Success story for your business Red Hat K.K. EDITORIAL 2016 … · 商用製品のようなライ...

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OPEN EYE 22vol.2016 February

オープンソースの新時代を築く、サクセスストーリー

Success story for your business Red Hat K.K. EDITORIAL 2016

―オープンソースソフトウェア(OSS)がもたらす企業の変革とは

 今やITは、企業活動において必要不可欠なインフラとなり

ました。それは単に業務効率化を支援するものというだけでなく、画期的なビジネスモデルを生み出す、あるいはビジネスモデルを変革するドライバーとして活用されるようになってきています。 たとえば、移動したい個人と車の所有者をマッチングするUber(ウーバー)や“民泊”に市民権を与えたairbnb(エアー

ビーアンドビー)などのサービスは、既存のタクシー業界や宿泊業界の存在そのものを脅かすまでに急成長してきています。こうした破壊的なビジネスモデルを支えているものこそがITであり、さらに現在、先進的なユーザー企業ではOSSを採用してより速く、より低廉に、高品質な情報システムを作り上げ活用する、という動きが強まっています。皆様のビジネスモデル変革を支える“Enabler(=陰の立役者)”としてのOSSの存在感が、ことさら大きくなってきていると言えます。 言うまでもなくOSSは、特定ベンダーの思惑で作られたも

のではなく、ユーザーコミュニティから、ユーザー自身の手によって生み出されるソフトウェアです。盛り込まれる機能もすべてユーザー視点に根ざしたものであり、常に進化を続けています。商用製品のようなライセンス料も必要ありません。 今ではこうしたOSSの有用性が、お客様企業の間でも広く認知されるようになってきています。ITコストの最適化や基幹システムの機能補完という傾向の強かった従来の利用用途から、OSSの高品質な機能そのものを使いたい、あるいはOSSを採用してシステム導入のスピードを上げ、環境変化に柔軟に対

応できるようにしたい、というご要望が増えてきています。 レッドハットは20年以上にわたり、OSSを企業システムの中で使いやすくすることを考え続けてきた会社です。OSSの注目度が上がるとともにお客様からのレッドハットに対するご期待も高まり、我々がお役に立てる場面がさらに広がってきていることを強く実感しています。

―事業成長を遂げた2016年度の総括

 レッドハットは、2016年度も前年に引き続き堅調な成長を続けています。米国本社における第3四半期(2015年9月~11月)の売上高は対前年同期比で15%増となり、2003年度以降、55四半期連続となる事業成長を達成してきています。日本市場においても同様に推移しており、これもひとえにお客様、パートナー企業の皆様のお力添えあっての賜物だと心より感謝しております。 レッドハットでは3年前から、「クラウド/モバイル」「ビッグデータ&IoT」「データセンターの刷新」という3つのソリューションエリアに焦点を当てて事業を展開してきていま

す。2016年度の総括としては、まずクラウド/モバイル事業でOpenStackのビジネス(=Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform)が順調に伸び、売上は対前年比で60~70%増と勢いある成長を遂げることができました。官公庁や製造業のお客様を中心に多くの業種で採用いただいており、評価期からいよいよ導入期が到来、2017年度以降は普及に入ると予想しています。またクラウド認定サービスプロバイダーの拡充も図り、国内では既に40社のクラウドプロバイダーとパートナー契約を締結しています。2015年11月にはマイクロソフトもパートナーに加わり、パブリッククラウドサービスであるMicrosoft Azureの基盤としてRed Hat Enterprise Linux(RHEL)をご利用いただけるようになりました。最終的には、300社との協業体制を築きたいと考えています。 さらに昨年は、クラウド/モバイル分野の製品として、Dockerアプリケーションのシステム基盤となる次世代PaaS製品 OpenStack Enterprise 3と、モバイルアプリケーションの基盤となるRed Hat Mobile Applicat ion Platformを発表、国内での提供を開始しました。製品ラインナップを充実させたことで、我々がお客様にご提案できるソリューションの幅も大きく広がったと自負しております。 2つめのビッグデータ&IoT事業では、レッドハットのソリューションフレームワークである“リアルタイムビッグデータシステム”を導入したビッグデータ分析の事例が出てきています。IoT事業基盤の構築も進めており、組み込みデバイスに搭載するテクノロジーをプロモーションしていくための“組み込みディストリビューターパートナー制度”の実施も発表しました。さらにビッグ

データを保管する器として、我々のSDS(Software Defined Storage)製品であるRed Hat Gluster Storageをご採用いただく事例も出てきており、着々と実績を積み重ねています。 そして3つめ、データセンターの刷新に関しては、お客様のなかでメインフレーム環境のオープン化が進んでいます。アプリケーションのモダナイゼーションを進めるという観点からも、中央官公庁や通信業のお客様を中心にRed Hat JBoss Middlewareの採用が加速しており、特にビジネスルールエンジンのRed Hat JBoss BRMSについては、引き続き市場シェアトップ(35.1%)の位置を堅持しています(※注1)。

―OSSへのコミットメントの目的とは

 先にも述べた通り、現在のOSSはお客様企業のビジネスモデル変革を支えるEnablerとしての役割が強くなってきています。従来のようなUNIXの代替品としてのLinuxといった位置付けではなく、OpenStackやHadoopなどに代表される

ような、ビジネスイノベーションを起こすためのトレンドに変わってきているのです。実際、グローバルにおけるOSSプロジェクトの数は、2007年の約10万件から2015年には100万件以上に伸びているという報告(※注2)があり、さらに現在のOSSの重要性を物語っているのが、グローバル企業の66%が、何らかのITプロジェクトに着手する際にまずOSSを検討するというデータ(※注3)です。特に堅牢なセキュリティや開発容易性、スケール拡張への対応力、競争力のある特徴的な機能などの領域でOSSが期待されており、既にIT環境においてOSSは“デファクトスタンダード”になったと言えると思います。

 OSSのリーディングカンパニーを自認するレッドハットは5,000以上のOSSプロジェクトに参加し、OSだけでなくミドルウェアやコンテナ技術、クラウドおよび仮想化、ストレージに至るさまざまなテクノロジー領域に経営資源を投入して、OSSの品質向上と利用促進の増加に貢献するために鋭意尽力しています。

OSSはユーザー企業のビジネスモデル変革を支える“Enabler(=陰の立役者)”として、大きく存在感を増している

 2015年11月、レッドハットでは代表取締役社長に望月弘一(もちづき ひろかず)が就任いたしました。今回は、望月から就任のご挨拶をさせていただくとともに、今春スタートする新年度に向けて、昨年度の総括ならびに新年度の抱負をご紹介させていただきます。

―さらなるイノベーションに貢献する2017年度への取り組み

 現在IT業界では、調査会社のガートナーが提唱する“バイモーダル(=2つの流儀)”というIT利用の在り方に注目が集まっています。ミッションクリティカルな領域を対象としたシステムの安定性や堅牢性を重視する従来型のIT利用(モード1)と、柔軟性や機敏性を重視する革命を導くためのIT利用(モード2)です。 レッドハットでは、これまでもこの2つの視点から製品ポートフォリオを拡充してきましたが、2017年度も引き続き、OSに加えてソフトウェアインフラ、ストレージ、ミドルウェア、PaaS&モバイル、統合管理プラットフォームという6つのレイヤーの製品ラインナップを充実させていく予定です。さらにお客様のビジネスイノベーションを実現するためのITアドバイザーとして、コアコンピタンスであるRHELとコンテナ技術をベースに、クラウド、ITマネジメント、アプリケーションプラットフォームという大きな3つの柱を育ててまいります。OSSを活用した包括的なソリューションをご提供することで、お客様にとってなくてはならないパートナーとしてアピールできる機能と体制を具備していくことを目指します。 RHELとコンテナ技術の領域では、既に1,000社を超える販売パートナー様が存在しますが、今後も各社との協業体制を第一義に据え、モード1に相当する物理/仮想環境に関わるパートナーシップだけでなく、モード2でもパブリック/プライベート各々のクラウド領域でパートナーシップを拡充していく予定です。パブリッククラウド関連ではCCSP(認定クラウド&サービスプロバイダー)制度を設け、既に40社以上のパートナー企業様にご参加いただいており、プライベートクラウド関

連でも、OpenStackアライアンスパートナーとして約30社様に参画いただいています。先の3つの柱については、プリセールスエンジニアやコンサルタントも増員して、引き続きOSSの価値訴求に注力し、3年後には3本柱の売上比率を50%に近づけるよう拡大していく予定です。

―レッドハットを次のステップへ導く方策とは

 私は現職以前、約5年にわたってシステムインテグレーターに身を置いていました。その時代に頻繁に耳にしたのが、“特定のベンダーに囲い込まれてしまう”ことに対するお客様の危機感でした。ボリュームディスカウントによってイニシャルコストは抑えられるが、以後ベンダーのシナリオ通りに動かざるを得なくなる。お客様にはこうしたジレンマが常に付きまとい、ベンダーロックインに対する警戒感が生まれていたのです。 元来、日本企業は自分たちでシステムを解きほぐし、最適なITを組み合わせてインテグレーションしていくだけの能力を持ち合わせていました。しかしシステム環境が複雑になるにつれて状況が変わり、結果的にベンダーが全面に立つようになったのです。かつての私はシステムインテグレーターとして、ベンダーによってブラックボックス化したシステム環境を“ホワイトボックス化”することに尽力していました。この動きはかなり異質だったと思いますが、お客様のことを第一に考えれば、ごく当たり前の対応だったと考えています。 私はこの姿勢をレッドハットにも広く根付かせたいと考え、2016年、お客様第一主義を原

点とする“Client as the center of universe”をモットーに掲げました。そしてこのお客様第一主義に基いて、4つのバリューをご提供していくことを目指します。まず、OSSを利用してフレキシブルかつアジャイルなIT環境を構築すること。次に、構築したIT環境のマネジメントを自動化/簡素化すること、それによって業務をより効率的かつ柔軟に遂行できる環境を作ること。そして最終的に、お客様の革新的なビジネスモデルの実行をご支援することです。

