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愛知大学中日大辞典編纂所『日中語彙研究』第6号(2016)87‒105

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要旨 日本語における慣用句研究の発展について、時系列に沿って確認すると、1942年からの萌芽期(白石大二氏による一連の研究)、1970年代からの模索期(宮地裕氏をはじめとする慣用句の認定に関する研究)、1980年代からの成立期(慣用句の構成や品詞性に着目した研究)、1990年代からの成長期(慣用句の意味に関する研究や諸外国語との対照研究)、さらに2000年以降の発展期(慣用句データベースの作成やコーパスを用いた慣用句研究)を経てきた。現在では、多角的な視点から様々な分析がなされ、まさに隆盛を極めているといえる。

キーワード 慣用句研究 萌芽期 模索期 成立期 成長期 発展期

日语惯用语研究史概观

提要 日语惯用语研究是20世纪后期新崛起的研究领域。早在20世纪40年代,白石大二先生就曾对日语中的惯用语做过考释。20世纪70年代,宫地裕先生

就惯用语的界定作过初步研究,惯用语研究也由此进入了一个新的阶段。20世纪80年代,随着惯用语定义的确立,一些学者把目光投向惯用语的结构及

其词性研究。20世纪90年代以后,惯用语的语义研究、日语惯用语和其它语

言惯用语的对比研究成为学者们关注的焦点,这方面研究取得了丰硕的成果。进入21世纪后随着计算机技术的飞速发展,语料库在惯用语研究中的应用越

来越广泛,一批研究惯用语数据库构建的学者也应运而生。纵观以上的日语惯

用语研究,其形成和发展大致经历了萌芽期、摸索期、形成期、成长期及发展

期五个阶段,发展趋势令人欣喜。

关键词 惯用语研究 萌芽期 摸索期 形成期 成长期 发展期

呉 琳

日本語の慣用句に関する研究の概観

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『日中語彙研究』第6号

はじめに

 本稿では、慣用句をめぐる先行研究を概観することで、これまでの慣用句研究の対象が時代が下るにつれてどのように変化してきたのかを整理する。 慣用句の研究史を遡れば白石(1942)に行き着くと言われるが、現在行われている研究が本格的に始まったのは1970年代のことである。70年あまりの研究史を概観すると、おおよそ5つの段階に分けることができる。以下では、各段階において行われた主要な先行研究を紹介する。

1.慣用句研究の萌芽期

 白石(1942: 147)はまず、「慣用」という表現の用法を文献から確認している。概していえば、「慣用は文法に対して個々の事実であるが、同時にそのことは、慣用は文法に対して個別的であり、具体的である」、つまり、慣用は文法に基づく分析ができないものである。白石の説明を援用するならば、「慣用語」は慣用される語であり、その内容として以下のものが挙げられる(白石1942: 152‒154)。 (1) 日常的な使い方であり、挨拶のときなどに使う決まり文句。たとえ

ば、「お供いたしましょう」「ご一緒しましょう」。 (2) 一般用語として固定し、特殊な語感を持つようになった官庁用語。

たとえば、「児童」という用語は自由主義的な教育思潮の時代に固定した特殊の語感を持つ語。

 (3) ある限られた文人社会におけるその社会特有の特殊な言い回し。たとえば、「秋の夕暮」「春雨ぞ降る」という和歌の慣用的表現。

 (4) 学問の世界で固定して使用している学術用語。たとえば、「閉音節」という用語。

 (5) ある個人が常用する語、またはある個人の愛用する特殊な造語。 (6) ある国語特有の言い回し、ひいてはその国語。 つまり、慣用語は習慣的に用いられ、固定され、特殊な語感や意味内容を

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日本語の慣用句に関する研究の概観

持っているものを指すという。広義では、上記のものを含むが、狭義では(6)「ある国語特有の言い回し」のみを指す。なお、「慣用語」と「慣用句」の用語の区別について、白石(1942: 155)は、慣用語が慣用句を意味することもあるが、語法の面から考えるとき問題になるのは、その名称はともかくとして、慣用句であると述べている。 また、狭義の慣用句について、白石(1950: 43‒44)は、意味の構成法を中心にして考えると、以下の4つがあると指摘している。 (1) 全体の意味が構成要素の意味からだけでは理解できないもの。たと

えば、「骨が折れる」「腹が立つ」の意味は文字通りの意味から予測できない。

 (2) 全体の意味が構成要素の意味から理解できるものではあるが、構成要素の意味が抽象的で具象性をかいているため、両者が結びついてはじめて意味のはっきりするようなもの。たとえば、「気が利く」の「気」が指し示している意味は抽象的である。

 (3) 全体の意味は構成要素の意味から理解できなくはないが、一方の意味が語源的にはたとえから来たようなもので、両者が結びついてはじめて意味のはっきりするようなもの。たとえば、「つまらないことに半日をつぶす」の「つぶす」は語源的にたとえから来た意味を持っている。

 (4) 句の表す動作自身に、その目的や理由や結果を暗示する意味があるため、句にもおのずから、構成要素の語の意味以上のものが加わって来るもの。たとえば、「床に入る」は「寝る」、「頭をかく」は「恥ずかしく思って体裁を繕う」という目的が暗示されている。

 確かに、白石は一連の研究で慣用句の問題を取り扱っており、慣用句研究に主導的な役割を果たした。しかし、一連の研究には慣用句研究への萌芽は認められるものの、慣用句の本質規定があいまいになっているため、それが開花するには至らなかったように思われる。後に慣用句研究が進むにつれて、慣用句に対する認識も変わりつつあるため、当時の研究と現在の研究との関連性と区別を明確にする必要があると考えられる。白石(1969)の『国語慣用句辞典』には、実際どのような言葉が慣用句として並べられているの

