IIJmio meeting 17 DSDSと着信シーケンスについて

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IIJmio meeting #17

「DSDSと着信シーケンスについて」

2017/10/14株式会社インターネットイニシアティブ木野 純武

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■はじめに

• この1年、2枚のSIMカードを挿して運用できるSIMフリー端末が増えてきました。

• また、DSDS(Dual SIM - Dual Standby)という機能・動作に対応する端末が急増しています。

– IIJの取り扱うSIMフリースマートフォンでも既に15機種……• ZenFone 4 / ZenFone 4 Selfie Pro / ZenFone AR / ZenFone Zoom S /

ZenFone 3

• Moto G5s Plus / Moto G5 Plus / Moto Z2 Play

• honor 9 / P10 / P10 Plus / nova

• Blade V8

• VAIO Phone A

• GRANBEAT

• DSDS端末は「2枚のSIMカードを挿してどちらにも着信できる」

→ どういう仕組みなのか→ どんな技術仕様があるのか

モバイル網の「着信」の仕様や工夫から説明していきます。

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【今回のコンテンツ】

• DSDSの概要

• DSDSのキーポイント

• 位置登録(Attach)

• 着信(Paging)

• 間欠受信(DRX)

• キーポイントのおさらい

• DSDS端末における実際の動作

• 今後の調査ポイントと推測

• これからについて

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■DSDSの概要

• 「DSDS」とは……→ Dual SIM – Dual Standby の略称。

2枚のSIMで、両面待ち受け。

1台の端末に2枚のSIMカードを挿して、どちらのSIMカードでも音声着信を受けられる機能・動作モード。

– 使用する通信方式がSIMごとに別であってもよい。(例:SIM1 – LTE接続 / SIM2 – GSM接続 など)

– SIMごとに契約事業者が別であってもよい。(例:SIM1 – IIJmio / SIM2 – 大手事業者音声定額プラン など)

– 一方のSIMスロットは端末能力を十全に使える(LTE対応ならLTEまで使える)が、もう一方のSIMスロットは3Gまたは2Gしか使えないなど端末能力/通信方式に制限が掛かることがほとんど。

• 外部の解説記事(ケータイWatch)

– ケータイ用語の基礎知識 第765回「デュアルスタンバイ とは」• http://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/column/keyword/1010838.html

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■DSDS端末のSIMスロット

• 端末によって色々

– 主流は取り外し可能なスロット金具の模様。

– 端末本体にスロットを2つ実装しているものも。

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■DSDS以外の動作モード

• と言いつつ、オフィシャルな定義は見当たらない……

• GSMAのマルチSIM端末向け要求事項にそれらしきものがある。(TS.37 - Requirements for Multi SIM Devices / 2.4 Operational Modeより引用)

– Passive物理的には2枚のSIMを挿すことが可能だが、端末が一度に扱えるのはひとつのSIMのみ。他の言い方をするならDSSS(Dual SIM – Single Standby)か。

– DSDA(Dual SIM – Dual Active)物理的に2枚のSIMを挿すことが可能で、両方のSIMが独立して通信することが可能。ただし、無線部分を2つ具備する必要がある上、通信モデムの状態もSIMごとに別々に管理されていなければならない。(当然、バッテリー消費もその分増加する)

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■機能モデル(おおざっぱに)

[Passive] [DSDS] [DSDA]

SIMスロット1

SIMスロット2

OS

通信モデム

無線部(RF)

SIMスロット1

SIMスロット2

OS

通信モデム

無線部(RF)

SIMスロット1

SIMスロット2

OS

通信モデム1

通信モデム2

無線部RF 1

無線部RF 2

常にどちらかしか使えない

着信時のみ切り替える

両方とも同時に使用している

処理もSIMごとに独立している

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■以降の説明スライドのお約束として

• この資料では、DSDS端末上で4G/3Gが使えるSIMスロット及びそのスロットに入っているSIMを「メインSIM」と記載します。

• 一方で、3G音声/2G音声のみが使用できるSIMスロット及びそのスロットに入っているSIMを「サブSIM」と記載します。

→ 実際には、データ接続に使用するSIM(上記でいうメインSIM)はOS上で入れ替えが可能なことがほとんどですが、説明簡略化のため、役割を固定して説明していきます。