―培われた経験を生かして働く環境の整備を進める

 私はこれまでのキャリアで、米国やアジア太平洋地域など、言葉や文化の異なる海外で仕事に従事したり、また必ずしも自分の専門ではない事業領域を担当したことがあります。その中で強く感じたのは、個々人の持つ能力やノウハウを持ち寄り、皆で力を合わせて“Oneチーム”として動くことができれば、困難なミッションも成し遂げられるということです。 米国レッドハット 社長 兼 CEO のジム・ホワイトハーストも自身の著書で述べていますが、レッドハットの経営の真髄は“Open Organization”、すなわちオープンで参加型の組織であるという点です。必ずしもトップダウンではなく、皆でアイデアを共有し、透明性のある意思決定を行う。単なる多数決ではなく皆で十分に議論を交わ

しながら、皆の情熱に火をつけ、エンゲージメントを構築していくことが重要なのです。 ただしそのためには、関係するメンバー全員が同じ目的を共有していなければなりません。My StrategyをOur strategyにする、そのためには徹底的なディスカッションが必要です。その過程を通じて、同じ目的を持ったメンバー全員が本気になれば、組織として、企業としてできないことはほぼありません。私はお客様と同様に、レッドハットの社員に対しても真摯に向き合っていきたい。皆が誇りを持ち、達成感を感じられる職場環境を整備していきたいと考えています。 レッドハットの使命は、OSSによって技術革新を目指すお客様、OSSコミュニティの開発者の皆様、そしてパートナー企業の皆様の懸け橋となることです。3月から始まる2017年度もこの思いを胸に、全社一丸となって精進していきたいと思います。

INDEX

オープンソースソフトウェアによる包括的なソリューションで、お客様のビジネスイノベーションに大きく貢献したい

トップ

インタビューTop Interview

就任のご挨拶:レッドハット株式会社 代表取締役社長 望月 弘一トップインタビュー Top Interview

望月 弘一レッドハット株式会社 代表取締役社長

“利用者目線”をベースにITを活用し、社外とも連携してイノベーションを加速せよ!ユーザー事例 Success Story 株式会社大和総研

需要創造の源泉は“お客様起点”、顧客ニーズを掌握して真のITソリューションの提供をユーザー事例 Success Story パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社

○レッドハット 最新レポート Microsoft® とRed Hatの連携がハイブリッドクラウドを加速する!

66%のグローバル企業は、オープンソースが最初の選択肢

SECURITYセキュリティ

EASE OF DEPLOYMENT開発の容易性

ABILITY TO SCALEスケール拡張への対応力

COMPETITIVE FEATURES競争力のある特徴的な機能

55%

43%

58%

43%

▼ OSSに期待するテクノロジーイノベーション

2 OPEN EYE

Success story for your business

―オープンソースソフトウェア(OSS)がもたらす企業の変革とは

 今やITは、企業活動において必要不可欠なインフラとなり

ました。それは単に業務効率化を支援するものというだけでなく、画期的なビジネスモデルを生み出す、あるいはビジネスモデルを変革するドライバーとして活用されるようになってきています。 たとえば、移動したい個人と車の所有者をマッチングするUber(ウーバー)や“民泊”に市民権を与えたairbnb(エアー

ビーアンドビー)などのサービスは、既存のタクシー業界や宿泊業界の存在そのものを脅かすまでに急成長してきています。こうした破壊的なビジネスモデルを支えているものこそがITであり、さらに現在、先進的なユーザー企業ではOSSを採用してより速く、より低廉に、高品質な情報システムを作り上げ活用する、という動きが強まっています。皆様のビジネスモデル変革を支える“Enabler(=陰の立役者)”としてのOSSの存在感が、ことさら大きくなってきていると言えます。 言うまでもなくOSSは、特定ベンダーの思惑で作られたも

のではなく、ユーザーコミュニティから、ユーザー自身の手によって生み出されるソフトウェアです。盛り込まれる機能もすべてユーザー視点に根ざしたものであり、常に進化を続けています。商用製品のようなライセンス料も必要ありません。 今ではこうしたOSSの有用性が、お客様企業の間でも広く認知されるようになってきています。ITコストの最適化や基幹システムの機能補完という傾向の強かった従来の利用用途から、OSSの高品質な機能そのものを使いたい、あるいはOSSを採用してシステム導入のスピードを上げ、環境変化に柔軟に対

応できるようにしたい、というご要望が増えてきています。 レッドハットは20年以上にわたり、OSSを企業システムの中で使いやすくすることを考え続けてきた会社です。OSSの注目度が上がるとともにお客様からのレッドハットに対するご期待も高まり、我々がお役に立てる場面がさらに広がってきていることを強く実感しています。

―事業成長を遂げた2016年度の総括

 レッドハットは、2016年度も前年に引き続き堅調な成長を続けています。米国本社における第3四半期(2015年9月~11月)の売上高は対前年同期比で15%増となり、2003年度以降、55四半期連続となる事業成長を達成してきています。日本市場においても同様に推移しており、これもひとえにお客様、パートナー企業の皆様のお力添えあっての賜物だと心より感謝しております。 レッドハットでは3年前から、「クラウド/モバイル」「ビッグデータ&IoT」「データセンターの刷新」という3つのソリューションエリアに焦点を当てて事業を展開してきていま

す。2016年度の総括としては、まずクラウド/モバイル事業でOpenStackのビジネス(=Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform)が順調に伸び、売上は対前年比で60~70%増と勢いある成長を遂げることができました。官公庁や製造業のお客様を中心に多くの業種で採用いただいており、評価期からいよいよ導入期が到来、2017年度以降は普及に入ると予想しています。またクラウド認定サービスプロバイダーの拡充も図り、国内では既に40社のクラウドプロバイダーとパートナー契約を締結しています。2015年11月にはマイクロソフトもパートナーに加わり、パブリッククラウドサービスであるMicrosoft Azureの基盤としてRed Hat Enterprise Linux(RHEL)をご利用いただけるようになりました。最終的には、300社との協業体制を築きたいと考えています。 さらに昨年は、クラウド/モバイル分野の製品として、Dockerアプリケーションのシステム基盤となる次世代PaaS製品 OpenStack Enterprise 3と、モバイルアプリケーションの基盤となるRed Hat Mobile Applicat ion Platformを発表、国内での提供を開始しました。製品ラインナップを充実させたことで、我々がお客様にご提案できるソリューションの幅も大きく広がったと自負しております。 2つめのビッグデータ&IoT事業では、レッドハットのソリューションフレームワークである“リアルタイムビッグデータシステム”を導入したビッグデータ分析の事例が出てきています。IoT事業基盤の構築も進めており、組み込みデバイスに搭載するテクノロジーをプロモーションしていくための“組み込みディストリビューターパートナー制度”の実施も発表しました。さらにビッグ

データを保管する器として、我々のSDS(Software Defined Storage)製品であるRed Hat Gluster Storageをご採用いただく事例も出てきており、着々と実績を積み重ねています。 そして3つめ、データセンターの刷新に関しては、お客様のなかでメインフレーム環境のオープン化が進んでいます。アプリケーションのモダナイゼーションを進めるという観点からも、中央官公庁や通信業のお客様を中心にRed Hat JBoss Middlewareの採用が加速しており、特にビジネスルールエンジンのRed Hat JBoss BRMSについては、引き続き市場シェアトップ(35.1%)の位置を堅持しています(※注1)。

―OSSへのコミットメントの目的とは

 先にも述べた通り、現在のOSSはお客様企業のビジネスモデル変革を支えるEnablerとしての役割が強くなってきています。従来のようなUNIXの代替品としてのLinuxといった位置付けではなく、OpenStackやHadoopなどに代表される

ような、ビジネスイノベーションを起こすためのトレンドに変わってきているのです。実際、グローバルにおけるOSSプロジェクトの数は、2007年の約10万件から2015年には100万件以上に伸びているという報告(※注2)があり、さらに現在のOSSの重要性を物語っているのが、グローバル企業の66%が、何らかのITプロジェクトに着手する際にまずOSSを検討するというデータ(※注3)です。特に堅牢なセキュリティや開発容易性、スケール拡張への対応力、競争力のある特徴的な機能などの領域でOSSが期待されており、既にIT環境においてOSSは“デファクトスタンダード”になったと言えると思います。

 OSSのリーディングカンパニーを自認するレッドハットは5,000以上のOSSプロジェクトに参加し、OSだけでなくミドルウェアやコンテナ技術、クラウドおよび仮想化、ストレージに至るさまざまなテクノロジー領域に経営資源を投入して、OSSの品質向上と利用促進の増加に貢献するために鋭意尽力しています。

―さらなるイノベーションに貢献する2017年度への取り組み

 現在IT業界では、調査会社のガートナーが提唱する“バイモーダル(=2つの流儀)”というIT利用の在り方に注目が集まっています。ミッションクリティカルな領域を対象としたシステムの安定性や堅牢性を重視する従来型のIT利用(モード1)と、柔軟性や機敏性を重視する革命を導くためのIT利用(モード2)です。 レッドハットでは、これまでもこの2つの視点から製品ポートフォリオを拡充してきましたが、2017年度も引き続き、OSに加えてソフトウェアインフラ、ストレージ、ミドルウェア、PaaS&モバイル、統合管理プラットフォームという6つのレイヤーの製品ラインナップを充実させていく予定です。さらにお客様のビジネスイノベーションを実現するためのITアドバイザーとして、コアコンピタンスであるRHELとコンテナ技術をベースに、クラウド、ITマネジメント、アプリケーションプラットフォームという大きな3つの柱を育ててまいります。OSSを活用した包括的なソリューションをご提供することで、お客様にとってなくてはならないパートナーとしてアピールできる機能と体制を具備していくことを目指します。 RHELとコンテナ技術の領域では、既に1,000社を超える販売パートナー様が存在しますが、今後も各社との協業体制を第一義に据え、モード1に相当する物理/仮想環境に関わるパートナーシップだけでなく、モード2でもパブリック/プライベート各々のクラウド領域でパートナーシップを拡充していく予定です。パブリッククラウド関連ではCCSP(認定クラウド&サービスプロバイダー)制度を設け、既に40社以上のパートナー企業様にご参加いただいており、プライベートクラウド関

連でも、OpenStackアライアンスパートナーとして約30社様に参画いただいています。先の3つの柱については、プリセールスエンジニアやコンサルタントも増員して、引き続きOSSの価値訴求に注力し、3年後には3本柱の売上比率を50%に近づけるよう拡大していく予定です。

