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第3期障害者プラン策定にむけて 基本と提言

~自閉症とりわけ行動障害の方について~

「自閉症懇談会」議論要点録

巻頭 ○~第3期障害者プラン策定にむけて 基本と提言~ 概要 ・・・・1頁

○「自閉症懇談会」委員名簿 ・・・・2頁

Ⅰ 経過 ・・・・3頁

Ⅱ プラン策定にむけた3つの基本 ・・・・3頁

Ⅲ プラン策定にむけた7つの提言 ・・・・4頁

Ⅳ 資料

1 用語説明 ・・・・7頁

2 家族の声 ・・・13頁

3 現場の状況 ・・・14頁

平成26年8月8日

進路対策研究会「自閉症懇談会」

座長 谷口政隆

1

第3期障害者プラン策定にむけて 基本と提言 概要

~自閉症とりわけ行動障害の方について~

■プラン策定にむけた3つの基本

基本1 施策の基本は「脱家族化」(社会的支援を第一義とし、家族との連携による支援

策の充実)へ

基本2 次期プランの6年間で待機者を0に

基本3 行動変容を促す包括的かつ合理的な行政施策の検討を

■プラン策定にむけた7つの提言

提言1 入所施設の地域移行を阻害する要因の解明を

提言2 グループホームへの対策

~入所施設と同等の要員・予算の確保や重度訪問介護の積極的な導入等を~

提言3 アセスメント・モニタリングの確立を

提言4 行動障害の方を支える人材育成

~実地研修を含む体系的な研修を早急に拡大し履歴搭載事項に~

提言5 ファミリーサポートの充実を

提言6 啓発活動の強化

提言7 入所施設、短期入所・ショートステイの実態把握と役割・機能の再構築を

■3つの基本、7つの提言のまとめ ~横浜市に「検討委員会」の設置を~

基本と提言のまとめは以下のとおりであり、第3期プランにおいて実現して頂きたい。

さらに、これらをより包括的かつ合理性のあるシステムとするため、早急に横浜市に「検

討委員会」を設置し、第3期プランにむけて、また、プラン開始後も実践的検討を重ねて

頂き、改善策を施策に反映して頂きたい。

○地域へ

1 啓発の強化

○社会資源全般へ

1 アセスメント・モニタリング・支援方法の確立、共有と公的支援

2 行動変容を促す支援者育成・確保と公的支援

3 行動変容を促す環境整備

○グループホームへ

1 体制整備

2 重度訪問介護の導入を積極的に

3 スプリンクラー設置への対応等増設にむけた消防法等各法への対策を

○入所施設へ

1 地域移行の促進をー入所者の再調査をー

2 役割・機能の再構築を

○短期入所・ショートステイへ

1 役割・機能の再構築を

○障害者・家族へ

1 アセスメント・モニタリングの共有等ファミリーサポートを

2 医療と連動できる相談機関を

3 重度訪問介護の導入を

4 幼児期、学齢期との連動を

2

「自閉症懇談会」委員名簿

「自閉症懇談会」開催状況

第1回 平成26年1月30日

第2回 平成26年6月 5日

第3回 平成26年 7 月15日

進路対策研究会「自閉症懇談会」事務局

横浜市社会福祉協議会障害者支援センター

住所:〒 231-8482 横浜市中区桜木町 1 丁目 1 番地

横浜市健康福祉総合センター 9 階

TEL: 045-681-1211

FAX: 045-680-1550

1 座長(学識経験者) 谷口 政隆 神奈川県立保健福祉大学名誉教授

2 学識経験者 在原 理恵 神奈川県立保健福祉大学専任講師

3 宍倉 孝 横浜市自閉症児・者親の会前々会長

4 八島 敏昭 横浜市心身障害児者を守る会連盟代表幹事

5 中野 美奈子 横浜市自閉症児・者親の会会長

6 中村 公昭 東やまた工房施設長

7 山寺 由美子  つぼみの家所長

8 赤川 真 中区本牧活動ホーム所長

9 斉藤 達之 つるみ地域活動ホーム幹(みき)施設長

10 原田 淳 花みずき施設長

11 教育 今村 博実 神奈川県立三ツ境養護学校総括教諭

12 金井 国明 横浜市健康福祉局障害企画課企画調整係担当係長

13 髙橋 啓 横浜市健康福祉局障害支援課事業支援係長 

14 岸 和弘 横浜市健康福祉局障害支援課事業支援係担当係長 

15 小嶋 巳千代 横浜市社会福祉協議会 障害者支援センター事務室次長

16 相川 勇 横浜市社会福祉協議会 障害者支援センター支援課職員

17 岩本 渚 横浜市社会福祉協議会 障害者支援センター支援課職員

事務局

行政(オブザーバー)

家族

福祉

№ 区分 氏名 所属

3

Ⅰ経過

1983 年、自閉症の研究者であるエリック・ショプラー(米国、ノース・カロライナ大

学精神科教授)が来日し、自閉症セミナーを開催してから 30 年がたつ。その後日本でも

自閉症、とりわけ行動障害の方に関する研究、実践は継続され現在にいたっているが、関

連施策はなかなか進展せず、平成 26 年、進路対策研究会の一環として「自閉症懇談会」(*

1・ 7 頁参照 )を立ち上げ、課題や今後の展望を検討することとした。3回にわたり開催

したこの懇談会においては、成人期の自閉症とりわけ行動障害の方の置かれている状況と

その方々への対応に議論が集中した。

特に平成27年度からスタートする「第3期障害者プラン」では「次期6年間で入所施

設やグループホームへの待機者を0にしてほしい」との共通認識が家族、福祉、教育関係

者で確認され、それを実現するための提言、課題が議論されたので要点(概要は冒頭掲載)

