Post on 16-Apr-2017
キュレーションサイトにおける一連の騒動と今後
小松昇平
コンテンツマーケティング交流会 12月イベント発表資料
小松について
SynergyMarketing(CRM)→Ginzametrics(SEO)を経て2016年10月からDatorama Japanで勤務
Ginzametrics時代にコンテンツマーケティング交流会を立ち上げ、イベント10数回実施
情報の開示
● 前職Ginzametricsでは、SEOデータの管理ツールを提供して
いました。
● お客さんとしては、ECサイトやポータルサイトさんに加え、キュ
レーションサイトさんもいました
● 倫理的・法律的に違反となるようなコンテンツ運営の支援をし
ていたことはありません
● しかし、長文コンテンツ作成などSEOでの成果を高めるための
ノウハウ提供はおこなっていました
● ということで、今回の事象における関係者ともいえます
話題となっている事象
DeNA社のキュレーションサイト群をとりまく一連の問題
ヨッピーさんの記事の前半にまとめてあります
http://bylines.news.yahoo.co.jp/yoppy/20161209-00065195/
“今回の件が大きく明るみに出る前からWEBメディアの中でも、
とにかくお金が儲かればいいよ派
vs ちゃんとやろうよ派
みたいな対立が水面下ではあった”
http://bylines.news.yahoo.co.jp/yoppy/20161209-00065195/
ヨッピーさんの記事より
以下簡単に流れをまとめます
朽木さんの記事 DeNAのwelqへの指摘
“検索結果に、執筆者の名前・職業などが全く明らかになっていない、それでいて命に関
わる医療情報が掲載されている場合があることだ。文責という言葉があるように、発信
には責任が伴う。
さらに、その情報を掲載しているメディアが、掲載責任を放棄していることだ”
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kuchikiseiichiro/20160910-00062062/
辻さんのツイート Welqの「死にたい」LP
https://twitter.com/tsuj/status/789801304243646464
Buzzfeedさんの記事① 文章の剽窃改変を指摘
“各色の下線部の文章がほぼ一致する(下線部筆者)。他サイトにある記事の文章をそ
のままコピーするのではなく、言葉を少し変えたり、文の順序を入れ替えたりして書き直
している(リライト)ということだ。”
https://www.buzzfeed.com/keigoisashi/welq-01
永江さんの記事 不適切な内容を指摘
“ラクトフェリンの10の効能!ノロウイルスや放射能保護効果も?1日300mgを!
えっ、ラクトフェリンが放射能にも効いてガンやインフルエンザの予防になる???ド正面か
ら薬事法に違反していますので、ライオンのお客様相談室、消費者庁、厚生労働省にも
連絡したほうがいいレベル。”
https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=30141
Buzzfeedさんの記事② マニュアルを暴露
“DeNAはこのマニュアルで、記事の執筆時に「参考」にすべきサイトを案内している。本
文をそのままコピペするのは禁止し、「文章が重複しないようにご自身の言葉でリライト
をお願いします」と、引用ではなく、わざわざリライトを指示している。”
https://www.buzzfeed.com/keigoisashi/welq-03
やまもとさんの記事 MERY著作権ロンダリング
MERYに関しては、weheartitやpinterestを使った画像ロンダリングの疑義を指摘(ブロ
グ記事内にcsvファイルがあり、画像引用元URLリストがあります)
※著作権法違反とは言い難いが、倫理的な疑義があると僕は感じます
http://bylines.news.yahoo.co.jp/yamamotoichiro/20161202-00065073/
Techcrunch岩本さんの記事 12/7に記者会見で謝罪
“そこで11月29日にWELQの全記事を非公開化。12月1日にはそれに加えてMERYを除く8媒体の
全記事を非公開化。MERYに関しても、12月7日をもって全記事を非公開化している。
今回の騒動を受けてDeNAでは、WELQを読んだ結果の健康被害や記事の出展などの相談を受け
付ける窓口を開設。コーポレートサイトのトップページに掲載するとした。また既報の通り第三者調査
委員会を設置。これと並行して社内でプロジェクトチームを発足し体制の健全化に努めるとした。”
http://jp.techcrunch.com/2016/12/07/dena-palette-namba/
