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フロー・ストックのリスク評価と管理システム開発プロジェクト
山田正人
(プロジェクトメンバー)小口正弘・平山修久・大塚康治・ 高田光康・遠藤和人・石垣智基・小保方聡・佐藤昌宏
目的及び達成目標
研究概要
フロー・ストックのリスク評価と管理システム開発プロジェクト
放射性物質に汚染された廃棄物等が収集・運搬、処理処分及び再利⽤されることによる、人工圏における放射性物質のフロー・ストックを特定・モデル化し、トレーサビリティを確保して、被曝を最⼩化する廃棄物管理・再⽣利⽤の制御と情報伝達の方策を示す。
サブテーマ1:放射性物質汚染廃棄物等の存在量推計
・一般廃棄物焼却残さ、下水汚泥・浄水発生土等について、空間分布や時系列変動、施設種類等による放射性Csの移行率・濃縮率の傾向等の分析を行う。サブテーマ2:放射性物質汚染廃棄物等のマテリアルフロー・ストック把握・放射性Csに汚染された廃棄物・副産物の種別と賦存量、濃縮・希釈が生ずるポイント、および地理的な流通量を示す“Radio-Nuclide Contaminated Material StreamData Base”を構築する。(※福島県と連携して調査を実施)サブテーマ3:社会システムにおける放射性物質の物質フロー・ストックモデル作成
廃棄物等を介した環境中から社会システムへ放射性物質の物質フロー・ストックモデルを作成するとともに、地域ごとの流入・移動・蓄積量の計算と可視化を行う。
人間による放射性物質の濃縮・希釈・移動
フロー・ストックのリスク評価と管理システム開発プロジェクト
浄水施設
排水処理施設
飛灰・主灰・スラグ(一般・産業廃棄物)
廃稲わら
廃堆肥
表土
残土・建設汚泥側溝汚泥
焼却施設草木
構造物道路・車
がれき類がれき類アスコン
浚渫汚泥浄水汚泥
排水汚泥
フィルタ廃プラ・フィルタ
木くず
農地堆肥化施設農ビ
焼成(セメント)
再生工場
再利用
再生工場
金属くず
指定廃棄物(調査義務)
特定一廃・産廃
特定一廃・産廃
糞尿
除染廃棄物
再生砂等
汚染された廃棄物・副産物の流れ
H23年度の研究成果まとめ
一般廃棄物およびその焼却灰の放射性セシウム濃度は冬に低下し春から夏にかけて上昇するという季節変動があることを示した。
放射性セシウム濃度は全体の傾向として1年間で50%以上低下しており、核種崩
壊による物理的減衰のペースを上回っていることから、一般廃棄物焼却処理への放射性セシウムの移行(流入)量自体が減少していることを示した。
下水脱水汚泥の放射性セシウム濃度も漸減していること、一般廃棄物ほどの季節変動は見られないことを示した。
平成23 年度の福島県の産業廃棄物発生量は824 万トン(県外からの搬入処理物を含む)、一般廃棄物発生量は210 万トン(災害廃棄物を含む)、土壌等及び副産物等が177 万トンであった。
H24年度の研究成果まとめ
東日本1都15県の一般廃棄物焼却施設における焼却灰等の放射性セシウム濃度測定値の推移をまとめた。
焼却飛灰や溶融飛灰の放射性セシウム濃度は施設のごみ収集対象範囲の空間線量率と一定の正の相関があるが、施設の種類や処理方式にも依存することがわかった。
フロー・ストックのリスク評価と管理システム開発プロジェクト
フロー・ストックのリスク評価と管理システム開発プロジェクト
データ 情報源・データ収集方法 備考
(1) 焼却灰の放射性Cs濃度(月別)
地方自治体の測定公表値を各地方自治体ウェブサイトより収集(一部環境省とりまとめデータを活用)
焼却飛灰,主灰,混合灰,溶融飛灰,溶融スラグ,その他発生物の別にデータ収集整備
(2) 焼却処理量,焼却灰等発生量
・廃棄物・3R研究財団施設台帳(H21版)・環境省提供データ(H21-7月実績値)
(3) 施設情報 ・環境省一般廃棄物処理実態調査(H21版)・廃棄物・3R研究財団施設台帳(H21版)
施設種類(焼却,ガス化溶融等),処理方式(ストーカ,流動床等),灰溶融の有無,排ガス処理方式等の情報を整理
(4) 各施設のごみ処理対象区域
地方自治体ウェブサイト等の施設情報,地区ごとのごみ収集情報、清掃事業概要,ヒアリングより整理
(5) 空間線量率・Cs土壌濃度
・国・自治体測定データ(点データ)から内挿補間で作成したメッシュデータ・文科省航空機モニタリングデータ
自然減衰のみを考慮して2011年3月22日値に換算(3/21頃の降雨による沈着をふまえて)。国・自治体測定データはIAEA換算係数 を 用 い て 土 壌 濃 度 に 換 算 ( Cs-134/137比を1:1と仮定)
基礎データ(一般廃棄物焼却灰等)
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一般廃棄物焼却・溶融飛灰のCs濃度レベルと発⽣量の空間分布(2011年7月時点)
