや排泄の自立、衛生面等を他人に任せ、自ら努力しない。

・ 親の生活リズムに子供を合わせている。(不規則な生活リズム)

② 気になる子供の姿

・ 無気力、無関心。

・ 子供同士よりも大人とのかかわりを求め、友達とのかかわりがうまくもてない。

・ 自己主張が強く、相手の思いを理解しようとしない。

・ 好きなことには興味を示すが、他のことには集中できない。

・ 自分の思いを言葉にして伝えられない。人の話が聞けない。

・ 夜型の生活リズム。

・ 排泄の失敗、偏食が多いなど、基本的なしつけが身に付いていない。

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(2) 子育てに関するデータ

① 「小1プロブレム」アンケート(1999年実施 教職員1388名回答)

幼・保・小の教職員の大半が、子供の生活習慣の乱れや否定的な気質(自己中

心・コミュニケーションがへた・パニック状態)を認め、親のしつけの不在を感

じている、という傾向がみられる。(図1)

また、保護者の項目では、保育所と幼稚園の利用者の生活の差が反映している

のか、「過保護」「単親家庭が増えた」などの項目に差がみられる。(図2)

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② 子育てニーズアンケート(2000年実施、4~7歳の保護者、32487名回答)

子育てに関しては、若い親世代も祖父母世代もともに「挨拶や行儀」が1位で

ある。しかし、2位以下を見ると、若い親世代が人間関係やコミュニケーション

に気を遣っているのに対して、祖父母世代は身辺自立や社会性に子育ての価値観

を置いていたことが分かる。

祖父母世代は意識的に子供との会話に気遣うことなどせずとも、親子が一緒に

いる時間も多かった。しかし、家族の中のパーソナル化が進んでいる今は、親が

子供とのスキンシップを子育ての重点にしようと意識化している。(図3)

* 記載のグラフは、大阪府同和教育研究協議会(現・大阪府人権教育研究協議会)が、大阪府内

の保育所・幼稚園・小学校教職員・保護者等に実施した調査結果で、新保真紀子著『「小1プロブ

レム」に挑戦する』(明治図書 2001年)に、転載されたものを関係者の許諾を受けて載せたもの

です。

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2 幼稚園・保育所・小学校での体制づくり

(1) 連携案

【入学前】

【入学後、タイムラグを感じさせない一貫した指導】

(2) 関係機関との連携

○ 家庭においては少子化や核家族化を背景として様々な生活体験の機会の減少、家

庭の孤立化、地域社会においては、地縁的な連帯が弱まり、人間関係の希薄化が

進み、生活体験や自然体験が失われつつある。そこで、幼稚園・保育所・小学校

においては、様々な人と触れ合う場を意図的に設定し、子供の生活を豊かにして

いく必要がある。また、集団の中でうまく関係を作れない親や子が増えている現

在、幼稚園・保育所・小学校だけで対処せず、関係機関を利用し、いろいろな人

の意見や助言を聞いたり、密なる連携を図ったりすることが大切である。

① 地区の幼稚園・保育所・小学校との交流

地域によっては、地区内の幼稚園・保育所・小学校を相互に訪問し、一緒に運

動遊びやゲーム遊びを楽しみ、交流を深めている例がある。特に年長児にとっ

て、地区の幼稚園・保育所・小学校間の連携が大切である。

② 社会に学ぶ「14歳の挑戦」

どの中学校でも幼稚園・保育所・小学校での「14歳の挑戦」が行われている。

中学生にとっては幼稚園・保育所・小学校理解、子供理解の場になり、子供た

子供同士の交流

1年担任の保育体験

保育士・教諭のT・T体験

職員相互の行事訪問等

実態把握

個別支援計画の作成

目標の設定

具体的な手立て

指導の実施

評価

就学前連絡会

幼・保からの情報

保護者

担任、その他教員

養護教諭

情報収集、行動観察

つまずきの整理など

長期目標

短期目標

指導方法や内容、指導

の場について具体的に

検討、子供の実態に応

じた手立て

就学後連絡会

幼・保・小担任

養護教諭

管理職

特別支援教諭

実践の振り返り

実態把握

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ちにとっては、一緒に遊んでくれるお兄ちゃん、お姉ちゃんとして中学生に親