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か、ア行の見出し項目を取り出して以下に示してみよう。 (1) 「(~に)あやかる」「恐れる」「おちついている」のような語 (2) 「うかうかと」「えへへえ」「おぎゃあ(と泣く)」のような擬音語・

擬態語 (3) 「ありがとう存じます」「お寒い」「お安い御用」のような敬語 (4) 「ああ」「あっ(と)」「いいのさ」のような応答語 (5) 「お変わりございませんか」のような挨拶用語 (6) 「頭を使う」「うまい話」「うまくいく」のような連語 (7) 「油を売る」「馬が合う」「大目に見る」のような慣用句 (8) 「あいよりいでてあいより青し」「一を聞いて十を知る(悟る)」「負

うた子に教えられて浅瀬(浅い瀬)を渡る」のようなことわざ・格言 ア行に収められたすべての項目を取り出したわけではないが、現在慣用句として扱わないものが散見していることを、垣間見ることができる。上述の表現には、後に待遇表現やオノマトペに統合されるものが多い。当初慣用句やイディオムといった用語は、言語のいろいろな現象を指しており、使う人によって、その指す範囲は必ずしも一定ではなかったと言えよう。

2.慣用句研究の模索期

 70年代に入ると、慣用句の認定に関する研究が行われたが、この段階は慣用句研究の模索期というべき時期である。「慣用句(idiom)」に相当する用語として、それまでには「慣用句」「慣用語」「慣用語句」「熟語」「イディオム」などがあり、用語が確定するには至らなかった。この段階においても依然として「慣用句」「慣用語句」という呼び名が使用されている。また、「慣用的ないいまわし」「慣用的なくみあわせ」という呼び名を使う研究者もいる1)。しかし、そのなかでも「慣用句」という用語が多用され、一般的な

1) 奥田(1978: 40‒41)は、「手を焼く」や「焼きを入れる」のように、形式的には2つの単語から成り立っていても、意味的には分割できない慣用句のことを「慣用的ないい

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言い方になる傾向が見られる。そして、この段階で最も議論がなされたのは、慣用句と周辺の概念との区別についてである。慣用句と連語、ことわざ・格言の意味概念を記述することにより、慣用句というカテゴリーに属する対象を明確にしようとするものがほとんどである。 たとえば、宮地(1974: 113‒119)は成句を類型的形式として二文節以上からなる句や文などとみて、それを (1) 格言・ことわざ、(2) 慣用句、(3) 連語成句に分類する。格言・ことわざは歴史的・社会的に安定した価値観を持つ成句のことである。慣用句は格言・ことわざほどの価値観を伴わず、語句が比喩的・象徴的に用いられ、全体として派生的な意味をもつ。また、連語成句と称したものは、一般の連語より凝結度の高い成句のことである。成句のなかで、格言・ことわざは固定的であり、最も制約が厳しい。慣用句はこれらに次ぐものと言える。連語成句は結びつく相手が必ずしも1つとは限らず、「愚痴をこぼす」とも、「愚痴を言う」とも言えるようにいくつかの相手がありうるため、成句のなかでは制約の最も緩やかなほうに属する形と言える。 また高木(1974)は、典型的な慣用句について、 (1) 名づけ的な意味のひとまとまり性 (2) 表現手段の固定性 (3) 使用におけるできあい性(既成品性) (4) 表現=文体論的な特徴という4つの側面からその特徴を記述している。ほかにこの段階の主な研究として、白石(1977a)、白石(1977b)、宮地(1977)などがある。 白石の研究では、慣用句には擬音語・擬態語、挨拶用語などの単語や文も含まれるため、それは言語体系の全部ということになる。それに対し、この段階の研究では、慣用句の本質規定は日本語体系の一部分に限定され、慣用句と周辺の概念との区別化が試みられた。

まわし」、「世話を焼く」や「愚痴をこぼす」のように、組み合わせた2つの単語のうちの1つが自由な意味を保存し、もう1つが慣用句に縛られた意味になっている慣用句のことを「慣用的なくみあわせ」と名付け、後述の宮地(1974)の言う「慣用句」と「連語成句」とを区別している。

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3.慣用句研究の確立期

 80年代に入ると、初期に取り上げられた問題が整理され、慣用句の定義に対してもようやく共通の認識に至った。おそらくこの時期の最も功績の大きな研究は宮地(1982)であろう。日常ごく普通に使う慣用句に対して、具体的な文例に基づいて解説するほか、英語、中国語、フランス語、韓国語、タイ語の解釈も加え、対照言語学的な記述にまで手を広げた優れた研究である。 また、その中に収められた編者の「慣用句解説」では、「慣用句という用語は、一般に広く使われているけれども、その概念がはっきりしているわけではない。ただ、単語の2つ以上の連結体であって、その結びつきが比較的固く、全体で決まった意味を持つ言葉だという程度のところが、一般的な共通理解になっているだろう」(宮地1982: 238)というように慣用句の定義を述べている。この記述は後に多く引かれており、一般的に認められていると言えよう。 また宮地(1982)は、上述の宮地(1974)の分類に対して修正を加え、連語成句を慣用句に入れている。つまり、慣用句には比喩的慣用句のほか、また連語成句的慣用句もある。その分類は以下のとおりである(便宜上、宮地の分類を横書きに直した)。

    一般連語句           連語成句的慣用句2)

