最新海外CSV事例~shared value leadership summit 2014~

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エンゲージメント・ファースト社主催 CSVマーケティングセミナー~CSV(共有価値の創造)の現状とこれから~ 【第3部】最新海外CSV事例~Shared Value Leadership Summit 2014~ 2014年5月に開催されたニューヨークでのShared Value Leadership Summit 2014における討議の概要と最新CSV事例を用いて、社会的課題の解決に取り組みながら事業利益を得るとはどういうことなのか、具体的な事例を用いてご紹介いたします。 【講師】株式会社エンゲージメント・ファースト グループ長 兼 チーフ・エンゲージメント・ストラテジスト 統計士/解析士 渡辺 弘

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最新海外CSV事例 ~Shared Value Leadership Summit 2014~

2014年07月25日(金)

株式会社エンゲージメント・ファースト

グループ長 兼 チーフ・エンゲージメント・ストラテジスト

統計士・データ解析士

Page1 SVLサミット2014概要

• 名称: Shared Value Leadership Summit 2014

• 主催: Shared Value Initiative by FSG

• 基調講演: マイケルE・ポーター、キリン磯崎代表取締役、他

• 会場: ニューヨーク・コンラッドホテル

• 期間: 2014年5月13日(火)~14日(水)

• 参加者: 400 +

• 参加国: 35カ国

Page2 サミット会場

Page3 サミット当日の様子

https://www.flickr.com/photos/97308739@N07/with/14341924325/

Keynote Speech by Prof.Michael E.Porter Opening Address by SVI Executive Director, Justin Bakule

Q&A Session Panel Discussion

http://sharedvalue.org/

Page4 イベント・スケジュール

http://sharedvalue.org/

講演14 パネルディスカッション5 文科会ワークショップ4

Shared Value Leadership Summit 2014レポート

サミット・パネルディスカッション概要

事例1: Cart-Away Concrete Systems, Inc.

事例2: Ben & Jerries’

事例3:海外金融業界の取組~ワークショップおよび金融分科会より~

まとめ:サミット事例及びマイケルEポーター基調講演からの考察

Page 6

サミット・パネルディスカッション概要

Page7 M.E.Porter 教授基調講演発言より要素抜粋

• CSV概念の根幹は、直面する社会的問題を解決したいと思っても、 必要なリソースが極端にプライベートセクターのみに偏在しているという点にある。

• NGOと政府も無論、役割を担うのだが、リソースが不足し過ぎているので、 世界を動かすにはプライベートセクターを巻き込む他ないのだ。

• NGO/NPOは、求める共創価値の活動とビジネスを結び付けるパートナーシップの必要性に気付いている。

• 同様の進化を政府にも見て取れる。

• 市場の外部性により生じた問題に規制・罰則・修正を行うなど 企業と政府の活動にはトレードオフの関係があった。

• 政府は限界とリソース不足を理解し始めたため、理想を築くためにCSV概念を活用することで大いに前進できる。 よって企業と政府の関係はトレードオフではなく、適切なインセンティブ、インフラを提供することでCSV事業を大いに成長させる協力・支援関係に至れるのだ。

• CSVの概念・原理が理解された今、 最も大切なのはマネジメント規律 (Management Discipline)の確立と、各分野においてCSVを如何に実行するか、各分野においてCSVとは何なのかを深く考えることだ。

• 資源抽出産業は最もインパクトの大きいCSV事例分野である。

Page 8

サミット講演事例①: Cart-Away Concrete Inc.

Page9 Cart-Away Concrete Systems, Inc.

米国オレゴン州の小型ミキサー・メーカー

世界最大の生コンクリート・トレーラメーカー

1966年9月創業のMcClintock Metal Fabricators が前身。

2004年Cart-Away Concrete の製品ラインを買収。

オレゴン州に移転。

Cart-Away Concrete Systems, Incとなる。

Tom Vail, CEO

Page10 コンクリートとは

• コンクリートは水についで、地球上で2番目に消費される物質。

• 人口1人当たり年間3トンが生産される経済活動のエンジン。

• コンクリートを維持する5つの要素:

良質の岩石、砂、セメント(=石灰岩)、きれいな水、ミキシング技術。

Page11 生コンクリート製造過程

(画像引用元: http://www.zennama.or.jp/park/main/m1_nani.html)

コンピュータ制御室 運搬管理センター

プラント内計量器 混和剤用のタンク

骨材置き場

Page12 コンクリート絡みの社会問題:地震

• 2010年1月12日ハイチ地震発生。 • 震源はハイチの首都ポルトープランスの西南西25km、深さは13km。 • マグニチュードは7.0。大統領官邸含む25万棟が倒壊。 • 2011年1月12日、ベルリーブ首相は記者会見で、死者が31万6千人以上と発表。

