物理システム工学科3年次 物性工学概論 第火曜1限 0023 教室 第 13...

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物理システム工学科3年次 物性工学概論 第火曜1限 0023 教室 第 13 回 スピンエレクトロニクスと材料 [3]  磁気記録材料. 大学院ナノ未来科学研究拠点 量子機能工学分野 佐藤勝昭. 第1 2 回に学んだこと. 磁石は何でできているか 磁性体を構成する元素 3d 遷移金属 4f 希土類 周期表と s,p,d,f 軌道 磁性の起源 磁石をどんどん小さくすると 究極のミニ磁石→原子磁気モーメント 磁気モーメントの起源:角運動量 軌道角運動量 スピン角運動量. 前回の質問. 磁気的な単極は見つかっていないのか - PowerPoint PPT Presentation

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物理システム工学科3年次物性工学概論第火曜1限 0023 教室第 13 回 スピンエレクトロニクスと材料 [3]  磁気記録材料

大学院ナノ未来科学研究拠点量子機能工学分野佐藤勝昭

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第1 2 回に学んだこと 磁石は何でできているか

磁性体を構成する元素 3d 遷移金属 4f 希土類 周期表と s,p,d,f 軌道

磁性の起源 磁石をどんどん小さくすると 究極のミニ磁石→原子磁気モーメント 磁気モーメントの起源:角運動量

軌道角運動量 スピン角運動量

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前回の質問

磁気的な単極は見つかっていないのか これまでに見つかっていないし、今後も見つからな

いだろうと考えられています。 磁石がいろいろ紹介されたが用途は?

ネオジム磁石は強力ですが、キュリー温度が低いので温度の高いところで使えないという欠点があります。

フェライト磁石はあまり強くないが価格が安いという特徴があります。

磁石関係の HP を参照してください。

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強磁性:なぜ自発磁化をもつのか

これまで原子が磁気モーメントをもつことを述べた

それでは、強磁性体ではなぜ原子の磁気モーメントの向きがそろっているのか。

また、なぜ強磁性体はキュリー温度以上になると磁気秩序を失い、常磁性になるのか。

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なぜ原子の磁気モーメントがそろっているのか(1)局在磁性モデル(1)局在磁性モデル

強磁性常磁性

反強磁性

H=-JS1S2

交換相互作用

J>0

J<0

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なぜ原子の磁気モーメントがそろっているのか(2)遍歴電子磁性モデル(2)遍歴電子磁性モデル (( バンドモデルバンドモデル ))

多数 (↑) スピンのバンドと少数(↓) スピンのバンドが電子間の直接交換相互作用のために分裂し、熱平衡においてはフェルミエネルギーをそろえるため↓スピンバンドから↑スピンバンドへと電子が移動し、両スピンバンドの占有数に差が生じて強磁性が生じる。

磁気モーメント M は、 M=( n↑- n↓)B で表される。このため原子あたりの磁気モーメントは非整数となる。 非磁性半導体との

比較

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なぜ Tc 以上で自発磁化がなくなるのか

磁気モーメントをバラバラにしようとする熱擾乱の作用が、磁気モーメントをそろえようとする交換相互作用に打ち勝つと、磁気秩序が失われ常磁性になる。

磁気秩序がなくなる温度を、強磁性体ではキュリー温度とよび TC と記述する。反強磁性体ではネール温度とよび TN と記述する。

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M-T 曲線

× は鉄、●はニッケル、○はコバルトの実測値、実線は J としてスピンS=1/2,1,∞ をとったときの計算値

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磁気ヒステリシスはなぜ生じるのか

強磁性体の磁区 反磁界 (demagnetization field) 磁気異方性 磁壁移動と磁化回転 保磁力

H

M

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なぜ初磁化状態では磁化がないのか:反磁界と磁区

磁化が特定の方向を向くとすると、 N 極から S 極に向かって磁力線が生じる。この磁力線は考えている試料の外を通っているだけでなく、磁性体の内部も貫いている。この磁力線を反磁界という。反磁界の向きは、磁化の向きとは反対向きなので、磁化は回転する静磁力を受けて不安定となる。

磁化の方向が逆方向の縞状の磁区と呼ばれる領域に分かれるならば、反磁界がうち消し合って静磁エネルギーが低下して安定する。

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反磁界 (demagnetization field) 磁性体表面の法線方向の磁化

