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Ⅰ 介護(助)技術とは何か?1.介護に必要な力と視点1)生理学、解剖学、運動学に基づいた知識・技術 ⇒“人間らしさ”の根拠

2)人間・個人に対する畏怖の念 ⇒ 問われているのは人間観・死生観  ※恐れおののくこと

3)自立(律)支援 ⇒ 個別ケア ⇒ “その人らしさ”の根拠

予防的介護(介護予防、重度化予防) ⇒ 最後まで   

4)創造力 ⇒ 思考力、応用力、工夫する力、臨機応変に対応する力、

      本質を見極めようとする力

想像力 ⇒ 共感力、コミュニケーション力

2.介護の4大目標1)閉じこもりにしない、させない

⇒ 社会的孤立を防ぐ、孤独地獄に追い込まない

  ポイントは、相互で共感的な人間関係

2)寝たきりにしない、させない

⇒ 寝たきり介護をしない、“座って生活する”を援助

  同時に、座らせきりにもしない

  ポイントは、心も脳も身体も、イキイキ動く生活

3)受け身にしない、させない

⇒ “してもらうばっかり”になると自尊心・意欲は低下する

  “してあげるばっかり”になると、介護負担もストレスも増加する

  “生活行為”“生活動作”“自らの人生”の主体となるよう援助する

  ポイントは、介護は共同事業

4)イキイキさを支援する

⇒ 生命感の回復。イキイキさは、体・表情・動き・言葉に表れる

※オリジナル資料からの抜粋

作成日:2015.4.3

  介護・移乗マニュアル

宮城登米広域介護サービス

1

資料提供:社内研修委員

3.介護(助)の基本方針

1)積極的に自立支援をする

2)廃用症候群・誤用症候群による重度化を予防する 廃用=無知・無関心

3)重度化による介護困難と介護負担増を予防する 誤用=麻痺をかばうことで

4)全介助の期間をできる限り短縮する    健側を痛める

5)最期の最後まで人間らしくあるよう支援する

4.介護(助)の基本方針

・反復体験(成功体験を増やす)

・代理体験(成功体験を増やす)

・言語による説明(客観的な評価)

5.介護予防の視点

1)介護を要する状態を引き起こさせない

2)重度化予防 ⇒ 介護を要する状態の進展を防ぎ、その軽減を図る

3)予防的介護の実践 ⇒ 廃用症候群、誤用症候群によって、心身に非人間的状態を起こ させない介護実践

6.廃用症候群の諸症状

1)関節拘縮 1)心肺機能低下 1)知的活動低下

 ➔一回心拍出量減少

2)筋廃用萎縮(筋肉が弱る)  ➔頻脈 2)うつ傾向

 ➔筋力低下  ➔肺活量減少

 ➔筋持久力低下  ➔最大換気量減少 3)自律神経不安定

3)廃用性骨萎縮(骨が弱る) 2)起立性低血圧(立ちくらみ) 4)姿勢・運動調整機能低下

 ➔高カルシウム尿

 ➔尿路結石 3)易疲労症

4)皮膚萎縮 4)消化器機能低下

 ➔食欲不振

5)褥瘡  ➔便秘

6)静脈血栓 5)利尿・ナトリウム利尿

 ➔肺塞栓症  ➔血液量減少(脱水)

2

できること

できないこと 適切に援助

“できる”条件づくり

“できる”工夫

安全、安心であること

“する”為の目的、理由

Ⅰ 局所性廃用症候  (顕在性のもの)

Ⅱ 精神・神経性廃用症候 Ⅲ 全身性廃用症候

前提条件 = 

7.適切な介助

① 生理的(自然)な動きを援助する(介助法=自立法)

② 個人の“今まで”と“今”をよく知っている

 (アセスメント/適切ケア=「活かす」+「フォローする」)

③ 生理的な動きに適い、個人を最大限に活かす条件を整える(設備・用具)

④ 本人が主役・主体(受身にしない)、私たちは媒介・媒体

⑤ リスク、疲労を考慮しながらも、今ある能力は最大限に引き出し活かす

⑥ 介助は力の量ではなく「質」が大事(方向、バランス、タイミング)

⑦ 無理はしない、「まぁ、いいか」は厳禁

⑧ 三方良し(介護を受ける側、する側、周りで観ている人も楽で安心)

⑨ 継続性(生活動作・習慣・環境)