―レッドハットを次のステップへ導く方策とは

 私は現職以前、約5年にわたってシステムインテグレーターに身を置いていました。その時代に頻繁に耳にしたのが、“特定のベンダーに囲い込まれてしまう”ことに対するお客様の危機感でした。ボリュームディスカウントによってイニシャルコストは抑えられるが、以後ベンダーのシナリオ通りに動かざるを得なくなる。お客様にはこうしたジレンマが常に付きまとい、ベンダーロックインに対する警戒感が生まれていたのです。 元来、日本企業は自分たちでシステムを解きほぐし、最適なITを組み合わせてインテグレーションしていくだけの能力を持ち合わせていました。しかしシステム環境が複雑になるにつれて状況が変わり、結果的にベンダーが全面に立つようになったのです。かつての私はシステムインテグレーターとして、ベンダーによってブラックボックス化したシステム環境を“ホワイトボックス化”することに尽力していました。この動きはかなり異質だったと思いますが、お客様のことを第一に考えれば、ごく当たり前の対応だったと考えています。 私はこの姿勢をレッドハットにも広く根付かせたいと考え、2016年、お客様第一主義を原

点とする“Client as the center of universe”をモットーに掲げました。そしてこのお客様第一主義に基いて、4つのバリューをご提供していくことを目指します。まず、OSSを利用してフレキシブルかつアジャイルなIT環境を構築すること。次に、構築したIT環境のマネジメントを自動化/簡素化すること、それによって業務をより効率的かつ柔軟に遂行できる環境を作ること。そして最終的に、お客様の革新的なビジネスモデルの実行をご支援することです。

―培われた経験を生かして働く環境の整備を進める

 私はこれまでのキャリアで、米国やアジア太平洋地域など、言葉や文化の異なる海外で仕事に従事したり、また必ずしも自分の専門ではない事業領域を担当したことがあります。その中で強く感じたのは、個々人の持つ能力やノウハウを持ち寄り、皆で力を合わせて“Oneチーム”として動くことができれば、困難なミッションも成し遂げられるということです。 米国レッドハット 社長 兼 CEO のジム・ホワイトハーストも自身の著書で述べていますが、レッドハットの経営の真髄は“Open Organization”、すなわちオープンで参加型の組織であるという点です。必ずしもトップダウンではなく、皆でアイデアを共有し、透明性のある意思決定を行う。単なる多数決ではなく皆で十分に議論を交わ

しながら、皆の情熱に火をつけ、エンゲージメントを構築していくことが重要なのです。 ただしそのためには、関係するメンバー全員が同じ目的を共有していなければなりません。My StrategyをOur strategyにする、そのためには徹底的なディスカッションが必要です。その過程を通じて、同じ目的を持ったメンバー全員が本気になれば、組織として、企業としてできないことはほぼありません。私はお客様と同様に、レッドハットの社員に対しても真摯に向き合っていきたい。皆が誇りを持ち、達成感を感じられる職場環境を整備していきたいと考えています。 レッドハットの使命は、OSSによって技術革新を目指すお客様、OSSコミュニティの開発者の皆様、そしてパートナー企業の皆様の懸け橋となることです。3月から始まる2017年度もこの思いを胸に、全社一丸となって精進していきたいと思います。

グローバル企業の半数以上がITプロジェクトでまずOSSを検討する。OSSは既に“デファクトスタンダード”になった

プロフィール望月弘一(もちづき ひろかず)レッドハット株式会社 代表取締役社長

レッドハットはさまざまなテクノロジー領域に経営資源を投入して、OSSの品質向上と利用促進に貢献する

1986年 日本アイ・ビー・エム入社、2007年グローバル・ファイナンシング事業部長兼執行役員に就任2010年 ディメンションデータジャパン 代表取締役社長に就任、2015年まで同社の日本事業を統括2015年11月より現職

OPEN EYE 3

Red Hat K.K. EDITORIAL 2016

―オープンソースソフトウェア(OSS)がもたらす企業の変革とは

 今やITは、企業活動において必要不可欠なインフラとなり

ました。それは単に業務効率化を支援するものというだけでなく、画期的なビジネスモデルを生み出す、あるいはビジネスモデルを変革するドライバーとして活用されるようになってきています。 たとえば、移動したい個人と車の所有者をマッチングするUber(ウーバー)や“民泊”に市民権を与えたairbnb(エアー

ビーアンドビー)などのサービスは、既存のタクシー業界や宿泊業界の存在そのものを脅かすまでに急成長してきています。こうした破壊的なビジネスモデルを支えているものこそがITであり、さらに現在、先進的なユーザー企業ではOSSを採用してより速く、より低廉に、高品質な情報システムを作り上げ活用する、という動きが強まっています。皆様のビジネスモデル変革を支える“Enabler(=陰の立役者)”としてのOSSの存在感が、ことさら大きくなってきていると言えます。 言うまでもなくOSSは、特定ベンダーの思惑で作られたも

のではなく、ユーザーコミュニティから、ユーザー自身の手によって生み出されるソフトウェアです。盛り込まれる機能もすべてユーザー視点に根ざしたものであり、常に進化を続けています。商用製品のようなライセンス料も必要ありません。 今ではこうしたOSSの有用性が、お客様企業の間でも広く認知されるようになってきています。ITコストの最適化や基幹システムの機能補完という傾向の強かった従来の利用用途から、OSSの高品質な機能そのものを使いたい、あるいはOSSを採用してシステム導入のスピードを上げ、環境変化に柔軟に対

応できるようにしたい、というご要望が増えてきています。 レッドハットは20年以上にわたり、OSSを企業システムの中で使いやすくすることを考え続けてきた会社です。OSSの注目度が上がるとともにお客様からのレッドハットに対するご期待も高まり、我々がお役に立てる場面がさらに広がってきていることを強く実感しています。

―事業成長を遂げた2016年度の総括

 レッドハットは、2016年度も前年に引き続き堅調な成長を続けています。米国本社における第3四半期(2015年9月~11月)の売上高は対前年同期比で15%増となり、2003年度以降、55四半期連続となる事業成長を達成してきています。日本市場においても同様に推移しており、これもひとえにお客様、パートナー企業の皆様のお力添えあっての賜物だと心より感謝しております。 レッドハットでは3年前から、「クラウド/モバイル」「ビッグデータ&IoT」「データセンターの刷新」という3つのソリューションエリアに焦点を当てて事業を展開してきていま

す。2016年度の総括としては、まずクラウド/モバイル事業でOpenStackのビジネス(=Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform)が順調に伸び、売上は対前年比で60~70%増と勢いある成長を遂げることができました。官公庁や製造業のお客様を中心に多くの業種で採用いただいており、評価期からいよいよ導入期が到来、2017年度以降は普及に入ると予想しています。またクラウド認定サービスプロバイダーの拡充も図り、国内では既に40社のクラウドプロバイダーとパートナー契約を締結しています。2015年11月にはマイクロソフトもパートナーに加わり、パブリッククラウドサービスであるMicrosoft Azureの基盤としてRed Hat Enterprise Linux(RHEL)をご利用いただけるようになりました。最終的には、300社との協業体制を築きたいと考えています。 さらに昨年は、クラウド/モバイル分野の製品として、Dockerアプリケーションのシステム基盤となる次世代PaaS製品 OpenStack Enterprise 3と、モバイルアプリケーションの基盤となるRed Hat Mobile Applicat ion Platformを発表、国内での提供を開始しました。製品ラインナップを充実させたことで、我々がお客様にご提案できるソリューションの幅も大きく広がったと自負しております。 2つめのビッグデータ&IoT事業では、レッドハットのソリューションフレームワークである“リアルタイムビッグデータシステム”を導入したビッグデータ分析の事例が出てきています。IoT事業基盤の構築も進めており、組み込みデバイスに搭載するテクノロジーをプロモーションしていくための“組み込みディストリビューターパートナー制度”の実施も発表しました。さらにビッグ

データを保管する器として、我々のSDS(Software Defined Storage)製品であるRed Hat Gluster Storageをご採用いただく事例も出てきており、着々と実績を積み重ねています。 そして3つめ、データセンターの刷新に関しては、お客様のなかでメインフレーム環境のオープン化が進んでいます。アプリケーションのモダナイゼーションを進めるという観点からも、中央官公庁や通信業のお客様を中心にRed Hat JBoss Middlewareの採用が加速しており、特にビジネスルールエンジンのRed Hat JBoss BRMSについては、引き続き市場シェアトップ(35.1%)の位置を堅持しています(※注1)。

―OSSへのコミットメントの目的とは

 先にも述べた通り、現在のOSSはお客様企業のビジネスモデル変革を支えるEnablerとしての役割が強くなってきています。従来のようなUNIXの代替品としてのLinuxといった位置付けではなく、OpenStackやHadoopなどに代表される

ような、ビジネスイノベーションを起こすためのトレンドに変わってきているのです。実際、グローバルにおけるOSSプロジェクトの数は、2007年の約10万件から2015年には100万件以上に伸びているという報告(※注2)があり、さらに現在のOSSの重要性を物語っているのが、グローバル企業の66%が、何らかのITプロジェクトに着手する際にまずOSSを検討するというデータ(※注3)です。特に堅牢なセキュリティや開発容易性、スケール拡張への対応力、競争力のある特徴的な機能などの領域でOSSが期待されており、既にIT環境においてOSSは“デファクトスタンダード”になったと言えると思います。

 OSSのリーディングカンパニーを自認するレッドハットは5,000以上のOSSプロジェクトに参加し、OSだけでなくミドルウェアやコンテナ技術、クラウドおよび仮想化、ストレージに至るさまざまなテクノロジー領域に経営資源を投入して、OSSの品質向上と利用促進の増加に貢献するために鋭意尽力しています。

―さらなるイノベーションに貢献する2017年度への取り組み

 現在IT業界では、調査会社のガートナーが提唱する“バイモーダル(=2つの流儀)”というIT利用の在り方に注目が集まっています。ミッションクリティカルな領域を対象としたシステムの安定性や堅牢性を重視する従来型のIT利用(モード1)と、柔軟性や機敏性を重視する革命を導くためのIT利用(モード2)です。 レッドハットでは、これまでもこの2つの視点から製品ポートフォリオを拡充してきましたが、2017年度も引き続き、OSに加えてソフトウェアインフラ、ストレージ、ミドルウェア、PaaS&モバイル、統合管理プラットフォームという6つのレイヤーの製品ラインナップを充実させていく予定です。さらにお客様のビジネスイノベーションを実現するためのITアドバイザーとして、コアコンピタンスであるRHELとコンテナ技術をベースに、クラウド、ITマネジメント、アプリケーションプラットフォームという大きな3つの柱を育ててまいります。OSSを活用した包括的なソリューションをご提供することで、お客様にとってなくてはならないパートナーとしてアピールできる機能と体制を具備していくことを目指します。 RHELとコンテナ技術の領域では、既に1,000社を超える販売パートナー様が存在しますが、今後も各社との協業体制を第一義に据え、モード1に相当する物理/仮想環境に関わるパートナーシップだけでなく、モード2でもパブリック/プライベート各々のクラウド領域でパートナーシップを拡充していく予定です。パブリッククラウド関連ではCCSP(認定クラウド&サービスプロバイダー)制度を設け、既に40社以上のパートナー企業様にご参加いただいており、プライベートクラウド関