を記載する。

これらの提言は短、中・長期プランとして整理して取り組むべきであるが、喫緊の課題

は入所施設やグループを早急に必要とする待機者問題の解消と行動障害の方に対応でき

るグループホームの増設であると考える。中・長期的には市内全域で専門性のある支援者

を拡充することや幼児期、学齢期の療育、教育の更なる充実やライフサイクルを通じた連

携、連動が必須であると考えている。なお、支援者の拡充は結果として中・長期間を要す

ることもあると思われるが、その端緒となる研修会の開催等は次期プラン開始と同時に取

り組んで頂きたい。

Ⅱプラン策定にむけた3つの基本

基本1 施策の基本は「脱家族化」(社会的支援を第一義とし、家族との連携による支援

策の充実)へ

「市内障害福祉施設実態調査」(横浜市が実施した調査・平成25年3月に報告書が示

された。以下、「実態調査」と言う)(*2・ 7 頁参照)では、 651 名の在宅者がグループ

ホームや入所施設を必要としており、うち「特別な対応」、「早期の対応」が必要と思われ

る方は約 280 名、42%に達する。その方たちの地域生活は危機に瀕しており、次期プラン

ではこのような事態に陥る前に家族介護を前提としない「脱家族化」の基本を打ち立て、

施策はその方向へ収斂して頂きたい。成人期を迎えた方は親元から離れて暮らす、独立し

ていくのが当たり前という施策の実現を望む。

基本2 次期プランの6年間で待機者を0に

上記市の実態調査では待機者の約 50%が行動障害の方という驚くべき数字が示された。

家族では支えきれない行動障害の方へ早急な対応をすべきであり、第3期障害者プランで

は「待機者0」となるよう対策を明確化して頂きたい。

基本3 行動変容を促す包括的かつ合理的な行政施策の検討を

「1経過」で紹介したエリック・ショプラー氏は同氏を中心とし、ノース・カロライナ

州で TEACCH プログラム( Treatment and Education of Autist ic and related Communication

handicapped Children:(自閉症と自閉症に関連したコミュニケーションに障害をもつ子ど

もの治療と教育)を開発・実践した。日本においては主に構造化と個別対応という技術プ

ログラムは浸透しつつあるが、このプログラムは本来、家族、家族会との協働や地域の社

会資源への普及等を含む包括的な行政施策(制度)である。TEACCH プログラムが成功し

たといわれる背景には、経済的な合理性という側面も見のがせないという意見もある。今

4

後は、TEACCH プログラムをはじめ国内外の成功事例を参考に、経済的な合理性という側

面も視野にいれた包括的な基本的施策の骨格(枠組み)を行政レベルで検討して頂きたい。

Ⅲ プラン策定にむけた7つの提言

提言1 入所施設の地域移行を阻害する要因の解明を

実態調査では 1043 名の入所施設入所者のうち、グループホーム等への地域移行が困難

と考えられる方が 883 名おり、そのうち行動障害が原因と考えられる方が 703 名、79.6%

に達するという驚くべき実態が浮かびあがった。行動障害の方のグループホーム等への地

域移行が困難と判断された背景には、主に支援方法とグループホームの問題があると思わ

れる。支援方法によっては軽減できる行動面もあり、地域移行への可能性が広がるものと

思われる。また、グループホームについてはそもそも行動障害の方の「住まい」としての

制度設計がなされていないのではないかと考えられる。これら両者の改善がなされれば、

地域移行が困難な方の数は減少すると思われる。地域移行の阻害要因を解明し、その対策

を講ずる必要がある。

提言2 グループホームへの対策

~入所施設と同等の要員・予算の確保や重度訪問介護の積極的な導入等を~

①横浜市自閉症児者親の会が実施したグループホームへのアンケート調査(*3・ 10 頁

参照)においても、現行のグループホームの制度では行動障害の方の受け入れは困難であ

るとの結果が示されている。平成 24 年度全国グループホーム・ケアホーム実態調査(公

益財団法人日本知的障害者福祉協会調査)によると、障害支援区分5、6の方のグループ

ホーム入居者割合は 11.5%である。また、障害支援区分5、6の方であっても行動障害

がない方もいる。国は第 3 期障害福祉計画で入所施設の3割の方をグループホームへ移行

するとしているが、あえて行動障害の方をグループホームで受け入れるには相当な政策的

なインセンティブが必要であろう。グループホームと入所施設の職員配置の相違は厳然と

してあり、行動障害の方をグループホームに受入れるほど現場の逼迫度は増す。グループ

ホームへ入所施設と同等の要員・予算の確保をして頂きたい。

②一方、グループホームの定員数が増加する傾向もあるが、とりわけ行動障害の方は集

団生活になじみにくく、小規模なところで個別化していく必要があると考えられる。

③平成26年、重度訪問介護の対象が身体障害の方から障害支援区分 4 以上で行動上著

しい困難を有し、常時介護を要する方にも拡充された。行動障害の方に必要な支援を提供

できる支援者が傍らにいる「重度訪問介護」を在宅の方、グループホーム入居者へ積極的

に導入すべきであり、その人材育成と必要な量を確保・予算化して頂きたい。

④グループホームには今後、スプリンクラーの設置が求められる等、グループホームを

設置すること自体が困難となりつつある。社会資源の増強という視点で大きな課題となっ

ており、消防法等各法への対応策を明確にして頂きたい。

提言3 アセスメント・モニタリングの確立を

①アセスメントとモニタリングの確立を

どの現場も試行錯誤の中で自閉症、とりわけ行動障害の方へ支援を行っている現状があ

る。行動障害が 100%なくなるということではないが、現場の適切な支援の積み重ねで、

軽減していくことも明確になっており、そのためには、アセスメントとモニタリングの基

本型並びに支援方法を確立・共有する必要がある。さらに、職員の交替、本人の加齢、健

康状態の変化等その時々で対応の修正も必要となる。アセスメント、モニタリングが循環

する体制を確立し、そのプロセスの中で、本人、家族、支援者が支援のポイントを共有し

5

て行くことが可能となれば、行動障害の方の暮らしは、より安定化に向かうものと思われ

る。

②アセスメント・モニタリングを中核とした支援のシステムづくり

福岡市では平成 25 年から「強度行動障害者への共同支援」(*4・ 10 頁参照)という

システムを開発し、法人間における支援方法の共有化を促進するため、公的補助(人件費