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【今回のコンテンツ】

• DSDSの概要

• DSDSのキーポイント

• 位置登録(Attach)

• 着信(Paging)

• 間欠受信(DRX)

• キーポイントのおさらい

• DSDS端末における実際の動作

• 今後の調査ポイントと推測

• これからについて

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■DSDSのキーポイント(その1)

• どちらのSIMに来た着信なのか、端末はどうやって判別するのか。

1. 電源ON後、メインSIMとサブSIMの両方がそれぞれの属するネットワークに位置登録(Attach)を済ませている。

2. 着信通知するための制御信号(Paging)に、回線を識別するための識別子が含まれている。

→ ネットワークは端末(にある両方のSIM)がどのエリアにいるかを把握している。

→ 着信を通知する時は、そのエリアに着信対象の識別子を載せたPagingをばらまいて(報知して)いる。

【キーワード】• 位置 (Location/Routing/Tracking Area)• 位置登録(Attach)• 位置更新(Location/Routing/Tracking Area Update)• TMSI / P-TMSI / GUTI などの一時的識別子

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■DSDSのキーポイント(その2)

• DSDS端末にはRFが1つしかないのに、どうやって両面で待ち受け可能となっているのか。

1. 待ち受け時ではわずかな時間のみ着信確認を行っている。

2. 着信確認タイミングはSIM(IMSI)によって異なる。

→ メインSIMが通信中でも、サブSIMの着信確認タイミングの時だけ、RF部を切り替えてPagingの有無を確認している。

【キーワード】• 間欠受信(DRX : Discontinuous Reception)

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【今回のコンテンツ】

• DSDSの概要

• DSDSのキーポイント

• 位置登録(Attach)

• 着信(Paging)

• 間欠受信(DRX)

• キーポイントのおさらい

• DSDS端末における実際の動作

• 今後の調査ポイントと推測

• これからについて

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■位置登録とは

• 「Attach」と「着信」は不可分の関係

– ネットワークにAttachするからこそ、着信を受けられるようになる。

• そもそも「Attach」って何?

– “Attach”という単語は「装着する」や「くくりつける」という意味。

– つまり「モバイルネットワークに自分(加入者/SIM)をくっつける……= 利用可能にする」ということ。

– このとき、自分が誰であるかを認証するプロセスが行われている。(IIJmio meeting 16 「スマートフォンがつながる仕組み」スライド19)

– 今回のポイントは以下の2点。

1.自分がどこ(エリア)にいるかネットワークに登録すること&

2.そのエリア用に自分の一時的識別子を割り当てられること

• このため、Attach手順は「位置登録」手順とよく訳される。

• 何のための「位置(エリア)」か?→ ずばり、着信対象の端末に着信通知(Paging)を流すエリア。

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■「位置(エリア)」の種別

• コアネットワーク観点での「位置」と捉えればよい。

– 通信方式や利用ドメインで名称が異なり、別のエリアと見なされる。

▼2G/3G CS domain : “Location Area”2G/3Gにおける回線交換ドメインの着信管理エリア。識別番号はLAC(Location Area Code)と呼ばれ、0000~FFFFの値を取る。PLMNを先頭に付けると、LAI(Location Area Identifier)と呼ばれる。対応する一時的識別子は「TMSI」。

▼2G/3G PS domain : “Routing Area”2G/3Gにおけるパケット交換ドメインの着信管理エリア。Location Areaにぶら下がるエリアであり、ひとつのLocation Areaに複数のRouting Areaを紐付けることができる(もちろん1:1で管理してもよい)識別番号はRAC(Routing Area Code)と呼ばれ、00~FFの値を取る。LAIを先頭に付けると、RAI(Routing Area Identifier)と呼ばれる。対応する一時的識別子は「P-TMSI」。