連でも、OpenStackアライアンスパートナーとして約30社様に参画いただいています。先の3つの柱については、プリセールスエンジニアやコンサルタントも増員して、引き続きOSSの価値訴求に注力し、3年後には3本柱の売上比率を50%に近づけるよう拡大していく予定です。

―レッドハットを次のステップへ導く方策とは

 私は現職以前、約5年にわたってシステムインテグレーターに身を置いていました。その時代に頻繁に耳にしたのが、“特定のベンダーに囲い込まれてしまう”ことに対するお客様の危機感でした。ボリュームディスカウントによってイニシャルコストは抑えられるが、以後ベンダーのシナリオ通りに動かざるを得なくなる。お客様にはこうしたジレンマが常に付きまとい、ベンダーロックインに対する警戒感が生まれていたのです。 元来、日本企業は自分たちでシステムを解きほぐし、最適なITを組み合わせてインテグレーションしていくだけの能力を持ち合わせていました。しかしシステム環境が複雑になるにつれて状況が変わり、結果的にベンダーが全面に立つようになったのです。かつての私はシステムインテグレーターとして、ベンダーによってブラックボックス化したシステム環境を“ホワイトボックス化”することに尽力していました。この動きはかなり異質だったと思いますが、お客様のことを第一に考えれば、ごく当たり前の対応だったと考えています。 私はこの姿勢をレッドハットにも広く根付かせたいと考え、2016年、お客様第一主義を原

点とする“Client as the center of universe”をモットーに掲げました。そしてこのお客様第一主義に基いて、4つのバリューをご提供していくことを目指します。まず、OSSを利用してフレキシブルかつアジャイルなIT環境を構築すること。次に、構築したIT環境のマネジメントを自動化/簡素化すること、それによって業務をより効率的かつ柔軟に遂行できる環境を作ること。そして最終的に、お客様の革新的なビジネスモデルの実行をご支援することです。

―培われた経験を生かして働く環境の整備を進める

 私はこれまでのキャリアで、米国やアジア太平洋地域など、言葉や文化の異なる海外で仕事に従事したり、また必ずしも自分の専門ではない事業領域を担当したことがあります。その中で強く感じたのは、個々人の持つ能力やノウハウを持ち寄り、皆で力を合わせて“Oneチーム”として動くことができれば、困難なミッションも成し遂げられるということです。 米国レッドハット 社長 兼 CEO のジム・ホワイトハーストも自身の著書で述べていますが、レッドハットの経営の真髄は“Open Organization”、すなわちオープンで参加型の組織であるという点です。必ずしもトップダウンではなく、皆でアイデアを共有し、透明性のある意思決定を行う。単なる多数決ではなく皆で十分に議論を交わ

しながら、皆の情熱に火をつけ、エンゲージメントを構築していくことが重要なのです。 ただしそのためには、関係するメンバー全員が同じ目的を共有していなければなりません。My StrategyをOur strategyにする、そのためには徹底的なディスカッションが必要です。その過程を通じて、同じ目的を持ったメンバー全員が本気になれば、組織として、企業としてできないことはほぼありません。私はお客様と同様に、レッドハットの社員に対しても真摯に向き合っていきたい。皆が誇りを持ち、達成感を感じられる職場環境を整備していきたいと考えています。 レッドハットの使命は、OSSによって技術革新を目指すお客様、OSSコミュニティの開発者の皆様、そしてパートナー企業の皆様の懸け橋となることです。3月から始まる2017年度もこの思いを胸に、全社一丸となって精進していきたいと思います。

RHELとコンテナ技術をベースにクラウド、ITマネジメント、アプリケーションプラットフォームの3本柱を育てていく

*注1 : 株式会社アイ・ティー・アール 2015年12月発行「システム連携/統合ミドルウェア市場 2015 国内BRMS市場動向」 ベンダー別売上金額シェア(2013年~2015年度 予測)*注2,3 : 2015 Future of Open Source Survey Results from Black Duck Software - https://www.blackducksoftware.com/future-of-open-source

エンタープライズ向けにオープンソースによる包括的なソリューションを提供

お客様のビジネスイノベーションに貢献

CloudBusiness

(競争の源泉:コアコンピタンス)Red Hat Enterprise Linux + コンテナテクノロジー

オープンソースによる、プロダクト&ソリューションの提供

ITManagement

Business

ApplicationPlatformBusiness

お客様のビジネスイノベーションに貢献

CloudBusiness

(競争の源泉:コアコンピタンス)Red Hat Enterprise Linux + コンテナテクノロジー

ITManagement

Business

ApplicationPlatformBusiness

次世代ITマネジメント&自動化● コンテナ技術を活用したアプリケーション管理の自動化● サーバー構成管理の自動化● サーバー環境の自動診断&分析

業務をより効率的に、柔軟に● ビジネスディシジョンサービス

● リソースの最適化● ビジネスプロセスの自動化、可視化

革新的なビジネスモデルの実行支援● リアルタイムビジネスで企業収益に貢献

● 大容量クラウドストレージ● 知的なIoTブローカー蓄積と知的解析、実行

● IoT組み込み機器ビジネス● スマートメーター、家電、

スマート機器

柔軟、迅速、革新的なIT環境● ハイブリッドクラウド管理● 毎日更新できるビジネスシステム環境● モバイルの活用によるビジネス生産性向上 &お客様の満足度向上

▼ 2017年度 事業ポートフォリオ ▼ 2017年度 お客様に提供するバリュー

“利用者目線”をベースにITを活用し、社外とも連携してイノベーションを加速せよ!

 厳しさを増す経営環境の元、今あらゆる企業に求められているのがイノベーションだ。既に起きているイノベーションに対応し、自らもイノベーションを起こす。そこでは、ITの果たすべき役割もより重要となる。今後、日本企業はどのような視点でITを活用すべきなのか。株式会社大和総研/株式会社大和総研ビジネス・イノベーション 代表取締役副社長の鈴木孝一氏に伺った。

―昨今、ユーザー企業ではイノベーションの必要性が叫ばれています。単なる業務改善ではなく、なぜ今イノベーションに注目が集まっているのでしょうか。

 それを考える前にまず、“イノベーションとは何か”をはっきりさせる必要があります。私自身はイノベーションを、“これまで、さまざまな制約から利用できなかった人、あるいは無縁だと思われた人までが、その利便性の恩恵に預かれるよ

うな道具やサービスの創作”だと捉えています。 身近な例として、スマートフォンのカメラ機能が挙げられるでしょう。かつて写真はフィルムカメラで撮影し、現像する必要がありました。皆で共有するためには焼き増ししなければならない。それが今では、スマートフォンでいつでもどこでも、簡単に綺麗な写真を撮ることができるようになりました。SNSを使えば、すぐに家族や友人とも共有できます。今までカメラには縁遠かった人までが、“写真がメモ代わりになる”という便利な使い方を知り、利用するようになっています。 これまで身近に存在しなかった、使うためにはお金や手間がかかる、あるいは“そんな使い方は考えもしなかった”というものが身近になり、手頃な価格で利用できるようになる。これがイノベーションの本質だと思います。

―最近のイノベーションで、ITと無縁なものはほとんどないように思われます。

 おっしゃる通りで、現在ではIT機器類の価格性能比が大きく向上し、一方で各種センサーから収集されるデジタルデータの活用が急速に進んでいます。

いわゆるビッグデータですが、これによって今までわからなかった世の中の事象の関係性を可視化できるようになりました。そこから新たなサービス、つまりイノベーションを起こすためのヒントが得られるようになったのです。今イノベーションに大きな注目が集まっているのは、IT活用の敷居が低くなり、イノベーションを起こすことができるチャンスが増えてきたからだと思います。

―イノベーションの背景にあるのは、他ならぬITだということですね。

 そのとおりです。ただし優れたITが数多くあるからといって、そのまま放置していたのではイノベーションを起こすことはできません。そのITの特性をきちんと理解し、使いこなしていくためのセンスが必要です。 またイノベーションを考える上で一番重要となるのは、“利用者目線”です。イノベーションを実現するためにはさまざまな技術的なハードルを乗り越える必要がありますが、その先には人がいなければ意味がない。使う側にとっては、あくまでも“普段の生活の中にいつの間にか入ってきているもの”なのです。私はそういうものこそが、本物のイノベーションだと考えています。

―それでは、ユーザー企業がイノベーションのためにITを活用しようと考えた時、どのような点に留意する必要があるのでしょうか。

 ITは道具だとよく言われますが、車のような“形あるモノ”ではなく、間接的にいろいろな“情報”を制御することができるものです。例えば昨今、世界各国で導入が進むスマートシティは、各家庭の電力の使用状況などをデータ化して制御することで、街全体の電力使用を効率化し、エネルギーの無駄をなくそうとする取組みです。まさにイノベーションの一例ですが、その背景にあるのは地球の温暖化で、これを防ぐためには個々の家庭が節電するだけでは不十分で、国や地域が協力して電力使用をコントロールしていく必要があります。 つまりイノベーションを起こすためのITには、関連するさまざまな要素を繋ぐための“仕掛け”と、それらをうまく“コントロール”していくことが求められるのです。要素技術としてのITをどう使うかという視点よりも、複数のITを組み合わせ、連携させることでどんな“仕掛け”を作り、それをいかに“コントローラブル”なものにしていくか。それを考えていくことが重要です。これらを踏まえて、イノベーションの行き着く先は“超効率制御社会の実現”だと考えています。