の保障等)を開始した。横浜においてもこういった手法の導入等実施可能なシステム検討

が必要であると考える。そのために、横浜市に検討会を設置し、モデル的な実践を行い、

2~3年単位で現在の事業の再整備と新たな制度を構築していく循環を創り出して頂き

たい。

提言4 行動障害の方を支える人材育成

~実地研修を含む体系的な研修を早急に拡大し履歴登載事項に~

①当懇談会では、「行動障害の方に対して人手でカバーしていることも少なからずあり、

系統的な支援を行っているとは言えない状況もある」との現場の声も聞かれた。国は平成

25 年度の新規事業として「強度行動障害支援者養成研修」(*5・12 頁参照)を開始し、

人材育成にドライブをかけている。この研修は都道府県を対象とした事業であるが、政令

市である横浜市も実施する等、人材育成に急ぎ着手して頂きたい。また、実地形式の研修

も必須で、例えば臨床経験が豊富な専門職員がトレーナーとなり、実際に自閉症児者をモ

デルとして、数泊間の実地セミナーを行っている神奈川県自閉症児・者親の会連合会主催

(*6・ 12 頁参照)のものもある。これらを参考としながら、実地研修も早急に着手し

て頂きたい。ちなみに上述の国研修では、「強度行動障害の方への支援の基本方針」とし

て次の 6 つの項目をあげている。

①構造化された環境の中で

②医療と連携しながら

③リラックスできる強い刺激を避けた環境で

④一貫した対応のできるチームを作り

⑤自尊心を持ち一人でできる活動を増やし

⑥地域で継続的に生活できる体制づくりを進める

②さらに、専門性を評価するために研修を受けた受講者(=事業者)に公的な加算をつ

ける等インセンティブを持たせ、かつ、研修受講者を履歴登載事項とする等横浜市が把

握・フォローアップする状況にして頂きたい。

提言5 ファミリーサポートの充実を

①行動障害軽減のための子育て支援を

当懇談会では「我が子に良いと思うことをしてきたが、手を抜いたら間違いなく、子

供は行動障害になるであろう」という家族の話が紹介された。家庭でどのような工夫を

すれば行動障害が軽減できるのか、家族の育児力の向上を促すファミリーサポートが必

要である。長期的な視点にたてば、ファミリーサポートの充実が待機者ニーズを結果と

して軽減していくことにもつながると考える。

②相談支援体制の充実と医療へのスムーズなつながりを

また、早期からの相談体制の充実は大切で、どこに相談に行けばよいのかわからない保

護者も多くいる。自閉症における専門的な支援を受ける場合、カウンセリング料が高いと

いったケースも多く、相談が困難な家庭もある。さらに、相談支援につながっていくと同

時に医療支援とスムーズにつながることも大切である。医療との連携は第3期障害者プラ

ンに明確に盛り込むべきである。行動障害の方で、服薬調整が必要な方は多くおり、福祉

6

的な支援だけでは限界もある。さらに、通院時等、医療現場に本人の正確な情報が伝わっ

ていないこともあり、そのことをカバーする通院支援や「自閉症」を理由に内科等の受診

を断わられたといった話もでており、医療関係者への啓発も欠かせない。

③一次相談支援機関に療育、教育の分野も

教育の分野にも「教育相談コーディネーター」が配置されている等、療育、教育との協

働をさらに充実させるため、第3期プラン「相談支援体制一次相談支援機関」の中に療育、

教育機関も位置づけて頂きたい。

提言6 啓発活動の強化

英語圏では「問題行動」や「不適応行動」という表現はなくなってきており、「チャレ

ンジング・ビヘービア」と表現されてきている。間違った接し方のために起きてしまう事

象への対応を変えることで行動が変容していくという意味である。わかりづらい自閉症

という障害をわかりやすく理解でき、行動変容を促すことを可能にする配慮が簡潔に記載

されているパンフレットを作成する等啓発活動を強化する必要がある。

提言7 入所施設、短期入所・ショートステイの実態把握と役割・機能の再構築を

とりわけ、今回の懇談会においては「住まい」について議論が集中した。「ノーマライ

ゼーション」を世界に広げたヴォルフェンス・ベルガーは、「入所型施設」を否定してい

たが、「行動障害の方の行動変容を促す生活施設は必要である」とも提言している。行動

障害のある方の「住まい」については、グループホームを基本としながら、入所施設は地

域移行を促進するための生活様式と支援様式をもつ場として機能するよう整備されたい。

その際、特に入所施設に関しては次のような現状と課題が参加者より提起されたので、こ

れらも踏まえ、再構築をして頂きたい。

(1) 入所施設の現状と課題

①実態調査では、入所施設やグループホームの待機者 651 名中、「家族が高齢疾病の状況」

にあるとの回答が 334 件、50%を超えるというデータが示され、一方入所施設の現場から

は「施設 1 名の枠に 100 名の申込みがあった」、「横浜市内に受け入れる枠がなく他県のグ

ループホームや施設に打診した方が1ヶ月で3名にのぼった」といった現状が報告された。

さらに、市内入所施設の定員数は知的、身体障害の方合わせて 1143 人(「 2014 年版・福

祉のあんない」)で、実際入所施設を利用されている方は平成 25 年度末で 1544 人(市が

把握している実績数値)とある。「かなりの多くの方が市外・県外施設を利用しているの

ではないか」、「その方たちは行動障害の方ではないのか」、「この他に精神科の病院に入院

されている方も多数いらっしゃるのではないか」との意見も出された。今後、この状態は

どこまで行くのかといった危惧の声が上がっている。

現在、入所施設には関係機関から以下のようなオーダーがあり、現場は混乱しつつある。

横浜市における入所施設の実態把握を行い、その役割、機能を再構築して頂きたい。

【関係機関からの依頼内容】

・在宅で生活が困難になったが、グループホームに住むのは難しいと判断されている方。

・児童施設で加齢児となって成人施設を希望している方。

・精神科の病院にいて退院を目指している方。

・触法行為で収監され医療少年院や刑務所にいる知的に障害のある方。

・若年性痴呆症の方の受け入れ。

②また、行動障害の方の受け入れについては、特定の施設への依存は困難であるとの意

見も多数であった。一定の地域内で特定の施設が行動障害の方への対応を行い、地域移行

を進める試みを行っているところもあるようであるが、困難な状況も報告されている。こ

のような状況に鑑み、市内全域、全施設が行動障害の方に対応できるようにしていくべき