▼LTE : “Tracking Area”LTEにおける着信管理エリア。(LTEはもともとPS domainのみなので)識別番号はTAC(Tracking Area Code)と呼ばれ、0000~FFFFの値を取る。PLMNを先頭に付けると、TAI(Tracking Area Identifier)と呼ばれる。対応する一時的識別子は「GUTI」。

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■エリアの構造サンプル(その1 - LAC と RAC)

PLMN : 44003LAC : 2001RAC : 00

PLMN : 44003LAC : 2001RAC : 01

PLMN : 44003LAC : 0001RAC : 00

PLMN : 44003LAC : A001RAC : 00

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■エリアの構造サンプル(その2 - TAC)

PLMN : 44003TAC : FF01

PLMN : 44003TAC : 0001

PLMN : 44003TAC : 0002

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■「位置登録」についてもう少し補足

• 着信はCS/PSでそれぞれ管理されている。

– 音声通話の着信と、下りデータ通信開始を知らせるパケット通信の着信は、別々に行われている。

– 要は、Location Areaでの着信、Routing Areaでの着信、という括り。

• なので、位置登録もCS/PSそれぞれで実施される。

– GSMから発展してきた技術仕様の名残がこんなところにあったりする。(パケット交換サービスであるGPRSはGSMへの後付けだったため)

– しかし、現在はCS/PS両方のエリアを一気に登録する動作が一般的。これが「Combined Attach」と呼ばれる動作。

[ CS domain ]Location Area

[ PS domain ]Routing Area / Tracking Area

Combined Attach(CS/PS)

IMSI Attach (CS)

GPRS Attach (PS)

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■位置登録(Combined Attach)シーケンス

UEeNB /RNC

MSCMME /SGSN

HSS /HLR

PS domainの位置登録(P-TMSIまたはGUTIを割り当てる)

CS domainの位置登録(TMSIも割り当てる)

Attach Request送信 Attach Requestを透過

PS domainの位置登録完了を連絡

CS domainの位置登録完了を連絡

Attach Acceptを透過

TMSIとP-TMSI(またはGUTI)確定

TMSIとP-TMSI(またはGUTI)を受領して利用開始

Attach Accept受信

Attach Complete送信

Attach Completeを透過

認証プロセスを実施IIJmio meeting 16 「スマートフォンがつながる仕組み」スライド19のあたり

TMSI割り当て完了連絡

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■「位置」が変わったら?

• 「位置」が変わったことを端末とネットワークの両方が把握する必要があるので、端末-ネットワーク間で「位置」の更新を行う。

→ これが「位置更新」(Location Update)と呼ばれる動作。またいだエリアの種類により、Location Area UpdateとかRouting Area Updateと呼ばれる。両方またぐなら「Combined Routing Area Update」。

→ この時必要に応じて一時的識別子(TMSIやP-TMSIなど)も再割り当てが行われる。

• 端末は、どうやってエリアが変わったことが分かるのか。

→ 基地局(セル)が常に流している「報知情報」に、PLMN / LAC / RAC / TACが含まれている。(3GセルではLACとRACが、LTEセルではTACが含まれる)

→ LAI / RAI / TAI が変わったとき、端末は位置更新の動作をトリガーする。(LAC / RAC / TACではないことに注意)