しみを覚える場になっていることから、幼稚園・保育所・小学校の丁寧な対応

が大切である。

③ 老人会・祖父母との交流活動

地域によっては、老人会や祖父母との花苗植え、実り鍋、散歩、七夕の集い、

運動会、餅つき、伝承遊び、観劇などを行っている。高齢者は子供たちから元

気をもらい、子供たちは高齢者から、どんな子もまるごと包んでくれる優しさ

をもらっている。また「おじいちゃん、おばあちゃんは、何でもよく知ってい

てすごい!」と感じる大切な場となっている。

高齢者とのふれあいをもつことで、親しみや感謝の気持ちや思いやりが子供た

ちに育まれていることから、地域の老人会や祖父母との交流活動をしていくこ

とが大切である。

④ 地域の方との交流

地域によっては、イチゴ狩りや芋掘りを行ったり、地域の方が収穫した野菜や

果物をいただいたり、地域の方による絵本や民話の朗読を聞いたりする機会を

もっている。

地域に出向いて感動体験をしたり、地域の方に教えてもらったりする中で、子

供たちはいろいろな発見、気づきなど多くの学びをしている。時には注意を受

けることもあるが、親だけではしつけられない部分を地域全体で「見守る・教

える」場が必要なことから、地域の方との交流の場を意図的に設定していくこ

とが大切である。

⑤ 発達支援センター

幼児・学童期(低学年時)の言語発達遅滞、多動など、気になる子に対しては

早めの支援が必要だが、一言二言、言葉が出たことで親は安心し、継続した治

療が難しい事例もある。発達遅滞に関しては、見極めや親への伝え方が難しい

ので、専門機関との密なる連携が必要である。

⑥ 保健師によるフォローアップ

保健師に相談したことで、的確な回答が得られ、親が納得した事例がある。幼

稚園・保育所・小学校の独自の判断や教員や保育士の経験上の判断ではなく、

専門機関を利用することが必要である。

また、検診結果で気になる子に対しては、お互いに情報交換することで発達段

階を把握し、その子に応じた適切なかかわりができるので、小さなことでも話

し合える関係づくりが大切である。

⑦ 警察署・消防署

幼稚園・保育所・小学校では親子交通安全教室や防火教室を行っている。警察

官や消防士とのかかわりは、交通・防火ルールを知らせる上でも効果的である。

⑧ 2・3年次研修「保育所(園)体験

実際に乳幼児と活動を共にすることで、子供が生まれながらに備えている生命

力を実感し、子供から感性や学ぶ姿を感得することができる貴重な機会である。

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(3) 幼稚園・保育所・小学校として連携の事例

① 幼稚園・保育所・小学校の交流活動について

異年齢集団の交流の機会が少ない最近の子供たちにとって、人間関係を広げるこ

とが学びの可能性を大きくすることになる。小学生が幼稚園・保育所(園)の子供

たちと触れ合うことで自分の成長を実感し、自信にもなる。また、幼・保の子供た

ちは、小学生の姿を目指そうとするなど、異年齢の子供との交流から学ぶことは意

味のあることである。単発的な交流、一方的な交流に終わらず、互いにとって意味

のある、しかも継続的な交流が望ましい。

<事例1 小学校1年生 生活科「なかよくしようね」>

6月 幼稚園や保育所のみんなと遊ぼう(幼・保へ行って遊ぶ)

7月 もっと仲良しになって遊ぼう(事前準備後、幼・保へ行って遊ぶ)

10月 体育館で遊ぼうよ(貨物列車遊びやリレーをする)

11月 ようこそ、わたしたちのお祭りへ(祭りの店を開き、招待する)

1月 ようこそ!新しい1年生さん(学校案内や体験活動をする)

(園児にお面をかぶせてあげる) (レストラン屋で園児の相手をする)

<事例2 小学校1年生 生活科「いっしょに○○しよう」>

5月 サツマイモの苗を植えよう(一緒に畑に植える)

一緒に遊ぼう(畑の周りの自然を生かして遊ぶ)

7月 畝の草むしりをしよう

10月 芋掘りをしよう

茶巾絞りを作ろう(収穫したサツマイモで調理をする)

11月 楽しい思い出の絵を描こう(芋掘りや自然の中での遊びの様子を、

協力して壁画に表す)

1月 ようこそ!新しい1年生さん(学校案内や体験活動をする)

(教えてあげながら茶巾絞りを作る) (協力して描いた壁画)

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② 気になる子供への対応について

<事例3 気が弱く登校を渋りがちなA児> (小学1年 男子)