Page13 大量のビル倒壊の原因

• 手抜き工事。 • 政府と建設会社の癒着による手抜き検査。 • シャベル・ミキシング。

シャベルを使った人手による地面でのミキシングが粗悪なコンクリートを生み出す原因。

貧困による学習不足・資材不足(ミキサー)→ ミキシングの不足、水の入れ過ぎ、ノウハウ欠如。

世界中の貧困者がシャベルミキシングに従事。

Page14 社会的なニーズ

• より良いコンクリートの世界的サプライチェーン構築が必要。

• 2013年7月、コンクリートの専門家、大学の研究者、主要なメーカーのCEOが集まり、コンクリートの質改善法について討議。

• Cart-Away Concrete Systems社は「Concrete MD (Mixing Ditch)」という新製品を開発。

→ 原料と水の配合レシピを簡単に再現できるよう標準化。

→ 品質の良いコンクリートを特別な専門教育を受けずに誰でも確実にミキシングできる機械式ツール。

→ スモールサプライチェーン

解決策: Concrete MD = CSV事業

ポーターの社会的課題に注目して「製品と市場を見直す」アプローチの典型例。 対象コミュニティの雇用を奪わず、現地の業務文化を生かしつつ課題解決できる新製品を開発した好事例。

ditch = (名) (U または V 字形の)溝(みぞ), どぶ,排水溝(こう)、用水路

Page 15

サミット講演事例②: BEN&JERRY’S

Page16 ベン・アンド・ジェリーズ

1978創業。 アメリカの高級オーガニック・アイスクリーム・メーカー。 1988年に社会的ミッションへのコミットメントを社内に啓蒙。

Page17 コミュニティ連結の力

弊社の事業目的は、 繁栄の連結というビジネスモデルを 通じて、公平・校正な社会、経済、 環境のためのグローバルな運動を 勇気をもって促進させることです。

原材料を購入する生産コミュニティ

社員が暮らし働いてる 従業員コミュニティ

自社商品を販売している 世界中の消費者のコミュニティ

繁栄の連結

Page18 CSVの概念がミッションに

原材料を購入する 生産コミュニティ

自社商品を販売している 世界中の消費者のコミュニティ

社員が暮らし働いてる 従業員コミュニティ

Page19 コアバリューに埋め込まれた社会的使命の達成

社会的正義

公正な グローバル経済

環境活動

持続可能な 食糧供給システム

Page20 コアバリューとミッションを製品で具現化

2.5倍のロイヤルティ

SNSを通じたパーソナル ブランディングが認知の源泉

「違い」を求める人たちがブランド を支える。

ベンアンドジェリーはグローバルコミュニティ。

ケアリング・デアリー の仕組み

社会貢献 ブラウニー

B共同組合 フェアトレード 原材料

遺伝子 組み換えなし

遺伝子 組み換えなし

Page21 酪農農家の保護と指導

1.土壌について 2.土壌の管理 3.土壌の栄養分 4.牧場の財政 5.人という財産 6.害虫対策 7.生物多様性 8.動物の飼育 9.エネルギー 10.水 11.地域経済への影響 12.測定学

Page22 社会貢献ブラウニー

チョコレートブラウニーはニューヨークのグレイストン社から調達。

Page23 フェアトレード原材料

• ココア • コーヒー • バニラ • バナナ • シュガー

• 全ての現在料にフェアトレード産物を使用。 • 2014年内に世界中のベンアンドジェリー製品にフェアトレード認定を受けた現在料のみを • 使用する体制を構築。

Page24 社会環境アセスメント報告と年次KPIトラッキング

Page25 ベンアンドジェリーのマーケティングミックス

社会的ミッション と行動

ずば抜けた 最高の製品体験

ずば抜けた 最高の製品体験

ユニークな ポピュラーカルチャー の醸成

Call To Action:「目的ベースのビジネス(Purpose Driven Business)への進化」

Jostein Solheim, ベンアンドジェリーズ CEO

4つのコアバリューエリア

1.持続可能な食糧システム、2.公平なグローバル経済、3.環境活動、4.社会的正義

今後ブランドには触れない。社会的ミッション達成、製品経験の向上、ユニークな文化の形成を通じブランドを強化してゆく。

長期的視点に立って、パーパスドリブンなマーケティングを展開してゆく。

私のボーナスは、ベンアンドジェリーの売上に加えて、どれだけソーシャルインパクトを創出したかによって支払われる。

よって、いかに成果を計測するかがカギとなる。

完全ではないがKPIを策定し、レーティング、スコアリング、査定を行っている。

次世代のソーシャルエンタープライズを作ってゆかねばならない。

糖分摂取については、ベンアンドジェリーのコアユーザーは、幸い糖尿病患者は殆どいない。オーガニック原料使用、原材料・成分量の情報公開・透明性で対応。それ故にベンアンドジェリーのアイスクリームはプレミアム価格に設定されている。