       慣用句        直喩的慣用句           比喩的慣用句    成句            隠喩的慣用句

       格言・ことわざ 宮地(1982: 238)より引用

2) 宮地の後の論文のなかで、「連語成句的慣用句」は「連語的慣用句」に改称された。

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日本語の慣用句に関する研究の概観

 宮地(1982)は品詞別の特徴、語彙的な特徴、形式上の特徴、形式上の制約からみた特徴について、詳細に記述している。その後の慣用句研究で取り上げられる主要な問題がすでに言及されており、宮地(1982)の研究は慣用句研究に大きな影響を与えたと言えよう。 また、この時期において慣用句の構成や品詞性に着目した研究が行われた。なかには、慣用句論の様々な課題を論じた国広(1985)や、名詞と動詞の語結合を取り上げ、それらの語結合が表す意味と、語結合を構成する要素の意味との間のずれに着目し、これを慣用句、機能動詞結合、自由な語結合として区別した村木(1985)、動詞慣用句を句構成の形から考察した森田(1985)、形容詞慣用句について量的及び質的な調査を行った西尾(1985)、名詞慣用句とメタファーとの関わりを記述した大坪(1985)などがある。

4.慣用句研究の成長期

 90年代に入ると多くの研究者が多彩なアプローチによって慣用句を取り上げ、慣用句は複数の分野の問題として一躍脚光を浴びるようになる。ここに、慣用句の研究は成長期に入ったと言える。まず認知言語学による慣用句の意味の解釈が注目される。慣用句は従来、言語研究の周辺的なものとされがちであり、理論的な研究が十分になされたとは言えない。80年代の認知言語学が意味論を飛躍的に発展させたため、それ以降は認知言語学による慣用句の意味に関する研究が始まった。 中村(1977)は早くから、固定連語は意味の抽象化により慣用句段階に進んだと指摘している。また、中村(1985)は身体部位詞を含む慣用句を取り上げ、その表す意味の抽象化のレベルと比喩性の関わりについて考察している。坂本(1982)は、慣用句も比喩もそれぞれの構成要素の意味を単に寄せ集めただけではその全体的な意味を得ることはできないという点では同じ条件にあるとみて、慣用句と比喩がいかにして関連付けられるかを考察している。籾山(1997)は隠喩・換喩・提喩に基づく慣用句の意味の成立を分析することにより、慣用句の体系的分類を行っている。

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 また、周知のとおり、慣用句には身体語彙を含むものが数多くある。従来の指摘によると、身体部位の本来の意味から別の意味への拡張には主に、比喩の生成プロセスとしてのメトニミーが関与している。これについて、有薗(2013)は「目」「耳」「鼻」を含む慣用句を取り上げながら、身体部位詞が行為のフレームに基づくメトニミーによって複数の意味に拡張していることを論じている。この論述により、身体部位詞はどのようなプロセスを経て基本義から派生義に拡張したのか、派生した意味同士には関連性が見られるのかなどの問題が解決できた。 このように慣用句の定義と特徴、構成と品詞性、そして意味による議論が多くなされた中、一段落したかに見えていた研究は、外国人学習者が増えるにつれて、新たな展開を見せる。外国人学習者向けの慣用句教育が国語における慣用句教育とともに検討されるようになってきた。国語における慣用句教育の研究には、小野ほか(1999)がある。 小野ほか(1999)では、小学校一年から六年までのテキストにおける慣用句の取り扱いを分析している。その結果、「小学校では、学年が上がるにつれて慣用句のレベルも高くなり、また単に暗記するものから意味を把握して使いこなせるようにするものへ、遊びながら学習するものから作文のなかで意識的に使用する学習へと変化していっている」(小野ほか1999: 71)ことが明らかにされた。教科書の分析から分かるようにどの学年においても、基本となるのは慣用句の意味と言葉の暗記であり、理屈なしに覚えさせようとするものがほとんどであるが、その原因は、「日常生活のなかで慣用句に触れる機会の多い日本語母語話者にとっては、語構成などから慣用句について学習していくよりも、その意味や使い方を暗記してしまう方が理解しやすい」(小野ほか1999: 70)ということである。 外国人学習者向けの慣用句教育について、中国を例に取り上げると、中国人日本語学習者に対する日本語慣用句の指導(韓2005)や、慣用句の理解に見られる中国語の影響についての研究(薛・呉2004)などがある。たとえば、韓(2005)では、教科書の実態及び日本語の慣用句に対する中国人日本語教師の指導法の実態と、日本語学習者の学習法の実態とを分析すること

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日本語の慣用句に関する研究の概観

により、その問題点を教材、教師、授業のデザイン、日本語教育の環境の4つに分けて、その改善方法について提案している。 さらに、外国語の慣用句との対照研究も増えている。それらには、英語、中国語、ロシア語、タイ語など様々なものが見られるが、中国語との対照研究を例に取り上げると、主に同一の構成要素を含む慣用句を取り上げ、その数量や意味に注目したものが多い。 たとえば、支・吉田(2003)はまず日本語の「目」の意味と中国語の「眼」の意味について、 (1) 視覚器官としての目から生じた意味 (2) 目の形から生じた意味 (3) 接尾辞としての用法(日本語側のみ) 助数詞としての用法(中国語側のみ)という3種類に大別している。次に、「目」を含む日本語の慣用句と「眼」を含む中国語の慣用句を対照した結果、「動物の視覚器官」という語義に由来する慣用句が最も多いことが、共通点として指摘されている。また、両言語の慣用句のニュアンスをプラス、マイナス、中立に分類すると、日本語の場合は、プラスのニュアンスを持つ句とマイナスのニュアンスを持つ句が相半ばするのに対し、中国語の場合は圧倒的にマイナスのニュアンスを持つ句が多いという。このように両者の異同を提示するところは興味深い。しかし、このような研究の多くは意味・用法にまで考察が及ぶことがまれで、ややもすれば慣用句の羅列にとどまる恐れがある。