○ 校区の状況

A幼稚園とB小学校は隣接していて、給食も小学校の給食室で一緒に作っている。

定期検診等も小学校で一緒に行っている。子供たちを送って玄関に出たときなど顔

を合わせる機会も多い。また、保育所を交えた交流もよく行っており、生活科で招

待したり、ランチルームで一緒に食事をしたりしていた。逆に幼・保に招待されて、

音楽鑑賞会に行ったり、お店屋さんごっこに行ったりもしていた。特に小学校低学

年担任と幼稚園教員は、自然と顔見知りになり、お互い話しやすい雰囲気があった。

そのような中、登校を渋りがちなA児が入学してきた。A児は偏食も多く給食が

遅かった。また、絵を描いたり文を書いたりするのに時間を要した。そこで、幼稚

園時のA児の担任から話を聞いた。

○ 家庭環境

父(40代)、母(40代)、姉2人(大学生)、本人

○ 幼稚園からの情報

慎重な性格で、何事にも自信がもてず、日常生活での決まった活動や指示され

たことはできるが、自分で考え判断しなければいけない場面になると、行動に移

すまで非常に時間がかかる。いつも一緒にいるB児がいないと何をしてよいか分

からない。嫌なことからは逃れようとする。給食に対する抵抗感が強く、時間が

迫るとあわててしまい吐くことがあった。量を加減したり、食べ方を知らせたり

しながら、時間内に食べられるよう指導してきた。登園時間も遅く、登園を嫌が

ることもあった。母親は、姉が2人いて年が離れてできた男の子で、大変甘やか

しており、そのことについてあまり気にとめることもない。

○ 情報交換後の様子とその対応

話を聞き、給食の量を減らして配膳すると残さず食べた。他に遅い子がいたと

いうこともあり、給食に関しては目立たなくなった。

入学当初は緊張していたためか、給食以外には、特に問題もなかった。しかし、

朝のスピーチなど自分から進んですることがなく、クラスのほとんどの子がスピ

ーチをしても自分からスピーチをすることはなかった。

連休明けから、いろいろ理由をつけて遅れて登校したり、欠席したりした。そ

んな中、「朝出がけに、足をひねったので、遅れる」と母親から連絡があった。

9時になっても来ないので「遅れても来させてください」と伝えたが、9時30

分になっても来ないので、再び電話した。「嫌がっても、学校に連れてきてほし

い」と強く言うと、10時頃連れて来られた。教室に入るまで足を引きずってい

たが、教室に入ると何事もなかったように普通に本人は振る舞っていた。放課後

に電話をして、学校での様子を話したところ、母親は迷いがあったらしく、背中

を押してもらってよかったと喜んでいた。

もともと登校時間が遅かったのだが、その後ますます遅くなり、始業ぎりぎ

りに登校するようになった。そして、5月20日(火)、5分ほど遅刻してきた。

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母親には、もっと早く家を出すようにしてほしいと連絡した。次の日、熱がある