―“仕掛け”と“コントローラブル”を目指していくにあたり、企業経営者やIT部門にはどのような考え方や姿勢が求められるのでしょうか。

 企業規模の大小に関係なく、イノベーションはどんなユーザー企業でも起こすことができると考えています。しかし従来のようなプロダクトアウト型の製品やサービスでは、イノベーションを起こすことは不可能です。それでは企業自体が生き残っていくことはできません。基本となるのは、やはり

利用者目線です。 また日本企業は、 “内なるものだけで全てをまかなおう”という傾向が強いと感じますが、特に自社製にこだわる必要はないと思います。共通部分は競合他社ともオープンに連携し、各企業が自社のコア・コンピタンスに絞って磨きをかけていく。縦割りにとどまらず、横連携を意識するということです。それが業界全体の底上げに繋がり、ひいては日本全体の競争力の向上に結び付いていくのだと思います。

―一方でイノベーションを推し進めるためには、“社内の抵抗勢力”と戦う必要があるという話もよく耳にします。この点については、どのように捉えられているでしょうか。

 結論から先に言えば、経営層の強い関わりが必要不可欠です。私たちは大和証券グループのITインフラを統括していますが、2003年当時、グループ内には数々のサーバーやストレージが乱立していて、ある部門が稟議を起こして導入した設備は、自部門だけで利用するといった風潮が生まれていました。そのため使われていないITリソースが社内に散在し、システムの運用保守費も部門ごとに管理する状況だったのです。これは、全体最適の観点でいうと大きな無駄です。 そこでグループ全体のITインフラを標準化し、共有化を図ることを提案しました。2003年からL i n u x の検証を始め、2005年には社内向けのデータウェアハウスや帳票システムの基盤にRed Hat Enterprise Linux(以下RHEL)を採用し、2008年にはよりミッションクリティカルな私設取引システムに、2012年には個人投資家向けのインターネット証券取引サービスのシステム基盤にもRHELの適用を拡大しました。 RHEL導入のプロジェクトを始めた当時、Linuxはまだまだ少数派で、UNIXではなくLinuxであることに抵抗を示す傾向もありました。Linuxを採用するということ自体が、まさにイノ

ベーションだったのです。 しかしITの進化のスピードは速くなる一方で、将来を見越した時、Linuxが必ず主流になると確信していました。ユーザー部門には、“いずれLinuxの時代が来る、今から取り組んでおいて絶対に損はない”と繰り返し伝え、部署ごとの導入進捗率を報告するという活動も行いました。他の部署の導入が進むと、“遅れてはまずい”ということで自分たちも動き始める。風向きが変わり、状況が逆転していったのです。

―世間では概して“イノベーションを起こすためには改善の積み重ねではなく、ドラスティックな構造改革が必要だ”と言われますが、まさにこれを具現化されたわけですね。

 私たちのイノベーションの考え方は実にシンプルで、過去のしがらみや不要なモノを“捨てる”ということです。イノベーションは、日常の行動変化では実現できず、全く別の発想が必要です。2003年当時の私たちにとって、それがUNIXを捨て、Linuxを採用するという選択でした。 そして、やると言った以上は結果を出すまで徹底的にやる。当時私は米国のレッドハットの本社まで足を運び、RHELの品質や信頼性などについて細かく話を聞きました。イノベーションを推進していくためには、強い信念と強いリーダーシップが必要だと思います。

―会社としてイノベーションを実現するためには、従業員が一体となって目的に突き進む必要があると思いますが、そのための方法論や理想的な組織の在り方はあるのでしょうか。

 イノベーションを起こすための秘伝は、“現場を発奮させること”に尽きると思います。そのためには経営トップや上司が、従業員や自分のチームメンバーを正しく評価してあげることが重要です。正しい判断ができない経営トップや上司は不要だと言っても過言ではありません。 また私は、“イノベーションの

原点は現場にある”と考えています。ここでいう現場とは、企業活動の現場というよりもむしろ“世の中的な現場”のことで、今世間でどんな製品やサービスが流行っているのか、どんなITや仕組みが利用されているのか、ということです。経営トップはこれらを正しく知る必要がある。イノベーションを目指すためには、正確な情報に基づいて、正しいジャッジを下すことが重要です。 一方、全ての従業員がイノベーションを目指していては

日々の活動が回りません。そこは、少数精鋭で“尖った人たち”を組織する必要があります。どこの企業にも、自己完結力や責任感が強く、イノベーションにチャレンジしたいと考えている優秀な人たちがいます。しかし彼らだけでは人数が限られているし、社内を説得することも難しい。そこで、他社の尖った人たちと交流させることでイノベーションをドライブしていくのです。いくつかの企業で始めれば、おのずとイノベーションの輪が広がっていきます。 そのためには、外に向かう努力が必要です。前にも述べましたが、日本企業はどうしても内にこもりがちです。イノベーションを起こすために最も重要なことは、実はこうした日本企業の内向きな姿勢を変えていくことだとも言えるでしょう。

―鈴木様には「レッドハット・エンタープライズユーザー会(REUG)」の会長も務めていただいていますが、レッドハットに対するご要望や期待についてお聞かせください。

 ここ数年、レッドハットはLinuxを起点にさまざまなOSS製品を揃えてきました。プロダクトの品揃えが大幅に拡がったことは良いのですが、ユーザー企業からすれば、数ある品揃えの中から自分たちが次にどんなプロダクトを使えばいいのかという検討が必要になってきます。オープンな製品が残り続けることは間違いな

いので、レッドハットには今後、利用者目線でのプロダクト提案やソリューション提案をぜひ目指していただきたい。それによって、レッドハットならではの強みや独自性がより顕著に出てくると思います。 また私たちは現在、ビジネスルールエンジン「Red H a t JBoss BRMS」やBIによる統計分析に注力しています。今後、ビッグデータの解析がきわめて重要な経営課題になると考えているからですが、レッドハットにはこうしたツールをより効果的に活用する手法もぜひ提案していただきたいですね。 今後も、レッドハットの利用者目線での進化に大きく期待しています。

イノベーションに必要なのは、さまざまなITを組み合わせて“仕掛け”を作り、効率よく“コントロール”していくこと

鈴木 孝一 氏

株式会社大和総研株式会社大和総研ビジネス・イノベーション代表取締役副社長

4 OPEN EYE

Success story for your business

ユーザー事例Success Story

大和総研

Executive Interview

―昨今、ユーザー企業ではイノベーションの必要性が叫ばれています。単なる業務改善ではなく、なぜ今イノベーションに注目が集まっているのでしょうか。

 それを考える前にまず、“イノベーションとは何か”をはっきりさせる必要があります。私自身はイノベーションを、“これまで、さまざまな制約から利用できなかった人、あるいは無縁だと思われた人までが、その利便性の恩恵に預かれるよ

うな道具やサービスの創作”だと捉えています。 身近な例として、スマートフォンのカメラ機能が挙げられるでしょう。かつて写真はフィルムカメラで撮影し、現像する必要がありました。皆で共有するためには焼き増ししなければならない。それが今では、スマートフォンでいつでもどこでも、簡単に綺麗な写真を撮ることができるようになりました。SNSを使えば、すぐに家族や友人とも共有できます。今までカメラには縁遠かった人までが、“写真がメモ代わりになる”という便利な使い方を知り、利用するようになっています。 これまで身近に存在しなかった、使うためにはお金や手間がかかる、あるいは“そんな使い方は考えもしなかった”というものが身近になり、手頃な価格で利用できるようになる。これがイノベーションの本質だと思います。

―最近のイノベーションで、ITと無縁なものはほとんどないように思われます。

 おっしゃる通りで、現在ではIT機器類の価格性能比が大きく向上し、一方で各種センサーから収集されるデジタルデータの活用が急速に進んでいます。

いわゆるビッグデータですが、これによって今までわからなかった世の中の事象の関係性を可視化できるようになりました。そこから新たなサービス、つまりイノベーションを起こすためのヒントが得られるようになったのです。今イノベーションに大きな注目が集まっているのは、IT活用の敷居が低くなり、イノベーションを起こすことができるチャンスが増えてきたからだと思います。

―イノベーションの背景にあるのは、他ならぬITだということですね。

 そのとおりです。ただし優れたITが数多くあるからといって、そのまま放置していたのではイノベーションを起こすことはできません。そのITの特性をきちんと理解し、使いこなしていくためのセンスが必要です。 またイノベーションを考える上で一番重要となるのは、“利用者目線”です。イノベーションを実現するためにはさまざまな技術的なハードルを乗り越える必要がありますが、その先には人がいなければ意味がない。使う側にとっては、あくまでも“普段の生活の中にいつの間にか入ってきているもの”なのです。私はそういうものこそが、本物のイノベーションだと考えています。

―それでは、ユーザー企業がイノベーションのためにITを活用しようと考えた時、どのような点に留意する必要があるのでしょうか。

 ITは道具だとよく言われますが、車のような“形あるモノ”ではなく、間接的にいろいろな“情報”を制御することができるものです。例えば昨今、世界各国で導入が進むスマートシティは、各家庭の電力の使用状況などをデータ化して制御することで、街全体の電力使用を効率化し、エネルギーの無駄をなくそうとする取組みです。まさにイノベーションの一例ですが、その背景にあるのは地球の温暖化で、これを防ぐためには個々の家庭が節電するだけでは不十分で、国や地域が協力して電力使用をコントロールしていく必要があります。 つまりイノベーションを起こすためのITには、関連するさまざまな要素を繋ぐための“仕掛け”と、それらをうまく“コントロール”していくことが求められるのです。要素技術としてのITをどう使うかという視点よりも、複数のITを組み合わせ、連携させることでどんな“仕掛け”を作り、それをいかに“コントローラブル”なものにしていくか。それを考えていくことが重要です。これらを踏まえて、イノベーションの行き着く先は“超効率制御社会の実現”だと考えています。

―“仕掛け”と“コントローラブル”を目指していくにあたり、企業経営者やIT部門にはどのような考え方や姿勢が求められるのでしょうか。

 企業規模の大小に関係なく、イノベーションはどんなユーザー企業でも起こすことができると考えています。しかし従来のようなプロダクトアウト型の製品やサービスでは、イノベーションを起こすことは不可能です。それでは企業自体が生き残っていくことはできません。基本となるのは、やはり

レッドハットのプロダクトの品揃えは拡がった。今後は“利用者目線”のソリューション提案をぜひ期待したい

利用者目線です。 また日本企業は、 “内なるものだけで全てをまかなおう”という傾向が強いと感じますが、特に自社製にこだわる必要はないと思います。共通部分は競合他社ともオープンに連携し、各企業が自社のコア・コンピタンスに絞って磨きをかけていく。縦割りにとどまらず、横連携を意識するということです。それが業界全体の底上げに繋がり、ひいては日本全体の競争力の向上に結び付いていくのだと思います。