5.慣用句研究の発展期

 まず、井門(2012)や岡田・井門(2014)などによって、慣用句の意味解釈における語用論的推論からの議論がなされている。井門(2012)は、本来語レベルでの解釈を説明するために提案されたアドホック概念が、さらに大きな単位である句レベルでの解釈にも適用できるのか、イディオムを通して検討を加えた。

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 そして、コーパスによる慣用句の分析が始まっている。村田・山崎(2011)は慣用句を指標として文章資料のジャンルが判別できることを実証している。日本語学習者が文章ジャンルの違いをより一層意識化し、各ジャンルにおいて特徴的な表現を学んでいくことは中・上級レベル以降の学習の効率化につながると研究の意義付けをしている。このほか、慣用句のデータベースの作成やコーパスの構築など、工学的手法による多くの研究が見られる。 また、個別の慣用句を取り上げた、コーパスに基づく意味変化の研究としては、佐々木(2013)、岡田(2014)が挙げられる。佐々木(2013)は、「日本語語彙体系の史的変遷に関する研究」の一環として、「敷居が高い」という慣用句の意味・用法の変化について興味深い考察を行っている。この慣用句について、平成20年度(2008)の「国語に関する世論調査」では、本来の意味であるAと本来の意味と違うBの2つの意味を挙げている。 A 不義理や面目の立たないことがあって、その人の家に行きにくい。 B 高級すぎたり、上品過ぎたりして、入りにくい。 これに対して、佐々木(2013)は日本語本3)などの記述を調べ、A、Bのほかに、Cを付加している。 C とっつきにくい、難しい、ハードルが高い(モノに対する用法)。 A→B→Cのように用法が変化した理由として、佐々木(2013: 4)は、A「自分が作り出した不義理・不面目のために負い目を感じてどこかに行きにくい」という意味の「原因の作り手」の部分が変化して、B「場所そのものの持つ高級感や上品さが原因で劣等感を感じて店などに入りにくい」のような意味になり、さらに「敷居」によって示される空間の境界が単なる心理的障壁のみの意味に変化して、C「難度・格などが原因でとっつきにくく敬遠される」という順で意味が抽象化されたのだと分析している。 また、これらの用法について、各種コーパスを利用し、江戸時代から現在

3) 新野(2011: 2)は、現代日本語の意味を中心とした言語変化について論じるとき、「日本語本」という用語を「一般向けの、日本語について書かれた本」という意味で使用している。佐々木(2013)の言う「日本語本」もこの定義を踏襲していると見られる。

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日本語の慣用句に関する研究の概観

までの出現数・出現率の変化と実際の用法の変化を観察した結果、本来の意味であるAよりもむしろB、Cの例のほうが優勢となっていることが明らかにされた。 上記に挙げた先行研究のほかに、文化庁が毎年実施する「国語に関する世論調査」においても、しばしば慣用句が取り上げられる。

おわりに

 以上、日本語における慣用句研究の発展について、時系列に沿って確認した。日本語における慣用句の研究は、1942年からの萌芽期、1970年代からの模索期、1980年代からの成立期、1990年代からの成長期、さらに2000年以降の発展期を経てきた。 語彙の特性に関する研究においては、語彙の数量的側面と意味的側面に着目するものが少なくない(田島2003、田中2002、広瀬2003)。田島氏は両者を生かした研究方法の有効性を指摘する。一方、慣用句の研究に関しては、個別の慣用句(佐々木2013など)、あるいは形態や意味で共通した特徴をもつ複数の慣用句(支・吉田2003など)を対象とした数量的・意味的分析は、これまでにも若干なされているものの、慣用句全体を対象とした数量的・意味的分析はまだない。慣用句の研究が盛んに行われてきたなかで、定量的研究と定性的研究が慣用句の研究にとって重要な意味をもつ。 かつては、慣用句の数の多さや用例採集の困難さにより、慣用句全体を対象とした数量的・意味的分析は難しかった。しかし、近年、コンピュータ技術の発達により様々なコーパスが構築され、このような研究が可能になった。今後、こうした言語資料を慣用句研究においても有効に利用することが大いに期待される。

参考文献

有薗智美(2013)「行為のフレームに基づく「目」、「耳」、「鼻」の意味拡張─知覚行為から高次認識行為へ─」『名古屋学院大学論集言語・文化篇』25 (1),pp. 123‒141

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井門亮(2012)「イディオム解釈とアドホック概念」『言語・文化・社会』10,学習院大学,pp. 1‒15

大坪喜子(1985)「名詞慣用句─特に隠喩的慣用句について─」『日本語学』4 (1),明治書院,pp. 54‒61

岡田祥平(2014)「「爪痕を残す」の「新用法」について」『日本語学会2014年度秋季大会予稿集』,pp. 185‒192

岡田聡宏・井門亮(2014)「省略語・イディオム解釈とアドホック概念」『言語・文化・社会』12,学習院大学,pp. 1‒29

奥田靖雄(1978)「語彙的な意味のあり方」松本泰丈編『日本語研究の方法』むぎ書房,pp. 29‒44

小野米一・王婉瑩・松田知子・田原佳世・ジェビットスーザン・張海蓉(1999)「身体語彙を含む日本語の慣用句─中国語・英語との対照を通して─」『語文と教育』13,鳴門教育大学国語教育学会,pp. 66‒84

