塗装に係わる...

Post on 14-Dec-2020

0 views 0 download

Transcript of 塗装に係わる...

東京都 低VOC塗装セミナー (鋼構造物編)~ 環境にやさしい低VOC塗装 ~

塗装に係わる

鋼構造物の長寿命化と 低VOC化

平成23年7月20日

社団法人 日本塗料工業会

世界の状況

日本の状況

塗料産業世界的金融危機・経済不況後の対応

地球温暖化防止

新公益法人法 日本塗料工業会の事業

調査統計

技術

製品安全

安全環境

国際

色彩

標準化

普及広報

グローバル化

製品事故(消安法)

化学物質管理

・ホルムアルデヒド

・VOC

・船底防汚剤

・GHS

化管法、化審法

REACH有害廃棄物処理・バーゼル条約

JISの整理統合

廃棄物処理労働安全国際標準・ISO~JIS

日本塗料工業会の事業と業界を取巻く状況

塗料とは?

塗料の成分にはそれぞれ役割分担がある

塗料

塗膜として残るもの

塗膜として残らないもの

役割 具体例

・・・造膜性、耐久性など→

・・・着色、防錆、隠蔽など→

・・タレ止め、仕上りなど

・・樹脂溶解、塗装、乾燥仕上がり性など

樹脂

顔料

添加剤

溶剤

エポキシ/ふっ素ポリウレタン

有機/無機/光輝材料

→ 特殊高分子化合物

→ 有機溶剤(強溶剤

/弱溶剤)/水

塗膜・塗装系の構成と役割

鋼板

下塗

中塗

上塗

光・UV 水・酸素・塩分

下塗塗料・防さび力が高い

・鋼材に対する付着性が良い

上塗塗料・耐候性がよい

・耐水性がよい

・仕上り性がよい

中塗塗料下塗と上塗塗料との付着性が良い

防錆性

耐候性

付着性

下塗、中塗、上塗塗料には役割分担がある

塗料、塗膜 各段階での要求性能

塗料製造

貯蔵

塗装、乾燥

塗膜形成

塗膜劣化

・・・ 施工性、塗装作業性、乾燥性

・・・ 初期塗膜物性、仕上り性、発色性など

塗料は半製品。 各段階で、種々の性能設計が必要。

・・・ 塗料性質安定性(均一性、色、性能)

・・・ 耐食性、耐光性、耐水性、耐湿性耐熱性、耐酸・耐アルカリ性など

塗料、塗膜の役割

素材保護

美観、色その他機能

環境

被塗物の長寿命化

塗料の低VOC化

(防食)

塗装により鋼構造物の長寿命化を図りながら低VOC化等の環境対応を進めていくことが重要

( VOC:揮発性有機化合物。大気中に排出され又は飛散した時に気体である有機化合物〔原則〕 )

1.塗装に係わる鋼構造物の長寿命化

(1) 橋梁高齢化の現状と塗り替えの重要性

(2) 事例 ① 木曽大橋腐食による破断事故

② 本州四国連絡橋の維持管理

③ 屋外危険物貯蔵タンク内面コーティングの保安管理

(3) 重防食塗装系の維持管理 留意事項

(4) ライフサイクルコスト(LCC)の考え方

国土交通省資料

1ー(1)全国の橋梁数と経過年数分布

東京都の橋梁数と経過年数分布

東京都建設局東京都橋梁長寿命化検討委員会 答申

橋梁建設数

橋梁累積数

経過年数

橋梁長寿命化に向けた東京都の取組み

内容の詳細はインターネットで入手可能

1)「橋梁の戦略的予防保全管理に向けて」 (平成20年)

対症療法型管理(点検後その都度必要な対策を行う)↓

予防保全型管理(劣化を事前予測し、適当な対策を効率的に行い、耐久性等を確保)

2)「橋梁の管理に関する中期計画」 (平成21年)

予防保全型管理による今後30年間の計画を策定橋梁の長寿命化や耐震性等を含有した総合計画

国土交通省 日本橋梁・鋼構造物塗装技術協会 技術発表会 資料

1ー(2) ① 木曽川大橋損傷事故 の概要

損傷発見:2007年

斜材に添接板をあてて補強コンクリートと縁を切る形で補修

斜材に添接板をあてて補強コンクリートと縁を切る形で補修

木曽川大橋損傷事故の原因

1)鋼斜材とコンクリートとの間に雨水が浸透し上下面の接点が湿潤状態になって、腐食が進行しやすい構造。(工期は早く、安価)