7

であり、特に大規模な施設では行動障害の方は定員の1/4程度にし、事業所全体で職員

を循環させながら、継続できる支援システムを作り出す必要がある。入所者の多くが行動

障害の方の場合、安全管理が先行し、支援方法も偏る等、職員育成上も問題がある。

(2) 短期入所・ショートステイの現状と課題

現在、短期入所・ショートステイはレスパイト・ケア、緊急時の受け皿として機能して

いる。しかし、当懇談会では逼迫した状況下にある方が長期間にわたり、これらのサービ

スをたらい回しにされているという状況や「予約自体が困難でレスパイトとして機能して

いるのか」「行動障害の方にとって、1、2泊といった短期利用は、不安感も大きく、本

人にとってどのような意味があるのか」といった意見も聞かれた。とりわけ行動障害の方

にとって、緊急時の受け皿として利用する場合、行動障害を深刻化させる恐れもあるので

はないかとの議論もなされ、今後の検討の際、短期入所・ショートステイの役割・機能を

是非、整理して頂きたい。

Ⅳ 資料

1 用語説明

*1進路対策研究会「自閉症懇談会」

※進路対策研究会

1979 年(昭和 54 年)の養護学校義務化後、卒業後の進路について検討する場はほとんどな

く、情報を共有する場が必要であるとの先生の要望に応え、当時の「財団法人横浜市在宅障害

者援護協会(現:障害者支援センター)」が事務局となり 1984 年(昭和 59 年)に発足。進路調

査・地域生活に関する課題等の分析、情報共有を関係機関と行ってきた。現在、横浜市内在住

の生徒が在籍する特別支援学校、フリースクール、サポート校、技能連携校等 42 校で構成され

ている。

進路の調査結果

平成 25 年度特別支援学校等卒業予定生徒 677 人中、自閉症の方は 235 名( 34.7%)。発達障

害も合わせれば約 5 割が自閉症スペクトラムという結果がでており、今後も同様の傾向が続く。

※自閉症懇談会

自閉症児者の進路と暮らしを検討するため、家族、福祉、教育、行政(オブザーバー)等が

一堂に会してその実態と必要な支援を検討するために、「進路対策研究会」の一環として 2014

年(平成 26 年) 1 月 30 日に発足。これまで計 3 回( 1 月 30 日、 6 月 5 日、 7 月 15 日)開催し

ている。

*2「市内障害福祉施設実態調査」

(1)調査実施主体

横浜市健康福祉局障害支援課

(2)調査目的

市内障害福祉施設の実態(特に、事業所等における支援の状況及び建物の状況)を把握

し『横浜市障害者プラン(第 3 期)』を定めるための検討資料とするために行われた。

(3)調査対象

横浜市内の地域活動支援センター作業所型やグループホーム等 891 事業所及び 18 区福

祉保健センター。対象者 15,748 件。

(4)調査時期

平成 24 年 10 月 1 日

(5)調査内容

①対象者の属性

②利用者及び保護者(家族等)について

8

③夜間サービスについて

④日中サービスについて

⑤土地・建物について

■行動障害に関する調査結果

* 15,748 名のうち 4,400 名 (全体の 28% )が行動障害の方。

*年代別では 20~ 40 代の方の割合が多くなっている。

*うちグループホームや入所施設等の暮らしの場を必要としている方(=待機者)は 651 名、そ

のうち行動障害のある方が 345 名であることが判明。

* 651 名の待機者の緊急度については、特別対応中 73 名( 11%)、要早期対応 203 名( 31%)、将

来の備え 257 名( 39%)未回答 118 名( 18%)であった。

横浜市「市内障害福祉施設実態調査」より

対象者総数 15748待機者 651 651 4.1% →在宅者 15097 345 53.0%行動障害 345 行動障害

行動障害 4400行動障害非該当 11348

うち全5項目に該当 1274項目に該当 3063項目に該当 6132項目に該当 12631項目に該当 2091合計 4400

行動障害

4,400名(28%)

非該当

11,348名(72%)

行動障害の割合

全対象者数:15,748名

127名(3%) 306名

(7%)

613名

(14%)

1,263名(29%)

2,091名(47%)

全5項目に該当 4項目に該当

3項目に該当 2項目に該当

1項目に該当

行動障害4,400名の内訳

【参考】5項目

自傷他害、多動

停止、食事関係、

排せつ関係、睡

眠障害

市内障害福祉施設ワーキンググループ当日検討資料より

入所者総数 入所者総数 1043うち 入所施設以外での生活ができる状態の方 160うち 入所施設以外での生活が難しい方 883

行動障害への包括的支援が必要 122行動障害への支援が必要 581その他(医ケア必要、触法等) 180

待機者

651名(4%)

待機者以外

15,097名(96%)

待機者割合特別

対応

73名

(11%)

要早

期対

203名

(31%)

将来

の備え

257名

(39%)

未回

118名

(18%)

待機者651名の内訳②

あり

345

(53%)

なし

306

(47%)

待機者651名の内訳①

行動障害あり

行動障害なし

全対象者数:15,748名

9

*入所施設・宿泊型自立訓練事業利用者 1,082 名の地域移行(グループホーム等地域での暮らし)

の阻害要因(複数回答)

・特別配慮(高齢、行動障害等のために一般的なグループホームでの受け入れができないと考

えられる)の方 778 名 (71.9%)

・家族等が地域移行を強く拒絶している方 328 名( 30.3%)

・解決すべき課題はあるが具体的な訓練メニューを進めている段階の方 149 名( 13.7%)

・本人が地域移行を強く拒絶している 77 名( 7.1%)

・グループホーム等の空きがないため 33 名( 3%)

*入所施設利用者 1,043 名のうち、入所施設以外での生活が難しい方と思われる行動障害の方、

医療的ケアの必要な方、触法ケースの方は 883 名 (85%)であった。

入所施設以外での生

活ができる状態の方

160名

(15%)

入所施設以外での生

活が難しい方

883名

(85%)

施設入所者の状態像

行動障害へ

の包括的支

援が必要

122名

(14%)

行動障害へ

の支援が必

581名

(66%)

その他(医

ケア要、触

法等)

180名

(20%)