ので欠席。翌日は登校したが、23日(金)「耳が痛い」ということで、病院に

行って診療を受けた。その後も時々○○が嫌だと登校を渋ることがあったが、担

任は学校に来させてほしいと言い続けた。その結果、朝送ってもらう姿が見られ

たが、徐々に友達と登校できるようになり遅刻もなくなり、元気になっていった。

このように強く母親を説得できたのも幼稚園から登所を渋りがちだったことや

親の養育態度等を聞いていたからである。もし、聞いていなかったら、強く母親

を説得することもできず、移行期に不登校になったり、集団生活に適応できなか

ったりしたと思われる。

《考察》

A児は、年が離れた姉二人の後にできた待望の男の子ということで、小さいと

きから大切に育てられた。母親は、本人がする前にいろいろなことに気を回し、

自己決定する場を知らず知らずのうちに奪っていたと思われる。また、幼稚園に

遅く登園することが常態化したことで、家庭の中でも地域でもA児が子供同士の

人間関係を学ぶ場が不足することになっていった。

母親もA児がかわいくて仕方がなく一緒にいることに喜びを感じ、A児を甘や

かせて育て、登園時間が遅くても気にならず、登園を渋れば休ませればよいと考

えていた。その考えを小学校に入学してもなかなか変えることができず、そのま

ま引きずってしまった。母親の養育態度を変えることが一番大切だと考え説得す

ることで、A児は小学校に徐々に適応していった。幼・小の担任同士がふだんか

らよく顔を合わせ情報交換をしていたため、保護者の養育態度や、幼・保に在籍

していた時の様子を細かく聞くことができたことが、小学校での素早い対策に生

かせ、移行期をうまく乗り切ることができたと考えられる。

幼稚園・保育所・小学校の連携を密に行うことは、移行期における校種間の段

差を縮める上で、とても大切である。また、子供たちだけでなく保護者への支援

も大切になってくる。小学校の入学に向けての不安や悩みをかかえる保護者への

支援体制があると、落ち着いて子供に接することができる。このように、精神的

に安定すると、子供も落ち着いて行動できるようになると思われる。

<事例4 友達との関係がうまくいかない・・・つい手が出てしまうC子の事例>

(幼稚園 4歳児)

○ 家庭状況

・ 父、母、弟(1歳)と本人の4人家族

・ 子供たちは母親が仕事の間(夕方)は、保育所に預けられている。

・ 両親で、相談をしながら子育てをしている。

・ 両親は、女の子でもリーダーとして活躍・自立できるようにと考え、人前で物

おじしない子にと願い、育てている。

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・ 友達や弟に意地悪をするのは、親のかかわり方が原因ではないかと悩んでいる。

・ 弟ができたことによる愛情不足と考え、親子プール・ダンスなどC子とかかわ

る時間を多くもつように心がけ、少々のわがままも聞き入れている。

○ 性格傾向:行動・情緒

・ 自分が気に入らないと突然相手を叩いたり蹴ったり、嫌なことを言ってトラブ

ルになる。

・ 大人の目を気にし、注意されるとすぐに泣き出す。

・ 勝ち気で1番になれないと泣く。自分の意見は譲らない。

・ 自分の身の回りのことはできるが、忘れ物が多い。

・ 集団のルールはほぼ身に付いているように見えるが、「なんでそんなことしない

といけないの」と反発する。

・ 興味をもって遊ぶが、長続きせず次々と目新しいものに移行する。

教師の援助 C子ちゃん 子供の姿 友達の気持ち

嫌い! 怖い!

保護者へのアドバイス

相手を叩いたり、蹴っ

たりする。

(衝動的な行動が多い)

○ 本人のよさを見つめ直す

・ 明るく活発で、自分の意見をはきはきと言う。

・ アイディアが豊富でのびのびと遊ぶ。

・ 身体能力が優れている。

・ 楽しそうに遊んでいるので、友達が集まってくる。

・ クラスのリーダー的存在になりつつある。

「あの子に『嫌い』

と言ってきて」と友

達に言わせようとす

る。

「嫌い」と言われると、悲し

くなるね・・・。

言葉で相手を傷つけるとどう

なるのか、自分はどうありた

いのかを考えさせていく。

<信頼関係>

園での様子を伝え、

子育てについての悩

みも聞いていく。

善・悪に対する考えや

対応を一貫したものに

していく。(一方的に子

供を叱らないように)

自分で考えさせ選択

していく時間を大切

にして・・・。

スキンシップや言葉がけ

などに努め、情緒の安定

を図る。

良いこと・悪いことをき

ちんと伝えていく。

「私が1番だったの

に」「なんでそんなこ

としなきゃいけない

の」と泣いて訴える。

「悲しかったね」と共感

し、「どうしたらいいの」

と考えさせ見守っていく。

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教師の援助 C子ちゃんって 子供の姿 保護者へのアドバイス

楽しそう!

