Post on 20-Aug-2020
1
諏訪東京理科大学 工学部
電気電子工学科 教授 平田陽一
スマートグリッドへの適用を高めた太陽電池故障診断機能の開発(Diagnosis the fault of photovoltaic
module applicable to smart grid)
2
研究背景太陽光発電システムは世界規模で228GW
(2015年末)に達しつつある。原発200基以上
に相当する。故障事例も報告されている。システム設置には、多額の初期投資を要するため、故障の早期発見が重要となる。
また、今後寿命20年を経過したシステムが増えるため、運転を妨げることなく、定期的に故障診断を自動で行うことを考えた。
発電源として出力を安定して供給するためことで、グリッドとの親和性を高めることができる。
3
経過年数に対するシステム性能の変化
0 10 20 300.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
1.2
経過年数[年]
出力[W]
-◆ 初期性能-■ 20年寿命1- 20年寿命2▲
- 初期故障×│ │━
━
4
一般的な太陽光発電システムの構成
-
~
+
-
~
L
N
5
太陽電池の等価回路分析太陽電池の故障はモジュールのI-V
特性に現れる。電気的の故障は、
ダイオード因子n
飽和電流A
直列抵抗 Rs,
分路抵抗 Rsh
に現れると考えた。
RS
R
Loa
d R
L
ILVL
Iph I D Ish
IL
sh
SLLSLLphL
R
RIVRIV
BkT
qAII
1exp
6
新技術の基となる研究成果・技術
薄暮の状態において、モジュールストリングを切り話す。
ここでは6直列太陽
電池モジュールストリングのI-V特性を取得。
劣化モジュールを使用した特性を取得。
Series troubled
m odule
Series troubled
m odule
D C pow er
sourceV
A
Rst
7
モジュールストリングの測定概略
実測値から電気特性の変化が把握でき、故障を診断することができる。
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180
-10
-5
0
5
初期値 +3Ω
電圧 V[V]
電流
I[A
]
Voc
電流依存領域
前回提案で必要
電源容量
となる電源容量
電圧依存領域
今回提案の
C(入力コンデンサ) 可変電源
8
新技術の基となる研究成果・技術
測定を薄暮の状態に行うことで、電源容量を抑えることができる。
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180
-10
-5
0
5
+3Ω
電圧 V[V]
電流
II[A
]
Voc
前回提案で必要
電源容量
となる電源容量
故障の進行
正常時
故障の可能性
電源容量
電流依存領域 電圧依存領域
今回提案の
9
診断機能を有するパワーコンディショナの仕組み
DC-ACインバータ
MPPTV
A
~
負荷
CPU
診断結果出力
メモリ
26
24
22
28 30
3534
・・・
・・・
・・・
ab ab a
b・・・c c c
10
可変直流電源
C
太陽電池
モジュール
ストリング
パワーコンディショナ
入力コンデンサ
a bo
診断機能a診断機能b
発電用
MPPT
ILSW 1
切換SW3
c
(充電用)
中立点 診断取得機能回路
(放電用)
診断機能を有するパワーコンディショナの仕組み
11
•診断機能をパワーコンディショナに含めることで、定期的にI-V特性を取得し、電気的状態の診断を自動的に行うことができる。
•太陽電池モジュールの故障診断は、劣化モジュールを用いて行った。
•モジュールの種類は様々であり、診断による故障の現れ方は、実際に運用されている診断システムにおいて、データの蓄積が重要となる。
12
劣化モジュールストリングの一例
図 6直列ストリングI-Vカーブ日射強度:1.0kW/㎡ 、 セル温度:61.6℃、2016.7.19
13
パラメータフィッティング
• パラメータフィッティングという手法で回路の4定数を求めた。
• 直列抵抗には劣化が見られなかったが、ダイオード因子、飽和電流、シャント抵抗に劣化が確認された。
• ストリングにおけるモジュールの劣化判定に有効な手段となると思われる。
14
4定数計算手法
1)ある4定数のI-VカーブをNewton-Raphson法により計算する。セル温度Tは測定値を用いる。与えられた電圧に対する電流を計算する。
2)計算値と測定値のばらつきを計算する。I-Vカーブのばらつきの二乗を合計する。
ε=Σ(ILC-ILM)2
ILCはある電圧に対する計算値、 ILMは測定値。
3)4定数を決定するために1)、2)を繰り返し、εが最小になるようにする。