韓美齢(2005)「中国人日本語学習者に対する日本語慣用句の指導について─教科書の実態と学生の誤用分析から慣用句の教え方へ─」『福岡教育大学国語科研究論集』46,福岡教育大学国語国文学会,pp. 89‒108

国広哲弥(1985)「慣用句論」『日本語学』4 (1),明治書院,pp. 4‒14坂本勉(1982)「慣用句と比喩─慣用化の度合の観点から─」『言語学研究』1,京都大学言語学研究会,pp. 1‒21

佐々木文彦(2013)「コーパスを利用した言葉の意味・用法の変化の研究─「敷居が高い」を例に─」『第4回コーパス日本語学ワークショップ予稿集』2013年9月国立国語研究所,pp. 1‒10

支洪濤・吉田則夫(2003)「身体部位名称を含む慣用句についての日中対照研究─「目」の場合─」『岡山大学教育学部研究集録』124,pp. 93‒100

白石大二(1942)「慣用と慣用語─国語慣用語論覚書─」国語学振興会編『現代日本語の研究』白水社,pp. 145‒167

白石大二(1950)『日本語のイディオム』三省堂,pp. 1‒130白石大二(1969)「解説 慣用句論」『国語慣用句辞典』東京堂,pp. 1‒82白石大二(1977a)「慣用句とその種類─高田与清「松屋筆記」を手がかりとして─(〈特集〉日本語の表現─慣用語句、特別な言い回し─)」『日本語教育』33,pp. 11‒22

白石大二(1977b)「解説 国語慣用句とその研究のもたらすもの」『国語慣用句大辞典』東京堂,pp. 525‒593

薛鳴・呉月新(2004)「慣用句の理解に見られる母国語の影響─中国人日本語学習者の場合─」『中京学院大学研究紀要』12,pp. 13‒22

高木一彦(1974)「慣用句研究のために」『教育国語』38,むぎ書房,pp. 2‒21田島毓堂(2003)「語彙論の対象」『語彙研究』創刊号,語彙研究会,pp. 111‒118田中章夫(2002)『近代日本語の語彙と語法』東京堂出版中村明(1977)「語の意味と固定連語の扱い(〈特集〉日本語の表現─慣用語句、特別な言い回し─)」『日本語教育』33,日本語教育学会,pp. 43‒54

中村明(1985)「慣用句と比喩表現」『日本語学』4 (1),明治書院,pp. 28‒36

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日本語の慣用句に関する研究の概観

新野直哉(2011)『現代日本語における進行中の変化の研究─「誤用」「気づかない変化」を中心に─』ひつじ書房,pp. 1‒9

西尾寅弥(1985)「形容詞慣用句」『日本語学』4 (1),明治書院,pp. 45‒53広瀬英史(2003)「研究対象としての語彙─総体としての語彙─」『語彙研究』創刊号,語彙研究会,pp. 119‒128

宮地裕(1974)「「成句」の分類」『語文』32,大阪大学国文学研究室,pp. 113‒121宮地裕(1977)「慣用句と連語成句(〈特集〉日本語の表現─慣用語句、特別な言い回し─)」『日本語教育』33,日本語教育学会,pp. 1‒10

宮地裕(1982)「慣用句概説」『慣用句の意味と用法』明治書院,pp. 237‒265村木新次郎(1985)「慣用句・機能動詞結合・自由な語結合」『日本語学』4 (1),明治書院,

pp. 15‒27村田年・山崎誠(2011)「「手」の慣用句を指標とした文章ジャンルの判別─現代日本語書き言葉均衡コーパスを用いて─」『日本語と日本語教育』39,慶應義塾大学日本語・日本文化教育センター,pp. 75‒88

籾山洋介(1997)「慣用句の体系的分類─隠喩・換喩・提喩に基づく慣用的意味の成立を中心に─」『名古屋大学国語国文学』80,pp. 29‒43

森田良行(1985)「動詞慣用句」『日本語学』4 (1),明治書院,pp. 37‒44

添付資料 慣用句に関する主要先行研究一覧

Ⅰ.慣用句の認定及び特徴に関する研究阿刀田稔子(1977)「慣用句雑感(〈特集〉日本語の表現─慣用語句、特別な言い回し─)」『日本語教育』33,日本語教育学会,pp. 36‒42

神田靖子(2002)「機能動詞結合とその他動性をめぐる覚書」『同志社大学留学生別科紀要』2,pp. 55‒73

後藤斉(2002)「慣用句と自由な語結合の間─「博する」を例にして─」『東北大学言語学論集』11,東北大学言語学研究会,pp. 1‒8

国広哲弥(1985)「慣用句論」『日本語学』4 (1),明治書院,pp. 4‒14島本基(1994)「社説の語彙(慣用句とその周辺)」『無差』1,京都外国語大学,pp.

41‒60白石大二(1977a)「慣用句とその種類─高田与清「松屋筆記」を手がかりとして─(〈特集〉日本語の表現─慣用語句、特別な言い回し─)」『日本語教育』33,日本語教育学会,pp. 11‒22

高木一彦(1974)「慣用句研究のために」『教育国語』38,むぎ書房,pp. 2‒21高木一彦(2005)「慣用句と連語」『国文学 解釈と鑑賞』70 (7),至文堂,pp. 141‒153宮地裕(1974)「「成句」の分類」『語文』32,大阪大学国文学研究室,pp. 113‒121宮地裕(1977)「慣用句と連語成句(〈特集〉日本語の表現─慣用語句、特別な言い回し─)」『日本語教育』33,日本語教育学会,pp. 1‒10

宮地裕(1985)「慣用句の周辺─連語・ことわざ・複合語─」『日本語学』4 (1),明治書院,

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100

『日中語彙研究』第6号

pp. 62‒75村木新次郎(1985)「慣用句・機能動詞結合・自由な語結合」『日本語学』4 (1),明治書院,

pp. 15‒27森田良行(1994)「ことわざ・慣用句の新旧」『国文学 解釈と鑑賞』59 (1),至文堂,pp.

