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表層型メタンハイドレートの研究開発2020年度 一般成果報告会
「海洋調査の進捗状況と今後の計画について」
2020/12/17
国立研究開発法人産業技術総合研究所
地圏資源環境研究部門
佐藤 幹夫
本研究は,経済産業省「国内石油天然ガスに係る地質調査・メタンハイドレートの研究開発等事業(メタンハイドレートの研究開発)」の一環として実施した。関係各位に対し、謝意を表します。
表層型メタンハイドレートの開発に向けた工程表(海洋エネルギー・鉱物資源開発計画,2019年2月15日改定,経済産業省)
海洋基本計画(平成30年5月15日閣議決定) 平成30年代後半に民間企業が主導する商業化に向けたプロジェクトが開始されることを目指し、将来の商業生産を可能
とするための技術開発を進める。
2 0 1 8 ~ 2 0 2 2 年 度 頃 2023~2027年度頃
生産技術の開発
環境影響評価
回収技術に関する調査研究
回収の原理や回収時に想定される事象等に関する調査・検討(提案公募型)
調査研究の評価
回収・生産技術の研究開発
賦存状況等を把握するための海洋調査
海底の状況等を把握するための海洋調査
海洋産出試験の実施場所に関する検討
海域環境調査
方向性の確認・見直しの結果を踏まえた
海洋産出試験等
民間企業が主導する商業化に向けたプロジェクトの開始
方向性の確認・見直し
環境影響評価手法の研究
⾧期的取組経済性の確保や環境保全など、商業化に必要な条件の検討
有望技術の特定に向けた検討
海洋産出試験の実施場所の特定に向けた
海洋調査
要素技術に係る
陸上での実験等
要素技術の評価
要素技術に係る
海洋での検証
海洋産出試験に向けた生産システムの検討
継続的な確認とアップデート
方向性の確認・見直し
実行計画(2019~2022年度)
4年計画
連携して調査航海を
実施
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今回の説明内容
2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022
表層型メタンハイドレート海洋調査 調査項目の選定
回収技術に関する調査研究
(2016~2018)
回収・生産技術の研究開発
(2020~)
調査研究の評価
有望技術の特定に
向けた検討
資源量把握に向けた調査(2013~2015)
調査項目①~⑦
評価結果取り纏め(
9月公表)
資源量評価結果検討委員会
海底の状況等を把握するための海洋調査(2020~)
⑨海底機器観測⑩地盤強度調査
海域環境調査(2020~)⑪海域環境調査(海底画像マッピング)
⑫海域環境調査(海底環境調査)⑬海域環境調査(海洋観測)
実行計画(2019~2022年度)
賦存状況等を把握するための海洋調査(2017~)
③海洋電磁探査(2017)②詳細地質調査(2018)
⑦高分解能三次元地震探査(2019, 2021)⑧熱流量調査(2020~)
回収・生産技術の検討に必要だが未取得・不十分なデータ<MH層の賦存状況><海底の状況等>
調査項目選定
取得データの反映
方向性の確認・見直し
海洋産出試験の実施場所に関する検討
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MH層そのものを対象
MH層そのものではなく,周辺の状況を対象
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回収・生産技術の検討に必要だが未取得・不十分なデータ
回収・生産技術の検討に必要だが未取得・不十分なデータ<MH層の賦存状況><海底の状況等>
採掘技術⼤ ⼝径ドリルを⽤いた広範囲鉛直採掘⽅式 吊り下げ式縦掘型掘削機⽅式
⼤ ⼝径ドリルにより、メタンハイドレートを掘削する⼿法。
複雑な海底地形や脆弱な海底地盤にも対応可能。 掘削物と共に周辺海⽔を吸い込むため、⾼濁度⽔が発⽣ しない。
技術の概要
評価委員会における主な評価コメント
本技術は、海底ダイヤモンド掘削で実績のある⼿法を応⽤ したものであり、開発対象の物理特性は異なるが、有望な⼿法と考えられる。
採掘によって発⽣ した掘削物を吸⼊するため、環境影響の観点か