その他
● NAVERまとめ
● Spotlight● Laughy● Gathery● Healthill
など、多数のキュレーションサイトでも問題の可能性があると思われる
キュレーションサイトについて、あらためて確認
キュレーションとは 佐々木俊尚さんの書籍から
佐々木俊尚著「キュレーションの時代」ちくま新書 2011年, p210
“「人」を視座とする情報流通は、圧倒的な有用性を
もつようになってきており(中略)
この「視座」を提供する人は今、英語圏のウェブの
世界では「キュレーター」と呼ばれるようになってい
ます。
そして、キュレーターが行う「視座の提供」がキュ
レーション”
キュレーションとは web担編集長安田さんの文章
“そもそも「キュレーション」というのは、博物館や美術館、図書館などで、資料を
鑑定し、さらに、どのアイテムを所蔵し、どのような切り口で所蔵すると、その館
らしいのか、そうしたことを企画して実行する役割です。(中略)
本来、ネットにおけるキュレーションも、大量に増えすぎたコンテンツのなかから
光るものを見つけ、それを整理して提供することで、ネットに新たな価値を提供
するものだったはずです。決して、あちこちからコンテンツの断片をコピペしてき
て、ちょっと変えてバレないようにして、検索エンジンで評価され上位表示され
るようにつなぎ合わせることがキュレーションではないのです。
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2016/12/06/24553
Welqは本当の意味での
キュレーションだったのか
今あらためて考えると個人的にはNo
そう思う理由
①記事の著者(キュレーターその①)の顔が見えない
②編集部(キュレーターその②)の顔が見えない
③「視座の提供」「新たな価値提供」を行っていない可能性がある
広告ビジネスにおける収益を目的としたWebサイト
と呼ぶのが適切かと思います
※メディアじゃないの?という点については、議論できるほど僕の知識もないので、今回は差し控えます
何がダメだったのか
コンテンツとして、何がダメだったのか
● 法律的に問題を抱えている可能性がある
○ 薬機法
○ 著作権法
● 倫理的に問題を抱えている可能性がある
○ 内容面■ パワーストーンでシミが消える(MERY)■ 「死にたい」でアフィリエイト(Welq)
○ コンテンツ制作における剽窃、改変■ 文章を一部コピペ、改変 を推奨
■ 画像ロンダリング を実施
著作権法的にグレーな、画像ロンダリング
“まず、他人の著作物を無断でアップロード等した本人は、著作権侵害となります。それ
を利用するウェブメディアが著作権侵害となるか否かについてはケースバイケースで
しょうが、その画像を公式のAPIを利用して埋め込んでいるのであれば、著作権侵害と
ならない場合もありそうです。ただ、違法コンテンツであることを知って行っているとすれ
ば、違法行為の助長とは言えるかもしれません。先ほどグレーゾーンについて言及した
ように、明確に違法とは言えない行為でも、マナーの悪い行為には社会的な歯止めが
かかる可能性はありますね。”http://hrnabi.com/2016/12/09/12907/
Googleウェブマスターフォーラム
サービス運営者として何がダメだったか
● 読者の軽視
○ 誤った情報提供による不利益を助長(健康被害のおそれあり)
● 権利者の軽視
○ 一次情報を盗んだとみなさざるを得ない剽窃。改変。クリエイター軽視
● PV/マネタイズへの傾倒
○ SEOに注力しすぎた過度な対応(記事数、一記事あたりの文量を確保しすぎ
るあまりのコピペ改変、画像ロンダリング)
○ 原価を抑えすぎたコンテンツ制作
それらを助長した仕組みは何か
● キュレーションプラットフォームの都合のいい解釈
○ 外向きにはUGM(コンテンツはユーザ投稿で)のはずが実
際には大部分のコンテンツが外部ライター、社内ライター■ Welqは90%、MERYは54% ※記者会見から
○ 編集長不在、盗用・改変のチェック体制も機能せず(組織
として推奨していた疑義)
○ ユーザ・ライターへの責任転嫁
それらを助長した仕組みは何か
● クラウドソーシング・アルバイトによる安価で大量なコンテンツ
の調達
○ クラウドソーシング内でもリライト(改変)を助長
○ 単価が場合によっては1文字1円以下の可能性
○ MERYさんのアルバイトの告発が正しければ、1本1500円程度の原価 ※高広さんのFBポストから拝借
・「MERY」記事量産の現場 「90分に1本のノルマ」インターンが証言http://withnews.jp/article/f0161209003qq000000000000000W00h10301qq000014399A
参考:クラウドワークスにおける「リライター」の推奨
“webメディアの発達や、検索エンジンのアルゴリズムの変化によって、ライターの仕事と