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一般廃棄物焼却飛灰・溶融⾶灰の放射性セシウム濃度(7月測定値)と空間線量率の関係
フロー・ストックのリスク評価と管理システム開発プロジェクト
0%
5%
10%
15%
20%
全体 ストーカ 流動床 ガス化溶融 灰溶融
(n=463) (n=311) (n=55) (n=60) (n=37)
焼却
処理
量に
対す
る飛
灰発⽣率
0%
20%
40%
60%
80%
100%
全体 ストーカ 流動床 ガス化溶融 灰溶融
(n=660) (n=511) (n=100) (n=11) (n=38)飛
灰へ
のC
s分
配率
率
飛灰へのCs濃縮率1
=飛灰発生率
× 飛灰へのCs分配率
※ 飛灰へのCs分配率は,焼却・溶融飛灰,主灰,溶融スラグのCs濃度と発生量から計算。
⾶灰発⽣率(焼却処理量あたり⾶灰発⽣量)と⾶灰へのCs分配率
• 飛灰へのCs濃縮率は,「焼却処理量に対する飛灰発生量の割合(飛灰発生率)」と「飛灰へのCs分配率」で決まる。
フロー・ストックのリスク評価と管理システム開発プロジェクト
0%
20%
40%
60%
80%
100%
0
50
100
150
200-5
5-1
010-1
515-2
020-2
525-3
030-3
535-4
040-4
545-5
050-5
555-6
060-6
565-7
070-7
575-8
080-8
585-9
090-9
595-
累積
%
頻度
Cs⾶灰濃縮倍率
ストーカ式焼却(n=517)
頻度
累積 %
0%
20%
40%
60%
80%
100%
0
20
40
60
80
100
120
-55-1
010-1
515-2
020-2
525-3
030-3
535-4
040-4
545-5
050-5
555-6
060-6
565-7
070-7
575-8
080-8
585-9
090-9
595-
累積
%
頻度
Cs⾶灰濃縮倍率
流動床式焼却(n=127)
頻度
累積 %
0%
20%
40%
60%
80%
100%
0
2
4
6
8
-55-1
010-1
515-2
020-2
525-3
030-3
535-4
040-4
545-5
050-5
555-6
060-6
565-7
070-7
575-8
080-8
585-9
090-9
595-
累積
%
頻度
Cs⾶灰濃縮倍率
ガス化溶融(n=13)
頻度
累積 %
0%
20%
40%
60%
80%
100%
0
5
10
15
-55-1
010-1
515-2
020-2
525-3
030-3
535-4
040-4
545-5
050-5
555-6
060-6
565-7
070-7
575-8
080-8
585-9
090-9
595-
累積
%
頻度
Cs⾶灰濃縮倍率
灰溶融(n=52)
頻度 累積 %
中央値=23.7
25%ile値=19.675%tile値=30.4
中央値=13.4
25%ile値=12.175%tile値=14.8
中央値=31.3
25%ile値=22.875%tile値=32.4
中央値=33.3
25%ile値=22.875%tile値=44.3
一般廃棄物焼却・溶融飛灰への放射性Cs濃縮率の分布
全体的な傾向としては灰溶融>ガス化溶融>ストーカ>流動床
0.00001%
0.00010%
0.00100%
0.01000%
0.10000%
1.00000%
10.00000%
100.00000%
1 10 100 1000 10000
焼却
ごみ
への
Cs移
行率
(年間
あた
り)
人口密度 (人/km2)
平均空間線量率 0.1μSv/h以上
平均空間線量率 0.1μSv/h未満
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焼却へのCs移行率(年間あたり)
焼却ごみCs濃度(Bq/kg)×焼却処理量(kg/年)
ごみ処理対象区域の平均土壌Cs濃度(Bq/m2)×面積(m2)=
放射性Csの焼却ごみ移⾏率と⼈⼝密度の関係(2011年7月データ)
※ 回帰式(累乗)は平均空間線量率0.1μSv/h以上のデータのみで作成。
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
1.2
1.4
1.6
1.8
2011
-6
2011
-7
2011
-8
2011
-9
201
1-1
0
201
1-1
1
201
1-1
2
2012
-1
2012
-2
2012
-3
2012
-4
2012
-5
2012
-6
2012
-7
2012
-8
2012
-9
201
2-1
0
ごみ
Cs濃
度(2
011
-7=
1とし
た相
対値
)
平均値
中央値
25%ile値/75%ile値
10%ile値/90%ile値
各施設データ