成分を Mn とすると、表面には単位面積あたり = Mnという大きさの磁極 (Wb/m2

) が生じる。 磁極からはガウスの定理によ

って全部で /μ0 の磁力線がわき出す。このうち反磁界係数 N を使って定義される磁力線 NM は内部に向かっており、残りは外側に向かっている。すなわち磁石の内部では、M の向きとは逆方向の反磁界が存在する。

(b) 磁力線

M- +

(a) 磁化と磁極 反磁界

S N

S N

(c) 磁束線

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反磁界係数 N : (近角強磁性体の物理より)

N の x, y, z 成分を Nx, Ny, Nz とすると、 Hdi=-NiMi/0 (i=x,y,z)と表され、 Nx, Ny, Nz の間には、 Nx+ Ny+ Nz=1 が成立する。

球形: Nx= Ny= Nz=1/3

z 方向に無限に長い円柱: Nx= Ny= 1/2 、 Nz=0

無限に広い薄膜の場合: Nx= Ny= 0 、 Nz=1 となる。 実効磁界 Heff=Hex-NM/0

xy

z

z

x

y

z

x

y

Nz=1

Nx= 0Ny= 0

Nx= 1/2

Ny= 1/2Nx=1/3

Ny=1/3

Nz=1/3

Nz=0

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反磁界と静磁エネルギー

磁化 M が反磁界 Hd のもとにおかれると U=MHd だけポテンシャルエネルギーが高くなる。

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磁区形成による静磁エネルギーの低下 縞状磁区 (stripe domain) の場合

+ +- -

z

x

y

d

境界条件 (/ z)z=-0=/20

のもとにラプラス方程式を解くと単位表面積あたりの静磁エネルギー =(2Is

2/20) n (1/n2)∫0d sin n(/d)x

=(2Is2d/20) n=odd (1/n3)=5.401

04Is2d となり、

ストライプの幅 d が減少すれば、静磁エネルギーは dに比例して減少することが導かれる。

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磁気異方性 (magnetic anisotropy) 磁性体は半導体と違って形状・寸法・結晶方位とか

磁化の方位などによって物性が大きく変化する。 形状磁気異方性 : 反磁界によるエネルギーの損を最小化する

結晶磁気異方性 : 磁界を結晶のどの方位に加えるかで磁化曲線が変化する性質

スピン軌道相互作用 : 電子軌道は結晶軸に結びついているので、磁気的性質と電子軌道との結びつきを通じて、磁性が結晶軸と結びつく。

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結晶磁気異方性結晶方位で磁化のしやすさが変わる。

磁化しやすさは、結晶の方位に依存する。 鉄は立方晶であるが、 [100] が容易軸、 [111] は困難軸

x

y

z

[111

]

[100]

容易軸

困難軸

[110]

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磁区構造

ボルテックス静磁エネルギーは下がるが交換エネルギーが増加

単磁区磁極が生じ静磁エネルギーが上がる

環流磁区 縞状磁区

磁区と磁区の境界に磁壁エネルギーを貯えている

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単磁区構造の例

FIB 法で作製した CoCrPt 円柱ナノドット (500nm 径 ) 三角格子配列パターンの MFM 像( 佐藤研 M 修了生長谷川君測定 )

CoCrPt は垂直磁気記録媒体材料:磁気異方性が強い

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ボルテックス (vortex)構造の例 電子ビームリソグラフィによるシリコン埋め込みパーマロイ円形ナノドット (200nm径 ) のMFM画像(佐藤研M1山本君作製 )

220nm50nm

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環流磁区 (closure domain)構造 電子ビームリソグラ

フィによるシリコン埋め込みパーマロイ正方形ドット (1m辺 ) の MFM画像(森下研M2手塚君作製 )

理論による環流磁区構造のシミュレーション;佐藤研 D2 町田君による

スピン構造 MFM像シミュレーション

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縞状磁区の例

MFM( 磁気力顕微鏡 )で観測したパーマロイ (Fe20Ni80 合金 )薄膜の縞状磁区(佐藤研M修了松本君測定 )