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■「位置更新」が発生するとき

PLMN : 44003LAC : 2001RAC : 00

PLMN : 44003LAC : 2001RAC : 01

PLMN : 44003LAC : 0001RAC : 00

PLMN : 44003LAC : A001RAC : 00

LACが”0001”から”A001”に変化。LAIが変わることにより結果的にRAIも変わるため、CS/PS両方の位置更新が必要。

PLMN : 44003LAC : A001RAC : 00

RACのみが”00”から”01”に変化。RAIのみが変わるので、PSのみ位置更新が必要。

LACが”2001”から”A001”に変化。RACが”00”から”01”に変化。LAIもRAIも変わるので、CS/PS両方の位置更新が必要。

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■位置更新(LTE)シーケンス要約 1

UE eNB移動先MME

在圏元MME

移動先MSC

在圏元MSC

HSS/HLR

TAI変化を検出

報知情報を取得してTAIを確認

Tracking Area Update Request 送信 Tracking Area Update

Request透過

認証プロセスを実施IIJmio meeting 16 「スマートフォンがつながる仕組み」スライド19のあたり

PS側位置更新処理開始を要求

PS domainの位置更新(移動先MMEがGUTIを新たに割り当てる)

在圏元MMEが持っているユーザ情報を削除

次スライドに続く

PS側位置更新処理完了を通知

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■位置更新(LTE)シーケンス要約 2

UE eNB移動先MME

在圏元MME

移動先MSC

在圏元MSC

HSS/HLR

Tracking Area Update Accept 透過

前スライドからの続き

Tracking Area Update Accept 受信

新しいTMSIとGUTIを受領して

利用開始

Tracking Area Update Complete 送信

Tracking Area Update Complete 透過

TMSIの再割り当て完了連絡

CS domainの位置更新(移動先MSCがTMSIを新たに割り当てる)

在圏元MSCが持っているユーザ情報を削除

CS側位置更新処理開始を要求

CS側位置更新処理完了を通知

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■DSDS端末での「位置登録」

• では、DSDS端末はというと……

• メインSIMの位置登録も行いつつ、サブSIMの位置登録も別途行っている。

– 一時的識別子もSIMごとに各NWから割り当てられている。

• このため、メインSIMとサブSIMを切り替える(例えばデータ用SIMを切り替えるような)場合、時間が掛かる旨のメッセージが表示される端末もある。

– それぞれのSIMが位置登録/位置更新をやり直しているため。

– 位置更新処理もSIMごとに独立して動作することが推測される。

メインSIMIMSI : 44003xxxxxxxxxx

サブSIMIMSI : 20601xxxxxxxxxx

PLMN 1 : 440-03

PLMN 2 : 206-01

DSDS対応スマートフォン

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【今回のコンテンツ】

• DSDSの概要

• DSDSのキーポイント

• 位置登録(Attach)

• 着信(Paging)

• 間欠受信(DRX)

• キーポイントのおさらい

• DSDS端末における実際の動作

• 今後の調査ポイントと推測

• これからについて

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■着信を通知するための制御信号「Paging」

• Pagingとは

– 一般的には「誰かを呼び出すこと」を意味する、らしい。

– 少し昔(?)にポケベルというものがあって……

– フードコートで食事を注文した後、受付から渡される呼び出し機器を「ページャー」と呼んだりもする。

• モバイルネットワークにおける制御信号としての「Paging」

– 位置登録を済ませた端末を「呼び出す」ための制御信号。

– ネットワーク側が一時的識別子を使って、着信対象端末を呼び出す。

– LTEでも3Gでも、Paging配信用の専用チャネルが設けられている。(どの端末も必ずチェックする)

→ 自分宛てのPagingを受信したときが「着信」とも言える。

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■「Paging」の中身(例)

• 以前に何度かご紹介した「3GPP decorder」でチェック。

– http://3gppdecoder.free.fr/?q=node/1

– サンプル : LTE-RRC.PCCH “Paging”Hex : 41804E37C07CF805E2FEBDBF001E1D9D6B6003E09FF6BA000000

• 中身のメインは...