入所施設以外での生活が難しい方883名の内訳

入所者数:1,043名

10

*3「横浜市自閉症児・者親の会のアンケート調査」

(1)グループホームへのアンケート調査

①調査概要

自閉症者の地域生活、特にナイトケアについて親の会で 2012 年 5 月から 2 年間かけて調査

②調査内容

グループホームの支援面、運営面、入居者の状態等について

③調査対象

ア)親の会会員(家族含む)でグループホームを運営している方:回答 4 グループホーム 18 名

イ)法人が運営しているグループホーム:回答数 7 法人 44 グループホーム

④結果

グループホームの現状について

・旧授産系のグループホームでは支援体制は1人の支援者で 8~ 10 人の支援を行っており、支援

者の平均睡眠時間は 6 時間ほど。一方旧更生系では、手帳では A1、 A2、障害程度区分も平均5の

方が多い。支援体制が最も厚いグループホームでは1人の支援者で約 2.4 人の方を支援している。

行動障害のある方が入居されている場合で、1人の支援者が 4~ 5 人の方を支援する場合、睡眠時

間は3時間程度であった。支援者もしくは運営側に負担がかかっている状況である。

・横浜市ではグループホームは 1 年に概ね 40 か所 (200 名分 )設置がこの数年のペースだが、横浜

の知的障害者は 14,244 名、 1 年に1%しかグループホームに入れない。横浜市「市内障害福祉施

設実態調査」結果では、待機者のうち、親をはじめとする親族等が利用者本人への介護を続ける

意向はあっても体力的に難しい状況になっている方が 5 割、行動障害者は 6 割となっている。高

齢化の前に自閉症者に関する施策を打てなかったひずみが老障介護の増加となって表れている。

(2)家族の大変さに関する調査

①調査概要

自閉症について行政・教育・福祉関係者、他の障害者の保護者等関係者への理解を進めていく

ために 2013 年 6 月から 7 月にかけて調査

②調査内容

家族がご苦労されたことについて

③調査対象

親の会会員。そのうち回答いただいたのは約 30 名

④調査結果

「家族の大変さ」は数値化するのが難しいが、今調査では、保護者のうつ病、不安障害の罹病率

は 70%。特に IQの高い障害児の保護者で顕著であることがわかった。この背景には高機能ほど、行

動範囲や保護者の知らないところでの問題が多くなるなどが考えられる 。行動範囲が広いゆえの苦

労も多く、重度者とは違う視点の施策が必要である。

*4福岡市の「共同支援」システム

福岡市における強度行動障害者に対する支援は、平成 16 年に起こった県内入所更生施設におけ

る入所者虐待事件を契機に取り組みが始まる。平成 18 年 5 月に強度行動障害者を特定の施設で集

中的に支援するのではなく、複数の施設等で広く支援するための「支援方法」等の研究活動を行

うことを目的とし、「福岡市強度行動障がい者支援調査研究会」が設置された。福岡市はこの研究

会のもと実態調査、モデル事業の実施等に取り組み、平成 25 年度にはモデル事業を経て複数事業

所の職員で共同支援を行う「福岡市強度行動障がい者支援事業」(「事業実施要領」 参照 11~ 12

頁)が開始された。

11

福岡市強度行動障がい者支援事業実施要領

福岡市保健福祉局障がい者部障がい者施設支援課

1 目的

重度の知的障がい者で,激しい自傷や他傷等,生活環境に極めて特異な不適応行動を頻回に示し,

日常の生活に困難を生じている障がい児・者( 以下,「強度行動障がい者」という。) の行動障

がいの軽減を図るための的確な支援及び地域生活の援助を行うとともに,福岡市内の障がい者関

係施設・事業所職員の支援技術の向上を図るために,以下の事業を行う。

・強度行動障がい者共同支援事業

・強度行動障がい者研修事業

2 事務局

本事業の事務局を, 福岡市立ももち福祉プラザに置く。

3 強度行動障がい者共同支援事業

(1) 内容

共同支援が必要と認められる強度行動障がい者に対して,指定短期入所事業所,指定共同生活援

助事業所,指定行動援護事業所,福岡市日中一時支援事業 を行う事業所( 以下,「短期入所事業

所等」という。)における支援を対象に,複数事業所の職員で共同支援を行う。

(2)共同支援の実施方法

短期入所事業所等は,以下により共同支援を実施する。

① 対象者の確認

対象者は,自傷・他害行為の頻度が多く,複数職員による共同支援を行う必要がある者とする。

強度行動障がい者の利用を受け入れる短期入所事業所等は,当該強度行動障がい者が本事業によ

る支援の対象となるかについて,事務局に確認を行い,事務局が対象者または短期入所事業所等

に聞き取り調査を行い,対象者の決定を行う。

② 同意

短期入所事業所等は,対象者又はその家族に対して,本事業による共同支援を行うことを説明し,

同意を得る。

③ 共同支援にあたる職員の調整

短期入所事業所等は,共同支援にあたる職員の調整を行い,当該職員及びその所属施設・事業所

長の同意を得たうえで,共同支援にあたる職員を選定し,事務局へ報告を行う。

なお,調整にあたっては,必要に応じて各知的障がい者相談支援センターや事務局から助言を得

ることとする。

④ 共同支援にあたる職員の数

共同支援にあたる職員( 支援実施主体である当該短期入所事業所等以外の施設等に所属する職員)

の数は, 原則2人までとし,支援を行うにあたり特別な事情がある場合は,3人を上限とする。

このうち, 当該短期入所事業所等を経営する法人内の他施設・事業所の職員が共同支援を行う場

合, その数は1人までとする。

⑤ 共同支援にあたる職員の休憩時間

支援時間が夜間に及ぶ場合,共同支援にあたる職員については,原則として 22 時から6時まで

の時間帯を休憩時間とする。なお,宿泊を伴う支援の場合,標準的な拘束時間は, 18 時から翌日

の9時までとする。

⑥ 報告

共同支援実施後は,事務局に対して,支援の実施内容等について報告を行う。

(3) 支給額単価

共同支援として職員を派遣した障がい者関係施設・事業所に対して支給する金額は, 下記のとお

りとする。

① 宿泊を伴う支援の場合 (1泊2日 ) 12,000 円

② 宿泊を伴わない支援の場合 (1日 ) 5,400 円

(4) 派遣施設・事業所

① 対象施設・事業所

職員を派遣する施設・事業所は,福岡市内に所在する障がい者関係施設・事業所とする。

② 職務研修としての位置づけ

共同支援にあたる職員の服務は,職務研修として位置づけるものとする。

③ 職員に対する手当等の支給

職員を派遣した施設・事業所は,共同支援に対する支給額を受領し,当該共同支援にあたった職

員に対し,手当等の形で支払いを行う(勤務が割り振られている時間以外に共同支援にあたった

場合は, 時間外勤務手当の支給を行う。)。

4 強度行動障がい者支援研修事業

(1) 内容

強度行動障がい者の支援に関する専門知識・技術を学び, 支援技術の向上を目的として,障がい

12

福祉サービス事業所職員, 相談支援センター職員,特別支援学校の教職員等を対象に,講義・実

習等の研修を行う。

(2) 職員に対する手当等の支給

研修のうち, 特に専門性の高い実践的な内容と福岡市が指定した研修に職員を派遣した障がい者

関係施設・事業所等(ただし,国,地方公共団体及びこれらが設置する学校職員は除く) に対し

て, 1人に当たり日額 7,800 円を支給する。

(3) 派遣施設・事業所

① 職務研修としての位置づけ

強度行動障がい者研修にあたる職員の服務は,職務研修として位置づけるものとする。

② 職員に対する手当等の支給

職員を派遣した施設・事業所は,研修に対する支給額を受領し,当該強度行動障がい者研修に 参

加した職員に対し,手当等の形で支払いを行う(勤務が割り振られている時間以外に強度行動障

がい者研修に参加した場合は,時間外勤務手当の支給を行う。)。

5 その他

この要領に定めるもののほか,この要領の実施に関し必要な事項は,保健福祉局長が別に定める。

附 則

この要領は,平成 21 年 10 月1日から施行する。

附 則

この要領は,平成 23 年4月1日から施行する。

附 則

この要領は,平成 25 年4月1日から施行する。

附 則

この要領は,平成 26 年4月1日から施行する。

*5「強度行動障害支援者養成研修」

平成 25 年 2 月 25 日の障害保健福祉関係主管課長会議の中で、「強度行動障害を有する者等に

対する支援者の人材育成について」が明記された。独立行政法人国立重度知的障害者総合施設の

ぞみの園が、平成 25 年度以降に都道府県が地域生活支援事業で実施する「強度行動障害支援者 養

成研修(基礎研修)」の企画・開催・運営を担う人を養成するために第 1 回国研修を平成 25 年

10 月に開催し 113 名の参加があった。平成 26 年 1 月には国研修参加者の意見も考慮した受講者

用テキストが完成した。平成 25 年度に「強度行動障害支援者養成研修」を実施した都道府県は、

福井県、山口県、佐賀県の 3 県。平成 26 年度は 20 県ほどで実施見込。

※受講者用テキストは以下からダウンロードできます。

のぞみの園ホームページ http://www.nozomi.go.jp/tyosa/tyosa_top.htm

*6「実地研修」

研修名

自閉症療育者のためのトレーニングセミナー

( 1998 年 1 月より毎年開催。今年で 17 回目となる)