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寸法による磁区構造の変化 FIB加工した Co ドット

( 面内磁化 )膜厚 200nm 1m径:縞状磁区 , 200nm径:単一磁区

小さなドットでは磁区に分かれると磁壁のエネルギーが高くなるので単磁区になろうとする

大きなドットでは多磁区構造をとる方が静磁エネルギーが低いので多磁区になる。 佐藤研修了生長谷川君作製

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ヒステリシスと磁区

初磁化状態 磁壁移動 磁化回転 単一磁区

残留磁化状態 逆磁区の発生と成長

磁気飽和

核発生

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磁気記録 (magnetic recording)

磁気記録の歴史 磁気テープと磁気ディスク 記録媒体と磁気記録ヘッド 高密度化を支えるMR素子 光磁気記録 ハイブリッド磁気記録 固体磁気メモリ(MRAM)

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磁気記録の歴史

1898 年 V.Poulsen( デンマーク ) :発明:磁性体の磁化状態を制御することによる情報記憶技術。

1900 年磁気録音機としてパリ万国博に出品され、「最近の発明のなかで最も興味あるもの」として賞賛される。

1921 年 L.De Forest( 米国 ) の真空管による増幅器の発明、 1930 年代リング型磁気ヘッドと微粉末塗布型テープの開発→磁気記録技術の実用化

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磁気記録過程

佐藤勝昭編著「応用物性」( オーム社 , 1991)図 5.18

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記録波長

媒体に近接して配置した磁気ヘッドのコイルに信号電流を流し、信号に対応した強さと向きをもつ磁束を発生し、媒体に加える。

媒体は、ヘッドからの磁束を受けて磁化され、信号に対応する残留磁化の向きと強度をもつ磁区が形成される。

記録波長(信号1周期に対応する媒体上の長さ ) =v/f (v: 媒体と磁気ヘッドの相対速度 ,   f: 信号周波数 ) 記録減磁:高周波信号になると、媒体が十分に動かないうち

に磁界の向きが反対になり、十分に記録できなくなる現象

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磁気記録の再生原理(1)誘導型ヘッド

電磁誘導現象コイルを通る磁束が変化するとき、磁束の時間微分に比例した電圧 E がコイルに発生する。

出力は微分波形となる 再生電圧は、記録波長

(媒体上の信号1周期に対応する長さ ) と媒体・ヘッドの相対速度の積に比例

tE

スペーシングロス

再生の原理

電磁誘導

佐藤勝昭編著「応用物性」( オーム社 , 1991)図 5.19, 5.20

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磁気記録の再生原理( 2 )MR( 磁気抵抗 )ヘッド

媒体から洩れ出す磁束により磁性体の電気抵抗が変化する現象 (MR: 磁気抵抗効果 ) を用いて、電圧に変えて読み出す。

当初 AMR( 異方性磁気抵抗効果 ) が用いられたが 90 年代半ばから GMR(巨大磁気抵抗効果 ) が用いられるようになった。

N S N SN S

漏れ磁界

MRヘッド

N S

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磁化曲線と GMR

F1 と F2 の保磁力が異なれば反平行スピンの時に抵抗が高くなる。

H

M

R

H

GMR(SV)ヘッドの原理

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GMR(巨大磁気抵抗効果 ) とは? 強磁性体 (F 1 )/ 非磁性金属 (N)/ 強磁性 (F2) 多層膜 F1, F2 平行なら抵抗小。反平行なら抵抗大。

ピン層

フリー層 

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スピンバルブ NiFe(free)/Cu/NiFe

(pinned)/AF(FeMn)の非結合型サンドイッチ構造

交換バイアス

フリー層

非磁性層

ピン止め層

反強磁性層 ( 例 FeMn)

最近は SAF に置き換え

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記録密度とヘッド浮上量

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HD の記録密度の状況 HD の記録密度は、 1992 年に MRヘッドの導入

によりそれまでの年率 25% の増加率 (10 年で 10倍 ) から年率 60%(10 年で 100倍 ) の増加率に転じ、 1997 年からは、 GMRヘッドの登場によって年率 100%(10 年で 1000倍 ) の増加率となっている。

超常磁性限界は、 40Gb/in2 とされていたが、 AFC( 反強磁性結合 )媒体の登場で、これをクリアし、実験室レベルの面記録密度は 2003 年時点ですでに 150 Gb/in2 に達し、 2004 年には200 Gb/in2 に達すると見込まれる。