らも優位性が⾼い。
本技術は、他の海底鉱物資源でも研究されており、メタンハイドレー
トへの応⽤にも期待される技術である。 表層型メタンハイドレート賦存域で想定される⽐較的軟弱な地盤に
特化した掘削機の開発になるが、新規に技術開発するよりも確実との印象を受ける。
縦掘型掘削機でメタンハイドレートを掘削する⼿法。 掘削装置は、陸上⼟ ⽊ ⼯事の知⾒や経験から設計。また、掘削し
たメタンハイドレートを回収する浚渫( しゅんせつ) 装置は、海底熱⽔鉱床パイロット試験の技術を応⽤ 。
縦掘型掘削機とし、掘削機の移動については吊り下げ式を採⽤ している。軟弱地盤を考慮して機体沈下を防⽌できる構造とする予定。
技術の概要
評価委員会における主な評価コメント
縦掘型採掘機の3 D図
<第36回メタンハイドレート開発実施検討会(2020.3.16)資料5>
特定された有望技術 <要素技術のうち採掘技術>
<MH層の賦存状況>精密地下構造,ハイドレート安定領域下限深度
<海底の状況等>海底地盤強度,海底現場状況
MH層そのもののデータ MH層そのものではなく,周辺の状況のデータ
年度 2019 2020 2021 2022
賦存状況等の把握
・⑦精密地下構造調査
表層型メタンハイドレートの存在が確認されている海域において、高分解能海上三次元地震探査を実施し、表層型メタンハイドレート賦存域の精密地下構造データの取得に取り組む。
・⑧熱流量調査
熱流量データを取得し、高分解能海上三次元地震探査データに観察されるBSR分布と併せて解釈することでハイドレート安定領域下限深度の評価に取り組む。
海底の状況等の把握
・⑩地盤強度調査
表層型メタンハイドレートの存在が確認されている海域を対象に、海底及びメタンハイドレート賦存深度付近までの胚胎層の地盤強度調査を行う。
・⑨海底現場状況調査
底層流、塩分濃度、海底水温、圧力、海底下のメタンガス、メタンプルーム等の海底の現場状況を把握するための海洋調査を実施する。
海洋産出試験の実施場所に関する検討
上述の調査結果等を踏まえ、海洋産出試験の実施場所を特定するための検討を行う。
海洋産出試験の実施場所の特定に向けた海洋調査
MH層そのものを対象
MH層そのものではなく,周辺の状況を対象
昨年度報告済
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今後の海洋調査・海域環境調査に関する考え方
山陰~北陸沖(隠岐トラフ)
上越沖(富山トラフ)
庄内沖(最上トラフ)
• 物理探査<物理探査船> ⑦高分解能三次元地震探査
• 海底機器観測<ROV> ⑧熱流量調査 ⑨底層流等のモニタリング ⑫海底環境調査
• 掘削調査<掘削船> ⑩地盤強度調査 ⑫海底環境調査
• 海域環境調査<ROV,海洋観測船> ⑪海底画像マッピング ⑫海底環境調査 ⑬海洋観測
将来の表層型メタンハイドレートに係る海洋産出試験を見据え、電磁探査、掘削調査、潜航調査等の詳細データが揃っている3海域をモデル調査海域として、必要な海洋調査を実施していく。
海底地形(着色部)は、広域地質調査(2013~2015)実施海域
海洋調査・海域環境調査の実施予定海域 調査項目(使用船舶毎)
番号(丸数字)は次ページの表に対応
※あくまで現時点での計画であり、今後実施時期や調査項目について関係者等と調整させていただく予定です。
<第37回メタンハイドレート開発実施検討会(2020.12.8)資料5に一部追加>
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調査実施予定3海域・地質構造が異なる
→集積機構の違い・データが揃っている
調査項目①〜⑥
※あくまで現時点での計画であり、今後実施時期や調査項目について関係者等と調整させていただく予定です。
海洋調査・海域環境調査の実績と今後の実施計画
調査項目 山陰~北陸沖(隠岐トラフ)
上越沖(富山トラフ)
庄内沖(最上トラフ)
①広域地質調査(ガスチムニー構造の探索) 実施済 実施済 実施済
②詳細地質調査(特異点周辺の詳細地形・地質構造探査) 実施済 実施済 実施済
③海洋電磁探査(比抵抗分布の把握) 実施済 実施済 実施済
④掘削同時検層(坑井の物性測定) 実施済 実施済 実施済
⑤掘削地質サンプル採取(ハイド レー ト及び堆積物採取) 実施済 実施済 実施済