1.呼び出し対象の一時的識別子(の一部)(GUTIの一部を引っ張り出したS-TMSI)

2.呼び出しドメイン(CS / PS のいずれか)

→ 「誰」に対して「何のために」呼び出したのかが分かる。

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TA : 0001

TA : 0002

TA : 0003

TA:0003にいるユーザ15をPS domainで呼び出し

TA:0002にいるユーザ12とユーザ13をPS domainで呼び出し

TA:0001にいるユーザ3をCS domainで呼び出し

ユーザ01

ユーザ02 ユーザ03

ユーザ04

ユーザ05

ユーザ06

ユーザ07ユーザ08

ユーザ09

ユーザ10

ユーザ15

ユーザ11

ユーザ12ユーザ13

ユーザ14ユーザ16

Paging

- ユーザ03(CS)

Paging

- ユーザ03(CS)

Paging

- ユーザ12(PS)- ユーザ13(PS)

Paging

- ユーザ12(PS)- ユーザ13(PS)

Paging

- ユーザ15(PS)

MME 1

MME 2

eNB 1

eNB 2

eNB 3

eNB 4 eNB 5

HSS/HLRなど

MSC 1

BTS 1

メインSIMユーザ17

サブSIMユーザ18

DSDS端末

LA:000Fにいるユーザ18をCS domainで呼び出し

LA : 000F

Paging Type 1

- ユーザ18(CS)

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【今回のコンテンツ】

• DSDSの概要

• DSDSのキーポイント

• 位置登録(Attach)

• 着信(Paging)

• 間欠受信(DRX)

• キーポイントのおさらい

• DSDS端末における実際の動作

• 今後の調査ポイントと推測

• これからについて

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■無線区間での「着信」動作

• 端末-基地局の無線区間でPagingはどう受信されているのか。

→ 基地局は、Paging専用チャネルにPagingを流す。→ 端末は、Paging専用チャネルをチェックして自分宛てが

あるかどうか確認する。

3GとLTEで細かいところは異なるものの、大まかな仕組みやコンセプトは同じ。

• しかし、Pagingを取り逃さないよう常にチャネルを監視すると、バッテリー消費が激しくなる。

→ 通信していない待機中ではなるべく眠っていて、決まったタイミングだけ起きてチャネルを確認すればよい。

• これが DRX(Discontinuous Reception)のキーポイント。

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■DRXとは

• 「Discontinuous Reception」という名の通り「不連続受信」

• 待機状態の間はわずかな時間のみRF部を起動して、その時間内で必要な情報を確認する。(反応する必要がなければまた眠る)

• バッテリー消費抑制に貢献する仕組みの1つ。

• 最近は「eDRX」という言葉もニュースサイトで見かけるように。

– ちっちゃな「e」は「extended」(つまり拡張版DRX)

– 今までの仕様より、さらに長い時間寝ていられるようにする仕組み。• IoT通信機器の消費電力を約5分の1に低減するeDRX技術を提供開始

https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2017/09/26_01.html

• IoT向け通信技術「LTE Cat-M1」の特徴は? KDDIとアルテアがテストhttp://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1034435.html

• NTTドコモ テクニカル・ジャーナル Vol.24 No.2「LTE Release 13におけるIoTを実現する新技術」https://www.nttdocomo.co.jp/corporate/technology/rd/technical_journal/bn/vol24_2/009.html

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■3Gでの「Paging」信号

• 着信通知に使われる制御信号は以下の2つ

– 「Paging Type 1」端末と基地局の間で通信がなく、端末が待機状態のときに使われる。論理的にはページング専用チャネル「PCH」が定義されており、物理チャネルとしては「SCCPCH」が使われる。

– 「Paging Type 2」端末と基地局で通信が確立しており、端末に個別の通信チャネルが割り当てられている状態で使われる。

→ この状態は基地局レベルで端末の位置が判明しているので、PCHは使われず、個別チャネルの制御信号として送信される。

• 今回は待機状態(Standby)における着信がテーマなので、「Paging Type 1」のケースを説明。

– サブSIM側は、使用されていない状態だと常に「待機状態」である。

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■着信確認の仕組み(その1)

• 3Gでの着信確認タイミングは、以下のように算出される。

1.在圏セルの報知情報(SIB1とSIB5)から着信確認間隔のパラメータを取得。

・SIB1 : 無線フレーム単位での間隔(何フレームごとに確認するのか)