15
回路定数による診断
• 表5-4 6直列ストリングの4定数
Pmax n A・ 10-5 Rs Rsh
[W] [A] [Ω] [Ω]
518 509 3.8 5.1 1465
506 586 17.9 4.5 1406
498 594 19.4 4.6 1079
-12 77 14.1 -0.7 -59
-20 86 15.6 -0.6 -386劣化2-正常
ストリング
正常のみ
劣化1を含む
劣化2を含む
劣化1-正常
16
従来技術とその問題点一般的には、発電量の実測値と、日射量データを基にしたシミュレーション値と比較することで、検証する方法がある。
しかし、10%以下などの精度の高い診断は難しい。モジュールのクラスター回路の故障は、他の健全な太陽電池が発電に寄与できなくなる。
また、定期的に保守・診断を行う場合もあるが、それも人的労力・費用を要することになる。
17
1モジュールの断線によるアレイI-V特性の変化
0 10 0 2 0 0 3 0 0 4 0 00
10
2 0
3 0
4 0
0 10 0 2 0 0 3 0 0 4 0 00
2
4
6
8
10
12
V o l ta g e V [ V ]
Cu
rre
nt
I [
V]
ab
c
V o l ta g e V [ V ]
Po
we
r P
[V
]
ab
c
18
新技術の特徴・従来技術との比較
• 従来技術の問題点であった、故障診断の基礎となるI-V特性を自動的に取得できる。
• 発電への影響の少ない薄暮に診断を行うため、発電積算量への影響は少ない。そのため、電源として系統への信頼度を高めることができる。
• 人的な労力を用いることなく、特性を定期的に自動取得できるため、診断を早期に行える。
19
想定される用途
• 現状、社会へより信頼を高めて太陽光発電システムを普及させるために、故障を自動的に診断できる本機能は大きいと考えられる。
• 上記以外に、ブランド力の弱い太陽電池モジュールそのものに対する信頼性を高めることができる。データを蓄積して公開すれば、技術力を証明できる。
20
想定される用途
• 今後保障期間を過ぎた太陽電池が中古市場に現れることも想定され、そのようなシステムには、このような機能が大きな役割を果たす。
• また、現在多く見られる故障したパワーコンディショナの2台目としては、このような診断機能の自動化した機能がついているものが適していると思われる。
21
想定される用途
• 利用者・対象
パワーコンディショナ製造メーカー
外国メーカーの太陽電池を用いたシステム販売
・ 市場規模
現在の1GW容量価格は¥2000億~¥4000億程度。その1%が、診断により、出力が向上すれば、¥20~40億程度の価値をもつ。¥2000/kWとなり、低労力、低コストでの診断に期待がかかる。
22
実用化に向けた課題• 晴天時におけるデータ取得を行えば、より故障の発見が確かになる。そのような測定に対して、より容易に測定できる技術が必要である。
• 実用化に向けて、フィールドデータを取得して診断技術を確立していく必要もあり。
23
企業への期待• さまざまな太陽電池と組み合わせる可能性があるパワーコンディショナの企業には、このようなシステム全体の信頼性を高める技術が、パワコンのブランド力を向上させる。
• 中古の太陽電池を使用したシステムの場合、本技術の導入により、太陽電池に対する信用に責任を持つことができる。また、パワーコンディショナのリプレースなどについては、このような付加価値の高い機能が有効である。
24
本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :太陽電池アレイの診断装置、パワーコンディショナ、太陽電池アレイの診断方法、およびプログラム
• 出願番号 :特願2011-204872
• 特許 :5888724
• 出願人 :東京理科大学
• 発明者 :平田 陽一
25
連携、事業の経歴• 2005年度 (財)長野県テクノ財団、地域産学官共同研究活性化事業
「光合成促進機能を持つ農業用ネットの試作と評価」
• 2005年8月(より1年) ㈱セラミッションと技術指導契約
• 2010年7月(より1年) ㈱イースタンと技術指導契約
• 2010年 総務省、「緑の分権改革」事業の委託を受けた茅野市より、「茅野市クリーンエネルギー(太陽光)調査」の業務委託を受け、業務報告書を作成
• 2011年~2013年 科学研究費「基盤研究C」
• 2017年~ (より1年) NEDO ベンチャー企業等による新エネルギー技術革新支援事業
26
お問い合わせ先
諏訪東京理科大学 産学連携センター
コーディネーター 金子 修一郎
TEL :0266-73-1201
FAX :0266-73ー1230
e-mail kaneko_shuichiro@admin.tus.ac.jp