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ハードディスクのトラック密度、面記録密度の変遷

超常磁性限界

MR ヘッド

GMRヘッド

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HD の記録密度の状況 HD の記録密度は、 1992 年に MRヘッドの導入に

よりそれまでの年率 25% の増加率 (10 年で 10倍 )から年率 60%(10 年で 100倍 ) の増加率に転じ、1997 年からは、 GMRヘッドの登場によって年率100%(10 年で 1000倍 ) の増加率となっている。

超常磁性限界は、 40Gb/in2 とされていたが、 AFC( 反強磁性結合 )媒体の登場で、これをクリアし、実験室レベルの面記録密度は 2003 年時点ですでに 150 Gb/in2 に達し、 2004 年内には 200 Gb/in2 に達する。

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ハードディスクの記録密度に限界が 1970 年から 1990 年にかけての記録密度の増加は

10 年で 10倍の伸び率であったが、 1990 年代になると 10 年で 100倍という驚異的な伸び率で増大した。これは再生用磁気ヘッドの進展によるところが大きい。その後も記録媒体のイノベーションにより、実験室レベルでは 100Gb/in2 を超えるにいたった。

しかし、 2000 年を過ぎた頃からこの伸び方にブレーキがかかってきた。これは、後述するように磁性体の微細化による超常磁性限界が見え始めていることが原因とされる。

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CoCrTa 媒体の Co 元素面内分布

Cr CoCr

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多結晶記録媒体の記録磁区と磁壁 現在使われているハードディスク媒体は図に示すように直径数 nm の CoCr系強磁性合金の結晶粒が、粒界に偏析した Cr粒に囲まれ、互いに分離した多結晶媒体となっている。

微粒子のサイズが小さくなっていくと、磁気ヘッドによって記録された直後は、記録磁区内のすべての粒子の磁化が記録磁界の方向に向いているが、時間とともに各粒の磁化がバラバラな方向に向いていき、記録された情報が保てないという現象が起きてくる。

理想的な遷移線

実際の遷移線

10 nm

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超常磁性限界 現在使われているハードディスク媒体は CoCrP

tB など CoCr系の多結晶媒体である。強磁性のCoCr 合金の結晶粒が偏析した Cr粒に囲まれ、互いに分離した膜構造になっている。

磁気ヘッドによって記録された直後は、磁化が記録磁界の方向に向いているが、微粒子のサイズが小さくその異方性磁気エネルギー KuV (Ku は単位体積あたりの磁気異方性エネルギー、V は粒子の体積 ) が小さくなると、磁化が熱揺らぎ kTによってランダムに配向しようとして減磁するという現象が起きる。これを超常磁性限界と呼んでいる。

Cr CoCr

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熱揺らぎによる減磁現象 実際、 20 Gb/in2 の記

録媒体では、その平均の粒径は 10 nm程度となり、各結晶粒は磁気的に独立に挙動し、記録された情報が保てない。 細江譲:日本応用磁気学会サマースクール27テキスト p.97(2003)

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熱減磁と活性化体積 =KuV/kT>60 で

ないと熱減磁が心配

細江譲: MSJ サマースクール27テキスト p.97(2003)

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熱的安定条件 ハードディスクの寿命の範囲でデータが安定であるため

の最低条件は、 =KuV/kT>60 とされている。 面記録密度 D とすると、粒径 d は D-1/2 に比例するが、

記録される粒子の体積 V はほぼ d3 に比例するので V は Dの増大とともに D-3/2 に比例して減少する。

この減少を補うだけ、磁気異方性 Ku を増大できれば、超常磁性限界を伸ばすことができる。単磁区の微粒子を仮定し、磁化反転が磁化回転によるとすると、保磁力Hcは Hc=2Ku/Ms と書かれるから D3/2 以上の伸びで保磁力を増大すれば救済できるはずである [1]。

しかし、 Hcが 大きすぎると、通常の磁気ヘッドでは記録できなくなってしまう。これを救うのがハイブリッド記録である。[1] T.W. McDaniel and W.A. Challener: Proc. MORIS2002, Trans Magn. Soc. Jpn. 2 (2002) 316.