⑩ 連続性(ADLすべて) リラックスしていないと

便意はもよおさない

8.適切な介助

1)基本姿勢人の生活に必要な基本動作は、この基本姿勢にすべて影響される。

2)守るも攻めるもこの一線臥位と座位との線が重要。 病気やケガで臥床安静が必要な時期が

あっても、できる限り早く積極的に起きて 「座って」(攻める)生活をしてもらうこと

加齢とともに体力が低下し、 立ったり歩いたりすることが困難

になったとしても、最後の最期まで 「座って」生活してもらうこと。

(受身)

(主体)

座っている ➔ 立てるようになる

寝ている  ➔ 座れるようになる

3

立っている

◎AさんとBさん◎昨日のAさんと 3ヶ月前のAさん      etcetc

一緒に動く

無抵抗

この一線

重心の位置

心身一如

 攻める

 守る

寝ている

座っている

適切な介助法 = 

立て膝

普遍的 個別的+

9.主体的な座位姿勢1)“座る”姿勢は生活の基本

4

骨盤が(=も!!)起きている

背面開放端座位

坐骨結節で状態の体重が支持され、床に足がついた状態

= (心も脳も)

2)“座る”という姿勢の意味と効果 3) イスや車イスの選択と調整① 食事 ① 高さ

② 排泄 自立しやすい ② 奥行き

③ 入浴 ③ 座面

④ 筋力低下予防 ④ 点ではなく“面”で支える

⑤ 心肺機能の低下予防

⑥ 褥瘡の予防

⑦ バランス能力の向上

⑧ 血圧調整能力の向上 「人がしない動きは介助じゃない」

⑨ 関節の変形・拘縮の予防 「自分はどう動くか??」

⑩ 骨粗しょう症の予防

⑪ 心理的・精神活動の低下予防

⑫ 表情がでる

⑬ 体力がつく

食事

排泄

入浴

運動(働く)

楽しみ

10.アセスメントの視点予防とケア(介助)はセット。見て、聞いて、触れて、見極める

1)臥位での状態を知る① 姿・形(リラックスした姿勢の状態)

② 関節可動域の確認(体幹・股関節・膝関節・足関節・肩関節・手関節)③ 苦痛の有無④ 尻上げの可否

2)座位での状態を知る① 端座位(背もたれなし)での基本姿勢② 動きのある座位③ 苦痛の有無④ 握力 ☆まず 寝てみる

☆手・足がまっすぐ伸びるか、どこまで伸びるか     曲がるか

☆臥位の状態で膝を90°曲げた時にお尻が浮くか☆90°曲がらない人の座位を考える☆握手して、その強さを確認☆恐くない、使える条件を設定

5

Ⅱ 実践としての介護(助)技術

1.「立つ⇔座る」・・・動作と介助のポイント1)生理的な(自然な)動きを援助する

①言葉で誘導②手を添えて誘導(方向、バランス)③モノを活用して誘導④一緒に動いて誘導(最小限で適切な力を補う)

2)介助者の体の使い方を工夫する3)モノ(条件)を見直す

2.「座り直す」・・・動作と介助のポイント~生理的な(自然な)動きを援助する

1)基本 / 臀部を支え / 体重移動とスピードコントロール2)応用 / ①腰骨に手を添えて

②膝に手を添えて③マヒ側の膝を膝でサポート④マヒ側の膝を腹でサポート

3)モノ(条件)を見直す。モノ(用具)を活用する

3.「移乗する」・・・動作と介助のポイント~生理的な(自然な)動きを援助する

1)基本 / 臀部を下支え/体重移動、バランス、スピードコントロール2)場面別 / ①テーブルの前で/イス⇔車イス

②トイレで/便器⇔車イス③居室で/ベッド⇔車イス ※ポイントは、利き手(健側)優先の一方向への移乗

3)モノ(条件)を見直す。モノ(用具)を活用する4)応用 /  ①膝経由で

②前方に片膝立ちで、マヒ側の膝を腹でサポート③前方に位置して、マヒ側の膝を腹でサポート

4.「臥位から座位」・・・移乗までの一連の動作を援助する

1)準備 5)端座位2)寝返る 6)座り直す(ななめ浅座り、横移動)3)肘立ち位 7)移乗する4)起き上がる

6

5.上手く行かない時の見直しのポイント1)介助方法は適切か?/生理的な動きを援助しているか?

①体重移動を確実に誘導しているか?②手・足・頭(目線)の位置は適切か?③スピード、タイミングは適切か?

2)条件は適切か?①“モノ”の選択、使用法、メンテナンスは適切か?②今ある最大限の力を引き出し活かせる条件になっているか?