⑥ROV潜航調査(簡易環境把握調査) 実施済 実施済 実施済
⑦高分解能三次元地震探査(精密地下構造探査) 2021 実施済 2019
⑧熱流量調査(賦存領域下限深度の把握) 計画中 計画中 2020-2021
⑨海底機器観測(底層流等のモニタリング) <+環境> 計画中 計画中 2020-2021
⑩地盤強度調査(コーン貫入試験) <+環境> 計画中 計画中 2021
⑪海域環境調査(A)(海底画像マッピング)<+海底状況> 計画中 2021 2020
⑫海域環境調査(B)(海底環境調査) <+海底状況> 計画中 2021 2020
⑬海域環境調査(C)(海洋観測) 計画中 2021 2020
資源量把握に向けた調査(2013~2015)
資源量把握に向けた調査(2013~2015)
賦存状況等を把握するための海洋調査(2017~)賦存状況等を把握するための海洋調査(2017~)
海域環境調査(2020~)海域環境調査(2020~)
凡例 海底の状況等を把握するための海洋調査(2020~)
海底の状況等を把握するための海洋調査(2020~)
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<第37回メタンハイドレート開発実施検討会(2020.12.8)資料5>
5月 2019年 6月 2019年 7月 2019年 8月 9月
庄内沖 (漁期)
・高分解能三次元地震探査(HR3D)
7/29~8/28(31日)(2D)
8/20~8/23(4日)
(漁期)
上越沖
山陰~北陸沖
(漁期) (漁期)
海洋調査・海域環境調査 2019年度実施状況
山陰~北陸沖(隠岐トラフ)
上越沖(富山トラフ)
庄内沖(最上トラフ)
⑦高分解能三次元地震探査(精密地下構造探査) 2021 実施済 2019
⑧熱流量調査(賦存領域下限深度の把握) 計画中 計画中 2020-2021
⑨海底機器観測(底層流等のモニタリング) <+環境> 計画中 計画中 2020-2021
⑩地盤強度調査(コーン貫入試験) <+環境> 計画中 計画中 2021
⑪海域環境調査(A)(海底画像マッピング)<+海底状況> 計画中 2021 2020
⑫海域環境調査(B)(海底環境調査) <+海底状況> 計画中 2021 2020
⑬海域環境調査(C)(海洋観測) 計画中 2021 2020
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<HR3D>つしま(295t)<2D>かいゆう(1,292t)
調査項目⑦ 高分解能三次元地震探査
2019年度 庄内沖(最上トラフ) 実施済
ストリーマーケーブル
海底
音波が海底面や地層境界で反射
地層1
地層2
エアガン
調査船警戒船
ケーブル本数 ケーブル長 ケーブル曳航幅 曳航速度
三次元探査 6本 約 150 m 約 60 m 約 3 ノット
二次元探査 1本 約 2,000 m (1本のみ) 約 3 ノット
2021年度 山陰〜北陸沖(隠岐トラフ) 実施予定
約150m
約60m
ケーブル6本曳航式音波探査(三次元探査)の模式図
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この後の講演(横田)で詳細報告
胚胎深度が浅い → 探査深度浅くても良い(約1km)→ 小型のエアガン(発振源)を使用可能
→ 比較的高周波 → 高分解能(深度方向)→ 発振間隔が短くできる(3〜3.5sec)
→ 高分解能(水平方向)
ケーブルが短い・ 小回りが効くため小型船でも調査可能だが,速度情報が得られない→ ケーブル長の長い(二次元)探査を実施して,速度情報を取得
IL50
IL145
IL263
IL412
高分解能三次元地震探査(2019年庄内沖)の結果目的:精密地下構造探査 →賦存状況の把握
調査海域の海底地形・北東-南西方向の海丘・頂部水深:約530m・頂部に凹地形:MHが賦存・LWD3点(2014年実施)
断面図(⾧軸方向,深度変換)
多数の高角正断層
600~650mに強反射面頂部凹地形直下の音響空白域 →MH?700m以深の音響空白域 →ガス?
北西側斜面
海丘中央部
北西側斜面
南東側斜面
多数の断層
700m付近に強反射面下位の音響空白域 →ガス?