―一方でイノベーションを推し進めるためには、“社内の抵抗勢力”と戦う必要があるという話もよく耳にします。この点については、どのように捉えられているでしょうか。

 結論から先に言えば、経営層の強い関わりが必要不可欠です。私たちは大和証券グループのITインフラを統括していますが、2003年当時、グループ内には数々のサーバーやストレージが乱立していて、ある部門が稟議を起こして導入した設備は、自部門だけで利用するといった風潮が生まれていました。そのため使われていないITリソースが社内に散在し、システムの運用保守費も部門ごとに管理する状況だったのです。これは、全体最適の観点でいうと大きな無駄です。 そこでグループ全体のITインフラを標準化し、共有化を図ることを提案しました。2003年からL i n u x の検証を始め、2005年には社内向けのデータウェアハウスや帳票システムの基盤にRed Hat Enterprise Linux(以下RHEL)を採用し、2008年にはよりミッションクリティカルな私設取引システムに、2012年には個人投資家向けのインターネット証券取引サービスのシステム基盤にもRHELの適用を拡大しました。 RHEL導入のプロジェクトを始めた当時、Linuxはまだまだ少数派で、UNIXではなくLinuxであることに抵抗を示す傾向もありました。Linuxを採用するということ自体が、まさにイノ

ベーションだったのです。 しかしITの進化のスピードは速くなる一方で、将来を見越した時、Linuxが必ず主流になると確信していました。ユーザー部門には、“いずれLinuxの時代が来る、今から取り組んでおいて絶対に損はない”と繰り返し伝え、部署ごとの導入進捗率を報告するという活動も行いました。他の部署の導入が進むと、“遅れてはまずい”ということで自分たちも動き始める。風向きが変わり、状況が逆転していったのです。

―世間では概して“イノベーションを起こすためには改善の積み重ねではなく、ドラスティックな構造改革が必要だ”と言われますが、まさにこれを具現化されたわけですね。

 私たちのイノベーションの考え方は実にシンプルで、過去のしがらみや不要なモノを“捨てる”ということです。イノベーションは、日常の行動変化では実現できず、全く別の発想が必要です。2003年当時の私たちにとって、それがUNIXを捨て、Linuxを採用するという選択でした。 そして、やると言った以上は結果を出すまで徹底的にやる。当時私は米国のレッドハットの本社まで足を運び、RHELの品質や信頼性などについて細かく話を聞きました。イノベーションを推進していくためには、強い信念と強いリーダーシップが必要だと思います。

―会社としてイノベーションを実現するためには、従業員が一体となって目的に突き進む必要があると思いますが、そのための方法論や理想的な組織の在り方はあるのでしょうか。

 イノベーションを起こすための秘伝は、“現場を発奮させること”に尽きると思います。そのためには経営トップや上司が、従業員や自分のチームメンバーを正しく評価してあげることが重要です。正しい判断ができない経営トップや上司は不要だと言っても過言ではありません。 また私は、“イノベーションの

原点は現場にある”と考えています。ここでいう現場とは、企業活動の現場というよりもむしろ“世の中的な現場”のことで、今世間でどんな製品やサービスが流行っているのか、どんなITや仕組みが利用されているのか、ということです。経営トップはこれらを正しく知る必要がある。イノベーションを目指すためには、正確な情報に基づいて、正しいジャッジを下すことが重要です。 一方、全ての従業員がイノベーションを目指していては

日々の活動が回りません。そこは、少数精鋭で“尖った人たち”を組織する必要があります。どこの企業にも、自己完結力や責任感が強く、イノベーションにチャレンジしたいと考えている優秀な人たちがいます。しかし彼らだけでは人数が限られているし、社内を説得することも難しい。そこで、他社の尖った人たちと交流させることでイノベーションをドライブしていくのです。いくつかの企業で始めれば、おのずとイノベーションの輪が広がっていきます。 そのためには、外に向かう努力が必要です。前にも述べましたが、日本企業はどうしても内にこもりがちです。イノベーションを起こすために最も重要なことは、実はこうした日本企業の内向きな姿勢を変えていくことだとも言えるでしょう。

―鈴木様には「レッドハット・エンタープライズユーザー会(REUG)」の会長も務めていただいていますが、レッドハットに対するご要望や期待についてお聞かせください。

 ここ数年、レッドハットはLinuxを起点にさまざまなOSS製品を揃えてきました。プロダクトの品揃えが大幅に拡がったことは良いのですが、ユーザー企業からすれば、数ある品揃えの中から自分たちが次にどんなプロダクトを使えばいいのかという検討が必要になってきます。オープンな製品が残り続けることは間違いな

いので、レッドハットには今後、利用者目線でのプロダクト提案やソリューション提案をぜひ目指していただきたい。それによって、レッドハットならではの強みや独自性がより顕著に出てくると思います。 また私たちは現在、ビジネスルールエンジン「Red H a t JBoss BRMS」やBIによる統計分析に注力しています。今後、ビッグデータの解析がきわめて重要な経営課題になると考えているからですが、レッドハットにはこうしたツールをより効果的に活用する手法もぜひ提案していただきたいですね。 今後も、レッドハットの利用者目線での進化に大きく期待しています。

Red Hatに求めるもの

利用者目線のソリューション提案

仕掛け コントローラブル

超効率制御社会の実現

イノベーションを起こすためのIT

利用者目線イノベーションの先には必ず人がいる利用者の目線で、ITをイノベーションに活用

OPEN EYE 5

Red Hat K.K. EDITORIAL 2016

需要創造の源泉は“お客様起点”、顧客ニーズを掌握して真のITソリューションの提供を

 ビジネスシーンのイノベーションを支える企業のIT。しかしユーザー企業が必要としているのは、単なる要素技術ではなく課題解決だ。そこで重要な役割を担うのが、システムインテグレーターである。今後、企業のITを担う企業にはどのような姿勢と取組みが求められるのか。パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社 代表取締役社長 前川一博氏に聞いた。

―今、ユーザー企業がイノベーションを起こすためには、ITの戦略的な活用が必要不可欠だと言われています。そのためにはまず、どのような姿勢が必要だとお考えでしょうか。

 企業ITの責任者はチーフインフォメーションオフィサー、即ちCIOと呼ばれる人たちですが、このCIOが今ではチーフ“イノベーション”オフィサーだといわれることがあります。

CIOは ITに加えて、イノベーションの責任まで担う重要なポジションになってきているということで、ユーザー企業の経営層の皆様には、“I”の重要度がこれまで以上に大きくなってきているという認識が必要です。 そして、Iの重要度が高まっている現状を如実に示しているのが、IoTの拡大です。多くの人/モノとサービスを繋ぐところに、インターネットを介したインフォメーションが存在しており、それによって新たなイノベーションが生まれています。例えば、自宅の近所にカーシェアリングサービスがあれば、私たちは車を買わないという選択もできます。利用可能な時間や価格などの情報を調べて、それが納得できるものなら、車という“モノ”を所有するのではなく、カーシェアリングというサービスを利用するという選択をすればいいのです。 しかし昨今のユーザー企業、特に製造業は、I forTになってしまっている場合がある。つまりモノを作るために、インターネット即ちインフォメーションを使おうとするのです。そのため、どうしてもプロダクトアウト型になりがちで、それでは新たなイノベーション

は生まれにくい。反面、最近ではIoCという言葉も聞かれます。Cとはカスタマーで、まさに顧客のことです。お客様の視点に立ったITの活用こそが、イノベーションの源泉になるということですね。 いずれにしろ、Iの重要性は明らかで、その活用方法を間違えると企業は生き残れないと言っても過言ではないでしょう。

―貴社はITサービス会社として15年以上の実績をお持ちですが、インフォメーションや顧客サービスを重視する姿勢というのは、情報サービスを提供する企業にも求められるものです。

 私が2008年4月に当社に入り、まず着手したのが、従業員の考え方を変えてヒューマンスキルをレベルアップさせるための取組みでした。 それというのも、例えば当時の営業部隊には、製品ありきのプロダクトアウト型の営業スタイルが浸透していました。お客様が何について悩み、何を実現したいと思っているのかを深く考えるよりも、こちらの判断基準でご提案してしまう。お客様を起点に考える、という姿勢が希薄だと感じたのです。これはIT業界全般に言えることですが、お客様のことを“アカウント”と呼んだり、システムを“リリース”する、プロジェクトが“カットオーバー”するなど、日常的に用いる言葉ひとつを取ってみてもベンダー側

の目線で物事を捉える風潮があり、大きな違和感を覚えました。

―そうした違和感の背景には、やはりご自身のキャリアにおける経験があるのでしょうか。

 私は現職以前、グループ企業で電設資材の営業に27年半、高齢者向けの介護ビジネスに2年半従事していました。確かに、人間は今自分がいる環境が世間の常識だと思いがちですが、それは大きな間違いで、視点を変えれば見える景色は全く異なってきます。 電設資材の営業時代、私は大阪、神戸、島根、鳥取といったエリアを担当しており、多くの販売店のオーナー社長様とお付き合いさせていただきました。その頃、お客様視点に立っていない言動をつい取ってしまうと、よくお叱りを受けたものでした。仕事のやり方やルールは確かに上司から学びましたが、仕事に取り組む上で何を大切にすべきかということは、すべてお客様から教えていただいたと思っています。 また電設資材の営業はいわゆるB to Bビジネスですが、後に携わった介護ビジネスはB to Cビジネスで、高齢者の方を対象とするものです。そこで働いていたのは、お客様に対するホスピタリティ精神の強い人たちで、そうしたマインドを持って仕事に向き合うべきだという点も強く心に刻まれました。

 いずれにしても、すべての起点となるのはお客様です。これは、私たちITサービス会社にとっても何ら変わるものではありません。“お客様が何を望まれているのか”を正確に理解し、それを起点として需要を創造していくことが重要です。このお客様起点の需要創造を、私は“Demand side Logic(デマンドサイド・ロジック)”と呼んでいます。プロダクトアウト型の“Supp l y s i d e Logic(サプライサイド・ロジック)”ではなく、お客様のニーズを絶えず感じて、お客様が本当に必要としているものを真剣に考えることが、最終的に需要の創造に繋がることになる。このキーワードは、社内へメッセージを送る際にも必ず含めています。