主催

神奈川県自閉症児・者親の会連合会

開催時期

今年は 8 月 2 日~ 6 日に開催される。

内容

トレーナー側はトレーナー及びその助手を含め 12 人くらい。トレーニー(研修参加者)は

25 人で 5 人ずつの 5 班に分かれ、 4 泊 5 日の実地研修。自閉症児・者 5 名をモデル児として参

加頂き、実際に家庭や作業所、学校などの場面を想定して実習を行う。

13

2 家族の声

家族の声1~自閉症に対する正しい理解に基づく支援が基本~

自閉症の人は「自分本位」「自己中心」ではなく「自己本位」。わが子に「そのチラシは戻して」

と言ったら戻したが、それは父に言われたからではなく本人が「いらない」と思ったから。はた

から見れば父の言うことを聞いたように見えるが、そうではない。そこを正しく理解する必要が

ある。

自閉症の人は他人との関係性の中で生活している我々(親・教師・支援者・専門家・行政関係

者等)とは違うというところからスタートしないとどこまで行っても理解できない。 他人との関

係性の中で生活している我々や知的障害者と自閉症の人は、一般的な物事の捉え 方が違う。自閉

症の人なりの物事の捉え方があるということを理解する必要がある。

・親としてやっていること、できること

自閉症者の親はよく勉強する。それは子供のことが分からないからであって、子育てはまさに

試行錯誤である。とにかく記録を取ることが大事と言われ、 2010 年から実践してきた。調子の悪

いときほど細かく記録を取るようにしている。「マクドナルド食べない」と言って頭を叩く時は、

予定変更などで不安になっている時なのだと 2 年記録してやっとわかった。(昔、急な予定変更で

マクドナルドに行けなくなったことがあったのかと思う)。そうやって手間暇かけないと本人の思

いは分からない。我々と自閉症の人の物事の捉え方が違うこと認め、共生していこうと決意した

時に、はじめて本人たちは「自分らしく生きる」ことを保障されるというのが現実であろうと考

えている。

家族の声2

・私の思い

長男が生まれた時、自分の知っている「子ども」「障害者」とは全く違う子であると思った。「み

んなと一緒」を重んじる日本社会で、集団の中で生きるのをあきらめるのはとても勇気が要った。

せめて親として社会とつながろうと努力してきた。

・幼児期

幼児期はただハトを追っている子だった。 1.5 歳健診では何も言われなかったが、指さししな

いので少し様子を見ましょうという感じだった。 2 歳の時から南部療育センターに通うようにな

った。お母さんは悪くない、と言われることにひっかかりも感じていた。“超”多動な子で、当時

保育園に加配がついたので地域の保育園にと思ったが全く受け入れてもらえず、車で 15 分のとこ

ろにやっと見つけることができた。多動な子だが保育園は「バラの描ける子」と受け止めてくれ

た。トイレも覚えさせてくれ、有意義な 2 年間だった。

・学齢期

小学校は学区の個別支援級にぜひ来てほしいと言われて入ったが、教室は学校の中でも目立た

ない場所だし、 PTA にも参加しなくていいと言われ、ママ友もできずとても寂しかった。ハマッ

子にも入ったが、「紙の両面に絵を描けない」ために辞めることになった(片面しか使わないのは

他の子に示しがつかないと言われた)。校外委員は子供の迎えの時間に重なってしまい困った。障

害児の母は 10 時~ 14 時間しか動くことができない。疎外感は強かった。

・地域で生きるために。理解してくれる人がいること。

地域で生きていると言えるのかと悩み、子供の動ける1㎞範囲内で知り合いを増やそうと、地

域福祉活動計画の会議にも入り仲間もできたが、「子供もつれておいでよ」と言われてもそれは無

理である。我が子のことをうまく伝えられない事に困った。

次男が高校生の時、学校で呼ばれたことがあって、心配しつつも (自閉症の )長男を家に残して

学校に行ったところ、帰ってきたらなぜか家にチョコレートがあった。不思議に思いいろいろあ

たったところひとりでコンビニに行っていたことが分かった。その後長男はたびたびそのコンビ

ニに行くようになり、店員さんが丁寧に対応してくださって良い関係が築けつつあったが、ある

14

日店員さんを殴るという事件が起きてしまった。人の顔が変わることを恐れる子なので、忙しく

て気が立っている店員さんの顔を元に戻そうとして手を出したのかもしれない。うまくいって い

るよ、という話を地域福祉活動計画会議で発表したばかりだったのにこのコンビニには行けなく

なってしまった。こういうのが現実なのだと思う。漫画のようにはなかなかいかない。

長男は次に焼鳥にはまり尿酸値が上がってきている。コンビニでも焼鳥屋でもそうだが、ひと

り理解してくれる人がいると徐々に周りも対応してくれるようになる。人と関わっていかないと

自閉症ってどういう子か全く伝わっていかない。理解を広げるためにはある程度交流しないと無

理なので、最近では人に迷惑かけることを怖がらずにいこうと思っている。

一方で、いまだにグループホームをつくろうとすると反対運動にあったりする。本人ではなく

社会の中に障害がまだまだある。制度はもちろんだが理解を広げる必要を感じている。

・知的障害と自閉症の違いを理解してほしい

知的障害と自閉症は違う。知的障害の子には何回もゆっくり説明すれば伝わるが、自閉の子は

これをされるとパニックになる。長男の学校は雨の日の体育では廊下を走っていたのだが、普段

言われている「廊下を走ってはいけない」と「雨だから廊下で運動する」の矛盾がどうしても彼

には理解できない。知的と自閉は違うということを理解してほしい。

・行動障害の施策が進んでほしい

制度は人とのつながりをなくす側面も持っているが、しかし行動障害への施策が進めば もう少

し楽に生きられる親は増えると思う。

3 現場の状況( 3 回にわたる自閉症懇談会での発言要旨及び提出された資料を掲載)

入所施設 東やまたレジデンス

・東やまたレジデンスは、入所者40名で内9割は行動障害の方。またそのうち半数は強度行動

障害の方である。

・グループホームは 365 日、一日常勤 2.5 人の配置。経営的には毎年1~ 2 千万の赤字。

・その他については、自閉症懇談会開催時に提出された資料参照( 14~ 15 頁)

自閉症懇談会資料 H26.6.5 東やまた工房 中村 公昭氏

◆東やまたレジデンスの入所待機者状況について 2012 年 5 月時点での入所待機者 100 名の内訳をいくつかの視点で整理してみました。 ①年齢別男女比 (単位:人 )

10 歳代 20 歳代 30 歳代 40 歳代 50 歳代 合計

男性 6 34 28 14 4 86

割合 6.9% 39.5% 32.5% 16.2% 4.6% 100%

女性 1 6 4 2 1 14 割合 7.1% 42.8% 28.5% 14.2% 7.1% 100%

合計 7 40 32 16 5 100

割合 7.0% 40.0% 32.0% 16.0% 5.0% 100%

・入所ニーズであるにもかかわらず 20 歳代~ 30 歳代が 7 割強を占める ・圧倒的に男性が多い ②障害程度区分(支援区分)別男女比 (単位:人 )

障害区分 3 4 5 6 合計

男性 2 17 33 34 86 割合 2.3% 19.7% 38.3% 39.5% 100%

女性 0 5 5 4 14

割合 0% 35.7% 35.7% 28.5% 100%

合計 2 22 38 38 100

割合 2.0% 22.0% 38.0% 38.0% 100%

・全体の 8 割弱が障害程度区分5,6と支援度が高いニーズが多い

15

③障害別家庭介護状況 (単位:人 )