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焼却ごみ放射性Cs濃度(推定)の推移(2011年7月を1とした相対値)
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0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
20
11-6
201
1-7
201
1-8
201
1-9
2011
-10
201
1-11
201
1-12
20
12-1
20
12-2
20
12-3
20
12-4
20
12-5
20
12-6
20
12-7
20
12-8
20
12-9
201
2-10
2012
-11
2012
-12
脱水
汚泥
Cs濃
度(
20
11-
7=1と
した
相対
値) 平均値
中央値
25%ile値/75%ile値
10%ile値/90%ile値
各施設データ
下⽔脱⽔汚泥の放射性Cs濃度の推移(2011年7月を1とした相対値)
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区分 量(万トン) 備考
産業廃棄物 県内発生分 7,635 有価物含む
県外発生分 57.6 福島県外から県内に処理のため搬入されているもの
一般廃棄物* 通常廃棄物 78
災害廃棄物 40 H23年度に処理が終了したもの
副産物等 建設残土 170
他副産物 7 流通しなかった米、牧草等収集した情報から定量できたもの
計 1,117
*平成25年2月時点で市町村から報告があったデータ。
福島県を取り巻く廃棄物等発⽣量として整理できた数量(平成23年度データ:H24調査暫定値)
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0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
燃 汚泥
廃油
廃酸
廃 廃 紙 木 繊維
動植物性残
ゴムくず
金属
ガラス
鉱 がれき
ばいじん
動物
動物
その
再生利用量(千t/年)
平成22年度(3,155千トン)
平成23年度(3,428千トン)
平成22年度と平成23年度の⽐較
再生利用量
種類は、再生利用時点の種類で集計したもの
0
20
40
60
80
100
種類平均
燃え殻
汚泥
廃油
廃酸
廃アルカリ
廃プラスチック類
紙くず
木くず
繊維くず
動植物性残さ
ゴムくず
金属くず
ガラス陶磁器くず
鉱さい
がれき類
ばいじん
その他の産業廃棄物
39
60
10
50
6 8
53 52
78
24
91
0
95
77
91
98
67
24
46
56
10
49
57
54
68
57
29
80
0
94
79
97 98
49
30
再生利用率(%)
平成22年度
平成23年度
再生利用率
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最大値 平均
飛灰(下水道) 1 2,470,000 371,570
飛灰(産廃業者) 6 100,000 22,630
溶融スラグ(下水道) 1 334,000
焼却灰(産廃業者) 3 28,000 10,286
下水汚泥 17 365,000 8,486
浄水汚泥 12 86,299 6,963
工業用水汚泥(製造業内) 4 15,680 5,618
道路等清掃汚泥 7 48,200 18,277
その他無機汚泥 3 14,500 10,500
廃堆肥 5 3,800 923
伐採木草 2 25,000 11,563
破砕後の木くず 1 1,400
バ-ク 1 500 400
鋳物砂 1 510
破砕後の建設資材 1 37 34
土壌 2 60,000 16,600
エアフィルタ- 1 3,270,000
種類 回答数放射能濃度(Bq/kg)
保管されている産業廃棄物・建設副産物等の放射性物質濃度
回答事業所数 有効回答件数* 保管量(t)
58 68 68,534*1:有効回答事業者別・回答品目数
アンケート調査:廃棄物処理業者 2,958社、排出事業者 583社
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物流(千t)
農・林・漁業
建設業 製造業 電気業 水道業サービス業等
中和・化学処
理
堆肥・飼料製
造
混練・固化
アスファルトプラ
ント
焼成・煮・熱固化
脱水・乾燥施設
燃料化破砕・選別施設
その他中間処理
焼却施設
埋立施設
排気 排水 移入 移出
部門 A1-A3 A4 A5-A12 A13 A14-A15 A16-A20 W1 B3 B4 B5 B6 B7 B8 B9 B10 B11 B12 B13 C1 D1 D2 R1 R2 R3 R4 R5 F1 G1