して「リライトライター」という新しい仕事が生まれてきています。
リライトと一般的に言うと、文章をできるだけ変更せず、推敲や校正などにとどめてより
よい文章にするための作業と認知されていますが、ここでいうリライトとは全く違います。
渡された文章を、「言いたいことは変えずに、全く違う表現方法に書き直す」という作業
のことを言います。
多くのサテライトサイトを運営している場合、コンテンツのネタを考えるのは一苦労。同じ
ネタでも、全く違う表現方法でたくさんの記事を制作することによって、キーワードやテー
マを節約できるという技とも言えます。それでは、リライト作業の主な流れについて見て
いってみましょう。”※現在は内容を変更している
https://web.archive.org/web/20160513234017/http://crowdworks.jp/public/jobs/category/40/articles/5120
それらを助長した仕組みは何か
● Googleアルゴリズムの”正しい”ハック
○ 網羅性、専門性が高い長文コンテンツを作れば順位が上
昇する可能性がある
○ ある程度言い回しを変えれば、重複コンテンツとみなされ
ない可能性がある
○ 外部リンクから内部リンクへ(数の暴力)
論説をまとめます
高広さんの記事
“つまり、昔の黒いSEOハックは「カネでリンクを買う」というものだったのが、今は「カネで
コンテンツを買う」という”資本力によるSEOハック”が成立してしまっており、それを行っ
てるのがキュレーションメディアだということなのだ。”
http://www.mediologic.com/entry/2016/12/08/121204
長田さんの記事
● 勝者
○ 10カテゴリーの競合メディア、フリーランススタッフ/クラウドワークス登録者、
Facebook、デジタルジャーナリズム、ネットユーザー
● 敗者
○ その他キュレーションメディア、クラウドソーシング事業者、Google、「DeNAパレット」への出稿企業および代理店、あらためてネットユーザー
http://digiday.jp/publishers/dena-welq-winners-losers/
今後どうすべきなのか
情報の発信者(コンテンツ製作者)として
● 何のためにコンテンツを届けるのか
○ 誰にどんな情報をとどけて、どういう風に思ってもらいたいのか、今一度、考え
よう。
● 倫理観、モラルを振り返ろう
○ この引用は権利者が不快な思いをしないかな、と考えよう
● コンテンツ制作には内容に見合ったコストがかかることを覚悟しよう
○ 他社と差別化するクオリティの高いコンテンツは、安く大量生産することは無
理。
● 編集・ライティングのスキルを高めることを心がけよう
○ 質の高いコンテンツを発注する場合、発注側の編集スキルも問われるので、
担当者は編集、ライティングスキルを高める必要がある
サービス運営支援者(広告主・広告代理店)として
● 出稿先の判断
○ 数字(PV、UU)だけではなく、本当に読者がついているか
をみよう
○ クリエイター・権利者を軽視した媒体への出稿はやめよう
● 出稿して終わりではなく広告に読者は満足しているかをみよう
○ その上で、倫理的に反するメディアへの広告出稿はやめよ
う
情報の受信者(読者、サービスの利用者)として
● 自分たちの頭で考えよう
○ 検索結果、ソーシャルのタイムラインに答えは転がっていない
● 何が正しいか、正しくないか、判断できるようになろう
○ 正しくないと思ったサイトは、再訪しないようにしよう
● 情報を取りに行くのではなく、情報を発信しよう
○ 発信することで、自分の考えが整理されます
コンテンツマーケティングに与える影響
SEO集客だけがコンテンツマーケティングではない
というか、十数回のイベントのなかで、
SEO集客をテーマとしてとりあげたことはないです
A:コンテンツマーケティングやってて大丈夫??
Q:大丈夫です。安心して取り組みましょう
● 会社が持つ情報を発信しているので、著作権法違反には当たりません。
● SEO集客だけがコンテンツマーケティングではありません。
● 直接的なマネタイズを目的としたコンテンツ活用ではないので、過度なマネタイズに
走ることもないはずです。
● 集客以外に、見込み客との関係性構築、既存顧客の満足度維持、サービス利用の
継続などの目的もあるため、Welqのケースとは大きく違います
何のために企業運営してるんだっけ?
企業は社会の公器である
“企業は社会の公器であり、ま
ず本業を通して社会生活の向
上と人々の幸せに貢献すること
が第一義である”
公益財団法人 松下社会科学振興財団 松下資料館 webサイトより引用
http://matsushita-library.jp/curator/110303index.html
これからも自信をもってがんばりましょう