行動障害 高齢介護 単身介護 傷病介護 在宅困難 児童入所

自閉症:85人 64 14 19 34 31 14

割合 75.2% 16.4% 22.3% 40.0% 36.4% 16.4%

知的障害:15人 1 5 2 7 8 3 割合 6.6% 33.3% 13.3% 46.6% 53.3% 20.0%

合計 (100 人 ) 65 19 21 41 39 17

割合 (100 人中 ) 65.0% 19.0% 21.0% 41.0% 39.0% 17.0%

・自閉症ニーズが全体の85%を占め、さらに行動障害は65%(自閉症のうち75%) ・70歳以上の高齢介護、単身介護はそれぞれ全体の2割程度、精神疾患や身体的疾患による家

族の負担大が4割を占め、重複している場合もある。 ・行動障害や養護性により在宅生活が困難で、1ヶ月のうち1週間以上短期入所等を利用し生活

を繋いでいるような「在宅困難者」は、全体の4割程度(39%)を占め、うち現在児童入所利用者も含まれる。

・きょうだいが精神疾患を患っているという家庭もある。

入所施設 花みずき

・平成15年に開所。その当時は入所調整会議があり、当時から重度の方を受入れていた。現在

まで 10 名程度の方がグループホームに移行した。

・入所者待機者は 230 名、待機者は毎年 20 名ずつ増えている。

・グループホームは5:1の体制で、泊りはアルバイトなど。その体制では行動障害の方の受け

入れは厳しいのが現実。

・短期入所の稼働率はほぼ 100%で、いつも満杯。

・短期入所は在宅生活を続けるための利用が多い。「両親が高齢で月1回は休ませて」「20歳前

後の方は、家庭で暴れて、両親の手に負えず、リセットさせて」という方もいる。

・その他については、自閉症懇談会開催時に提出された資料参照( 15~ 16 頁)

自閉症懇談会資料 ( H26.1.30)

社会福祉法人横浜共生会

花みずき施設長 原田 淳

1.花みずき概要

●長期利用者50名(男性33名、女性17名)

うち自閉症あるいは自閉的と診断されている方:男性15名、女性2名

●短期入居枠10名(月々80名以上利用男性60名、女性20名)

概ね男性の1/3が自閉症、女性は1人~2人

●通所:36名登録(日々30名)

うち自閉症あるいは自閉的と診断されている方:男性13名、女性1名

・長期利用者50名の内、8名が外部の生活介護事業所へ通所。

・日中活動時間 9:50~15:15

2.花みずきの支援

基本的にわかりやすい支援を心がける → 自閉症の方にも共通

自閉症の方のみの作業班グループをつくったり、自閉症の方のみのユニット(生活の場所)

にはしていません。

・毎年、新人を含め自閉症の基礎と応用(支援についてなど)の勉強会を行い、自閉症の方の

基礎的な理解ができるようにしています。

・気になるものがある場合はそれを見えなくしたり、作業班は1年を通じて変えることなく(6

作業班あり)できるだけパターンを変えないようにしています。

その他個別に対応あるいはユニット毎の対応をしており、必要に応じてマンツーマン対応な どをしています。

16

延べ利用日数:3484日(日々9.5名の利用)

実利用者数 :151名

内 自閉症あるいは自閉的と診断の出ている方:約65名

小舎(生活の場所)

A-1ユニット(男性:長期9名+短期1名)

A-2ユニット(男性:長期8名+短期2名)

B-1ユニット(女性:長期9名+短期1名)

B-2ユニット(男性:長期8名+短期2名)

C-1ユニット(女性:長期8名+短期2名)

C-2ユニット(男性:長期8名+短期2名)

合 計:長期 男性33名、女性17名

短期 男性 7名、女性 3名

 軽作業班

 運搬作業班

 機織り作業班

 銀のさら受注班

 清掃美化班

 外作業班

昨年度実績

日中活動

花みずき短期利用状況

電気のスイッチのパネルが気になる方、お茶や水道など気になるものがある

・日中活動は初めての利用時に流れがわかるよう説明。大人数での動きが苦手な方には

 個別に対応することも。マンツーマン対応で過ごして頂く事もある。

方などは視界に入らないようにするなど個別に対応。

自閉症の方が利用するからと言って、小舎の環境を大きく変えることはないが

6つの作業班で最も適した班に参加して頂く

基本は

・普段の家庭での生活と大きく変わらないようにし、施設のルールを押しつけすぎない

 ように配慮、できるだけ本人を受け入れるよう努め、わかりやすい説明を心がける。

・利用される方によってはマンツーマン対応を行う→夜勤者を1人増やすこともある

 ユニットがいくつかあるが毎回同じユニットを利用して頂く。

自閉症懇談会資料 ( H26.6.5)

社会福祉法人横浜共生会

花みずき施設長 原田 淳

17

法人型地域活動ホーム つるみ地域活動ホーム幹

・鶴見区は生活介護事業所も少なく、どう自閉症の方を受け止められるかスタッフと話し合って

きた。

・職員は常勤 4 人、非常勤 7~ 8 人を固定化。サビ管も専属で 1 名つけている。活動ホームは人の

出入りが多く刺激の多い場所。スタッフも多ければいいということでなく、質の向上が必要。

・ショートステイなど生活支援で行動障害の方を受入れることができる場は限られている。

・タイムケアは4歳から、(昨年度実績 8,800 時間、1日平均 7 名の方を受入れ)でショートステ

イは6歳から。(昨年度実績 703 泊、1日2名の方を受入れ)

・成人期の方は短期入所事業を併用して利用される方が多い。

・自閉症に特化した生活介護事業所をオープンした。メンバーは幹から6名移行した区分5・6

の方だが、一般的に通所系の行き場の確保も困難で、区内外の7名から相談があった。他の施

設では断られた方が多かった。

・その他については、自閉症懇談会開催時に提出された資料参照( 17~ 19 頁)

1 つるみ地域活動ホーム幹及び法人事業の現況と課題について

事業 現況と課題

<地活>

日中活動

~生活介護事業

※契約者:63 人

内、重度 /自閉的傾

利用者:19 人

(来年度卒業生: 3

人)

①増える自閉的傾向を伴う卒業生の受入れ

・自閉的傾向利用者のグループ化

・医務室 /更衣室の改装

・職員の固定化(S管理責任者の専属配置等)

・プログラムの統一 等

②事故、ヒヤリ・ハット事例の増加

・さまざまな人(利用者、ボランティア、実習生等)が出入

りすることによる刺激の多さ

・職員の人材育成(特に非常勤職員)

③家族への支援~こだわりへの対処、施設、医療機関との連携

・サービス管理責任者による家庭訪問、関係機関等との連携

・区内入所施設(短期入所事業)との連携~生活の継続性等

を重視し、送迎便開設

④卒業生の受入れが厳しい状況に・・・

・他区での受入れ~家族の送迎負担等

・在校生の保護者の不安増長

⇒法人による事業展開への着手

※5 月 生活介護事業所オープン(自閉的傾向利用者を主)