2) 錆の上から塗替え塗装。

3) 近接目視でなく、遠望目視で点検したため追い越し車線側見落とし。(交通規制難)

Structure Painting Vol.36 No.1 鋼橋の長寿命化における塗替え塗装の重要性、山田

木曽川大橋損傷事故の課題

1)塗替え塗装の性能アップに有効な現場ブラスト機器、工法の開発

2)塗替えしにくい部位のケレン技術の検討

3)既設の道路橋の耐久性向上は将来への投資。 (橋架け替えに比べ大幅コスト安)国の積極的に関与要。

1ー(2) ② 本州四国連絡橋の維持管理

1)定期点検・巡回点検・・・ 管理路を利用

(目視点検)・基本点検・・・ 橋体全体の各部材にできるだけ接近

し、目視、触指、打音、非破壊検査。・精密点検・・・ 計器による高度な測定による評価

2)不定期点検・異常時点検・・・地震、強風、降雨などで災害発生の

可能性、あるいは災害が発生した時・臨時点検 ・・・・定期点検で発見された変化状態の

追跡点検。必要に応じて行う点検。本州四国連絡橋公団 資料

本州四国連絡橋 海峡橋梁部の精密点検

劣化特性曲線の例

↑膜厚

●●

●×

ジンクリッチペイント

エポキシ樹脂塗料下塗り

経過年数→

上塗り+中塗り

定期的な膜厚測定値から、下塗りが損耗を開始する以前に、中塗り、上塗りの塗替えを完了する管理を行っている。

本州四国連絡橋の吊橋ハンガーロープの精密点検

測定から得られた腐食率から寿命を予測し、補修への評価、判定

ロープ断面減少と強度との関係把握

(全磁束法)一部開放調査との対比

精密点検状況

1-2)③ 屋外危険物貯蔵タンク内面コーティング保安管理

タンク(1万キロリットル以上)保安検査周期の調査(日本塗料工業会協力)

総務省消防庁検査調査検討会報告書

結論:現状の保安検査間隔

8年は妥当。但し所定条件を満たす場合10~15年まで延長可

連続板厚測定装置(30mm間隔)測定効率化に威力を発揮

1ー(3)重防食塗装系の維持管理時の留意点

1) 塗膜劣化は構造部位毎に異なる。けた端部、部材角部、現場溶接部、高力ボルト連結部、などで劣化に進行が早い傾向あり。

2) 遠望による外面のみの目視評価は不十分。橋梁下面等からの近接による点検が重要。

3) 角部に2R以上の面取りがない場合には、塗替え時に素地を露出させ曲面仕上げをすることが望ましい。

鋼道路橋塗装・防食便覧資料集

1ー(4) ライフサイクルコスト(LCC)の考え方

耐久性とLCC(ライフサイクルコスト)比較

(塗膜のチョーキング消耗速度による耐久性の試算

:「重防食塗料ガイドブック2007」日本塗料工業会)

1) 重防食塗装系は一般塗装系に比べ、塗替え回数が少なく

てすむので、LCCは低くなる傾向がある。

2)同量のVOCを含有する塗料を使用する場合でも、塗替え回数が少ないほどVOC排出量が削減され、低VOC化が達成できる。

(初期+維持管理+更新コスト)

寿命年数

塗料、塗膜の役割

素材保護

美観、色その他機能

環境

被塗物の長寿命化

塗料の低VOC化

( VOC:揮発性有機化合物。大気中に排出され又は飛散した時に気体である有機化合物〔原則〕 )

塗膜の形成とVOCの揮発

塗料の乾燥・硬化は、先ず溶剤の大気への飛散・揮発から始まり、樹脂の硬化反応が進行し塗膜となる。

塗料(液体) 塗膜(固体)樹 脂:顔料:溶剤:

塗装

揮発

VOC

2.鋼構造物塗装の低VOC化

(1) 全産業におけるVOC排出抑制への取組み

(2) 塗料からのVOC排出抑制への取組み

(3) 低VOC塗料の実績と「 低VOC+工程短縮」塗装システム紹介

(4) 超低VOC塗装系(水性)の実用化検討

2ー(1) VOC削減の対策と枠組み

【自主的取組】【法による直接規制】

【ベストミックス】

環境省資料

平成22年度に排出量30%削減(平成12年度比)