3)本人が主役・主体になっているか?①本人が動く気になっているか?②恐がっていたり、嫌がっていたり、不安がっていたり、痛がったりして いないか?③“本人が動く”のを待っているか?④本人が自分自身で動いているように感じる介助法・量・スピードになっ ているか?

6.介護こそコミュニケーション1)コミュニケーションの語源はラテン語のコムニカーレ = 共有する

2)2つのコミュニケーション☆バーバルコミュニケーション(言語的・知的な)☆ノン・バーバルコミュニケーション(非言語的・情緒的な)

⇒嗅覚・触覚は、視覚・聴覚に比べ、より原始的なコミュニケーション手段

3)コミュニケーション力=人の心に触れる力①発達心理学者 マシュレイモンターギュ 人間は抱きしめられることによって、自分がこの世界から望まれた存在であることを 確認できる。そして、人間やこの世界に対する根本的な信頼感といったものは、幼児期 にふんだんに与えられるスキンシップによって育てられる。

②生理的には「皮膚は露出した脳」 皮膚は発生学的には、脳や中枢神経系と同じく、外胚葉から形成され、その広い面積で 外界からの刺激を知覚する。

③心に触れるつもりで身体(肌)に触れる

④コミュニケーションの基盤は、身体接触 ⇒ 「手は、口よりものを言う」

7.やってはいけない!!1)ご利用者に対して ①持ち上げる ②吊り上げる ③宙を飛ばす 介助法

2)介助者の動き /  ①前屈みの姿勢を長く続ける②前屈みの姿勢で作業する③反り腰でモノを持つ④急な動作の変化

7

感じとる伝える

8.介護(助)法のヒント1)力のモーメント

全介助の利用者の仰向けから横向きへの寝返りでは、利用者の膝をできる限り高く立てる

事で、膝に軽く力をかけるだけで利用者の身体は寝返り(回転)し始める。これは、

「回転の中心から遠いところに力をかけた方が、少ない力で回転させることができる」

という原理による。

2)重心重心とは、物体の重みの中心という意味で、人が立っているときには骨盤内にある。重心

を通り地面に垂直に下した直線を「重心線」、床面に接している先端部分を結んだ範囲を

「支持基底面」といい、重心が支持基底面の内側にあれば姿勢は安定する。

3)摩擦力摩擦力とは、人の身体がベッドなどに接触しながら動く場合、その接触面に生じる運動を

妨げようとする力。接触面積が大きいと摩擦力も大きく、逆に接触面積が小さいと摩擦力

も小さくなる。

4)慣性力慣性力とは、「重い物体の動きを変化させるには大きな力が必要であり、その物体には

大きな力が加わる」という原理。介護にあっては、急に動かそうとしないこと、1つ1つ

の動作を独立させて行い、不要な力が加わらないように気をつけることが大事。

5)リバースアクション身体の中枢部が固定されている事を前提に、末梢部が中枢から遠ざかる事を伸展、近づく

ことを屈曲と呼ぶが、逆に、末梢部が固定されているときに、同じ筋肉を働かせて出現

する動きの事をリバースアクションという。たとえば、上腕二頭筋が動くと、肘が曲がり

手が身体の中心に近づいてくるが、起き上がり動作の際にベッドの柵を手でつかんで、

手の方を固定すると、逆に体の中心が手に近づいてくることになる。

6)テコの原理の応用「支点と作用点の距離は短く」、逆に「支点と力点は距離は長く」することで、少ない力

で重たいものを動かすことが出来るという原理。

・支点とは、支えとなる部分(足・腕・膝・肘等)

・力点とは、力を加える部分(介助者が手を添える部分、及びその力)

・作用点とは、加えた力がはたらく部分(人にあっては、重心)。立ち上がり、

 座り直し、移乗の動作はすべて重心移動と考えるならば、より重心に近い位置に

 支点をつくることでより少ない力で移動(介助)できる事になる

8

① × 差し替えは禁止です!

1 本人が倒れたり、膝折れして、お尻が落下

2 尻もちで骨折される方もいらっしゃいます。

3 介助者はモノを動かすこと、人を支える

  ことを同時に行うので、倒れそうになった

  とき、支えられません

4 利用者様の体調は変化します。昨日大丈夫だったからと言って

  今日も大丈夫とは限りません

② × 前抱えは禁止です!

1 立ち上がり生理的曲線(私たちが一人で

  移る頭の移動曲線・体の動き)でないから

2 バランスを崩すと共倒れします

3 介助者の腰に負担がかかります

4 座る際、前かがみの姿勢を取らないので、

  お尻が座面の奥に入らず、滑り落ちる危険があります

5 下肢にまったく筋力がなく、ほんのわずかな時間も立位が取れない人、

  体重を足に掛けようとすると膝折れしてしてまう人の場合→⑦全介助 参照

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さぁやってみよう!!