優しいところも

あるね・・・

《考察》

・ 子供が安定して生活することのできる環境を整え、気持ちを受け止め、温か

く見守り励ますことによって、友達に対する思いやりの気持ちが育ってきた。

・ 子供の悪い面ばかりでなくよい面・魅力を褒め・認めていくことにより、

心を開いて話したり、言葉がけを素直に受け止めたりできるきっかけとなっ

た。

好きな遊びを見つ

けて、楽しそうに遊

ぶ。

自分の思いやア

イディアを相手に

言う。

「なんで泣いているの?ど

うしたらいいの?」と自分

で考えたり失敗したりしな

がら相手の気持ちに気づい

ていく。

よい面を見つけ「すごい」と

興味や関心を認め、期待され

ていると感じるようにする。

“やってみよう”とす

る意欲を大切にし、成

功したり失敗したりす

る経験を重ねさせてい

く。

きまりやルールを守ること

で、集団生活がより楽しく

有意義なものになっていく

ことを知らせる。

結果だけでなく、その

過程を大事にして心の

育ちを見守るようにす

る。

褒めることにより、

やる気や自発性を促す

エネルギーとなるよう

に・・・。

ゆとりをもって子供に

接するように

「優しい子だね」と

よい面を見つけていく。

よいことはすぐに褒

めたり、認めたりを

繰り返す中で、思い

やりの心が芽生える

ように・・・。

友達の優しさに触れたり、ク

ラスの友達によいイメージを

もってもらったりする。

友達に「ありがとう・ご

めんなさい・悲しいね」

と優しいことばをかけら

れるようになってくる。

時には失敗をさせな

がらいろいろ経験を

させていく。

友達に優しく話を聞いて

あげたり励ましたり自分

で解決しようとする。

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・ 遊びの中で成功と失敗を繰り返し、友達同士気持ちを伝え合う中で試行錯誤

し、“ためしてみよう”と問題を解決する姿が見られるようになった。

・ やり遂げたという満足感を味わうことにより、自立へとつながることが分か

った。

・ 子供の気持ちを受け止め・温かく見守り・励ますことにより、安定した生

活を送り、友達に対する優しさや思いやりの気持ちが育ってきた。

・ 保護者の喜び・悩みに寄り添い共感しながら、信頼関係を築くことで、子

供の成長を共に喜び合ったりトラブルの解決を探ったり、保護者も子供の将

来を見通して考えていけるようになった。

<事例5 友達に思いやりのある態度がとれない、学校生活でのきまりがなかなか身

に付かないD児> (小学2年 男子)

○ 家庭環境・生育歴

父(30代)公務員: 教育には熱心だが、親子活動の時に体育館を一人走り回

っていても注意することもなく、公共の場でのしつけには

無頓着な態度である。

母(30代)公務員: 共働きで子供も3人ということで、家事を子供たちに分

担させ自立を促すような考えをもって接している。

弟( 4歳)保育所: 弟のことが話題になることはほとんどない。

弟( 1歳)保育所: おむつ替え等の世話を本人(D児)がしている。

本人

○ 性格傾向:本人のよさ

・ 好奇心旺盛でアイディアも豊富であり、学習や係活動にも意欲的に取り組む。

・ 行動的であり、遊びにおいても中心となって活発に遊ぶ。

・ 他の子供たちも、D児のやる気に刺激され、様々な活動に積極的に取り組もう

とする学級の雰囲気を作り出す。

○ 性格傾向:行動・情緒

・ 他の子供たちがD児に一目を置いているため、D児の言動が他の子供たちに与

える影響が大きい。

例えば、 全校大縄跳び集会に向けて練習をしているときには、うまく跳べな

い友達に対して跳ばせないで縄を回させたり、「ちゃんと跳ばれ」と責めるよう

に言ったりしていた。また、以前から練習を積んでいる他のクラスの様子を見て、

休み時間に自主的に練習しようとする他の子供たちに「どうせ、○組優勝するか

ら」といって、練習しようとする友達をサッカーに誘おうとしていた。勝負の勝

ち負けにとてもこだわり、友達同士で励まし合う優しい言葉は、なかなか最初か

らは出ない。D児の発した言葉の重大性を話してやると素直に聞いて反省し、そ

の後は、友達に励ましの言葉をかけながら練習したり、休み時間に友達を誘って

縄跳びの練習をしたりするようになる。

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・ 自分が気に入らない友達がすることには、他の子供が同じことをやっていても、