・SIB5 : 下記PICHの着信通知ビット区間長(着信通知288bitのうち何bit見ればよいか)

2.上記パラメータとIMSIから、自分が着信確認すべき無線フレームの番号と、PICH(Paging Indication Channel)の着信通知ビット区間を算出する。

→ 計算式はややこしいので割愛...(IMSIをSCCPCHの本数で割ってさらに着信確認間隔で割った余り、とか)

• つまり、SIM(IMSI)ごとに着信確認タイミングが異なる。...それでもIMSIの番号空間の広さからすると、かなり重複する。

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■着信確認の仕組み(その2)

• その1で算出した着信確認タイミングでRF部を動作させ、PCHを確認(物理チャネル的にはSCCPCH)

→ このチャネルに「Paging Type 1」が流れてくる。

• Paging Type 1が入っていれば、その中身をデコードする。

• デコード結果から、自分を指し示す識別子が入っているか確認。

→ 入っていなければスルー。入っていたら、そのPaging Type 1に応答する。(この後は無線通信路を確立して着信呼シーケンスに入る)

• DSDS端末の場合、自分宛の着信と分かった時点で、RF部がメインSIM向けからサブSIM向けに切り替わる。

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■LTEでの「DRX」

• 3Gの時と仕様的なコンセプトは同じ。とはいえ3Gより仕組みは整理されたので、ちょっと違いがある。

→ 制御信号名は「Paging」のみ。端末が待機状態でも接続状態でも同じチャネルを確認している上、物理チャネル的にはPagingも下りユーザデータも同じ無線リソース領域を利用しているため。

• 着信確認タイミングは3Gと同様、IMSIと報知情報から算出。

→ 報知情報(SIB2)に確認タイミングの間隔が入っている。この値とIMSIの値を色々と操作して算出。

• 接続状態(Connected)のときは、DRXの動き方が異なる。

– Long DRXとShort DRXの2種類がある。

– 接続状態は基本的にnon-DRXだが、しばらく無通信だとShort DRXに入って、さらに無通信が続くとLong DRXに移行する。

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【今回のコンテンツ】

• DSDSの概要

• DSDSのキーポイント

• 位置登録(Attach)

• 着信(Paging)

• 間欠受信(DRX)

• キーポイントのおさらい

• DSDS端末における実際の動作

• 今後の調査ポイントと推測

• これからについて

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■キーポイントのおさらい

• これまでの内容を踏まえて、DSDS動作のおさらい。

1.メインSIMとサブSIMの両方が「位置登録」を行っている。(どちらも着信管理の対象となっている)

2.着信の制御信号「Paging」には、端末(に挿したSIM)を指し示す識別子が入っている。(そのため、サブSIMだけに着信を通知できる)

3.DRXにより、SIMごとに着信確認タイミングが異なる。(メインとサブでタイミングは基本的に被らない)

4.DRXにより、端末は着信確認タイミングのときだけRF部を切り替えればよい。(メインSIMが通信中でもほとんど通信を阻害しない)

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■DSDS端末動作(電源ON時)

DSDS端末メインSIM側ネットワーク

メインSIM サブSIM

メインSIMでAttach実施(TMSIとP-TMSI/GUTIが割り当てられる)

メインSIMの処理待ち

RF部をサブSIM側に

セット

サブSIMでAttach実施(CS domainだけなのでTMSIが割り当てられる)

通信中 Paging待ち

サブSIM側ネットワーク

RF部をメインSIM側に

再セット

メインSIMで通信中

RF部をメインSIM側に

セット

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■DSDS端末動作(メインSIM通信中 / 着信なし)

DSDS端末メインSIM サブSIM メインSIM側

ネットワークサブSIM側

ネットワーク

メインSIMで通信中

メインSIMで通信中

通信中 Paging待ち

メインSIMで通信中

メインSIMで通信中

着信確認!(なし)