CSV事業で社会課題取り組みには、企業ミッションからの落とし込み、インターナルブランディングが不可欠。

割高になる場合もあるが、社会課題に取り組みパーパス・オリエンティッド企業であることが周知されれば、

ブランドエクイティが築かれ、プレミアム価格も正当化される。

ブランドエクイティは事業を通じて築かれるべきものである。

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Page 27

海外金融業界の取組 ~ワークショップおよび金融分科会より~

分科会ワークショップ: 金融業界の共創価値

サブプライム後の2009年にトップが交代し、銀行が世の中で信用されるための役割とは何かを話しあった。

金融はクロスセクターでCSV企業に資金援助するという観点で重要。

CSV事業サイドの準備は出来ており、金融援助ニーズがあるにも関わらず、融資側は対応できていない。

銀行がCSVに対応するニーズと機会は急速に高っているが、殆どがフィランスロピーやCSRにとどまっている。→機会損失

大半の金融機関にとって、CSVの事業規模が関心事である。

CSRや持続可能性の会合に出席すると金融マンのROIを最大化する能力が損なわれてしまう。

規模が大きくともリターンが少なくなるのは必至。

このようなマインドセットにもかかわらず、CSVに試行錯誤する金融機関は存在している。ROIの概念を再定義する。

National Australian Bank, Berkleys、リテールバンキングではマイクロファイナンス。

他産業のペプシがマイクロファイナンス方式でメキシコの農家に対して小額ローンを提供している。

社会における銀行の役割と本来の目的に回帰した。

顧客のニーズを聞き取り、理解し、ニーズに応える金融サービス。

零細企業で資金繰りに苦しむ会社に対応するスペシャルチームを編成。

マーケティングとターゲットインサイトを考える企業文化、体制、ノウハウの確立が急務。

金融業界は事業会社に比べてCSVへの取り組みが遅れている。

ただサブプライム不況において業界全体で信用を失ったことに対する危機感があり、様々な変革が進行中。

方向性はCause-related Marketing、Purpose-driven Marketing、顧客インサイトの重視。

プロダクトアウトの組織・文化からマーケットイン、カスタマーインサイト重視の組織・文化が模索され初めている。

具体的な事業としては、ソーシャルベンチャーへの投資・融資、マイクロファイナンス、金融包摂の推進など。

カスタマーインサイトに基づく経営推進のための従業員教育の改革。

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まとめ:サミット事例及び マイケルEポーター基調講演からの考察

今回のサミット参加からの気付き:まとめ

ポーターのCSVは、あくまで新しい経営戦略、競争戦略コンセプト。

CSV提唱の狙い=資本主義の修正と新たなイノベーション。 サブプライムローン不況以降、失われた資本主義、企業、営利活動の信用を取り戻す。

今後予想される地球温暖化、人口爆発、食糧・エネルギー・資源の枯渇、貧困、格差、病気といった社会問題の予防・解消を資本主義のアニマルスピリッツを活用して促進させる。

企業、政府、NGO、地域コミュニティの協業から発生する新たな市場、フロンティアを認識させ、新たな成長機会に目を向けさせる。

民間企業だけでは気付き得ない社会的ニーズをマルチセクターで考えさせることにより、イノベーションを引き起こす。

サミット全体を通じて語られていた共通因子はマルチセクター(企業、政府、NGO、地域)協業。 異なるセクターからのパートナーの見つけ方

文化の異なる異種組織同士の事業マネジメントおよびプロジェクトマネジメント

価値共創を行うCSVパートナーのコアコンピテンス、成果の測定法

事業経営者の説明責任と投資家の倫理・企業評価基準の再定義

「製品と市場」、「バリューチェーンの生産性」、「事業拠点の産業クラスター」をマルチセクター視点で見直す。 政府の法体系の再定義

事業、利益、価値とは何かの再考

株式、経営者、従業員の評価指標の再定義

投資判断基準の再定義(社会的投資、グリーンボンドなどの発展)→ ROI・ROA + Sustainability KPI, Social Impact KPI

CSV経営を推進する欧米企業=短期的志向→長期的志向へのシフト。

CSV事業を通じて築かれるブランドエクイティ>広告や販促コミュニケーションで築かれるブランドエクイティ。

欧米企業の新たな競争戦略と解釈することも可能。

日本企業は国内市場へのCSV展開はもちろん、海外事業展開を継続するためにも考慮すべき。

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株式会社メンバーズ

m_smd@members.co.jp

http://www.members.co.jp/

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