⇒地域偏在。送迎車両、家賃等コスト高。

<地活>

生活支援事業

~タイムケア・ショ

ートステイ事業

①子ども~成人期の利用者が混在する環境

・「楽しい場所」とするために人間関係の相性等を踏まえた利用

調整

②殺到する学校の長期休暇時の対応と家族のニーズ、疲労への

対応

⇒法人による事業展開への着手

自閉症懇談会資料 (H26.1.30)

つるみ地域活動ホーム幹

施設長 斉藤 達之

18

※2 月 中高生の放課後 /長期休暇時の受入れ強化(放課後等デ

イサービス事業の開設)

③高齢化する家族への計画的利用の推進(ショートステイ)

・家族がゆっくり休める時間の確保

・短期入所と比べ値段が・・・(3,000 円 /泊)

<地活>

相談支援事業

※障がい児者

<法人>

後見的支援事業

※18 歳~登録

①不登校、家庭内での暴力等を起こす学齢児への対応

・運動会 /修学旅行等イベントからの混乱

・有り余る体力が母親の体力を逆転する高校時代以降

・家族と学校の調整

②家族の変化への混乱

・兄弟時の進学・就職・結婚、父親の定年

・家族の体力低下~母親の病気(がん末期等)

③福祉サービスの利用調整がもたらす混乱

~「みなさん迷惑をかけてしまうのでは・・・」

・ご本人、家族の成功体験となるように・・・

・短期入所利用時の混乱:「今度はいつ泊るの?」

④医療機関への同行

・服薬頼みにならざるを得ない在宅生活

・保護者以外の視点を入れた通院の重要性

~「うちはそんなに大変なんですか?」

<法人>

障 が い 者 グ ル ー プ

ホームの運営から

※7 館:39 人定員

内、重度 /自閉的傾

向利用者:5 人

①障がいの特性に合わせた住居設計ではない混乱

②他の入居者との折合い~増えるこだわり

③非常勤を含めたローテーション体制~積み重ならないノウハ

④ホームへの移行経路別の課題

入所⇒ホーム(支援者の視点によるアセスメント)

在宅⇒ホーム(在宅生活、家族の視点を通じたアセスメント)

⑤入居受入れを推進する条件整備

受入れ可能な条件整備について具体的な検討に着手(土地、住居

設計、近隣関係、人材確保、人員体制の工夫等)

※上記、生活介護事業所での実践の蓄積等

2 今後の展望

★地域生活を基盤とした包括的 /連続的な支援体系の構築

・療育~教育~福祉の連携:区自立支援協議会

・広まらない、深まらない地域での実践-移動支援と行動援護

・地域生活での実践活動の蓄積と検証~「本人ニーズ」と「家族ニーズ」

・地域生活を支える相談系事業の充実

~『計画相談支援』の普及と『後見的支援』での支え

・虐待防止法の施行~本人、家族、支援者を支える視点

・本人、家族が安心して過ごせるレスパイト施設の拡充

19

つるみ地域活動ホーム幹;生活支援事業の現状について

1 生活支援事業(タイムケア・ショートステイ事業)の概況

★登録者:544 人

★うち、自閉症等登録者:230 人(42%)

★うち、月1回以上利用される方:35 人

<35 人の登録者詳細>

性 別

男性 30 人

女性 50 人

※成人期には、短期入所事業を利用される方が多い

行動障がい

有 7 人

内容 ・自傷

・他害

・器物破損

・行動停止

・睡眠障害

<対応>

・職員配置(2 人体制、中堅職員の配置)

・他の利用者との組合せに配慮

・部屋の固定化

・環境調整(ボタン類等)

・相談支援事業との連携

機能強化型活動ホーム 中区本牧活動ホーム

・自閉症の方への支援に取り組むため、専門機関に環境づくりやコミュニケーション方法などア

ドバイスを受け実践した。その結果、パニックが大きく減少した方もいらっしゃった。

・活動ホームには様々な障害の方がおり、構造的にも限界もある。

年 代

学齢 23 人

成人 12 人

自閉症懇談会資料 (H26.6.5)

つるみ地域活動ホーム幹

施設長 斉藤 達之

20

地域活動支援センター作業所型 つぼみの家

・地域清掃やお買い物等を通して地域の方と顔見知りになり、地域の方の理解につながっていけ

れば良いと思っている。

・見通しがつく支援を心がけているが、日々ほんとうに試行錯誤の連続である。

・その他については、自閉症懇談会開催時に提出された資料参照( 20 頁)

つぼみの家について

平成14年4月1日開所(障害者地域作業所)

平成21年4月 地域活動支援センター作業所型に移行

平成22年5月 いずみ中央に移転

平成24年4月 第2つぼみの家開所

現在 利用者 15名

男性4名、女性11名

平均年齢25歳

自閉症の方7名

作業内容

エコキャップ (別紙参照 )

喫茶

外注作業 ダイレクトメール封入

サンプル商品

ポスティング

刺し子

体力つくり など

その他の活動

一泊旅行

バスハイク

個別プログラム

お楽しみ外食

地域のお祭り出店

自閉症懇談会資料 (H26.1.30)

つぼみの家

所長 山寺 由美子

21

教育の現場 神奈川県立三ツ境養護学校

教育現場における自閉症児に係る教育の現状

現状

・自閉症児教育に関する専門的な理論・教材教具の研究も進み、自閉症児教育を推進する上で

の環境も整ってきた。※個別教育計画、個別支援計画等の推進

・発達障害の生徒が増え問題行動の内容自体が以前と変わってきている。(不登校・人間関係に

よるトラブル等 )

・発達障害からの二次的な障害による、うつ・統合失調症を発症する生徒もおり、精神保健に

関する専門的な対応が必要なケースも多くなってきた。

良い取り組みができているところ

・専門職 (臨床心理士等 )の各校への配置により、ケース会等で専門的なアドバイスを受けられ

るようになった。※臨床心理士・ PT・OT・ST の県立特別支援学校への配置は、今年度までに

35名。

・自閉症児に対する指導方法と障害特性の周知により、以前に比べて構造化、視覚化された指

導が特別支援学校で展開できるようになってきた。

課題点・難しいところ

・特別支援学校の過大規模化により教室が不足し、パニック時のクールダウン等ができる場所

がない。

・特別支援学校の地域における特別支援教育のセンター化に伴い、地域の学校への支援も多く

なってきている。それにより、専門職 (臨床心理士等 )のニーズは高いが、人数的には充分では

ない。

・教職員の自閉症の障害の特性理解等を含めた研修の機会が必要であるが、学校運営の多様化

により、なかなか時間的な確保が難しい。また、近年の若手教員の増加により教員の専門性を

高めていく必要性が急務。

・保護者との教育観や障害の認知の相違。 (更なる保護者との連携 )

その他

・学齢期における自閉症に関する専門医の不足。学齢期の医療と成人期の医療の継続性が乏し

い。

・学齢期における発達障害児を支援する機関の不足、助成金制度の未整備。

・緊急性のある行動障害児の支援の入所施設の不足。

・放課後や長期休業中の支援

自閉症懇談会資料 ( H26.1.30)

神奈川県立三ツ境養護学校

総括教諭 今村 博実