断層・BSRの抽出・解析、掘削同時検層(LWD)や海洋電磁探査との統合解析→ 表層型MHの賦存状況・形状の精密把握
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<第37回メタンハイドレート開発実施検討会(2020.12.8)資料5>
この後の講演(横田)で詳細報告
賦存状況等の把握物理探査データ取得・解析の実績と今後の実施計画
山陰~北陸沖(隠岐トラフ)
上越沖(富山トラフ)
庄内沖(最上トラフ)
<精密地下構造の把握>
②詳細地質調査(特異点周辺の詳細地形・地質構造探査) 2014 2013 2014
③海洋電磁探査(比抵抗分布の把握) 2015 2014 2017
④掘削同時検層(坑井の物性測定) 2015 2014-2015 2014
⑦高分解能三次元地震探査(精密地下構造探査) 2021 2015 2019
⑦’ 地震探査データ詳細解析(BSR・断層等の抽出・解析) 2022 2019 2020
統合処理・解析(三次元地震探査,海洋電磁探査,掘削同時検層) 2022 2017,2020 2020
<地下温度構造の把握>
⑧熱流量調査(賦存領域下限深度の把握) 計画中 計画中 2020-2021
データ取得(海洋調査)2018年度まで
データ取得(海洋調査)2018年度まで
凡例 データ解析(陸上)2017,2019~2022年度
データ解析(陸上)2017,2019~2022年度
データ取得(海洋調査)2019~2022年度
データ取得(海洋調査)2019~2022年度
三次元比抵抗分布海底下浅部構造(AUVによる調査)
③海洋電磁探査②詳細地質調査 ⑦高分解能三次元地震探査 ⑧熱流量調査N Umitaka Spur
BSR Time Structure
BSR Pull-ups
三次元地下構造海底熱流量測定装置
(SAHF)
④掘削同時検層
LWDによる地層性状評価
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5月 2020年 6月 2020年 7月 8月 9月 10月 2020年 11月
庄内沖 漁期
・海域環境調査(A)(ROV海底画像
マッピング)6/17~30(14日)
・海域環境調査(B)(C)(ROV観測/試料採取)
(海洋観測)7/6~23(18日)
(漁期)・海底現場状況調査
(ROV機器設置)11/2~23(22日)
上越沖
山陰~北陸沖
漁期 (漁期)
海洋調査・海域環境調査 2020年度実施状況
山陰~北陸沖(隠岐トラフ)
上越沖(富山トラフ)
庄内沖(最上トラフ)
⑦高分解能三次元地震探査(精密地下構造探査) 2021 実施済 2019
⑧熱流量調査(賦存領域下限深度の把握) 計画中 計画中 2020-2021
⑨海底機器観測(底層流等のモニタリング) <+環境> 計画中 計画中 2020-2021
⑩地盤強度調査(コーン貫入試験) <+環境> 計画中 計画中 2021
⑪海域環境調査(A)(海底画像マッピング)<+海底状況> 計画中 2021 2020
⑫海域環境調査(B)(海底環境調査) <+海底状況> 計画中 2021 2020
⑬海域環境調査(C)(海洋観測) 計画中 2021 2020
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第一開洋丸(1,390t)
新世丸(697t)ROV seaeye Leopard ROV はくよう3000
調査項目⑪⑫⑬ 海域環境調査(A)海底画像マッピング (B)海底環境調査 (C)海洋観測
ROV ROV
海底設置観測機器
ベイトトラップ
コアサンプラー
CTD-多筒採水器
プランクトンネット
三次元解析用水中高詳細カメラ
2020年度 庄内沖(最上トラフ) 実施済
2021年度 上越沖(富山トラフ) 実施予定(未定) 山陰〜北陸沖(隠岐トラフ) 計画中
凹地形
バイオマット
CTD観測 プランクトンネットベイトトラップ
コアサンプラー
この後の講演(鈴村)で詳細報告
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面的調査 ピンポイントでの調査
周辺を含む調査
調査項目⑧ 熱流量調査/調査項目⑨ 海底機器観測
2020年度 庄内沖(最上トラフ) 設置済、2021年度 回収予定
(未定) 上越沖(富山トラフ) 設置・回収 計画中(未定) 山陰〜北陸沖(隠岐トラフ) 設置・回収 計画中
CTD:塩分濃度、水温、圧力を計測濁度計:底層水の濁りを計測
沈降粒子を採取
流速計は海底面から数十mまでの高さの流向・流速を計測
ROV
海底
無人潜水機(ROV)で設置
CTD 流速計
濁度計
水温計地中温度計海底湧出量計
水温を計測
海底下温度を計測海底面から湧出する流体の流速を計測
セジメントトラップ
ROV母船(新世丸) ROV(はくよう3000)
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調査項目⑩ 地盤強度調査(掘削調査)
ワイヤーで吊り下げ
海底に台を設置(計測終了後、回収)
一定速度でさし込み
掘削船
海底
CPTプローブ
・コーン貫入試験(CPT)・三軸圧縮試験(試料採取)・コア分析(地質・地化学・微生物)
→環境影響評価
掘削船(2015年度使用)
2021年度 庄内沖(最上トラフ) 実施予定(未定) 上越沖(富山トラフ) 計画中(未定) 山陰〜北陸沖(隠岐トラフ) 計画中
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