その子だけに強く注意して排斥することが度々あった。

例えば、給食の準備のときに早くに身支度を整えて張りきって仕事をしようと

する友達に「だめだよ、廊下を走ったよ。歩き直され」とか「E君の仕事じゃな

いよ。やったらだめだよ」などと特定の子供に注意する。言っていることは、間

違いではないが、語調が強く命令口調になり、相手も言い返しているが、結局は

D児に押し切られている。「どうして他の人には注意しないの、いつも○○さん

だけだよね」と聞くとうなずき、「特に理由は無い」と答える。

・ 学級のきまりをなかなか守ることができない。決まりを破ったとき「ぼくはや

っていない。○○君がしていた」となかなか自分の非を認めて謝ることができな

かった。

○ 家族関係について

・ 母親の手伝いをするということは、小さいときに普通は「お手伝い」として位

置づけられるが、D児の場合は、大人と同様に「仕事」として分担されてきた。

お手伝いであれば、「ありがとう、助かったわ」とその行動をほめられ、「また、

手伝いたいな」という意欲付けになるのであるが、D児の場合は、大人と同一の

仕事として家事を担ってきた。このことは、大縄跳びの練習でのD児の行動にも

表れている。この行動の背景にあるものは、お手伝いのときのように当たり前の

仕事としての評価しか受けてこなかったため、行動の過程がきちんと評価される

ことなく、「できた、できない」の結果のみだけ評価されてきたことが関係して

いると思われる。

○ 学校生活の中から

・ D児には、友達の失敗をあざけり笑うところがある。あざけり笑うという反応

でしか自分を表現できないのである。「何かを感じ、しみじみと心を温める」と

いう経験をもっと大切にする必要がある。「じんわり感じるよね」と大人が声に

出して指導していくことが必要であるが、この指導を家庭か学校のどちらで行っ

ていくべきなのかは検討していく必要がある。

○ D児に付けたい力

* 自己調整力-自分の内面を言語化することを継続的に行うことにより-

<自己調整力を付けるための支援>

・ 自分の気持ちを整理し、自己をコントロールする力をつけるために、友達との

トラブルが起きたときには、すぐに対処することを、入学してから2年間継続し

て行ってきた。その時、本人や周りの人から状況やどういう思いだったのかとい

うことをじっくりと聞いた。そして、どう考えどう行動すべきだったかなど、具

体的にD児が納得できるように話し合い、次につながるように指導を繰り返して

きた。

その結果、D児も特定の子供にだけ厳しい言動をすることはなくなり、友好的

に友達関係を維持することができるようになった。また、友達の失敗を笑うこと

や投げやりな言動は見られなくなった。自分でどうすべきかを考えて行動できる

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ように、根気強く自分の内面を言語化させる指導をしてきたことや友達に認めら

れる経験を重ねてきたことが、D児の変容につながったと思われる。

<新しい友達関係づくりをするD児>

3年生に進級して学級編制があり、新しいメンバーや担任と一緒に学校生活が

スタートした。4月当初は、2年生の時と同じように行動力があるため、学級の

中でも他の子供たちから、「D児ってすごいな」と一目置かれていた。ドッジボ

ールの試合中、ボールの取り合いとなって言い合いになった。担任が事情を聞く

とD児の勘違いであることが分かった時、自分の勘違いであったとD児は素直に

みんなに謝ることができた。このことは、自己調整力がD児に身に付いてきて、

新しい友達関係づくりもうまくできるようになってきたことの現れである。

* 自分が役に立っているという自己有用感

・ 友達とできたことを喜び合い、「自分がやれた、いいことをした」と感じる経

験が自己肯定感のメタ認知を高め、友達を認めたりほめたりすることができるよ

うになる。

そのため、「できた、できない」という結果のみの評価ではなく、その過程が

評価される経験を通して、自己有用感へとつなげることができる。

<自己肯定感を高めるために、D児のよさが発揮できる場づくり>

・ 係活動という窓口から、アイディアが豊富で行動力があるというD児のよさを

発揮する場を設け、周りから認められ満足感が味わえるようにしたいと考えた。

そのために、学級会の話し合いで発案された係は、子供たちの同意のもとに成立

させていくこととした。また、意欲化を図るために、子供たち自身が工夫しなが

ら取り組める活動内容を考えさせたり、帰りの会で係タイムを設けて発表する場

を保障したりした。

「3学期の係」についての話し合いの時に、キャラクタークイズ係があったら

楽しいなとD児が提案した。自分でやりたいと発案した係なので、係の中心とな

って問題を考えたり、休み時間にみんなに呼びかけてクイズのトーナメント戦を

行ったりするなど、次々とアイデアを出し、みんなと喜んで活動した。学級の子

供たちも、次々にクイズを考えて活動するD児の行動力を認めていた。同じ係に

は、D児と仲良しの子供たちが集まり、D児がリードし、活発に取り組むことに

つながった。

<思いやりのある行動を自然にとれるようになってきたD児>

3年生になって、係活動でも、いろいろな仕事を他のメンバーにも割り振るな

ど係の中心となって張り切って活動している。友達関係がうまく築けず排斥され

がちな友達が泣いていると、「一緒にやる?」と自分から誘うことができた。入

学当初は、特定の友達を排斥していたD児であったが、今では、周りの友達の気

持ちを考えて、思いやりのある行動ができるようになってきた。D児の成長を感

じることができる。

このように、D児の変容が見られるようになったのは、自分が認められたいと

いう誰もがもっている「承認欲求」を満たすことができるようになってきたこと

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や自分が役に立っているなという「自己有用感」を感じる経験を積んできたこと