142‒147

Ⅱ.慣用句の形態や構造に関する研究飛鳥博臣(1982)「日本語動詞慣用句の階層性」『月刊言語』十周年記念臨時増刊号,11 (13),pp. 72‒81

石田プリシラ(1998)「慣用句の変異形について─形式的固定性をめぐって─」『筑波応用言語学研究』5,pp. 43‒56

石田プリシラ(1999)「動詞慣用句の慣用性の度合─統語的固定性を目安として─」『筑波応用言語学研究』6,pp. 69‒83

石田プリシラ(2000a)「動詞慣用句に対する統語的操作の階層関係」国立国語研究所『日本語科学』編集委員会編『日本語科学』7,国書刊行会,pp. 24‒43

石田プリシラ(2000b)「動詞慣用句の慣用性を計る方法─統語的操作を手段として─」『国語学』51 (2),日本語学会,pp. 162‒163

大谷晋也(1996)「「気」の慣用句の結合度(〈特集〉「気」の語句)」『日本語学』15 (7),明治書院,pp. 55‒68

大月実(1987)「慣用句にあらわれた身体(〈特集〉身体から発することば)」『言語生活』423,筑摩書房,pp. 40‒45

大坪喜子(1985)「名詞慣用句─特に隠喩的慣用句について─」『日本語学』4 (1),明治書院,pp. 54‒61

島本基(1995)「動詞慣用句の揺れ─助詞について─」『無差』2,京都外国語大学,pp. 45‒61

白石大二(1975)「食物・味覚に関する成語・慣用句(〈特集〉たべものとことば)」『言語生活』286,筑摩書房,pp. 34‒39

程長善(1996)「日本語慣用句の語彙的な特徴に関する一考察」『経営研究』9 (3),愛知学泉大学,pp. 455‒470

西尾寅弥(1985)「形容詞慣用句」『日本語学』4 (1),明治書院,pp. 45‒53藤巻一真(2005)「日本語3項動詞の慣用句について」『東京国際大学論叢 言語コミュニケーション学部編』1,pp. 69‒80

藤巻一真(2006)「慣用句と右方転移」Scientif ic approaches to language 5,神田外語大学,pp. 233‒250

藤巻一真(2009)「慣用句における取り立て」Scientif ic approaches to language 8,神田外語大学,pp. 27‒42

宮地裕(1982a)「動詞慣用句(〈特集〉動詞の研究)」『日本語教育』47,日本語教育学会,pp. 91‒102

森田良行(1985)「動詞慣用句」『日本語学』4 (1),明治書院,pp. 37‒44

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101

日本語の慣用句に関する研究の概観

Ⅲ.慣用句の意味・用法に関する研究秋山智美(2009)「同義・類義の慣用表現にみる使用差」『東京交通短期大学研究紀要』

15,pp. 139‒145有薗智美(2008)「「顔」の意味拡張に対する認知的考察」『言葉と文化』9,名古屋大学大学院国際言語文化研究科,pp. 287‒301

有薗智美(2014)「〈物事との関与〉を表す表現の意味の成立─「手」、「足」の慣用句─」『名古屋学院大学論集言語・文化篇』25 (2),名古屋学院大学総合研究所,pp. 79‒95

石田プリシラ(2003a)「慣用句の意味を分析する方法」『日本語と日本文学』37,筑波大学国語国文学会,pp. 13‒26

石田プリシラ(2003b)「慣用句の意味分析─《驚き》を表す動詞慣用句・一般動詞を中心に─」『筑波応用言語学研究』10,pp. 1‒16

石田プリシラ(2004)「動詞慣用句の意味的固定性を計る方法─統語的操作を手段として─」『国語学』55 (4),日本語学会,pp. 42‒56 

上条由実・富所諒子(2004)「肩・胸・脇・背を含む慣用句と比喩」『信大日本語教育研究』4,信州大学人文学部日本語教育学研究室,pp. 28‒32

権益湖(2002)「マスコミにおける日本語表現について─漢語と慣用句を中心に─」『東アジア日本語教育・日本文化研究』5,東アジア日本語教育・日本文化研究学会,pp. 31‒41

小池清治・キロワスベトラ(2003)「慣用句の分類とその応用」『宇都宮大学国際学部研究論集』16,pp. 89‒104

坂本勉(1982)「慣用句と比喩─慣用化の度合の観点から─」『言語学研究』1,京都大学言語学研究会,pp. 1‒21

土屋智行(2007)「動詞慣用句の連体修飾と意味解釈の関係─「顔/目/手/をV」の表現を中心に─」『日本語用論学会大会研究発表論文集』3,日本語用論学会,pp. 113‒120