―現在、情報サービス企業で構成される一般社団法人「 情 報サービス産 業 協 会(JISA)」の理事も務められていますが、その“Demand side Logic”は自社内だけでなく、情報サービス業界全体においてもきわめて必要な視点ではないでしょうか。

 まさにその通りで、JISAのSは他でもないサービスのことです。IT業界もお客様を起点とした“サービスありき”でビジネスを展開していく必要性がこれまでにも増して重要になってくるでしょう。“サービスとは何か?”を考えるきっかけ作りができればと考えたのが、JISAの理事をお受けした最大の理由です。

―お客様を起点として行動するためのヒューマンスキルに加えて、ITサービスを提供する会社として具体的に取り組まれ

ていることは何かありますか。

 ITサービス会社といっても、もちろん ITを利用するユーザー企業としての側面もあります。最新のITトレンドを理解し、それがどのようにビジネスに役に立つのかを把握しておくことは、企業の経営トップにとっても必要最低限の取組みだと思います。 また私たちからお客様にご提供するITは、社内で徹底的に使いこなし、納得できるまで外には出しません。時間的な制限を設けるよりは、社内の本番環境で使ってみて、問題のないことを細部まで確認して初めて、お客様にもご提供できる品質になったと評価するようにしています。

―サービスを提供する側と享受する側の双方の立場で動くということですね。オープンソースソフトウェア(OSS)については、どのように評価されていますか。

 松下幸之助創業者の思想にある“水道哲学”というものをご存知でしょうか。水道の水のように、品質が高いものを低価格で広く人々に提供しようという考え方ですが、私はOSSはまさにこの水道哲学に通ずるところがあり、水や電気のような存在になりつつあると考えています。 またパナソニックの経営理念に“産業人たるの本分に徹し 社会生活の改善と向上を図り 世界文化の進展に寄与せんことを期す”というくだりがあります。こちらもOSSと重なる部分があって、社会生活の改善と向上を図り、世界文化の進展に寄与するものこそがOSSの真の姿だと思うのです。従業員には、“私たちはITでこの理念を

実現するのだ”とよく話しています。

―OSSの活用としては、2012年にパナソニック本体がCRM基盤にRed Hat Enterprise Linux(RHEL)を採用され、今年2016年には、貴社がRed Hat Enterprise Virtualization(RHEV)を利用した1,000台規模のサーバー集約を予定されています。

 OSSに関しては、実は数年前に株式会社大和総研/株式会社大和総研ビジネス・イノベーション 代表取締役副社長の鈴木孝一様とのお付き合いが始まった時に教えていただきました。RHEVに取り組むことになったのも、鈴木様との

議論がきっかけです。私たちは、RHEV以前のシステム基盤に物理サーバーを仮想サーバーとして扱えるリソース管理ソフトを利用していたのですが、将来を見据えてハードウェアに依存しないインフラ基盤を確立しようと考えたのです。しかし、これから商用のサーバー仮想化ソフトを使い始めても、お客様にご提案できるようになるまでには時間がかかり、また商用製品にはベンダーロックインの制約もある。ならばOSSの利用が当たり前になる時代が来た時に、私たちがパイオニアとして一歩先んじていたほうがいい。今からRHEVに取り組んでおくべきだと判断したのです。1,000台規模のサーバーをRHEVによって集約することで、メンテナンス時のダウンタイムが従来の半日から瞬断レベルに短縮され、1OS当たりのコストも30%削減できる見込みで、これもグループ内で使いこなした後、お客様にご提供していく予定です。

―最後に、現在新たに採用をご検討されているOSS製品や、今後のレッドハットに対するご意見・ご要望がありました

らぜひお聞かせください。

 新たなITにトライしていくことは、パナソニックグループにおける我々の使命です。今後もさまざまなOSSの検証を進めていく予定で、直近ではシステム環境を含むアプリケーションレイヤーをイメージ化するDockerの検証を行っているところです。こうした取組みを通じて、パナソニックグループをはじめグループ外のお客様に向けても、的確にニーズを把握して最適なITソリューションをご提供していきたいと考えています。 またレッドハットには、製品やソリューションの最新情報を提供していただくと同時に、ユーザー企業の期待値にしっかり応えていく体制作りをお願いしたいと思います。例えば、パートナーを介して製品を導入したユーザー企業についても導入製品の情報を正確に把握しておいていただくなど、レッドハットとしての責任に対する期待はますます大きくなっています。それらの期待に応えていくことこそレッドハットの使命であり、OSSが水や電気のような存在になった時のレッドハットの最大の役割だと考えています。

お客様を起点とした“サービスありき”でビジネスを展開していくことが、IT業界の成長の最重要課題

前川 一博 氏

パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社代表取締役社長

6 OPEN EYE

Success story for your business

ユーザー事例Success Story

パナソニックインフォメーションシステムズ

Executive Interview

―今、ユーザー企業がイノベーションを起こすためには、ITの戦略的な活用が必要不可欠だと言われています。そのためにはまず、どのような姿勢が必要だとお考えでしょうか。

 企業ITの責任者はチーフインフォメーションオフィサー、即ちCIOと呼ばれる人たちですが、このCIOが今ではチーフ“イノベーション”オフィサーだといわれることがあります。

CIOは ITに加えて、イノベーションの責任まで担う重要なポジションになってきているということで、ユーザー企業の経営層の皆様には、“I”の重要度がこれまで以上に大きくなってきているという認識が必要です。 そして、Iの重要度が高まっている現状を如実に示しているのが、IoTの拡大です。多くの人/モノとサービスを繋ぐところに、インターネットを介したインフォメーションが存在しており、それによって新たなイノベーションが生まれています。例えば、自宅の近所にカーシェアリングサービスがあれば、私たちは車を買わないという選択もできます。利用可能な時間や価格などの情報を調べて、それが納得できるものなら、車という“モノ”を所有するのではなく、カーシェアリングというサービスを利用するという選択をすればいいのです。 しかし昨今のユーザー企業、特に製造業は、I forTになってしまっている場合がある。つまりモノを作るために、インターネット即ちインフォメーションを使おうとするのです。そのため、どうしてもプロダクトアウト型になりがちで、それでは新たなイノベーション

は生まれにくい。反面、最近ではIoCという言葉も聞かれます。Cとはカスタマーで、まさに顧客のことです。お客様の視点に立ったITの活用こそが、イノベーションの源泉になるということですね。 いずれにしろ、Iの重要性は明らかで、その活用方法を間違えると企業は生き残れないと言っても過言ではないでしょう。

―貴社はITサービス会社として15年以上の実績をお持ちですが、インフォメーションや顧客サービスを重視する姿勢というのは、情報サービスを提供する企業にも求められるものです。

 私が2008年4月に当社に入り、まず着手したのが、従業員の考え方を変えてヒューマンスキルをレベルアップさせるための取組みでした。 それというのも、例えば当時の営業部隊には、製品ありきのプロダクトアウト型の営業スタイルが浸透していました。お客様が何について悩み、何を実現したいと思っているのかを深く考えるよりも、こちらの判断基準でご提案してしまう。お客様を起点に考える、という姿勢が希薄だと感じたのです。これはIT業界全般に言えることですが、お客様のことを“アカウント”と呼んだり、システムを“リリース”する、プロジェクトが“カットオーバー”するなど、日常的に用いる言葉ひとつを取ってみてもベンダー側

の目線で物事を捉える風潮があり、大きな違和感を覚えました。

―そうした違和感の背景には、やはりご自身のキャリアにおける経験があるのでしょうか。

 私は現職以前、グループ企業で電設資材の営業に27年半、高齢者向けの介護ビジネスに2年半従事していました。確かに、人間は今自分がいる環境が世間の常識だと思いがちですが、それは大きな間違いで、視点を変えれば見える景色は全く異なってきます。 電設資材の営業時代、私は大阪、神戸、島根、鳥取といったエリアを担当しており、多くの販売店のオーナー社長様とお付き合いさせていただきました。その頃、お客様視点に立っていない言動をつい取ってしまうと、よくお叱りを受けたものでした。仕事のやり方やルールは確かに上司から学びましたが、仕事に取り組む上で何を大切にすべきかということは、すべてお客様から教えていただいたと思っています。 また電設資材の営業はいわゆるB to Bビジネスですが、後に携わった介護ビジネスはB to Cビジネスで、高齢者の方を対象とするものです。そこで働いていたのは、お客様に対するホスピタリティ精神の強い人たちで、そうしたマインドを持って仕事に向き合うべきだという点も強く心に刻まれました。

レッドハットに対する期待値は大きく高まっている。水や電気のような存在になりつつあるOSSをしっかりサポートいただきたい

 いずれにしても、すべての起点となるのはお客様です。これは、私たちITサービス会社にとっても何ら変わるものではありません。“お客様が何を望まれているのか”を正確に理解し、それを起点として需要を創造していくことが重要です。このお客様起点の需要創造を、私は“Demand side Logic(デマンドサイド・ロジック)”と呼んでいます。プロダクトアウト型の“Supp l y s i d e Logic(サプライサイド・ロジック)”ではなく、お客様のニーズを絶えず感じて、お客様が本当に必要としているものを真剣に考えることが、最終的に需要の創造に繋がることになる。このキーワードは、社内へメッセージを送る際にも必ず含めています。

―現在、情報サービス企業で構成される一般社団法人「 情 報サービス産 業 協 会(JISA)」の理事も務められていますが、その“Demand side Logic”は自社内だけでなく、情報サービス業界全体においてもきわめて必要な視点ではないでしょうか。

 まさにその通りで、JISAのSは他でもないサービスのことです。IT業界もお客様を起点とした“サービスありき”でビジネスを展開していく必要性がこれまでにも増して重要になってくるでしょう。“サービスとは何か?”を考えるきっかけ作りができればと考えたのが、JISAの理事をお受けした最大の理由です。

―お客様を起点として行動するためのヒューマンスキルに加えて、ITサービスを提供する会社として具体的に取り組まれ

ていることは何かありますか。

 ITサービス会社といっても、もちろん ITを利用するユーザー企業としての側面もあります。最新のITトレンドを理解し、それがどのようにビジネスに役に立つのかを把握しておくことは、企業の経営トップにとっても必要最低限の取組みだと思います。 また私たちからお客様にご提供するITは、社内で徹底的に使いこなし、納得できるまで外には出しません。時間的な制限を設けるよりは、社内の本番環境で使ってみて、問題のないことを細部まで確認して初めて、お客様にもご提供できる品質になったと評価するようにしています。