6施設類型で基準値以上の大規模施設

いかなる施設も参加できる

環境省 中央環境審議会揮発性有機化合物排出抑制専門委員会資料

産業種ごとのVOC排出量推移

赤線部:主な塗料ユーザー

発生源品目ごとのVOC排出量推移

(塗装での排出)

☆☆

☆☆ ☆ ☆

塗料業界の販売出荷量

需要業種毎の塗料品目

VOC組成・希釈率

塗装・乾燥時の大気へのVOC排出率

需要業種毎のVOC排出量

*塗料出荷量*需要業種毎の  塗料品目と   VOC組成

データ

2ー(2)塗料からのVOC排出量(屋外)推計

(参考)工場塗装のVOC低減方法

構造物塗装の場合

排出率は100%

溶剤使用量(A)

溶剤処理

洗浄溶剤削減、塗着効率向上

(B)排出係数

VOC大気放出量の計算方法

VOC大気放出量=(A)×(B)

日本塗料工業会 『平成21年度VOC排出実態推計まとめ』

塗料からのVOC排出量(塗装時)推移

約45%減

建築資材

構造物

船舶

自動車 ・新

自補修

電気機械 機械

金属製品

木工製品

路面表示

他家庭用

建物

各需要分野の塗料出荷量 (平成15~21年度)

塗料出荷数量(トン)

建物

建築資材

構造物 船舶

自動車・新

自補修

電気機械

機械

電気機械

木工製品

家庭用

路面表示

各塗料分野の低VOC塗料比率 (平成15~21年度)

低VOC塗料比率%

塗料製造工場からのVOC排出量推計

VOC大気放出量(

トン)

平成12~21年度

約38%減

1)PRTR:(環境負荷物質の移動、排出量を事業者が行政機関へ届け出るしくみ)対象物質のうち

トルエン、キシレンエチルベンゼン

2)上記以外の塗料溶剤5品目:

ブチルアルコール、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、

メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン

・1)+2)で塗料配合溶剤中52%を占めるため、8品目の大気放出量から換算し、VOC排出量を計算。

・生産量比率から算出した排出量の補足率は83%

弱溶剤と強溶剤の光化学反応性比較

VOC排出量は同じでも、塗料中の溶剤を弱溶剤へ替えることはオゾン生成量を減らすうえで有効な場合が多い。 (実質な意味でのVOC削減につながる)

MIR値を比較 (単位VOC当りのオゾン生成量を示す光化学反応性を表す指標のひとつ。)

溶剤種 有機溶剤名 MIR値弱溶剤 脂肪族炭化水素 ミネラルスピリット等 0.78~1.27

芳香族炭化水素 トルエン 4.0キシレン 4.2~10.6

強溶剤 アルコール ブチルアルコール 3.3エチルアルコール 1.7

ケトン メチルイソブチルケトン 4.3メチルエチルケトン 1.5

低VOC塗料設計に際して

総合的な塗料設計コンセプト

・環境対応(低VOC)・塗膜性能・塗装適性・コスト(塗料、塗装工程)

塗料メーカーは多面的要求に応えられる設計を行う

塗料タイプ別構成成分(イメージ)

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

溶剤形塗料 ハイソリッド塗料 水性塗料

溶剤

顔料

樹脂

成分割合

2ー(3)低VOC塗装系の実績 (道路橋、人道橋等)

鋼道路橋塗装・防食便覧資料集

☆ ☆

低溶剤形塗装系 ・・・☆胡桃橋 〔人道橋〕(東京都奥多摩町)、豊水橋(東京都新宿区)、朝日橋(東京都新宿区)

低溶剤形塗装系 ・・・ 岳美高架橋(静岡県)、向小駄良高架橋(静岡県)

/水性塗装系 保土ヶ谷バイパス(神奈川県)、第3巴川歩道橋(静岡県)

水性塗装系 ・・・・・ 蛇崩川橋梁(東京都目黒区)、相生橋(東京都新宿区)☆ごみ坂橋 〔横断歩道橋〕(東京都新宿区)

「低VOC+工程短縮」塗装システム

下塗り塗料厚膜化技術

ずり速度(1/sec)

粘度(Pa・sec)

塗料粘度特性の改良とそれを実現できる塗料組成の検討が必要

塗膜断面

中上塗り兼用塗料の屋外ばくろ試験結果

耐候性の良い成分が塗膜表面に配向する塗料組成設定

「低VOC+工程短縮」塗装システムの特長

(従来の溶剤形塗料との比較)