農・林・漁業 A1-A3 0 4 1 0 0 0 0 5 5 0 1
建設業 A4 2 5 3 41 395 1 2 0 1808 0 34 65 0 2356 2356 1 0 2 74 21
製造業 A5-A12 341 38 26 38 2 43 2627 2 264 28 246 84 2 3741 3741 321 20 341 2 487
電気業 A13 326 3 0 18 1 2 6 21 9 248 0 634 634 326 326 225
水道業 A14-A15 2 0 4 0 2 0 1012 0 0 0 3 2 1026 1026 2 2 3
サービス業等 A16-A20 2 3 5 25 3 115 4 60 35 137 147 0 534 534 2 2 500
廃水処理 W1
中和・化学処理 B3 1 18 0 0 0 0 0 0 19 29 48 1 4 12 2 18
堆肥・飼料製造 B4 40 7 47 47 41 41
混練・固化 B5 0 68 3 34 1 0 1 108 52 159 102 1 0 1 0 105
アスファルトプラント B6 401 401 401 401 401
焼成・煮・熱固化 B7 1 9 116 0 4 130 29 6 166 10 1 115 1 0 126
脱水・乾燥施設 B8 0 5 295 0 0 0 133 72 39 544 3103 3647 297 0 0 0 298
燃料化 B9 0 7 0 0 8 0 8 0 1 1 0 2
破砕・選別施設 B10 14 1900 135 40 2 4 4 0 38 25 2165 5 2170 1813 14 117 130 1 2075
その他中間処理 B11 0 2 66 13 81 1 81 18 0 66 0 0 83
焼却施設 B12 21 151 7 36 1 216 350 567 7 109 28 144
埋立施設 B13
小計 55 2407 1464 41 48 43 159 401 166 3647 8 2139 85 567 711 75 12014 380 3196 15589 3300 57 433 145 31 3967 576 736
採取水等(河川・ダム) H1
合計 55 2407 1464 41 48 43 159 401 166 3647 8 2139 85 567 711 12014
建設系資材 R1 2300 1000 3300堆肥・飼料・敷料 R2 57 57工業原料 R3 85 348 0 433燃料 R4 0 105 40 145その他 R5 31 31計 57 2385 1485 40 3967
移入 F1 3 5 25 12 116 1 82 35 139 159 576移出 G1 503 37 9 28 32 15 2 36 29 43 4 736
中間需要
廃棄物処理
利用製品・用途の内
訳
移入・移出の内訳
廃棄物等発生活用
移入・移出の内訳廃棄物処理
保管小計
減量
計建設系資材
堆肥・飼料・敷料
工業原料
燃料 計
中間需要 最終需要 利用製品・用途の内訳
廃棄物等発生活用 廃水処理
その他
平成23年度産業廃棄物等物量投入産出表(H24調査暫定値)
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福島県外発生物
(1.04)
(C1) (A1~A20) (B3~B12)
保管(C1)発生部門で再利
用
0.12 0.13
(0.13)
排ガス(D1) 排水(D2)
0.68 1.44
(0.15) (1.29)
(C1)
保管(C1)(B13)
再生利用単位:千t/年
埋立処分
1.24 ( ) 内は福島県外での処理内数。 2.42(1.08) (0.30)
福島県内発生物
6.97
(2.95)
総量
8.01
中間処理
7.76
平成23年度道路側溝汚泥等のマテリアルフロー
(H24調査暫定値)
研究概要
H25研究計画概要
社会システムにおける放射性物質の物質フロー・ストックモデル作成に着手する。
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サブテーマ1:放射性物質汚染廃棄物等の存在量推計
・一般廃棄物焼却灰等の調査分析データに基づいて環境中から社会システムへの放射性物質の移行挙動および処理プロセス等における分配挙動等のパラメータ化を進める。サブテーマ2:放射性物質汚染廃棄物等のマテリアルフロー・ストック把握
・福島県外の放射性物質に汚染された恐れのある廃棄物・副産物のフローデータの収集・集計を進める。また、産業廃棄物等の放射性物資汚染レベルの実態把握を進め、放射性物質のフローの推計に着手する。サブテーマ3:社会システムにおける放射性物質の物質フロー・ストックモデル作成
・放射性物質の物質フロー・ストックモデルを構築して、地域ごとの流入・移動・蓄積量の計算と可視化を行う。