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AFC( 反強磁性結合 )媒体 AFC 媒体 (antiferromagnetically coupled media) というのは、Ru の超薄膜を介して反強磁性的に結合させた媒体のことで、交換結合によって見掛けの V を増大させて、安定化を図るものである。

富士通では SF(synthetic ferromagnet) 媒体と称する強磁性結合媒体を用いて超常磁性限界の延伸を図っている。

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反強磁性結合 (AFC)媒体の模式図

AFC媒体、SF媒体では、交換結合で見かけのVを増大

Ru 層

CoCrPtB 層

CoCrPtB 層

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超常磁性限界はどこまで伸ばせられるか

このような方法によって超常磁性限界の到来を多少遅らせることはできても、せいぜい500Gbits/in2迄であろうと考えられている。

保磁力を大きくすれば安定性が向上することは確実であるが、磁気ヘッドで書き込めなくなってしまう。ヘッドの飽和磁束密度には限界があるし、ヘッドの寸法の縮小にも限界がある。現行の磁気ヘッドは理論限界の 1/2程度のところにまで到達しており、改善の余地はほとんど残されていない。

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超常磁性の克服 保磁力の大きな媒体にどのようにして記録す

るのかという課題への1つの回答が、パターンドメディアを用いた垂直磁気記録技術であるが、もう1つの回答が熱磁気記録である。

パターンド・メディア 物理的に孤立した粒子が規則的に配列

熱アシスト記録(光・磁気ハイブリッド記録) 記録時に温度を上昇させて Hc を下げ記録。室温

では Hc が増大して熱的に安定になる。

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垂直磁気記録

従来の磁気記録は記録された磁化が媒体の面内にあるので、面内磁気記録と呼ばれる。長手記録とも呼ばれる。高密度になると、1つの磁区の磁化が隣り合う磁区の磁化を減磁するように働く。

これに対し、垂直磁気記録では、隣り合う反平行の磁化は互いに強めあうので、記録が安定。

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熱アシスト記録材料

熱磁気記録に用いられる媒体としては、従来から HDD に用いられてきた CoCr系のグラニュラー媒体を利用する方法と、 MO媒体として使われてきたアモルファス希土類遷移金属合金媒体を用いる方法が考えられる。また、短波長MO材料として検討された Pt/Co 多層膜媒体を用いることも検討されている。いずれにせよ、室温付近で大きな Hc を示し、温度上昇とともに通常の磁気ヘッドで記録できる程度に Hc が減少する媒体が望ましい。

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CoCrPt layer

resist grooveby imprinting

80nm-pitch, 40nm

喜々津氏 (東芝 ) のご好意による

ナノインプリントと自己組織化を利用したパターンドメディア

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光磁気記録 記録: 熱磁気 ( キュリー温度)記録

光を用いてアクセスする磁気記録 再生: 磁気光学効果

磁化に応じた偏光の回転を電気信号に変換 MO, MD に利用 互換性が高い 書き替え耐性高い: 1000万回以上 ドライブが複雑 (偏光光学系と磁気系が必要) MSR, MAMMOS など新現象の有効利用可能

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光磁気媒体

MO ディスクの構造ポリカーボネート基板窒化珪素保護膜・( MO エンハンスメント膜を兼ねる)

MO 記録膜(アモルファス TbFeCo)

Al 反射層landgroove 樹脂

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レーザ光をレンズで集め磁性体を加熱 キュリー温度以上になると磁化を消失 冷却時にコイルからの磁界を受けて記録

光磁気記録 (1)情報の記録

外部磁界 光磁気記録媒体

温度

光スポット

Tc

コイル

M

Tc

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補償温度 (Tcomp) の利用 アモルファス TbFeCo は 一種のフェリ磁性体なので

 補償温度 Tcomp が存在 Tcomp で Hc最大 :

記録磁区安定

光磁気記録 (2)ビットの安定性

T

M TbFeCo

Tcomp

Hc

Mtotal

室温

TcTbFe,Co

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アモルファス R-TM 合金

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光磁気記録 (3)情報の読み出し

磁化に応じた偏光の回転を検出し電気に変換

D1

D2

+

-LD

偏光ビームスプリッタS

N

N

S

N

S

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差動検出器の説明

偏光光

偏光ビームスプリッタ

反射面

透過光

+

-出力

光センサー

光センサー

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MO ドライブ

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2種類の記録方式 光強度変調 (LIM) :現行の MOディスク