土屋智行(2011)「言語の創造性の基盤としての定型表現─慣用句およびことわざの拡張用法の調査─」『認知科学』18 (2),pp. 370‒374

中村明(1977)「語の意味と固定連語の扱い(〈特集〉日本語の表現─慣用語句、特別な言い回し─)」『日本語教育』33,日本語教育学会,pp. 43‒54

中村明(1985)「慣用句と比喩表現」『日本語学』4 (1),明治書院,pp. 28‒36中村明(2009)「感情表現の慣用句と比喩(〈特集〉日本語の形容詞とその周辺─意味・機能から─)」『国文学 解釈と鑑賞』74 (7),至文堂,pp. 70‒81

藤巻一真(2007)「慣用句における移動と解釈の問題」Scientif ic approaches to language 6,神田外語大学,pp. 1‒12

方小贇(2014)「日本語慣用句の成り立ち─理論的な枠組みと発生のメカニズム─」『外国文学』63,宇都宮大学外国文学研究会,pp. 77‒85

宮地裕(1991)「慣用句の意味」『「ことば」シリーズ34 言葉の意味』文化庁,pp. 65‒76宮田剛章(2006)「日本語母語話者による動詞慣用句の敬語化」『都大論究』43,東京都立大学国語国文学会,pp. 13‒24

村田年・山崎誠(2011)「「手」の慣用句を指標とした文章ジャンルの判別─現代日本語書

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102

『日中語彙研究』第6号

き言葉均衡コーパスを用いて─」『日本語と日本語教育』39,慶應義塾大学日本語・日本文化教育センター,pp. 75‒88

籾山洋介(1997)「慣用句の体系的分類─隠喩・換喩・提喩に基づく慣用的意味の成立を中心に─」『名古屋大学国語国文学』80,pp. 29‒43

Ⅳ.慣用句教育秋元美晴(2009)「日本語教育から見たことばと文化─身体語彙を含む慣用句を中心に─」『外国語学研究』10,大東文化大学大学院外国語学研究科,pp. 175‒185

新垣真(2007)「慣用句表現の学習指導の実践と考察─マルチメディアの活用を通して─」『沖縄国際大学語文と教育の研究』8,沖縄国際大学国語教育研究室,pp. 27‒37

沖裕子(2004a)「比喩の形式と意味─日本語教育のための基礎的研究─」『信大日本語教育研究』4,信州大学人文学部日本語教育学研究室,pp. 2‒15

沖裕子(2004b)「日本語の身体慣用句一覧」『信大日本語教育研究』4,信州大学人文学部日本語教育学研究室,pp. 33‒85

金子百合子(1985)「国語教育における慣用句」『日本語学』4 (1),明治書院,pp. 76‒83韓美齢(2005)「中国人日本語学習者に対する日本語慣用句の指導について─教科書の実態と学生の誤用分析から慣用句の教え方へ─」『福岡教育大学国語科研究論集』46,福岡教育大学国語国文学会,pp. 89‒108

金華・鄧娟娟(2014)「中国の大学の日本語教育における慣用句の扱い」『日本語教育研究』60,長沼言語文化研究所,pp. 97‒113

蔡玉琳・仙波光明・王敏東(2010)「「気」が句頭に位置する慣用句について─慣用句教材を編纂する手がかりとしての一考察─」『言語文化研究』18,徳島大学,pp. 143‒164

阪田雪子(1985)「日本語教育における慣用句」『日本語学』4 (1),明治書院,pp. 84‒90薛鳴・呉月新(2004)「慣用句の理解に見られる母国語の影響─中国人日本語学習者の場合─」『中京学院大学研究紀要』12 (1・2),pp. 13‒22