着信確認!(なし)

着信確認!(なし)

Paging Type 1配信

(サブSIMなし)

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■DSDS端末動作(メインSIM通信中にサブSIM着信)

DSDS端末メインSIM サブSIM メインSIM側

ネットワークサブSIM側

ネットワーク

メインSIMで通信中

通信中 Paging待ち

Paging Type 1サブSIM /CS domain

他端末からサブSIMへ音声発信

RF部をサブSIM側に

セット

ユーザが着信にUI上で応答

サブSIMの加入者で着信応答シーケンス実施

サブSIM側で音声通話開始

音声通話確立

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メインSIMで通信中

■DSDS端末動作(サブSIM音声通話を終了)

DSDS端末メインSIM サブSIM メインSIM側

ネットワークサブSIM側

ネットワーク

サブSIM側で音声通話中

通信中休止中

ユーザがUI上で終話操作を実施

終話シーケンス実施

RF部をメインSIM側に

セット

無線区間で接続再開シーケンス実施

メインSIMで通信中

着信確認!

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• 位置登録(Attach)

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• キーポイントのおさらい

• DSDS端末における実際の動作

• 今後の調査ポイントと推測

• これからについて

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■今後の調査ポイントと推測(その1)

※余力があれば追跡調査したいポイント

• メインSIMでデータ通信中に、サブSIM側で位置更新が発生する状況での端末動作

– 【推測】サブSIMの位置更新を実施するためにRF部がサブSIM側に切り替わり、位置更新が完了するまでの数秒間は「データ通信ができない」状態となることが想定される。

• サブSIMで音声通話中に、メインSIM側で位置更新が発生する状況での端末動作

– 【推測 1】上記と同様、メインSIMの位置更新実施のためRF部がメインSIM側に切り替わり、位置更新が完了するまで1~2秒程度「通話が途切れる」ことが想定される。(端末側の音声バッファで補完されているかも)

– 【推測 2】サブSIMの音声通話中にはメインSIMの位置更新は行わず、終話後の在圏セル報知情報を見て位置更新の要否を判別している可能性も。

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■今後の調査ポイントと推測(その2)

• メインSIMでデータ通信中に、サブSIM側でCBS/ETWSを受信できるかどうか

– 【推測】ETWS初報と報知情報更新通知を含むPaging(Type 1)は受信できるが、その後に、CBS/ETWS次報の流れるチャネルを読みに行くかは不明。

– そもそもサブSIM側で流れる状況なら、メインSIM側の在圏セルでもCBS/ETWSが配信されているはず。

– どちらを優先するか、あるいはサブSIM側を無視するかなど、端末によって実装方針の違いが出てくると思われる。

----------------------------------------

– ちなみに、GSMAの文書「Official Document TS.37 - Requirements for Multi SIM Devices v2.0」では、cell broadcast messageがどのSIMで受け取ったものかを示さなければならない、とある。(TS37_2.5_REQ_18)

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• 位置登録(Attach)

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• キーポイントのおさらい

• DSDS端末における実際の動作

• 今後の調査ポイントと推測

• これからについて

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■これからについて

• DSDS対応端末は現状、日本のMNOから発売される可能性は大変小さい(と思われます)

– DSDSは「複数のSIMを使い分けて通信コストを節約する」使い方に適しています。1回線(SIM)を手厚くケアする方向とは相性が悪いと思われます。

• 一方、DSDS対応端末はSIMフリー端末として販売されることがほとんどで、MVNO回線の利用ハードルが低いと言えます。

– そのため端末ベンダだけでなく、回線を提供するMVNOや端末自体を取り扱うMVNOも、動作や特徴を把握しサポートしていく必要があると考えます。

• 回線(SIM)の利用機会や枠を増やしていくためにも、さらなる情報収集と調査を進めていきます。

– SIMを2枚挿せるということは、MVNO回線を利用してもらえる枠が増える、ということでもあります。