電気信号で光を変調 磁界は一定ビット形状は長円形

磁界変調 (MFM) :現行MD, iD-Photo 電気信号で磁界を変調光強度は一定ビット形状は矢羽形

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記録ビットの形状

(a)

(b)

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MSR 方式の図解

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MAMMOS( 磁区拡大再生 )

記録層に書かれた 100 nm程度の磁区から読み出し層に転写する際に磁界によって磁区を直径 600 nm程度に拡大して、レーザ光の有効利用を図り信号強度を稼いでいる

磁界印加記録層

再生・拡大層

(b) レーザ光が照射されると、高温部で記録層から再生層に転写

(c) 磁界の印加により転写された磁区を拡大

逆 磁 界 印加

(d) 逆磁界の印加により転写された磁区を縮小・消滅

レンズ

(a) レーザ光の照射がないと、記録層から再生層に転写されない

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スピン依存トンネル効果とトンネル磁気抵抗効果( TMR )

FM1 I FM2

2つの強磁性体が絶縁体超薄膜を介して接触

FM1 と FM2 のスピンの相対関係

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トンネル磁気抵抗効果 (TMR)

http://www.apph.tohoku.ac.jp/miyazaki-lab/tunnel/TMR.html

http://mswebs.aist-nara.ac.jp/center/LABs/hashizume/keyword/tmr.htm

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TMR デバイス 絶縁体の作製技術

が鍵を握っている。→最近大幅に改善

•TMR ratio as large as 45% was reported. (Parkin: Intermag 99)

•Bias dependence of TMR has been much improved by double tunnel junction. (Inomata: JJAP 36, L1380 (1997))

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TMR を用いた MRAM

ビット線とワード線でアクセス

固定層に電流の作る磁界で記録

トンネル磁気抵抗効果で読出し

構造がシンプル

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MRAM の回路図

鹿野他:第126回日本応用磁気学会研究会資料 p.3-10

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MRAM と他のメモリとの比較SRAM DRAM Flash FRAM MRAM

読出速度 高速 中速 中速 中速 中高速

書込速度 高速 中速 低速 中速 中高速

不揮発性 なし なし あり あり あり

リフレッシュ

不要 要 不要 不要 不要

セルサイズ 大 小 小 中 小

低電圧化 可 限 不可 限 可

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物性工学概論で学んだこと ( 前半 )

第1回  2004.4.13  さまざまな材料の光学現象とその応用第2回  2004.4.20  金属 [1] 2.1金属とは何か 第3回  2004.4.27  金属 [2] 2.2金はなぜ金ぴかか:金属

の色第4回  2004.5.11  半導体と光 [1] 半導体の色休講  2004.5.18第5回  2004.5.25  半導体と光 [2] 光る半導体 , LED第6回  2004.6.1   光電変換:太陽電池のしくみ第7回  2004.6.8 ミニテスト:金属、半導体の光学的性質

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物性工学概論で学んだこと ( 後半 )

第 8 回 2004.6.15 光エレクトロニクス材料 [1] :レーザー第 9 回 2004.6.22 光エレクトロニクス材料 [2] :光ファイバー

通信第 10 回 2004.6.29  光エレクトロニクス材料 [3] :光ディスク、光メモリ

第 11 回 2004.7.6 スピンエレクトロニクス材料 [1] :磁性入門第 12 回 2004.7.13 スピンエレクトロニクス材料 [2] :磁性基礎第 13 回 2004.7.20 スピンエレクトロニクス材料 [3] :磁区、磁

気記録2004. 8.3  期末テスト:光エレクトロニクス材料、スピンエレ

クトロニクス材料

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ご静聴ありがとうございました。

この講義では、これまでに学んだり、これから学ぶさまざまな物理現象が工学としてどのように応用されているかについて概論しました。

この講義が量子力学や材料物理系科目を学習するときの学習意欲のきっかけになれば幸いです。

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期末テストについて 8月 3日 ( 火 ) 1限 講義棟 0023番教室 光エレクトロニクス、スピンエレクトロニク

スから、常識的な知識を問う項目を述べます。授業を聞いていれば、必ずできる問題です。

持ち込み可能なもの:参考書1冊、電卓、 A4 レポート2枚以内(手書きに限る)