項目 特長 主な適用技術

低VOC化 VOC 約50%削減 粘性制御

弱溶剤化 PRTR対象物質 弱溶剤可溶化約90%削減

下塗り厚膜化 2回→1回塗り 粘性制御

中、上兼用 2回→1回塗り 樹脂成分配向

2ー(4)超低VOC(水性)塗装系の実用化検討

目的:鋼道路橋塗装・防食便覧のCー5塗装系、RcーⅠ塗装系、RcーⅢ塗装系と同等の性能を有する水性塗装系を構築

目標:①塗膜性能 (複合サイクル腐食試験、水蒸気透過性、酸素透過係数、塗膜直流抵抗、促進耐候性がCー5塗装系と同等以上

②塗装作業性: 夏季、冬季における施工性に支障なく目標の塗膜性能を有した塗膜が得られる。

『 鋼構造物塗装のVOC削減に関する共同研究報告 』(平成22年12月)

(独)土木研究所、関西ペイント(株)、(株)トウペ、神東塗料(株)、中国塗料(株)、日本ペイント(株)、大日本塗料(株)

超低VOC塗装系屋外ばくろ(さび、膨れ)観察 〔抜粋〕

基材: 沖縄ばくろした油性塗膜、さび混在鋼板を素地調整(1種)した鋼板

水性塗装系: 塗替(素地調整1種)用 〔防食下地~上塗りまで水性〕溶剤形塗装系: RcーⅠ

塗装系 塗料会社 塗膜外観観察 (塗板 表面)沖縄(3年) つくば(3年)

一般部 カット部 一般部 カット部溶剤形 - ○ 12mm ○ 5mm

① 8M 14mm ○ 1mm② 8M 3mm ○ 2mm

水性 ③ ○ 7mm ○ 5mm④ ○ 4mm ○ 5mm⑤ ○ 5mm ○ 4mm⑥ ○ 13mm ○ 4mm

鋼構造物塗装のVOC削減に関する共同研究報告

消泡剤による泡痕の平滑化

表面調整剤による

ハジキ抑制

構造粘性付与

(空調管理、プレヒート)

(機器設備の絶縁対応)

【対応技術】

( )は鋼構造物に非該当

蒸発潜熱(cal/g)

沸点(℃)

表面張力(10-

3N/m)

540

100

72.7

キシレン

94

138

28~30

トルエン

96

111

28.4

塗料材料としての有機溶剤と水との違い

超低VOC(水性)塗装系の結果と留意点

1)塗替向け暫定提案塗装仕様(素地調整1種、スプレー塗装)防食下地: 水性有機ジンクリッチペイント下塗り: 水性エポキシ樹脂塗料中塗り: 水性ふっ素樹脂塗料上塗り: 水性ふっ素樹脂塗料

は、総膜厚が同条件で、従来溶剤形塗装系〔RcーⅠ系〕とほぼ同等の塗膜性能が得られた。(屋外ばくろ3年経過→継続)(素地調整3種でも提案仕様はRcーⅢ系とほぼ同等性能)

2) VOC削減率は90%程度。3) ・水性有機ジンクリッチペイント塗膜の空隙率安定化のため十分な

電動攪拌機等による攪拌が必要・水性有機ジンクリッチペイントおよび水性エポキシ樹脂塗料の膜厚設定は今後の検討課題

・厚膜たれやすい塗装作業性幅向上要。低温、高湿度環境下で乾燥しにくい。

まとめ1:塗装に係わる鋼構造物の長寿命化

長寿命化とコスト抑制とを実現するためには、下記の項目が重要である。

1)ライフサイクルコストに基づく重防食塗装系の採用

2) 個々の構造物に対する 塗装管理と経時の着実な塗膜診断

3)多数の構造物を管理する場合、優先順位設定と適切な塗替え時期の判断

まとめ2: 鋼構造物塗装における低VOC化

1) 高耐久性塗装系による塗替え間隔の長期化は低VOC化に寄与する。

2) 現在、低VOC(ハイソリッド、水性)塗料

や弱溶剤形塗料の実績が増加している。〔環境対応〕

3) 合わせて塗装工程短縮塗装システムの採用も増加している。〔工事コストの低減〕

今後も、環境に配慮した塗装系の実績を積み上げていくことが重要。

ご静聴ありがとうございました。