が大きく関係していると考えられる。

《考察》

・ D児の行動の背景にあるものは、親からお手伝いのときのように当たり前の

仕事としての評価しか受けてこなかったため、行動の過程がきちんと評価され

ることなく、「できた、できない」の結果のみだけ評価されてきたことが関係

していると思われる。

・ D児の行動の変容をもたらしたのは、根気よく自分の内面を言語化させ、自

分でどうすべきかを考えて行動できるように指導を行ってきたことや友達に認

められる経験を積み重ねたことが大きいと考える。

・ D児の変容は、自分が認められたいという誰もがもっている「承認欲求」を

満たすことができるようになってきたことや、自分が役に立っているなという

「自己有用感」を感じる経験を積んできたことが大きく関係していると考えら

れる。

・ 友達とできたことを喜び合い「自分がやれた、いいことをした」と感じる経

験が自己肯定感を高め、友達を認めたり褒めたりすることができるようになる。

「できた、できない」という結果のみの評価ではなく、その過程が評価される

経験を通して、自己有用感へとつなげることができる。

3 小1プロブレムとの関連における考察

(1) 移行期の保護者への支援体制づくり

幼稚園・保育所の在園(所)中より様々な不安や気がかりを抱えている保護者、何

らかの問題や不安を抱えている幼児の情報を入学前の早い時期に聞く。

そのような保護者が気楽に小学校を訪問し雰囲気を味わったり、相談したり、また、

幼児が保護者や幼稚園の教諭や保育所の保育士と共に学校に来て、学校に慣れること

ができれば移行期をスムーズに乗り越えることができると考える。しかし、保護者に

とっては小学校の敷居が高い場合も考えられる。そこで、入学説明会の他に、入学相

談会を設けることも一つの方法であると考える。

・不安を抱えている保護者 ③

・問題のある保護者 ②

・問題を抱える幼児

・不安を感じている幼児 ①情報を知らせる

②相談にのる

③学校訪問

幼・保 小学校

保護者

幼児

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(2) 親の安定化

○ 幼児期の養育環境はその子の人格形成や心の安定に大きく影響することから、親

の心の安定を図ることが大切である。幼稚園・保育所では毎日の送り迎えで顔を合

わせる機会を活かして、日々、コミュニケーションをとり、子供の成長を共に喜び

合い、子育ての楽しさ、面白さを感じたり、子供を愛おしいと感じたりできるよう

な親との関係を築いていくことが必要である。

① 子育ての相談にのったり、時には気になるかかわり方に対し、望ましいかかわ

り方を示したりするなど、子育てのサポートをすることが必要である。

② 基本的生活習慣の確立に心を留めない親が目立ってきている。核家族化、少子

化が進み、助言する祖父母がいないことや同居していても「言わない」「聞かな

い」という家族関係も要因の一つと考えられる。子供ができるようになったこ

とを伝えたり、食事、睡眠の大切さを配付物や掲示物で伝えたり、講演の場で

講師に話してもらったりして、親が興味・関心をもつようにすることが大切で

ある。

③ 子供の自立に向け、共に連携を図りながら同じかかわり方をすることが大切で

ある。(連絡帳や口頭などで)

(3) 個人の能力として ~スムーズな移行に向けて身に付けておきたい能力~

生活面では

① 基本的生活習慣を身に付ける。

・ 規則正しい生活リズム(食事・睡眠等)

・ 身辺整理(片付け・身支度・衛生等)

② 集団のルールを守る。

・ 日常のあいさつ

・ 安全への配慮(交通ルール・善悪の判断等)

③ 集中して取り組む。

・ 嫌いなこと、苦手なことにも取り組む。

④ 人の話を聞く。

・ 相手の思いが分かる。

⑤ 自分の思いを言葉にして伝える。

・ 嫌なことは嫌と言える。正しい言葉づかいをする。

情緒面では

① 基本的信頼感を獲得する。

・ 認められる体験、認められる満足感、その子のよさが発揮できる場を設ける。

② 自分が役に立っているという自己有用感をもつ。

・ 取り組んだことは、あきらめず最後までやり遂げようとする。

③ 自分の思いをコントロールできる力を高める。

・ 多少、嫌なことでもみんなでしている時は、がまんできる。

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・ 友達と一緒に遊び、よい所は認め、悪いと思ったら謝ることができる。