―サービスを提供する側と享受する側の双方の立場で動くということですね。オープンソースソフトウェア(OSS)については、どのように評価されていますか。

 松下幸之助創業者の思想にある“水道哲学”というものをご存知でしょうか。水道の水のように、品質が高いものを低価格で広く人々に提供しようという考え方ですが、私はOSSはまさにこの水道哲学に通ずるところがあり、水や電気のような存在になりつつあると考えています。 またパナソニックの経営理念に“産業人たるの本分に徹し 社会生活の改善と向上を図り 世界文化の進展に寄与せんことを期す”というくだりがあります。こちらもOSSと重なる部分があって、社会生活の改善と向上を図り、世界文化の進展に寄与するものこそがOSSの真の姿だと思うのです。従業員には、“私たちはITでこの理念を

実現するのだ”とよく話しています。

―OSSの活用としては、2012年にパナソニック本体がCRM基盤にRed Hat Enterprise Linux(RHEL)を採用され、今年2016年には、貴社がRed Hat Enterprise Virtualization(RHEV)を利用した1,000台規模のサーバー集約を予定されています。

 OSSに関しては、実は数年前に株式会社大和総研/株式会社大和総研ビジネス・イノベーション 代表取締役副社長の鈴木孝一様とのお付き合いが始まった時に教えていただきました。RHEVに取り組むことになったのも、鈴木様との

議論がきっかけです。私たちは、RHEV以前のシステム基盤に物理サーバーを仮想サーバーとして扱えるリソース管理ソフトを利用していたのですが、将来を見据えてハードウェアに依存しないインフラ基盤を確立しようと考えたのです。しかし、これから商用のサーバー仮想化ソフトを使い始めても、お客様にご提案できるようになるまでには時間がかかり、また商用製品にはベンダーロックインの制約もある。ならばOSSの利用が当たり前になる時代が来た時に、私たちがパイオニアとして一歩先んじていたほうがいい。今からRHEVに取り組んでおくべきだと判断したのです。1,000台規模のサーバーをRHEVによって集約することで、メンテナンス時のダウンタイムが従来の半日から瞬断レベルに短縮され、1OS当たりのコストも30%削減できる見込みで、これもグループ内で使いこなした後、お客様にご提供していく予定です。

―最後に、現在新たに採用をご検討されているOSS製品や、今後のレッドハットに対するご意見・ご要望がありました

らぜひお聞かせください。

 新たなITにトライしていくことは、パナソニックグループにおける我々の使命です。今後もさまざまなOSSの検証を進めていく予定で、直近ではシステム環境を含むアプリケーションレイヤーをイメージ化するDockerの検証を行っているところです。こうした取組みを通じて、パナソニックグループをはじめグループ外のお客様に向けても、的確にニーズを把握して最適なITソリューションをご提供していきたいと考えています。 またレッドハットには、製品やソリューションの最新情報を提供していただくと同時に、ユーザー企業の期待値にしっかり応えていく体制作りをお願いしたいと思います。例えば、パートナーを介して製品を導入したユーザー企業についても導入製品の情報を正確に把握しておいていただくなど、レッドハットとしての責任に対する期待はますます大きくなっています。それらの期待に応えていくことこそレッドハットの使命であり、OSSが水や電気のような存在になった時のレッドハットの最大の役割だと考えています。

お客さま起点の需要創造“Demand side Logic”

気づかないうちに“Supply side Logic”に

なっていませんか?

めまぐるしく変化するITに気をとられ過ぎず目の前にあるお客さまの課題と向き合う

OPEN EYE 7

Red Hat K.K. EDITORIAL 2016

OPEN EYE Vol.222016年2月 発行

発行:レッドハット株式会社東京都渋谷区恵比寿4-1-18tel:03(5798)8500

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 今回の両社提携によって実現された主な項目は、大きく次の4つが挙げられる。(1)Microsoft Azureユーザーが、レッドハットソリューションをネイティブに利用可能になること、(2)ハイブリッド環境全体に渡るエンタープライズクラスの統合サポートが提供されること、(3)ハイブリッドクラウドデプロイメント全体で統一されたワークロード管理が実現できること、そして(4)新世代のアプリケーション開発力向上のための.NETに関する協業が実現したことだ。 (1)については、Microsoft Azureがレッドハットの認定クラウド&サービスプロバイダープログラム

(CCSP:Cert ified C loud&Serv ice Prov ider Program)においてレッドハットの認定クラウド&サービスプロバイダーとなったことで、ユーザー企業はRHELやRed Hat JBoss Enterprise Application Platform、Red HatのOpenShiftなど全てのレッドハットソリューションをMicrosoft Azure上で利用できるようになり、一方RHEL OpenStack PlatformとRed Hat Enterprise Virtual izat ion上でも、Microsoft Windows® がサポートされる。 (2)については文字通り、Microsoft Azure上で稼働するレッドハットソリューションを含むオンプレミス/クラウド混在のハイブリッドクラウド環境に対して、統合的なサポートサービスが提供される。 (3)については、統合クラウド管理ソリューションであるRed Hat CloudFormsがMicrosoft AzureおよびMicrosoft System Center Virtual Machine Managerと共に動作可能となり、Red Hat CloudFormsのユーザーは、Hyper-VとMicrosoft Azureの両方でRHELを管理できるようになる。 そして(4)については、RHELがLinux上の.NET Core用の主な開発/リファレンスOSとなり、開発者はRed HatのOpenShiftとRHELを含む各種レッドハット製品で.NETテクノロジーを利用できるようになる。

 今回CCSPにマイクロソフトが参加したことで、Microsoft Azure Marketplace上でRHELが提供されるようになり、“従量課金”で利用できるようになった。この点に関して、レッドハット株式会社 グローバルサービス本部 プラットフォームソリューション統括部 RHELエバンジェリストの藤田稜は次のように補足する。 「Microsoft Azure Marketplace上でRHELが提供されるということは、既にインストール済みのRHELイメージがMicrosoft Azure上に用意されていて、お客様はWebのコンソールからそれを選択して『起動』というボタンをクリックするだけで、RHELが動き始めるということです。オンプレミスなら、これまでハードウェアの調達からRHELの稼働開始までに約1か月は必要でしたが、わずか数分間で完了します。お客様のビジネスのスピードは劇的に速くなります」(藤田)。 一方でMicrosoft Azureは様々なサービスを提供

しており、例えばMicrosoft Azure上にあるActive Directoryでユーザー認証をしつつ、RHELを使うことが可能になる。あるいはメディアコンバートのサービスも提供しているので、RHELやRed Hat JBoss Middlewareと組み合わせて、配信先デバイスの解像度に合わせた動画をエンコードしながらリアルタイムに配信することもできるようになる。 また今回の提携により、Red Hat CloudFormsを利用して、LinuxとWindowsが混在するパブリッククラウド/プライベートクラウド間でサービスのデプロイ先を自由に変えることが可能となった。そのメリットを、日本マイクロソフト株式会社 マーケティング&オペレーションズ クラウド&エンタープライズビジネス本部 OSSエバンジェリストの新井真一郎氏は次のように説明する。 「例えばDockerコンテナをベースに稼働するOpenShiftの環境をプライベートクラウドとMicrosoft Azureの各々で利用しているなら、その間の行き来がしやすくなります。パフォーマンスに季節変動があるようなシステムも含めて、適材適所でクラウドを使い分けることが可能になったということです」(新井氏)。 さらに今回の提携で、例えばRed HatのOpenShiftを使ってアプリケーションを開発する際にMicrosoft.NETも選択できるようになった。 「RHELやRed HatのOpenShiftとMicrosoft.NETが統合されることで、システム実装のスピードアップや開発の柔軟性が高まるだけでなく、新たなアプリケーションを開発して短期間で市場にリリースしていくことも可能になります。その意味するところはやはり、お客様価値の最大化ということです」(藤田)。

 2016年2月18日(木)、日本マイクロソフトとレッドハットは提携発表後初となるイベント「AzuredCon」を秋葉原コンベンションホールにて開催、両社と複数の国内パートナー企業から、今回の協業内容の詳細とMicrosoft Azure+RHELの活用事例などについてご紹介する。イベント内容の詳細は後日、OPEN EYE ONLINE(http://jp-redhat.com/openeye_online/)にてお伝えする予定だ。

○ レッドハット最新レポート

MicrosoftとRed Hatの提携は、お客様のビジネスにスピードと選択肢をもたらし企業価値の最大化を支援する

 2015年11月、MicrosoftとRed Hatはユーザー企業のハイブリッドクラウドコンピューティング導入に寄与する提携を発表した。今後Microsoftは顧客企業に対し、同社のMicrosoft AzureTM上のエンタープライズLinuxとして、Red Hat Enterprise Linuxを優先的に提供していく。2社の提携について、日本マイクロソフトの新井氏とレッドハットの藤田が語った。

ハイブリッド環境全体にわたる統合サポートやワークロード管理などを実現

ビジネスのスピードが劇的に速まり、お客様のビジネスチャンスも拡大

Microsoft® とRed Hatの連携がハイブリッドクラウドを加速する!

Success story for your business Red Hat K.K. EDITORIAL 2016

新井 真一郎氏

マーケティング&オペレーションズ

クラウド&エンタープライズビジネス本部

OSSエバンジェリスト

日本マイクロソフト株式会社

藤田 稜

グローバルサービス本部プラットフォームソリューション統括部 RHELエバンジェリスト

レッドハット株式会社

▼ レッドハットとマイクロソフトの戦略的なパートナーシップ

マイクロソフトはレッドハットのCCSP(Certified Cloud and Service Provider program)

に参加

レッドハットの製品がMicrosoft Azure上でサポート・提供Microsoft WindowsがRed Hat Enterprise Linux

OpenStack PlatformとRed Hat Enterprise Virtualizationでサポート

オンプレミスの企業環境とMicrosoft Azureで稼働するレッドハット製品を含んだ、

ハイブリッドクラウドの統合サポートサービス

Red Hat CloudFormsで実装する、オープンなハイブリッドクラウドのための管理ツールの統合

Red Hat Enterprise Linux、Atomic Host、OpenShiftにおけるMicrosoft.NETの統合