張淑華(1996)「中国人に分かり易い日本語の慣用句の記述について」『信大国語教育』6,信州大学国語教育学会,pp. 16‒26

土井哲治(2008)「高等教育ユニバーサル化時代の『短大生のための慣用句集』」『華頂短期大学研究紀要』53, pp. 45‒53

日比野浩信(2008)「大学生の日本語能力の現状・各論(ことわざ・慣用句・四字熟語・部首)─豊橋技術科学大学生の場合─」『雲雀野』30,pp. 121‒135

森田良行(1966)「慣用的な言い方」『講座日本語教育2』早稲田大学語学教育研究所,pp. 61‒78

森田良行(1990)「慣用的な言い方について」『日本語学と日本語教育』凡人社,pp. 411‒ 430

李東一(2006)「日本語教育における慣用句─「外国人学習者の日本語教育」をメドにして─」『別府大学国語国文学』48,別府大学,pp. 41‒59

Ⅴ.慣用句に関する対照研究(中国語との対照研究を中心に)小野米一・王婉瑩・松田知子・田原佳世・ジェビットスーザン・張海蓉(1999)「身体語

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103

日本語の慣用句に関する研究の概観

彙を含む日本語の慣用句─中国語・英語との対照を通して─」『語文と教育』13,鳴門教育大学国語教育学会,pp. 66‒84

夏玉玲・羅文秀(2015)「日中慣用句の対照研究─「目」を中心に─」『地域文化研究』12,地域文化研究学会,pp. 143‒152

キロワスベトラ(2004)「14ヶ国語における慣用句の調査─東洋と西洋の慣用句に見られる発展の傾向─」『名古屋大学人文科学研究』33,pp. 13‒24

桂小蘭(1992)「日本語と中国語の慣用句に関する一考察─慣用句構成語の比較を中心に─」『大阪大学言語文化学』1,pp. 93‒102

支洪濤(2001)「慣用句とその周辺にあるものの概念についての考察─日中両言語における比較─」『岡山大学国語研究』15,pp. 86‒94

支洪濤・吉田則夫(2002)「身体部位名称を含む慣用句についての計量的分析─中国語との対照を通して─」『岡山大学教育学部研究集録』121,pp. 157‒165

支洪濤・吉田則夫(2003)「身体部位名称を含む慣用句についての日中対照研究─「目」の場合─」『岡山大学教育学部研究集録』124,pp. 93‒100

孫潮(2001)「身体語を含む慣用句に関する対照研究─日本語と中国語の場合─」『龍谷大学大学院文学研究科紀要』23,pp. 270‒274

鄭海燕(2006)「中日両言語の慣用句についての対照研究─「気」を表すものを中心に─」『日本語教育と異文化理解』5,愛知教育大学国際教育学会,pp. 9‒16

湯艶(2006)「中国と日本における “数字” 文化の比較─諺と慣用句を中心に─」『研究紀要』40,佐賀女子短期大学,pp. 31‒38

潘立波(1998a)「「頭」を含む慣用句の日中比較考察」『東日本国際大学研究紀要』4 (1),pp. 191‒206

潘立波(1998b)「日中両言語における慣用句に対する一考察─「肩」による慣用句を中心に─」『東日本国際大学研究紀要』3 (2),pp. 157‒175

方小贇(2011a)「日本語と中国語における「首」を含んだ慣用句の比較」『宇都宮大学国際学部研究論集』31,pp. 137‒150

方小贇(2011b)「日本語と中国語における「鼻」を含んだ慣用句の比較」『外国文学』60,宇都宮大学外国文学研究会,pp. 15‒32

吉田則夫・支洪濤(1999)「身体語を含む慣用句についての日中対照研究─「頭」の場合─」『岡山大学教育学部研究集録』110,pp. 105‒109

李雯(2008)「中日「慣用句」考─中日両語における猫に関する慣用的表現を中心に─」『愛媛国文と教育』40,愛媛大学教育学部国語国文学会,pp. 22‒30

Ⅵ.コンピュータによる研究相薗敏子・小泉敦子・森本康嗣(2004)「慣用句抽出のための統計尺度の比較評価」『情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)』2004-NL-162,一般社団法人情報処理学会,pp. 103‒108

佐藤理史(2007)「基本慣用句五種対照表の作成」『情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)』2007-NL-178,一般社団法人情報処理学会,pp. 1‒6

首藤公昭・高橋雅仁・田辺利文(2012)「日本語慣用句機械辞書」『情報処理学会研究報告

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104

『日中語彙研究』第6号

自然言語処理(NL)』2012-NL-205 (3),一般社団法人情報処理学会,pp. 1‒12ダニーミン・佐藤洋(2001)「日本語学習者のための慣用句データベースの作成─統計処理を用いた一手法の提案─」『情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE)』2001-CE-062,一般社団法人情報処理学会,pp. 55‒62

橋本力・佐藤理史・宇津呂武仁(2006)「自動検出のための慣用句の分類と語彙的情報」『情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)』2006-NL-173,一般社団法人情報処理学会,pp. 59‒66

橋本力・河原大輔(2008)「日本語慣用句コーパスの構築と慣用句曖昧性解消の試み」『情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)』2008-NL-186,一般社団法人情報処理学会,pp. 1‒6

守屋将人・竹内孔一(2011)「網羅的な検出を重視した異形パターンに基づく日本語慣用句同定システム」『電子情報通信学会技術研究報告.TL, 思考と言語』111 (227),一般社団法人電子情報通信学会,pp. 45‒50

Ⅶ.翻訳とコミュニケーションにおける慣用句板橋安人(1984)「聴覚障害生徒の慣用句を含む文の理解」『筑波大学附属聾学校紀要』6,

pp. 17‒26張愛平(1995)「日本語・中国語の翻訳に於ける問題点について」『横浜国立大学留学生センター紀要』2,pp. 90‒101

廣内裕子(1997)「「異文化」における慣用句の比較」『日本語・日本文化』23,大阪大学,pp. 55‒66

山澤秀子・竹内愛子・飯高京子(2003)「失語症者の慣用句の理解─右半球損傷者との比較─」『コミュニケーション障害学』20 (1),pp. 16‒23

Ⅷ.辞書類及びその他井上宗雄(1992)『例解慣用句辞典─言いたい内容から逆引きできる─』創拓社学研辞典編集(2014)『用例でわかる慣用句辞典』改訂第2版,学研教育出版倉持保男・阪田雪子(1994)『慣用句の辞典』新装版,三省堂倉持保男・阪田雪子編集(1998)『三省堂慣用句便覧』三省堂現代言語研究会(1993)『すぐに役立つ慣用句用例新辞典』あすとろ出版社現代言語研究会(2007)『慣用句の辞典─日本語を使いさばく─』あすとろ出版社集英社辞典編集部(1991)『ルーツでなるほど慣用句辞典』集英社白石大二(1950)『日本語のイディオム』三省堂白石大二(1961)『日本語の発想─語源・イディオム─』東京堂白石大二(1969)『国語慣用句辞典』東京堂白石大二(1977b)『国語慣用句大辞典』東京堂丹野顯(1998)『意味から引ける慣用句辞典』日本実業出版社中嶋尚監修(1996)『新選慣用句の辞典─気のきいた言葉豊かな文章表現─』小学館日本語表現研究会(1997)『使える慣用句事典─言いたい言葉がすぐに見つかる!─』

PHP研究所

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日本語の慣用句に関する研究の概観

宮地裕(1982b)『慣用句の意味と用法』明治書院米川明彦・大谷伊都子(2005)『日本語慣用句辞典』東京堂出版

呉琳 Wu Lin 西安交通大学外国語学部講師、北海道大学博士後期課程(投稿時) 専門:慣用句論、コーパス日本語学

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