認知面では

① メタ認知力を高める。

・ 自分が体験したことを言語化したり、何をしていきたいか表現したりする力を

身に付ける。

② 自分で考えようとする力を高める。

・ 指示で動くのではなく、自分で考える力を付ける。

・ 生活や遊びの中で、時期・時間に関心をもって行動しようとする。

③ 物事をとらえるとき、自分なりに理解しているかをチェックする力を高める。

・ 人の話を落ち着いて聞き、行動に移すことができる。

(4) 幼・保と小学校の段差を取り除く

入学時に、子供たちが感じる段差として

ア チャイム(時限)に区切られて行動する不自然さ・・・すぐに頭と心を切

り替えられない。

イ 一人の教師対全ての子供という構図が多い

ウ 教師が説明しすぎ、急がせすぎ・・・じっくりと待つことが必要。

エ 1年生の力をもっと信じて生かしてほしい

オ 環境、規則、自分で管理すべき用具が多い

カ 言葉遊び、数遊びなど、遊びを取り入れた指導が少ない

(参考文献:新保真紀子著『「小1プロブレムに挑戦する』明治図書)

などがある。そこで、段差を越えるヒントとしての幼・保と小学校の連携を考えて

みた。

① 互いの教師が、子供の実態を把握するための参観をする。その上で、小学校側と

して配慮すること

・ 幼・保の年長児は、できることがいっぱいあるので、小学校入学時でもいろい

ろさせてみる。その際、仕事が雑でもできていることを認めてやることが大事で

ある。初めから細かい指導をしないように心がける。

(例) 幼・保の子供の清掃は、隅々をきれいにするというよりも、技量的に

も大ざっぱに部屋を掃除する程度である。しかし、それをできることと

して認めてやることが大事である。

・ 急がせ過ぎずに時間に余裕をもって、子供のやりたいことをじっくりとさせる

ことが大事である。また、子供同士の喧嘩に対して、大人がすぐに介入して収め

るのではなく、人間関係づくりの大切な場ととらえて待つ姿勢も必要である。

・ 幼・保の先生の話し方の調子(ほわっと包み込む柔らかい声、トーンを落とし

た声など)を参考にする。

② 接続期のカリキュラムを工夫すること

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・ 幼・保での遊びの中で学んできたことを小学校の教科の中に生かしていくこと

を考えなければいけない。

・ 幼・保での動物とのふれあいや、植物・水などの自然の中での遊びを充実させ

ることで、興味・関心をもたせる。それが、小学校での生活科の教科において、

よりかかわりを求め、気づ付きを広げていくことにつながっていく。

・ 幼・保での劇遊びやお店屋さんごっこなど仲間と一緒に相談しながら遊びを創

っていく活動は、小学校で学級単位で話し合って学習していく姿につながる。

・ 小学校入学直前の3学期は、文字や数に慣れ親しむ活動を多くしたり、椅子に

座って一斉に話を聞く機会を多くしたりすることで、入学への期待を膨らませる。

・ 入学当初は、自由活動(遊び)の時間を設定し、子供の欲求を満たすようにす

る。教師は、子供の姿をじっくりととらえる機会とする。

・ 入学当初は、補助担任などを設け、子供を偏った見方にならないように配慮し

ていく必要がある。

☆2・3年次研修『保育所体験』 ~受講者の感想から~

・ 子供たちが、昨年度からどのように成長しているかを見るのが楽しみだったが、

考えていた以上に成長しており、大変驚いた。子供たちの成長する過程を2年間

通して把握することができて、子供理解の上からも勉強になった。

・ 幼児は想像以上に保育所での生活パターンに順応し、それぞれの活動に自覚と

責任をもって行動していた。私たちは子供たちがどのような力を身に付けて小学

校に入学してくるのかをしっかりと把握する必要がある。幼保・小・中の密接な

連携の必要性を感じた。

・ 異年齢の子供たちが触れ合うことによって、より小さい子をいたわる気持ちが

自然に育っていると思った。年長の子供の行動が、年少・年中の子供のこれから

の目標になっていることが多いと感じた。

・ 幼児は楽しくないとすぐに他のことに関心を奪われてしまい、集団としての

まとまりをなくしてしまう。一人一人に目を向け、発達段階を考慮して関心を

高める指導の大切さを再認識した。

・ 気長に見守り、少しのがんばりも見逃さずにほめることの重要さが分かった。