③ 1人で イス⇒イス

1 私たちがとっても疲れていて、力に頼らない自然な動き

2 足を引いた状態から、移る椅子に近いほうの足を半歩前に出します

3 両足かかとを捻れる範囲で、移動した椅子に座り

  易くなるように捻ります

4 手は移る椅子の座面に付きます

5 十分 前かがみになって、浮いたお尻を振って

  移ります

④ 車いす→いす

1 まひがある場合は健側(利き手側)へ移乗します

2 私たちが一人で移る際に無意識に引く位置まで足を引き、移るいす側の

  の足を半歩前に出します

3 手すりを持つか台に健側(利き手側)の手を突き、私たちが普段無意識

  で行うものと同じ前かがみ姿勢をとって移乗します

4 介助者は前方に体重移動し軽くなって浮いているお尻を座る椅子へ必要

  な範囲で介助します

5 テーブルなら、健側(利き手側)の肘より先をテーブルについて、私たちが

  普段無意識で行うものと同じ前かがみ姿勢をとって移乗します

6 カメラの三脚の足を大きく広げたときと同じで、基底面積  (両足と手、3点の三角形)が大きくなるほうが体は安定します

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⑤ ベット→Pトイレ

1 まんが③のように移動バー(台、またはいす)

  を持ち、前傾姿勢を取ります

2 介助者は左手の甲を上にして、親指をお尻に

  充てます

3 利用者様に左手で体をひきつけ、前傾姿勢を

  を取ってもらい頭を前に出します。

4 体とPトイレの角度が小さくなるように、

  お尻をPトイレ側に向けられる

  範囲で向くように、座り直します

5 まんが②のような位置にPトイレ(または車椅子がある場合)

  両足の踵を(Pトイレに座る際に座り易いように)

  斜めに傾けます。

6 介助者はお尻が浮いたら、左手を掌が上に向

  くように180度返して、左臀部の中央の骨に、

  掌が乗るようにして支えます。

7 お腹側から利用者様の腰骨を持っている介助

  者の右手を必要に応じて右殿部を支える位置

  に持ち替えます。

8 頭の移動曲線が私たちが座る際に無意識に行う

  ものと同じ移動曲線になるように、Pトイレへ

  移乗します。

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⑥ ベット→車いす

1 ⑤と違うところは、お部屋の大きさや家具の配置などで、車椅子が寄せら  れない場合を除いて、利用者様のお尻と車いすの角度が少なくなるように  車椅子を設置します

⑦ 全介助 下肢にまったく筋力がなく、ほんのわずかな時間も立位が取れない人、体重 を足に掛けようとすると膝折れしてしてまう人の場合は、ハイローベッド、 アームフリーの車いす、トランフファーボードなどの道具を使用して、座位 の移乗を全介助する方法があります

1 介助者は利用者様の前で片膝をつき、肩で体重を受けます

2 トランファーボードをお尻の下に差し込んだら、介助者は車いす側の肩で  利用者様の体重を受け、ボードの上を滑らせて、車いすへ移乗

3 腰をゆっくりと車いすの背のほうへ押し込み、トランスボードを外します

4 2人介助の場合は、一人が利用者様の膝を両足で挟んで小さくなって  もらい膝折れしないようにしておいて、別の介助者が⑤の要領で移乗します

⑧ 座り直し1 ④と同じ

2 介助者の立ち位置は⑤のまんが③

⑨ 二人介助 車いす座り直しの場合1 補助介助者が片膝立ちになり、左手で利用者様の右ひざを押さえ、利用者  様の両膝を介助者のお腹に充てておきます。

2 もう一人の介助者が、④と同じ手順で座り直し・車いす→いすの介助を  行います。お腹に充ててある利用者様の膝が支点になるので、  僅かな力で行えます。

3 一人で行う際、利用者様の片膝に(釘を打ち付けるように)介助者の膝を  充てて、お尻が持ち上がった際、膝で押し込む方法もとっても楽です!

  充てて、お尻が持ち上がった際、膝で押し込む方法もとっても楽です!

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講演者の下山名月さんは体重40kgですが、80kgの利用者様を楽々移乗されます。介護は力の量ではなく、力の質・方向です。移動する際に、私たちが無意識に移動する体の動きをよく理解して、それぞれの利用者様の残存機能に併せて、介護用品も上手に活用しましょう!